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特許7561145検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法
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  • 特許-検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20240926BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20240926BHJP
   B07C 5/344 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G01N35/02 C
G01N35/04 G
B07C5/344
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021569760
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2020044721
(87)【国際公開番号】W WO2021140788
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2020001749
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】志賀 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 邦昭
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04133642(US,A)
【文献】特開2017-077971(JP,A)
【文献】特開2018-119962(JP,A)
【文献】特開昭54-097488(JP,A)
【文献】特開昭60-014170(JP,A)
【文献】特開昭59-231690(JP,A)
【文献】特開昭51-113665(JP,A)
【文献】特開昭63-192472(JP,A)
【文献】特開平10-192704(JP,A)
【文献】特開平09-178708(JP,A)
【文献】特開2018-165689(JP,A)
【文献】特開昭60-039561(JP,A)
【文献】特開2020-106354(JP,A)
【文献】国際公開第2011/036190(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0020371(US,A1)
【文献】英国特許出願公告第01423185(GB,A)
【文献】英国特許出願公告第01425964(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02
G01N 35/04
B07C 5/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が収容された検体容器が架設された搬送容器に設けられている第1磁性体と、
第2磁性体、および前記第2磁性体の外周側に巻かれている巻線を有しており、電磁石として働くことで前記第1磁性体を移動させるための磁気回路と、
前記磁気回路の前記巻線に電流を供給する駆動部と、
前記磁気回路に流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記電流検出部で検出された前記磁気回路を流れる所定の電流値に基づいて前記搬送容器を区別する演算部と、とを備え、
前記第1磁性体は、そのインダクタンス特性が異なるものが複数あり、
前記演算部は、前記電流検出部で検出された前記磁気回路を流れる所定の電流値におけるインダクタンス特性値を演算し、求めた前記インダクタンス特性値に基づいて異なる前記インダクタンス特性を持った前記第1磁性体の種類を特定することで前記搬送容器を区別する
ことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検体搬送装置において、
前記第1磁性体は、材質、密度、形状のうち少なくともいずれかが異なることにより前記インダクタンス特性が異なる
ことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の検体搬送装置において、
複数の前記磁気回路と、複数の前記電流検出部と、少なくとも1以上の前記駆動部と、少なくとも1以上の前記演算部と、を備えた
ことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の検体搬送装置において、
前記磁気回路は、前記第2磁性体および前記巻線のうち少なくともいずれか一方の材質、密度、形状のうちいずれか一つ以上が異なる構成の回路を有しており、
