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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
G01N35/02 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023505236
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005270
(87)【国際公開番号】W WO2022190756
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2021036067
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中島 慧
(72)【発明者】
【氏名】三島 弘之
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/105079(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/017291(WO,A1)
【文献】特開2009-204360(JP,A)
【文献】特開平10-096734(JP,A)
【文献】特表2015-505056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された検体容器を搬送する搬送ラインと、
前記検体容器に付された識別情報を読み取る識別情報読取装置と、
前記検体容器の高さを検出する容器高さ検出装置と、を備え、
前記識別情報読取装置および前記容器高さ検出装置は、前記検体容器が前記搬送ライン上の共通の位置にあるときに読取および検出を行うものであって、
前記容器高さ検出装置は、検出対象の高さ範囲が異なる複数のセンサを有し、
複数の前記センサのうち一部が、前記搬送ラインに対して、前記識別情報読取装置と同じ側に配置され、
複数の前記センサのうち残りが、前記搬送ラインに対して、前記識別情報読取装置と反対側に配置される自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記搬送ラインの搬送方向に沿って検体ラックに搭載された複数の前記検体容器の間の距離が、最も近くなる高さ範囲を検出対象とする前記センサは、前記識別情報読取装置と反対側に配置される自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、
検出対象の高さ範囲が最も低い前記センサは、前記識別情報読取装置と反対側に配置される自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記識別情報読取装置と反対側に配置される前記センサの投光方向は、前記識別情報読取装置と同じ側に配置される前記センサの投光方向と比べ、前記搬送ラインの搬送方向に対して垂直に近い自動分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記識別情報読取装置は、前記検体容器を搭載する検体ラックに付された識別情報も読み取る自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記識別情報読取装置と反対側に配置される前記センサは、投光部と受光部が上下方向に並ぶように配置される自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置には、検体の分析を行う分析部を独立した装置として運用するスタンドアローンタイプのものや、例えば、生化学や免疫等のように種類の異なる分析分野の複数の分析装置を、検体を収容する検体容器を保持する検体ラックを搬送する搬送ラインによって接続し、1つの装置として運用するモジュールタイプのものなどが知られている。
【0003】
特に、モジュールタイプでは、検体によって分析項目が異なるため、検体ラックを分析モジュールに振り分ける前に、各検体ラックに付された識別情報(ラックID)を読み取り、経路を決定する必要がある。また、検体容器も形状の異なる複数の種類があり、分析モジュールにて検体を分注する前に、検体容器の種類を区別する必要がある。
【0004】
