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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】早茹で麺及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20240927BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20240927BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
A23L7/109 B
A23L7/109 C
A23L7/10 H
C12N15/09 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020033288
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021132607
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】田中 智樹
(72)【発明者】
【氏名】新海 陽介
(72)【発明者】
【氏名】大楠 秀樹
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-033357(JP,A)
【文献】仲島 日出男,低アミロース小麦「あやひかり」を使用したうどんの開発,食品と科学,第44巻,2002年,第81-87頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(GA-SA小麦粉)を小麦粉全量に対して20質量%~95質量%含有する、小麦粉からなる早茹で麺用小麦粉組成物であって、
前記早茹で麺用小麦粉組成物を使用して製造した麺類の茹で時間が、チクゴイズミから製粉した小麦粉のみを使用して製造した麺類を基準として2%~15%短縮される、前記早茹で麺用小麦粉組成物。
【請求項2】
GA-SA小麦粉を、小麦粉全量に対して35質量%~90質量%含有する、請求項1に記載の早茹で麺用小麦粉組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の早茹で麺用小麦粉組成物を含む早茹で麺用生地であって、前記早茹で麺用生地を使用して製造した麺類の茹で時間が、チクゴイズミから製粉した小麦粉のみを使用して製造した麺類を基準として2%~15%短縮される、前記早茹で麺用生地
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の早茹で麺用小麦粉組成物を小麦粉原料として使用して生地を得る工程及び前記生地を製麺する工程を含む、早茹で麺の製造方法であって、前記製造方法により製造した麺類の茹で時間が、チクゴイズミから製粉した小麦粉のみを使用して製造した麺類を基準として2%~15%短縮される、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、早茹で麺及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類は生麺を製造したのち、乾麺や茹で麺、冷凍麺などの幅広いアイテムがある。いずれも、家庭や二次加工メーカーで生麺を「茹でる」工程が必要である。家庭では調理時間が短くなる料理が浸透してきており、また、二次加工メーカーにとっては1日に何回ものバッチで製造するため、1分でも茹で時間が短いほうが作業効率は良くなり、エネルギーコスト削減や人件費削減につながり好ましい。
茹で時間を短くするには、様々な早茹で麺の製造方法が提案されてきた。
例えば、特許文献1には、乾麺に油脂で被膜した平均粒径200~2000ミクロンの糖類結晶を3~30%配合することで茹で時間が数分短くなり、食感もコントロールと同等のものが得られたことが開示されている。しかしながらこの方法は添加物を使用し、また糖類を前もって油脂で被膜させる必要があり工程が複雑という問題点があった。特許文献2には、第1の製麺用の水にパン酵母、糖類、および塩化アンモニウムを溶かし、30~35℃で40分ないし7時間程度予備醗酵させるとともに、第2の製麺用の水に食塩を溶かしておき、これらを原料粉に適量加水して混練し生地を形成したのち、圧延および麺線切り出しを行ない、この麺線を35~37℃、75~80%RHの条件で2~6時間保持して麺線を膨化させる早茹で麺の製造方法が開示されている。しかしながらこの方法も添加物を使用し、また加水用の水を2つに分け予備発酵させるなど工程が複雑であるという問題点があった。特許文献3には小麦粉100%に対し、α化澱粉1~10%、加熱ゲル化型多糖類0.2~2.0%を配合した粉を用い、常法により製造した生麺を5分~7分間茹でることを特徴とし、その食感も通常の茹で時間のものと同等以上である早茹で麺が開示されている。しかしながら、この方法は澱粉や食品添加物を使用しており、小麦粉だけの変更で早茹でになることについては言及されていなかった。