前記演算部は、異なる構成の前記磁気回路により検出された、前記第1磁性体の異なる前記インダクタンス特性をそれぞれ演算する
ことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載の検体搬送装置において、
前記電流検出部は、異なる前記搬送容器の各々が同一の領域内に存在する際に前記電流値を検出する
ことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の検体搬送装置において、
前記電流検出部は、異なる前記搬送容器の各々が同一の領域内に停止している際に前記電流値を検出する
ことを特徴とする検体搬送装置。
【請求項7】
請求項1に記載の検体搬送装置を備えたことを特徴とする検体分析システム。
【請求項8】
請求項1に記載の検体搬送装置を備えたことを特徴とする検体前処理システム。
【請求項9】
第1磁性体が設けられている搬送容器に保持された検体容器内に収容された検体を搬送する方法であって、
前記第1磁性体には、そのインダクタンス特性が異なるものが複数あり、
第2磁性体、および前記第2磁性体の外周側に巻かれている巻線を有しており、電磁石として働くことで前記第1磁性体を移動させるための磁気回路の前記巻線に電流を供給する際に流れる電流値を検出する電流検出ステップと、
前記電流検出ステップで検出された前記磁気回路を流れる所定の電流値におけるインダクタンス特性値を演算し、求めた前記インダクタンス特性値に基づいて異なった前記インダクタンス特性を持った前記第1磁性体の種類を特定して前記搬送容器の種類を区別する演算ステップと、とを有する
ことを特徴とする検体の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血液,血漿,血清,尿、その他の体液等の生体試料(以下検体と記載)の分析を行う検体分析システムや分析に必要な前処理を行う検体前処理システムに用いられる検体搬送装置、および検体の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非常に柔軟であり高い搬送性能を与える、研究室試料配送システムおよび対応する動作方法の一例として、特許文献1には、いくつかの容器キャリアであって、各々が少なくとも1つの磁気的活性デバイス、好ましくは少なくとも1つの永久磁石を備え、試料容器を運ぶように適合された容器キャリアと、容器キャリアを運ぶように適合された搬送平面と、搬送平面の下方に静止して配置された幾つかの電磁アクチュエータであって、容器キャリアに磁力を印加することによって搬送平面の上で容器キャリアを移動させるように適合された電磁アクチュエータと、を備える、ことが記載されている。
【0003】
また、移送面上の位置が認識されうる検査室試料分配システムの一例として、特許文献2には、移送面と、複数の試料容器キャリアと、試料容器キャリアを移送面上で動かすように構成された駆動手段と、試料容器キャリアが対応する移送経路に沿って動くように、駆動手段を駆動することによって、試料容器キャリアの移送面上での動きを制御するように構成された制御装置とを備え、光学的に認識可能な複数の幾何学形状が、移送面に置かれ、それぞれの幾何学形状が、移送面上の専用のフィールドを表す、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-77971号公報
【文献】特開2018-119962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検体の分析を自動で行うための検体処理システムとして、検体の投入や遠心分離、分注処理、ラベリング処理などを行う検体前処理システムや、検体前処理システムで処理された検体を分析する検体分析システムがある。
【0006】
検体前処理システムや検体分析システムでは、所定の処理や分析を行う機構まで検体を搬送するために、ベルトコンベヤなどを用いた検体の搬送ラインが設けられている。この搬送ラインを検体搬送装置上に複数搭載することにより、所定の機構まで検体を搬送している。
【0007】
近年、医療の高度化および高齢化社会の進展により、検体処理の重要性が高まってきている。そこで、検体分析システムの分析処理の能力の向上のために、検体の高速搬送や大量同時搬送、および複数方向への搬送が望まれている。
【0008】
そのような搬送を実現する技術の一例として、特許文献1,2に記載の技術がある。
【0009】
ここで、検体搬送装置では、通常処理を行う一般検体、迅速な搬送および分析処理を要求される緊急検体、あるいは性能確認用のコントロール検体など、多様な検体を搬送,処理しており、用途に応じてユーザが目視で検体容器を識別している。
【0010】
そのため、特許文献1や特許文献2に記載の検体ホルダを用いた電磁アクチュエータによる搬送方式においては、平面上の検体搬送部に複数の検体ホルダの搬送動作が行われており、検体ホルダへの検体置き間違いなどのヒューマンエラーを発生させる余地があることから、改善することが望まれている。
