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特許7561348間葉系幹細胞の増殖促進または減少抑制のための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】間葉系幹細胞の増殖促進または減少抑制のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/57 20060101AFI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240927BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K38/57
A61P43/00 105
A61P43/00 107
A61P43/00 111
A61P1/04
A61P1/00
C12N5/0775 ZNA
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021535424
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2020029229
(87)【国際公開番号】W WO2021020509
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019141325
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020058544
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506364400
【氏名又は名称】株式会社ステムリム
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】玉井 克人
(72)【発明者】
【氏名】新保 敬史
(72)【発明者】
【氏名】山崎 尊彦
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-512423(JP,A)
【文献】特開平03-181422(JP,A)
【文献】特表2018-502579(JP,A)
【文献】国際公開第2008/053892(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/133939(WO,A1)
【文献】織間一郎,炎症性腸疾患における好中球エラスターゼの測定およびその意義,杏林医学会雑誌,1994年,Vol.25, No.4, pp.537-544
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
C12N 5/00-5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間葉系幹細胞の増殖を促進または減少を抑制するため組成物であって、セルピンA3を含む組成物。
【請求項2】
前記間葉系幹細胞が、コロニー形成性の間葉系幹細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記間葉系幹細胞が、骨髄の間葉系幹細胞である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
対象に投与される、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記対象が、炎症性腸疾患を患っている、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記間葉系幹細胞の減少が、炎症性腸疾患に起因する、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、日本国特許出願第2019-141325号および第2020-058544号について優先権を主張するものであり、ここに参照することによって、その全体が本明細書中へ組み込まれるものとする。
本開示は、間葉系幹細胞の増殖促進または減少抑制のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
損傷組織から放出されるHMGB1(High mobility group box 1:高移動性グループ1タンパク質)が骨髄中に存在するPDGFRα(platelet-derived growth factor receptor alpha)陽性細胞(間葉系幹細胞)を刺激して骨髄から循環系へと動員し、当該動員された細胞が損傷部位へ集積して組織の再生を誘導することが報告されている(特許文献1,2)。故に、何らかの要因により骨髄内の間葉系幹細胞が減少している場合には、組織の再生が遅延し又は不十分となるおそれがある。つまり、間葉系幹細胞を介した生体内の組織再生メカニズムが有効に機能するためには、骨髄内に必要量の間葉系幹細胞が存在していることが重要となる。このようなことから、骨髄内の間葉系幹細胞を含む細胞について、その量を維持、回復、増殖させることが望まれており、かかる作用を有する新たな薬の開発が待たれている。
【0003】
更に、近年、炎症性腸疾患の患者数が増加している。炎症性腸疾患は、慢性あるいは、寛解と再燃とを繰り返す腸管の炎症性疾患の総称で、一般に潰瘍性大腸炎とクローン病の二疾患を指す。潰瘍性大腸炎およびクローン病は、いずれも原因不明の難治性の疾患である。薬物治療も行われているが、個々の患者において薬効には個人差があり、また、副作用の点から治療効果の高い既存医薬を処方できないケースも存在するため、新たな医薬の提供が待たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO/2008/053892
【文献】WO/2009/133939
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的の1つは、間葉系幹細胞の増殖を促進または減少を抑制することである。
更に本開示の目的の1つは、炎症性腸疾患を治療するための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある態様において、本開示は、間葉系幹細胞の増殖を促進または減少を抑制するための組成物であって、セルピンA3を含む組成物に関する。
【0007】
さらなる態様において、本開示は、炎症性腸疾患を治療するための、セルピンA3を含む組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、例えば、間葉系幹細胞、特に骨髄の間葉系幹細胞の増殖の促進または減少の抑制が可能になる。また、本開示により、例えば、炎症性腸疾患の治療効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、健常マウスおよびDSS投与マウスの体重変化を示す。各プロットは平均値を示し、エラーバーは標準誤差を示す。p<0.05、**p<0.01、two-way ANOVA。
図2図2は、健常マウスおよびDSS投与マウスの大腸の長さを測定した結果を示す。左の写真は、マウスから採取した大腸を示す。右のグラフは、各採取日において測定した大腸長さを示し、3匹の平均値をバーグラフで、標準誤差をエラーバーで示している。p<0.05、**p<0.01、two-way ANOVA。
図3図3は、DSS投与マウスの骨髄中のコロニー形成性細胞の変化を示すコロニーアッセイの結果である。各採取日の健常マウスの骨髄細胞から形成されたコロニー数の平均値を100%とした場合の、同じ採取日のDSS投与マウスのコロニー数(%)を示す。p<0.05、**p<0.01、two-way ANOVA。
図4図4は、DSS投与マウスの骨髄細胞をセルピンA3N添加培地で培養したときのコロニーアッセイの結果を示す。左のグラフは、健常マウスの骨髄細胞をセルピンA3N(0、0.5、1、2、または4ng/mL)存在下で10日間培養したときのコロニー数を示す。右のグラフは、DSS投与マウスの骨髄細胞をセルピンA3N(4ng/mL)の存在下または非存在下で10日間培養したときのコロニー数(グラフ中の「IBD+Seripina3n」または「IBD」)、および健常マウスの骨髄細胞をセルピンA3Nの非存在下で同期間培養したときのコロニー数(グラフ中の「Ctrl」)を示す。p<0.05、**p<0.01、two-way ANOVA。
図5図5は、DSSとセルピンA3Nを含まないPBSとを投与したマウス(グラフ中の「DSS+PBS」)、DSSとセルピンA3Nを含むPBSとを投与したマウス(グラフ中の「DSS+Seripina3n」)、または健常マウス(グラフ中の「Control」)から採取した骨髄細胞のコロニーアッセイ結果を示す。p<0.05、one-way ANOVA。
図6図6は、DSSとセルピンA3Nを含まないPBSとを投与したマウス(グラフ中の「DSS+PBS」)、DSSとセルピンA3Nを含むPBSとを投与したマウス(グラフ中の「DSS+Seripina3n」)、または健常マウス(グラフ中の「Control」)の体重変化(上)、大腸の写真(左下)、測定した大腸長さ(右下)を示す。体重変化を示したグラフにおける各プロットおよび大腸長さを示すグラフにおけるバーグラフは平均値を示し、エラーバーは標準誤差を示す。矢頭はセルピンA3Nの投与を示す。
図7図7は、DSSとセルピンA3Nを含まないPBSとを投与したマウス(グラフ中の「DSS+PBS」)、DSSとセルピンA3Nを含むPBSとを投与したマウス(グラフ中の「DSS+Seripina3n」)、または健常マウス(グラフ中の「Control」)の体重変化を示す。各プロットは平均値を示し、エラーバーは標準誤差を示す。矢頭はセルピンA3Nの投与を示す。
図8図8は、DSS投与後にセルピンA3Nを含まないPBSまたはセルピンA3Nを含むPBSを投与したマウス(グラフ中の「DSS+PBS」または「DSS+Seripina3n」)または健常マウス(グラフ中の「Control」)の体重変化を示す。各プロットは平均値を示し、エラーバーは標準誤差を示す。矢頭はセルピンA3Nの投与を示す。
