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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】拡張装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01L21/78 X
H01L21/78 W
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021016742
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119535
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 篤
(72)【発明者】
【氏名】政田 孝行
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-26544(JP,A)
【文献】特開2016-21513(JP,A)
【文献】実開平03-118609(JP,U)
【文献】特開2018-67668(JP,A)
【文献】米国特許第5628673(US,A)
【文献】特開2019-201037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ラインを備える被加工物が貼着されたエキスパンドシートの外周縁が環状フレームの一方の面に貼着されたフレームユニットの、該エキスパンドシートを拡張する拡張装置であって、
該フレームユニットが固定される環状フレーム固定部と、
該環状フレーム固定部に固定された該フレームユニットの該被加工物と該環状フレームの間のエキスパンドシートの環状領域に接触する接触部と、
該接触部を被加工物と直交する方向に移動させ該エキスパンドシートを突き上げて拡張する突き上げ部と、
該環状フレームの厚さを検出する検出部と、
該突き上げ部の突き上げ条件を登録する登録部を備え、該突き上げ部と該検出部とを制御する制御部と、を有し、
該環状フレーム固定部は、
該環状フレームの他方の面が突き当たる突き当て面と、該突き当て面と該環状フレームを挟持する挟持部と、を有し、
該登録部は、
該突き上げ条件として、該挟持部側から該接触部が該突き当て面を通り過ぎて該エキスパンドシートを突き上げた際の該接触部と該突き当て面との距離と、該突き上げ条件設定時に用いられた該環状フレームの厚さである基準厚さとが登録され、
該制御部は、
該検出部が検出した該環状フレームの厚さと該基準厚さとを比較し、算出された差に応じて、該突き上げ条件の該接触部と該突き当て面との距離を調整することを特徴とする拡張装置。
【請求項2】
該検出部は、該突き当て面に該環状フレームが突き当たった状態で、該環状フレームの該一方の面、又は該挟持部の位置を測定し、該環状フレームの厚さを算出する請求項1に記載の拡張装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスチップを製造する工程で、半導体デバイスウェーハを環状フレームにダイシングテープ(エキスパンドシート)で固定し、レーザー光線で分割予定ラインに沿った改質層を形成してから、エキスパンドシートを拡張させ、改質層を破断起点にウェーハをデバイスチップに分割する技術が使われている。
【0003】
また、半導体デバイスウェーハの裏面にエキスパンドシートに重ねてDAF(ダイアタッチフィルム)が貼られた状態で、DAFを冷却しながらエキスパンドシートを拡張させ、DAFをデバイスチップに合わせて破断する技術も用いられている。
【0004】
拡張を行う拡張装置は、環状フレームを固定した状態でウェーハ外周のエキスパンドシートを接触部で突き上げる事でエキスパンドシートを拡張する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5791866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1等に示された拡張装置は、突き上げ量が足りないと、破断不足が発生し、突き上げ量が多すぎるとエキスパンドシートが破断してしまうため、突き上げ量の調整は非常に重要な条件となる。
【0007】