【0011】
本発明は、従来に比べてヒューマンエラーを削減することができる検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、検体が収容された検体容器が架設された搬送容器に設けられている第1磁性体と、第2磁性体、および前記第2磁性体の外周側に巻かれている巻線を有しており、電磁石として働くことで前記第1磁性体を移動させるための磁気回路と、前記磁気回路の前記巻線に電流を供給する駆動部と、前記磁気回路に流れる電流値を検出する電流検出部と、前記電流検出部で検出された前記磁気回路を流れる所定の電流値に基づいて前記搬送容器を区別する演算部と、とを備え、前記第1磁性体は、そのインダクタンス特性が異なるものが複数あり、前記演算部は、前記電流検出部で検出された前記磁気回路を流れる所定の電流値におけるインダクタンス特性値を演算し、求めた前記インダクタンス特性値に基づいて異なる前記インダクタンス特性を持った前記第1磁性体の種類を特定することで前記搬送容器を区別することを特徴とする。


【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来に比べてヒューマンエラーを削減することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1に係る検体搬送装置を備えた検体分析システム全体の構成を示す平面図である。
図2】実施例1に係る検体搬送装置の構成図である。
図3】実施例1に係る検体搬送装置における磁性体のインダクタンスの電流重畳特性グラフである。
図4】実施例1に係る検体搬送装置のホルダ検出時の動作を示すフローチャートである。
図5】本発明に係るホルダの一例に関する構成図である。
図6】本発明の実施例2に係る搬送装置の構成図である。
図7】本発明の実施例3に係る搬送装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法の実施例を、図面を用いて説明する。
【0016】
なお、以下の実施例において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0017】
また、実施例を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は基本的に省略している。
【0018】
<実施例1>
本発明の検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法の実施例1について図1乃至図5を用いて説明する。
【0019】
最初に、検体搬送装置を備えた検体分析システムの全体構成について図1を用いて説明する。図1は本発明の実施例1に係る検体搬送装置を有した検体分析システム全体の構成を示す平面図である。
【0020】
図1において、本実施例1における検体分析システム100は、血液、尿などの検体の成分を自動で分析するシステムである。
【0021】
検体分析システム100の主な構成要素は、検体投入部101、検体収納部102、遠心処理部103、開栓処理部104、子検体容器生成処理部105、分注処理部106、閉栓処理部107、分析処理部108、検体搬送部109、および制御部110である。
【0022】
検体投入部101は、検体が収容された検体容器201を検体分析システム100内に投入するためのユニットである。また検体投入部101内には、検体認識部、栓体検知部、および検体ホルダ認識部(いずれも、図示の都合上省略)が設置されており、搬送される検体容器201(図2参照)の容器種別、容器の栓体の形状、および検体容器201が架設されたホルダ202(図2参照)に付与されているID情報を認識し、搬送される検体容器201を特定する情報を得る。
【0023】
なお、検体ホルダ認識部は、検体分析システム100内の各所に設けられており、各所の検体ホルダ認識部で検体容器201の所在を確認することが可能となる。
【0024】
遠心処理部103は、投入された検体容器201に対して遠心分離を行うためのユニットである。
【0025】
開栓処理部104は、投入された検体容器201から栓体を開栓処理するためのユニットである。
【0026】
子検体容器生成処理部105は、投入された検体容器201に収容された検体を次の分注処理部106にて分注するために必要な別の検体容器201の準備し、バーコード等を貼り付けるためのユニットである。
【0027】
分注処理部106は、未遠心もしくは遠心処理部103にて遠心分離された検体を、分析処理部108などで分析するために、子検体容器生成処理部105で準備した別の検体容器201に検体を小分けするためのユニットである。
【0028】
閉栓処理部107は、栓体を開栓された検体容器201や小分けされた検体容器201に栓体を閉栓処理するためのユニットである。なお、検体容器201の閉栓に用いる栓体の種類に応じて、閉栓処理部107が2つ以上備わる検体分析システム100の構成も可能である。