図9図9は、DSSとセルピンA3Nを含まないPBSとを投与したマウス(黒カラム)またはDSSとセルピンA3Nを含むPBSとを投与したマウス(斜線カラム)における、追加のDSS投与後の体重変化を示す。コントロールとして健常マウス(白カラム)の結果を示す。初回のDSS投与開始日から21日目(追加のDSS投与開始日)の各マウスの体重を100%として示す。バーグラフは平均値を示し、エラーバーは標準誤差を示す。
図10図10は、DSS投与マウスの大腸の細胞における遺伝子発現パターンを示す。左のグラフは、K平均法(K-means clustering)によりクラスタリングされた4つのサブクラスター(K1、K2、K3、K4)を示し、右のグラフはK4に含まれる遺伝子の発現レベルを示す。
図11図11は、DSSとセルピンA3Nを含まないPBSとを投与したマウス(グラフ中の「DSS+PBS」)、DSSとセルピンA3Nを含むPBSとを投与したマウス(グラフ中の「DSS+Seripina3n」)、または健常マウス(グラフ中の「Control」)の大腸の細胞におけるTNF-α、IL-1β、およびIL-6の発現を示す。p<0.05、one-way ANOVA。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に具体的な定めのない限り、本開示で使用される用語は、有機化学、医学、薬学、分子生物学、微生物学等の分野における当業者に一般に理解されるとおりの意味を有する。以下にいくつかの本開示で使用される用語についての定義を記載するが、これらの定義は、本開示において、一般的な理解に優先する。
【0011】
本開示では、数値が「約」の用語を伴う場合、その値の±10%の範囲を含むことを意図する。例えば、「約20」は、「18~22」を含むものとする。数値の範囲は、両端点の間の全ての数値および両端点の数値を含む。範囲に関する「約」は、その範囲の両端点に適用される。従って、例えば、「約20~30」は、「18~33」を含むものとする。
【0012】
本開示において、「細胞」は、文脈に応じて1個の細胞または複数の細胞を意味する。複数の細胞を「細胞集団」と呼ぶ場合もあり、細胞集団は、文脈に応じて一種類の細胞からなる細胞集団または複数種の細胞を含む細胞集団であり得る。
【0013】
セルピンA3またはこれを含む本開示の組成物は、インビボまたはインビトロにおいて、間葉系幹細胞の増殖を促進し、または減少を抑制する。ある実施形態において、セルピンA3またはこれを含む組成物は、対象に投与され、その生体内で、間葉系幹細胞の増殖を促進し、または減少を抑制するために用いられる。細胞の増殖の促進には、対象における細胞数を増加することが含まれ、細胞の減少の抑制には、対象における細胞数の低下を予防すること、および細胞数の低下を低減することが含まれる。別の実施形態において、セルピンA3またはこれを含む組成物は、インビトロでの培養時に、間葉系幹細胞の増殖を促進し、または減少を抑制するために用いられる。
【0014】
対象としては、ヒト、および非ヒト動物、例えばマウス、ラット、サル、ブタ、イヌ、ウサギ、ハムスター、モルモットなどが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態において、対象はヒトである。
【0015】
本開示において、「間葉系幹細胞」(本明細書中、MSCと記載することがある)は、骨、軟骨、脂肪、筋肉などの間葉系組織への分化能を有する細胞を意味する。間葉系幹細胞は、さらに上皮系組織や神経組織への分化能を有してもよい。間葉系幹細胞は、骨髄、血液、例えば末梢血または臍帯血、皮膚、脂肪、歯髄等に存在する。ある実施形態において、間葉系幹細胞は、骨髄の間葉系幹細胞である。
【0016】
ある実施形態では、間葉系幹細胞は、コロニー形成能を有することを指標として判別することができる。コロニーの形状や大きさ、コロニーを形成する細胞の密度、形態を観察することにより、間葉系幹細胞であることは確実に判別できる。
【0017】
ヒト間葉系幹細胞のマーカーとしては、PDGFRα陽性、PDGFRβ陽性、Lin陰性、CD45陰性、CD44陽性、CD90陽性、CD29陽性、Flk-1陰性、CD105陽性、CD73陽性、CD90陽性、CD71陽性、Stro-1陽性、CD106陽性、CD166陽性、CD31陰性、CD271陽性、CD11b陰性の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。例えば、ヒト間葉系幹細胞は、PDGFRα陽性として特定されることがあり、また、ヒト間葉系幹細胞は、PDGFRα陽性且つCD45陰性として特定されることがある。ある実施形態において、ヒト間葉系幹細胞は、PDGFRβ陽性として特定されることがあり、また、ヒト間葉系幹細胞は、PDGFRβ陽性且つCD45陰性として特定されることがある。
【0018】
マウス間葉系幹細胞のマーカーとしては、CD44陽性、PDGFRα陽性、PDGFRβ陽性、CD45陰性、Lin陰性、Sca-1陽性、c-kit陰性、CD90陽性、CD105陽性、CD29陽性、Flk-1陰性、CD271陽性、CD11b陰性の全部または一部が例示できるが、これらに制限されるものではない。例えば、マウス間葉系幹細胞は、PDGFRα陽性として特定されることがあり、また、マウス間葉系幹細胞は、PDGFRα陽性且つCD45陰性で特定されることがある。
【0019】
本開示において、「骨髄細胞」とは、骨髄に存在する細胞集団を意味する。骨髄細胞には、CD45を発現している細胞(本明細書中、CD45陽性細胞またはCD45細胞と記載することがある)と、発現していない細胞(本明細書中、CD45陰性細胞またはCD45細胞と記載することがある)が存在する。
【0020】
本開示において、骨髄としては、例えば、大腿骨、脛骨、頭蓋骨、胸骨、椎骨、肋骨、骨盤骨の骨髄が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
ある実施形態において、セルピンA3またはこれを含む組成物は、コロニー形成性の間葉系幹細胞の増殖を促進または減少を抑制する。「コロニー形成性の間葉系幹細胞」とは、固相上で培養した場合に固相に付着してコロニーを形成する間葉系幹細胞を意味する。コロニー形成性の間葉系幹細胞の増殖または減少は、例えば、コロニーアッセイによって評価することができる。
【0022】
ある実施形態において、セルピンA3またはこれを含む組成物は、骨髄の間葉系幹細胞(すなわち、骨髄細胞中に含まれる間葉系幹細胞)の増殖を促進または減少を抑制する。さらなる実施形態において、セルピンA3またはこれを含む組成物は、骨髄のコロニー形成性の間葉系幹細胞の増殖を促進または減少を抑制する。
【0023】
セルピンは、セリンプロテアーゼの阻害効果を持つ事で同定された類似構造を持つタンパク質のスーパーファミリーであり、幅広い界の生物で発見されている。ほとんどのセルピンは、タンパク質の分解反応を制御する機能を有し、その活性機構として、セルピン自体が立体構造の大きな変化を受ける事でプロテアーゼの活性中心を破壊し、標的を不可逆的に阻害することが知られている。
【0024】
ヒトのセルピンA3は、α1-アンチキモトリプシンとも呼ばれるセルピンの1つであり、ヒトのSERPINA3遺伝子によってコードされるタンパク質である。セルピンA3は、キモトリプシン、キマーゼ、エラスターゼ、カテプシンG等を阻害することが知られている。SERPINA3遺伝子は、チンパンジー、アカゲザル、イヌ、ウシ、マウス、およびラットで保存されていることが知られている。
【0025】
マウスにおいては、ヒトSERPINA3遺伝子のホモログとして複数の遺伝子が存在する。これら遺伝子のうち特に、SERPINA3N遺伝子は、ヒトSERPINA3遺伝子と高い程度の相同性を有する。セルピンA3Nは、セルピンA3とセルピンA1(アンチトリプシンとも呼ばれる)のそれぞれと基質特異性を共有し、キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、およびカテプシンGを阻害することが報告されている。セルピンA3Nは、グランザイムBを阻害することも報告されている。
【0026】
本開示において、「セルピンA3」なる用語は、ヒトSERPINA3遺伝子またはそのホモログ(本明細書中、セルピンA3遺伝子と称する)にコードされるタンパク質を意味する。セルピンA3は、ヒトまたは非ヒト動物のタンパク質、例えばヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタ、ウシ、サル、チンパンジー、オランウータンのタンパク質でありうるが、これらに限定されない。ヒトSERPINA3遺伝子のホモログにコードされるタンパク質としては、例えば、表1に示される遺伝子にコードされるタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
【表1-1】
【表1-2】
【0028】
表1は、NCBIデータベース(NCBI data: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、オルソログデータベース(OrthoDB: https://www.orthodb.org/)、または文献(Ref. 1: Heit et al., Human Genomics, 7: 22, 2013;Ref. 2: Horvath et al., J. Biol. Chem, 280, 43168-43178, 2005;Ref. 3: Pelissier et al., BMC Genomics, 9: 151, 2008)に示される、ヒトSERPINA3遺伝子のホモログ(homo)、ヒトSERPINA3遺伝子のオルソログ(a3 ortholog)、またはマウスSERPINA3N遺伝子のオルソログ(a3n ortholog)を示す。表1には、各遺伝子のID(NCBI Reference Sequence;Entrez gene ID)、コードされるタンパク質のアミノ酸長(amino acids)、シグナルペプチドのアミノ酸位置(signal)、保存領域(region)およびその名称(region name)を示す。
