(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】メタクリル系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/10 20060101AFI20240927BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20240927BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20240927BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20240927BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L33/10
C08L51/04
C08L53/00
C08F265/06
B29C48/08
(21)【出願番号】P 2021567666
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048691
(87)【国際公開番号】W WO2021132557
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2019238949
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊川 侑亮
(72)【発明者】
【氏名】小寺 純平
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-062409(JP,A)
【文献】国際公開第2021/015226(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/074550(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/262338(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/10
C08L 51/06
C08L 53/00
C08F 265/06
B29C 48/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル系樹脂(A)がマトリックスを形成し、ゴム状弾性体(B)が分散しているメタクリル系樹脂組成物において、メタクリル系樹脂(A)とゴム状弾性体(B)の合計を100質量%とするときに、以下の特徴を有するメタクリル系樹脂組成物。
(1)ゴム状弾性体(B)が多層構造重合体粒子(b1)、多層構造重合体粒子(b2)およびブロック共重合体(c)を含む。
(2)多層構造重合体粒子(b1)が、少なくとも1つのゴム成分層(コア部)(b1-1)を有すると共に、最外部(シェル部)に硬質樹脂成分層(b1-2)を有し、シェル部に最も近いゴム成分層の数平均粒子径が0.05μm以上0.16μm未満の範囲であり、樹脂組成物中の多層構造重合体粒子(b1)含有量が7.5質量%を超えて42.5質量%以下である。
(3)多層構造重合体粒子(b2)が、少なくとも1つのゴム成分層(コア部)(b2-1)を有すると共に、最外部(シェル部)に硬質樹脂成分層(b2-2)を有し、シェル部に最も近いゴム成分層の数平均粒子径が0.16μm以上0.3μm以下の範囲であり、樹脂組成物中の多層構造重合体粒子(b2)含有量が0.1質量%以上7.5質量%以下である。
(4)メタクリル系樹脂組成物のアセトン不溶分が20質量%を超えて45質量%以下である。
(5)ブロック共重合体(c)が、メタクリル系重合体ブロック(c1)とアクリル系重合体ブロック(c2)とを含有する。
(6)メタクリル系樹脂組成物中のブロック共重合体(c)が0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲である。
(7)前記多層構造重合体粒子(b1)が、アクリル酸エステル単量体単位50~98.99質量%、他の単官能性単量体単位1~44.99質量%、および多官能性単量体0.01~10質量%からなる共重合体からなる少なくとも1つのゴム成分層(b1-1)を最内層と最外層の間に有すると共に、最内層と最外層が、メタクリル酸エステル単量体単位40~100質量%および他の単量体単位60~0質量%からなる少なくとも1つの硬質樹脂成分層(b1-2)である。
(8)前記多層構造重合体粒子(b2)が、アクリル酸エステル単量体単位50~98.99質量%、他の単官能性単量体単位1~44.99質量%、および多官能性単量体0.01~10質量%からなる共重合体からなる少なくとも1つのゴム成分層(b2-1)を最内層と最外層の間に有すると共に、最内層と最外層が、メタクリル酸エステル単量体単位40~100質量%および他の単量体単位60~0質量%からなる少なくとも1つの硬質樹脂成分層(b2-2)である。
(9)多層構造重合体粒子(b1)と多層構造重合体粒子(b2)とブロック共重合体(c)の合計量が25~45質量%である。
【請求項2】
ブロック共重合体(c)が、少なくとも一つのメタクリル系重合体ブロック(c1)および少なくとも一つのアクリル系重合体ブロック(c2)から成り、ブロック共重合体(c)中にメタクリル系重合体ブロック(c1)を30~60質量%、アクリル系重合体ブロック(c2)を70~40質量%有することを特徴とする請求項
1に記載のメタクリル系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のメタクリル系樹脂組成物を含む成形品。
【請求項4】
フィルムである請求項
3に記載の成形品。
【請求項5】
請求項1
又は2に記載のメタクリル系樹脂組成物を溶融押出または溶液流延することを特徴とするフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタクリル系樹脂組成物に関する。より詳細に、本発明は、透明性、表面硬度、成形性および成形後の外観に優れるメタクリル系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル系樹脂成形体は、透明性等の光学特性および耐候性に優れ、その成形体は美麗な外観を有していることなどから、自動車内外装や建材用等の加飾用途で使用されてきた。印刷層等の加飾層の保護、及び高級感、深み感等の意匠性の付与を目的に、耐候性に優れ、透明性、表面硬度及び表面平滑性も良好であるメタクリル系樹脂フィルムが従来より表面保護フィルムとして使用されている。近年では三次元形状に成形した部材への適用も増えている。三次元成形時の問題として、成形時の応力白化、表面ヘイズの上昇、割れ等があり、表面保護層には上記特性に加えて、耐応力白化、表面平滑性、可撓性、耐屈曲性が必要とされる。
【0003】
成形時の白化性に優れた樹脂成形体として、粒子径が0.1μm以下の架橋ゴム重合体粒子を用いる方法(特許文献1)やゴム粒子としてブロック共重合体を用いる方法(特許文献2)が提示されている。しかしながら、小粒径の架橋重合体粒子やブロック共重合体だけでは高い表面硬度を保ったまま成形時の割れを抑制することは困難であった。
【0004】
表面硬度、耐応力白化性、耐割れ性に優れたフィルムとして、0.2~0.4μmの大粒子径の架橋弾性体粒子と0.02~0.15μmの小粒子径の架橋弾性体粒子の2種類の粒径が異なる弾性体粒子を用いる方法が開示されている(特許文献3)。しかしながら、0.2μm以上の大粒子径の弾性体粒子を少量でも添加すると表面平滑性が損なわれ、樹脂成形体のヘイズが悪化することが知られており、成形時の白化等の外観異常を抑制したまま透明性を保持する表面硬度、成形性に優れた性能には至っていない。また、0.18μm以下の小粒子径の多層構造重合体粒子及びブロック共重合体を併用する方法が開示されている(特許文献4)。しかしながらブロック共重合体を多量に添加していることから表面硬度が損なわれ、フィルム同士のブロッキングが生じるという課題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-316557号公報
【文献】WO2016/157908
【文献】特開2000-290397号公報
【文献】WО2013-051239
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、透明性、表面硬度、滑り性、成形性および成形後の外観に優れる、加飾用途に好適な、メタクリル系樹脂組成物及び成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために検討した結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
〔1〕
メタクリル系樹脂(A)がマトリックスを形成し、ゴム状弾性体(B)が分散しているメタクリル系樹脂組成物において、メタクリル系樹脂(A)とゴム状弾性体(B)の合計を100質量%とするとき、以下の特徴を有するメタクリル系樹脂組成物。
(1)ゴム状弾性体(B)が多層構造重合体粒子(b1)、多層構造重合体粒子(b2)およびブロック共重合体(c)を含む。
(2)多層構造重合体粒子(b1)が、少なくとも1つのゴム成分層(コア部)(b1-1)を有すると共に、最外部(シェル部)に硬質樹脂成分層(b1-2)を有し、シェル部に最も近いゴム成分層の数平均粒子径が0.05μm以上0.16μm未満の範囲であり、樹脂組成物中の多層構造重合体粒子(b1)含有量が7.5質量%を超えて42.5質量%以下である。
(3)多層構造重合体粒子(b2)が、少なくとも1つのゴム成分層(コア部)(b2-1)を有すると共に、最外部(シェル部)に硬質樹脂成分層(b2-2)を有し、シェル部に最も近いゴム成分層の数平均粒子径が0.16μm以上0.3μm以下の範囲であり、樹脂組成物中の多層構造重合体粒子(b2)含有量が0.1質量%以上7.5質量%以下である。
(4)メタクリル系樹脂組成物のアセトン不溶分が20質量%を超えて45質量%以下である。
(5)ブロック共重合体(c)が、メタクリル系重合体ブロック(c1)とアクリル系重合体ブロック(c2)とを含有する。
(6)メタクリル系樹脂組成物中のブロック共重合体(c)が0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲である。
〔2〕
前記多層構造重合体粒子(b1)が、アクリル酸エステル単量体単位50~98.99質量%、他の単官能性単量体単位1~44.99質量%、および多官能性単量体0.01~10質量%からなる共重合体からなる少なくとも1つのゴム成分層(b1-1)を最内層と最外層の間に有すると共に、最内層と最外層が、メタクリル酸エステル単量体単位40~100質量%および他の単量体単位60~0質量%からなる少なくとも1つの硬質樹脂成分層(b1-2)であることを特徴とする、〔1〕に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔3〕
前記多層構造重合体粒子(b2)が、アクリル酸エステル単量体単位50~98.99質量%、他の単官能性単量体単位1~44.99質量%、および多官能性単量体0.01~10質量%からなる共重合体からなる少なくとも1つのゴム成分層(b2-1)を最内層と最外層の間に有すると共に、最内層と最外層が、メタクリル酸エステル単量体単位40~100質量%および他の単量体単位60~0質量%からなる少なくとも1つの硬質樹脂成分層(b2-2)であることを特徴とする、〔1〕に記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔4〕