【0029】
分析処理部108は、検体分析システム100内の各処理部で処理された検体を移送し、検体の成分の定性・定量分析を行うためのユニットである。このユニットにおける分析項目は特に限定されず、生化学項目や免疫項目を分析する公知の自動分析装置の構成を採用することができる。更に、複数設ける場合に、同一仕様でも異なる仕様でもよく、特に限定されない。
【0030】
検体収納部102は、閉栓処理部107で閉栓された検体容器201を収納するユニットである。
【0031】
検体搬送部109は、検体投入部101から投入された検体容器201や分注処理部106において分注された小分けされた検体容器201を、遠心処理部103や分注処理部106、分析処理部108などの検体分析システム100内の各部へ移送する機構である。また検体搬送部109は、遠心処理部103や分注処理部106、分析処理部108などの各部内の所定の動作を行う各機構部への搬送にも用いられる。
【0032】
これにより、検体投入部101から投入された検体容器201が架設されたホルダ202が検体搬送部109を経由して所定の前処理ユニットへ搬送され、その後で分析処理部108へ搬送される。
【0033】
制御部110は、検体分析システム100内の各部や各部内の各機構の動作を制御するとともに、分析処理部108での測定データの解析を行う部分であり、液晶ディスプレイ等の表示機器や入力機器、記憶装置、CPU、メモリなどを有するコンピュータで構成される。制御部110は上述の各部や各機構との通信により、ホルダ202のID情報から検体が検体分析システム100内での所在を確認することが可能である。
【0034】
制御部110による各機器の動作の制御は、制御部110内の記憶装置に記録された各種プログラムに基づき実行される。
【0035】
なお、制御部110で実行される動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていても良い。
【0036】
なお、図1の例で示す検体搬送部109は、以下に説明する本発明の検体搬送装置が複数組み合わされて構成される場合について説明しているが、本発明の検体搬送装置は、以下に説明する検体搬送装置のみで構成されても、以下に説明する演算部210を備えていない検体搬送装置と以下に説明する検体搬送装置とを組み合わせた構成であってもよく、検体搬送部109は本発明の検体搬送装置を少なくとも1つ以上備えていればよい。
【0037】
また、上記の図1では、検体分析システム100が検体前処理用の検体投入部101等の各種前処理ユニットを備えている場合について説明したが、前処理用の各ユニットを備えていないシステム(複数の分析処理部108を検体搬送装置で接続したシステム)とすることができる。
【0038】
また、本発明は、検体分析システム100から分析処理部108を省略した検体前処理システムのうち、各ユニットを接続する搬送装置に対しても適用することができる。
【0039】
次に図2により、本発明の実施例1に係る検体搬送装置の構成について説明する。図2は本発明の実施例1に係る検体搬送装置の構成図である。
【0040】
図2において、検体が収容された検体容器201が架設されたホルダ202は、検体搬送装置中に複数設けられている。複数のホルダ202の各々の底面部分には、材質、密度、形状のうち少なくともいずれかが異なることによりインダクタンス特性が異なっている磁性体203が設けられている。
【0041】
磁性体203は、例えばネオジムやフェライトなどの永久磁石で構成されるが、その他の磁石および軟磁性体でも構成でき、それらを適宜組み合わせたものとすることができる。
【0042】
なお、検体搬送装置中のホルダ202の磁性体203のすべてのインダクタンス特性が異なっている必要はなく、ある特定の範囲内の仕様のインダクタンス特性とした群と、その群とは明確にインダクタンス特性が異なるある特定の範囲内に収まる仕様とした群と、少なくとも2種類の範囲に分けられていればよい。
【0043】
また、ホルダ202の下面に磁性体203が設けられている必要はないが、電磁搬送の搬送力の及ぶ範囲の観点から、下面に設けられていることが望ましい。
【0044】
磁性体203を有するホルダ202は、搬送面204の上を滑るように移動する。その搬送力を生成するために、搬送面204の下部には、円柱状のコア205、およびそのコア205の外周に巻かれた巻線206で構成される磁極207が複数設けられている。
【0045】
磁極207には、磁極207に対して所定の電圧を印加することで所定の電流を巻線206に流す駆動部208が接続されている。本実施例では、図示の都合上省略した他の磁極207についても同様に駆動部208が接続されている。
【0046】