特許文献1には、検体投入部から投入された検体ラックが、ラックID読取位置、検体容器高さ検出位置、検体ID読取位置、へそれぞれ順番に搬送される自動分析装置が記載されている(段落0024~0026)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-151569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の自動分析装置では、検体容器高さ検出位置と検体ID読取位置が離れた場所にあるため、検体ラックの搬送ラインの短縮化や、装置全体の小型化には限界がある。また、容器高さ検出装置と識別情報読取装置を近づけて、搬送ライン上の共通の位置にある検体容器の高さや検体IDを検出・読取しようとすると、少なくとも一方の装置を搬送ラインに対して傾斜する形で配置しなければならない。したがって、容器高さ検出装置の設置角度によっては、検体容器の高さを誤検出し、検体容器の有無や種類を判定できなくなる可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、全体として小型化が可能で、しかも検体容器の有無や種類を精度よく判定できる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の自動分析装置は、投入された検体容器を搬送する搬送ラインと、前記検体容器に付された識別情報を読み取る識別情報読取装置と、前記検体容器の高さを検出する容器高さ検出装置と、を備え、前記識別情報読取装置および前記容器高さ検出装置は、前記検体容器が前記搬送ライン上の共通の位置にあるときに読取および検出を行うものであって、前記容器高さ検出装置は、検出対象の高さ範囲が異なる複数のセンサを有し、複数の前記センサのうち一部が、前記搬送ラインに対して、前記識別情報読取装置と同じ側に配置され、複数の前記センサのうち残りが、前記搬送ラインに対して、前記識別情報読取装置と反対側に配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、全体として小型化が可能で、しかも検体容器の有無や種類を精度よく判定する自動分析装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1に係る自動分析装置の基本構成を示す図。
図2】検体ラックに複数の検体容器を搭載した状態を示す図。
図3】容器高さ検出装置の構造と、各検体容器の高さを検出する方法と、を示す図。
図4】容器高さ検出装置の構造と、蓋付き検体容器の高さを検出する方法と、を示す図。
図5】ラックID、検体IDおよび検体容器高さを読取・検出する処理を示すフローチャート。
図6】比較例として、容器高さ検出装置を構成するすべてのセンサを、識別情報読取装置と同じ側に配置した構成を示す図。
図7】容器高さ検出装置の配置として満たすべき条件を説明するための図。
図8】実施例1として、容器高さ検出装置を構成するセンサのうち一部を、識別情報読取装置と反対側に配置した構成を示す図。
図9A】比較例として、センサをすべて同じ側に配置した場合に、各センサから見た検体容器の状況を示す図。
図9B】実施例1として、一部のセンサだけ反対側に配置した場合に、当該センサから見た検体容器の状況を示す図。
図10A】比較例として、すべてのセンサを同じ側に配置したときの容器高さ検出装置の構成を示す図。
図10B】実施例1として、一部のセンサを反対側に配置したときの容器高さ検出装置の構成を示す図。
図11A】横向きで配置されるセンサの構成を示す図。
図11B】縦向きで配置されるセンサの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1に係る自動分析装置の基本構成を示す図である。図1に示すように、本実施例の自動分析装置は、1台以上の同じもしくは異なる分析モジュール200と、分析モジュールでの分析対象となる検体を収容した1つ以上の検体容器12を搭載する検体ラック10を搬送する搬送モジュール100と、が接続されて構成される。本実施例においては、分析モジュール200として生化学分析装置を1つ接続した構成について説明するが、これに限られることはなく、使用環境に応じて免疫分析装置、血液凝固分析装置などその他の分析装置や左右同種の分析を実行する分析装置を適宜配置することができる。
【0013】
検体容器12には、血清、血漿、尿などの生体試料(検体)が収容されている。また、検体ラック10としては、通常の優先度で分析が行われる通常検体を収容した検体容器が搭載されるものと、通常検体よりも分析の緊急度が高い緊急検体を収容した検体容器が搭載されるものと、が含まれる。
【0014】
搬送モジュール100は、自動分析装置に投入される検体ラック10を分析モジュール200との間で搬送するモジュールであり、検体ラック搬送ライン104と、緊急検体ラック投入部101と、検体ラック供給部102と、検体ラック収納部103と、検体ラック分配ユニット107と、識別情報読取装置105と、容器高さ検出装置106と、を備える。検体ラック搬送ライン104は、自動分析装置に投入された検体ラック10を検体ラック分配ユニット107との間で往復搬送するラインである。緊急検体ラック投入部101は、検体ラック搬送ライン104に隣接して設けられ、緊急検体ラック11を投入するものである。
