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特許7561647プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240927BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
H01L21/302 101R
H01L21/302 101G
H05H1/46 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021021233
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123728
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 雄大
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2006-0133649(KR,A)
【文献】特開2009-218607(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0056712(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
C23C 16/505
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内に電磁波を供給することにより前記処理容器内にプラズマを生成させ、前記プラズマにより前記基板を処理するプラズマ生成部と、
前記処理容器内に配置される第1の導電部材と、
前記第1の導電部材との間で予め定められた電位差を有する第2の導電部材と、
誘電体で形成されており、前記第1の導電部材と前記第2の導電部材との間に配置され、ガスを前記第2の導電部材から前記第1の導電部材へ流通させる配管と
を備え、
前記配管には、ガスが流通する流路が屈曲状または湾曲状に形成されており、
前記第2の導電部材から前記第1の導電部材に向う方向において、前記配管を構成する部材を挟んで前記流路に隣接する前記配管内の位置には、前記部材よりも比誘電率が低い物質が配置される空間が形成されている配置されているプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記空間内は、空気で満たされており、5Torr以下の圧力に制御される請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記処理容器内のガスを排気する排気システムを備え、
前記排気システムは、前記空間内の空気も排気する請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記空間内は、空気で満たされており、
前記空間内の圧力は、2000Torr以上となるように制御される請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記流路は、前記第2の導電部材から前記第1の導電部材に向う方向における前記配管の中心軸を中心として螺旋状に形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
a)処理容器内に基板を搬入する工程と、
b)誘電体で形成されている配管であって、内部にガスが流通する流路が屈曲状または湾曲状に形成されており、前記処理容器内に配置される第1の導電部材と前記第1の導電部材との間で予め定められた電位差を有する第2の導電部材との間に配置されている配管を介して、ガスを前記第2の導電部材から前記第1の導電部材へ流す工程と、
c)前記第2の導電部材から前記第1の導電部材に向う方向において、前記配管を構成する部材を挟んで前記流路に隣接する前記配管内の位置に配置されている空間内の空気を排気する工程と、
d)前記空間内の圧力が5Torr以下になった後に、前記処理容器内に電磁波を供給することにより前記処理容器内にプラズマを生成させ、前記プラズマにより前記基板を処理する工程と
を含むプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを用いて基板の処理を行う装置では、プラズマを生成するために処理容器内にガスが供給される。プラズマが生成される処理容器内に配置される部材の中には、高い電位に設定される部材がある。処理容器の筐体は接地電位等の低い電位に設定されるため、高い電位に設定された部材と処理容器の筐体との間にガスを供給する配管が配置されると、配管内には電位差に応じた電界が発生する場合がある。配管内に電界が発生すると、配管内に進入した電子等の荷電粒子が配管内で加速され、配管内のガスの原子と衝突することにより、配管内で放電(アーキング)が発生する場合がある。これを防止するために、配管内に螺旋状の流路を設ける技術が知られている(例えば下記特許文献1参照)。これにより、電界方向における配管内の空間の長さを短くすることができ、電子の加速を抑え、配管内での放電を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-356531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、処理容器内にガスを供給する配管内の放電を抑制することができるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、プラズマ処理装置であって、処理容器と、プラズマ生成部と、第1の導電部材と、第2の導電部材と、配管とを備える。処理容器は、基板を収容する。プラズマ生成部は、処理容器内に電磁波を供給することにより処理容器内にプラズマを生成させ、プラズマにより基板を処理する。