このような添加剤を使用する従来技術に対し、副資材の配合によるコストアップの問題や、消費者の安心安全を求める声が大きくなっていることなどから、二次加工メーカーにとっては食品添加物を出来るだけ使用しない、あるいは添加量を減少させる製造方法が好ましいという要請がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-009908号公報
【文献】特開平5-199846号公報
【文献】特開平5-137527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、添加物を使用せずに茹で時間の短い良好な食感を有する早茹で麺を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、麺類の製造において、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(以下、「GA-SX小麦粉」と称する場合がある)を原料の小麦粉全量に対して10質量%~95質量%使用すると、茹で時間の短い良好な食感を有する早茹で麺を提供することができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(GA-SX小麦粉)を小麦粉全量に対して10質量%~95質量%含有する、小麦粉からなる早茹で麺用小麦粉組成物。
[2]前記GA-SX小麦粉が、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(GA-SA小麦粉)である、前記[1]に記載の早茹で麺用小麦粉組成物。
[3]前記[1]又は[2]記載の早茹で麺用小麦粉組成物を含む早茹で麺用生地。
[4]前記[1]又は[2]記載の早茹で麺用小麦粉組成物を小麦粉原料として使用して生地を得る工程及び前記生地を製麺する工程を含む、早茹で麺の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、添加物を用いることなしに、茹で時間を短く、かつ良好な食感を持つ早茹で麺類を提供出来る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<早茹で麺用小麦粉組成物>
本発明において「早茹で麺」とは早茹で特性を有する生麺又は乾麺をいう。麺の種類としては特に限定されないが、例えば小麦粉を主体とするうどん、冷麦、素麺、中華麺などが挙げられる。ここで早茹で特性とは、各麺の通常最適であると考えられる茹で時間(最適茹で時間:麺の硬さや粘弾性が良い茹であがりとなる茹で時間)を基準として、より短縮された最適茹で時間を有することをいう。
例えば生うどんの最適茹で時間は15~25分、乾素麺であれば1~3分、生ラーメンでは1~4分であるが、本発明の早茹で麺用小麦粉組成物を使用することにより、使用しない場合と比較して最適茹で時間を2%以上、さらに3~15%程度短縮することができる。
【0009】
本発明の早茹で麺用小麦粉組成物は、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(GA-SX小麦粉)を含んでいる。
以下、GA-SX小麦粉について説明する。
普通系コムギは、異質6倍体であり、その染色体には同祖染色体であるA、B、Dの3つのゲノムがそれぞれ1~7番まで存在する(1A~7A、1B~7B、1D~7D)。
「GBSSI」とは、アミロースの合成に関与する顆粒結合性澱粉合成酵素であり、GBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1が、それぞれ7A、4A、7D染色体上に座乗する遺伝子によってコードされている。
「SSIIa」とは、アミロペクチンの分岐鎖合成に関与する澱粉合成酵素であり、SSIIa-A1、SSIIa-B1、SSIIa-D1が、それぞれ7A、7B、7D染色体上に座乗する遺伝子によってコードされている。
【0010】
「酵素活性を欠損する」とは、コムギ植物体内で正常な酵素活性を有するタンパク質が機能していないこと、好ましくは正常な酵素活性を有するタンパク質が発現していないことをいう。具体的には、遺伝子配列の変異(一つ又は複数の塩基の置換、欠失、挿入、逆位、転座などの変異をいい、遺伝子領域全体の欠失も含む)、mRNA転写の欠損、タンパク質翻訳の欠損、コムギ植物体内での酵素活性の阻害などの態様が挙げられ、野生型の酵素活性の10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満にまで酵素活性が低下ないし欠失していれば、いずれの態様であってもよい。
