(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ガス検出システム、およびガス検出方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20240927BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20240927BHJP
B64U 80/86 20230101ALI20240927BHJP
G01M 3/02 20060101ALI20240927BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240927BHJP
G05D 1/46 20240101ALI20240927BHJP
G08B 21/12 20060101ALI20240927BHJP
B64U 101/35 20230101ALN20240927BHJP
【FI】
G01M3/20 B
B64U10/13
B64U80/86
G01M3/02 F
G05D1/43
G05D1/46
G08B21/12
B64U101:35
(21)【出願番号】P 2023105370
(22)【出願日】2023-06-27
【審査請求日】2024-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】青谷 俊
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 重仁
(72)【発明者】
【氏名】趙 漠居
(72)【発明者】
【氏名】湯川 龍之良
(72)【発明者】
【氏名】長藤 圭介
(72)【発明者】
【氏名】中尾 政之
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0292286(US,A1)
【文献】特開2017-110984(JP,A)
【文献】特表2019-523363(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0116942(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/20
B64U 10/13
B64U 80/86
G01M 3/02
G05D 1/43
G05D 1/46
G08B 21/12
B64U 101/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上を移動可能な地上移動体と、
前記地上移動体に搭載されると共に、空中に浮上可能な1以上の飛行体と、
少なくとも前記1以上の飛行体に設けられ、気体中の化学物質を検知するセンサと、を備えるガス検出システムであって、
前記1以上の飛行体が前記地上移動体に搭載された第1形態で前記センサの検知を行った後、前記地上移動体から前記1以上の飛行体を浮上させた第2形態に移行して前記センサの検知を行う、
ガス検出システム。
【請求項2】
前記地上移動体は、前記第1形態において前記センサにより検知した前記化学物質の濃度に基づき前記1以上の飛行体が浮上する地上位置を設定して、当該地上位置に移動し、
前記1以上の飛行体は、前記地上位置で前記第2形態に移行する、
請求項1に記載のガス検出システム。
【請求項3】
前記地上移動体は、前記第1形態において、第1エリア内を移動して前記センサの検知を行う第1探索ステップと、第1探索ステップの検知結果に基づき前記第1エリアよりも狭い範囲である第2エリアを設定し当該第2エリア内を移動して前記センサの検知を行って前記地上位置を設定する第2探索ステップと、を実行する、
請求項2に記載のガス検出システム。
【請求項4】
前記第2エリアは、前記第1エリアにおいて前記化学物質の濃度が最も高い位置およびその周辺である、
請求項3に記載のガス検出システム。
【請求項5】
前記地上位置は、前記第2エリアにおいて前記化学物質の濃度が最も高い位置である、
請求項4に記載のガス検出システム。
【請求項6】
前記センサは、前記1以上の飛行体と前記地上移動体の各々に設けられている、
請求項1に記載のガス検出システム。
【請求項7】
前記地上移動体は、前記第1形態において移動しながら前記センサにより前記化学物質の濃度を検知し、地上における前記化学物質の濃度分布を認識する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【請求項8】
前記1以上の飛行体は、前記第2形態において移動しながら前記センサにより前記化学物質の濃度を検知し、空中における前記化学物質の濃度分布を認識する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【請求項9】
前記センサが検知した検知情報に基づき、大気に対する前記化学物質の比重および前記化学物質の濃度を認識し、前記地上移動体および/または前記1以上の飛行体の制御内容を設定する処理部を有する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【請求項10】
前記処理部は、
前記第1形態で大気以上の比重の前記化学物質を検知しかつ当該化学物質の濃度が地上用の閾値以上の場合に、前記第2形態に移行して前記センサの検知を行い、
前記第1形態で大気以上の比重の前記化学物質を検知しない、または大気以上の比重の前記化学物質を検知しかつ当該化学物質の濃度が前記地上用の閾値未満の場合に、設定された位置に前記地上移動体を移動した後に、前記第2形態に移行して前記センサの検知を行う、
請求項9に記載のガス検出システム。
【請求項11】
前記地上移動体および前記1以上の飛行体のうち少なくとも一方は、移動方向に存在する地形および/または物体の情報を取得する外界センサを備え、
前記第1形態の移動時および/または前記第2形態の移動時に、前記外界センサの検出に基づき前記移動方向に回避対象が存在した場合に、当該回避対象を回避して移動を継続する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【請求項12】
前記地上移動体は、前記第1形態および前記第2形態のうち少なくとも一方において、前記1以上の飛行体への給電を行う給電部を有する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【請求項13】
前記1以上の飛行体は、前記地上移動体に1つ搭載されている、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【請求項14】
前記センサは、複数種類の前記化学物質を区分けして検知する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【請求項15】
前記地上移動体および前記1以上の飛行体のうち少なくとも一方は、前記センサが検知した情報を、前記地上移動体および前記1以上の飛行体のうち他方に送信する、または前記地上移動体および前記1以上の飛行体とは異なる情報処理装置に送信する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【請求項16】
気体中の化学物質を検出するガス検出方法であって、
地上を移動可能な地上移動体に、空中に浮上可能な1以上の飛行体を搭載した第1形態で移動を行い、少なくとも前記1以上の飛行体に設けられたセンサにより前記化学物質の検知を行う地上探索工程と、
前記地上探索工程の後に、前記地上移動体から前記1以上の飛行体を浮上させた第2形態に移行して、前記センサにより前記化学物質の検知を行う空中探索工程と、を有する、
ガス検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス検出システム、およびガス検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラント等においてガス(化学物質)の漏れが発生した場合(あるいは漏れの疑いがある場合)、ガスセンサを携帯した多数の作業者によりガス漏れの発生箇所を探索し、探索したガス漏れの発生箇所の補修等を行っている。このようなガス漏れの発生箇所の探索は、多大な時間がかかり、また作業者の負担も大きくなる。さらに、ガス漏れの発生箇所は、作業者が行き難い高所の場合もある。
【0003】
そこで、空間内におけるガスの状態を検出するシステムの開発が進んでいる。例えば、特許文献1には、空中を移動可能な飛行体(遠隔車両)を用いることで、3次元ガスマップを作成するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のシステムのように、設定した3次元空間を飛行体が満遍なく移動してガス(化学物質)の検知を行う構成にすると、飛行体の電力消費が増大することになる。場合によっては、ガスを検知している最中に飛行体の電力がなくなり、探索を途中で中断する不都合も生じてしまう。
【0006】
本開示は、電力消費を抑えて、化学物質を効率的に検出できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、地上を移動可能な地上移動体と、前記地上移動体に搭載されると共に、空中に浮上可能な1以上の飛行体と、少なくとも前記1以上の飛行体に設けられ、気体中の化学物質を検知するセンサと、を備えるガス検出システムであって、前記1以上の飛行体が前記地上移動体に搭載された第1形態で前記センサの検知を行った後、前記地上移動体から前記1以上の飛行体を浮上させた第2形態に移行して前記センサの検知を行う、ガス検出システムが提供される。