接触部の移動量は、環状フレームを抑えるフレーム固定部に対して設定される。そのため、環状フレームの厚さが薄いと突き上げ量は小さくなり、環状フレームの厚さが厚いと突き上げ量が大きくなる。このような理由から、1つの工程で厚さの異なる環状フレームが混在されている場合、拡張装置でのシートの拡張量が変わってしまう恐れがあった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、エキスパンドシートの拡張量のばらつきを抑制することができる拡張装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の拡張装置は、分割予定ラインを備える被加工物が貼着されたエキスパンドシートの外周縁が環状フレームの一方の面に貼着されたフレームユニットの、該エキスパンドシートを拡張する拡張装置であって、該フレームユニットが固定される環状フレーム固定部と、該環状フレーム固定部に固定された該フレームユニットの該被加工物と該環状フレームの間のエキスパンドシートの環状領域に接触する接触部と、該接触部を被加工物と直交する方向に移動させ該エキスパンドシートを突き上げて拡張する突き上げ部と、該環状フレームの厚さを検出する検出部と、該突き上げ部の突き上げ条件を登録する登録部を備え、該突き上げ部と該検出部とを制御する制御部と、を有し、該環状フレーム固定部は、該環状フレームの他方の面が突き当たる突き当て面と、該突き当て面と該環状フレームを挟持する挟持部と、を有し、該登録部は、該突き上げ条件として、該挟持部側から該接触部が該突き当て面を通り過ぎて該エキスパンドシートを突き上げた際の該接触部と該突き当て面との距離と、該突き上げ条件設定時に用いられた該環状フレームの厚さである基準厚さとが登録され、該制御部は、該検出部が検出した該環状フレームの厚さと該基準厚さとを比較し、算出された差に応じて、該突き上げ条件の該接触部と該突き当て面との距離を調整することを特徴とする。
【0010】
前記拡張装置において、該検出部は、該突き当て面に該環状フレームが突き当たった状態で、該環状フレームの該一方の面、又は該挟持部の位置を測定し、該環状フレームの厚さを算出しても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、エキスパンドシートの拡張量のばらつきを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1に係る拡張装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る拡張装置の加工対象のフレームユニットの一例を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係る拡張装置がフレームユニットのエキスパンドシートを拡張した状態を模式的に一部断面で示す要部の側面図である。
図4図4は、図1に示された拡張装置にフレームユニットを搬入する状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
図5図5は、図1に示された拡張装置の環状フレーム固定部でフレームユニットを固定する状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
図6図6は、図1に示された拡張装置の固定したフレームユニットの環状フレームの厚さを検出する状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
図7図7は、図1に示された拡張装置の固定したフレームユニットのエキスパンドシートを拡張した状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
図8図8は、図7に示された拡張装置のフレームユニットの環状フレームの厚さが薄い状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
図9図9は、図7に示された拡張装置のフレームユニットの環状フレームの厚さが厚い状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る拡張装置を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る拡張装置の構成例を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る拡張装置の加工対象のフレームユニットの一例を示す斜視図である。図3は、実施形態1に係る拡張装置がフレームユニットのエキスパンドシートを拡張した状態を模式的に一部断面で示す要部の側面図である。