ブロック共重合体(c)が、少なくとも一つのメタクリル系重合体ブロック(c1)および少なくとも一つのアクリル系重合体ブロック(c2)から成り、ブロック共重合体(c)中にメタクリル系重合体ブロック(c1)を30~60質量%、アクリル系重合体ブロック(c2)を70~40質量%有することを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のメタクリル系樹脂組成物。
〔5〕
〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のメタクリル系樹脂組成物を含む成形品。
〔6〕
フィルムである〔5〕に記載の成形品。
〔7〕
〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のメタクリル系樹脂組成物を溶融押出または溶液流延することを特徴とするフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のメタクリル系樹脂組成物を含む成形品、好ましくはメタクリル系溶融押出成形体は、透明性、表面平滑性、耐屈曲白化性、表面硬度、耐割れ性、滑り性に優れ、加飾用途、建材用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「メタクリル系樹脂組成物」
メタクリル系樹脂(A)がマトリックスを形成し、ゴム状弾性体(B)が分散しているメタクリル系樹脂組成物において、メタクリル系樹脂(A)とゴム状弾性体(B)の合計を100質量%とするときに、以下の特徴を有するメタクリル系樹脂組成物、である
(1)ゴム状弾性体(B)が多層構造重合体粒子(b1)、多層構造重合体粒子(b2)およびブロック共重合体(c)を含む。
(2)多層構造重合体粒子(b1)が、少なくとも1つのゴム成分層(コア部)(b1-1)を有すると共に、最外部(シェル部)に硬質樹脂成分層(b1-2)を有し、シェル部に最も近いゴム成分層の数平均粒子径が0.05μm以上0.16μm未満の範囲であり、樹脂組成物中の多層構造重合体粒子(b1)含有量が7.5質量%を超えて42.5質量%以下である。
(3)多層構造重合体粒子(b2)が、少なくとも1つのゴム成分層(コア部)(b2-1)を有すると共に、最外部(シェル部)に硬質樹脂成分層(b2-2)を有し、シェル部に最も近いゴム成分層の数平均粒子径が0.16μm以上0.3μm以下の範囲であり、樹脂組成物中の多層構造重合体粒子(b2)含有量が0.1質量%以上7.5質量%以下である。
(4)メタクリル系樹脂組成物のアセトン不溶分が20質量%を超えて45質量%以下である。
(5)ブロック共重合体(c)が、メタクリル系重合体ブロック(c1)とアクリル系重合体ブロック(c2)とを含有する。
(6)メタクリル系樹脂組成物中のブロック共重合体(c)が0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲である。
【0010】
多層構造重合体粒子(b1)は、コア部とシェル部を有するコアシェル構造の粒子である。コア部は最も外側(或いはシェル部に最も近い位置)にゴム成分層(b1-1)を有し、シェル部は最外部に硬質樹脂成分層(b1-2)を有する。コア部=1つのゴム成分層(b1-1)であってもよく、コア部=少なくとも1つのゴム成分層(b1-1)+少なくとも1つの硬質樹脂成分層(b1-2)であってもよい。シェル部は1種又は2種以上の硬質樹脂成分層(b1-2)を含む。シェル部はゴム成分層(b1-1)を含まない。例えば、シェル部が2つの硬質樹脂成分層(b1-2)からなる場合、最外部の硬質樹脂成分層(b1-2)と、コア部のゴム成分層(b1-1)に接する硬質樹脂成分層(b1-2)からなることになる。シェル部が1つの硬質樹脂成分層(b1-2)からなる場合、最外部の硬質樹脂成分層(b1-2)が、コア部のゴム成分層(b1-1)に接することになる。
【0011】
多層構造重合体粒子(b2)は、コア部とシェル部を有するコアシェル構造の粒子である。コア部は最も外側(或いはシェル部に最も近い位置)にゴム成分層(b2-1)を有し、シェル部は最外部に硬質樹脂成分層(b2-2)を有する。コア部=1つのゴム成分層(b2-1)であってもよく、コア部=少なくとも1つのゴム成分層(b2-1)+少なくとも1つの硬質樹脂成分層(b2-2)であってもよい。シェル部は1種又は2種以上の硬質樹脂成分層(b2-2)を含む。シェル部はゴム成分層(b1-1)を含まない。例えば、シェル部が2つの硬質樹脂成分層(b2-2)からなる場合、最外部の硬質樹脂成分層(b2-2)と、コア部のゴム成分層(b2-1)に接する硬質樹脂成分層(b2-2)からなることになる。シェル部が1つの硬質樹脂成分層(b2-2)からなる場合、最外部の硬質樹脂成分層(b2-2)が、コア部のゴム成分層(b2-1)に接することになる。
【0012】
本発明のメタクリル系樹脂組成物のアセトン不溶分は20質量%を超えて45質量%以下であり、好ましくは27質量%を超えて44質量%以下、より好ましくは30質量%を超えて43質量%以下である。メタクリル系樹脂成形体は細かく裁断したものをアセトン不溶分の測定に使用することが好ましい。
【0013】
アセトン不溶分は、メタクリル系樹脂組成物1gに対しアセトンを25mLを使用し、常温にて24時間撹拌し、遠心分離して沈殿物をアセトン不溶分として分離し、乾燥後に質量を測定し下記式に従い求めることができる。
【0014】
【0015】
(メタクリル系樹脂(A))
本発明に用いるメタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の割合が、80質量%以上、好ましくは90質量%以上である。またメタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸メチル以外の単量体に由来する構造単位の割合が、20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
【0016】
かかるメタクリル酸メチル以外の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n-へキシル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル;アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n-へキシル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル;メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-エトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルネニル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン:などが挙げられる。
【0017】
メタクリル系樹脂(A)の立体規則性は、特に制限されず、例えば、イソタクチック、ヘテロタクチック、シンジオタクチックなどの立体規則性を有するものを用いてもよい。
【0018】
メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(以下、Mw(A)と称する)は、好ましくは50,000以上500,000以下、より好ましくは80,000以上200,000以下である。Mw(A)が小さ過ぎると、得られるメタクリル系樹脂組成物から得られる成形体の耐衝撃性や靭性が低下する傾向がある。Mw(A)が大き過ぎるとメタクリル系樹脂組成物の流動性が低下し成形加工性が低下する傾向がある。
【0019】
メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量Mw(A)と数平均分子量Mn(A)の比、Mw(A)/Mn(A)(以下、重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)を「分子量分布」と称することがある。)は、好ましくは1.03以上2.6以下、より好ましくは1.05以上2.3以下、特に好ましくは1.2以上2.0以下である。分子量分布が小さ過ぎるとメタクリル系樹脂組成物の成形加工性が低下する傾向がある。分子量分布が大き過ぎるとメタクリル系樹脂組成物から得られる成形体の耐衝撃性が低下し、脆くなる傾向がある。
【0020】
なお、Mw(A)およびMn(A)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算値である。
【0021】
また、メタクリル系樹脂の分子量や分子量分布は、重合開始剤および連鎖移動剤の種類や量などを調整することによって制御できる。
【0022】
メタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸メチルを80質量%以上含む単量体又は単量体混合物を重合することによって得られる。
【0023】
本発明は、メタクリル系樹脂(A)として市販品を用いてもよい。かかる市販されているメタクリル系樹脂としては、例えば「パラペットH1000B」(MFR:22g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットGF」(MFR:15g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットEH」(MFR:1.3g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRL」(MFR:2.0g/10分(230℃、37.3N))および「パラペットG」(MFR:8.0g/10分(230℃、37.3N))[いずれも商品名、株式会社クラレ製]などが挙げられる。
(アクリル系多層構造重合体粒子(b1))
多層構造重合体粒子(b1)は、内部に少なくとも1つのゴム成分層(b1―1)(以下、単に「(b1-1)」と略記する場合がある。)を有し、かつ少なくとも1つの硬質樹脂成分層(b1―2)(以下、単に「(b1-2)」と略記する場合がある。)を有するコア-シェル構造の粒子である。なお、多層構造重合体粒子(b1)のコアは「層」とみなす。多層構造重合体粒子(b1)の層数は2層以上であればよく、3層または4層あるいはそれ以上でもよい。層構造としては、中心から、(b1―1)-(b1―2)の2層構造;(b1―1)-(b1―1)-(b1―2)、(b1―1)-(b1―2)-(b1―2)、または(b1―2)-(b1―1)-(b1―2)の3層構造;(b1-1)-(b1―2)-(b1―1)-(b1―2)等の4層構造等が挙げられる。中でも、取扱い性の観点から、(b1―2)-(b1―1)-(b1―2)の3層構造が好ましい。本明細書では、コア部を最内層と記載することがあり、シェル部を最外部もしくは最外層と記載することがあり、最内層と最外層に挟まれる層(好ましくはゴム成分層)を中間層と記載することがある。
【0024】