【0011】
GA-SX小麦粉としては、酵素活性を欠損した2種類のSSIIaの組み合わせにより、以下の小麦粉が挙げられる。
GA-SA小麦粉:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉;
GA-SB小麦粉:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-B1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-A1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉;
GA-SD小麦粉:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-D1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-A1及びSSIIa-B1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉。
これらのうち、GA-SA小麦粉が好ましい。
GA-SX小麦粉は、公知の方法、例えば、特開2013-188206号記載の方法に従って、製造することができる。
【0012】
本発明の早茹で麺用小麦粉組成物は、GA-SX小麦粉と、GA-SX小麦粉以外の小麦粉を含み、小麦粉からなる。GA-SX小麦粉以外の小麦粉としてはGA-SX小麦以外の小麦から製粉した小麦粉であれば特に限定はない。例えば、GBSSI(GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1)及びSSIIa(SSIIa-A1,SSIIa-B1及びSSIIa-D1)の6種の酵素活性の欠損の組み合わせ(ただし、GA-SXを除く)で酵素活性を欠損した小麦並びにGBSSI及びSSIIaの何れの酵素活性も欠損していない小麦から製粉した小麦粉が挙げられる。あるいは一般に使用される、強力粉、中力粉、薄力粉、及びそれらの混合物であってよい。GA-SX小麦粉以外の小麦粉として、好ましくは低アミロース小麦品種から製粉した小麦粉を使用し、さらに好ましくは低アミロース小麦品種「チクゴイズミ」から製粉した小麦粉を使用する。
【0013】
なお、小麦粉で作った麺類の茹で時間は使用する小麦粉の原料小麦品種のアミロース含量に依存することが知られており、アミロース含量が低いほど茹で時間が早くなる傾向にある。例えば小麦澱粉のアミロース含量が30%程度であり、「通常のアミロース」小麦とされる農林61号、さとのそら等から得られた小麦粉を使用したうどん(厚さ2.5mm、幅3.0mm)の茹で時間の目安は約21分、小麦澱粉のアミロース含量が27%程度である、「やや低アミロース」小麦とされる、きたほなみ、ふくほのか等から得られた小麦粉を使用したうどん(厚さ2.5mm、幅3.0mm)の茹で時間の目安は約19分、小麦澱粉のアミロース含量が23%程度である、「低アミロース」小麦とされる、チクゴイズミ、あやひかり等から得られた小麦粉を使用したうどん(厚さ2.5mm、幅3.0mm)の茹で時間の目安は約18分である。低アミロース小麦品種「チクゴイズミ」は、既存の小麦品種の中で最も茹で時間が早い麺類を得られることが知られている。なお、麺類の茹で時間は、製麺原料の配合割合、製麺方法、麺線の太さ、茹で方等によって変わるが、上記茹で時間の目安は、製麺原料として小麦粉100質量部、食塩2質量部及び水34質量部を使用し、製麺原料を混捏したそぼろ状生地を定法により複合圧延し、得られた厚さ2.5mmの最終麺帯を幅3.0mm、長さ25cmに切り出して麺線とし、その麺線をpH5~6の茹で槽で茹でた場合のものである。
【0014】
GA-SX小麦粉の含有量は、早茹で麺用小麦粉組成物の総量に対して、10~95質量%であり、好ましくは35~90質量%、さらに好ましくは45~85質量%、最も好ましくは55~85質量%である。係る範囲内であれば本発明の効果が発揮される。
【0015】
<早茹で麺用生地>
本発明の早茹で麺用生地は、少なくとも上記早茹で麺用小麦粉組成物を含む。
【0016】