【0029】
ある実施形態において、セルピンA3は、ヒトSERPINA3遺伝子またはそのオルソログにコードされるタンパク質である。ヒトSERPINA3遺伝子のオルソログにコードされるタンパク質としては、例えば、表1にオルソログとして示される遺伝子にコードされるタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
別の実施形態において、セルピンA3は、ヒトSERPINA3遺伝子にコードされるタンパク質、またはヒトSERPINA3遺伝子のホモログにコードされ、α1-アンチトリプシン様構造を含むタンパク質である。ヒトSERPINA3遺伝子のホモログにコードされ、α1-アンチトリプシン様構造を含むタンパク質としては、例えば、表1においてα1-アンチトリプシン様構造を含むことが示される遺伝子によってコードされるタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
さらなる実施形態において、セルピンA3は、ヒトSERPINA3遺伝子、マウスSERPINA3N遺伝子、またはラットSERPINA3N遺伝子によってコードされるタンパク質、すなわち、ヒトセルピンA3、マウスセルピンA3N、ラットセルピンA3Nである。
【0032】
セルピンA3は、生物種により異なるが、例えば全長400~450残基前後のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、生体内では分泌タンパク質として細胞外に存在することが知られている。セルピン遺伝子にコードされる全長アミノ酸配列からなるタンパク質も活性を有するが、全長タンパク質のN末端が切断されて生じるC末端側のポリペプチド断片が成熟タンパク質として機能するものも知られている。
【0033】
本開示において、「セルピンA3」には、全長セルピンA3および成熟セルピンA3が含まれる。全長セルピンA3とは、セルピンA3遺伝子にコードされる全長アミノ酸配列からなるタンパク質を意味する。成熟セルピンA3とは、全長セルピンA3がプロテアーゼによるプロセシングを受けて生じることが確認または示唆されているC末端側のポリペプチドであって、生物学的活性を有するものを意味する。成熟セルピンA3は、例えば、全長セルピンA3からN末端シグナルペプチドを除いたC末端側のポリペプチドでありうる。
【0034】
例えば、セルピンA3は、以下のa)~g)から選択されるポリペプチドであり得る:
a)全長もしくは成熟セルピンA3のアミノ酸配列を含むか、または当該アミノ酸配列からなるポリペプチド、
b)成熟セルピンA3のアミノ酸配列を含み、且つ、全長セルピンA3の一部のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
c)全長もしくは成熟セルピンA3の一部のアミノ酸配列を含むか、または当該アミノ酸配列からなり、全長もしくは成熟セルピンA3と機能的に同等なポリペプチド、
d)全長もしくは成熟セルピンA3のアミノ酸配列において1もしくは複数個、例えば、1~10個、1~5個、1~3個または1もしくは2個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含むか、または当該アミノ酸配列からなり、全長もしくは成熟セルピンA3と機能的に同等なポリペプチド、
e)全長もしくは成熟セルピンA3のアミノ酸配列と約80%以上、例えば約85%以上、約90%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または当該アミノ酸配列からなり、全長もしくは成熟セルピンA3と機能的に同等なポリペプチド、
f)全長もしくは成熟セルピンA3をコードする核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、全長もしくは成熟セルピンA3と機能的に同等なポリペプチド、および
g)全長もしくは成熟セルピンA3をコードする核酸配列と約70%以上、例えば約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ、全長もしくは成熟セルピンA3と機能的に同等なポリペプチド。
【0035】
全長もしくは成熟セルピンA3と「機能的に同等」とは、当該タンパク質と同質の生物学的活性を有することをいい、ここにいう「同質」とは定性的評価において同じであることを意味する。本開示における全長もしくは成熟セルピンA3の生物学的活性としては、例えば、間葉系幹細胞の増殖促進活性または減少抑制活性、およびセリンプロテアーゼの阻害活性、例えば、キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、カテプシンG、およびキマーゼから選択される1種以上のセリンプロテアーゼの阻害活性が挙げられる。ある実施形態において、全長もしくは成熟セルピンA3と機能的に同等なポリペプチドは、間葉系幹細胞の増殖促進活性または減少抑制活性を有するポリペプチドである。
【0036】
本開示において、アミノ酸配列または核酸配列の同一性とは、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド間の配列の一致の程度を意味し、比較対象の配列の領域にわたって最適な状態(アミノ酸またはヌクレオチドの一致が最大となる状態)にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。配列同一性の数値(%)は両方の配列に存在する同一のアミノ酸またはヌクレオチドを決定して、適合部位の数を決定し、次いでこの適合部位の数を比較対象の配列領域内のアミノ酸またはヌクレオチドの総数で割り、得られた数値に100をかけることにより算出される。最適なアラインメントおよび配列同一性を得るためのアルゴリズムとしては、当業者が通常利用可能な種々のアルゴリズム(例えば、BLASTアルゴリズム、FASTAアルゴリズムなど)が挙げられる。配列同一性は、例えばBLAST、FASTAなどの配列解析ソフトウェアを用いて決定され得る。
【0037】
「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」に関して、ここで使用されるハイブリダイゼーションは、例えば、Molecular Cloning, T. Maniatis et al., CSH Laboratory (1983) 等に記載される通常の方法に準じて行うことができる。また「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC(1.5M NaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10×SSCとする)、50%ホルムアミドを含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、2×SSCで50℃にて洗浄するような条件(Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6)、および、それと同等のストリンジェンシーをもたらす条件を挙げることができる。
【0038】
代表的なヒトセルピンA3、マウスセルピンA3N、ラットセルピンA3Nをコードする核酸配列、およびこれらの全長および成熟タンパク質のアミノ酸配列を以下に示す。

ヒトセルピンA3 全長タンパク質(NP_001076.2)(配列番号1)
MERMLPLLALGLLAAGFCPAVLCHPNSPLDEENLTQENQDRGTHVDLGLASANVDFAFSLYKQLVLKAPDKNVIFSPLSISTALAFLSLGAHNTTLTEILKGLKFNLTETSEAEIHQSFQHLLRTLNQSSDELQLSMGNAMFVKEQLSLLDRFTEDAKRLYGSEAFATDFQDSAAAKKLINDYVKNGTRGKITDLIKDLDSQTMMVLVNYIFFKAKWEMPFDPQDTHQSRFYLSKKKWVMVPMMSLHHLTIPYFRDEELSCTVVELKYTGNASALFILPDQDKMEEVEAMLLPETLKRWRDSLEFREIGELYLPKFSISRDYNLNDILLQLGIEEAFTSKADLSGITGARNLAVSQVVHKAVLDVFEEGTEASAATAVKITLLSALVETRTIVRFNRPFLMIIVPTDTQNIFFMSKVTNPKQA

ヒトセルピンA3 成熟タンパク質(配列番号1の24-423番目)(配列番号24)
HPNSPLDEENLTQENQDRGTHVDLGLASANVDFAFSLYKQLVLKAPDKNVIFSPLSISTALAFLSLGAHNTTLTEILKGLKFNLTETSEAEIHQSFQHLLRTLNQSSDELQLSMGNAMFVKEQLSLLDRFTEDAKRLYGSEAFATDFQDSAAAKKLINDYVKNGTRGKITDLIKDLDSQTMMVLVNYIFFKAKWEMPFDPQDTHQSRFYLSKKKWVMVPMMSLHHLTIPYFRDEELSCTVVELKYTGNASALFILPDQDKMEEVEAMLLPETLKRWRDSLEFREIGELYLPKFSISRDYNLNDILLQLGIEEAFTSKADLSGITGARNLAVSQVVHKAVLDVFEEGTEASAATAVKITLLSALVETRTIVRFNRPFLMIIVPTDTQNIFFMSKVTNPKQA

ヒトセルピンA3 成熟タンパク質(配列番号1の26-423番目)(配列番号25)