【0015】
検体ラック供給部102は、緊急検体ラック投入部101よりも検体ラック搬送ライン104の一端側(検体ラック分配ユニット107側)に設けられ、通常検体の検体ラック10を検体ラック搬送ライン104に供給するものである。検体ラック収納部103は、検体ラック供給部102よりも検体ラック搬送ライン104の一端側に設けられ、検体ラック搬送ライン104から搬出された検体ラックを収納するものである。検体ラック分配ユニット107は、検体ラック搬送ライン104の一端に配置され、検体ラック10を搭載可能な1つ以上のスロットを有する検体ラック待機ディスクを備え、検体ラック搬送ライン104の一端と、1つ以上の分析モジュールの分注ライン202の一端と、の間で検体ラック10の授受を行うものである。
【0016】
識別情報読取装置105は、検体容器12に付された識別情報(検体ID14)や、検体ラック10および緊急検体ラック11に付された識別情報(ラックID13)を読み取るものである。検体ID14やラックID13は、例えば、バーコードやRFIDなどの識別媒体で表示され、検体に関する分析依頼情報などを照会するために使用される。
【0017】
容器高さ検出装置106は、検体容器12の高さを検出するものであり、構造と検出方法の詳細は後述するが、検出対象の高さ範囲が異なる複数のセンサ106a~106eを有している。この容器高さ検出装置106で検出されたデータは、後述の制御部301へ送られ、制御部301が、検体ラック10および緊急検体ラック11の各ポジションに検体容器12が設置されているか否かの確認と、検体容器12の種類の判定を行う。
【0018】
また、本実施例に係る自動分析装置の検体ラック供給部102に供給された検体ラック10は、搬送モジュール100の検体ラック搬送ライン104が動作することで、ラックID読取位置、高さ検出兼検体ID読取位置112、待機ディスク位置、の順に移動する。
【0019】
まず、検体ラック10の先端(一端側)がラックID読取位置まで到達したときに、識別情報読取装置105がラック先端の曲面部に付されたラックID13を読み取る。その後、検体ラック10に搭載された複数の検体容器12のうち先頭(一端側)の検体容器12が高さ検出兼検体ID読取位置112まで到達したときに、容器高さ検出装置106が当該先頭の検体容器12の高さ検出するとともに、高さ検出の結果に応じて識別情報読取装置105が当該先頭の検体容器12の検体ID14を読み取る。すなわち、容器高さ検出装置106および識別情報読取装置105は、検体容器12が検体ラック搬送ライン104上の共通の位置にあるときに、読取および検出を行う。なお、容器高さ検出装置106が検体容器12の高さを検出した後、識別情報読取装置105の読み取りまでの間に検体ラック10が一端側へ移動したとしても、同じ検体容器12の検体ID14を識別情報読取装置105が読取可能であれば、その移動範囲も共通の位置として見做すことができる。
【0020】
一方、本実施例に係る自動分析装置の緊急検体ラック投入部101に投入された緊急検体ラック11は、ラックID読取位置よりも検体ラック搬送ライン104の他端側(反検体ラック分配ユニット107側)にある緊急検体ラック待機位置111で、まず一時的に待機する。その後、緊急検体ラック11は、前述した通常の検体ラック10と同様に、ラックID読取位置、高さ検出兼検体ID読取位置112、待機ディスク位置、の順に移動する。
【0021】
このように、本実施例では、識別情報読取装置105と容器高さ検出装置106とが比較的近い箇所に設けられ、識別情報の読み取りと容器高さ検出を纏めて1か所で実施しているため、搬送距離の短縮、ひいては、自動分析装置全体としての小型化が可能となっている。
【0022】
分析モジュール200は、検体ラック10に搭載された検体容器12内の検体を分注して定性・定量分析を行うモジュールであり、分注ライン202と、分析モジュール用識別情報読取装置203と、検体分注機構204と、試薬分注機構207と、測定部208と、を備える。分注ライン202は、検体ラック分配ユニット107によって保持された検体ラック10または緊急検体ラック11を一端から搬入し、検体容器12から検体を分注するための分注位置まで往復搬送する。分析モジュール用識別情報読取装置203は、分注ライン202に搬入された検体ラック10または緊急検体ラック11に付されたラックID13や、これらラックに搭載された検体容器12に付された検体ID14を読み取り、検体に関する分析依頼情報などを照合する。検体分注機構204は、分注ライン202上の分注位置に搬送された検体ラック10または緊急検体ラック11の検体容器12から反応ディスク205やインキュベータディスク(図示せず)の反応容器に検体を分注する。試薬分注機構207は、試薬ディスク206の試薬容器に収容された試薬を反応ディスク205やインキュベータディスクの反応容器に分注する。測定部208は、反応容器に分注された検体と試薬の混合液(反応液)を測定し、定性・定量分析を行う。