第1の導電部材は、処理容器内に配置される。第2の導電部材は、第1の導電部材との間で予め定められた電位差を有する。配管は、誘電体で形成されており、第1の導電部材と第2の導電部材との間に配置され、ガスを第2の導電部材から第1の導電部材へ流通させる。配管には、ガスが流通する流路が屈曲状または湾曲状に形成されている。第2の導電部材から第1の導電部材に向う方向において、配管を構成する部材を挟んで流路に隣接する配管内の位置には、配管を構成する部材よりも比誘電率が低い物質が配置される空間が形成されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、処理容器内にガスを供給する配管内の放電を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理システムの構成の一例を示すシステム構成図である。
図2図2は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理装置の構造の一例を示す概略断面図である。
図3図3は、配管の構造の一例を示す拡大断面図である。
図4図4は、比較例における配管のモデルの一例を示す模式図である。
図5図5は、本実施形態における配管のモデルの一例を示す模式図である。
図6図6は、気圧および電極間距離と放電電圧との関係の一例を示す図である。
図7図7は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理方法の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、配管の構造の他の例を示す拡大断面図である。
図9図9は、配管の構造の他の例を示す拡大断面図である。
図10図10は、配管の構造の他の例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示されるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法が限定されるものではない。
【0009】
ところで、近年の三次元構造の半導体装置では、高いアスペクト比の溝の形成が必要とされている。高いアスペクト比の溝を形成するためには、高い電圧かつ高いパワーのRF(Radio Frequency)電力を用いた処理が必要になる。プラズマ処理に高い電圧かつ高いパワーのRF電力が用いられると、配管内に発生する電界も大きくなり、配管内の荷電粒子がより短い距離で加速されてしまう。これにより、配管内での放電が発生しやすくなる。そのため、配管内での放電をさらに抑えることが求められている。
【0010】
そこで、本開示は、処理容器内にガスを供給する配管内の放電を抑制することができる技術を提供する。
【0011】
[プラズマ処理システム100の構成]
図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理システム100の構成の一例を示すシステム構成図である。一実施形態において、プラズマ処理システム100は、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0012】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、プラズマ生成部12としては、例えばAC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、200kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。RF信号は、電磁波の一例である。
【0013】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU;Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0014】
[プラズマ処理装置1の構成]
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合型のプラズマ処理装置の構成例について説明する。図2は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理装置1の構造の一例を示す概略断面図である。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成されている。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置されている。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置されている。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(Ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、例えばアルミニウム等の導電性材料により構成され、側壁10aおよび底部10bは接地されている。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁されている。プラズマ処理チャンバ10は、処理容器の一例である。