ゴム成分層(b1-1)の総量と硬質樹脂成分層(b1-2)の総量との質量比((b1-1)/(b1-2))は、30/70~90/10である。(b1-1)の割合が上記範囲未満では、本発明の樹脂組成物の成形体は衝撃強度が不充分となる恐れがある。(b1-1)の割合が上記範囲超では、粒子構造の形成が困難となり、また溶融流動性が低下して他の成分との混練および本発明の樹脂組成物の成形が困難となる恐れがある。質量比((b1-1)/(b1-2))は、好ましくは30/70~80/20、より好ましくは40/60~70/30である。本発明の樹脂組成物が2以上のゴム成分層(b1-1)を有する場合にはその合計量で質量比を計算し、本発明の樹脂組成物が2以上の硬質樹脂成分層(b1-2)を有する場合にはその合計量で質量比を計算する。
【0025】
ゴム成分層(b1-1)は、アクリル酸エステル単量体単位50~98.99質量%、他の単官能性単量体単位44.99~1質量%、および多官能性単量体単位0.01~10質量%を含む共重合体を含むことが好ましい。アクリル酸エステル単量体単位の含有量はより好ましくは55~89.9質量%、単官能性単量体単位の含有量はより好ましくは44.9~10質量%、多官能性単量体単位の含有量はより好ましくは0.1~5質量%である。
【0026】
アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、50質量%未満では、多層構造重合体粒子(b1)のゴム弾性が不充分となって本発明の樹脂組成物の成形体の衝撃強度が不充分となる恐れがあり、98.99質量%超では、粒子構造の形成が困難となる恐れがある。他の単官能性単量体単位の含有量は、1質量%未満では、多層構造重合体粒子の光学性能が不充分となる恐れがあり、44.99質量%超では、多層構造重合体粒子(b1)の耐候性が不充分となる恐れがある。多官能性単量体単位の含有量は、10質量%超では、多層構造重合体粒子(b1)のゴム弾性が不充分となって本発明のメタクリル系樹脂組成物の成形体の衝撃強度が不充分となる恐れがあり、0.01質量%未満では、粒子構造の形成が困難となる恐れがある。
【0027】
以下、ゴム成分層(b1-1)の原料単量体について、説明する。
【0028】
アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート(BA)、イソブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、およびオクタデシルアクリレート等のアクリル酸と飽和脂肪族アルコール(好ましくはC1~C18の飽和脂肪族アルコール)とのエステル;シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸とC5またはC6の脂環式アルコールとのエステル;フェニルアクリレート等のアクリル酸とフェノール類とのエステル;ベンジルアクリレート等のアクリル酸と芳香族アルコールとのエステル等が挙げられる。アクリル酸エステルは、1種または2種以上用いることができる。
【0029】
他の単官能性単量体としては、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、およびベヘニルメタクリレート等のメタクリル酸と飽和脂肪族アルコール(好ましくはC1~C22の飽和脂肪族アルコール)とのエステル;シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸とC5またはC6の脂環式アルコールとのエステル;フェニルメタクリレート等のメタクリル酸とフェノール類とのエステル、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸と芳香族アルコールとのエステル等のメタクリル酸エステル;スチレン(St)、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、およびハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体等が挙げられる。中でも、スチレンが好ましい。他の単官能性単量体は、1種または2種以上用いることができる。
【0030】
多官能性単量体は、分子内に炭素-炭素二重結合を2個以上有する単量体である。多官能性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、および桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸と、アリルアルコールおよびメタリルアルコール等の不飽和アルコールとのエステル;前記の不飽和モノカルボン酸と、エチレングリコール、ブタンジオール、およびヘキサンジオール等のグリコールとのジエステル;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、およびマレイン酸等のジカルボン酸と、前記の不飽和アルコールとのジエステル等が挙げられる。具体的には、アリルアクリレート、メタリルアクリレート、アリルメタクリレート(ALMA)、メタリルメタクリレート、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、およびヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、アリルメタクリレート(ALMA)が好ましい。多官能性単量体は、1種または2種以上用いることができる。
【0031】
層(b1-2)は、メタクリル酸エステル単量体単位40~100質量%および他の単量体単位60~0質量%からなる共重合体を含むことが好ましい。メタクリル酸エステル単量体単位の含有量はより好ましくは50~99質量%、さらに好ましくは60~99質量%、特に好ましくは80~99質量%、他の単量体単位の含有量はより好ましくは50~1質量%、さらに好ましくは40~1質量%、さらに好ましくは20~1質量%である。メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が40質量%未満では、多層構造重合体粒子(b1)の耐候性が不充分となる恐れがある。
【0032】
以下、硬質樹脂成分層(b1-2)の原料単量体について、説明する。
【0033】
メタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、およびベンジルメタクリレート等が挙げられる。中でも、メチルメタクリレート(MMA)が好ましい。
【0034】
他の単量体としては、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート(BA)、イソブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、およびオクタデシルアクリレート等のアクリル酸と飽和脂肪族アルコール(好ましくはC1~C18の飽和脂肪族アルコール)とのエステル;シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸とC5またはC6の脂環式アルコールとのエステル;スチレン(St)、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、およびハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-(p-ブロモフェニル)マレイミド、およびN-(クロロフェニル)マレイミド等のマレイミド系単量体;層(b1-1)で例示した多官能性単量体等が挙げられる。中でも、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート、およびn-ブチルアクリレート(BA)等のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0035】
多層構造重合体粒子(b1)においては、最外部を構成する層(b1-2)の構成共重合体のGPC法で測定される重量平均分子量(Mw)が20,000~100,000の範囲であることが好ましく、30,000~90,000の範囲であることがより好ましく、40,000~80,000の範囲であることが特に好ましい。Mwが20,000未満では、多層構造重合体粒子(b1)のゴム弾性が不充分となって本発明の樹脂組成物の成形体の成形が困難となる恐れがある。Mwが100,000超では、成形体の衝撃強度が低下する恐れがある。
【0036】
最外部に最も近い(好ましくは最外層と接している)多層構造重合体粒子(b1)ゴム成分層(b1-1)の数平均粒子径は、0.05μm以上0.16μm未満の範囲である。数平均粒子径が0.05μm未満では、多層構造重合体粒子(b1)への応力集中が不充分となり、成形体の衝撃強度が低下する恐れがある。数平均粒子径が0.16μm以上では、多層構造重合体粒子(b1)部において応力によりボイドが発生し、白化する。また樹脂組成物中のゴム含量が一定の場合、粒子径をある程度以上に大きくすると粒子数が減少することから、粒子同士の表面間距離は大きくなる傾向があり、連続相内においてクラックが発生する確率が高くなり、成形体の衝撃強度が低下する恐れがある。ここでいうボイドとは粒子の内部のみで生じる破壊のことであって、エネルギーの吸収量は非常に小さいので、耐衝撃性の発現にはあまり寄与しない。
【0037】
多層構造重合体粒子(b1)に対する応力集中の観点から、多層構造重合体粒子(b1)ゴム成分層の数平均粒子径は好ましくは0.05μm以上0.16μm未満、より好ましくは0.07~0.12μmである。
【0038】
なお、多層構造重合体粒子(b1)のゴム成分層(b1-1)の平均粒子径は、樹脂組成物を電子顕微鏡により測定する方法、またはラテックスを光散乱法により測定する方法により求めることができる。電子顕微鏡による方法は、本発明の樹脂組成物をリンタングステン酸や四酸化ルテニウムで電子染色したときに透過型電子顕微鏡にて観察される染色された多層構造重合体粒子(b1)のゴム成分層(b1-1)中で、最外部を構成するものの長軸直径と短軸直径との平均値である。光散乱法による方法では、多層構造重合体粒子重合時、ゴム成分層まで重合したラテックスをサンプリングし、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950V2を用いて体積平均粒子径を測定することができる。
【0039】
本発明の好ましい1つの実施形態において本発明に関わる多層構造重合体粒子(b1)の製造方法は、上記のようなゴム成分層(b1-1)/硬質樹脂成分層(b1-2)を有する多層構造重合体粒子(b1)を得ることができる方法であれば、特に制限されない。本発明に関わる3層構成(コア-中間層-最外層)の多層構造重合体粒子(b1)の好ましい製造方法は、センターコアを構成する重合体を得るための単量体を乳化重合してシード粒子(b1-i)を得、シード粒子(b1-i)の存在下に中間層を構成する重合体を得るための単量体をシード乳化重合してシード粒子(b1-ii)を得、シード粒子(b1-ii)の存在下に最外層を構成する重合体を得るための単量体をシード乳化重合してシード粒子(b1-iii)を得る工程を含むものである。2層構成あるいは4層もしくはそれ以上の層構成の多層構造重合体(b1)は、3層構成の多層構造重合体(b1)の上記の製造方法の記載を参照して当業者であれば容易に製造することができる。乳化重合法若しくはシード乳化重合法は、一般的な多層構造重合体粒子を得るための手法として当該技術分野においてよく知られた技術であるので詳しい説明は他の文献を参照することができる。上記の好ましい例示の場合、シード粒子(b1-i)が硬質樹脂成分層(b1-2、コア)からなる単層構成の粒子であり、シード粒子(b1-ii)が硬質樹脂成分層(b1-2、コア)+ゴム成分層(b1-1、中間層)の2層構成の粒子であり、シード粒子(b1-iii)が硬質樹脂成分層(b1-2、コア)+ゴム成分層(b1-1、中間層)+硬質樹脂成分層(b1-2、最外層)の3層構成の粒子である。
