(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】製造方法及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20240926BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240926BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20240926BHJP
G02B 5/10 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G01B11/24 A
G03F7/20 521
G03F7/20 503
G02B5/08 C
G02B5/08 A
G02B5/10 A
G02B5/10 C
(21)【出願番号】P 2022523060
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2020078193
(87)【国際公開番号】W WO2022073610
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン カーラー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ ローリング
(72)【発明者】
【氏名】トーマス モンツ
(72)【発明者】
【氏名】ハンズ マイケル ステパン
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-095993(JP,A)
【文献】特開2010-243371(JP,A)
【文献】特開2008-115445(JP,A)
【文献】特開2000-283500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G03F 7/20
G02B 5/08
G02B 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決定可能な測定環境(39)で光学素子(2、52、61)の表面形状を測定する方法であって、前記光学素子(2、52、61)は基板(19、53、64)及び反射面(20、54、62)を有する本体(18)を有し、冷媒(22)を収容する少なくとも1つの冷却流路(21、45、46、47、56、57、58、59)が前記基板(19、53、64)に形成される方法において、
a)冷却流路圧力を記録するステップと、
b)測定環境圧力を記録するステップと、
c)前記冷却流路圧力及び前記測定環境圧力に基づき実差圧を求めるステップと、
d)前記実差圧を予め決定可能な目標差圧と比較するステップと
e)前記実差圧と前記目標差圧との偏差を監視するステップであり、予め決定可能な限界値より大きい偏差が検出された場合に該偏差が前記予め決定可能な限界値以下になるように前記冷却流路圧力を適合させるステップと、
f)前記偏差が前記予め決定可能な限界値以下である場合に前記表面形状を測定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記冷却流路圧力は、前記偏差が10mbar未満、特に1mbar未
満であるように適合されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、液体又は気体の冷媒(22)が前記冷却流路(21、45、46、47、56、57、58、59)に供給され、前記冷却流路圧力を適合させるために前記冷媒(22)に対する圧力が増減されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記冷媒(22)に対する前記圧力は、油圧又は空気圧で増減されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の方法において、前記冷媒(22)は、予め決定可能な流速で前記冷却流路(21、45、46、47、56、57、58、59)を流れることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、前記目標差圧は、予め決定可能な目標測定環境圧力及び予め決定可能な目標冷却流路圧力に応じて決定され、前記目標測定環境圧力は0.01mbar以上0.20mbar以下であり、前記目標冷却流路圧力は200mbar以上10,000mbar以下であり、特に、前記予め決定可能な目標測定環境圧力は0.03mbar以上0.1mbar以下であり、前記目標冷却流路圧力は500mbar以上1,000mbar以下であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記予め決定可能な目標測定環境圧力は0.05mbarであり、前記予め決定可能な目標冷却流路圧力は500mbarであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項3~5のいずれか1項に記載の方法において、前記冷媒(22)は、該冷媒(22)の屈折率が前記光学素子(2、52、61)の前記基板(19)の屈折率と少なくとも実質的に等しいように選択されることを特徴とする方法。
【請求項9】
光学素子(2、52、61)の表面形状を検査する測定装置(1)であって、前記光学素子(2、52、61)は基板(19、53、64)及び反射面(20、54、62)を有する本体(18)を有し、冷媒(22)を収容する少なくとも1つの冷却流路(21、45、46、47、56、57、58、59)が前記基板に形成される測定装置(1)において、
i)測定光源(4)と、
ii)該測定光源(4)が発生させた測定光から得られて前記光学素子(2、52、61)へ指向された被検波と参照波との干渉重畳により、前記光学素子(2、52、61)の表面の少なくとも部分表面の検査を実行するための干渉計(5)と、
iii)冷媒(22)を貯蔵する少なくとも1つの制御可能な冷媒溜め(6)と、
iv)目的通りの使用時に請求項1~8のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成された制御デバイス(44)と
を備えた測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の測定装置において、前記冷媒(22)は、検査対象の前記光学素子(2、52、61)の前記基板(19、53、64)の屈折率と少なくとも実質的に等しい屈折率を有することを特徴とする測定装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の測定装置において、前記冷媒(22)は、有機物質又は無機物質の水溶液であることを特徴とする測定装置。
【請求項12】
請求項11に記載の測定装置において、前記
有機物質