図4は、図1に示された拡張装置にフレームユニットを搬入する状態を模式的に一部断面で示す側面図である。図5は、図1に示された拡張装置の環状フレーム固定部でフレームユニットを固定する状態を模式的に一部断面で示す側面図である。図6は、図1に示された拡張装置の固定したフレームユニットの環状フレームの厚さを検出する状態を模式的に一部断面で示す側面図である。図7は、図1に示された拡張装置の固定したフレームユニットのエキスパンドシートを拡張した状態を模式的に一部断面で示す側面図である。図8は、図7に示された拡張装置のフレームユニットの環状フレームの厚さが薄い状態を模式的に一部断面で示す側面図である。図9は、図7に示された拡張装置のフレームユニットの環状フレームの厚さが厚い状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
【0015】
実施形態1に係る図1に示す拡張装置1は、図2に示すフレームユニット200のエキスパンドシート201を面方向に拡張する装置である。フレームユニット200は、図2に示すように、被加工物であるウェーハ202と、ウェーハ202が貼着されたエキスパンドシート201と、ウェーハ202の外径よりも内径が大きな円環状に形成されかつエキスパンドシート201の外周縁が貼着された環状フレーム203とを備える。フレームユニット200は、ウェーハ202が貼着されたエキスパンドシート201の外周縁が環状フレーム203の一方の面203-1に貼着されたものである。
【0016】
実施形態1では、ウェーハ202は、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素又はSiC(炭化ケイ素)などを基板とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等である。ウェーハ202は、図2に示すように、格子状の複数の分割予定ライン204を表面205に備える。ウェーハ202は、分割予定ライン204で区画された表面205の各領域にそれぞれデバイス206を有している。ウェーハ202は、表面205の裏側の裏面207にエキスパンドシート201が貼着され、エキスパンドシート201の外周縁に環状フレーム203が貼着されて、基板の内部に破断起点である改質層208が分割予定ライン204に沿って形成されている。
【0017】
なお、改質層208とは、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。改質層208は、ウェーハ202の基板の他の箇所よりも機械的な強度が低い。
【0018】
エキスパンドシート201は、伸縮性を有する樹脂から構成され、加熱されると収縮する熱収縮性を有する。エキスパンドシート201は、ウェーハ202よりも大径な円板状に形成され、かつ、伸縮性及び熱収縮性を有する合成樹脂から構成された基材層と、基材層上に積層されかつウェーハ202に貼着するとともに伸縮性、粘着力及び熱収縮性を有する合成樹脂から構成された粘着層とを備える。
【0019】
図1に示す拡張装置1は、フレームユニット200のエキスパンドシート201を面方向に拡張して、破断起点として改質層208が形成されたウェーハ202を分割予定ライン204に沿って個々の図2に示すデバイスチップ210に分割する装置である。なお、デバイスチップ210は、分割予定ライン204に沿って分割された基板の一部と、基板の表面に形成されたデバイス206とを備える。
【0020】
拡張装置1は、図1に示すように、環状フレーム固定部10と、搬送ユニット30と、突き上げ部40と、検出部50と、制御ユニット60とを備える。
【0021】
環状フレーム固定部10は、フレームユニット200の環状フレーム203を固定するものである。環状フレーム固定部10は、挟持部11と、押さえ部21とを備える。挟持部11は、平面形状が円形の開口部12が上面13の中央に開口し、かつ上面13が水平方向と平行に平坦に形成された板状に形成されている。挟持部11の開口部12の内径は、環状フレーム203の内径と等しく形成されている。挟持部11は、開口部12内に突き上げ部40の円盤状の保持テーブル42を配置し、開口部12が保持テーブル42と同軸に配置されている。
【0022】
挟持部11は、上面13の四隅に水平方向に移動自在に設けられ、かつ水平方向に移動することにより環状フレーム203の位置を調整して、ウェーハ202を保持テーブル42の保持面45と同軸となる位置に位置決めするセンタリングガイド14が設けられている。