【0015】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、本体部111の中央領域であり基板Wを支持するための基板支持面111aと、本体部111の環状領域でありリングアセンブリ112を支持するためのリング支持面111bとを有する。基板Wは、ウェハと呼ばれることもある。本体部111のリング支持面111bは、平面視で本体部111の基板支持面111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の基板支持面111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の基板支持面111a上の基板Wを囲むように本体部111のリング支持面111b上に配置されている。一実施形態において、本体部111は、基台及び静電チャックを含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置されている。静電チャックの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。
【0016】
また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に、例えばヘリウム(He)ガス等の伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を有する。伝熱ガス供給部は、PTFE(PolytTtraFluoroEthylene)等の誘電体で形成されており、伝熱ガスを流通させる配管50を含む。配管50は、本体部111と、プラズマ処理チャンバ10の底部10bとの間に配置されており、底部10bから本体部111へ伝熱ガスを流通させる。配管14を介して配管50内に供給された伝熱ガスは、配管50内に形成された流路内を流れ、本体部111内に形成された流路111cを介して、基板支持面111aと基板Wとの間に供給される。
【0017】
また、配管50内には、伝熱ガスの流路とは別に、空間が設けられている。当該空間内のガスは、配管15および圧力調整弁15aを介して、排気システム40によって排気される。配管15には、圧力センサ15bが設けられている。
【0018】
本体部111とプラズマ処理チャンバ10の底部10bとは電気的に絶縁されており、本体部111には、電源30からRF信号(RF電力)が供給され、プラズマ処理チャンバ10の底部10bは接地されている。そのため、本体部111とプラズマ処理チャンバ10の底部10bとの間には、電位差が生じる。本体部111は、第1の導電部材の一例であり、プラズマ処理チャンバ10の底部10bは、第2の導電部材の一例である。
【0019】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0020】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成されている。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0021】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材、シャワーヘッド13の導電性部材、またはその両方に供給するように構成されている。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0022】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材、シャワーヘッド13の導電性部材、またはその両方に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成されている。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材、シャワーヘッド13の導電性部材、またはその両方に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0023】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。なお、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0024】
排気システム40は、圧力調整弁16aおよび配管16を介して、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、真空ポンプを含む。圧力調整弁16aによって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0025】
[配管50の構造]
図3は、配管50の構造の一例を示す拡大断面図である。PTFE等の誘電体により形成された配管50の本体51には、伝熱ガスが流通する流路52が形成されている。本体51は、配管50を構成する部材の一例である。流路52は、配管50の本体51内に屈曲状または湾曲状に形成されている。本実施形態において、配管50は、略円筒状に形成されており、流路52は、配管50の中心軸Aを中心として螺旋状に形成されている。配管50は、例えばAdditive Manufacturing等により形成することが可能である。
【0026】
また、本実施形態において、配管50の本体51には、空間53が形成されている。空間53は、プラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111に向う方向(図3におけるY方向)において、配管50の本体51を挟んで流路52に隣接する位置に形成されている。具体的には、図3におけるY方向において、空間53の部分53aは、配管50の本体51の部分51aを挟んで、流路52の部分52aに隣接する位置に形成されている。図3におけるY方向は、本体部111とプラズマ処理チャンバ10の底部10bとの電位差によって生じる電界に沿う方向である。
【0027】
本実施形態において、空間53内の空気は、配管15を介して排気システム40によって排気される。これにより、空間53内の圧力は、大気圧よりも低い予め定められた圧力以下となるように制御される。空間53内の空気の比誘電率は、配管50の本体51の比誘電率よりも小さい。