駆動部208によって電圧が印加された磁極207は電磁石として働き、搬送面204上にあるホルダ202に有する磁性体203を引き付ける。磁極207によってホルダ202を引き付けた後に、磁極207への駆動部208より電圧印加を止め、磁極207と隣り合う異なった磁極に前述と同様にして駆動部208より電圧を印加することで、隣り合った磁極にホルダ202に有する磁性体203を引き付ける。
【0047】
この手順を隣り合うすべての磁極207で繰り返すことによって、ホルダ202が搬送面204の上を移動すること、すなわち磁性体203が設けられているホルダ202に保持された検体容器201内に収容された検体を目的地まで搬送する。
【0048】
この搬送中の磁極207の巻線206を流れる電流は、電流検出部209によって検出される。この電流検出部209により、磁極207の巻線206に電流を供給する際に流れる電流値を検出する電流検出ステップが実行される。電流検出部209で検出された磁極207の巻線206を流れる電流は、演算部210に送られ数値化処理される。
【0049】
本実施例においては、電流検出部209は、異なるホルダ202の各々が同一の領域内に存在する際に、より好適には、異なるホルダ202の各々が同一の領域内に停止している際に電流値を検出することが望ましい。しかしながら、搬送中であってもよい。搬送中においても、異なるホルダ202の各々が同一の領域内に存在する際に電流値を検出することが望ましい。
【0050】
なお、同一の範囲にあることを特定する手段は、ホール素子などの公知の手段や、様々な手段を用いることができる。
【0051】
演算部210は、ホルダ202の位置情報や速度情報、重量情報等の各種情報を用いて、各々の巻線206に流す電流を演算し、各々の駆動部208に指令信号を出力する。駆動部208はその指令信号に基づいて対応する巻線206に電圧を印加する。
【0052】
また、本実施例の演算部210は、電流検出部209で検出された磁極207を流れる所定の電流値に基づいてホルダ202を区別する処理を実行する。より具体的には、電流検出部209で検出された磁極207を流れる所定の電流値におけるインダクタンス特性値403A,403B(図3参照)を演算し、求めたインダクタンス特性値403A,403Bに基づいて異なるインダクタンス特性を持った磁性体203の種類を特定することでホルダ202を区別する処理を実行する。すなわち、この演算部210により演算ステップが実行される。
【0053】
以下、図3により、本発明に係るホルダ202側の磁性体203のインダクタンスの電流重畳特性について説明する。図3は本実施例に係る磁性体203のインダクタンスの電流重畳特性グラフである。
【0054】
電流重畳特性とは、直流電流を流すと磁性体が磁気飽和に近づくことでインダクタンス特性値が低下する特性のことであり、流す電流を増やすことによってインダクタンス特性値は低下していく。
【0055】
ホルダ202に含まれる磁性体203は、材料や形状などにより、図3に示すように特定の電流重畳特性を示すインダクタンス波形401A、あるいはインダクタンス波形401Bを取り、特定の電流値402におけるインダクタンス波形401Aの値であるインダクタンス特性値403A、あるいはインダクタンス波形401Bの値であるインダクタンス特性値403Bが演算部210に記憶されている。
【0056】
そして、所定の閾値404をこのインダクタンス特性値403A,403Bを区別できる範囲に設定することで、磁性体203の違いを区別し、ホルダ202をホルダ種別Aおよびホルダ種別Bに区別することができる。これを利用して、ホルダ202の種別(一般検体用、緊急検体用、標準試料用、精度管理試料用等)を識別したり、ホルダ202に架設された検体容器201の種別(一般検体、緊急検体、標準試料、精度管理試料等)を識別したりする。
【0057】
この演算部210は、CPUやメモリ、インターフェイス等を備えたコンピュータやFPGA(Field-Programmable Gate Array)にプログラムを読み込ませて計算を実行させることで実現できる。これらのプログラムは各構成内の内部記録媒体や外部記録媒体(図示省略)に格納されており、CPUによって読み出され、実行される。
【0058】
なお、動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていても良い。更には、各種プログラムは、プログラム配布サーバや内部記録媒体や外部記録媒体から各装置にインストールされてもよい。
【0059】
また、駆動部208等と独立している必要はなく、2つ以上を一体化,共通化して、処理のみを分担してもよい。また、少なくとも一部の構成が有線もしくは無線のネットワークを介して接続されているものとすることができる。
【0060】
次に、本実施例に係る検体を搬送している際の検体搬送装置のホルダ検出動作について図4を参照して説明する。図4は本発明の実施例1に係る搬送装置のホルダ検出時の動作を示すフローチャートである。
【0061】
図4に示すように、まず、検体分析システム100の検体搬送部109により検体が収容された検体容器201を保持するホルダ202の搬送を開始する(ステップS301)。