【0040】
重合反応工程においては、少なくとも最外部を構成する硬質樹脂成分層(b1-2)の構成共重合体のMwが20,000~100,000となるように、重合条件を調整する。重合条件の調整は、アルキルメルカプタン等の分子量調節剤の量で主に調整する。最終的に得られる多層構造重合体粒子(b1)における最外部の硬質樹脂成分層(b1-2)までの体積平均粒子径が0.05μm以上0.16μm未満の範囲となるように、全重合反応工程に用いる乳化剤の種類や量などの重合条件を調整する。
【0041】
なお、多層構造重合体粒子(b1)における最外部の硬質樹脂成分層(b1-2)までの体積平均粒子径は、多層構造重合体粒子重合時、重合したラテックスをサンプリングし、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950V2を用いて光散乱法によって測定することができる。
【0042】
(多層構造重合体粒子(b2))
多層構造重合体粒子(b2)は、内部に少なくとも1つのゴム成分層(b2-1)(以下、単に「(b2-1)」と略記する場合がある。)を有し、かつ少なくとも1つの硬質樹脂成分層(b2-2)(以下、単に「(b2-2)」と略記する場合がある。)を有するコア-シェル構造の粒子である。なお、多層構造重合体粒子(b2)のコアは「層」とみなす。多層構造重合体粒子(b2)の層数は2層以上であればよく、3層または4層あるいはそれ以上でもよい。層構造としては、中心から、(b2-1)-(b2―2)の2層構造;(b2-1)-(b2-1)-(b2-2)、(b2-1)-(b2-2)-(b2-2)、または(b2-2)-(b2-1)-(b2-2)の3層構造;(b2-1)-(b2-2)-(b2-1)-(b2-2)等の4層構造等が挙げられる。中でも、取扱い性の観点から、(b2-2)-(b2-1)-(b2-2)の3層構造が好ましい。本明細書では、コア部を最内層と記載することがあり、シェル部を最外部もしくは最外層と記載することがあり、最内層と最外層に挟まれる層(好ましくはゴム成分層)を中間層と記載することがある。
【0043】
ゴム成分層(b2-1)の総量と硬質樹脂成分層(b2-2)の総量との質量比((b2-1)/(b2-2))は、30/70~90/10である。(b2-1)の割合が上記範囲未満では、本発明の樹脂組成物の成形品は衝撃強度が不充分となる恐れがある。(b2-1)の割合が上記範囲超では、粒子構造の形成が困難となり、また溶融流動性が低下して他の成分との混練および本発明の樹脂組成物の成形が困難となる恐れがある。質量比((b2-1)/(b2-2))は、好ましくは30/70~80/20、より好ましくは40/60~70/30である。本発明の樹脂組成物が2以上のゴム成分層(b2-1)を有する場合にはその合計量で質量比を計算し、本発明の硬質樹脂組成物が2以上の硬質樹脂成分層(b2-2)を有する場合にはその合計量で質量比を計算する。
【0044】
(b2-1)は、アクリル酸エステル単量体単位50~98.99質量%、他の単官能性単量体単位44.99~10質量%、および多官能性単量体単位0.01~10質量%を含む共重合体を含むことが好ましい。アクリル酸エステル単量体単位の含有量はより好ましくは55~89.9質量%、単官能性単量体単位の含有量はより好ましくは44.9~10質量%、多官能性単量体単位の含有量はより好ましくは0.1~5質量%である。
【0045】
アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、50質量%未満では、多層構造重合体粒子(b2)のゴム弾性が不充分となって本発明の樹脂組成物の成形品の衝撃強度が不充分となる恐れがあり、98.99質量%超では、粒子構造の形成が困難となる恐れがある。他の単官能性単量体単位の含有量は、10質量%未満では、多層構造重合体粒子の光学性能が不充分となる恐れがあり、44.99質量%超では、多層構造重合体粒子(b2)の耐候性が不充分となる恐れがある。多官能性単量体単位の含有量は、10質量%超では、多層構造重合体粒子(b2)のゴム弾性が不充分となって本発明のメタクリル系樹脂組成物の成形品の衝撃強度が不充分となる恐れがあり、0.01質量%未満では、粒子構造の形成が困難となる恐れがある。
【0046】
ゴム成分層(b2-1)の原料単量体は、ゴム成分層(b1-1)に記載のものを使用できる。
【0047】
層(b2-2)は、メタクリル酸エステル単量体単位50~100質量%および他の単量体単位50~0質量%からなる共重合体を含むことが好ましい。メタクリル酸エステル単量体単位の含有量はより好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは80~99質量%、他の単量体単位の含有量はより好ましくは40~1質量%、さらに好ましくは20~1質量%である。メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が50質量%未満では、多層構造重合体粒子(b2)の耐候性が不充分となる恐れがある。
【0048】
硬質樹脂成分層(b2-2)の原料単量体は、硬質樹脂成分層(b1-2)に記載のものを使用できる。
【0049】
多層構造重合体粒子(b2)においては、最外部を構成する層(b2-2)の構成共重合体のGPC法で測定される重量平均分子量(Mw)が20,000~100,000の範囲であることが好ましく、30,000~90,000の範囲であることがより好ましく、40,000~80,000の範囲であることが特に好ましい。Mwが20,000未満では、多層構造重合体粒子(b2)のゴム弾性が不充分となって本発明の樹脂組成物の成形品の成形が困難となる恐れがある。Mwが100,000超では、成形品の衝撃強度が低下する恐れがある。
【0050】
最外部に最も近い(好ましくは最外層と接している)多層構造重合体粒子(b2)ゴム成分層の数平均粒子径は、0.16μm以上0.3μm以下の範囲であり、多層構造重合体粒子(b1)ゴム成分層の数平均粒子径よりも大きい。このため多層構造重合体粒子(b2)は、樹脂成形品の表面粗さを増加させてブロッキングを阻害する。多層構造重合体粒子(b2)の数平均粒子径が0.16μm未満では表面粗さの増加が不充分であり、樹脂成形品のブロッキングが生じやすくなる。数平均粒子径が0.3μm超では表面粗さが増加しすぎるため、成形後の外観不良を招く。
【0051】
ブロッキング防止、滑り性付与の観点から多層構造重合体粒子(b2)ゴム成分層の、数平均粒子径は、好ましくは0.195~0.25μm、より好ましくは0.20~0.23μmである。
【0052】
なお、多層構造重合体粒子(b2)のゴム成分層(b2-1)の平均粒子径は、ゴム成分層(b1-1)の平均粒子径と同様にして測定することができる。
【0053】
本発明の好ましい1つの実施形態において本発明に関わる多層構造重合体粒子(b2)の製造方法は、多層構造重合体粒子(b1)の製造方法と同様である。
【0054】
重合反応工程においては、少なくとも最外部を構成する硬質樹脂成分層(b2-2)の構成共重合体のMwが20,000~100,000となるように、重合条件を調整する。重合条件の調整は、アルキルメルカプタン等の分子量調節剤の量で主に調整する。最終的に得られる多層構造重合体粒子(b2)における最外部の硬質樹脂成分層(b2-2)までの体積平均粒子径が0.2~0.35μmの範囲となるように、全重合反応工程に用いる乳化剤の種類や量などの重合条件を調整する。
【0055】
なお、多層構造重合体粒子(b2)における最外部の硬質樹脂成分層(b2-2)までの体積平均粒子径は、多層構造重合体粒子重合時、重合したラテックスをサンプリングし、堀場製作所社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950V2を用いて光散乱法によって測定することができる。
【0056】
(ブロック共重合体(c))
本発明に用いるブロック共重合体(c)は、メタクリル系重合体ブロック(c1)とアクリル系重合体ブロック(c2)とを有する。ブロック共重合体(c)は、メタクリル系重合体ブロック(c1)を1つのみ有していても、複数有していてもよい。また、ブロック共重合体(c)は、アクリル系重合体ブロック(c2)を1つのみ有していても、複数有していてもよい。かかるブロック共重合体(c)は、メタクリル系樹脂(A)、多層構造重合体粒子(b1)及び多層構造重合体粒子(b2)との相溶性が良好である。
【0057】
上記相溶性の観点から、ブロック共重合体(c)としては、主としてメタクリル酸エステル単量体単位を有する重合体ブロック(c1)10~80質量%と、主としてアクリル酸エステル単量体単位を有する重合体ブロック(c2)90~20質量%とを含む(但し、重合体ブロック(c1)と重合体ブロック(c2)との合計量を100質量%とする。)ブロック共重合体が好ましい。ブロック共重合体(c)において、重合体ブロック(c1)の含有量はより好ましくは20~70質量%であり、さらに好ましくは30~60質量%であり、重合体ブロック(c2)の含有量はより好ましくは80~30質量%であり、さらに好ましくは70~40質量%である。
【0058】
一分子中の重合体ブロック(c1)の数は、単数でも複数でもよい。一分子中の重合体ブロック(c1)の数が複数であるとき、複数の重合体ブロック(c1)の構造単位の組成および分子量は同一でも非同一でもよい。同様に、一分子中の重合体ブロック(c2)の数は、単数でも複数でもよい。一分子中の重合体ブロック(c2)の数が複数であるとき、複数の重合体ブロック(c2)の構造単位の組成および分子量は同一でも非同一でもよい。
【0059】
重合体ブロック(c1)は、主としてメタクリル酸エステル単量体単位を含む。重合体ブロック(c1)中のメタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは98質量%以上であり、メタクリル酸エステル単量体単位のみから構成されてもよい。
【0060】
以下、メタクリル系重合体ブロック(c1)の原料単量体について、説明する。
【0061】
メタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、およびアリルメタクリレート(ALMA)等が挙げられる。中でも、本発明のメタクリル系樹脂組成物の透明性および耐熱性の向上の観点から、メチルメタクリレート(MMA)が好ましい。メタクリル酸エステルは、1種または2種以上用いることができる。
【0062】
メタクリル系重合体ブロック(c1)の重量平均分子量(Mw(c1))は、下限が好ましくは5,000、より好ましくは8,000、さらに好ましくは12,000、特に好ましくは15,000、最も好ましくは20,000であり、上限が好ましくは150,000、より好ましくは120,000、特に好ましくは100,000である。ブロック共重合体(c)が複数の重合体ブロック(c1)を有する場合、重量平均分子量(Mw(c1))は、複数の重合体ブロック(c1)のMwの合計量である。