【0023】
制御装置300は、自動分析装置の全体の動作を制御するものであり、表示部303と、入力部304と、記憶部302と、制御部301と、を備えている。表示部303は、各種パラメータや設定の入力画面、初回検査あるいは再検査の分析検査データ、測定結果等を表示する。入力部304は、各種パラメータや設定、分析依頼情報、分析開始等の指示などをオペレータが入力するときに用いられる。記憶部302は、各種パラメータや設定、測定結果、各検体ラックに搭載された検体容器に収容された検体の分析依頼情報等を記憶する。制御部301は、制御装置300を含む自動分析装置の全体の動作を制御する。なお、搬送モジュール100や分析モジュール200に、モジュール内の各部の動作を制御するための制御部を個別に設けても良い。
【0024】
図2は、検体ラック10に複数の検体容器12を搭載した状態を示す図である。ここでは、通常の検体ラック10を用いて説明するが、緊急検体ラック11を用いた場合も同様である。検体ラック10の一端側の側面角部は、検体ラック搬送ライン104と対向する側から搬送先側へと湾曲する曲面10aを有しており、この曲面10aに沿うようにラックID13が付されている。このため、識別情報読取装置105は、その読取方向が検体ラック搬送ライン104の搬送方向に対して垂直でなくとも、ラックID13を読み取ることができる。すなわち、ラックID読取位置にある検体ラック10の側面角部に対して、搬送先側(図2の+Y軸側)にある程度ずれた場所に、識別情報読取装置105を配置することが可能である。
【0025】
また、検体ラック10が保持する検体容器12も、検体ID14を備えることがある。ただし、検体ID14がバーコードの場合、バーコードを貼付できるサイズ(高さ寸法)が必要となるので、検体ID14が付される対象の検体容器12は、一般に試験管に限られる。検体ID14も識別情報読取装置105で読み取られるため、検体容器12が高さ検出兼検体ID読取位置112に到達したときに、検体ID14が識別情報読取装置105に面するよう、オペレータが各検体容器12を検体ラック10に搭載する。なお、検体ID14が付される検体容器12の表面も円形の曲面であるため、識別情報読取装置105が、検体ID14の幅中央を基準に対して検体ラック搬送ライン104の搬送方向にずれた位置に配置されていても、検体ID14を読み取ることが可能である。
【0026】
図3は、容器高さ検出装置106の構造と、各検体容器12の高さを検出する方法と、を示す図である。図3に示すように、容器高さ検出装置106は、設置高さの異なる複数のセンサ106a~106eで構成される。図3では、センサが5つある場合を示しているが、個数は5つに限られるものではない。各センサは、反射型センサであり、予め検知領域に対象物(検体容器12)が無い状態で検出の待機をし、検知領域に対象物が入ると対象物からの反射光を感知して対象物が有ることを検出する。検体ラック10のうち所定のポジションにある検体容器12の検出が完了した後は、次の検体容器12を検出するために、前後の検体容器12の間の隙間でセンサがリセットされる。
【0027】
図3では、検体容器12として、カップ12aと、試験管12b,12dと、試験管の上にカップを載せたもの12c,12eと、がそれぞれ別々の検体ラック10に搭載された例を示している。高さの異なる検体容器12を区別できるように、各センサを設置する高さが決められる。これにより、例えば、最も高さが低いカップ12aの場合、センサ106a~106dは検出なし、センサ106eは検出あり、とされ、これらの検出結果を受信した制御部301は、検体容器12の種類はカップであると判定する。
【0028】
図4は、容器高さ検出装置106の構造と、蓋付き検体容器12fの高さを検出する方法と、を示す図である。蓋付き検体容器12fは、同じ種類でも蓋の開き具合が異なる場合があり、開き具合によってセンサ106cとセンサ106dの検知領域に入ったり入らなかったりする。さらに、蓋付き検体容器12fの設置向きや蓋の支持構造によっては、隣りの検体容器12との間の隙間を遮ってしまい、容器高さ検出装置106のリセットができない場合がある。
【0029】