【0008】
上記によれば、ガス検出システムは、電力消費を抑えて、化学物質を効率的に検出できる。
【0009】
また、前記地上移動体は、前記第1形態において前記センサにより検知した前記化学物質の濃度に基づき前記1以上の飛行体が浮上する地上位置を設定して、当該地上位置に移動し、前記1以上の飛行体は、前記地上位置で前記第2形態に移行する。ガス検出システムは、第1形態で検知した化学物質の濃度に基づき第2形態に移行する地上位置を設定することで、化学物質の濃度が高い位置をより効率的に探索することが可能となる。
【0010】
また、前記地上移動体は、前記第1形態において、第1エリア内を移動して前記センサの検知を行う第1探索ステップと、第1探索ステップの検知結果に基づき前記第1エリアよりも狭い範囲である第2エリアを設定し当該第2エリア内を移動して前記センサの検知を行って前記地上位置を設定する第2探索ステップと、を実行する。ガス検出システムは、第1探索ステップおよび第2探索ステップを行うことで、例えば、広い探索エリアであったとしても化学物質の検知を効率化できる。
【0011】
また、前記第2エリアは、前記第1エリアにおいて前記化学物質の濃度が最も高い位置およびその周辺である。ガス検出システムは、第1エリアにおいて検知した化学物質の濃度が最も高い位置を第2エリアに設定することで、第2エリアを充分に狭めて化学物質の濃度の高い位置を一層精度よく探索できる。
【0012】
また、前記地上位置は、前記第2エリアにおいて前記化学物質の濃度が最も高い位置である。ガス検出システムは、第2エリアにおいて検知した化学物質の濃度が最も高い位置を地上位置に設定することで、飛行体の浮上において化学物質の濃度が高い箇所を効率的に探索できる。
【0013】
また、前記センサは、前記1以上の飛行体と前記地上移動体の各々に設けられている。ガス検出システムは、飛行体と地上移動体の各々にセンサを備えることで、それぞれのセンサによって地上でのガスの検知と、空中でのガスの検知とを適切に行うことができる。
【0014】
また、前記地上移動体は、前記第1形態において移動しながら前記センサにより前記化学物質の濃度を検知し、地上における前記化学物質の濃度分布を認識する。ガス検出システムは、地上を移動しながら化学物質を検知することで、移動と停止を繰り返して検知を行う場合と比べて、検知にかかる時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0015】
また、前記1以上の飛行体は、前記第2形態において移動しながら前記センサにより前記化学物質の濃度を検知し、空中における前記化学物質の濃度分布を認識する。ガス検出システムは、空中を移動しながら化学物質を検知することで、空中の検知にかかる時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0016】
また、前記センサが検知した検知情報に基づき、大気に対する前記化学物質の比重および前記化学物質の濃度を認識し、前記地上移動体および/または前記1以上の飛行体の制御内容を設定する処理部を有する。ガス検出システムは、化学物質の比重に基づき制御内容を設定することで、空中における化学物質の流れに応じて適切な検知を行うことができる。
【0017】
また、前記処理部は、前記第1形態で大気以上の比重の前記化学物質を検知しかつ当該化学物質の濃度が地上用の閾値以上の場合に、前記第2形態に移行して前記センサの検知を行い、前記第1形態で大気以上の比重の前記化学物質を検知しない、または大気以上の比重の前記化学物質を検知しかつ当該化学物質の濃度が前記地上用の閾値未満の場合に、設定された位置に前記地上移動体を移動した後に、前記第2形態に移行して前記センサの検知を行う。これにより、ガス検出システムは、大気以上の比重の化学物質を地上および空中の両方で適切に検知できる。
【0018】
また、前記地上移動体および前記1以上の飛行体のうち少なくとも一方は、移動方向に存在する地形および/または物体の情報を取得する外界センサを備え、前記第1形態の移動時および/または前記第2形態の移動時に、前記外界センサの検出に基づき前記移動方向に回避対象が存在した場合に、当該回避対象を回避して移動を継続する。これにより、ガス検出システムは、地上移動体および飛行体が物体に接触することを抑制して、化学物質の検知を安定して行うことができる。
【0019】
また、前記地上移動体は、前記第1形態および前記第2形態のうち少なくとも一方において、前記1以上の飛行体への給電を行う給電部を有する。これにより、飛行体は、飛行時において、電力不足により検知が途中で途切れることを抑制できる。
【0020】
また、前記1以上の飛行体は、前記地上移動体に1つ搭載されている。これにより、ガス検出システムは、多くの飛行体が飛ぶことによる空中のガスの乱れを抑えて、焦点を絞ってガス漏れの発生箇所を探索することが可能となる。
【0021】
また、前記センサは、複数種類の前記化学物質を区分けして検知する。ガス検出システムは、複数種類の化学物質を区分けして検知することで、様々な化学物質に対応して検知を行うことができ、汎用性を一層高めることが可能となる。
【0022】
また、前記地上移動体および前記1以上の飛行体のうち少なくとも一方は、前記センサが検知した情報を、前記地上移動体および前記1以上の飛行体のうち他方に送信する、または前記地上移動体および前記1以上の飛行体とは異なる情報処理装置に送信する。ガス検出システムは、地上移動体および1以上の飛行体のセンサの検知情報をまとめることで、化学物質の状態を一層把握させ易くすることができる。
【0023】
また、本開示の別の態様によれば、気体中の化学物質を検出するガス検出方法であって、地上を移動可能な地上移動体に、空中に浮上可能な1以上の飛行体を搭載した第1形態で移動を行い、少なくとも前記1以上の飛行体に設けられたセンサにより前記化学物質の検知を行う地上探索工程と、前記地上探索工程の後に、前記地上移動体から前記1以上の飛行体を浮上させた第2形態に移行して、前記センサにより前記化学物質の検知を行う空中探索工程と、を有する。この場合でも、ガス検出方法は、電力消費を抑えて、化学物質の状態を効率的に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態に係るガス検出システムの全体構成を示す側面図である。
【
図2】地上ロボットおよびドローンのハードウェアの構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係るガス検出方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】ガス検出方法において地上側制御部内およびドローン側制御部内に形成される機能部を示すブロック図である。
【
図5】
図5(A)は、粗探索工程のアセンブリロボットの移動を例示する平面図である。
図5(B)は、精探索工程のアセンブリロボットの移動範囲を示す平面図である。
【
図6】
図6(A)は、精探索工程における精探索制御部の処理および判断を説明するブロック図である。
図6(B)は、精探索工程におけるアセンブリロボットの動作例を示す説明図である。
【
図7】ガス検出方法の上昇探索工程の動作およびガスの検知を示す説明図である。
【
図8】第2実施形態に係るガス検出システムの全体構成を示す側面図である。
【
図9】ガス検出システムの地上側制御部内およびドローン側制御部内に形成される機能部を示すブロック図である。
【
図10】第2実施形態に係るガス検出方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0026】
図1は、第1実施形態に係るガス検出システム1の全体構成を示す側面図である。実施形態に係るガス検出システム1は、ガス(化学物質)の漏れの可能性があるプラントや施設等において使用され、ガス漏れの発生箇所GLを自動的に探索(または推定)するアセンブリロボット10を有する。このアセンブリロボット10は、地上移動体と飛行体とを組み合わせて構成される。
【0027】
具体的には、アセンブリロボット10は、無人の状態で地上を移動可能な地上移動体(以下、地上ロボット20という)と、無人の状態で空中を移動可能な1以上の飛行体(以下、ドローン40という)と、を含む。アセンブリロボット10は、地上ロボット20にドローン40を搭載した第1形態を呈する。アセンブリロボット10は、この第1形態において、ドローン40を搭載しながら移動して地上のガスを検出する。さらに、アセンブリロボット10は、地上で検出したガスの情報に基づき、地上ロボット20からドローン40を浮上させた第2形態に移行する。この第2形態において、ドローン40は、空中を移動しながら当該空中のガスを検出する。
【0028】
地上ロボット20は、地上における任意のエリアを自動的に移動するように構成される。実施形態に係る地上ロボット20は、地上を移動するための走行部21として複数(例えば、4つ)の車輪211を有する小型車両を適用している。なお、走行部21の構成は、特に限定されず、地上を走行可能な種々の構成を採り得る。走行部21の他の例としては、一対のクローラ(キャタピラ)を有するもの、複数の脚部を有するもの等があげられる。