又は前記無機物質は、水と混合されると均一相を形成することを特徴とする測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定環境で光学素子の表面形状を測定する方法であって、光学素子は基板及び反射面を有する本体を有し、冷媒を収容する少なくとも1つの冷却流路が基板に形成される方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、光学素子の表面形状を測定する測定装置、光学素子を製造する方法、及び投影露光装置に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロリソグラフィは、集積回路又はLCD(液晶ディスプレイ)等の微細構造コンポーネントの製造に用いられる。マイクロリソグラフィプロセスは、照明デバイス及び投影レンズを備えたいわゆる投影露光装置で実行される。この場合、照明デバイスにより照明されたマスク(レチクル)の像を、投影レンズにより、感光層(フォトレジスト)で被覆されて投影レンズの像平面に配置された基板(例えばシリコンウェーハ)に投影することで、マスク構造を基板の感光コーティングに転写するようにする。
【0004】
EUV(極紫外)領域用に設計した投影レンズでは、すなわち例えば約13nm又は約7nmの波長では、適当な光透過屈折材料が利用可能でないことにより、特にミラーを結像プロセス用の光学コンポーネントとして用いる。例えば特許文献1から既知のようなEUV用に設計した通常の投影レンズは、例えばNA=0.55程度の像側開口数(NA)を有することができ、(例えば弓形の)物体視野を像平面又はウェーハ面に結像させることができる。像側開口数(NA)の増加には、投影露光装置で用いるミラーの所要ミラー面積の拡大が通常は伴う。これはまた、厳しい課題となるのが光学素子の表面形状の加工だけでなく検査又は測定でもあることを意味する。判定すべき光学素子の表面の所定の目標形状からの実際形状の偏差を、ここでは通常の専門用語に従って「形状誤差量」と称する。通常は、干渉測定法が高精度形状誤差量測定又は光学素子の表面形状の測定に用いられる。
【0005】
光学系、例えばそのような光学素子が用いられる投影露光装置の特にEUV動作での動作中に、動作中に用いられる使用光、特にEUV光が吸収される結果として光学素子が加熱されることも知られている。光学素子の加熱は特に、光学素子が熱変形、例えば膨張し、したがって光学素子を用いるシステムの光学性能が予め決定可能な仕様に対応しなくなるという問題をもたらす。
【0006】
光学素子の加熱を防止するように、動作中に光学素子で発生する熱を放散するための冷却概念が生み出された。既知の冷却概念は特に、冷媒を収容する少なくとも1つの冷却流路をそれ以外は中実の光学素子の本体又は基板に形成することにある。少なくとも1つのこのような冷却流路を有する光学素子は、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、及び特許文献8から既知である。
【0007】
少なくとも1つのこのような冷却流路を有する光学素子に関する課題は、当該光学素子の高精度干渉測定である。
【0008】
したがって、通常は光学素子が通常のEUV条件下で用いられる場合、特に真空条件下で用いられる場合に、測定条件下又はEUV条件とは異なる測定条件下での光学素子の測定中に生じる差圧とは異なる差圧が大気圧及び冷却流路圧力から生じるという問題がある。これらの異なる差圧は、EUV条件からEUV条件とは異なる測定条件への移行又はその逆の場合に、特に光学素子の表面の望ましくない変形につながる。したがって、このような測定条件下で測定された表面形状は、EUV動作中に形成される表面形状とは異なる。変形の望ましくない効果として、光学素子は、特に光学系のEUV動作時に、予め決定可能な仕様を満たさなくなるか又は満たすことができなくなる。例えば、波面が変形により不所望に影響を受け得るか、又は投影レンズの結像品質に不所望に影響を及ぼす迷光が発生する。
【0009】
さらなる問題は、基板の材料、及び特に通常は空気が充填される冷却流路が異なる屈折率を有することである。測定光での表面形状の測定時に、屈折率が異なることで、特に基板と冷却流路との間の境界面で反射された測定光の望ましくない後方反射が起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2016/0085061号明細書
【文献】国際公開第2012/126830号
【文献】米国特許第7,591,561号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2018 208 783号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2010 034 476号明細書
【文献】国際公開第2009/046955号
【文献】独国特許出願公開第10 2017 221 388号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2018 202 687号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上を踏まえて、本発明の目的は、上記問題を解決する、特に少なくとも1つの冷却流路を有する光学素子の表面形状を確実に高精度で測定できる、方法及び測定装置を提供することである。別の目的は、確実に高精度で測定できる光学素子の製造方法を提供すること、及び当該光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、独立特許請求項の特徴により達成される。
【0013】
本発明によれば、光学素子の表面形状を測定する方法は、a)冷却流路圧力を記録するステップと、b)測定環境圧力を記録するステップと、c)冷却流路圧力及び測定環境圧力に基づき実差圧を求めるステップと、d)実差圧を予め決定可能な目標差圧と比較するステップと、e)実差圧と目標差圧との偏差を監視するステップであり、予め決定可能な限界値より大きい偏差が検出された場合に偏差が予め決定可能な限界値以下になるように冷却流路圧力を適合させるステップと、f)偏差が予め決定可能な限界値以下である場合に表面形状を測定するステップとにより実行される。本発明による方法には、実差圧が特に単純な方法で、特に1つのパラメータすなわち冷却流路圧力の適合により、目標圧力に適合可能又は調整可能であるという利点がある。したがって、任意に予め決定可能な目標差圧下で形成される目標表面形状を、実差圧の対応する適合により特に容易に作成することができ、続いて測定することができる。この例では、「測定環境」は、好ましくは予め決定可能な測定環境圧力があり且つ光学素子が測定及び/又は作動される環境を意味する。
【0014】
一発展形態によれば、冷却流路圧力は、偏差が10mbar未満、特に1mbar未満、好ましくは0.5mbar未満であるように適合される。ここでの利点は、実差圧が目標差圧に特に精密に適合又は調整されることである。したがって、測定された表面形状又は実差圧下で形成される表面形状は、目標差圧下で形成される表面形状に特に精密に対応する。好ましくは、冷却流路圧力は、偏差が0に等しいように適合される。