そこで、本実施例では、蓋付き検体容器12fを載せる蓋付き容器用検体ラック10fに付されるラックID13には、蓋付き検体容器12fが搭載されている可能性があることを示す識別情報を表示している。このため、識別情報読取装置105が当該蓋付き容器用検体ラック10fのラックID13を読み取ると、制御部301は前述の判定方法とは異なる方法で、当該蓋付き容器用検体ラック10f内の各ポジションにおける蓋付き検体容器12fの有無を判定するようにしても良い。
【0030】
図5は、ラックID13、検体ID14および検体容器高さを読取・検出する処理を示すフローチャートである。
【0031】
まず、検体ラック搬送ライン104が動作を開始する(ステップS1)。次に、制御部301は、緊急検体の有無を判定する(ステップS2)。緊急検体「有り」と判定された場合、制御部301は、検体ラック搬送ライン104を制御して、緊急検体ラック投入部101で投入された緊急検体ラック11を、ラックID読取位置に搬送する(ステップS3)。一方、ステップS2において、緊急検体「無し」と判定された場合、制御部301は、検体ラック搬送ライン104を制御して、検体ラック供給部102で供給された検体ラック10を、ラックID読取位置に搬送する(ステップS4)。
【0032】
以下、緊急検体「無し」の場合の例について、説明する。識別情報読取装置105は、検体ラック10がラックID読取位置にあるときに、ラックID13の読み取りを行う(ステップS5)。このとき、検体ラック10上のいずれの検体容器12も、容器高さ検出装置106の検知領域には入っていないため、この状態で容器高さ検出装置106のセンサがリセットされる(ステップS6)。
【0033】
次に、制御部301は、検体ラック搬送ライン104をさらに動作させ、検体ラック10に搭載されている複数の検体容器12のうち、搬送の向きの1つ目に相当する検体容器12を、高さ検出兼検体ID読取位置112に送る(ステップS7)。このとき、容器高さ検出装置106は、当該検体容器12の高さを検出し(ステップS8)、検出結果を制御部301へ送信する。次に、識別情報読取装置105は、検体ID14の読み取りを行う(ステップS9)。なお、ステップS8の時点で、制御部301が、検出結果に基づき、当該検体容器12の種類を判定し、当該検体容器12が試験管など検体ID14を有するものと判定された場合に限って、識別情報読取装置105が検体ID14の読み取りを行うようにしても良い。あるいは、ステップS5で読み取ったラックID13に、検体ID14を有する検体容器12が搭載されていることを示す情報が含まれている場合に、識別情報読取装置105が、検体ID14の読み取りを行うようにすることも可能である。
【0034】
その後、制御部301は、検体ラック10に搭載されている全ての検体容器12の検出・読取が完了したか否かを判定する(ステップS10)。読取・検出の済んでいない検体容器12がある場合、制御部301は、検体ラック搬送ライン104をさらに動作させ、直近に検出・読取が完了した検体容器12の隣にある検体容器12を、高さ検出兼検体ID読取位置112に送る(ステップS11)。このとき、前後の検体容器12の間で、容器高さ検出装置106の検知領域に対象物が無い状態となり、容器高さ検出装置106は、センサをリセットし、次の検出の準備を行う。
【0035】
ステップS8からステップS11が繰り返された結果、ステップS10において、全ての検体容器12の検出・読取が完了したと判定されると、制御部301は、容器高さ検出装置106から受信した検出結果に基づいて、各ポジションに検体容器12が設置されているか否かの確認と、各検体容器12の種類の判定を行う(ステップS12)。その後、制御部301は、検体ラック搬送ライン104をさらに動作させ、検体ラック10を、検体ラック分配ユニット107の待機ディスク位置に送る(ステップS13)。ここで、ステップS12の判定の結果、異常がなければ、検体ラック分配ユニット107は、検体の分析のために分析モジュール200に搬送されるまで、当該検体ラック10を待機させる。また、制御部301は、識別情報読取装置105が読み取った分析依頼情報や、容器高さ検出装置106を用いて判定された検体容器12の種類などの情報に基づいて、分析モジュール200内の搬送先や、搬送先での検体分注処理を決定する。一方、ステップS12の判定の結果、異常があれば、当該検体ラック10は分析モジュール200に搬送されることなく、検体ラック収納部103に送られる。
【0036】