【0029】
また、地上ロボット20は、走行部21に搭載される筐体22を備える。筐体22は、平坦状の上面を有し、この上面にドローン40を載置および保持することで、ドローン40を搭載した第1形態とする。筐体22の上面は、ドローン40を係留するための係合構造221を備える。係合構造221は、筐体22からのドローン40の浮上と、浮上したドローン40の着陸と、を適切に実現可能な適宜の構成を採用し得る。例えば、係合構造221は、ドローン40の荷重を受けることで複数の脚部411を引っ掛けて当該ドローン40を保持し、ドローン40の浮上トリガを受信することで各脚部411の引っ掛かりを解除する複数のロック体を適用できる。なお、係合構造221は、ドローン40側に設けられてもよく、あるいは地上ロボット20およびドローン40の両方に適宜の構成を有してもよい。もしくは、筐体22およびドローン40は、係合構造221を備えずに、筐体22の上面に対してドローン40を載置するだけでもよい。
【0030】
図2は、地上ロボット20およびドローン40のハードウェアの構成を示すブロック図である。
図2に示すように、地上ロボット20は、走行部21を自動的に走行させ、かつ地上におけるガスの検出を制御する地上側制御部23を、筐体22の内部に有する。また、地上ロボット20は、地上のガスを検知するガスセンサ24、外部の環境情報を取得する外界センサ25、地上ロボット20の状態情報を取得する内部センサ26、現在位置を取得する位置センサ27、電源部28および給電部29を備える。
【0031】
地上側制御部23は、1以上のプロセッサ231、メモリ232、入出力インタフェース233および通信インタフェース234を有するコンピュータである。1以上のプロセッサ231は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリ232は、半導体メモリ等からなる主記憶装置、およびディスクや半導体メモリ(フラッシュメモリ)等からなる補助記憶装置を含む。
【0032】
地上側制御部23は、メモリ232に記憶されたプログラムをプロセッサ231が実行することにより、地上ロボット20の動作、すなわちドローン40を搭載したアセンブリロボット10の動作を制御する。例えば、地上側制御部23は、作業者により設定された探索エリアSA(
図5(A)参照)において、地上ロボット20を自動的に移動させる自律移動制御機能を有する。また、地上側制御部23は、地上ロボット20の移動時に、ガスセンサ24によるガスの検知を連続的に行いながら、地上ロボット20の現在位置を認識することで、ガスの検知情報と現在位置とを紐づける。さらに、地上側制御部23は、ドローン40を浮上させる地上位置を設定し、この地上位置に移動すると、係合構造221の係合を解除してドローン40の浮上を許容する。
【0033】
ガスセンサ24は、地上において大気(または所定の気体成分)に含まれる気体状の化学物質であるガスの状態を検知する。ガスセンサ24は、筐体22の側面または上面に設けられるとよく、本実施形態では、筐体22が移動する際の移動方向の前方に設けられている。言い換えれば、地上のガスとは、地面に対して所定(例えば、0m~2m程度の範囲)の高さ位置に存在する化学物質を言う。また、本説明において、ガスの「検知」とは、ガスセンサ24に設けられているセンサ素子がガスを計測することを言う。一方、本明細書においてガスの「検出」とは、ガスセンサ24により検知したガスの情報を処理して、目標の情報(ガス濃度分布マップ、ガス漏れの発生箇所GL)を得ることを言う。
【0034】
検知する化学物質の状態とは、例えば、化学物質の種類や化学物質の濃度、空気中に含まれる成分量、成分比率等があげられる。また、化学物質の種類としては、C2F4、CH2Cl2、CH3OH、C6F14、CH2F2、CO、C4H10O、CHClF2、HF、HCl、C2ClF3、C3F6、C4F8、C2HF5、CHF3、C5F10O、C3F6O、SO2、Cl2、N2、NH3、C2H4、H2、He等があげられ、これらのうち1つでもよく、複数含んでもよい。あるいは、化学物質は、13A(CH4、CH3、C3H8、C4H10の混合ガス)、LPガス(C3H8、C4H10の混合ガス)等であってもよい。なお、検出する化学物質は、ガスの限らず、空気中の浮遊物(粉塵等)であってもよい。
【0035】
ガスセンサ24は、複数種類の化学物質を区分けして検知するために、複数のセンサ素子を配列した複合型ガス検知器を適用することが好ましい。複数のセンサ素子の各々は、目的とするガスの濃度を検知可能な適宜の方式(接触燃焼式、定電位電解式、ガルバニ電池式、赤外線吸収式、ラマン散乱方式、電気化学方式、電界効果型トランジスタ方式等)に構成される。また、ガスセンサ24は、SAWセンサ(弾性表面波センサ)であってもよい。なお、ガス検出システム1は、検出する化学物質の種類が予め分かっている場合等において、その化学物質に対応した1つのセンサ素子を有するガスセンサ24を適用してもよい。
【0036】
外界センサ25は、地上側制御部23に接続され、地上ロボット20の周囲にある地形の情報(溝や穴、隆起部等の凹凸、傾斜、濡れている箇所、砂利等の地上面の状況)や物体の情報を検知し、地上側制御部23にその情報を送信する。この外界センサ25としては、カメラ(単眼、複眼を含む)、LiDAR、超音波センサ、ミリ波レーダ、距離画像センサ、赤外線センサ等があげられる。
【0037】
内部センサ26は、地上側制御部23に接続され、地上ロボット20の現在の移動速度、向きや傾き(姿勢)等の情報を検知し、地上側制御部23にその情報を送信する。この内部センサ26としては、速度センサ、舵角センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等があげられる。
【0038】
位置センサ27は、地上側制御部23に接続され、地上ロボット20の現在の位置を検知し、地上側制御部23にその情報を送信する。この位置センサ27としては、GPSを含む衛星測位システム(GNSS)、モーションセンサ、ビーコン等があげられる。なお、地上側制御部23は、予め記憶したマップデータと、LiDARやカメラ等の外界センサ25から取得した情報とを比較して、これらの情報に基づきマップデータ上の位置を把握してもよい。
【0039】
電源部28は、周知の二次電池(例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、燃料電池)を適用できる。なお、地上ロボット20は、内燃機関により発電を行う発電機や太陽光により発電を行う太陽電池を併用してもよい。あるいは、地上ロボット20の電源部28は、外部電源に有線接続され、外部電源から電力を得る構成でもよい。
【0040】
給電部29は、筐体22にドローン40が搭載された状態で、ドローン40に対する給電を行う。例えば、給電部29は、筐体22の上面に複数の電極(不図示)を有し、第1形態においてドローン40の脚部が一対の電極に接触することに基づき、ドローン40への給電を行う構成を採ることができる。また、給電部29は、筐体22の上面に載置されたドローン40との間で無線給電を行う構成としてもよい。あるいは、給電部29は、図示しない電力線を介してドローン40に有線接続されてもよい。この場合、給電部29は、ドローン40が筐体22の上面に載置されている第1形態で給電を行うだけでなく、ドローン40が浮上した第2形態で給電を行ってもよい。
【0041】
図1に戻り、ガス検出システム1のドローン40は、地上ロボット20から浮上して、地上ロボット20よりも高い位置のガスを検知する。このドローン40は、ハウジング41と、ハウジング41の上部に設けられる飛行構造部42と、を有する。
【0042】
飛行構造部42は、ハウジング41に連結される連結部421と、連結部421から外側に向かって延出する複数(実施形態では4本)のアーム422と、各アーム422の延出端部に設けられる4つのプロペラ機構423と、を含む。なお、飛行構造部42のプロペラ機構423の数については、特に限定されないことは勿論である。
【0043】
連結部421の内部には、各プロペラ機構423のモータ(不図示)に適宜の電力をそれぞれ供給して、各プロペラ機構423を独立して回転させる電装部が設けられている。電装部は、例えば、DC-DCコンバータ、分配器、ESC(Electric Speed Controller)等が適用される。
【0044】
4本のアーム422は、連結部421の側面に連結され、連結部421を基点に互いに等間隔(90°間隔)に延出している。各アーム422の内部には、図示しない電気配線が設けられ、電装部と各プロペラ機構423を接続している。
【0045】
4つのプロペラ機構423は、モータの回転軸に連結されるプロペラ423pを有する。ドローン40は、各プロペラ423pの回転方向および回転数に応じてそれぞれのプロペラ423pに圧力差を生じさせることで、上昇、下降、ホバリング、水平移動、姿勢の調整等を実行する。
【0046】
ドローン40のハウジング41は、箱状に形成され、ドローン40の各種の構成を収容している。ハウジング41の下面には、着陸状態のドローン40を支持する複数の脚部411が設けられている。
【0047】
そして、