【0015】
一発展形態によれば、気体又は液体の冷媒が冷却流路に供給され、冷却流路圧力を適合させるために冷媒に対する圧力が増減される。ここでの利点は、冷却流路圧力が、冷媒自体に対する圧力の増減により特に単純な方法で適合されるか又は適合可能であることである。
【0016】
一発展形態によれば、冷媒に対する圧力は、油圧又は空気圧で増減される。これには、冷却流路圧力が特に容易に適合されるという利点がある。制御可能な油圧ポンプ又は空気ポンプを用いて、冷媒に対する圧力を油圧又は空気圧で増減させることが好ましい。代替として、適合は、制御可能な電気ポンプにより電子的に行われる。圧力の増減は特に、対応するポンプの送出量に応じて、例えば速度又は送出速度の適合により起こる。
【0017】
一発展形態によれば、冷媒は、予め決定可能な流速で冷却流路を流れる。予め決定可能な流速は、特にEUV条件下でのEUVリソグラフィ装置の動作中に冷媒が冷却流体を流れる流速と実質的に同一であることが好ましい。これにより、流速に関する測定がEUV条件下で行われることが確実となる。追加として又は代替として、流速は、冷却流路の幾何学的形状又は断面に応じて選択されることが好ましい。流速は、層流が冷却流路で形成されるように選択されることが好ましい。乱流及びそれによる光学素子の振動又は揺動の結果としての臨界圧力損失が、こうして回避される。さらに、冷媒の動粘度が、水の動粘度と少なくとも実質的に同じ、特に0.89mPa・s以上1.52mPa・s以下であるように選択又は設定されることが好ましい。
【0018】
一発展形態によれば、目標差圧は、予め決定可能な目標測定環境圧力及び予め決定可能な目標冷却流路圧力に応じて決定され、目標測定環境圧力は0.01mbar以上0.20mbar以下であり、目標冷却流路圧力は200mbar以上10,000mbar以下である。ここでの利点は、特にEUV条件下での光学素子の使用又は動作時に存在するか又は存在し得る複数の目標差圧を、予め決定可能又は選択可能な目標測定環境圧力及び目標冷却流路圧力に基づき決定可能又は設定可能であることである。したがって、測定対象の表面形状又は実差圧下で形成される表面形状は、特にEUV条件下で形成される表面形状に対応する。代替として、目標測定環境圧力は0.01mbar以上1,000mbar以下であることが好ましい。好ましくは、目標測定環境圧力は1,000mbarであり、目標冷却流路圧力は1,200mbar以上10,000mbar以下である。この場合、測定された表面形状又は実差圧下で形成される表面形状は、特に大気圧条件下で形成される表面形状に対応する。
【0019】
一発展形態によれば、予め決定可能な目標測定環境圧力は0.03mbar以上0.1mbar以下であり、目標冷却流路圧力は500mbar以上1,000mbar以下である。ここでの利点は、目標差圧が、特に狭く選択された目標測定環境圧力間隔及び目標冷却流路圧力間隔に基づき決定されることである。特に、この目標測定環境圧力間隔及び目標冷却流路圧力間隔から選択された目標差圧は、EUV条件下での光学素子の使用又は動作時に通常存在するような差圧に対応する。
【0020】
一発展形態によれば、予め決定可能な目標測定環境圧力は0.05mbarであり、予め決定可能な目標冷却流路圧力は500mbarである。利点は、この目標測定環境圧力及びこの目標冷却流路圧力に基づき、確定した目標差圧が予め決定されることである。特に、この確定した目標差圧は、EUV条件下での光学素子の使用又は動作時に通常存在するような差圧に対応する。したがって、測定された表面形状又は実差圧下で形成される表面形状は、EUV条件下で形成される表面形状に特に精密に対応する。
【0021】
本発明は、光学素子の表面形状を測定する測定装置であって、光学素子は基板及び反射面を有する本体を有し、冷媒を収容する少なくとも1つの冷却流路が基板に形成される、測定装置において、i)測定光源と、ii)測定光源が発生させた測定光から得られて光学素子へ指向された被検波と参照波との干渉重畳により、光学素子の表面の少なくとも部分表面の測定を実行可能である干渉計と、iii)冷媒を貯蔵する少なくとも1つの制御可能な冷媒溜めと、iv)目的通りの使用時に請求項1~8のいずれか1項に記載の方法を実行するよう設計された制御デバイスとを備えた測定装置にも関する。既に述べた利点が、これにより与えられる。さらに他の利点及び好ましい特徴は、上記説明及び特許請求の範囲から明らかである。
【0022】
測定装置の一発展形態によれば、冷媒は、検査対象の光学素子の基板の屈折率と少なくとも実質的に等しい屈折率を有する。これにより得られる利点は、特に妨害反射を最小化した、光学素子の表面形状の特に精密な測定又は測定性である。屈折率の差に起因して特に基板と冷却流路との間の境界面で反射された測定光の望ましくない後方反射は、冷媒の屈折率の適当な選択により防止される。特に、望ましくない後方反射との反射面で反射された測定光の干渉が、こうして回避される。さらに、冷却流路、特に冷却流路の壁は、散漫散乱効果を確保するように予め決定可能な粗さを任意に有する。散漫散乱は、妨害反射を低減する。好ましくは、冷媒の動粘度は、水の動粘度と少なくとも実質的に同じ、特に0.89mPa・s以上1.52mPa・s以下である。
【0023】
一発展形態によれば、冷媒は、有機物質又は無機物質の水溶液である。ここでの利点は、特に物質の予め決定可能な濃度に応じて屈折率を可変に設定可能であることである。物質は、例えば、糖又はヨウ化カリウムである。
【0024】
一発展形態によれば、物質は、水と混合されると均一相を形成する。「均一相」は、水中の物質の分布が全ての点で同じであることを意味する。これにより、冷媒の屈折率が冷媒を供給される冷却流路の全ての点で同じであることが特に確実となる。
【0025】
本発明はさらに、光学素子を製造する方法であって、光学素子は基板及び反射面を有する本体を有し、冷媒を収容する少なくとも1つの冷却流路が基板に形成され、冷却流路は切削加工プロセス、特に穿孔により、且つ/又はエッチングプロセスにより作製される方法に関する。基板及び反射面は、特に一体に形成される。
【0026】
本発明によれば、ミラー体が反射面を有し、基板と反射面を有するミラー体とは接合プロセス、特に接着により相互に接続される。この場合、冷却流路は、特にエッチングプロセス、研削、及び/又はフライス加工により基板に作製される。これによれば、基板及び反射面は一体に形成されない。ミラー体及び基板は、同じ材料でできていることが好ましい。代替として、冷却流路は、特に研削、フライス加工、及び/又はエッチングにより反射面を有するミラー体に作製される。この場合、基板が少なくとも部分的に研磨されることが好ましいので、基板と反射面を有するミラー体とは、接合プロセスにより特に有利に相互に接続され得るか又は接続可能である。
【0027】