図6は、比較例として、容器高さ検出装置106を構成するすべてのセンサを、検体ラック搬送ライン104に対して、識別情報読取装置105と同じ側に配置した構成を示す図である。図6に示すように、識別情報読取装置105は、検体ラック搬送ライン104の搬送先から搬送元へ逆流する向きに角度θ1をもって配置され、容器高さ検出装置106は、検体ラック搬送ライン104の搬送元から搬送先へ順流する向きに角度θ2をもって配置される。具体的には、識別情報読取装置105が、高さ検出兼検体ID読取位置112を通り検体ラック搬送ライン104に対して垂直なる線AA’と角度θ1をなす線上に配置され、容器高さ検出装置106が、同じ線AA’と角度θ2(θ2はθ1と線AA’について反対側)をなす線上に配置される。
【0037】
角度θ1は、0°≦θ1<90°の値をとり、小さいほど望ましい。θ1が大きくなるにつれて、識別情報読取装置105の検出幅に、検出すべき検体容器12の検体ID14に加え、次の検体容器12の検体ID14も含まれるようになり、識別情報の誤読を引き起こす可能性があるためである。
【0038】
角度θ2は、0°≦θ1<90°の値をとり、こちらも小さいほど望ましい。角度θ2の満たすべき条件を、図7を用いて説明する。
【0039】
図7は、容器高さ検出装置106の配置として満たすべき条件を説明するための図である。図7において、隣り合う検体容器12の中心間距離をd、最も径の大きい検体容器12の半径をr、容器高さ検出装置106を構成するセンサの検知領域503の検出幅をwとする。ここで、センサから見たときの検体容器12間の隙間がセンサの検出幅よりも広くないと、検出対象の検体容器12が次に変わったことを容器高さ検出装置106は識別できない(リセットできない)ため、dcosθ2-2r>wを満たす必要がある。すなわち、角度θ2の満たすべき条件は、cosθ2>(2r+w)/dとなる。さらに、識別情報読取装置105と容器高さ検出装置106の検知領域が互いに干渉しないようにするため、角度θ1+角度θ2は一定以上の角度をとる必要がある。
【0040】
しかし、検体容器12の中には、蓋付き検体容器12fのように、上記条件に含まれる半径rを超えて容器の一部が出張るものがあり、そのような検体容器12は、上記条件を満たしていても、容器高さ検出装置106がリセットできず、エラーが発生してしまう可能性がある。また、検体ラック搬送ライン104が短く自動分析装置が小型化されている場合、上記角度θ2となるような容器高さ検出装置106の配置が困難なことも考えられる。
【0041】
図8は、本実施例として、容器高さ検出装置106を構成するセンサのうち一部を、検体ラック搬送ライン104に対して、識別情報読取装置105と反対側に配置した構成を示す図である。図8に示すように、センサ106eは、検体ラック搬送ライン104に対して垂直となる線AA’上に配置している。センサ106eの周囲には、識別情報読取装置105など他の装置が存在しないため、レイアウトの自由度が高い。なお、センサ106eの投光方向は、必ずしも検体ラック搬送ライン104の搬送方向と垂直でなくても良く、センサ106a~センサ106dの投光方向と比べ、垂直に近ければ、一定の効果が得られる。
【0042】
次に、容器高さ検出装置106を構成する複数のセンサのうち、どのセンサを他のセンサと反対側に配置すべきかについて述べる。図10Aは、比較例として、すべてのセンサ106a~106eを識別情報読取装置105と同じ側に配置したときの容器高さ検出装置の構成を示す図であり、図10Bは、本実施例として、センサ106eを識別情報読取装置105と反対側に配置したときの容器高さ検出装置の構成を示す図である。
【0043】
検体ラック搬送ライン104の搬送方向に沿って検体ラック10に搭載された複数の検体容器12の隙間が、最も狭くなり易いのは、最も低い位置の可能性が高い。この高さのセンサが、検体ラック搬送ライン104の搬送方向に対して垂直方向を基準に、大きな角度をもって傾いて配置されていると、隣り合う検体容器12の隙間を検出できず、エラーが発生し易い。このため、本実施例では、図10Bに示すように、識別情報読取装置105と反対側に配置するセンサは、検出対象の高さ範囲が最も低いセンサ106eとしている。最も低いセンサ106eの検知領域は、識別情報読取装置105が検体ID14を読み取るときの検知領域から離れているため、誤検知の可能性が低い。なお、使用する検体容器12の種類や識別情報読取装置105の配置によっては、隙間の狭くなり易い高さや誤検知し易い高さが異なる場合もあるので、反対側に配置すべきセンサは最下部のセンサに限らない。
【0044】
次に、容器高さ検出装置106のセンサの一部を異なる場所に配置した場合について、図9Aおよび図9Bに基づき、それぞれの効果を説明する。なお、図9Aおよび図9Bにおいて、検体容器12に付される検体ID14は省略されている。
【0045】