【0063】
本発明の好ましい1つの実施形態において、ブロック共重合体(c)のメタクリル系重合体ブロック(c1)の重量平均分子量Mw(c1)とメタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量Mw(A)が、下記の式(Y)を満足する。
【0064】
【0065】
メタクリル樹脂(A)の重量平均分子量Mw(A)のMw(c1)に対する比、すなわちMw(A)/Mw(c1)は、0.5以上2.5以下、好ましくは0.6以上2.3以下、より好ましくは0.7以上2.2以下である。Mw(A)/Mw(c1)が上記の範囲を外れた場合は、ブロック共重合体(C)のメタクリル樹脂(A)中での分散粒子径が大きくなり、応力がかかった際に白化する。Mw(A)/Mw(c1)が上記範囲にある場合は、ブロック共重合体(C)のメタクリル樹脂(A)中での分散粒子径が小さくなるので、耐応力白化性に優れる。
【0066】
ブロック共重合体(c)中のメタクリル系重合体ブロック(c1)の含有量は、本発明のメタクリル系樹脂組成物の成形体の透明性、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性、成形性、および表面平滑性の観点から、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~70質量%である。ブロック共重合体(c)が複数の重合体ブロック(c1)を有する場合、重合体ブロック(c1)の含有量は、複数の重合体ブロック(c1)の合計含有量である。
【0067】
本発明の1つの好ましい実施形態において、アクリル系重合体ブロック(c2)は、主としてアクリル酸エステル単量体単位を含む。アクリル系重合体ブロック(c2)中のアクリル酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0068】
以下、アクリル系重合体ブロック(c2)の原料単量体について、説明する。
【0069】
アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート(BA)、イソブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ペンタデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、およびアリルアクリレート等が挙げられる。アクリル酸エステルは、1種または2種以上用いることができる。
【0070】
本発明の他の1つの好ましい実施形態において、本発明の樹脂組成物の透明性の観点から、アクリル系重合体ブロック(c2)としては、アクリル酸アルキルエステル単量体単位と(メタ)アクリル酸芳香族炭化水素エステル単量体単位とを含むアクリル系重合体ブロック(c2-p)が好ましい。ここで、アクリル系重合体ブロック(c2)中のアクリル酸アルキルエステル単量体単位の含有量は好ましくは50~90質量%、より好ましくは60~80質量%であり、(メタ)アクリル酸芳香族炭化水素エステル単量体単位の含有量は好ましくは50~10質量%、より好ましくは40~20質量%である。(メタ)アクリル酸芳香族炭化水素エステルとしては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、フェノキシエチルアクリレートが挙げられる。
【0071】
本発明の好ましい1つの実施形態において、アクリル系重合体ブロック(c2)の重量平均分子量Mw(c2)が、下記の式(Z)、より好ましくは下記式(Z1)を満足する。
【0072】
5,000≦Mw(c2)≦120,000 (Z)
40,000≦Mw(c2)≦120,000 (Z1)
アクリル系重合体ブロック(c2)の重量平均分子量Mw(c2)は、下限が好ましくは5,000、より好ましくは15,000、さらに好ましくは20,000、特に好ましくは30,000、最も好ましくは40,000であり、上限が好ましくは120,000、より好ましくは110,000、特に好ましくは100,000である。なお、Mw(c2)が過小では、本発明のメタクリル系樹脂組成物の成形体の耐衝撃性が低下する恐れがある。一方、Mw(c2)が過大では、本発明の樹脂組成物の成形体の表面平滑性が低下する恐れがある。ブロック共重合体(c)が複数のアクリル系重合体ブロック(c2)を有する場合、重量平均分子量Mw(c2)は、複数のアクリル系重合体ブロック(c2)のMwの合計量である。
【0073】
ブロック共重合体(c)中のアクリル系重合体ブロック(c2)の含有量は、本発明のメタクリル系樹脂組成物の成形体の透明性、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性、成形性、および表面平滑性の観点から、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~80質量%である。ブロック共重合体(c)が複数のアクリル系重合体ブロック(c2)を有する場合、重合体ブロック(c2)の含有量は、複数のアクリル系重合体ブロック(c2)の合計含有量である。
【0074】
ブロック共重合体(c)におけるメタクリル系重合体ブロック(c1)とアクリル系重合体ブロック(c2)との結合形態は、特に限定されない。中でも(c1)-(c2)構造のジブロック共重合体、(c1)-(c2)-(c1)構造のトリブロック共重合体が好ましい。
【0075】
ブロック共重合体(c)は必要に応じて、分子鎖中および/または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、およびアミノ基等の官能基を有していてもよい。
【0076】
ブロック共重合体(c)は、重量平均分子量(Mw(c))が32,000~300,000、好ましくは40,000~250,000、より好ましくは45,000~230,000、特に好ましくは50,000~200,000である。Mw(c)が上記範囲内にあることで、成形体中のブツの発生原因となる樹脂組成物製造における原料の溶融混練時の未溶融物の量を極めて少量とすることができる。
【0077】
ブロック共重合体(c)は、重量平均分子量(Mw(c))と数平均分子量(Mn(c))との比(Mw(c)/Mn(c))が好ましくは1.0~2.0、より好ましくは1.0~1.6である。Mw(c)/Mn(c)が上記範囲内にあることで、成形体中のブツの発生原因となる樹脂組成物製造における原料の溶融混練時の未溶融物の量を極めて少量とすることができる。
【0078】
ブロック共重合体(c)の屈折率は特に制限されず、好ましくは1.485~1.495、より好ましくは1.487~1.493である。屈折率が上記範囲内であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物の透明性が高くなる。なお、本明細書で「屈折率」とは、波長587.6nm(D線)で測定した値を意味する。
【0079】
ブロック共重合体(c)の製造方法は特に限定されず、各重合体ブロックをリビング重合する方法が一般的である。リビング重合法としては、ブロック共重合体(c)が高純度で得られ、各ブロックの組成および分子量の制御が容易であり、経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が特に好ましい。
【0080】
本発明に関わるアクリル系多層構造重合体粒子(b1)及びアクリル系多層構造重合体(b2)をメタクリル系樹脂(A)かつブロック共重合体(c)との混合工程に添加し混練することにより、透明性、表面平滑性、耐屈曲白化性、表面硬度、屈曲性、滑り性に優れるメタクリル系溶融押出成形体の製造用のメタクリル系樹脂組成物を得ることができる。
【0081】
メタクリル系樹脂(A)と多層構造重合体粒子(b1)及び多層構造重合体粒子(b2)とブロック共重合体(c)の混合順序は、いずれを選択してもよい。
【0082】
混練方法としては、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、プラベンダープラストグラフ等のバッチ式混練機、単軸、二軸、多軸スクリュー押出機等の連続式混練機を用いて混練するなど公知の方法によって行うことができる。また、一旦前記方法で高濃度のマスターペレットを作製後、希釈したものを溶融混練する方法でもよい。生産性の観点から、単軸スクリュー方式または二軸スクリュー方式であることが好ましい。特に、単軸スクリュー式押出機は、樹脂組成物に与えるせん断エネルギーが小さいため好ましい。
【0083】
本発明のメタクリル系樹脂組成物において、多層構造重合体粒子(b1)と多層構造重合体粒子(b2)とブロック共重合体(c)の合計量(ゴム状弾性体(B)の合計量)は15~55質量%であり、好ましくは20~50質量%であり、より好ましくは25~45質量%である。多層構造重合体粒子(b1)と多層構造重合体粒子(b2)とブロック共重合体(c)との合計量が15質量%未満では衝撃強度が悪化し、55質量%超では剛性が悪化する。
【0084】
この内、多層構造重合体粒子(b2)の含有量は、メタクリル系樹脂組成物に対し0.1~7.5質量%であり、より好ましくは0.5~7.0質量%である。0.1質量%未満だと滑り性が発現せず、7.5質量%超となると多層構造重合体粒子(b2)周辺への応力集中で生じるクラック数が多くなり、応力白化を引き起こす。
【0085】
また、ブロック共重合体(c)の含有量は、メタクリル系樹脂組成物に対し0.1質量%以上5質量%未満であり、より好ましくは0.5~4.5質量%である。0.1質量%未満だと耐屈曲性が発現せず、5質量%以上となるとブロック共重合体(c)の分散粒子径が大きくなり、ヘイズの上昇及び折り曲げ白化を引き起こす。
【0086】
本発明のメタクリル系樹脂組成物において、多層構造重合体粒子(b1)のゴム成分層(b1-1)と多層構造重合体粒子(b2)のゴム成分層(b2-1)とアクリル系重合体ブロック(c2)の合計のゴム含有量に対するアクリル系重合体ブロック(c2)含有量比率が1~25質量%の範囲であり、3~23質量%の範囲であることが好ましく、5~20質量%の範囲であることがより好ましい。該ゴム含有量に対するアクリル系重合体ブロック(c2)含有量比率が1~25質量%の範囲にあることで、多層構造重合体粒子とブロック共重合体との相乗効果が働き、耐衝撃性が優れる。
【0087】
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、メタクリル系樹脂(A)、多層構造重合体粒子(b1)、多層構造重合体粒子(b2)、ブロック共重合体(c)以外に、必要に応じて他の重合体を含有していてもよい。他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、およびポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、およびMBS樹脂等のスチレン系樹脂;メタクリル酸メチル-スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等のエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、およびポリアミドエラストマー等のアミド系樹脂;ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、およびフェノキシ系樹脂等の他の熱可塑性樹脂;フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、およびエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリウレタン;変性ポリフェニレンエーテル;シリコーン変性樹脂;アクリルゴム、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、およびSIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、およびEPDM等のオレフィン系ゴム等が挙げられる。他の重合体は、1種または2種以上用いることができる。