本発明によれば、接合プロセスは、反射面及び接合の結果として反射面と基板との間に形成される境界層が少なくとも部分的に相互に整合一致しないように行われる。「一致しない」とは、反射面上の予め決定可能な点における第1接平面と境界層上の予め決定可能な点における第2接平面とが相互に平行に位置合わせされないことを意味する。換言すれば、第1接平面の法線ベクトル及び第2接平面の法線ベクトルは、相互から0より大きな偏差を有する。反射面上の予め決定可能な点及び境界層上の予め決定可能な点は、直線に沿って配置され、直線は、光学素子の光軸と平行に位置合わせされる。ここでの利点は、反射面で反射された測定光及び境界層で反射された測定光の重畳が特に効果的に回避されることである。したがって、境界層に入射する測定光ビームは、反射面に入射する測定光ビームの反射角とは異なる反射角を有する。これは特に、形成される境界層が基板又は反射面を有するミラー体の屈折率とは異なる屈折率を有する場合に有利である。反射面及び境界層は、それぞれを平面状にする、すなわち湾曲させないか、又は湾曲させることができる。
【0028】
一発展形態によれば、193nm以上633nm以下、特に532nm以上633nm以下の波長を有する光を反射するよう設計された層が、反射面に少なくとも部分的に施される。これには、測定光、すなわち193nm以上633nm以下の波長を有する光により光学素子を高精度で測定可能であるという利点がある。さらに、この層又は測定層は、接合プロセスの結果として反射面と基板との間に形成される境界層に測定光ビームが到達する又は到達可能となることを防止する。層は、少なくとも1つのケイ素層及び/又は少なくとも1つのクロム層を有することが好ましい。有利なのは、反射層がイオンビーム形状修正により加工され得ることである。
【0029】
一発展形態によれば、基板は、予め決定可能な波長、特に193nm以上633nm以下、特に532nm以上633以下の光を吸収するように形成された材料を含む。基板の材料は、吸収促進材料をドープされることが好ましい。好ましくは、基板及び反射面は一体に形成される。基板と反射面を有するミラー体とが接着により相互に接続される場合、ミラー体は、予め決定可能な波長の光を吸収するよう設計された材料を含むことが好ましい。
【0030】
さらに、本発明は、半導体リソグラフィ用の投影露光装置であって、i)照明デバイスと、ii)投影レンズと、iii)基板及び反射面を有する本体を有する少なくとも1つの光学素子であり、冷媒を収容する少なくとも1つの冷却流路が基板に形成された光学素子とを備えた投影露光装置に関する。投影露光装置は、光学素子が請求項13~15のいずれか1項に記載の方法により製造されることを特徴とする。
【0031】
添付図面を参照して本発明を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】例示的な実施形態による測定装置の概略図を示す。
【
図2】例示的な第1実施形態による光学素子の概略図を示す。
【
図3】例示的な第2実施形態による光学素子の概略図を示す。
【
図4】例示的な第3実施形態による光学素子の概略図を示す。
【
図5】光学素子の表面形状を測定する方法を説明するフロー図を示す。
【
図6】EUVで動作するよう設計された投影露光装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、マイクロリソグラフィ投影露光装置の光学素子2、特にミラー3の表面形状を測定するための、特に干渉測定装置1の概略図を示す。測定装置1は、少なくとも1つの測定光源4(ここには図示せず)、干渉計5、及び冷媒溜め6を備える。
【0034】
測定光源4は、1つ又は複数の予め決定可能な波長、例えば193nm、532nm、及び/又は633nmの測定光又は測定光放射線を発生させる。測定光放射線は、球面波面を有する入力波8の形態で光導波路7の出射面から干渉計5に入る。
【0035】
干渉計5は、限定はされないが、ビームスプリッタ9、特に複素符号化計算機ホログラム(CGH)の形態の回折光学素子10、3つの反射素子12、13、14、測定対象の光学素子2、及び干渉計カメラ15を含む。干渉計5は、記載したものより少ないか又は多いコンポーネントを任意に含む。したがって、干渉計5は、2つ以下又は4つ以上の反射素子12、13、14、又は測定光源4も含み得る。
【0036】
測定光放射線又は入力波8は、ビームスプリッタ9を通過してからCGH11に入射する。透過時に、CGH11はその複素符号化に従って入力波8から合計4つの出力波を生成し、そのうち1つの出力波は、測定対象の光学素子2の表面の目標形状に適合した波面で被検波として光学素子2の表面に入射する。
【0037】
この例示的な実施形態によれば、CGH11は、透過時に入力波8から3つのさらなる出力波を生成し、そのそれぞれが反射素子12、13、14の1つに入射する。例示的な実施形態において、これらの反射素子12、13、14のうち、素子12及び13は平面ミラーとしてそれぞれ設計され、反射素子14は球面ミラーとして設計される。任意に設けられるシャッタを参照符号16で示す。CGH11は、測定対象の光学素子2で反射された被検波と参照波とを重畳させるためにも用いられ、参照波は、反射素子12、13、14で反射され、収束ビームとしてビームスプリッタ9に再度入射してこれにより干渉計カメラ15の方向に反射され、その際に接眼レンズ17を通過する。干渉計カメラ15は、干渉波により生成されるインターフェログラムを取得し、インターフェログラムから、光学素子2の実際形状又は表面形状が評価デバイス(図示せず)により判定される。
【0038】
この場合、光学素子2は、基板19及び反射面20を有する本体18を有し、気体又は液体の冷媒22を収容する少なくとも1つの冷却流路21(ここには図示せず)が基板19に形成される。基板19の材料は、例えば、石英ガラス等のガラス材料若しくはGlaswerke Schott製のZerodur(登録商標)等のガラスセラミック材料、又はCorning製のULE(登録商標)(超低膨張)ガラスである。波長546.1nmでは、石英ガラスの屈折率は1.45であり、ULE(登録商標)ガラスの屈折率は1.4828であり、Zerodur(登録商標)の屈折率は1.5447である。
【0039】
測定装置1は、冷媒22を貯蔵する冷媒溜め6を備える。好ましくは、測定装置1は、冷媒溜め6から冷媒22を送出するための、したがって冷媒22を冷却流路21に供給し且つ/又は冷媒22を加圧するための、冷媒溜め6に接続された制御可能な送出デバイス23、特にポンプ24をさらに有する。送出デバイス23は、油圧ポンプ、空気ポンプ、又は電気ポンプであることが好ましい。
【0040】
この場合、冷媒22は、冷媒溜め6に接続された供給ライン25を通して光学素子2に、特に冷却流路21に供給され、冷媒溜めに接続された排出ライン26を通して光学素子2から、特に冷却流路21から除去される。冷媒22は、冷媒溜め6から再度送出されることができるように、排出ライン26を通して冷媒溜め6に戻ることが好ましい。この場合、供給ライン25及び排出ライン26は送出ライン27を形成する。好ましくは、供給ライン25及び排出ライン26は、光学素子2にそれぞれ接続可能であり、特に着脱可能に接続するよう設計される。供給ライン25及び/又は排出ライン26は、予め決定可能な直径を有するホースとしてそれぞれ設計され得る。供給ライン25及び排出ライン26は、特に、測定装置1の動作中に、特に冷媒溜め6からの冷媒22の送出時に起こり得る揺動又は振動が減衰又は抑制されるように設計される。したがって、光学素子2は、冷媒溜め6からの冷媒22の送出中の揺動及び振動の影響を受けず、特に、光学素子2自体は、揺動及び振動を励起されない。