図2に示すように、ドローン40は、飛行構造部42を動作させ、かつ空中におけるガスの検知を制御するドローン側制御部43を、ハウジング41の内部に有する。さらに、ドローン40は、空中のガスを検知するガスセンサ44、外部の環境情報を取得する外界センサ45、ドローン40の状態情報を取得する内部センサ46、ドローン40の現在位置を取得する位置センサ47、電源部48および充電部49を備える。
【0048】
ドローン側制御部43は、1以上のプロセッサ431、メモリ432、入出力インタフェース433および通信インタフェース434を有するコンピュータである。1以上のプロセッサ431は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものである。メモリ432は、半導体メモリ等からなる主記憶装置、およびディスクや半導体メモリ(フラッシュメモリ)等からなる補助記憶装置を含む。
【0049】
ドローン側制御部43は、メモリ432に記憶されたプログラムをプロセッサ431が実行することにより、ドローン40の動作を制御する。例えば、ドローン側制御部43は、地上側制御部23と通信して、地上側制御部23から浮上トリガの情報を受信すると、地上ロボット20からドローン40の浮上(第1形態から第2形態への移行)を開始する。また、ドローン側制御部43は、空中においてドローン40を自動的に移動させる自律移動制御機能を有する。さらに、ドローン側制御部43は、ドローン40の移動時に、ガスセンサ44によるガスの検知を連続的に行いながら、ドローン40の現在位置(高度を含む)を認識することで、ガスの検知情報と現在位置とを紐づける。
【0050】
ガスセンサ44は、地上ロボット20のガスセンサ24と同様に構成され、空中において大気(または所定の気体成分)に含まれる気体状の化学物質の状態を検知する。ガスセンサ44は、例えば、複数種類の化学物質を区分けして検知するために、複数のセンサ素子を配列した複合型ガス検知器が適用される。ガスセンサ44は、飛行構造部42の上面またはハウジング41の下面等に設置されるとよい。
【0051】
なお、ガス検出システム1は、地上ロボット20とドローン40の各々にガスセンサ24、44を備えることに限定されない。ガス検出システム1は、少なくともドローン40にガスセンサ44を備えていればよい。第1形態においてアセンブリロボット10により地上のガスを検知する際に、ドローン40のガスセンサ44を用いることができるからである。要するに、第1形態では、地上ロボット20のガスセンサ24、およびドローン40のガスセンサ44のうちどちらかのセンサでガスの検知を行えばよい。
【0052】
外界センサ45は、ドローン側制御部43に接続され、ドローン40の飛行時に外部の環境情報(物体の情報)を検知してドローン側制御部43にその情報を送信する。この外界センサ45は、地上ロボット20の外界センサ25であげたセンサのうち1つまたは複数を組み合わせて構成され得る。なお、外界センサ45は、空中においてドローン40が受ける風の状態(風向、風速)を検知するためのセンサ(風向風速計)を備えてもよい。
【0053】
内部センサ46は、ドローン側制御部43に接続され、ドローン40の飛行時にドローン40の現在の向きや傾き等の情報を検知し、ドローン側制御部43にその情報を送信する。ドローン側制御部43は、受信した内部センサ46の情報に基づき、飛行時のドローン40の姿勢を適切に調整することができる。この内部センサ46としては、加速度センサ、ジャイロセンサ等を適用できる。
【0054】
位置センサ47も、位置センサ27と同様に構成され、ドローン40の現在の位置を検知してドローン側制御部43にその情報を送信する。なお、位置センサ47は、ドローン40の高度を検出するために気圧センサ等を含んでよい。
【0055】
電源部48は、地上ロボット20と同様に二次電池を適用できる。充電部49は、上記したように地上ロボット20にドローン40を搭載した第1形態で、給電部29から電源部48へ充電を行う。なお、充電部49は、地上ロボット20の給電部29とは別の外部電源に接続されて、電源部48の充電を行う構成でもよい。
【0056】
図3は、実施形態に係るガス検出方法の一例を示すフローチャートである。ガス検出システム1は、以上の地上ロボット20およびドローン40を有するアセンブリロボット10を使用して、
図3に示すガス検出方法を行う。ガス検出方法では、地上側制御部23およびドローン側制御部43の制御下に、探索エリアSAの設定工程(ステップS101)、粗探索工程(ステップS102)、精探索工程(ステップS103)、空中探索工程(ステップS104)を、この順に実行する。
【0057】
探索エリアSAの設定工程(ステップS101)では、ガス検出システム1の図示しないユーザインタフェースを介して、ユーザによりアセンブリロボット10によるガスの探索エリアSAを設定する。なお、ガス検出システム1は、探索エリアSAが不明な状況のままアセンブリロボット10を動作させて、アセンブリロボット10の移動に伴って探索エリアSAのマップ情報を生成してもよい。
【0058】
粗探索工程(ステップS102:第1探索ステップ)および精探索工程(ステップS103:第2探索ステップ)は、地上のガスを検知するために、地上ロボット20にドローン40を搭載した第1形態で、ガスの検知を行う地上探索工程である。また、粗探索工程では、ユーザにより設定された探索エリアSA(第1エリア)内でアセンブリロボット10(地上ロボット20)を粗く移動させてガスの検知を行う。一方、精探索工程は、粗探索工程において検知したガスの濃度に基づき探索エリアSAよりも狭い範囲の詳細探索エリアDA(第2エリア)を設定し、アセンブリロボット10を精細に移動させてガスの検知を行う。そして、空中探索工程は、空中のガスを検知するために、地上ロボット20からドローン40を浮上させた第2形態で、ガスの検知を行う工程である。このように、ガス検出システム1は、任意の探索エリアSAにおいて第1形態と第2形態の両方でガスの検知を行うことで、ガス漏れの発生箇所GLの3次元座標を、効率的かつ精度よく探索(推定)可能としている。
【0059】
図4は、ガス検出方法において地上側制御部23内およびドローン側制御部43内に形成される機能部を示すブロック図である。地上側制御部23は、メモリ232に記憶されたプログラムをプロセッサ231が実行することで、
図4に示す各種の機能ブロックを有する。具体的には、地上側制御部23内には、地上移動制御部31、ガスセンサ情報取得部32、ガス濃度分布作成部33、浮上トリガ生成部34等が形成される。一方、ドローン側制御部43は、メモリ432に記憶されたプログラムをプロセッサ431が実行することで、
図4に示す各種の機能ブロックを有する。具体的には、ドローン側制御部43内には、空中移動制御部51、ガスセンサ情報取得部52、ガス濃度分布作成部53、ガス漏れ推定部54等が形成される。
【0060】
地上移動制御部31は、地上ロボット20の地上での移動を自律制御する機能部である。例えば、地上移動制御部31は、探索エリアSA内に目標位置または目標方向を予め設定し、設定した目標位置または目標方向に向かって地上ロボット20を前進させる。そして、地上移動制御部31は、目標位置に到達するまたは一定の距離移動だけ移動すると、新たに目標位置または目標方向を設定し、その方向に地上ロボット20の姿勢を転換して前進を再び行う。あるいは、地上移動制御部31は、記憶された探索エリアSAのマップ情報に基づき目標移動経路を算出し、目標移動経路に沿うように地上ロボット20を移動させてもよい。
【0061】
また移動時に、地上移動制御部31は、外界センサ25が検出した外部の環境情報、内部センサ26が検出した地上ロボット20の状態情報、位置センサ27が検出した位置情報等を用いて、地上ロボット20の移動制御をリアルタイムに調整する。例えば、外界センサ25により地上ロボット20の移動方向の前方に物(回避対象)体を検知した場合に、地上移動制御部31は、検知した物体を回避(迂回)する回避動作を行い、地上ロボット20の移動を継続するとよい。また、地上移動制御部31は、外界センサ25により溝、穴、隆起部等の凹凸または悪路(回避対象)を検知した場合に、これらを回避する回避動作を行い、地上ロボット20の移動を継続するとよい。
【0062】
上記したように、ガス検出方法では、地上において粗探索工程および精探索工程を行う(
図3も参照)。このため、地上移動制御部31は、粗探索工程において地上ロボット20の移動を制御する粗探索制御部311と、精探索工程において地上ロボット20の移動を制御する精探索制御部312と、を有する。
【0063】
図5(A)は、粗探索工程のアセンブリロボット10の移動を例示する平面図である。
図5(B)は、精探索工程のアセンブリロボット10の移動範囲を示す平面図である。粗探索制御部311は、
図5(A)に示すように、探索エリアSA内においてアセンブリロボット10(地上ロボット20)を粗く(疎に)移動させて、この移動時にガスセンサ24によりガスの濃度を検知する。つまり、「粗探索」とは、探索エリアSA内で間隔をあけた複数の部分を通過するようにアセンブリロボット10の移動およびガスの検知を行い、間隔があいている箇所の通過(ガスの検知)を省くことを言う。これにより、地上側制御部23は、広い探索エリアSAであったとしてもガスの大体の濃度分布を短時間に認識することができる。