【0023】
また、挟持部11は、シリンダ15により鉛直方向と平行なZ軸方向に昇降自在に設けられている。即ち、挟持部11は、シリンダ15の伸縮自在なロッド16の先端に取り付けられてシリンダ15のロッド16が伸縮することでZ軸方向に昇降自在に設けられている。なお、シリンダ15は、挟持部11がフレームユニット200の環状フレーム203及びエキスパンドシート201の外周縁を介して押さえ部21に突き当たる(即ち、挟持部11が環状フレーム203及びエキスパンドシート201の外周縁を押さえ部21との間に挟持する)と、停止するエアシリンダである。
【0024】
押さえ部21は、挟持部11とほぼ同寸法の板状に形成され、中央に開口部12と同寸法の円形の開口部22が設けられている。押さえ部21は、シリンダ25のピストンロッド26の先端に取り付けられ、ピストンロッド26が水平方向と平行なY軸方向に沿ってシリンダ25から伸縮することにより、挟持部11の上方の位置と、挟持部11の上方から退避した位置とに亘って移動自在である。押さえ部21は、四隅にセンタリングガイド14が侵入可能な長孔24が設けられている。
【0025】
環状フレーム固定部10は、押さえ部21が挟持部11の上方から退避した位置に位置付けられ、センタリングガイド14同士が互いに離れた状態で、挟持部11の上面13に搬送ユニット30により搬送されてきたフレームユニット200の環状フレーム203が載置される。環状フレーム固定部10は、センタリングガイド14同士を近づけて、フレームユニット200のウェーハ202を位置決めする。
【0026】
環状フレーム固定部10は、図3に示すように、押さえ部21を挟持部11の上方に位置付け、挟持部11がシリンダ15により上昇されて、フレームユニット200の環状フレーム203及びエキスパンドシート201の外周縁を挟持部11と押さえ部21の下面である突き当て面23との間で挟持して固定する。このとき、押さえ部21の下面である突き当て面23は、環状フレーム203の他方の面203-2が突き当たる。また、挟持部11は、突き当て面23との間に環状フレーム203及びエキスパンドシート201の外周縁を挟持する。
【0027】
また、環状フレーム固定部10は、挟持部11を上昇させて、突き当て面23と挟持部11との間に環状フレーム203を挟持することで、フレームユニット200を固定する。このために、環状フレーム固定部10は、固定したフレームユニット200の環状フレーム203の厚さに応じて、挟持部11のZ軸方向の高さが変化することとなる。
【0028】
搬送ユニット30は、フレームユニット200の環状フレーム203を吸引保持して、環状フレーム203を環状フレーム固定部10の挟持部11の上面13上に載置して、フレームユニット200を搬入する。また、搬送ユニット30は、環状フレーム固定部10の挟持部11の上面13上のフレームユニット200の環状フレーム203を吸引保持して、フレームユニット200を搬出する。
【0029】
突き上げ部40は、環状フレーム固定部10に固定されたフレームユニット200のエキスパンドシート201を突き上げて、エキスパンドシート201を面方向に拡張するものである。突き上げ部40は、拡張ドラム41と、保持テーブル42と、接触部であるコロ部材43とを備える。
【0030】
拡張ドラム41は、円筒状に形成され、外径が挟持部11の上面13に載置される環状フレーム203の内径よりも小さく、内径がエキスパンドシート201に貼着されるウェーハ202の外径よりも大きく形成されている。拡張ドラム41は、環状フレーム固定部10の開口部12,22と同軸に配置されている。拡張ドラム41の上端には、コロ部材43(図3等に示す)が回転自在に取り付けられている。
【0031】
拡張ドラム41は、モータ44の出力軸に取り付けられ、モータ44が出力軸を鉛直方向と平行な軸心回りに回転することにより鉛直方向と平行なZ軸方向に昇降する。実施形態1では、拡張ドラム41は、モータ44によりコロ部材43の上端が環状フレーム203を固定した環状フレーム固定部10の挟持部11の上面13よりも下側に位置する位置と、コロ部材43の上端が環状フレーム203を固定した環状フレーム固定部10の挟持部11の上面13よりも上側に位置する位置とに亘ってZ軸方向に昇降する。
【0032】