NSPLDEENLTQENQDRGTHVDLGLASANVDFAFSLYKQLVLKAPDKNVIFSPLSISTALAFLSLGAHNTTLTEILKGLKFNLTETSEAEIHQSFQHLLRTLNQSSDELQLSMGNAMFVKEQLSLLDRFTEDAKRLYGSEAFATDFQDSAAAKKLINDYVKNGTRGKITDLIKDLDSQTMMVLVNYIFFKAKWEMPFDPQDTHQSRFYLSKKKWVMVPMMSLHHLTIPYFRDEELSCTVVELKYTGNASALFILPDQDKMEEVEAMLLPETLKRWRDSLEFREIGELYLPKFSISRDYNLNDILLQLGIEEAFTSKADLSGITGARNLAVSQVVHKAVLDVFEEGTEASAATAVKITLLSALVETRTIVRFNRPFLMIIVPTDTQNIFFMSKVTNPKQA

マウスセルピンA3N 全長タンパク質(NP_033278.2)(配列番号11)
MAFIAALGLLMAGICPAVLCFPDGTLGMDAAVQEDHDNGTQLDSLTLASINTDFAFSLYKELVLKNPDKNIVFSPLSISAALAVMSLGAKGNTLEEILEGLKFNLTETSEADIHQGFGHLLQRLNQPKDQVQISTGSALFIEKRQQILTEFQEKARALYQAEAFTADFQQPRQAKKLINDYVRKQTQGMIKELVSDLDKRTLMVLVNYIYFKAKWKVPFDPLDTFKSEFYAGKRRPVIVPMMSMEDLTTPYFRDEELFCTVVELKYTGNASAMFILPDQGKMQQVEASLQPETLRKWKNSLKPRMIDELHLPKFSISTDYSLEDVLSKLGIREVFSTQADLSAITGTKDLRVSQVVHKAVLDVAETGTEAAAATGVKFVPMSAKLYPLTVYFNRPFLIMIFDTETEIAPFIAKIANPK

マウスセルピンA3N 成熟タンパク質(配列番号11の21-418番目)(配列番号26)
FPDGTLGMDAAVQEDHDNGTQLDSLTLASINTDFAFSLYKELVLKNPDKNIVFSPLSISAALAVMSLGAKGNTLEEILEGLKFNLTETSEADIHQGFGHLLQRLNQPKDQVQISTGSALFIEKRQQILTEFQEKARALYQAEAFTADFQQPRQAKKLINDYVRKQTQGMIKELVSDLDKRTLMVLVNYIYFKAKWKVPFDPLDTFKSEFYAGKRRPVIVPMMSMEDLTTPYFRDEELFCTVVELKYTGNASAMFILPDQGKMQQVEASLQPETLRKWKNSLKPRMIDELHLPKFSISTDYSLEDVLSKLGIREVFSTQADLSAITGTKDLRVSQVVHKAVLDVAETGTEAAAATGVKFVPMSAKLYPLTVYFNRPFLIMIFDTETEIAPFIAKIANPK

マウスセルピンA3N 全長タンパク質(配列番号27)
MAFIAALGLLMAGICPAVLCFPDGTLGMDAAVQEDHDNGTQLDSLTLASINTDFAFSLYKELVLKNPDKNIVFSPLSISAALAVMSLGAKGNTLEEILEGLKFNLTETSEADIHQGFGHLLQRLNQPKDQVQISTGSALFIEKRQQILTEFQEKAKTLYQAEAFTADFQQPRQAKKLINDYVRKQTQGMIKELVSDLDKRTLMVLVNYIYFKAKWKVPFDPLDTFKSEFYAGKRRPVIVPMMSMEDLTTPYFRDEELSCTVVELKYTGNASALFILPDQGRMQQVEASLQPETLRKWKNSLKPRMIDELHLPKFSISTDYSLEDVLSKLGIREVFSTQADLSAITGTKDLRVSQVVHKAVLDVAETGTEAAAATGVKFVPMSAKLYPLTVYFNRPFLIMIFDTETEIAPFIAKIANPK

マウスセルピンA3N 成熟タンパク質(配列番号27の21-418番目)(配列番号28)
FPDGTLGMDAAVQEDHDNGTQLDSLTLASINTDFAFSLYKELVLKNPDKNIVFSPLSISAALAVMSLGAKGNTLEEILEGLKFNLTETSEADIHQGFGHLLQRLNQPKDQVQISTGSALFIEKRQQILTEFQEKAKTLYQAEAFTADFQQPRQAKKLINDYVRKQTQGMIKELVSDLDKRTLMVLVNYIYFKAKWKVPFDPLDTFKSEFYAGKRRPVIVPMMSMEDLTTPYFRDEELSCTVVELKYTGNASALFILPDQGRMQQVEASLQPETLRKWKNSLKPRMIDELHLPKFSISTDYSLEDVLSKLGIREVFSTQADLSAITGTKDLRVSQVVHKAVLDVAETGTEAAAATGVKFVPMSAKLYPLTVYFNRPFLIMIFDTETEIAPFIAKIANPK

ラットセルピンA3N 全長タンパク質(NP_113719.1)(配列番号12)
MDGIGSALLSFPDCILGEDTLFHEDQDKGTQLDSLTLASINTDFAFSLYKKLALRNPHKNVVFSPLSISAALAVVSLGAKGSSMEEILEGLKFNLTETPETEIHRGFGHLLQRLSQPRDEIQISTGNALFIEKRLQVLAEFQEKAKALYQAEAFTADFQQSREAKKLINDYVSKQTQGKIQGLITNLAKKTSMVLVNYIYFKGKWKVPFDPRDTFQSEFYSGKRRSVKVPMMKLEDLTTPYVRDEELNCTVVELKYTGNASALFILPDQGKMQQVEASLQPETLRRWKDSLRPSMIDELYLPKFSISADYNLEDVLPELGIKEVFSTQADLSGITGDKDLMVFQVVHKAVLDVAETGTEAAAATGVKFVPMSAKLDPLIIAFDRPFLMIISDTETAIAPFLAKIFNPK

ヒトセルピンA3 核酸配列(NM_001085.5)(配列番号29)
ATGGAGAGAATGTTACCTCTCCTGGCTCTGGGGCTCTTGGCGGCTGGGTTCTGCCCTGCTGTCCTCTGCCACCCTAACAGCCCACTTGACGAGGAGAATCTGACCCAGGAGAACCAAGACCGAGGGACACACGTGGACCTCGGATTAGCCTCCGCCAACGTGGACTTCGCTTTCAGCCTGTACAAGCAGTTAGTCCTGAAGGCCCCTGATAAGAATGTCATCTTCTCCCCACTGAGCATCTCCACCGCCTTGGCCTTCCTGTCTCTGGGGGCCCATAATACCACCCTGACAGAGATTCTCAAAGGCCTCAAGTTCAACCTCACGGAGACTTCTGAGGCAGAAATTCACCAGAGCTTCCAGCACCTCCTGCGCACCCTCAATCAGTCCAGCGATGAGCTGCAGCTGAGTATGGGAAATGCCATGTTTGTCAAAGAGCAACTCAGTCTGCTGGACAGGTTCACGGAGGATGCCAAGAGGCTGTATGGCTCCGAGGCCTTTGCCACTGACTTTCAGGACTCAGCTGCAGCTAAGAAGCTCATCAACGACTACGTGAAGAATGGAACTAGGGGGAAAATCACAGATCTGATCAAGGACCTTGACTCGCAGACAATGATGGTCCTGGTGAATTACATCTTCTTTAAAGCCAAATGGGAGATGCCCTTTGACCCCCAAGATACTCATCAGTCAAGGTTCTACTTGAGCAAGAAAAAGTGGGTAATGGTGCCCATGATGAGTTTGCATCACCTGACTATACCTTACTTCCGGGACGAGGAGCTGTCCTGCACCGTGGTGGAGCTGAAGTACACAGGCAATGCCAGCGCACTCTTCATCCTCCCTGATCAAGACAAGATGGAGGAAGTGGAAGCCATGCTGCTCCCAGAGACCCTGAAGCGGTGGAGAGACTCTCTGGAGTTCAGAGAGATAGGTGAGCTCTACCTGCCAAAGTTTTCCATCTCGAGGGACTATAACCTGAACGACATACTTCTCCAGCTGGGCATTGAGGAAGCCTTCACCAGCAAGGCTGACCTGTCAGGGATCACAGGGGCCAGGAACCTAGCAGTCTCCCAGGTGGTCCATAAGGCTGTGCTTGATGTATTTGAGGAGGGCACAGAAGCATCTGCTGCCACAGCAGTCAAAATCACCCTCCTTTCTGCATTAGTGGAGACAAGGACCATTGTGCGTTTCAACAGGCCCTTCCTGATGATCATTGTCCCTACAGACACCCAGAACATCTTCTTCATGAGCAAAGTCACCAATCCCAAGCAAGCCTAG

マウスセルピンA3N 核酸配列(NM_009252.2)(配列番号30)