【0062】
その検体搬送動作中において、図2で示した電流検出部209により巻線206を流れる電流を検出する構成を取る磁極207までホルダ202を搬送する(ステップS302)。
【0063】
所定の磁極207の上部にホルダ202が搬送された後は、磁極207に駆動部208より所定の電圧を印加する(ステップS303)。
【0064】
ステップS303において印加した所定の電圧により磁極207の巻線206を流れる電流値を電流検出部209にて検出し、演算部210に送る(ステップS304)。
【0065】
演算部210の記憶装置には、あらかじめ磁極207の巻線206を流れる電流値と、電流値に対応したホルダ202の磁性体203毎のインダクタンス特性値との関係が記録されており、電流検出部209にて検出した電流値より磁極207の上部に搬送されたホルダ202の磁性体203のインダクタンス特性値を検出する(ステップS305)。
【0066】
また、演算部210において、ステップS304で検出された電流値より、磁性体203を含んだホルダ202のインダクタンス特性値が所定の閾値を超えているか否かを判別する(ステップS305)。
【0067】
ステップS305において、ホルダ202のインダクタンス特性値が閾値を超えていると判断された場合、このホルダ202を「ホルダ種別A」と区分する(ステップS306)。ホルダ種別Aと区別されたホルダ202を、ホルダ種別Aの所定のホルダ待機場所まで搬送する(ステップS307)。
【0068】
一方でステップS305において演算部210でホルダ202のインダクタンス特性値が所定の閾値を超えていないと判断された場合、このホルダ202を「ホルダ種別B」と区別する(ステップS309)。ホルダ種別Bと区別されたホルダ202を、ホルダ種別Bの所定のホルダ待機場所まで搬送する(ステップS307)。
【0069】
ホルダ種別Aのホルダ待機位置へ移動すること、あるいはホルダ種別Bのホルダ待機位置へ移動することによってホルダ202の識別が終了し、ホルダ202に対してオペレータによる検体容器201の架設作業などが行なわれ、通常の搬送動作が継続される(ステップS308)。
【0070】
なお、図3図4では、磁性体203のインダクタンス特性値が2種類の場合、つまりホルダ種別が種別Aと種別Bの2種類の場合を述べたが、ホルダ種別が3種類以上の場合においても同様にホルダ判別を行う処理を繰り返すことで3種類以上のホルダ種別を検体搬送装置で運用することが可能である。
【0071】
この場合は、ホルダ202に含まれる磁性体203に応じたインダクタンス特性値に対する閾値を演算部210に複数記憶しておき、図4のステップS305において、複数の閾値に対する判別を実施することにより、複数のホルダ種別へホルダ202を区別する。
【0072】
図4に示す処理を繰り返すことにより、インダクタンス特性値によって区別されたホルダ202をそれぞれ所定の場所に区別した状態で待機させておくことができる。これにより、例えばオペレータがホルダ202に一般検体の検体容器201を架設する場合において、ホルダ種別Aあるいはホルダ種別Bなどに区別された一般検体用のホルダ202を、所定の待機場所から一般検体が収容された検体容器201をホルダ202に架設する場所へと搬送することによって、オペレータが一般検体用のホルダ202とは異なったホルダに誤って一般検体の検体容器201を架設することを従来に比べて避けることが可能となる。
【0073】
また、同様にホルダ202を区別することによって、例えば迅速な搬送および分析処理を要求される緊急検体を搬送する場合において、一般検体用のホルダ202とは異なる、検体搬送部109上も設ける緊急検体用のホルダ202専用の搬送路を搬送させるなどといったことも可能となり、より迅速な搬送動作を行うことができる。
【0074】
次に、ホルダ202の構造について説明する。図5は本発明に係るホルダの一例に関する構成図である。
【0075】
本発明では、ホルダ202に含まれる永久磁石などの磁性体203のインダクタンス特性値によりホルダ種別を判別するものであるため、ホルダ202自体の構造は必ずしも1つの検体容器201を架設する構造に限らず、複数の検体容器201を架設できる構造でも良い。
【0076】
例えば、図2に示したように1本の検体容器201を架設するタイプや、図5に示すように、図2に示したホルダ202が2つ以上連なった構造のホルダ202Aを用いることができる。
【0077】
このホルダ202Aの構造によれば、多数の分析項目などで多量の検体が必要とされる測定において、同一のホルダ情報で2つ以上の検体容器201と架設することが可能となる。これにより従来は別々のホルダ202に検体容器201をそれぞれ架設して運用していた場合に比べて、従来の別々のホルダ202の情報と、検体容器201の情報を整合させていた運用などを低減することが可能となり、検体損失や検体取り違えなどの誤動作を従来に比べて低減することができる。