早茹で麺用生地には、小麦粉以外の他の原料として、通常麺類の製造に使用される原料であれば何れも配合することができる。例えば、ライ麦粉、コーンフラワー、大麦粉、米粉などの穀粉類;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉などの澱粉類及びこれらにα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理等を行った加工澱粉類;卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;小麦グルテン、大豆蛋白質、脱脂粉乳等の蛋白質素材;動植物油脂、粉末油脂等の油脂類;乳化剤;食塩等の無機塩類;酒精;pH調整剤(有機酸など);かんすい;焼成カルシウム;食物繊維;増粘多糖類;糖類;調味料;色素;デキストリン;保存剤;酵素剤;保存料;香料;ビタミン;カルシウム等の強化剤等を例示することができる。
【0017】
<早茹で麺の製造方法>
本発明の早茹で麺の製造方法は、上記記載の本発明の早茹で麺用小麦粉組成物を小麦粉原料として使用して生地を得る工程及び前記生地を製麺する工程を含む以外は常法に従って製造することが出来る。
例えば本発明の製麺用粉体組成物に水分などを加えて混捏し生地を作成し、得られた生地を熟成した後、製麺ロールにより成型、複合および圧延して麺帯を製造し、切歯で切り出し麺線(生麺)とする、又は押出し製麺により麺線(生麺)を得る。得られた麺線を乾燥し乾麺としても良い。
【実施例
【0018】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0019】
<製造例1 茹でうどんの製造>
(1)水34質量部に食塩2質量部を加えてよく攪拌して食塩水を作った。
(2)小麦粉100質量部に上記食塩水を、市販のミキサー(ホバートジャパン社製、商品名「N50」)でビーターを使用して低速1分、かき落とし後さらに中速4分間ミキシングしてそぼろを得た。
(3)上記そぼろを、(株)スズキ麺工社製製麺機により1回ロールに通して整形し、2回ロールに通して複合し麺帯を得た。
(4)上記麺帯をロールで2回圧延を行い、麺厚2.5mmの麺帯とし、#10角(溝巾3mm)の切り歯を用いて切り出し、それを25cmの長さにカットして、生うどんを得た。
(5)リンゴ酸を使用して茹で槽がpH5~6になるよう調整した。
(6)サンプル100gを各実施例の表に記載の時間茹でて、水道水で1分間水洗いした後、試食に供した。
【0020】
<試験1 茹でうどんの最適茹で時間に与えるGA-SX小麦粉の影響>
低アミロース小麦品種であるチクゴイズミを製粉して得られた小麦粉(以下「チクゴイズミ小麦粉」という)とGA-SA小麦粉を表2記載の割合にした以外は製造例1に従って茹でうどんを製造した。それぞれの茹で麺の食感について、熟練パネラー10名により下記表1の評価基準に従って評価した。「粘弾性のバランス」とは粘りのある食感と弾力のある食感のバランスを言う。なお、チクゴイズミ小麦粉のみを使用して製造例1に従って製造したうどんを19分茹でたうどん(比較例1)のかたさと粘弾性のバランスを3点とした。結果を表2に示す。
【0021】
表1
【0022】
【0023】
チクゴイズミ小麦粉のみを使用した比較例1において、茹で時間18分でかたさと粘弾性のバランスが良好で最も評価が高く、茹で時間が16分以下では麺が茹であがってない状態であった。GA-SA小麦粉のみを使用した比較例2において、茹で時間16分でかたさと粘弾性のバランスが良好で最も評価が高く、19分以上では茹ですぎにより麺が軟らかく粘弾性のバランスが悪くなった。このことから、GA-SA小麦粉は、既存の小麦の中で最も茹で時間が早い品種の一つと言われているチクゴイズミよりも2分間程度早茹で出来ることが明らかとなった。
【0024】
チクゴイズミ小麦粉とGA-SA小麦粉とを配合した実施例1~7において、かたさ及び粘弾性に優れる茹でうどんを得ることができる最適な茹で時間(最も評点の合計が高い時間)は、実施例1と2で17.5分、実施例3と4で17分、実施例5と6で16.5分、実施例7で16分であった。比較例1に対する茹で時間の短縮率は、実施例1と2で2.8%、実施例3と4で5.6%、実施例5と6で8.3%、実施例7で11.1%であった(短縮率=(「実施例の最適な茹で時間」-「比較例1の最適な茹で時間」)/「比較例1の最適な茹で時間」×100)。ここで、最適な茹で時間における茹でうどんのかたさ及び粘弾性は、実施例1~7において比較例1及び2よりも評価点が高くなり、実施例3~6においては評価点が0.4ポイント以上高くなり、特に実施例5では評価点が高く優れた茹でうどんであった。また、実施例6及び7においては、茹で時間15.5分程度でも比較例1及び2の最適茹で時間のうどんよりもかたさ及び粘弾性が良好な茹でうどんが得られると考えらえる。