ATGGCCTTCATTGCAGCTCTGGGGCTCTTGATGGCTGGGATCTGCCCTGCTGTCCTCTGCTTCCCAGATGGCACGTTGGGAATGGATGCTGCAGTCCAAGAAGACCATGACAATGGGACACAACTGGACAGTCTCACATTGGCCTCCATCAACACTGACTTTGCCTTCAGCCTCTACAAGGAGCTGGTTTTGAAGAATCCAGATAAAAATATTGTCTTCTCCCCACTTAGCATCTCAGCGGCCTTGGCCGTCATGTCCCTGGGAGCAAAGGGCAACACCCTGGAAGAGATTCTAGAAGGTCTCAAGTTCAATCTTACAGAGACCTCTGAGGCAGACATCCACCAGGGCTTTGGGCACCTCCTACAGAGGCTCAACCAGCCAAAGGACCAGGTACAGATCAGCACGGGTAGTGCCCTGTTTATTGAAAAGCGCCAGCAGATCCTGACAGAATTCCAGGAGAAGGCAAGGGCTCTGTACCAGGCTGAGGCCTTCACAGCAGACTTCCAGCAGCCTCGTCAGGCCAAAAAGCTCATCAATGACTATGTGAGGAAACAGACCCAGGGGATGATCAAGGAACTGGTCTCAGACCTGGATAAAAGGACATTGATGGTGCTGGTGAATTATATCTACTTTAAAGCCAAATGGAAGGTGCCCTTTGACCCTCTTGACACGTTCAAGTCTGAGTTCTACGCGGGCAAGAGGAGGCCCGTGATAGTGCCCATGATGAGCATGGAGGACCTGACCACACCCTACTTCCGAGATGAGGAGCTTTTCTGCACTGTGGTGGAGCTGAAGTACACAGGAAATGCCAGTGCCATGTTCATCCTCCCTGACCAGGGCAAGATGCAGCAGGTGGAAGCCAGCTTGCAACCAGAGACCCTGAGGAAGTGGAAGAATTCTCTGAAACCCAGGATGATAGATGAGCTCCACCTGCCCAAGTTCTCCATCTCCACCGACTACAGCCTGGAGGATGTCCTTTCAAAGCTGGGCATCAGGGAAGTCTTCTCCACACAGGCTGACCTGTCTGCAATCACAGGAACCAAGGATCTGAGAGTCTCTCAGGTGGTCCACAAGGCTGTGCTGGACGTGGCTGAGACAGGCACAGAAGCAGCTGCTGCCACTGGAGTCAAATTTGTCCCAATGTCTGCGAAACTGTACCCTCTGACTGTATATTTCAATCGGCCTTTCCTGATAATGATCTTTGACACAGAAACTGAAATTGCCCCCTTTATAGCCAAGATAGCCAACCCCAAATGA

ラットセルピンA3N 核酸配列(NM_031531.1)(配列番号31)
ATGGATGGGATCGGCTCTGCTCTCCTCTCCTTCCCAGATTGCATACTGGGAGAGGACACTCTATTCCATGAAGACCAAGACAAGGGGACACAACTGGACAGTCTCACATTGGCCTCCATCAATACTGACTTTGCCTTCAGCCTCTACAAGAAGCTGGCTTTGAGGAATCCACATAAAAATGTTGTCTTCTCCCCACTTAGCATCTCAGCCGCCTTGGCCGTCGTGTCCCTGGGAGCAAAGGGCAGCAGCATGGAAGAGATTCTAGAAGGTCTCAAGTTCAATCTCACAGAGACCCCTGAGACAGAAATCCACCGGGGCTTTGGACACCTCCTCCAGAGGCTCAGCCAGCCAAGGGACGAGATACAGATCAGTACAGGCAATGCCCTGTTTATTGAAAAACGCCTTCAGGTCCTGGCAGAGTTCCAGGAGAAGGCAAAGGCTCTGTACCAAGCTGAGGCCTTCACAGCTGATTTCCAGCAGTCTCGTGAGGCCAAAAAGCTCATCAATGACTATGTGAGTAAACAGACCCAGGGGAAGATCCAGGGACTGATCACAAACCTAGCTAAGAAGACATCCATGGTACTGGTGAATTACATCTACTTTAAAGGCAAATGGAAGGTGCCTTTTGACCCTCGGGACACATTCCAGTCTGAGTTCTACTCTGGCAAAAGGAGGTCTGTGAAAGTGCCCATGATGAAGCTTGAGGACCTGACCACACCCTACGTCCGGGATGAGGAGCTGAACTGCACTGTTGTGGAGCTGAAGTACACAGGAAATGCCAGCGCCCTGTTTATCCTCCCTGACCAGGGCAAGATGCAGCAGGTGGAAGCCAGCTTGCAACCAGAGACCCTGAGGAGATGGAAGGACTCTCTCAGGCCCAGCATGATAGATGAGCTCTACCTGCCCAAGTTCTCCATCTCTGCTGACTACAACCTGGAGGACGTCCTTCCAGAGCTGGGCATCAAAGAAGTCTTCTCCACACAGGCTGACCTGTCTGGGATCACAGGGGATAAGGACCTGATGGTCTTTCAGGTGGTCCACAAGGCTGTTCTGGATGTGGCTGAGACAGGCACAGAAGCAGCCGCTGCCACAGGGGTCAAATTTGTTCCAATGTCTGCAAAACTGGACCCTCTGATTATAGCTTTCGACCGGCCTTTCCTGATGATTATCTCTGACACAGAAACTGCAATAGCTCCCTTTTTGGCCAAGATATTTAACCCCAAATGA
【0039】
ある実施形態において、全長セルピンA3は、配列番号1~23および27から選択されるアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなる。さらなる実施形態において、全長セルピンA3は、配列番号1、2~17、19、21~23および27から選択されるアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなる。さらなる実施形態において、全長セルピンA3は、配列番号1、4、5、11、12、14~23および27から選択されるアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなる。さらなる実施形態において、全長セルピンA3は、配列番号1、11、12、または27のアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなる。
【0040】
ある実施形態において、成熟セルピンA3は、配列番号1~23から選択されるアミノ酸配列からシグナルペプチドを除いたアミノ酸配列、または配列番号24、25、26または28のアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなる。さらなる実施形態において、成熟セルピンA3は、配列番号1、2~17、19、および21~23から選択されるアミノ酸配列からシグナルペプチドを除いたアミノ酸配列、または配列番号24、25、26または28のアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなる。さらなる実施形態において、成熟セルピンA3は、配列番号1、4、5、11、12、および14~23から選択されるアミノ酸配列からシグナルペプチドを除いたアミノ酸配列、または配列番号24、25、26または28のアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなる。
【0041】
さらなる実施形態において、成熟セルピンA3は、配列番号1~4、8~11、および13~23から選択されるアミノ酸配列から表1に示すシグナルペプチドを除いたアミノ酸配列、または配列番号24、25、26または28のアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなる。さらなる実施形態において、成熟セルピンA3は、配列番号1、2~4、8~11、13~17、19、および21~23から選択されるアミノ酸配列から表1に示すシグナルペプチドを除いたアミノ酸配列、または配列番号24、25、26または28のアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなる。さらなる実施形態において、成熟セルピンA3は、配列番号1、4、11、および14~23から選択されるアミノ酸配列から表1に示すシグナルペプチドを除いたアミノ酸配列、または配列番号24、25、26または28のアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなる。
【0042】
さらなる実施形態において、成熟セルピンA3は、配列番号24、25、26または28のアミノ酸配列を含むか、前記アミノ酸配列からなる。
【0043】
本開示において、全長セルピンA3および成熟セルピンA3またはそれらと機能的に同等なポリペプチドは、修飾されたポリペプチドであってもよい。かかる修飾としては、例えば、タグ付加、糖鎖付加、部分的糖鎖付加、糖鎖不形成が例示され、さらに糖鎖は天然のものであっても改変されたものであってもよい。
【0044】
全長および成熟セルピンA3またはそれらと機能的に同等なポリペプチドの入手方法は特に限定されず、例えば組換え発現(哺乳類細胞、酵母、大腸菌、昆虫細胞等)、無細胞系を用いた合成等によって製造できるほか、市販品を購入することも可能である。
【0045】
炎症性腸疾患(本明細書中、IBDとも記載する)は、慢性あるいは寛解・再燃性の腸管の炎症性疾患を指す。IBDには、潰瘍性大腸炎およびクローン病が含まれる。実施例において、セルピンA3は、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発IBDモデルマウスにおいて骨髄内の間葉系幹細胞の減少を抑制することが示された。それゆえ、セルピンA3またはこれを含む組成物は、IBDに起因する間葉系幹細胞の減少の抑制、またはIBDの治療または予防に用いることができる。
【0046】
IBDの治療には、寛解の導入、寛解の維持、および再燃の抑制が含まれる。ある実施形態において、セルピンA3またはこれを含む組成物は、寛解の維持または再燃の抑制に用いられる。本開示において、IBDを患っている対象(IBD患者ともいう)には、活動期および寛解期のIBD患者が含まれる。
【0047】
IBDの治療には、セルピンA3のポリペプチドを精製し製剤化したものを用いてもよく、また、セルピンA3を分泌する組織、細胞や、その組織や細胞からのセルピンA3が含まれる分泌物または培養上清を用いてもよい。
【0048】