【0041】
振動を減衰するために、供給ライン25は、例えば、光学素子2とセンサ37、特に流量センサとの間、又は光学素子2と圧力記録デバイス35との間若しくは光学素子2と圧力調整デバイス28の出口側32との間で弛む又は緩むように配置される。供給ライン25を例えば光学素子2とセンサ37との間で弛むように配置しようとする場合、供給ライン25の長さ、特に光学素子2とセンサ37との間の供給ライン部88の長さは、弛みを確保するために光学素子2とセンサ37との間の距離より大きく選択される。揺動減衰のために、排出ライン26は、例えば、光学素子2と圧力記録デバイス36との間又は光学素子2と圧力調整デバイス34との間で弛む又は緩むように配置される。
【0042】
冷媒22は、200mbar以上10,000mbar以下の圧力又は冷却流路圧力が少なくとも1つの冷却流路21で形成されるように冷媒溜め6から送出されることが好ましい。冷媒22に対する圧力は、冷却流路圧力を増減させるか又は冷媒22を加圧するために増減される。圧力は、送出デバイス23の送出量の適合により、すなわち増減により、例えばポンプ24の送出速度の適合により適合されることが好ましい。冷媒22が送出ライン27、特に冷却流路21を流れる予め決定可能な流速又は体積流量も同様に、送出デバイス23の送出量の適合により設定されることが好ましい。
【0043】
冷却流路21で形成される予め決定可能な又は規定の冷却流路圧力の設定性又は設定を確保するために、供給ライン25は、少なくとも1つの制御可能な圧力調整デバイス28、特に2方向圧力調整弁29又は3方向圧力調整弁30を有することが好ましい。圧力調整デバイス28は、冷媒溜め6に割り当てられた入口側31と、光学素子2又は冷却流路21に割り当てられた出口側32とを有する。2方向圧力調整弁29及び3方向圧力調整弁30は、入口側圧力を予め決定可能な出口側圧力に変換するようそれぞれ設計されることが好ましい。特に、3方向圧力調整弁30は、入口側31の予め決定可能な圧力を超えた場合に開くよう設計されることが好ましく、その結果、出口側32の圧力が入口側31の圧力より低くなる。3方向圧力調整弁30は、オーバーフロー出口33を有することが好ましく、オーバーフロー出口33は、入口側31の予め決定可能な圧力を超えた場合に開いて冷媒を圧力調整弁28から排出させて冷媒溜め6へ戻すことができるように、冷媒溜め6に接続される。場合によっては、排出ライン26は、さらに別の制御可能な圧力調節デバイス34を有する。場合によっては、圧力調節デバイス28が光学素子2に直接接続可能であるか又は直接接続され、又は光学素子2が圧力調整デバイス28を有する。
【0044】
冷却流路圧力を記録するために、特に供給ライン25内の冷媒22の圧力を記録するために、圧力記録デバイス35、例えば圧力センサ又はマノメータが、圧力調整デバイス28と光学素子2、特に冷却流路21又は冷却流路21の入口側との間に配置されることが好ましい。場合によっては、追加の圧力記録デバイス36が、光学素子2、特に冷却流路21又は冷却流路21の出口側と追加の圧力調整デバイス34との間に設けられる。
【0045】
センサ37、特に流量センサが、冷却流路21内の冷媒22の流速又は体積流量を記録するために、圧力調整デバイス28と光学素子、2、特に冷却流路21又は冷却流路21の入口側との間に配置されることが好ましい。代替として、流速は、圧力記録デバイス35及び追加の圧力記録デバイス36により記録された圧力に応じて確認される。
【0046】
温度制御のために、特に冷媒22の冷却又は加熱のために、測定装置1は、冷媒溜め6に接続された温度制御デバイス83を任意に備える。冷媒22の動粘度は、温度及び圧力に応じて変わるので、冷媒22の温度は、冷媒22の動粘度が予め決定可能な動粘度、特に水の動粘度、好ましくは0.891mPa・s以上1.52mPa・s以下に対応するように制御されることが好ましい。場合によっては、冷媒22の温度は、冷媒温度が予め決定可能な温度、例えばEUVリソグラフィ装置の動作温度と少なくとも実質的に等しいように制御される。追加として又は代替として、冷媒22に対する圧力は動粘度を変えるよう適合される。冷媒22の温度を記録するために、測定装置1又は温度制御デバイス83は温度センサを有することが好ましい。
【0047】
この例示的な実施形態によれば、測定装置1は、内部空間38又は測定環境39を囲むハウジング40、特に真空チャンバ41内に配置される。少なくとも1つの制御可能な真空発生ユニット42、例えば真空ポンプが、内部空間38又は測定環境39で真空を発生させるためにハウジング40に割り当てられる。真空発生ユニット42は、0.01mbar以上、特に0.01mbar未満、且つ0.1mbar以下の全圧又は測定環境圧力でハウジング40内に真空を発生させるよう設計されることが好ましい。これにより、EUV動作真空内での特にEUVリソグラフィ装置と組み合わせた光学素子2の使用時に存在する圧力に対応する測定環境圧力で、光学素子2の表面形状が測定される又は測定され得ることが確実となる。代替として、表面形状は、測定の場所における気圧で、特に1barの大気圧で、又は任意の予め決定可能な測定環境圧力で測定される。測定装置1は、測定環境圧力を記録する圧力センサ43を備えることが好ましい。
【0048】
代替として、測定装置1は、ハウジング40又は真空チャンバ41内に配置されない。その場合、表面形状は気圧、特に大気圧で測定される。測定環境は、このとき内部空間38又は別の測定環境、特にハウジングにより閉じられていない測定環境であり得る。
【0049】
さらに、測定装置1は制御デバイス44を備える。制御デバイス44は、特に送出デバイス23及び/又は圧力調整弁29、30の少なくとも一方、特に圧力調整弁29を制御するよう特に構成される。この場合、限定はされないが、制御デバイス44は、信号伝送に関して、特に有線データライン又は無線データラインにより、送出デバイス23と、圧力調整デバイス28、34の少なくとも一方と、圧力センサ43と、圧力記録デバイス35、36の少なくとも一方と、流量センサ37と、好ましくは測定光源4とに接続される。
【0050】
冷媒22は、基板19又は測定対象の光学素子2の基板材料の屈折率と少なくとも実質的に等しい屈折率を有する。これにより、基板19と冷却流路21との間の境界面での望ましくない後方反射が最小化されるので、光学素子2を特に有利な方法で測定できることが確実となる。冷媒22は、水と混和することが好ましい、特に水との混合時に均一相を形成する無機物質又は有機物質を有することが好ましい。好ましくは、冷媒22は、非常に低いか又は非常に高い蒸気圧を有する。これにより、冷媒22が低圧で又は真空圧条件下で液体のままであることが特に確実となる。したがって、冷媒22が真空系にキャリオーバする場合、冷媒22を冷却流路21から容易に又は僅かな労力で除去することができる。物質又は冷媒22は、有害物質でないことが好ましく、すなわち、安全に取り扱うことができ且つ環境に配慮して処理することができる。