保持テーブル42は、エキスパンドシート201を介して、ウェーハ202を支持する保持面45を有する。保持テーブル42は、円板状に形成され、拡張ドラム41の内側に配置される。保持面45は、水平方向と平行に形成され、コロ部材43の上端と同一平面上に配置される。保持テーブル42は、モータ44により拡張ドラム41と一体にZ軸方向に昇降する。
【0033】
また、実施形態1において、保持テーブル42は、保持面が多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から形成され、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。保持テーブル42は、保持面45が真空吸引源により吸引されると、エキスパンドシート201を介してウェーハ202を吸引保持する。
【0034】
突き上げ部40は、コロ部材43を環状フレーム固定部10で環状フレーム203が固定されたフレームユニット200のウェーハ202の表面205及び裏面207と直交するZ軸方向に移動させて、ウェーハ202の外周と環状フレーム203の内周との間のエキスパンドシート201の環状領域をコロ部材43で突き上げ、保持テーブル42の保持面45でエキスパンドシート201を介してウェーハ202を突き上げて、図3に示すように、エキスパンドシート201を面方向に拡張する。即ち、突き上げ部40は、環状フレーム固定部10の挟持部11と保持テーブル42とを保持テーブル42の保持面45と直交する方向に相対的に離反させ、エキスパンドシート201を面方向に拡張するユニットである。このために、コロ部材43は、環状フレーム固定部10に固定されたフレームユニット200のウェーハ202と環状フレーム203の間のエキスパンドシート201の環状領域に接触することとなる。
【0035】
検出部50は、環状フレーム固定部10に固定されたフレームユニット200の環状フレーム203の厚さT1(図3に示す)に関する情報を検出し、検出結果を制御ユニット60に出力するものである。実施形態1において、検出部50は、環状フレーム固定部10の挟持部11に取り付けられた検出片51と、検出片51とZ軸方向に対向しかつ拡張装置1の装置本体2に固定された検出器52とを備える。検出片51は、挟持部11の外縁に連なっており、挟持部11とともにZ軸方向に沿って昇降する。
【0036】
検出器52は、装置本体2に固定されることで、拡張ドラム41がZ軸方向に昇降することがない(昇降することが規制されている)。検出器52は、検出片51に向けて光を照射するとともに、検出片51からの反射光を受光して、環状フレーム固定部10に固定されたフレームユニット200の環状フレーム203の厚さT1に関する情報である検出片51までのZ軸方向の距離D1(図3に示す)を検出して、検出結果を制御ユニット60に出力する。このように、検出部50は、突き当て面23に環状フレーム203が突き当たった状態で挟持部11の位置及び環状フレーム203の一方の面203-1の位置に対応する検出片51までのZ軸方向の距離D1を測定する。なお、前述したZ軸方向の距離D1は、厚さT1に対応する距離である。
【0037】
制御ユニット60は、拡張装置1の上述した構成要素を制御して、ウェーハ202に対する加工動作を拡張装置1に実施させるものである。即ち、制御ユニット60は、フレームユニット200のエキスパンドシート201の拡張動作を拡張装置1に実施させるものである。
【0038】
なお、制御ユニット60は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット60の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、拡張装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して拡張装置1の上述した構成要素に出力する。
【0039】
制御ユニット60は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0040】
また、制御ユニット60は、突き上げ部40の突き上げ条件を登録し、記憶する登録部61と、制御部62とを備える。
【0041】
なお、突き上げ条件として、突き上げ条件設定時に用いられた環状フレーム固定部10に固定されたフレームユニット200の環状フレーム203の厚さである基準厚さT(図3に示す)と、基準厚さTの環状フレーム203を備えるフレームユニット200を固定した環状フレーム固定部10の挟持部11側からコロ部材43等が上昇して突き当て面23を通り過ぎてエキスパンドシート201を突き上げた際のコロ部材43の上端と突き当て面23とのZ軸方向の距離である基準突き上げ距離P(図3に示す)とが登録部61に登録される。また、登録部61は、突き上げ条件として、エキスパンドシート201の厚さT2も登録される。