図9Aは、比較例として、検体ラック搬送ライン104に対してセンサをすべて同じ側に配置した場合に、各センサから見た検体容器12の状況を示す図である。図9Aに示すように、比較例の場合、各センサからは、先頭から3番目、4番目および5番目の検体容器12が、隙間なく繋がって見える。つまり、容器高さ検出のリセットが行われないため、先頭から4番目および5番目の検体容器12の検出ができず、検出エラーになってしまう。
【0046】
図9Bは、本実施例として、検体ラック搬送ライン104に対してセンサ106eだけ他のセンサと反対側に配置した場合に、センサ106eから見た検体容器12の状況を示す図である。図9Bに示すように、実施例の場合、センサ106eからは、先頭から3番目の検体容器12と4番目の検体容器12との間も、4番目の検体容器12と5番目の検体容器12との間も、隙間が存在して見える。つまり、容器高さ検出のリセットが行われ、4番目および5番目の検体容器12も個別に認識でき、検出エラーにならない。その結果、隣り合う検体容器12の隙間が小さい場合でも、容器高さ検出装置106から正確な検出結果が制御部301へ送信され、各検体容器12の有無と種類の判定が可能となる。
【0047】
ここで、容器高さ検出装置106を自動分析装置に取り付ける際、その取付誤差により、センサの設置角度にばらつきが生じ、設置角度のずれが検出エラーに繋がることがある。比較例のようにすべてのセンサを角度θ2で取り付ける場合、特に、検体容器12間の距離が最も近くなる高さ範囲を検出対象とするセンサ106eは、高い取付精度が要求され、角度θからの僅かなずれでも検出エラーを発生させる可能性がある。
【0048】
一方、本実施例では、センサ106eを、角度θよりも小さく、望ましくは0とすることにより、取付誤差により設置角度にずれが生じても、検出エラーに繋がり難くなっている。換言すれば、本実施例の自動分析装置は、容器高さ検出装置106の取付作業性が向上する。また、本実施例では、検体ラック供給部102と検体ラック収納部103の間のスペースを有効活用することで、容器高さ検出装置106の他のセンサや識別情報読取装置105に対して、検体ラック搬送ライン104を挟んで反対側に、センサ106eを配置することが可能となっている。
【実施例2】
【0049】
実施例1は、容器高さ検出装置106を構成する反射型のセンサが、全て横向きで配置される構成について説明した。実施例2は、識別情報読取装置105と反対側に配置される反射型のセンサ106eが、縦向きで配置される構成である。
【0050】
図11Aは、横向きで配置されるセンサ106a~106dの構成を示す図である。図11Aに示すように、センサ106a~106dは、投光部501と受光部502が水平方向に並ぶように配置されており、検出幅wは横に広い。
【0051】
図11Bは、縦向きで配置されるセンサ106eの構成を示す図である。図11Bに示すように、センサ106eは、投光部501と受光部502が上下方向に並ぶように配置されており、検出幅wが横に狭い。このため、隣り合う検体容器12の隙間が小さい場合でも、その隙間を高感度で認識でき、容器高さ検出のリセットが可能である。その結果、検体ラック10や緊急検体ラック11に搭載されている各検体容器12の有無と種類を、制御部301が正確に判定できる。また、センサ106eの周囲には、他のセンサが存在しないので、センサ106eを縦向きで設置する作業も容易である。
【0052】
本発明は、前述の各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、前述の各実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…検体ラック、10a…曲面、10f…蓋付き容器用検体ラック、11…緊急検体ラック、12…検体容器、12a…カップ、12b,12d…試験管、12c,12e…試験管の上にカップを載せたもの、12f…蓋付き検体容器、13…ラックID、14…検体ID、100…搬送モジュール、101…緊急検体ラック投入部、102…検体ラック供給部、103…検体ラック収納部、104…検体ラック搬送ライン、105…識別情報読取装置、106…容器高さ検出装置、106a~106e…センサ、107…検体ラック分配ユニット、111…緊急検体ラック待機位置、112…高さ検出兼検体ID読取位置、200…分析モジュール、202…分注ライン、203…分析モジュール用識別情報読取装置、204…検体分注機構、205…反応ディスク、206…試薬ディスク、207…試薬分注機構、208…測定部、300…制御装置、301…制御部、302…記憶部、303…表示部、304…入力部、501…投光部、502…受光部、503…検知領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B