【0088】
本発明のメタクリル系樹脂組成物及び成形品は、必要に応じて各種添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染料・顔料、つや消し剤、膠着防止剤、耐衝撃性改質剤、および蛍光体等が挙げられる。これら添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定でき、メタクリル系樹脂組成物100質量部に対して、例えば、酸化防止剤の含有量は0.01~1質量部、紫外線吸収剤の含有量は0.01~3質量部、光安定剤の含有量は0.01~3質量部、滑剤の含有量は0.01~3質量部、染料・顔料の含有量は0.01~3質量部、膠着防止剤は0.001~1質量部とすることが好ましい。他の添加剤も0.01~3質量部の範囲で添加することができる。
【0089】
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、およびアミン系酸化防止剤等が挙げられる。中でも、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤の単独使用またはリン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。リン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、リン系酸化防止剤/フェノール系酸化防止剤を質量比で0.2/1~2/1で使用するのが好ましく、0.5/1~1/1で使用するのがより好ましい。
【0090】
リン系酸化防止剤としては、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト(株式会社ADEKA製「アデカスタブHP-10」)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン株式会社製「IRGAFOS168」)、および3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(株式会社ADEKA社製「アデカスタブPEP-36」)等が好ましい。
【0091】
フェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン株式会社製「IRGANOX1010」)、およびオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製「IRGANOX1076」)等が好ましい。
【0092】
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等が好ましい。
【0093】
アミン系酸化防止剤としては、オクチル化ジフェニルアミン等が好ましい。
【0094】
熱劣化防止剤としては、実質上無酸素の条件下で高温にさらされたときに生じるポリマーラジカルを補足することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。熱劣化防止剤としては、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学株式会社製「スミライザーGM」)、および2,4-ジ-t-アミル-6-(3’,5’-ジ-t-アミル-2’-ヒドロキシ-α-メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学株式会社製「スミライザーGS」)等が好ましい。
【0095】
紫外線吸収剤は、紫外線吸収能力を有し、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、およびホルムアミジン類等が挙げられる。中でも、ベンゾトリアゾール類およびトリアジン類が好ましい。紫外線吸収剤は、1種または2種以上用いることができる。
【0096】
ベンゾトリアゾール類は紫外線被照による着色等の光学特性低下を抑制する効果が高いので、本発明のメタクリル系樹脂組成物を光学用途に適用する場合に好適である。ベンゾトリアゾール類としては、4-メチル-2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール(城北化学工業株式会社製「商品名JF-77」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASFジャパン株式会社製「商品名TINUVIN329」)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASFジャパン株式会社製「商品名TINUVIN234」)、および2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-オクチルフェノール](株式会社ADEKA製「アデカスタブLA-31」)等が好ましい。
【0097】
また、波長380nm付近の波長を効率的に吸収したい場合は、トリアジン類の紫外線吸収剤が好ましく用いられる。このような紫外線吸収剤としては、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(株式会社ADEKA社製「アデカスタブLA-F70」)、およびその類縁体であるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製「TINUVIN477」および「TINUVIN460」)等が挙げられる。
【0098】
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好適な光安定剤としては、2,2,6,6一テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物等のヒンダードアミン類が挙げられる。例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(株式会社ADEKA社製「アデカスタブLA-77Y」)等が挙げられる。
【0099】
滑剤は、樹脂と金属表面との滑りを調整し、凝着または粘着を防ぐことで離型性および加工性等を改善する効果があると言われる化合物である。例えば、高級アルコール、炭化水素、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪族アミド、および脂肪酸エステル等が挙げられる。中でも、本発明のメタクリル系樹脂組成物との融和性の観点から、炭素原子数12~18の脂肪族1価アルコールおよび脂肪族アミドが好ましく、脂肪族アミドがより好ましい。脂肪族アミドは飽和脂肪族アミドと不飽和脂肪族アミドとに分類され、粘着防止によるスリップ効果が期待されるため不飽和脂肪族アミドがより好ましい。不飽和脂肪族アミドとしては、N,N’-エチレンビスオレイン酸アミド(日本化成株式会社製「スリパックスO」)、およびN,N’-ジオレイルアジピン酸アミド(日本化成株式会社製「スリパックスZOA」)等が挙げられる。
【0100】
離型剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどが挙げられる。本発明においては、離型剤として、高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用することが好ましい。高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用する場合、その割合は特に制限されないが、高級アルコール類の使用量:グリセリン脂肪酸モノエステルの使用量は、質量比で、2.5:1~3.5:1が好ましく、2.8:1~3.2:1がより好ましい。
【0101】
高分子加工助剤は、メタクリル系樹脂組成物を成形する際、厚さ精度および薄膜化に効果を発揮する化合物である。高分子加工助剤は、通常、乳化重合法によって製造することができる、0.05~0.5μmの粒子径を有する重合体粒子である。
【0102】
帯電防止剤としては、ヘプチルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、ノニルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、ジヘプチルスルホン酸ナトリウム、ヘプチルスルホン酸カリウム、オクチルスルホン酸カリウム、ノニルスルホン酸カリウム、デシルスルホン酸カリウム、ドデシルスルホン酸カリウム、セチルスルホン酸カリウム、オクタデシルスルホン酸カリウム、ジヘプチルスルホン酸カリウム、ヘプチルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ノニルスルホン酸リチウム、デシルスルホン酸リチウム、ドデシルスルホン酸リチウム、セチルスルホン酸リチウム、オクタデシルスルホン酸リチウム、ジヘプチルスルホン酸リチウム等のアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
【0103】
難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の水酸基または結晶水を有する金属水和物、ポリリン酸アミン、リン酸エステル等のリン酸化合物、シリコン化合物等が挙げられ、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル系難燃剤が好ましい。
【0104】
染料・顔料としては、パラレッド、ファイヤーレッド、ピラゾロンレッド、チオインジゴレッド、ペリレンレッドなどの赤色有機顔料、シアニンブルー、インダンスレンブルーなどの青色有機顔料、シアニングリーン、ナフトールグリーンなどの緑色有機顔料が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0105】
つや消し剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。本発明の共重合体は、酸発生剤を含まないことが好ましい。
【0106】
膠着防止剤としては、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸金属塩;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックス等のワックス類;低分子量ポリエチレンや低分子量ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィン;アクリル系樹脂粉末;ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン;オクタデシルアミン、リン酸アルキル、脂肪酸エステル、エチレンビスステアリルアミド等のアミド系樹脂粉末、四フッ化エチレン樹脂等のフッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン粉末、シリコーン樹脂粉末、シリコーンゴム粉末、シリカ等が挙げられる。