【0042】
制御部62は、環状フレーム固定部10と搬送ユニット30と突き上げ部40と検出部50と制御して、エキスパンドシート201の拡張動作を拡張装置1に実施させるものである。また、制御部62は、検出部50が検出したZ軸方向の距離D1に対応した環状フレーム203の厚さT1と基準厚さTとを比較し、算出された差に応じて、突き上げ条件のコロ部材43の上端と突き当て面23とのZ軸方向の距離である基準突き上げ距離Pを調整するものでもある。
【0043】
なお、登録部61の機能は、記憶装置により実現され、制御部62の機能は、演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施することにより実現される。
【0044】
また、実施形態1において、拡張装置1は、環状フレーム固定部10で固定したフレームユニット200の拡張後のエキスパンドシート201のウェーハ202の外周と環状フレーム203の内周との間を加熱し、収縮させる図示しない加熱ユニットを備える。なお、加熱ユニットは、エキスパンドシート201のウェーハ202の外周と環状フレーム203の内周との間に赤外線を照射して、加熱する形式のもの、例えば、電圧が印加されると加熱されて、赤外線を放射する赤外線セラミックヒータを備える。
【0045】
次に、実施形態1に係る拡張装置1のフレームユニット200のエキスパンドシート201の拡張動作を説明する。実施形態1において、拡張装置1は、エキスパンドシート201の拡張動作を実施して、改質層208を破断起点としてウェーハ202を個々のデバイスチップ210に分割する。実施形態1において、拡張装置1は、入力ユニットを介して突き上げ条件を制御ユニット60が受け付けて記憶装置に記憶し、制御ユニット60がオペレータからの加工開始指示を受け付けると、エキスパンドシート201の拡張動作を開始する。
【0046】
拡張動作では、拡張装置1は、図4に示すように、搬送ユニット30がフレームユニット200の環状フレーム203を保持する。拡張装置1は、環状フレーム固定部10の挟持部11及び突き上げ部40を下降させ、環状フレーム固定部10の押さえ部21を挟持部11の上方から退避した位置に位置付ける。拡張装置1は、搬送ユニット30で保持した環状フレーム203を環状フレーム固定部10の挟持部11の上面13に載置するとともに、フレームユニット200のウェーハ202の裏面207側をエキスパンドシート201を介して保持テーブル42の保持面45上に載置する。
【0047】
拡張装置1は、シリンダ25のピストンロッド26を伸長して、図5に示すように、押さえ部21を挟持部11の上方の位置に位置づけ、環状フレーム固定部10のセンタリングガイド14同士を近づけて、フレームユニット200の環状フレーム203及びウェーハ202を位置決めする。拡張装置1は、挟持部11を上昇させて、図6に示すように、環状フレーム4及びエキスパンドシート201の外周縁を挟持部11と押さえ部21の突き当て面23との間に挟んでフレームユニット200を固定する。こうして、拡張装置1は、エキスパンドシート201が拡張対象のフレームユニット200を環状フレーム固定部10で固定する。
【0048】
拡張装置1は、検出部50でエキスパンドシート201が拡張対象のフレームユニット200の環状フレーム203の厚さT1に対応した距離D1を検出する。また、拡張装置1は、制御部62が、押さえ部21のZ軸方向の位置が固定されているため、登録部61に登録した環状フレーム203の基準厚さTとエキスパンドシート201の厚さT2等に基づいて、基準厚さTの環状フレーム203を備えるフレームユニット200を環状フレーム固定部10が固定した際の検出部50の検出器52が検出する環状フレーム203の基準厚さTに対応した検出片51までのZ軸方向の基準距離D(図3に示す)を算出する。また、本発明では、制御ユニット60は、基準距離Dを突き上げ条件として登録部61に登録、記憶しても良い。
【0049】