【0028】
[伝熱ガスの流路にかかる電圧の大きさ]
ここで、誘電体により形成され、内部に伝熱ガスを流通させる螺旋状の流路が設けられ、空間53が設けられていない配管を比較例として検討する。このような配管は、例えば図4のようにモデル化することができる。図4は、比較例における配管のモデルの一例を示す模式図である。
【0029】
図4では、PTFEにより形成された配管のモデルが例示されている。図4では、本体部111とプラズマ処理チャンバ10の底部10bとの間の電位差をV(total)と定義し、本体部111とプラズマ処理チャンバ10の底部10bとの間の距離、即ち配管の厚さをd(total)と定義する。また、プラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111に向う方向(図4におけるY方向)では、本体51に螺旋状に形成された流路52は、略同様の構造の複数の層とみなすことができる。各層には、本体51の層と、流路52の層とが含まれる。各層において、本体51に発生する電位差をV(PTFE)、流路52に発生する電位差をV(He)と定義する。また、各層において、本体51の厚さをd(PTFE)、流路52の厚さをd(He)と定義する。
【0030】
このような層が配管内にN層形成されていると仮定すると、V(total)と、V(PTFE)およびV(He)との間には、例えば下記の式(1)に示すような関係が成り立つ。
【数1】
【0031】
ここで、伝熱ガスの一例として、ヘリウムガスを仮定する。それぞれの層において、本体51の厚さd(PTFE)を3mm、流路52の厚さd(He)を1mm、配管50の全体の厚さd(total)を40mmと仮定すると、層の数Nは、10となる。ヘリウムガスの比誘電率εr(He)は、約1.0であり、PTFEの比誘電率εr(PTFE)は、約2.1である。そのため、配管50の全体において、本体51の静電容量C(PTFE)と流路52の静電容量C(He)との比は、例えば下記の式(2)のように表される。
【数2】
【0032】
電位差は静電容量に逆比例するので、本体51に発生する電位差V(PTFE)と流路52に発生する電位差V(He)との比は、例えば下記の式(3)のように表される。
【数3】
【0033】
従って、本体部111とプラズマ処理チャンバ10の底部10bとの間の電位差V(total)を5000Vと仮定すると、各層の流路52に発生する電位差V(He)は、例えば下記の式(4)のように算出される。
【数4】
【0034】
従って、空間53が設けられていない比較例の配管では、各層において、流路52内を流れるヘリウムガスに、約206Vの電位差が発生することになる。
【0035】
一方、本実施形態における配管50では、例えば図5に示されるようなモデルを考えることができる。図5は、本実施形態における配管50のモデルの一例を示す模式図である。図5においても、PTFEにより形成された配管50のモデルが例示されている。図5においても、本体部111とプラズマ処理チャンバ10の底部10bとの間の電位差をV(total)と定義し、本体部111とプラズマ処理チャンバ10の底部10bとの間の距離、即ち配管の厚さをd(total)と定義する。また、プラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111に向う方向(図5におけるY方向)では、本体51に螺旋状に形成された流路52は、略同様の構造の複数の層とみなすことができる。
【0036】
また、本実施形態では、図5のY方向において、流路52の間に空間53が配置されている。従って、各層には、本体51の層と、流路52の層と、空間53の層が含まれている。各層において、本体51に発生する電位差をV(PTFE)、流路52に発生する電位差をV(He)、空間53に発生する電位差をV(VAC)と定義する。また、各層において、本体51の厚さをd(PTFE)、流路52の厚さをd(He)、空間53の厚さをd(VAC)と定義する。
【0037】
このような層が配管内にN層形成されていると仮定すると、V(total)と、V(PTFE)、V(He)、およびV(VAC)との間には、例えば下記の式(5)に示すような関係が成り立つ。
【数5】
【0038】
ここで、それぞれの層において、本体51の厚さd(PTFE)を2mm、流路52の厚さd(He)を1mm、空間53の厚さd(VAC)を1mm、配管50の全体の厚さd(total)を40mmと仮定すると、層の数Nは10となる。空気の比誘電率は、約1.0であるため、大気圧よりも低い圧力に制御された空気を含む空間53の比誘電率εr(VAC)は、約1.0である。そのため、配管50の全体において、本体51の静電容量C(PTFE)と流路52の静電容量C(He)と空間53の静電容量C(VAC)との比は、例えば下記の式(6)のように表される。
【数6】
【0039】
電位差は静電容量に逆比例するので、本体51に発生する電位差V(PTFE)と流路52に発生する電位差V(He)と空間53に発生する電位差V(VAC)との比は、例えば下記の式(7)のように表される。
【数7】
【0040】
従って、本体部111とプラズマ処理チャンバ10の底部10bとの間の電位差V(total)を5000Vと仮定すると、各層の流路52に発生する電位差V(He)は、例えば下記の式(8)のように算出される。
【数8】
【0041】
従って、本実施形態における配管50では、各層において、流路52内を流れるヘリウムガスに、約172Vの電位差が発生することになる。前述の比較例に比べると、各層において、流路52内を流れるヘリウムガスに発生する電位差が大幅に低減されている。これにより、本実施形態の配管50では、比較例の配管に比べて、流路52内における放電を大幅に抑制することができる。
【0042】