【0064】
例えば、粗探索工程のアセンブリロボット10の移動パターンとしては、探索エリアSAの外周部を先に周回した後に、探索エリアSAの内側を移動させることがあげられる。粗探索制御部311は、移動時に位置センサ27の位置情報を継続的に取得することで、探索エリアSAの外周部をマッピングでき、探索エリアSAの範囲を認識することが可能となる。なお、探索エリアSAのマップ情報を予め備える場合に、粗探索制御部311は、このマップ情報を用いて目標位置や目標方向を算出してもよい。また、粗探索工程では、探索エリアSAの外周部から探索エリアSAの内側にアセンブリロボット10の位置を変える場合、ある程度の間隔(例えば、2m~5m程度)をあけて、アセンブリロボット10を移動させる。あるいは、粗探索工程のアセンブリロボット10の移動パターンとしては、探索エリアSAに間隔をあけた複数の略直線状の移動列を設定し、各移動列を順に往動または復動させるパターン、または探索エリアSA内をランダムに移動させるパターン等を採ってもよい。
【0065】
そして、ガスセンサ情報取得部32は、アセンブリロボット10を移動しながら、ガスセンサ24によりガスの濃度を検知し、当該ガスセンサ24からガスの検知情報を取得しメモリ232に記憶する。
【0066】
ガス濃度分布作成部33は、ガスセンサ情報取得部32が取得したガスの濃度の情報に基づき、
図5(A)に示すようなガス濃度分布マップを作成する。ガス濃度分布マップは、アセンブリロボット10の移動時に位置センサ27により取得した位置と、ガスセンサ24により取得したガスの濃度とを紐づけた情報として生成される。これにより、地上側制御部23は、地上におけるガスの濃度分布を認識することができる。なお、本開示の「濃度分布を認識する」とは、濃度と位置情報とを対応づける演算を行うことを言う。よって、地上側制御部23においてガス濃度分布マップを作成しなくてもよい。例えば、外部の情報処理装置(ドローン40を含む)においてガス濃度分布マップを作成するために、個々のガスの濃度および個々の位置情報をそれぞれ紐づけた演算結果について送信する場合も、地上側制御部23は濃度分布を認識していると言い得る。
【0067】
ガス濃度分布マップにおいてガスの濃度が濃い箇所は、ガス漏れの発生箇所GLに近いと見なすことができる。したがって、地上側制御部23は、粗探索工程により検知したガスの濃度が最も高い位置を含むように、次の精探索工程を行うための詳細探索エリアDAを設定する。詳細探索エリアDAは、例えば
図5(B)に示すように、ガスの濃度が最も高い位置を中心として、粗探索工程のアセンブリロボット10が通過する部分の同士の間隔を半径とする仮想円に設定することがあげられる。このように設定された詳細探索エリアDAは、粗探索工程における探索エリアSAよりも大幅に小さくなるため、アセンブリロボット10が精探索工程において詳細探索エリアDA内を詳細に移動したとしても、作業効率の低下を抑制できる。
【0068】
精探索制御部312は、詳細探索エリアDA内においてアセンブリロボット10を精細(密に)移動させ、この移動時にガスセンサ24により化学物質の濃度を検知する。つまり、「精探索」とは、探索エリアSAよりも狭い詳細探索エリアDA内でアセンブリロボット10の移動およびガスの検知を行い、ガスの濃度が最も高い箇所を抽出することをいう。結果的に、地上側制御部23は、探索エリアSA全体としてガスの濃度が高い地上位置を認識することができる。
【0069】
図6(A)は、精探索工程における精探索制御部312の処理および判断を説明するブロック図である。
図6(B)は、精探索工程におけるアセンブリロボット10の動作例を示す説明図である。
図6(A)に示すように、精探索制御部312は、ガスセンサ24により検知したガスの濃度に基づき、地上ロボット20の移動方向、前進および後退の動作を設定するとよい。
【0070】
例えば、精探索制御部312は、ガスの濃度の勾配法を用いてアセンブリロボット10の移動および移動方向を切り替えるとよい。一例として精探索制御部312は、現在位置で検知したガスの濃度が、直前位置で検知したガスの濃度に対して上昇したか、または低下したかを判定する。そして、直前位置のガスの濃度に対して現在位置のガスの濃度が上昇した場合には、設定距離だけ前進を行い、前進した位置(新たな現在位置)でガスの濃度を検出する。この「設定距離」は、粗探索工程の部分同士の間隔よりも短い値であり、例えば、300mm~1000mm程度の範囲のうち適宜の値に設定するとよい。
【0071】
その一方で、直前位置のガスの濃度に対して現在位置のガスの濃度が低下した場合には、一旦後退した後に、アセンブリロボット10の角度を変えて設定距離だけ前進を行い、前進した位置(新たな現在位置)でガスの濃度を検出する。これにより、ガスの濃度の低い方向へのアセンブリロボット10の移動を抑制して、ガスの濃度が高い方向に向かうようにアセンブリロボット10を移動させることができる。
【0072】
上記のルールを用いた場合、アセンブリロボット10は、例えば、
図6(B)に示すような動作を行って、詳細探索エリアDAにおいてガスの濃度が最も高い位置を探索していく。例えば、アセンブリロボット10は、詳細探索エリアDAに移動した後の1回目の移動において、
図6(B)の左方向に前進したとする。そして、アセンブリロボット10は、前進した現在位置のガスの濃度と移動開始位置(直前位置)のガスの濃度を比較してガスの濃度の低下を検出する。これにより、アセンブリロボット10は、移動開始位置まで後退した後に、2回目の移動において、
図6(B)の下方向に前進する。この2回目の移動でもガスの濃度の低下を検出した場合、アセンブリロボット10は、やはり移動開始位置まで後退した後、3回目の移動を行う。3回目の移動では
図6(B)の上方向に前進する。そして、アセンブリロボット10は、上方向に前進した現在位置のガスの濃度が移動開始位置のガスの濃度よりも上昇したことを検出する。
【0073】
アセンブリロボット10は、ガスの濃度の上昇に基づき、4回目の移動においてさらに
図6(B)の上方向に前進する。アセンブリロボット10は、前進した現在位置のガスの濃度の低下を検出した場合、3回目に移動した位置まで後退した後、5回目の移動を行う。5回目の移動では、これまで移動していない方向である
図6(B)の右方向に前進する。これまで移動していない方向のほうがガスの濃度が上昇する確率が高いからである。そして、アセンブリロボット10は、右方向に前進した現在位置のガスの濃度が3回目に移動した直前位置のガスの濃度よりも上昇したことを検出する。
【0074】
アセンブリロボット10は、ガスの濃度の上昇に基づき、6回目の移動においてさらに
図6(B)の右方向に前進する。アセンブリロボット10は、前進した現在位置のガスの濃度の低下を検出した場合、5回目に移動した位置まで後退した後、7回目の移動を行う。7回目の移動では、例えば
図6(B)の下方向に前進する。アセンブリロボット10は、7回目の移動でもガスの濃度の低下を検出した場合、5回目に移動した位置まで後退し、8回目の移動を行う。8回目の移動では、例えば
図6(B)の上方向に前進する。そして、アセンブリロボット10は、8回目の移動でもガスの濃度の低下を検出した場合、5回目に移動した位置まで後退し、その位置をガスの濃度が最も高い位置と認識する。なお、ガスの濃度の勾配法は、精探索工程の一例であり、これに限定されない。例えば、地上側制御部23は、詳細探索エリアDAにおいてアセンブリロボット10を満遍なく移動させてガスの濃度を検知してもよい。
【0075】
そして、精探索工程において、地上側制御部23は、詳細探索エリアDAのガスの濃度を検知し、ガスの濃度が最も高い場所をドローン40が浮上する地上位置に設定する。設定後、アセンブリロボット10は、地上位置に移動して、第1形態から第2形態に移行することで、飛行探索工程(
図3のステップS103)を実行する。
【0076】
この際、地上側制御部23の浮上トリガ生成部34は、ドローン40との間で通信を行い、地上ロボット20からドローン40の浮上を開始するための浮上トリガの情報を送信する。ドローン40は、この浮上トリガの情報を受信すると、各プロペラ機構423の駆動を開始し、地上ロボット20から鉛直方向上側に向かって浮上する。また、地上側制御部23は、浮上トリガの生成に伴って、係合構造221によるドローン40の係留を解除する。
【0077】
図4に戻り、ドローン側制御部43は、空中移動制御部51によりドローン40の飛行を自律制御する。例えば、空中移動制御部51は、地上ロボット20が設定した地上位置において鉛直方向上側に向かってドローン40を上昇させる。また上昇時に、空中移動制御部51は、外界センサ45が検出した外部の環境情報、内部センサ46が検出したドローン40の状態情報、位置センサ47が検出した位置情報等を用いて、地上ロボット20の移動制御をリアルタイムに調整する。例えば、外界センサ45によりドローン40の鉛直方向上側(移動方向の前方)に物体を検知した場合に、空中移動制御部51は、検知した物体を回避(迂回)する回避動作を行い、ドローン40の移動を継続するとよい。
【0078】
そして、ガス検出方法の空中探索工程では、ドローン40を上昇(浮上)させながらガスの検知を行う(以下、上昇探索工程ともいう)。このため、空中移動制御部51は、ドローン40の上昇時の動作を制御する上昇制御部511を内部に有する。