【0051】
物質は、例えば糖、特に79重量%スクロース水溶液である。このスクロース溶液は、70℃以上の水に糖を溶解してから冷却することにより調製されることが好ましい。これにより、20℃の温度で1.483の屈折率が得られ、この屈折率は、ULE(登録商標)ガラスの屈折率に少なくとも実質的に対応する。代替として、物質はヨウ化カリウムであり、水中のヨウ化カリウムの予め決定可能な割合に応じて1.33(ヨウ化カリウムの割合0パーセント)以上1.502(飽和ヨウ化カリウム溶液)以下の屈折率を設定可能である。代替として、冷媒22はグリセリン(屈折率1.474)である。
【0052】
代替として、冷媒22はポリタングステン酸ナトリウム溶液であり、水中の物質ポリタングステン酸ナトリウムの予め決定可能な割合に応じて、1.33(ポリタングステン酸ナトリウムの割合0パーセント)以上1.55(飽和ポリタングステン酸ナトリウム溶液)以下の屈折率を設定可能である。代替として、以下の油又は有機物質が冷媒22として提供される:テトラヒドロナフタレン(屈折率1.541)、サリチル酸メチル(屈折率1.535)、又はオイゲノール(屈折率1.541)。これらの屈折率は、特にZerodur(登録商標)の屈折率に少なくとも実質的に対応する。
【0053】
屈折率は波長及び温度の関数なので、測定環境39の温度及び測定光放射線の波長が、冷媒22又は冷媒22の屈折率の選択時に考慮されることが好ましい。測定光源4が異なる波長、例えば532nm及び633nmの測定光放射線を発するよう設計される場合、基板19の第1及び第2屈折率が波長毎に求められ、屈折率の平均値がそこから形成される。形成された平均値に従って、屈折率が平均値と少なくとも実質的に同じであるように冷媒22が選択される。代替として、屈折率は、基板19の材料のアッベ数と、dn/dTとして定義される屈折率の温度係数とに応じて計算され、ここでnは基板19の屈折率であり、Tは測定環境の温度である。代替として、基板19の屈折率は、例えば屈折計、分光計、干渉計、又は浸漬法及び偏光解析法により測定される。したがって、各冷媒22及び基板19又は基板材料の上記屈折率は、例として理解すべきである。実際の屈折率は、特に測定光放射線の波長及び測定環境39の温度に応じて上記屈折率からずれ得る。
【0054】
代替として、冷媒は気体冷媒、例えば窒素又は乾燥空気、すなわち例えば40%未満の予め決定可能な相対湿度を有する空気である。代替として、液体冷媒は水、例えば特に超純水である。
【0055】
図2は、第1実施形態による光学素子2の簡略断面図を示す。光学素子2は、基板19及び反射面20を有する本体18を有する。冷媒22を収容する少なくとも1つの冷却流路21、この例では相互に隣接した複数の冷却流路21、45、46、47が、基板19に形成される。2つの隣接する冷却流路21、45、46、47間の間隔は、1mm以上12mm以下であることが好ましい。相互に隣接する冷却流路21、45、46、47は、1つの平面又は冷却流路平面50に配置されている。基板19は、特に冷却流路平面50の下に配置された少なくとも1つのさらなる冷却流路平面を任意に有する。
【0056】
好ましくは、20個以上200個以下の冷却流路21が基板19に形成される。各冷却流路21は、矩形又は円形の断面を有し、各冷却流路21の直径は0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。冷却流路21、45、46、47は、例えば蛇行形状に又は相互に平行に形成される。冷却流路21、特に各冷却流路21、45、46、47の上冷却流路壁90と反射面20との間の空間は、2mm以上30mm以下であることが好ましい。
【0057】
好ましくは、光学素子2、特に基板19は、第1及び第2接続開口48、49を有し、第1及び第2接続開口48、49は、第1接続開口48を供給ライン25に接続可能であり且つ第2接続開口49を排出ライン26に接続可能であるか、又はその逆であるように形成される。代替として又は追加として、接続開口48、49の少なくとも一方は、圧力調整デバイス28に直接、すなわち供給ライン25を介在させずに接続されるよう設計される。特に、相互に平行に設計又は位置合わせされた冷却流路21、45、46、47は、第1接続開口48及び第2接続開口49にそれぞれ通じることが好ましい。接続開口48、49間の間隔は、50mm以上1,000mm以下であることが好ましい。
【0058】
特に193nm、532nm、及び/又は633nmの波長を有する測定光放射線を反射するよう特に設計された単層又は多層の反射層51が、反射面20に施されることが好ましい。これにより、測定光放射線の確実な反射、ひいては光学素子2の表面形状の確実な測定又は測定性が確保される。単層又は多層の反射層51は、スパッタされたクロム及び/又はケイ素、特に少なくとも1つのクロム層及び/又は1つのケイ素層を有することが好ましい。任意に又は追加として、基板19の材料は、測定光放射線を吸収するように形成、特にドープされる。
【0059】
場合によっては、反射層51が反射面20に施されない。
【0060】
冷却流路21、45、46、47は、切削加工法、例えば穿孔により作製されるか又は作製されていることが好ましい。この場合、基板19及び反射面20は一体に形成される。
【0061】
光学素子2は、圧力調整デバイス28を任意に有する。圧力調整デバイス28は、接続開口48、49の一方に直接、例えば供給ライン25等の接続要素を介在させて、又は直接配置されることが好ましい。
【0062】
図3は、第2実施形態による光学素子52を簡略断面図で示す。光学素子52は、
図2からの光学素子に実質的に対応する。しかしながら、相違点は、ミラー体55が反射面20、54を有し、基板53と反射面20、54とが、又は基板53と反射面20、54を有するミラー体55とが、一体に形成されないことである。
【0063】
冷却流路56、57、58、59を形成する構造は、特に基板53にフライス加工、研削、及び/又はエッチングにより導入又は作製されるか又はされていることが好ましい。フライス加工及び/又は研削後に、基板53又は基板材料はエッチングされることが好ましい。冷却流路56、57、58、59の構造は、レーザベースの方法、例えばレーザアブレーション又は選択的レーザエッチングにより任意に作製される。代替として、冷却流路56、57、58、59は、特に研削、フライス加工、及び/又はエッチングにより反射面20、54を有するミラー体55に形成される。この場合、基板53が好ましくは少なくとも部分的に研磨されるので、基板53と反射面20、54を有するミラー体55とが接合プロセスにより特に有利に相互に接続され得るか又は接続可能であり得る。