[空間53内の圧力]
図6は、パッシェンの法則と呼ばれる気圧および電極間距離と放電電圧との関係の一例を示す図である。本実施形態において、空間53内は空気で満たされており、空間53内は圧力調整弁15aおよび排気システム40によって大気圧よりも低い予め定められた圧力に制御されている。空気の約8割は窒素ガスであるため、空間53内の空気は、ほぼ窒素ガスとみなすことができる。
【0043】
また、本体部111とプラズマ処理チャンバ10の底部10bとの間の電位差V(total)は5000V前後であるため、放電電圧が104V以上であれば、空間53内での放電を抑えることができる。図6を参照すると、窒素ガスにおいて、気圧と電極間距離の積が0.5以下であれば、放電電圧が104V以上となる。本実施形態において、電極間距離は流路52の厚さd(He)に対応する。そのため、空間53の厚さd(VAC)を1mmと仮定すると、空気の圧力が5Torr以下であれば、放電電圧が104V以上となり、空間53内での放電を抑えることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、空間53内のガスは空気であるが、開示の技術はこれに限られず、空間53内のガスは空気以外のガスであってもよい。空気以外のガスとしては、例えば、ヘリウムガス、ネオン(Ne)ガス、およびアルゴン(Ar)ガス等の希ガス、窒素(N2)ガス、または水素(H2)ガス等であってもよい。図6を参照すると、空間53内のガスがヘリウムガスである場合、ヘリウムガスの圧力が6Torr以下であれば、放電電圧が104V以上となり、空間53内での放電を抑えることができる。また、空間53内のガスがネオンガスである場合、ネオンガスの圧力が4Torr以下であれば、放電電圧が104V以上となり、空間53内での放電を抑えることができる。空間53内のガスがアルゴンガスである場合、アルゴンガスの圧力が2Torr以下であれば、放電電圧が104V以上となり、空間53内での放電を抑えることができる。空間53内のガスが窒素ガスである場合、窒素ガスの圧力が5Torr以下であれば、放電電圧が104V以上となり、空間53内での放電を抑えることができる。空間53内のガスが水素ガスである場合、水素ガスの圧力が8Torr以下であれば、放電電圧が104V以上となり、空間53内での放電を抑えることができる。
【0045】
また、図6を参照すると、窒素ガスにおいて、気圧と電極間距離の積が200Torr・cm以上であっても、放電電圧が104V以上となる。そのため、空間53の厚さd(VAC)を1mmと仮定すると、空気の圧力が2000Torr以上であれば、放電電圧が104V以上となる。従って、空間53内の圧力が2000Torr以上となるように、空間53内に空気を供給するようにしても、空間53内での放電を抑えることができる。
【0046】
また、図6を参照すると、空間53内のガスがヘリウムガスである場合、ヘリウムガスの圧力が104Torr以上であれば、放電電圧が104V以上となり、空間53内での放電を抑えることができる。また、空間53内のガスがネオンガスである場合、ネオンガスの圧力が7000Torr以上であれば、放電電圧が104V以上となり、空間53内での放電を抑えることができる。空間53内のガスがアルゴンガスである場合、アルゴンガスの圧力が5000Torr以上であれば、放電電圧が104V以上となり、空間53内での放電を抑えることができる。空間53内のガスが窒素ガスである場合、窒素ガスの圧力が2000Torr以上であれば、放電電圧が104V以上となり、空間53内での放電を抑えることができる。空間53内のガスが水素ガスである場合、水素ガスの圧力が5000Torr以上であれば、放電電圧が104V以上となり、空間53内での放電を抑えることができる。
【0047】
なお、流路52内では、40~100Torrの圧力で伝熱ガス(例えばヘリウムガス)が流通する。流路52の厚さd(He)を1mmと仮定すると、ヘリウムガスの圧力が40Torrの場合、気圧と電極間距離との積が40Torr×0.1cm=4となる。図6を参照すると、ヘリウムガスにおいて気圧と電極間距離との積が4の場合の放電電圧は約190Vである。本実施形態における配管50では、前述の式(8)により、流路52内を流れるヘリウムガスに発生する電位差は約172Vであり、放電電圧である190Vよりも低い。そのため、流路52内では放電が発生しにくい。また、流路52内では、40Torr以上の圧力でヘリウムガスが流通するため、流路52内を流れるヘリウムガスの放電電圧はさらに高くなり、さらに放電しにくくなる。例えば、ヘリウムガスの圧力が100Torrの場合、気圧と電極間距離との積が100Torr×0.1cm=10となり、図6を参照すると、放電電圧は約300Vとなる。これにより、流路52内を流れるヘリウムガスの放電はさらに抑制される。
【0048】
[プラズマ処理方法]
図7は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理方法の一例を示すフローチャートである。図7に例示された各ステップは、制御部2がプラズマ処理装置1の各部を制御することにより実現される。
【0049】
まず、図示しない搬送装置によって、基板Wがプラズマ処理チャンバ10内に搬入され、本体部111の静電チャック上に載せられる(S10)。ステップS10は、工程a)の一例である。そして、静電チャックに発生した静電気力により、基板Wが静電チャック上に吸着保持される(S11)。そして、プラズマ処理チャンバ10内のガスが排気システム40によって排気され、圧力調整弁16aによってプラズマ処理チャンバ10内が予め定められた圧力に調整される。
【0050】