セルピンA3またはこれを含む組成物は、所望の効果を発揮しうる量(本明細書中、「有効量」という)で対象に投与される。投与量は、対象の年齢、体重、健康状態等によって適宜決定される。例えば、セルピンA3の量として、1回の投与につき、体重1kgあたり0.0000001mgから1000mgの範囲で投与量が選択できる。あるいは、例えば、対象あたり0.00001から100000mg/bodyの範囲で投与量が選択できる。しかしながら、これらの投与量に制限されるものではない。セルピンA3またはこれを含む組成物は、1日1回で、または複数回(例えば2、3または4回)に分けて投与してもよく、1日または数日(例えば2、3、4、5または6日)、1週間または数週間(例えば2、3、4、5または6週間)、1ヶ月または数ヶ月(例えば2、3、4、5または6ヶ月)の間隔をあけて投与してもよい。投与期間も特に限定されず、1日または数日(例えば2、3、4、5または6日)、1週間または数週間(例えば2、3、4、5または6週間)、1ヶ月または数ヶ月(例えば2、3、4、5または6ヶ月)でありうる。
【0049】
セルピンA3またはこれを含む組成物は、全身に、または局所的に投与されうる。投与方法としては、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、髄腔内投与などが挙げられる。ある実施形態において、セルピンA3またはこれを含む組成物は、静脈内または髄腔内投与される。
【0050】
セルピンA3またはこれを含む組成物は、間葉系幹細胞の培養に用いる場合、例えば、セルピンA3の最終濃度が、1pg/mL~1mg/mL、10pg/mL~100μg/mL、100pg/mL~10μg/mL、1ng/mL~1μg/mL、1ng/mL~100ng/mL、または1ng/mL~10ng/mLとなるよう、培地に添加されうる。
【0051】
本開示の組成物は、常法に従って製剤化することができ(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)、有効成分に加え、医薬上許容される担体を含んでもよい。医薬上許容される担体としては、界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等が挙げられる。例えば、医薬上許容される担体は、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類などであってよい。また、例えば、IBDの治療を目的とした場合であって、組成物が細胞を含む場合には、医薬上許容される担体は、上記に加え、水、培地、生理食塩水、ブドウ糖、D-ソルビトール、D-マンノース、またはD-マンニトールなどを含む等張液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などであってもよい。
【0052】
組成物の剤形は、限定されないが、経口または非経口投与製剤、例えば注射剤である。注射剤には、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、用時調製型注射剤が含まれる。組成物は、凍結されていてもよく、DMSO、グリセロール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、アルブミン、デキストラン、スクロースなどの凍結保護剤を含んでもよい。
【0053】
セルピンA3またはこれを含む組成物は、間葉系幹細胞の培養に用いる培地の添加剤として用いても良い。培地添加剤はいかなる剤形で提供されてもよく、例えば、顆粒、粉末、錠剤などの固体、溶液、懸濁液、乳濁液などの液体、あるいは、固体、半固体または液体を封入したカプセルとして提供され得るが、これらに限定されない。培地添加剤は、例えば、間葉系幹細胞を含む一般的な動物細胞培養用の培地に添加することにより、間葉系幹細胞を含む付着性細胞の培養に使用し得る。かかる培地としては、間葉系幹細胞の培養に用いることが可能なものであれば特に限定されないが、例えば、MEM、MEMα、DMEM、GMEM、RPMI 1640、MesenCultTM(STEMCELL Technologies社)が挙げられる。これらをはじめとする任意の培地にセルピンA3を添加し/含有させて、間葉系幹細胞を含む付着性細胞の培養に用いることができる。当該培地には、間葉系幹細胞の増殖を阻害しない限り、さらに他の成分を添加してもよい。
【0054】
本発明の例示的な実施形態を以下に記載する。
[1]
間葉系幹細胞の増殖を促進または減少を抑制するため組成物であって、セルピンA3を含む組成物。
[2]
前記間葉系幹細胞が、コロニー形成性の間葉系幹細胞である、前記1に記載の組成物。
[3]
前記間葉系幹細胞が、骨髄の間葉系幹細胞である、前記1または2に記載の組成物。
[4]
対象に投与される、前記1~3のいずれかに記載の組成物。
[5]
前記対象が、炎症性腸疾患を患っている、前記4に記載の組成物。
[6]
前記間葉系幹細胞の減少が、炎症性腸疾患に起因する、前記1~5のいずれかに記載の組成物。
[7]
間葉系幹細胞の培養に用いるための、前記1~3のいずれかに記載の組成物。
[8]
炎症性腸疾患を治療するための、セルピンA3を含む組成物。
[9]
前記セルピンA3が、
a)全長もしくは成熟セルピンA3のアミノ酸配列を含むか、または当該アミノ酸配列からなるポリペプチド、
b)成熟セルピンA3のアミノ酸配列を含み、且つ、全長セルピンA3の一部のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
c)全長もしくは成熟セルピンA3の一部のアミノ酸配列を含むか、または当該アミノ酸配列からなり、間葉系幹細胞の増殖促進活性または減少抑制活性を有するポリペプチド、
d)全長もしくは成熟セルピンA3のアミノ酸配列において1~10個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含むか、または当該アミノ酸配列からなり、間葉系幹細胞の増殖促進活性または減少抑制活性を有するポリペプチド、
e)全長もしくは成熟セルピンA3のアミノ酸配列と約90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または当該アミノ酸配列からなり、間葉系幹細胞の増殖促進活性または減少抑制活性を有するポリペプチド、
f)全長もしくは成熟セルピンA3をコードする核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、間葉系幹細胞の増殖促進活性または減少抑制活性を有するポリペプチド、および
g)全長もしくは成熟セルピンA3をコードする核酸配列と約90%以上の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ、間葉系幹細胞の増殖促進活性または減少抑制活性を有するポリペプチド
からなる群から選択される、前記1~8のいずれかに記載の組成物。
[10]
前記セルピンA3が、前記a)またはb)のポリペプチドである、前記9に記載の組成物。
[11]
前記全長セルピンA3が、配列番号1、11、12、または27のアミノ酸配列を含む、前記9または10に記載の組成物。
[12]
前記成熟セルピンA3が、配列番号24、25、26または28のアミノ酸配列を含む、前記9~11のいずれかに記載の組成物。
[13]
前記全長セルピンA3をコードする核酸配列が、配列番号29、30、または31の核酸配列を含む、前記9~12のいずれかに記載の組成物。
[14]
前記セルピンA3が、ヒトセルピンA3、マウスセルピンA3N、またはラットセルピンA3Nである、前記1~13のいずれかに記載の組成物。
【0055】
[15]
間葉系幹細胞の増殖の促進または減少の抑制に用いるための、セルピンA3。
[16]
炎症性腸疾患の治療に用いるための、セルピンA3。
【0056】
[17]
間葉系幹細胞の増殖の促進または減少の抑制に用いるための医薬の製造のための、セルピンA3の使用。
18
炎症性腸疾患の治療に用いるための医薬の製造のための、セルピンA3の使用。
【0057】
19
間葉系幹細胞の増殖を促進または減少を抑制するための方法であって、対象にセルピンA3を投与することを含む方法。
20
炎症性腸疾患を治療するための方法であって、対象にセルピンA3を投与することを含む方法。
【0058】
本開示で引用するすべての文献は、出典明示により本開示の一部とする。
上記の説明は、すべて非限定的なものであり、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱せずに、変更することができる。さらに、下記の実施例は、すべて非限定的な実施例であり、本発明を説明するためだけに供されるものである。
【実施例
【0059】
1.IBDモデルマウスの作製
デキストラン硫酸ナトリウム(Dextran Sulfate Sodium Salt(DSS)、36~50kDa;MP Biomedicals、カタログ番号:160110)が1.5wt/vol%となるように配合した飲料水を準備し、0.45μm酢酸セルロース膜を用いて濾過した。8週齢のC57BL/6J雄性マウス(3匹)に、上述の1.5wt/vol%DSS飲料水を6日間投与することにより、大腸炎を誘発させた。6日目以降はDSSを含まない通常の飲料水を投与した。実験期間におけるマウスの各日の体重を測定し、実験開始日(DSS投与開始日)の体重を100%として体重変化を調べた。比較のため、DSSを投与せずに飼育した健常マウス(野生型マウス)の体重変化も調べた。p値は、二元配置分散分析(two-way ANOVA)によって計算した。
【0060】
また、上記と同様にDSSをマウスに摂取させる実験において、DSS投与開始日(0日目)から3、6、9、12、15日目においてマウスの大腸を採取し、大腸画像をカメラで撮影した。また、撮影した画像から、ImageJソフトウェアを用いて大腸長さを算出した。p値は、二元配置分散分析(two-way ANOVA)によって計算した。
【0061】