こうして、制御部62は、基準厚さTに基づいて基準距離Dを算出する。拡張装置1は、制御部62が、検出部50が検出したエキスパンドシート201が拡張対象のフレームユニット200の環状フレーム203の厚さT1に対応した距離D1と、基準厚さTに対応した基準距離Dとを比較し、これらの距離D,D1の差を算出する。また、制御部62は、距離D,D1の差に応じて、基準突き上げ距離Pを調整する。
【0050】
具体的には、拡張装置1の制御部62は、距離D1が基準距離Dよりも長い場合、即ち、環状フレーム203の厚さT1が基準厚さTよりも薄い場合には、制御部62が、距離D,D1の差を基準突き上げ距離Pに加えた距離を、突き上げ距離P1(突き上げ部40がエキスパンドシート201を突き上げた際のコロ部材43の上端と突き当て面23とのZ軸方向の距離であり、図3図7及び図8に示す)と算出する。
【0051】
また、拡張装置1は、距離D1が基準距離Dよりも短い場合、即ち、環状フレーム203の厚さT1が基準厚さTよりも厚い場合には、制御部62が、距離D,D1の差を基準突き上げ距離Pから引いた距離を、突き上げ距離P2(突き上げ部40がエキスパンドシート201を突き上げた際のコロ部材43の上端と突き当て面23とのZ軸方向の距離であり、図3図7及び図9に示す)と算出する。
【0052】
また、拡張装置1は、距離D1が基準距離Dと等しい場合、即ち、環状フレーム203の厚さT1が基準厚さTと等しい場合には、制御部62が、基準突き上げ距離Pを、突き上げ距離P3(突き上げ部40がエキスパンドシート201を突き上げた際のコロ部材43の上端と突き当て面23とのZ軸方向の距離であり、図3及び図7に示す)と算出する。
【0053】
こうして、制御部62は、距離D,D1の長短、算出された厚さT1に対応した距離である距離D,D1の差に応じて、突き上げ条件の基準突き上げ距離Pを調整して、突き上げ距離P1,P2,P3を算出する。
【0054】
拡張装置1は、制御部62が、保持テーブル42の保持面45を真空吸引源で吸引することなく、コロ部材43の上端と突き当て面23とのZ軸方向の距離が算出した突き上げ距離P1,P2,P3となる位置まで、モータ44で突き上げ部40を上昇させる。
【0055】
このように、制御部62は、基準距離をD、基準厚さをT、基準突き上げ距離をP、エキスパンドシート201の厚さをT2、突き上げ距離をP1、検出部50が検出した環状フレーム203の厚さT1に対応した距離をD1とすると、D1>Dである場合、突き上げ距離P1=P+(D1-D)となるように、突き上げ部40を上昇させて、突き上げ部40でエキスパンドシート201を突き上げる。
【0056】
また、制御部62は、基準距離をD、基準厚さをT、基準突き上げ距離をP、エキスパンドシート201の厚さをT2、突き上げ距離をP2、検出部50が検出した環状フレーム203の厚さT1に対応した距離をD1とすると、D1<Dである場合、突き上げ距離P2=P-(D-D1)となるように、突き上げ部40を上昇させて、突き上げ部40でエキスパンドシート201を突き上げる。
【0057】
また、制御部62は、基準距離をD、基準厚さをT、基準突き上げ距離をP、エキスパンドシート201の厚さをT2、突き上げ距離をP3、検出部50が検出した環状フレーム203の厚さT1に対応した距離をD1とすると、D1=Dである場合、突き上げ距離P3=Pとなるように、突き上げ部40を上昇させて、突き上げ部40でエキスパンドシート201を突き上げる。
【0058】
すると、エキスパンドシート201のウェーハ202の外周と環状フレーム203の内周との間をコロ部材43が下方から上方に向けて押圧するとともに、ウェーハ202を保持テーブル42が下方から上方に向けて押圧して、エキスパンドシート201が面方向に拡張される。エキスパンドシート201の拡張の結果、エキスパンドシート201に放射状に引張力が作用する。
【0059】
このようにウェーハ202の裏面207に貼着されたエキスパンドシート201に放射状に引張力が作用すると、ウェーハ202は、図7図8及び図9に示すように、分割予定ライン204に沿って改質層208が形成されているので、改質層208を基点として、分割予定ライン204に沿って個々のデバイスチップ210に分割される。
【0060】
実施形態1において、拡張装置1は、保持テーブル42の保持面45を真空吸引源で吸引して、保持面45にエキスパンドシート201を介してウェーハ202即ち分割されたデバイスチップ210を吸引する。拡張装置1は、モータ44により突き上げ部40を下降する。すると、フレームユニット200は、保持面45にエキスパンドシート201を介してデバイスチップ210が吸引保持され、エキスパンドシート201が一旦拡張しているために、エキスパンドシート201のウェーハ202の外周と環状フレーム203の内周との間に弛みが形成される。