【0107】
蛍光体としては、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などが挙げられる。
【0108】
本発明のメタクリル系樹脂組成物に他の重合体および/または添加剤を含有させる場合、メタクリル系樹脂(A)および/または多層構造重合体粒子(b1)および/または多層構造重合体粒子(b2)および/またはブロック共重合体(c)の重合時に添加してもよいし、メタクリル系樹脂(A)および/または多層構造重合体粒子(b1)および/または多層構造重合体粒子(b2)および/またはブロック共重合体(c)との混合時に添加してもよいし、メタクリル系樹脂(A)および/または多層構造重合体粒子(b1)および/または多層構造重合体粒子(b2)および/またはブロック共重合体(c)を混合した後に添加してもよい。
【0109】
本発明のメタクリル系樹脂組成物を含む成形体は、熱可塑性重合体に対して一般に用いられている成形加工方法や成形加工装置を用いて成形加工することができる。例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などの加熱溶融を経る成形加工法、溶液流延方法などにより成形体が製造できる。この内、溶融押出成形法が本発明のブロック共重合体(c)の分散相を制御する上で好ましい。
【0110】
本発明のメタクリル系樹脂組成物を含む成形体は、フィルムとしても有用であり、例えば、通常の溶融押出法であるインフレーション法やTダイ押出法、あるいはカレンダー法、更には溶液流延法等により良好に加工される。また、必要に応じて、フィルム両面をロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、特に、ガラス転移温度以上の温度に加熱したロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、表面性のより優れたフィルムを得ることも可能である。また、目的に応じて、フィルムの積層成形や二軸延伸によるフィルムの改質も可能である。この内、特にTダイ押出法が好ましい。フィルムの厚みは、好ましくは20~200μm、より好ましくは 30~100μmである。
【0111】
フィルムでは、本発明で規定する量のブロック共重合体(c)中のアクリル系重合体ブロック(c2)を特定の分散相に制御することで、屈曲による耐割れ性を改善できる。例えば長径の短い柱状相に分散させるには、Tダイ押出法においてダイスのリップ開度(Dr)と成形体の厚み(Dt)の比 Dr/Dtが1≦Dr/Dt≦20の範囲が好ましく、3≦Dr/Dt≦10の範囲がより好ましい。Dr/Dtが1未満だとブロック共重合体(c)が、分散粒子径が大きな球状相となり、応力がかかった際に白化する。一方、Dr/Dtが20を超えると、長径が大きな柱状相となり、応力がかかった際に白化し、異方性が大きくなる。
【0112】
Tダイを用いて製造される場合、ダイ吐出時にかかるせん断速度は200~650/sの範囲が好ましく、300~550/sの範囲がより好ましい。せん断速度が200/s未満となると、ブロック共重合体にかかるせん断が小さく、分散粒子径が大きくなり白化してしまう。一方で、せん断速度が650/sを超えると、ブロック共重合体に強くせん断がかかり、分散粒子径が1nm以下となり、成形体の屈曲性が発現しない。
【0113】
メタクリル系樹脂成形体、特にフィルムは、金属、プラスチックなどに積層して用いることができる。積層の方法としては、鋼板などの金属板に接着剤を塗布した後、金属板にフィルムを載せて乾燥させ貼り合わせるウエットラミネートや、ドライラミネート、エキストル-ジョンラミネート、ホットメルトラミネートなどが挙げられる。
【0114】
プラスチック部品にフィルムを積層する方法としては、フィルムを金型内に配置しておき、射出成形にて樹脂を充填するフィルムインサート成形、ラミネートインジェクションプレス成形や、フィルムを予備成形した後金型内に配置し、射出成形にて樹脂を充填するフィルムインモールド成形などが挙げられる。
【0115】
本発明のメタクリル系樹脂組成物を含む溶融押出フィルムは、さらに機能層又は熱可塑性樹脂フィルムを積層して積層フィルムとすることができる。
【0116】
本発明の成形体がメタクリル系溶融押出フィルムの場合、メタクリル系溶融押出フィルムと機能層を積層して積層フィルムとすることができる。機能層はフィルムの片面又は両面に形成することができる。機能層としては、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層などが挙げられ、これらの少なくとも1層を含むことができる。
【0117】
本発明のメタクリル系樹脂組成物を含むメタクリル系溶融押出フィルムが機能層とフィルムを積層した積層フィルムの場合、機能層の厚みは好ましくは0.1~20μm、より好ましくは1~10μmであり、積層フィルムの厚みは、好ましくは20~220μm、より好ましくは30~110μmである。
【0118】
本発明の成形体がメタクリル系溶融押出フィルムの場合、メタクリル系溶融押出フィルムと熱可塑性樹脂フィルムを積層して積層フィルムとすることができる。熱可塑性樹脂フィルムはメタクリル系溶融押出フィルムの片面又は両面に形成することができる。熱可塑性樹脂フィルムの熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、メタクリル樹脂、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の各種熱可塑性樹脂、およびこれらの熱可塑性樹脂を構成する単量体単位を複数種有する共重合体などが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムにおいて、熱可塑性樹脂は1種のみ含まれていても、2種以上含まれていてもよい。
【0119】
本発明のメタクリル系溶融押出フィルムと熱可塑性樹脂フィルムを含む積層フィルムの場合、熱可塑性樹脂フィルムの厚みは好ましくは20~200μm、より好ましくは30~100μmであり、メタクリル系溶融押出フィルムの厚みは、好ましくは5~100μm、より好ましくは10~15μmである。
【0120】
本発明のメタクリル系樹脂組成物を含むメタクリル系樹脂成形体は、各種用途の部材にすることができる。具体的な用途としては、例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板等の看板部品やマーキングフィルム;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリア等の照明部品;家具、ペンダント、ミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根等の建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、サンルーフ、グレージング、自動車内装部材、バンパーなどの自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機、携帯電話、パソコン等の電子機器部品;保育器、レントゲン部品等の医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓等の機器関係部品;液晶保護板、導光板、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板等の光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁等の交通関係部品;その他、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスク、太陽電池のバックシート、フレキシブル太陽電池用フロントシート;パソコン、携帯電話、家具、自動販売機、浴室部材などに用いる表面材料等が挙げられる。
【0121】
他方、本発明のメタクリル系樹脂成形体、特にフィルムのラミネート積層品としては、自動車内外装材、日用雑貨品、壁紙、塗装代替用途、家具や電気機器のハウジング、ファクシミリなどのOA機器のハウジング、床材、電気または電子装置の部品、浴室設備などに使用することができる。
【0122】
以上説明したように、本発明のメタクリル系樹脂成形体は、メタクリル系樹脂(A)と多層構造重合体粒子(b1)と多層構造重合体粒子(b2)とブロック共重合体(c)を含み、これらの組成を特定の範囲内とすることにより互いの分散状態を制御することで、透明性、表面平滑性、耐屈曲白化性、表面硬度、屈曲性に優れる、加飾用途、建材用途に好適である。
【実施例】
【0123】
次に本発明の効果を実施例および比較例を示して説明する。なお、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。また、以下の記載において、特に明記しない限り、「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
【0124】
本発明のメタクリル系樹脂組成物から成るメタクリル系樹脂成形体(フィルム)の評価は、以下の方法により行った。
〔ゴム成分層(b1-1)とゴム成分層(b2-1)の数平均粒子径〕
後述の実施例、および比較例より製膜されたフィルム(厚み75μm)を用いて、押出方向に平行な面の断面切片をウルトラミクロトーム(日本電子株式会社製 Leica EM UC7rt)により厚み50nmで作成した。作成した切片を10%リンタングステン酸水溶液により電子染色し、電子顕微鏡(日本電子株式会社製 本体:JSM-7600F、検出器:SM-74240RTED)を用いて染色部の形状(モルフォロジー)を観察した。観測された球状染色部に関してそれぞれ染色部30個の粒子径を測定し、ゴム成分層(b1)の数平均粒子径とした。
【0125】
〔アセトン不溶分〕
製膜したフィルム(厚み75μm)2g(分離前固形分質量)をアセトン50mLに入れ常温にて24時間撹拌した。得られた液全量を、遠心分離機(日立工機(株)製、CR20GIII)を用いて、回転数20000rpm、温度0℃、180分間の条件にて、遠心分離した。上澄み液と沈殿物を分け採り、それぞれを50℃にて8時間真空下で乾燥させて、アセトン可溶分およびアセトン不溶分を得た。得られた沈殿物の質量を測定し、下記式に基づきアセトン不溶分の割合を求めた。
【0126】
【0127】
〔ヘイズ(Haze)〕
樹脂フィルム(厚み75μm)を、50mm×50mmに切り出して試験片とし、JIS K7105に準拠して23℃にてヘイズを測定し、以下の基準で評価した。
◎:0.5%以下
〇:0.5%~1.0%
×:1.0%以上
【0128】
〔加熱前後のΔヘイズ〕
樹脂フィルム(厚み75μm)を100mm×100mmに切り出して試験片とし、140℃設定の卓上成形機で10秒間加熱した。加熱直後のサンプルについてヘイズを測定し、加熱前のヘイズ値との差をΔヘイズとして算出し、以下の基準で評価した。