【0079】
上昇制御部511は、例えば、ドローン40を一定の速度で上昇させるように各プロペラ機構423を同期させて動作させる。また、飛行環境において風がある場合でも、上昇制御部511は、設定された地上位置からドローン40が大きく外れないように、各プロペラ機構423の回転速度等を独立して制御して、その上昇を継続させる。これにより、ドローン40は、地上位置の鉛直方向上側を概ね維持したまま、ドローン40を上昇させることが可能となる。
【0080】
そして、ドローン側制御部43のガスセンサ情報取得部52は、上昇探索工程にてドローン40が浮上しながらガスセンサ44によりガスの濃度を検知し、当該ガスセンサ44からガスの検知情報を取得してメモリ432に記憶する。
【0081】
図7は、ガス検出方法の上昇探索工程の動作およびガスの検知を示す説明図である。上昇探索工程において、ドローン40は、
図7の左図に示すように鉛直方向上側に向かって上昇し、この上昇時のガスの濃度を検知する。また、ドローン40の位置センサ47は、ドローン40の上昇において高度を継続的に検出しており、その位置情報をドローン側制御部43に送信する。ガス濃度分布作成部53は、ガスセンサ情報取得部52が取得したガスの濃度およびドローン40の高度(位置情報)を紐づけることで、
図7の右図に示すようなガス濃度分布マップを作成する。これにより、ドローン側制御部43は、空中におけるガスの濃度分布を認識することができる。なお、ドローン側制御部43はガス濃度分布マップを内部において作成しなくてもよい。例えば、外部の情報処理装置(地上ロボット20を含む)においてガス濃度分布マップを作成するために、個々のガスの濃度および個々の位置情報をそれぞれ紐づけた演算結果について送信する場合も、ドローン側制御部43は濃度分布を認識していると言い得る。
【0082】
上昇探索工程のガス濃度分布マップのプロットは、ガス漏れの発生箇所GLの近くにおいてガスの濃度が最も高くなる山形の形状を呈する。ドローン側制御部43のガス漏れ推定部54は、ドローン40の上昇探索工程において得られたガス濃度分布マップの山形の頂部を、ガス漏れの発生箇所GLに最も近いと見なすことができる。ガス漏れ推定部54は、例えば、ガス漏れの発生箇所GLを推定した場合に、ユーザに示すためのガス漏れの発生箇所GLのレポート情報を作成し、ガス検出システム1のユーザインタフェース(モニタ、プリンタ)に当該レポート情報を出力する。
【0083】
上昇制御部511は、ドローン40の上昇の制御において、例えば、ガスの検知情報を参照して、ガスの濃度が山形の頂部を超える高さまで上昇を継続するとよい。これにより、ガス漏れ推定部54は、ガス漏れの発生箇所GLを一層確実に捉えることができる。
【0084】
なお、ガス漏れの発生箇所GLは、風の影響によってドローン40が浮上している位置から水平方向にずれる可能性もある。このため、空中移動制御部51は、上昇制御部511に加えて水平探索制御部512を備え、水平探索制御部512によりドローン40を水平方向に移動させてガスの濃度を検知してもよい。例えば、ドローン側制御部43は、上昇探索工程においてガスの濃度が最も高い位置において、ドローン40を水平方向に移動させてその周囲のガスを検知する(以下、水平探索工程ともいう)。これにより、ドローン40は、空中においてガスの濃度がより高い位置を検出することができ、その位置をガス漏れの発生箇所GLと推定できる。あるいは、ガス漏れ推定部54は、外界センサ45が検出した空中の風向および風速の情報を用いることで、ガス漏れの発生箇所GLの位置を推定してもよい。
【0085】
なお、ガス検出システム1は、アセンブリロボット10の外部において、アセンブリロボット10と情報通信を行う情報処理装置90を備えてもよい。情報処理装置90は、図示しないプロセッサ、メモリ、入出力インタフェース、通信インタフェース等を備えるコンピュータを適用し得る。情報処理装置90は、スマートフォンを含む携帯電話端末、タブレット、ラップトップコンピュータ、ウェアラブルコンピュータ等であってもよい。情報処理装置90は、例えば、上記したレポート情報を出力するユーザインタフェースの役割を果たす。なお、ユーザインタフェースは、地上ロボット20の筐体22等に設置されてもよい。
【0086】
また、情報処理装置90は、地上ロボット20の地上側制御部23やドローン40のドローン側制御部43の一部の機能を備えてもよい。例えば、情報処理装置90は、ガスセンサ情報取得部32、52、ガス濃度分布作成部33、53、ガス漏れ推定部54を有し、ガスセンサ24、44が検知したガスの情報を受信してガス濃度分布マップを作成し、ガス漏れの発生箇所GLを推定してもよい。
【0087】
また上記の実施形態では、地上ロボット20およびドローン40の各々を自律制御して動作させる構成とした。しかしながら、ガス検出システム1は、これに限定されず、例えば、情報処理装置90に地上移動制御部31および空中移動制御部51を備えてもよい。これにより、ガス検出システム1は、情報処理装置90から地上ロボット20およびドローン40に動作の指令を送信して、各装置を遠隔操作する構成とすることができる。
【0088】
また、本開示のガス検出システム1は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形例をとり得る。例えば、アセンブリロボット10は、第1形態におけるガスの検知において、粗探索工程および精探索工程の両方を行わず、いずれか一方の工程のみを行ってもよい。一例として、探索エリアSAの範囲が狭い場合には、最初から精探索工程を行っても時間のロスを抑えることができる。
【0089】
外界センサ25、45は、地上ロボット20とドローン40の各々に設けられることに限らず、ドローン40のみに設けられてもよい。地上ロボット20(アセンブリロボット10)による地上探索工程では、ドローン40の外界センサ45の情報を利用して、物体の回避動作等を行うことができる。
【0090】
上記のガス検出システム1では、1台の地上ロボット20に1台のドローン40を搭載する構成について説明した。これにより、地上ロボット20は、ドローン40を容易に搬送でき、地上でのエネルギ消費を抑制しながらガスの検出をスムーズに行うことができる。ただし、アセンブリロボット10は、1台の地上ロボット20に複数台のドローン40を搭載してもよい。これにより例えば、地上の複数の箇所でガスの濃度が高い場合には、それぞれの箇所でドローン40を浮上させる対応をとることができる。
【0091】
また、ガス検出システム1は、アセンブリロボット10を用いてガス漏れの発生箇所GLを探索するだけでなく、検出したガスの情報を用いて、大気中のガスの種類や成分量の解析等を行ってもよい。
【0092】
次に、本開示の第2実施形態に係るガス検出システム1Aについて、
図8~
図10を参照しながら説明する。
図8は、第2実施形態に係るガス検出システム1Aの全体構成を示す側面図である。
図9は、ガス検出システム1Aの地上側制御部23内およびドローン側制御部43内に形成される機能部を示すブロック図である。
図10は、第2実施形態に係るガス検出方法の一例を示すフローチャートである。
【0093】
図8に示すように、ガス検出システム1Aが検出するガス(化学物質)には、大気を基準として比重が大きいガスと、比重が小さいガスとがある。比重が大きいガスは、ガス漏れの発生箇所GLよりも低くなる方向に流れる一方で、比重が小さいガスは、ガス漏れの発生箇所GLよりも高くなる方向に流れる。複数種類のガスが漏れている場合や漏れているガスの種類が分からない場合、漏れているガスの比重によってはガス漏れの発生箇所GLの推定がずれる可能性が高まる。
【0094】
このため、ガス検出システム1Aは、ガスセンサ24、44により検知したガスの比重およびガスの濃度を取得して、これらの情報を用いてアセンブリロボット10(地上ロボット20、ドローン40)の動作内容を設定する。具体的には、
図9に示すように、地上ロボット20の地上側制御部23は、ガスセンサ情報取得部32が取得した検知情報に基づきガスの比重を特定し、またガスの濃度を判定する比重濃度判定処理部35を内部に備える。さらに、ドローン40のドローン側制御部43も、同じ機能を有する比重濃度判定処理部55を内部に備える。
【0095】
地上ロボット20の比重濃度判定処理部35は、例えば、複数種類のガス毎の比重を記述したテーブル情報を予め保有しており、取得した検知情報のガスの種類を認識すると、そのガスの種類に対応するガスの比重を抽出する。これにより、比重濃度判定処理部35は、検知したガスの比重が大気以上の場合(比重が1.0以上の場合)に、比重が大きいガスが漏れていることを認識できる。
【0096】
そして、比重濃度判定処理部35は、検知した比重が大きいガスの濃度と、予め保有している地上用の閾値とを比較して、ガスの濃度が地上用の閾値以上か否かを判定する。地上用の閾値は、大気に自然に混合される値以上であり、またガスの種類に応じて適切な値に設定されればよい。地上側制御部23は、比重が大きいガスの濃度が地上用の閾値以上の場合、比重が大きいガスが地上に流れていることを認識できる。
【0097】
一方、ドローン40の比重濃度判定処理部55も、複数種類のガス毎の比重を記述したテーブル情報を予め保有しており、取得した検知情報のガスの種類を認識すると、そのガスの種類に対応するガスの比重を抽出する。これにより、比重濃度判定処理部55は、検知したガスの比重が大気未満の場合(比重が1.0未満の場合)に、比重が小さいガスが漏れていることを認識できる。