次に、基板Wと静電チャックとの間に伝熱ガスが供給される(S12)。ステップS12は、工程b)の一例である。伝熱ガスは、図示しないガス供給源から配管14を介して配管50に供給される。配管50に供給された伝熱ガスは、配管50内の流路52を流れ、本体部111内の流路111cを介して基板Wと静電チャックとの間に供給される。そして、本体部111内の温調モジュールにより、基板Wの温度調整が開始される(S13)。
【0051】
次に、圧力調整弁15aが開かれ、配管50の空間53内の空気の排気が開始される(S14)。ステップS14は、工程c)の一例である。そして、配管15に設けられた圧力センサ15bにより、配管50の空間53内の圧力Pが測定され、空間53内の圧力Pが予め定められた圧力P0以下になったか否かが判定される(S15)。本実施形態において、予め定められた圧力P0は、例えば5Torrである。
【0052】
空間53内の圧力Pが予め定められた圧力P0以下になった場合(S15:Yes)、基板Wに対するプラズマ処理が実行される(S16)。ステップS16は、工程d)の一例である。ステップS16では、ガス供給部20からプラズマ処理チャンバ10内に処理ガスが供給され、電源30からプラズマ処理チャンバ10内にRF電力が供給される。これにより、プラズマ処理チャンバ10内にプラズマが生成され、プラズマに含まれるイオンや活性種等により、基板Wにエッチング等の処理が施される。そして、基板Wがプラズマ処理チャンバ10内から搬出され、本フローチャートに示されたプラズマ処理方法が終了する。
【0053】
空間53内の圧力Pが予め定められた圧力P0より高い場合(S15:No)、ステップS14が実行されてから予め定められた時間が経過したか否かが判定される(S17)。予め定められた時間とは、例えば数秒である。ステップS14が実行されてから予め定められた時間が経過していない場合(S17:No)、再びステップS16に示された処理が実行される。
【0054】
一方、ステップS14が実行されてから予め定められた時間が経過した場合(S17:Yes)、プラズマ処理システム100のユーザや管理者等にエラーを通知する(S18)。そして、プラズマ処理を実行することなく、本フローチャートに示されたプラズマ処理方法が終了する。
【0055】
以上、一実施形態について説明した。上記したように、本実施形態におけるプラズマ処理装置1であって、プラズマ処理チャンバ10と、プラズマ生成部12と、本体部111と、プラズマ処理チャンバ10の底部10bと、配管50とを備える。プラズマ処理チャンバ10は、基板Wを収容する。プラズマ生成部12は、プラズマ処理チャンバ10内に電磁波を供給することによりプラズマ処理チャンバ10内にプラズマを生成させ、プラズマにより基板Wを処理する。本体部111は、プラズマ処理チャンバ10内に配置されている。プラズマ処理チャンバ10の底部10bは、本体部111との間で予め定められた電位差を有する。配管50は、誘電体で形成されており、本体部111とプラズマ処理チャンバ10の底部10bとの間に配置され、ガスをプラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111へ流通させる。配管50には、ガスが流通する流路52が屈曲状または湾曲状に形成されている。プラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111に向う方向において、配管50を構成する部材を挟んで流路52に隣接する位置には、配管50を構成する部材よりも比誘電率が低い空間53が配置されている。これにより、プラズマ処理チャンバ10内にガスを供給する配管50内の放電を抑制することができる。
【0056】
また、上記した実施形態において、配管50の空間53内は、空気で満たされており、5Torr以下の圧力に制御される。これにより、配管50内の放電を抑制することができる。
【0057】
また、上記した実施形態において、プラズマ処理チャンバ10内のガスを排気する排気システム40を備え、排気システム40は、配管50の空間53内の空気も排気する。これにより、プラズマ処理システム100の小型化が可能となる。
【0058】
また、上記した実施形態において、配管50の空間53内は、空気で満たされており、空間53内の圧力は2000Torr以上となるように制御されてもよい。このようにしても、配管50内の放電を抑制することができる。
【0059】
また、上記した実施形態において、配管50の流路52は、プラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111に向う方向における配管50の中心軸を中心として螺旋状に形成されている。これにより、配管50を小型化することができる。
【0060】
また、本実施形態におけるプラズマ処理方法は、工程a)、工程b)、工程c)、および工程d)を含む。工程a)では、プラズマ処理チャンバ10内に基板Wが搬入される。工程b)では、配管50を介して、ガスがプラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111へ流される。配管50は、誘電体で形成されており、内部にガスが流通する流路52が屈曲状または湾曲状に形成されており、プラズマ処理チャンバ10内に配置される本体部111と本体部111との間で予め定められた電位差を有するプラズマ処理チャンバ10の底部10bとの間に配置されている。工程c)では、プラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111に向う方向において、配管50を構成する部材を挟んで流路52に隣接する配管50内の位置に配置されている空間53内の空気が排気される。工程d)では、空間53内の圧力が5Torr以下になった後に、プラズマ処理チャンバ10内に電磁波が供給されることによりプラズマ処理チャンバ10内にプラズマが生成され、プラズマにより基板Wが処理される。これにより、プラズマ処理チャンバ10内にガスを供給する配管50内の放電を抑制することができる。