【0078】
また、検体容器201を1本、あるいは2本保持するホルダ202,202A以外にも、検体容器201を3本以上保持する検体ラックを用いることができる。
【0079】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0080】
上述した本発明の実施例1の検体搬送装置は、検体が収容された検体容器201が架設されたホルダ202に設けられている磁性体203と、コア205、およびコア205の外周側に巻かれている巻線206を有する磁極207と、磁極207の巻線206に電流を供給する駆動部208と、磁極207に流れる電流値を検出する電流検出部209と、電流検出部209で検出された磁極207を流れる所定の電流値に基づいてホルダ202を区別する演算部210と、とを備え、磁性体203は、そのインダクタンス特性が異なるものが複数あり、演算部210は、電流検出部209で検出された磁極207を流れる所定の電流値におけるインダクタンス特性値403A,403Bを演算し、求めたインダクタンス特性値403A,403Bに基づいて異なるインダクタンス特性を持った磁性体203の種類を特定することでホルダ202を区別する。
【0081】
これによって、電磁アクチュエータによる搬送方式において、搬送に必須なホルダ202側の磁性体203を用いて検体容器201が架設されるホルダ202の種別の判定を行うことができるようになり、従来に比べて種別の判断を行う材料を増やすことができる。このため、装置および検体搬送装置として、検体ホルダ種別をより高い精度で自動で判断することが可能となり、ユーザによる識別作業を減らす、あるいは無くすことができる。したがって、ホルダ202が誤った位置へ搬送されることをより抑制することができることから、ユーザの作業効率の更なる向上や、ヒューマンエラーの更なる削減などの効果が得られる。
【0082】
特に、1本ホルダは5本ラック等に比べて運用状況に応じたフレキシブルな搬送が可能であるが、本発明によればホルダ202の種別の判断手段が増えるため、従来より高精度にホルダ202の種別を識別できることから、従来に比べてエラーを低減する効果が大きい、といえる。
【0083】
更に、検体前処理システム120や検体分析システム100の実際の運用上の面では、検体前処理システム120による処理後、検体分析システム100による分析後の空ホルダが滞留するバッファや検体収納部102の直前に、上述のホルダ202の種別の区別を行うことが可能な検体搬送装置を配置すると、上述の高精度なホルダ種別を区別することの効果をより大きく受けることができる。
【0084】
また、磁性体203は、材質、密度、形状のうち少なくともいずれかが異なることによりインダクタンス特性が異なるため、磁性体203側で簡易にインダクタンス特性を異ならせることができ、ホルダ202の区別の精度をより簡易な構成で実現することができる。
【0085】
更に、電流検出部209は、異なるホルダ202の各々が同一の領域内に存在する際に電流値を検出すること、特に異なるホルダ202の各々が同一の領域内に停止している際に電流値を検出することにより、インダクタンス特性値403A,403Bを求める精度を高めることができるため、より正確にホルダ202の種別を区別することができる。
【0086】
<実施例2>
本発明の実施例2の検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法について図6を用いて説明する。図6は本発明の実施例2に係る検体搬送装置の構成図である。
【0087】
図6に示す本実施例の検体搬送装置は、複数の磁極207と、複数の磁極207の各々に対して個別に電圧を印加する駆動部208Aと、駆動部208Aにより印加された電圧により各々の磁極207の巻線206に流れる電流値を検出する複数の電流検出部209と、複数の電流検出部209で検出された電流値から、各々の磁極207におけるホルダ202の種別を区別する演算部210Aと、を備えている。
【0088】
その他の構成・動作は前述した実施例1の検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0089】
本発明の実施例2の検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法においても、前述した実施例1の検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0090】
また、複数の磁極207と、複数の電流検出部209と、少なくとも1以上の駆動部208と、少なくとも1以上の演算部210と、を備えたことにより、ホルダ202のインダクタンス特性値を取得する箇所を複数有しているため、ホルダ202の種類を区別するタイミングを増やすことができ、より搬送ミスの生じにくい構造とすることができる。
【0091】