【0064】
この場合、反射面20、54又は反射面20、54を有するミラー体55と基板53とは、接合プロセス、特に接着により接続されているか又は接続される。接着の結果として、特に全周が、すなわち四方が閉じた冷却流路56、57、58、59が形成される。基板53と反射面20、54又は反射面20、54を有するミラー体55とは、同じ材料、特に基板53の材料でできていることが好ましい。
【0065】
接着の結果として境界層60が形成され得る。形成されるこのような境界層60を図示する。境界層60は、基板材料の屈折率とは異なる屈折率を通常は有する。
【0066】
境界層60での測定光又は測定光放射線の妨害反射又は不要な反射を回避するために、光学素子52は、反射層51を有することが好ましい。場合によっては、光学素子52は反射層を有しない。その場合、基板材料及び/又はミラー体55は、測定光放射が基板53及び/又はミラー体55に、それにより特に境界層60まで浸透するのを防止するために、測定光放射線を吸収するように形成、特にドープされることが好ましい。代替として、境界層60の材料は、予め決定可能な波長、特に193nm以上633nm以下、特に532nm以上633nm以下の波長の光を吸収するようにドープされる。場合によっては、冷却流路、特に冷却流路の壁は、散漫散乱効果を確保するために予め決定可能な粗さを有する。粗さは、特に対応するエッチングプロセスにより達成される。
【0067】
図4は、反射面62又は反射面62を有するミラー体63と基板64とが接合プロセス、特に接着により接続される、さらに別の光学素子61の簡略断面図を示す。
【0068】
この例示的な実施形態によれば、接着は、反射面62及びその過程で形成される境界層65が少なくとも部分的に相互に整合一致しないように行われる。「一致しない」とは、反射面62上の予め決定可能な点、ここでは点P1における第1接平面84と境界層65上の予め決定可能な点、ここでは点P2における第2接平面85とが相互に平行に位置合わせされないことを意味する。換言すれば、第1接平面84の法線ベクトル及び第2接平面85の法線ベクトルは、相互から0より大きな偏差を有する。
【0069】
この場合のように、反射面62及び形成される境界層65がそれぞれ例えば平面状である、すなわち湾曲していない場合、「一致しない」は、反射面62又は第1接平面84と形成される境界層65又は第2接平面85とが相互に平行に位置合わせされないことを意味する。
【0070】
例えば、境界層65のみが平面状であり反射面62が破線で示すように少なくとも部分的に湾曲している(又はその逆である)場合、「一致しない」とは、境界層65又は第2接平面85と反射面62、特にP1で湾曲した反射面62に関連して存在する第3接平面86とが、相互に平行に位置合わせされないことを意味する。
【0071】
反射面62及び境界層65の両方が少なくとも部分的に湾曲している場合、「一致しない」とは、境界層の予め決定可能な点P2における接平面と反射面の予め決定可能な点P1における接平面とが相互に平行に位置合わせされないことを意味する。
【0072】
予め決定可能な点P1及び予め決定可能な点P2は、直線87に沿って配置されることが好ましく、直線87は、光学素子2、52、61の光軸89と平行に位置合わせされる。
【0073】
この実施形態によれば、反射層は設けられないが、任意に設けることができる。
【0074】
基板64及び/又はミラー体63は、予め決定可能な波長、特に193nm以上633nm以下、特に532nm以上633nm以下の波長の光を吸収するように形成される材料を任意に含む。代替として、境界層65の材料は、予め決定可能な波長、特に193nm以上633nm以下、特に532nm以上633nm以下の波長の光を吸収するようにドープされる。
【0075】
図5は、例示的な実施形態による測定環境39で測定装置1により光学素子2、52、61の表面形状を測定する方法を実行するフロー図を示す。この方法は、制御デバイス44により実行されることが好ましい。この目的で、制御デバイス44は、特に記載の方法を実行させるプログラムコードを有するコンピュータプログラムを実行するためのマイクロプロセッサと、RAM及びROMモジュールとを有することが好ましく、好ましくはデータ、例えば予め決定可能な目標圧力、及びアルゴリズム等のプログラムがROMモジュールに記憶される。簡単のために、この方法は冷却流路21のみに関して説明するが、これに限定されない。
【0076】
第1ステップS1において、光学素子2、52、61が用意される。
【0077】
第2ステップS2において、液体又は気体の冷媒22が冷却流路21に供給される。これは、特に冷媒溜め6に接続された送出デバイス23の制御により行われる。冷媒22は、冷媒22の屈折率が光学素子2、52、61の基板19の屈折率と少なくとも実質的に等しいようにここでは選択されるか又は選択されている。
【0078】
第3ステップS3において、冷却流路圧力が特に圧力記録デバイス35により記録される。
【0079】
第4ステップS4において、測定環境圧力が特に圧力センサ43により記録される。
【0080】
第5ステップS5において、記録された冷却流路圧力又は実冷却流路圧力pK,ISTと記録された測定環境圧力又は実測定環境圧力pM,ISTとに基づき、実差圧ΔpIST=pK,IST-pM,ISTが求められる。
【0081】
第6ステップS6において、実差圧ΔpISTが目標差圧実差圧ΔpSOLLと比較される。目標差圧は、予め決定可能な目標測定環境圧力pM,SOLLと予め決定可能な目標冷却流路圧力pK,SOLLとに応じて決定されることが好ましく、ΔpSOLL=pK,SOLL-pM,SOLLである。目標測定環境圧力及び目標冷却流路圧力は、目標測定環境圧力が0.01mbar以上0.20mbar以下であり、目標冷却流路圧力が200mbar以上10,000mbar以上であるようにここでは選択され、特に、予め決定可能な目標測定環境圧力は0.03mbar以上0.1mbar以下であり、目標冷却流路圧力は500mbar以上1,000mbar以下である。これにより、目標条件、すなわち目標冷却流路圧力及び目標測定環境圧力がEUV条件、すなわち真空中でのEUVリソグラフィ装置の動作中に通常存在する圧力条件に少なくとも実質的に対応することが確実となる。目標冷却流路圧力は特に、冷媒輸送を確保するように冷却流路21内に過圧を形成するために目標測定環境圧力より高くなるよう選択される。好ましくは、目標測定環境圧力及び目標冷却流路圧力は、予め決定可能な目標測定環境圧力が0.05mbarであり予め決定可能な目標冷却流路圧力が500mbarであるように選択される。目標測定環境圧力は、EUVリソグラフィ装置又はEUVで動作するよう設計された投影露光装置、特にスキャナとして設計された半導体リソグラフィ用の投影露光装置における、大気圧、特に動作大気圧に対応することが好ましい。したがって、目標測定環境圧力は、例えば目標スキャナ大気圧である。
【0082】