【0061】
拡張装置1は、加熱ユニットでエキスパンドシート201のウェーハ202の外周と環状フレーム203の内周との間に弛みを加熱し、収縮する。拡張装置1は、環状フレーム固定部10の挟持部11を下降し、保持テーブル42の保持面45の吸引保持を停止した後、搬送ユニット30でフレームユニット200を搬出して拡張動作を終了する。なお、個々に分割されたデバイスチップ210は、周知のピッカーによりエキスパンドシート201からピックアップされる。
【0062】
以上説明したように、実施形態1に係る拡張装置1は、登録部61が基準突き上げ距離Pと基準厚さTとが登録され、制御部62が、基準厚さTに基づいて基準厚さTに対応した基準距離Dを算出する。または、拡張装置1は、登録部61が基準距離Dが登録されても良い。また、拡張装置1は、制御部62が検出部50が検出した環状フレーム203の厚さT1に対応した距離D1と基準距離Dとを比較し、これらの距離D,D1の差に応じて、突き上げ条件の基準突き上げ距離Pを調整して、突き上げ部40でエキスパンドシート201を突き上げる際の突き上げ距離P1,P2,P3を算出し、算出した突き上げ距離P1,P2,P3通りにエキスパンドシート201を突き上げる。
【0063】
このために、拡張装置1は、図8及び図9に示すように、拡張対象のエキスパンドシート201を備えるフレームユニット200の環状フレーム203の厚さT1がばらついても、エキスパンドシート201を突き上げる際の挟持部11上のエキスパンドシート201の外周縁と、コロ部材43上のエキスパンドシート201とのZ軸方向の距離Kが等しくなる。このように、拡張装置1は、フレームユニット200の環状フレーム203の厚さT1が基準厚さTよりも薄い場合には、突き上げ距離P1を基準突き上げ距離Pよりも長くし、フレームユニット200の環状フレーム203の厚さT1が基準厚さTよりも厚い場合には、突き上げ距離P2を基準突き上げ距離Pよりも短くし、フレームユニット200の環状フレーム203の厚さT1が基準厚さTと等しい場合には、突き上げ距離P3を基準突き上げ距離Pと等しくする。
【0064】
その結果、拡張装置1は、拡張対象のエキスパンドシート201を備えるフレームユニット200の環状フレーム203の厚さT1がばらついても、エキスパンドシート201の拡張量(拡張前後のエキスパンドシート201の外径の差)のばらつきを抑制することができ、環状フレーム203の厚さT1によらず、一定量の距離Kでエキスパンドシート201を突き上げて、拡張できるという効果を奏する。
【0065】
なお、図8は、環状フレーム203の厚さT1が基準厚さTよりも薄い場合を示し、図9は、環状フレーム203の厚さT1が基準厚さTよりも厚い場合を示している。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。実施形態1に係る拡張装置1は、破断起点として改質層208が形成されたウェーハ202を個々のデバイスチップ210に分割したが、本発明では、これに限定されることなく、破断起点としてレーザー加工溝又は切削溝が形成されたウェーハ202を個々のデバイスチップ210に分割しても良い。
【0067】
また、本発明では、拡張装置1は、ウェーハ202の裏面8にDAF(ダイアタッチフィルム)が貼着されかつDAFにエキスパンドシート201が貼着されたフレームユニット200のエキスパンドシート201を拡張して、DAFとともにウェーハ202を個々のデバイスチップ210に分割しても良い。なお、拡張装置1は、DAFとともにウェーハ202を個々のデバイスチップ210に分割する際には、DAFを冷却して破断しやすくするための冷却ユニット(冷気が供給されるチャンバーや冷却されるテーブル等)が搭載される。
【符号の説明】
【0068】
1 拡張装置
10 環状フレーム固定部
11 挟持部
23 突き当て面
40 突き上げ部
43 コロ部材(接触部)
50 検出部
61 登録部
62 制御部
200 フレームユニット
201 エキスパンドシート
202 ウェーハ(被加工物)
203 環状フレーム
203-1 一方の面
203-2 他方の面
T 基準厚さ
T1 厚さ
P 基準突き上げ距離(距離)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9