健常マウスと比較して、DSS投与マウスにおいて有意な体重減少が観察された(図1)。また、DSS投与開始日から6、9、12、15日目には、DSS投与マウスの大腸長さは、健常マウスと比較して有意に減少していた(図2)。これらの結果により、1.5wt/vol%DSS溶液を投与することで大腸炎が誘発され、IBDモデルマウスを作製できることを確認した。
【0062】
2.IBDモデルマウスの骨髄細胞におけるコロニー形成性細胞の減少
実験開始(DSS投与開始)から3、6、9、12、15日目に、健常マウスおよびDSS投与マウスの大腿骨から骨髄細胞を採取した。なお、DSSは上記1と同様の方法で投与した。採取した骨髄細胞に1X RBC lysis buffer(Biolegend)を加え、室温で5分間赤血球を溶血処理した。次いで、遠心分離を行ってから上清を除去して、沈殿した細胞を回収した。回収した細胞を、10μM Y27632(Tocris bioscience)、15vol% FBS(Fetal Bovine Serum、Sigma-Aldrich)、1vol% ペニシリン/ストレプトマイシン(ナカライテスク)、1X NEAA(MEM用非必須アミノ酸、Gibco)、55μM 2-メルカプトエタノール(Gibco)、10mM HEPES(2- [4- (2-Hydroxyethyl) -1-piperazinyl] ethanesulfonic acid、ナカライテスク)、1X GlutaMAX TM Supplement(Invitrogen)を含むように調整したα-MEM培地(Invitrogen)に分散し、5×10細胞をコラーゲンI被覆プレートの各ウェルに播種し、培養した。培養条件は、37℃、5%O、5%COとした。培地は3日ごとに交換した。培養10日目に培地を除去し、1×PBS(ナカライテスク)でウェルを洗浄した後、コロニーを0.05wt/vol% クリスタルバイオレット(ナカライテスク)で30分間染色した。染色されたコロニーにおいて、コロニーの形状、大きさ、コロニー内の細胞密度等を指標として間葉系幹細胞のコロニーと判断できるものを計数し、二元配置分散分析(two-way ANOVA)にてP値を求めた。
【0063】
骨髄細胞を採取し固相上で培養すると、間葉系幹細胞を含む付着性の細胞が固相に付着して増殖することが良く知られている。間葉系幹細胞については、付着性細胞に含まれる間葉系幹細胞のうちコロニー形成性を有するものが、コロニーを形成しつつ増殖する。DSS投与開始日から3日目に採取した骨髄細胞では形成される間葉系幹細胞のコロニー数が減少する傾向がみられ、6、9、12日目に採取した骨髄細胞では間葉系幹細胞のコロニー数が有意に減少した(図3)。なお、椎骨を対象に同様の実験を行っても、形成される間葉系幹細胞のコロニー数が減少する傾向が観察された。この結果は、DSS誘発IBDモデルマウスにおいて骨髄の間葉系幹細胞が減少することを示す。
【0064】
3.インビトロにおけるセルピンA3Nによるコロニー形成性細胞の増加
DSS投与開始日から9日目のDSS投与マウスおよび同期間通常飼育の健常マウスの大腿骨から骨髄細胞を採取した。なお、DSSは上記1と同様の方法で投与した。採取した骨髄細胞に1X RBC lysis buffer(Biolegend)を加え、室温で5分間赤血球を溶血処理した。次いで、遠心分離を行ってから上清を除去して、沈殿した細胞を回収した。回収した細胞の5×10細胞をコラーゲンI被覆プレートの各ウェルに播種し、10μM Y27632(Tocris bioscience)、15vol% FBS(Fetal Bovine Serum、Sigma-Aldrich)、1vol% ペニシリン/ストレプトマイシン(ナカライテスク)、1X NEAA(MEM用非必須アミノ酸、Gibco)、55μM 2-メルカプトエタノール(Gibco)、10mM HEPES(2- [4- (2-Hydroxyethyl) -1-piperazinyl] ethanesulfonic acid、ナカライテスク)、1X GlutaMAX TM Supplement(Invitrogen)を含むように調整したα-MEM培地(Invitrogen)を用いて培養した。培養条件は、37℃、5%O、5%COとした。培養開始時に、マウスセルピンA3N(R&D systems、カタログ番号:4709 - PI(4709 - PI - 010))(配列番号28)(C末端に6-His tag付加)またはPBS(1×PBS、ナカライテスク、カタログ番号:14249-24)を培地に添加した。詳細には、セルピンA3Nの添加のため、1μLの500ng/mL セルピンA3Nストック溶液を、1.25mLの前記調整済みα-MEM培地で希釈し、400ng/mL セルピンA3N培地を作製した。このセルピンA3N培地と前記調整済みα-MEM培地とを混合し、所定の最終濃度のセルピンA3Nを含む培地を作製し、この培地で細胞を懸濁した後に、各ウェルに播種した。比較のため、1μLのセルピンA3Nストック溶液にかえて1μLのPBSを用いた。培地は3日ごとに交換し、交換時にもPBSまたはセルピンA3Nを含む培地を用いた。培養10日目に培地を除去し、1X PBS(ナカライテスク)でウェルを洗浄した後、コロニーを0.05wt/vol% クリスタルバイオレット(ナカライテスク)で30分間染色した。染色されたコロニーにおいて、コロニーの形状、大きさ、コロニー内の細胞密度等を指標として間葉系幹細胞のコロニーと判断できるものを計数し、二元配置分散分析(two-way ANOVA)にてP値を求めた。
【0065】
健常マウスから採取した骨髄細胞をセルピンA3N(4ng/mL)の存在下で培養すると、間葉系幹細胞のコロニー数の有意な増加が観察された(図4、左)。DSS投与マウスから採取した骨髄細胞では間葉系幹細胞のコロニー数の減少が観察される(図3)が、セルピンA3N(4ng/mL)の添加により間葉系幹細胞のコロニー数が有意に回復した(図4、右)。
【0066】
4.インビボにおけるセルピンA3Nによるコロニー形成性細胞の増加
上記1に記載のように1.5%DSSをマウスに6日間投与して大腸炎を誘発した。マウスは二群に分け、DSS投与開始日から5日目までの6日間、DSSの経口投与と共に、一方の群にはセルピンA3N(R&D systems、カタログ番号:4709 - PI)(400ng)を含むPBS(100μL)を、他方の群にはセルピンA3Nを含まないPBS(1×PBS、ナカライテスク、カタログ番号:14249-24)(100μL)を、一日一回、1ショットで静脈注射により投与した。DSS投与開始日から9日目に、各群の大腿骨から骨髄細胞を採取し、採取した骨髄細胞に1X RBC lysis buffer(Biolegend)を加え、室温で5分間赤血球を溶血処理した。次いで、遠心分離を行ってから上清を除去して、沈殿した細胞を回収した。回収した細胞の5×10細胞をコラーゲンI被覆プレートの各ウェルに播種し、10μM Y27632(Tocris bioscience社)、15vol% FBS(Fetal Bovine Serum、Sigma-Aldrich)、1vol%ペニシリン/ストレプトマイシン(ナカライテスク)、1X NEAA(MEM用非必須アミノ酸、Gibco)、1vol% モノチオグリセロール(Wako)、10mM HEPES(2- [4- (2-Hydroxyethyl) -1-piperazinyl] ethanesulfonic acid、ナカライテスク)、1X GlutaMAX TM Supplement(Invitrogen)を含むよう調整したα-MEM培地(Invitrogen)を用いて培養した。培養条件は、37℃、5%O、5%COとした。培地は3日ごとに交換した。培養10日目に、培地を除去し、1X PBSでウェルを洗浄してから、コロニーを0.05wt/vol% クリスタルバイオレットで30分間染色した。染色されたコロニーにおいて、コロニーの形状、大きさ、コロニー内の細胞密度等を指標として間葉系幹細胞のコロニーと判断できるものを計数し、一元配置分散分析(one-way ANOVA)によってp値を計算した。
【0067】
DSS投与マウスから採取した骨髄では間葉系幹細胞のコロニー数の減少が観察されるが(図3)、DSS投与マウスにセルピンA3Nを投与すると間葉系幹細胞のコロニー数が有意に回復した(図5)。
【0068】
以上の結果から、セルピンA3Nは、骨髄細胞中のコロニー形成性の間葉系幹細胞の増殖を促進または減少を抑制することが示された。
【0069】
5.IBDモデルマウスにおけるセルピンA3Nの効果(1)
8週齢のC57BL/6J雄性マウス(6匹)に、上述の1.5wt/vol%DSS(MP biomedicals、カタログ番号:160110)の飲料水を6日間投与することにより、大腸炎を誘発させた。6日目以降はDSSを含まない通常の飲料水を投与した。マウスは二群に分け、DSS投与開始日から5日目までの6日間、DSSの経口投与と共に、一方の群にはマウスセルピンA3N(R&D systems,カタログ番号:4709 - PI - 010)(400ng)を含むPBS(1×PBS、ナカライテスク、カタログ番号:14249-24)(100μL)を、他方の群にはセルピンA3Nを含まないPBS(100μL)を、一日一回、1ショットで静脈注射により投与した。各マウスの体重変化を毎日測定した。DSS投与開始日から数えて9日目に各マウスから大腸を採取し、大腸画像をカメラで撮影した。また、撮影した画像から、ImageJソフトウェアを用いて大腸長さを算出した。p値は、二元配置分散分析(two-way ANOVA)によって計算した。
【0070】
DSS投与マウスにおける体重減少は、セルピンA3Nの投与により有意に抑制された(図6上)。また、DSS投与マウスの大腸長さの減少も、セルピンA3Nの投与により有意に抑制された(図6下)。以上の結果は、セルピンA3NがIBDを治療し得ることを示す。
【0071】
6.IBDモデルマウスにおけるセルピンA3Nの効果(2)