また通常の検体搬送動作に必要な磁極207および駆動部208の構造は実施例1と同じため、ホルダ202の搬送動作中においてもホルダ202の区別を高い精度で行うことも可能となる。そのため、例えば所定の搬送動作が完了して、所定のホルダ待機場所、あるいは新たに検体容器201の架設する場所まで戻る搬送動作中のホルダ202においても、戻りの搬送動作中にホルダ202を区別することが可能となり、搬送準備動作時間の短縮に寄与できる。
【0092】
なお、本実施例においては、演算部210Aや駆動部208Aは複数であってもよい。
【0093】
<実施例3>
本発明の実施例3の検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法について図7を用いて説明する。図7は本発明の実施例3に係る検体搬送装置の構成図である。
【0094】
図7に示す本実施例の検体搬送装置は、実施例2の検体搬送装置のうち、ある特定の磁極207Bが、コア205Bおよび巻線206Bの形状が他の磁極207のコア205および巻線206と異なる構成の回路となっている。この磁極207Bは検体搬送装置の中で少なくとも1つ以上存在するものとすることができ、その数は特に限定されない。
【0095】
なお、特定の磁極207Bのコア205Bおよび巻線206Bのうちいずれか一方でも、形状が他の磁極207のコア205および巻線206のうちいずれかと異なる構成になっていればよい。また、形状のみならず、材質、密度、形状のうちいずれか一つ以上が他の磁極207のコア205および巻線206のうちいずれかと異なる構成となっていればよい。
【0096】
本実施例の演算部210Bでは、異なる構成を持つ隣り合った磁極207において、それぞれインダクタンス特性値の閾値を設定する。そのうえで、特定の磁極207Bに流れる電流を検出する電流検出部209Bや他の磁極207に流れる電流を検出する電流検出部209からの検出値に基づいて、磁性体203の異なるインダクタンス特性をそれぞれ演算する。これにより、ホルダ202の通常搬送動作中において、磁極207,207Bの上部をホルダ202が通過する際に検出されたインダクタンス特性値を隣り合った磁極207,207Bの間で比較する。
【0097】
特定の磁極207Bや他の磁極207に電圧を印加する駆動部208Bの構成は実施例2の駆動部208Aと同じである。
【0098】
その他の構成・動作は前述した実施例1の検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0099】
本発明の実施例3の検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法においても、前述した実施例1の検体搬送装置、検体分析システム、および検体前処理システム、並びに検体の搬送方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0100】
また、磁極207Bは、コア205,205Bおよび巻線206,206Bのうち少なくともいずれか一方の材質、密度、形状のうちいずれか一つ以上が異なる構成の回路を有しており、演算部210Bは、異なる構成の磁極207,207Bにより検出された、磁性体203の異なるインダクタンス特性をそれぞれ演算することにより、より詳細な範囲でホルダ種別を区別することが可能となる。また、搬送動作に関係の無い特定のホルダ識別のみを行う場所としても設けることが可能となり、オペレータが通常使用において手動でホルダ202の識別を行い、検体容器201を架設する場合などに用いることができる。
【0101】
なお、図2および図6に示した構成と同様に、図7で示した異なる磁極207Bについても、通常の搬送動作に用いる磁極として使用できることは言うまでもない。
【0102】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0103】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0104】
100…検体分析システム
101…検体投入部
102…検体収納部
103…遠心処理部
104…開栓処理部
105…子検体容器生成処理部
106…分注処理部
107…閉栓処理部
108…分析処理部
109…検体搬送部
110…制御部
120…検体前処理システム
201…検体容器
202,202A…ホルダ(搬送容器)
203…磁性体(第1磁性体)
204…搬送面
205,205B…コア(第2磁性体)
206,206B…巻線
207,207B…磁極(磁気回路)
208,208A,208B…駆動部
209,209B…電流検出部
210,210A,210B…演算部
401A,401B…インダクタンス波形
402…電流値
403A,403B…インダクタンス特性値
404…閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7