【0061】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0062】
例えば、上記した実施形態では、空間53内が空気で満たされ、空間53内の圧力が大気圧よりも低い予め定められた圧力に制御される。しかし、空間53内が、配管50の本体51よりも比誘電率が低い状態になっていれば、空間53内に配置される物質は、空気やガスに限られず、固体や液体であってもよい。
【0063】
また、上記した実施形態において、配管50には、流路52が螺旋状に形成されるが、流路52の形状は、屈曲状または湾曲状であれば、螺旋状以外の形状に形成されてもよい。他の形態として、配管50には、例えば図8に示されるような形状の流路52bが形成されてもよい。図8の例では、プラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111に向う方向(図8におけるY方向)において、配管50内に流路52bが屈曲状に形成されている。図8の例においても、空間53bは、プラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111に向う方向(図8におけるY方向)において、配管50の本体51を挟んで流路52bに隣接する位置に形成されている。従って、図8のような構造の配管50においても、プラズマ処理チャンバ10内にガスを供給する配管50内の放電を抑制することができる。
【0064】
また、他の形態として、配管50には、例えば図9に示されるような形状の流路52cが形成されてもよい。図9の例では、プラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111に向う方向(図9におけるY方向)において、配管50内に流路52cが屈曲状に形成されている。図9の例においても、空間53cは、プラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111に向う方向(図9におけるY方向)において、配管50の本体51を挟んで流路52cに隣接する位置に形成されている。従って、図9のような構造の配管50においても、プラズマ処理チャンバ10内にガスを供給する配管50内の放電を抑制することができる。
【0065】
また、他の形態として、配管50には、例えば図10に示されるような形状の流路52dが形成されてもよい。図10の例では、プラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111に向う方向(図10におけるY方向)において、配管50内に流路52dが屈曲状に形成されている。図10の例においても、空間53dは、プラズマ処理チャンバ10の底部10bから本体部111に向う方向(図10におけるY方向)において、配管50の本体51を挟んで流路52dに隣接する位置に形成されている。従って、図10のような構造の配管50においても、プラズマ処理チャンバ10内にガスを供給する配管50内の放電を抑制することができる。なお、図8図10に例示されたそれぞれの流路は折れ曲がっているが、屈曲箇所の流路は滑らかに湾曲していてもよい。
【0066】
また、上記した実施形態では、プラズマ処理装置1に用いられるプラズマ源の一例として、容量結合型プラズマを説明したが、プラズマ源はこれに限られない。容量結合型プラズマ以外のプラズマ源としては、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)、マイクロ波励起表面波プラズマ(SWP)、電子サイクロトン共鳴プラズマ(ECP)、およびヘリコン波励起プラズマ(HWP)等が挙げられる。マイクロ波励起表面波プラズマ(SWP)に用いられるマイクロ波は、電磁波の一例である。
【0067】
また、上記した実施形態では、本体部111を第1の導電部材の一例として説明し、プラズマ処理チャンバ10の底部10bを第2の導電部材の一例として説明したが、開示の技術はこれに限られない。プラズマ処理装置1に設けられる導電部材であって、電位差を有する2つの導電部材であれば、本体部111やプラズマ処理チャンバ10の底部10b以外の部材に対しても開示の技術を適用することができる。例えば、シャワーヘッド13を第1の導電部材とし、シャワーヘッド13を覆う筐体を第2の導電部材として、開示の技術を適用することも可能である。
【0068】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
W 基板
100 プラズマ処理システム
1 プラズマ処理装置
2 制御部
2a コンピュータ
2a1 処理部
2a2 記憶部
2a3 通信インターフェース
10 プラズマ処理チャンバ
10a 側壁
10b 底部
10e ガス排出口
10s プラズマ処理空間
11 基板支持部
111 本体部
111a 基板支持面
111b リング支持面
111c 流路
112 リングアセンブリ
12 プラズマ生成部
13 シャワーヘッド
13a ガス供給口
13b ガス拡散室
13c ガス導入口
14 配管
15 配管
15a 圧力調整弁
15b 圧力センサ
16 配管
16a 圧力調整弁
20 ガス供給部
21 ガスソース
22 流量制御器
30 電源
31 RF電源
31a 第1のRF生成部
31b 第2のRF生成部
32 DC電源
32a 第1のDC生成部
32b 第2のDC生成部
40 排気システム
50 配管
51 本体
51a 部分
52 流路
52a 部分
53 空間
53a 部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10