【0098】
そして、比重濃度判定処理部55は、検知した比重が小さいガスの濃度と、予め保有している空中用の閾値とを比較して、ガスの濃度が空中用の閾値以上か否かを判定する。空中用の閾値も、大気に自然に混合される値以上であり、またガスの種類に応じて適切な値に設定されればよい。すなわち、空中用の閾値は、地上用の閾値と異なってもよい。ドローン側制御部43は、比重が小さいガスの濃度が空中用の閾値以上の場合、比重が小さいガスが空中に流れていることを認識できる。
【0099】
ガス検出システム1Aは、基本的には以上のように構成され、以下、第2実施形態に係るガス検出方法について説明する。第2実施形態に係るガス検出方法は、地上側制御部23およびドローン側制御部43の制御下に、
図10に示すステップS201~S214を順次実行する。
【0100】
第2実施形態に係るガス検出方法のステップS201~ステップS203は、基本的には第1実施形態に係るガス検出方法のステップS101~S103と同じ処理フローを行う。このため、ステップS201~S203の説明については省略する。
【0101】
精探索工程の後、アセンブリロボット10の比重濃度判定処理部35は、精探索で検知したガスの比重が大気以上か否かを判定すると共に、そのガスの濃度が地上用の閾値以上か否かを判定する(ステップS204)。すなわち、大気以上のガスは地上に流れてくるため、地上のガスの検知では大気以上の比重のガスを監視することにより、ガス漏れの状態を的確に捉えることができる。ガスの比重が大気以上であり、かつガスの濃度が地上用の閾値以上の場合(ステップS204:YES)、地上側制御部23は、第2形態への移行を決定し、ステップS205に進む。
【0102】
ステップS205において、アセンブリロボット10はガスの濃度が最も高い地上位置に移動して、地上ロボット20からドローン40を浮上させ、上昇探索工程(空中探索工程)を行う。この上昇探索工程は、基本的には第1実施形態のステップS104と同じであり、その詳細な説明については省略する。なお、ドローン40は、この上昇探索工程と共に、適宜の高度においてドローン40を水平方向に移動させる水平探索工程を行ってもよい。
【0103】
ステップS205において、ドローン40は、基本的に大気以上の比重のガスを検知しながら上昇するが、大気未満の比重のガスを検知する可能性もある。すなわち、ガスの種類が分からない場合のガス漏れの探索では、大気以上の比重のガスが漏れるだけでなく、大気未満の比重のガスも合わせて漏れる可能性がある。そのため、ドローン40の比重濃度判定処理部55は、空中探索工程で検知したガスの比重が大気未満か否かを判定すると共に、そのガスの濃度が空中用の閾値以上か否かを判定する(ステップS206)。
【0104】
大気未満の比重のガスは、空中を上昇または浮遊するため、空中のガスの検知では大気未満の比重のガスを監視することにより、大気未満の比重のガスの存在を認識できる。大気未満の比重のガスを検知しない、または大気未満の比重のガスを検知してもそのガスの濃度が空中用の閾値未満の場合(ステップS206:NO)には、大気未満の比重のガスが漏れていないと認識できる。このため、ステップS207において、ドローン側制御部43は、ドローン40によるガスの検知を終了して、地上ロボット20にドローン40を着陸させる。
【0105】
そして、ドローン側制御部43のガス漏れ推定部54は、空中探索工程で検知した大気以上の比重のガス濃度分布マップに基づき、ガス漏れの発生箇所GLを推定し、そのレポート情報をユーザインタフェースに通知する(ステップS208)。
【0106】
一方、ステップS204において、比重濃度判定処理部35は、大気以上の比重のガスを検知しない、または大気以上の比重のガスを検知してもガスの濃度が地上用の閾値未満の場合(ステップS204:NO)、大気未満の比重のガスを探索するモードに移行する。つまり今回のガスの探索は、大気以上の比重のガスが漏れていないと推定できるため、ガス検出方法は、比重が小さいガスに合わせた探索に切り替える。
【0107】
ここで、大気未満の比重のガスを探索する場合は、地上でのガスの検知結果を利用できない可能性が高まる。大気未満の比重のガスは、空中を容易に移動するため、仮に地上でガスの濃度が高い場所を特定しても、その位置の直上にガス漏れの発生箇所GLがあるとは限らないからである。このため、大気未満の比重のガスを探索するモードでは、ドローン40が浮上する複数の指定場所1~Nを設定して、各指定場所でドローン40(第2形態)による飛行探索工程を行う。指定場所1~Nは、例えば、探索エリアSAのマップ情報に基づき適宜の間隔を有するマトリックス状に設定されるとよい。指定場所1~N同士の間隔は、2m~5m程度の範囲とすることがあげられる。
【0108】
詳細には、ステップS209において、アセンブリロボット10(地上ロボット20)は、複数の指定場所1~Nのうちいずれかの指定場所に移動する。そして、指定場所においてアセンブリロボット10は、第2形態に移行してドローン40を浮上させ上昇探索工程を行う(ステップS210)。
【0109】
この上昇探索工程において、ドローン40の比重濃度判定処理部55は、ステップS206と同様に、ガスの比重が大気未満か否かを判定すると共に、そのガスの濃度が空中用の閾値以上か否かを判定する(ステップS211)。これにより、ドローン側制御部43は、指定場所の鉛直方向上側に大気未満の比重のガスが存在するか否かを把握できる。
【0110】
そして、比重濃度判定処理部55は、大気未満の比重のガスを検知しかつ当該ガスの濃度が空中用の閾値以上の場合(ステップS211:YES)、大気未満の比重のガスがドローン40の周囲に存在することを認識する。この場合、ドローン側制御部43は、その位置の周囲を水平方向に移動してガスを検知する水平探索工程を実行する(ステップS212)。この際、ガス濃度分布作成部53は、水平探索工程に伴うガス濃度分布マップを作成することで、ガスの濃度の最も高い箇所を認識可能とする。すなわち、水平探索工程を行うことで、大気未満の比重のガスについて濃度が高い位置をより正確に探索することが可能となる。この水平探索工程の範囲は、隣接し合う指定場所1~Nの間隔に基づき設定するとよく、例えば、2m~5mの範囲に設定することがあげられる。
【0111】
また、ドローン側制御部43は、大気以上の比重のガスに基づき上昇探索工程を行った後に、大気未満の比重のガスを検知しかつ当該ガスの濃度が空中用の閾値以上の場合(ステップS206:YES)でも、水平探索工程(ステップS212)を実行する。これにより、ガス検出システム1は、大気以上の比重のガスおよび大気未満の比重のガスの両方についてガス漏れの発生箇所GLを推定することが可能となる。
【0112】
ステップS212を実施してガス漏れの発生箇所GLを推定すると、ステップS207に移行して、地上ロボット20にドローン40を着陸させる。そしてステップS208において、ガス漏れ推定部54は、ガス濃度分布マップに基づき、ガス漏れの発生箇所GLを推定し、そのレポート情報をユーザインタフェースに通知する。
【0113】
一方、ステップS211において、比重濃度判定処理部55は、大気未満の比重のガスを検知しない、または大気未満の比重のガスを検知してもそのガスの濃度が空中用の閾値未満の場合(ステップS211:NO)に、この指定場所の検知を終了する。これにより、ドローン側制御部43は、地上ロボット20にドローン40を着陸させる(ステップS213)。
【0114】
ステップS213の後、ドローン側制御部43は、各指定場所1~Nの全てを探索したか否かを判定する(ステップS214)。この判定において、探索していない指定場所がある場合(ステップS214:NO)には、ステップS209に戻り、以下同様の処理フローを行う。
【0115】
また、探索していない指定場所がない場合(ステップS214:YES)、結局、大気未満の比重のガスについてガス漏れが発生していないことになる。そのため、ステップS208に移行し、ガス漏れ推定部54は、ガス漏れの発生箇所GLを探索できなかった旨のレポート情報をユーザインタフェースに通知する。これにより、ユーザは、探索エリアSAにおいてガス漏れがなかったことをスムーズに認識できる。
【0116】
以上に開示された実施形態は、例えば、以下の態様および効果を有する。
【0117】
[付記1]
地上を移動可能な地上移動体と、
前記地上移動体に搭載されると共に、空中に浮上可能な1以上の飛行体と、
少なくとも前記1以上の飛行体に設けられ、気体中の化学物質を検知するセンサと、を備えるガス検出システムであって、
前記1以上の飛行体が前記地上移動体に搭載された第1形態で前記センサの検知を行った後、前記地上移動体から前記1以上の飛行体を浮上させた第2形態に移行して前記センサの検知を行う、
ガス検出システム。
【0118】
[付記1の効果]
上記のガス検出システムによれば、電力消費を抑えて、化学物質の状態を効率的に検出できる。すなわち、地上移動体に飛行体を搭載した第1形態で化学物質の検知を行うことで、飛行体の浮上の機会を抑制することが可能となり、飛行体の浮上に伴う電力消費を大幅に低減できる。また、飛行体が浮上する機会が少ないことで空中の化学物質の乱れを抑制でき、ガス検出システムは、第2形態による化学物質の検知を短時間に行うことが可能となる。結果的に、ガス検出システムは、3次元空間における化学物質の状態を迅速に認識することが可能となる。