第7ステップS7において、実差圧と目標差圧との偏差が監視され、予め決定可能な限界値より大きい実差圧と目標差圧との偏差が検出された場合、偏差が予め決定可能な限界値以下になるように冷却流路圧力が適合れる。限界値が例えば10mbarであり、10mbarを超える偏差が検出された場合、偏差が10mbar以下になるように送出デバイス23及び/又は圧力調整弁28、29の少なくとも一方を制御することにより冷却流路圧力が適合される。偏差は、方程式
ΔpSOLL=ΔPIST (1)
に基づき、特に(1)の
pK,IST=pK,SOLL-pM,SOLL+pM,IST (2)
への変換に基づき求められることが好ましい。
【0083】
測定環境圧力又は実測定環境圧力pM,ISTは連続して記録されることが好ましいので、偏差を求める際に、したがって実冷却流路圧力の適合時に、測定環境39における動的圧力変動が考慮される。代替として、限界値は、1mbar以下、特に0.5mbar以下、特に0barであることが好ましい。冷媒22が冷却流路21を流れる予め決定可能な流速又は体積流量は、送出デバイス23の送出速度の適合により同様に設定されることが好ましい。場合によっては、予め決定可能な流速が設定され、表面形状の測定は、2つの異なる実差圧、特に2つの異なる測定環境圧力で行われ、測定結果の平均値が続いて形成される。冷媒溜め6に接続された温度制御デバイス83が、温度制御のために、特に冷媒22の冷却又は加熱のために、特に冷媒22の予め決定可能な動粘度の設定のために任意に制御される。
【0084】
偏差が予め決定可能な限界値以下である場合、第8ステップS8において表面形状が測定される。特に、測定光源4及び/又は干渉計5の少なくとも1つのコンポーネントがこの目的で制御又は起動される。測定中に偏差が予め決定可能な偏差より小さいことを確実にするために、測定中にステップS1~S7が実行され続けるか又は繰り返されることが好ましい。偏差が限界値より大きいことが検出された場合、測定は中断されて偏差が限界値以下になってからしか続けられないことが好ましい。
【0085】
記載の方法の利点は、EUV条件下の目標差圧に少なくとも実質的に対応する実差圧下で表面形状が測定されることである。これにより、光学素子2、52、61の確認された測定結果又は確認された表面形状が、特にEUV条件下で形成されるか又は形成され得る表面形状に対応することが確実となる。これにより、光学素子2、52、61の又はかかる光学素子2、52、61を有する投影露光装置の特に確実な動作が確実となる。測定は、任意の測定環境圧力下で、例えば大気圧又は真空圧下で行われ得る。
【0086】
この場合の「EUV条件」は、投影露光装置又はEUVリソグラフィ装置のEUV動作中に通常存在するような条件を指す。これらの条件は特に、目標測定環境圧力によりここでは規定される動作測定環境圧力、及び目標冷却流路圧力によりここでは規定される動作冷却流路圧力に関する。場合によっては、限定はされないが、これらの条件はさらに、冷却流路内の冷媒の流速、EUVリソグラフィ装置の動作温度、及び/又はEUV光の波長に関する。
【0087】
図6は、特に上述のように製造及び/又は測定された少なくとも1つの光学素子2、52、61を有する、EUVで動作するよう設計された投影露光装置66又はEUVリソグラフィ装置の形態のEUVリソグラフィシステムを非常に概略的に示す。投影露光装置66は、50nm未満、特に約5nm~約15nmのEUV波長域で高エネルギー密度を有するEUV放射線を発生させるEUV光源67を備える。EUV光源67は、例えば、レーザ誘起プラズマを発生させるプラズマ光源又はシンクロトロン放射源の形態をとり得る。前者の場合、特に、EUV光源67のEUV放射線を集束させて照明ビーム69にし且つエネルギー密度をこのようにしてさらに高めるために、
図6に示すようにコレクタミラー68が用いられ得る。照明ビーム69は、本例では5個の反射光学素子71~75(ミラー)を有する照明デバイス70により、構造化された物体Mを照明するよう働く。
【0088】
構造化された物体Mは、例えば、物体M上の少なくとも1つの構造を作製する反射及び無反射又は少なくとも低反射領域を有する、反射型マスク又はレチクルであり得る。
【0089】
構造化された物体Mは、照明ビーム69の一部を反射して投影ビーム経路75を整形し、投影ビーム経路75は、構造化された物体Mの構造に関する情報を運んで投影レンズ76に放射され、投影レンズ76は、構造化された物体M又はその各部分領域の投影像を基板W上に生成する。基板W、例えばウェーハは、半導体材料、例えばケイ素を含み、ウェーハステージWSとも称するマウンティング上に配置される。
【0090】
本例では、投影レンズ76は、構造化された物体Mに存在する構造の像をウェーハW上に生成するために6つの反射光学素子77~82(ミラー)を有する。投影レンズ76のミラーの数は、通常は4個~10個である。しかしながら、適切な場合はミラーを2つだけ用いることもできる。
【0091】
表面形状又は形状誤差量に関して本発明の範囲内で検査される光学素子2、52、61は、投影露光装置66の任意のミラー、例えばコレクタミラー68、照明デバイス70のミラー71~75のうちの1つ、又は投影レンズ76のミラー77~82のうちの1つとすることができる。これらのミラーの少なくとも1つが、上述の方法に従って製造及び/又は測定されることが好ましい。
【符号の説明】
【0092】
1 測定装置
2 光学素子
3 ミラー
4 測定光源
5 干渉計
6 冷媒溜め
7 光導波路
8 入力波
9 ビームスプリッタ
10 回折光学素子
11 計算機ホログラム(CGH)
12 反射素子
13 反射素子
14 反射素子
15 干渉計カメラ
16 シャッタ
17 接眼レンズ
18 本体
19 基板
20 反射面
21 冷却流路
22 冷媒
23 送出デバイス
24 ポンプ
25 供給ライン
26 排出ライン
27 送出ライン
28 圧力調整デバイス
29 2方向圧力調整弁
30 3方向圧力調整弁
31 入口側
32 出口側
33 オーバーフロー出口
34 圧力調整デバイス
35 圧力記録デバイス
36 圧力記録デバイス
37 センサ
38 内部空間
39 測定環境
40 ハウジング
41 真空チャンバ
42 真空発生ユニット
43 圧力センサ
44 制御デバイス
45 冷却流路
46 冷却流路
47 冷却流路
48 第1接続開口
49 第2接続開口
50 冷却流路平面
51 冷却流路壁
52 光学素子
53 基板
54 反射面
55 ミラー体
56 冷却流路
57 冷却流路
58 冷却流路
59 冷却流路
60 境界層
61 光学素子
62 反射面
63 ミラー体
64 基板
65 境界層
66 投影露光装置
67 EUV光源
68 コレクタミラー
69 照明ビーム
70 照明デバイス
71 光学素子
72 光学素子
73 光学素子
74 光学素子
75 光学素子
76 投影レンズ
77 光学素子
78 光学素子
79 光学素子
80 光学素子
81 光学素子
82 光学素子
83 温度制御デバイス
84 第1接平面
85 第2接平面
86 第3接平面
87 直線
88 供給ライン部
89 光軸