8週齢のC57BL/6J雄性マウス(6匹)に、上述の1.5wt/vol%DSS(MP biomedicals、カタログ番号:160110)の飲料水を6日間投与することにより、大腸炎を誘発させた。6日目以降はDSSを含まない通常の飲料水に変更し、20日目まで投与した。続いて、21日目から6日間は、再び、上記と同様のDSSを含む飲料水を投与した。そして27日目からは、通常の飲料水を投与した。マウスは二群に分け、初回のDSS投与開始日(実験開始日、0日目)から5日目までの6日間、DSSの経口投与と共に、一方の群にはマウスセルピンA3N(R&D systems,カタログ番号:4709 - PI - 010)(400ng)を含むPBS(1×PBS、ナカライテスク、カタログ番号:14249-24)(100μL)を、他方の群にはセルピンA3Nを含まないPBS(100μL)を、一日一回、1ショットで静脈注射により投与した。
【0072】
実験開始日から13日目までの各マウスの体重変化の測定結果を、通常飼育の健常マウス(DSS非投与、コントロール)の体重測定結果と共に図7に示す。図7には、実験開始日の体重を100%として各マウスの体重変化を示している。DSS投与マウスにおける体重減少は、セルピンA3Nの投与により有意に抑制され、DSS投与停止後の体重回復もセルピンA3Nの投与群の方が良好であった(図7)。更にDSS投与を停止した6日目以降、30日目まで、セルピンA3N投与群のマウスの体重は、非投与群マウスに比べて高い水準にあった。
【0073】
7.IBDモデルマウスにおけるセルピンA3Nの効果(3)
8週齢のC57BL/6J雄性マウス(6匹)に、上述の1.5wt/vol%DSS(MP biomedicals、カタログ番号:160110)の飲料水を6日間投与することにより、大腸炎を誘発させた。6日目以降はDSSを含まない通常の飲料水に変更し、20日目まで投与した。続いて、21日目から6日間は、再び、上記と同様のDSSを含む飲料水を投与した。そして27日目からは、通常の飲料水を投与した。マウスは二群に分け、初回のDSS経口投与を停止した6日目から11日目までの6日間、一方の群にはマウスセルピンA3N(R&D systems,カタログ番号:4709 - PI - 010)(1μg)を含むPBS(1×PBS、ナカライテスク、カタログ番号:14249-24)(100μL)を、他方の群にはセルピンA3Nを含まないPBS(100μL)を、一日一回、1ショットで静脈注射により投与した。
【0074】
初回のDSS投与開始日(実験開始日、0日目)から13日目までの各マウスの体重変化の測定結果を、通常飼育の健常マウス(DSS非投与、コントロール)の体重測定結果と共に図8に示す。図8には、実験開始日の体重を100%として各マウスの体重変化を示している。DSS投与マウスにおける体重減少は、DSS投与後のセルピンA3Nの投与によっても有意に抑制され、DSS投与停止後の体重回復もセルピンA3Nの投与群の方が良好であった(図8)。
【0075】
8.IBDモデルマウスにおけるセルピンA3Nの効果(4)
上記6の実験において、再度DSSによってマウスに大腸炎を誘発した場合におけるセルピンA3Nの効果について評価した。図9は、実験開始日から21日目(追加のDSS投与開始日)の各マウスの体重を基準(100%)として、その日後のマウスの体重変化を示した図である。比較のため、通常飼育の健常マウス(DSS非投与、コントロール)の体重測定結果を共に示す。
【0076】
DSSを投与されていない健常マウス(control)の体重は順調に増加する一方、DSSを投与したマウス(DSS+PBS、DSS+Seripina3n)の体重は減少した。初回のDSS誘発時においてセルピンA3Nを投与した群(DSS+Seripina3n)の体重減少は、セルピンA3N非投与群(DSS+PBS)と比べて、明らかに抑制された(図9)。即ち、セルピンA3Nは、IBDの寛解維持、再燃抑制をする効果があることが示された。
【0077】
9.IBDモデルマウスにおけるセルピンA3Nの発現(シングルセルRNA-sequencing解析)
8週齢のC57BL/6J雄性マウス(18匹)に、上述の1.5wt/vol%DSS(MP biomedicals、カタログ番号:160110)の飲料水を6日間投与することにより、大腸炎を誘発させた。6日目以降はDSSを含まない通常の飲料水を投与した。DSS投与開始日から数えて0日目、3日目、6日目、9日目、12日目、15日目に各3匹のマウスから大腸を採取した。そして、採取した大腸の細胞を解離、分散させた細胞懸濁液を調製した。FACS(装置名 BD FACSAriaTMIII、Becton, Dickinson and Company)を用いて、細胞分散液中の死細胞を除去するとともに、全生細胞の単離(一細胞調製)を行った。18匹のマウスと6つの異なる時点からの合計14624個の細胞が補足された。そして、smart-seq2法に則り、シークエンシングライブラリを構築した。作製したライブラリに対してシーケンサー(装置名NextSeq 500、Illumina, Inc)を使用してシークエンシングを行った。即ち、18匹のマウスと6つの異なる時点からの合計14624個の細胞についてのプロファイルを得た。
【0078】
得られた全シーケンスデータに対して、UMAP法でクラスタリングを行った。その結果、IBDモデルマウスの大腸の細胞は、15のクラスターにクラスタリングされた。各クラスターの細胞型は、標識遺伝子に基づいて特定した。例えば、1つのクラスターの細胞型は、3つの標識遺伝子(Col1a1, Pdgfra, Spon2)によって、間質細胞(ストローマ細胞)であると特定された。
【0079】
また、炎症の様々な段階(経日)での遺伝子の発現変動を検出すべく、大腸のサンプリング日毎のストローマ細胞の発現遺伝子を解析したところ、その発現量が大きく変動していた257の発現変動遺伝子(differentially expressed gene, DEG)を特定した。これらの発現変動遺伝子をK平均法(K-means clustering)に基づいて解析すると、類似した発現パターンを有する遺伝子をグループ化することができ、その結果、257の発現変動遺伝子は4つのサブクラスター(K1~K4)に分類された(図10、左側グラフ)。このうち1つのサブクラスターK4は、DSS投与開始日から数えて6日目~9日目に発現がピークとなる遺伝子が帰属するクラスターであり、セルピンA3NはこのサブクラスターK4において最も発現レベルが高い遺伝子であることが確認された(図10、右側グラフ)。
【0080】
10.IBDモデルマウスにおけるセルピンA3Nの効果(4)
8週齢のC57BL/6J雄性マウス(6匹)に、上述の1.5wt/vol%DSS(MP biomedicals、カタログ番号:160110)の飲料水を6日間投与することにより、大腸炎を誘発させた。6日目以降はDSSを含まない通常の飲料水に変更して実験終了(9日目)まで投与した。マウスは二群に分け、一方のマウスの一群には、DSS投与開始日から5日目までの6日間、DSSの投与と共に、マウスセルピンA3N(R&D systems,カタログ番号:4709 - PI - 010)(400ng)を含むPBS(1×PBS、ナカライテスク、カタログ番号:14249-24)(100μL)を、他方のマウスの一群にはセルピンA3Nを含まないPBS(100μL)を、一日一回、1ショットで静脈注射により投与した。DSS投与開始日から9日目にマウスから大腸を採取した。
【0081】
採取したマウス大腸から、製造業者のプロトコールに従い、ISOGENE (株式会社ニッポンジーン)を用いて全RNA(トータルRNA)を抽出し、更に、RNeasy Plus Mini kit (QIAGEN)を用いて精製を行った。精製後の試料溶液中のトータルRNAの濃度は、蛍光光度計(Qubit 3.0 Fluorometer 、Thermo Fisher Scientific)にて測定した。そして、測定濃度からRNAが適正量(500ng)となるように調整し、定量RT-PCR(quantitative reverse transcription-polymerase chain reaction, RT-qPCR)用サンプルを作製した。このサンプルを用い、定量RT-PCRで、大腸でのTNF-α、IL-1β、およびIL-6の発現量を測定した。具体的には、cDNA合成キット(iScript reverse transcription supermix for RT-qPCR、Bio-Rad Laboratories)を用い、操作手順書に従ってトータルRNAからcDNAを合成した。そして、合成したcDNA、混合試薬(THUNDERBIRD SYBR qPCR mix 、TOYOBO)、所定のプライマーセットを用いて、定量RT-PCRを実施した。
使用したプライマーセットを以下に示す。

【0082】
測定は3回実施した。そして、CFX manager softward(Bio Rad Laboratories)を使用し、スタンダードカーブメソッドに基づいて、セルピンA3N投与群(DSS+Serpina3n)と非投与群(DSS+PBS)とにおける上記遺伝子(TNF-α、IL-1β、IL-6)の発現量を、通常飼育の健常マウス(DSS非投与、コントロール)のこれらの発現量を1として比較した。なお、内部標準遺伝子にβ-アクチン(actb)を用いて発現量は補正を行った。結果を図11に示す。
【0083】
図11からもわかるように、DSS投与によりTNF-α、IL-1β、IL-6の遺伝子の発現量は増大するが、セルピンA3Nの投与により、これらの発現が抑制されることが認められた。即ち、セルピンA3Nの投与により炎症性のサイトカインであるTNF-α、IL-1β、IL-6の産生が抑制されることが示唆された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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