【0119】
[付記2]
前記地上移動体は、前記第1形態において前記センサにより検知した前記化学物質の濃度に基づき前記1以上の飛行体が浮上する地上位置を設定して、当該地上位置に移動し、
前記1以上の飛行体は、前記地上位置で前記第2形態に移行する、
付記1に記載のガス検出システム。
【0120】
[付記2の効果]
ガス検出システムは、第1形態で検知した化学物質の濃度に基づき第2形態に移行する地上位置を設定することで、化学物質の濃度が高い位置をより効率的に探索することが可能となる。
【0121】
[付記3]
前記地上移動体は、前記第1形態において、第1エリア内を移動して前記センサの検知を行う第1探索ステップと、第1探索ステップの検知結果に基づき前記第1エリアよりも狭い範囲である第2エリアを設定し当該第2エリア内を移動して前記センサの検知を行って前記地上位置を設定する第2探索ステップと、を実行する、
付記2に記載のガス検出システム。
【0122】
[付記3の効果]
ガス検出システムは、第1探索ステップおよび第2探索ステップを行うことで、例えば、広い探索エリアであったとしても化学物質の検知を効率化できる。
【0123】
[付記4]
前記第2エリアは、前記第1エリアにおいて前記化学物質の濃度が最も高い位置およびその周辺である、
付記3に記載のガス検出システム。
【0124】
[付記4の効果]
ガス検出システムは、第1エリアにおいて検知した化学物質の濃度が最も高い位置を第2エリアに設定することで、第2エリアを充分に狭めて化学物質の濃度の高い位置を一層精度よく探索できる。
【0125】
[付記5]
前記地上位置は、前記第2エリアにおいて前記化学物質の濃度が最も高い位置である、
付記4に記載のガス検出システム。
【0126】
[付記5の効果]
ガス検出システムは、第2エリアにおいて検知した化学物質の濃度が最も高い位置を地上位置に設定することで、飛行体の浮上において化学物質の濃度が高い箇所を効率的に探索できる。
【0127】
[付記6]
前記センサは、前記1以上の飛行体と前記地上移動体の各々に設けられている、
請求項1に記載のガス検出システム。
【0128】
[付記6の効果]
ガス検出システムは、飛行体と地上移動体の各々にセンサを備えることで、それぞれのセンサによって地上でのガスの検知と、空中でのガスの検知とを適切に行うことができる。
【0129】
[付記7]
前記地上移動体は、前記第1形態において移動しながら前記センサにより前記化学物質の濃度を検知し、地上における前記化学物質の濃度分布を認識する、
付記1乃至6のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【0130】
[付記7の効果]
ガス検出システムは、地上を移動しながら化学物質を検知することで、移動と停止を繰り返して検知を行う場合と比べて、検知にかかる時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0131】
[付記8]
前記1以上の飛行体は、前記第2形態において移動しながら前記センサにより前記化学物質の濃度を検知し、空中における前記化学物質の濃度分布を認識する、
付記1乃至7のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【0132】
[付記8の効果]
ガス検出システムは、空中を移動しながら化学物質を検知することで、空中の検知にかかる時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0133】
[付記9]
前記センサが検知した検知情報に基づき、大気に対する前記化学物質の比重および前記化学物質の濃度を認識し、前記地上移動体および/または前記1以上の飛行体の制御内容を設定する処理部を有する、
付記1乃至8のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【0134】
[付記9の効果]
ガス検出システムは、化学物質の比重に基づき制御内容を設定することで、空中における化学物質の流れ(位置の変化)に応じて適切な検知を行うことができる。
【0135】
[付記10]
前記処理部は、
前記第1形態で大気以上の比重の前記化学物質を検知しかつ当該化学物質の濃度が地上用の閾値以上の場合に、前記第2形態に移行して前記センサの検知を行い、
前記第1形態で大気以上の比重の前記化学物質を検知しない、または大気以上の比重の前記化学物質を検知しかつ当該化学物質の濃度が前記地上用の閾値未満の場合に、設定された位置に前記地上移動体を移動した後に、前記第2形態に移行して前記センサの検知を行う、
付記9に記載のガス検出システム。
【0136】
[付記10の効果]
これにより、ガス検出システムは、大気以上の比重の化学物質を地上および空中の両方で適切に検知できる。
【0137】
[付記11]
前記地上移動体および前記1以上の飛行体のうち少なくとも一方は、移動方向に存在する地形および/または物体の情報を取得する外界センサを備え、
前記第1形態の移動時および/または前記第2形態の移動時に、前記外界センサの検出に基づき前記移動方向に回避対象が存在した場合に、当該回避対象を回避して移動を継続する、
付記1乃至10のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【0138】
[付記11の効果]
これにより、ガス検出システムは、地上移動体および飛行体が物体に接触することを抑制して、化学物質の検知を安定して行うことができる。
【0139】
[付記12]
前記地上移動体は、前記第1形態および前記第2形態のうち少なくとも一方において、前記1以上の飛行体への給電を行う給電部を有する、
付記1乃至11のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【0140】
[付記12の効果]
これにより、飛行体は、飛行時において、電力不足により検知が途中で途切れることを抑制できる。
【0141】
[付記13]
前記1以上の飛行体は、前記地上移動体に1つ搭載されている、
付記1乃至12のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【0142】
[付記13の効果]
これにより、ガス検出システムは、多くの飛行体が飛ぶことによる空中のガスの乱れを抑えて、焦点を絞ってガス漏れの発生箇所を探索することが可能となる。
【0143】
[付記14]
前記センサは、複数種類の前記化学物質を区分けして検知する、
付記1乃至13のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【0144】
[付記14の効果]
ガス検出システムは、複数種類の化学物質を区分けして検知することで、様々な化学物質に対応して検知を行うことができ、汎用性を一層高めることが可能となる。
【0145】
[付記15]
前記地上移動体および前記1以上の飛行体のうち少なくとも一方は、前記センサが検知した情報を、前記地上移動体および前記1以上の飛行体のうち他方に送信する、または前記地上移動体および前記1以上の飛行体とは異なる情報処理装置に送信する、
付記1乃至14のいずれか1項に記載のガス検出システム。
【0146】
[付記15の効果]
ガス検出システムは、地上移動体および1以上の飛行体のセンサの検知情報をまとめることで、化学物質の状態を一層把握させ易くすることができる。
【0147】
[付記16]
気体中の化学物質を検出するガス検出方法であって、
地上を移動可能な地上移動体に、空中に浮上可能な1以上の飛行体を搭載した第1形態で移動を行い、少なくとも前記1以上の飛行体に設けられたセンサにより前記化学物質の検知を行う地上探索工程と、
前記地上探索工程の後に、前記地上移動体から前記1以上の飛行体を浮上させた第2形態に移行して、前記センサにより前記化学物質の検知を行う空中探索工程と、を有する、
ガス検出方法。
【0148】
[付記16の効果]
上記のガス検出方法も、電力消費を抑えて、化学物質の状態を効率的に検出できる。
【0149】
今回開示された実施形態に係るガス検出システム1、1Aおよびガス検出方法は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0150】
1、1A ガス検出システム
10 アセンブリロボット
20 地上ロボット(地上移動体)
23 地上側制御部
24、44 ガスセンサ
25、45 外界センサ
29 給電部
40 ドローン(飛行体)
43 ドローン側制御部
90 情報処理装置
【要約】
【課題】電力消費を抑えて、化学物質を効率的に検出できる技術を提供する。
【解決手段】ガス検出システムは、地上を移動可能な地上移動体と、前記地上移動体に搭載されると共に、空中に浮上可能な1以上の飛行体と、少なくとも前記1以上の飛行体に設けられ、気体中の化学物質を検知するセンサと、を備える。ガス検出システムは、前記1以上の飛行体が前記地上移動体に搭載された第1形態で前記センサの検知を行った後、前記地上移動体から前記1以上の飛行体を浮上させた第2形態に移行して前記センサの検知を行う。
【選択図】
図1