〇:0.5%以下
△:0.5%超かつ1.0%未満
×:1.0%以上
【0129】
〔フィルムの表面硬度〕
樹脂フィルム(75μm)を10cm×10cmに切り出して試験片とし、JIS-K5600-5-4に準拠して鉛筆硬度を測定し、以下の基準で評価した。
〇:HB以上
×:B以下
【0130】
〔フィルムの耐割れ性〕
樹脂フィルム(75μm)を12cm×1.5cmに切り出して試験片とし、JIS-P-8115に準拠してMIT屈曲回数を測定し、以下の基準で評価した。
◎:>100
○:40~100
×:<40
【0131】
〔滑り性〕
実施例及び比較例で得た複層フィルムを50mm×50mmに切り出して試験片とした。係る試験片を2枚用意し、一方の試験片の熱可塑性樹脂層と、他方の試験片の易滑層とが接するように、係る2枚の試験片を手でこすり合わせ、その感触を以下の通り評価した。下記評価基準で○以上であれば実用に供することができる。
◎:引っ掛からず滑る。
○:僅かに引っ掛かるが滑る。
×:引っ掛かり、滑らない。
【0132】
(製造例1)多層構造重合体粒子(b1)
コンデンサ、温度計および撹拌機を有し且つグラスライニングが施された反応容器にイオン交換水100部を入れ、次いで界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウム(NIKKOL-ECT-3NEX))0.019部および炭酸ナトリウム0.10部を添加して溶解させた。反応容器内を窒素ガスで置換して実質的に酸素がない状態にした。その後、反応容器内を加熱して水溶液を80℃にした。
【0133】
前記水溶液に、過硫酸カリウム0.04部を加え、さらにメタクリル酸メチル32.6部、アクリル酸メチル2.1部およびメタクリル酸アリル0.07部からなる混合物cを50分間かけて間断なく添加した。混合物cの添加終了後40分間保持し、乳化重合を行ってラテックスcを得た。
【0134】
次いで、ラテックスcに、過硫酸カリウム0.05部を添加し、さらにアクリル酸ブチル36.6部、スチレン7.9部およびメタクリル酸アリル0.89部からなる混合物iを60分間かけて間断なく添加した。混合物iの添加終了後90分間保持し、シード乳化重合を行ってラテックスiを得た。
【0135】
次いで、このラテックスiに、過硫酸カリウム0.02部を添加し、さらにメタクリル酸メチル18.6部、アクリル酸メチル1.2部およびn-オクチルメルカプタン0.04部からなる混合物oを30分間かけて間断なく添加した。混合物oの添加終了後60分間保持し、シード乳化重合を行ってラテックスI-1を得た。撹拌機を備えた容器に、ラテックスI-1を入れ混合した後、硫酸マグネシウム水溶液を添加して、塩析凝固させた。凝固物を水洗し、脱水し、乾燥させて、多層構造重合体粒子(b1)を得た。多層構造重合体粒子(b1)の物性を表1に示す。
【0136】
(製造例2)多層構造重合体粒子(b2)
コンデンサ、温度計および撹拌機を有し且つグラスライニングが施された反応容器にイオン交換水100部を入れ、次いで界面活性剤(花王株式会社製「ペレックスSS-H」)0.019部および炭酸ナトリウム0.5部を添加して溶解させた。反応容器内を窒素ガスで置換して実質的に酸素がない状態にした。その後、反応容器内を加熱して水溶液を80℃にした。
【0137】
前記水溶液に、過硫酸カリウム0.02部を加え、さらにメタクリル酸メチル9.4部、アクリル酸メチル0.6部およびメタクリル酸アリル0.02部からなる混合物cを20分間かけて間断なく添加した。混合物cの添加終了後30分間保持し、乳化重合を行ってラテックスcを得た。
【0138】
次いで、ラテックスcに、過硫酸カリウム0.07部を添加し、さらにアクリル酸ブチル41.1部、スチレン8.9部およびメタクリル酸アリル2.0部からなる混合物iを80分間かけて間断なく添加した。混合物iの添加終了後60分間保持し、シード乳化重合を行ってラテックスiを得た。
【0139】
次いで、このラテックスiに、さらにメタクリル酸メチル37.6部、アクリル酸メチル2.4部およびn-オクチルメルカプタン0.12部からなる混合物oを60分間かけて間断なく添加した。混合物oの添加終了後60分間保持し、シード乳化重合を行ってラテックスI-2を得た。撹拌機を備えた容器に、ラテックスI-2を入れ混合した後、硫酸マグネシウム水溶液を添加して、塩析凝固させた。凝固物を水洗し、脱水し、乾燥させて、多層構造重合体粒子(b2)を得た。多層構造重合体粒子(b2)の物性を表1に示す。
【0140】
【0141】
(製造例3)メタクリル系樹脂(A1)
メタクリル系樹脂(A1):メチルメタクリレート(MMA)単位(含有量99.3質量%)およびメチルアクリレート(MA)単位(含有量0.7質量%)からなり、Mw=84,000、Mw/Mn=2.1であるメタクリル系共重合体を常法に従い製造した。
【0142】
(製造例4)メタクリル系樹脂(A2)
メタクリル系樹脂(A2):メチルメタクリレート(MMA)単位(含有量93.6質量%)およびメチルアクリレート(MA)単位(6.4質量%)からなり、Mw=120,000、Mw/Mn=2.1であるメタクリル系共重合体を常法に従い製造した。
【0143】
(製造例5)ブロック共重合体(C1)
ブロック共重合体(C1):[メチルメタクリレート(MMA)重合体ブロック(c1-1)]-[n-ブチルアクリレート(BA)重合体ブロック(c2)]-[メチルメタクリレート(MMA)重合体ブロック(c1-2)]からなり、重量平均分子量(Mw)が70,000であり、重合体ブロックの質量比(c1-1):(c2):(c1-2)が14.3:50.0:35.7、各単量体の合計質量比(MMA:BA)=(50:50)であるトリブロック共重合体を常法に従い製造した。
【0144】
(製造例6)ブロック共重合体(C2)
ブロック共重合体(C2):[メチルメタクリレート(MMA)重合体ブロック(c1-1)]-[n-ブチルアクリレート(BA)重合体ブロック(c2)]-[メチルメタクリレート(MMA)重合体ブロック(c1-2)]からなり、重量平均分子量(Mw)が65,000であり、重合体ブロックの合計質量比(c1-1):(c2):(c1-2)が15:70:15、各単量体の質量比(MMA:BA)=(30:70)であるトリブロック共重合体を常法に従い製造した。
【0145】
(製造例7)ブロック共重合体(C3)
ブロック共重合体(C3):[メチルメタクリレート(MMA)重合体ブロック(c1)]-[n-ブチルアクリレート(BA))共重合体ブロック(c2)]からなり、重量平均分子量(Mw)が120,000であり、重合体ブロックの質量比(c1):(c2)が50:50、各単量体の質量比(MMA:BA)=(50:50)、Mw(c1)=60,000、Mw(c2)=60,000であるジブロック共重合体を常法に従い製造した。
【0146】
(実施例1)
メタクリル系樹脂(A2)のペレット56.2部、多層構造重合体粒子(b1)のペレット42.3部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット0.5部、ブロック共重合体(C1)のペレット1部を二軸押出機を用いて混練し、ペレタイザ-を用いてペレット化して、メタクリル系樹脂組成物(R1)を得た。
【0147】
スクリュー径50mmの単軸ベント押出機と、幅500mmおよびリップ開度0.8mmのTダイとを用いて、吐出速度10kg/hおよび樹脂温度260℃にて、メタクリル系樹脂組成物(R1)を溶融押出して、フィルム状の溶融物を得、次いで該溶融物を85℃に温度調整された鏡面仕上げの金属弾性ロールと90℃に温度調整された鏡面仕上げの金属剛体ロールとからなる間隔50μmの第1ニップロールで線圧30kg/cmで挟圧し、次いで90℃に温度調整された鏡面仕上げの金属剛体ロールと85℃に温度調整された鏡面仕上げの金属剛体ロールとからなる間隔50μmの第2ニップロールで線圧30kg/cmで挟圧して、厚さ75μmの単層の樹脂フィルム(1)を得た。電子顕微鏡による多層構造重合体粒子のゴム成分層の数平均粒子径は、b1:0.09μmおよびb2:0.21μmであった。
【0148】
得られた樹脂フィルム(1)について、評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(1)は、耐割れ性、および滑り性にやや劣るものの透明性および表面硬度に優れていた。
【0149】
(実施例2)
メタクリル系樹脂(A2)の代わりにメタクリル系樹脂(A1)を56.2部使用し、多層構造重合体粒子(b)のペレット37.8部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット2部、ブロック共重合体(C1)のペレット4部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(2)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(2)は、透明性、表面硬度、耐割れ性、および滑り性に優れていた。
【0150】
(実施例3)
メタクリル系樹脂(A2)のペレット56.2部、多層構造重合体粒子(b1)のペレット37.8部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット2部、ブロック共重合体(C1)のペレット4部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(3)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(3)は、透明性、表面硬度、耐割れ性、および滑り性に優れていた。
【0151】
(実施例4)
多層構造重合体粒子(b1)のペレット37.8部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット2部、ブロック共重合体(C2)のペレット4部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(4)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(4)は、透明性、表面硬度、耐割れ性、および滑り性に優れていた。
【0152】
(実施例5)
多層構造重合体粒子(b1)のペレット37.8部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット2部、ブロック共重合体(C3)のペレット4部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(5)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(5)は、透明性、表面硬度、耐割れ性、および滑り性に優れていた。
【0153】
(実施例6)
多層構造重合体粒子(b1)のペレット39.8部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット4.5部、ブロック共重合体(C1)のペレット4.5部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(6)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(6)は、透明性、表面硬度、耐割れ性、および滑り性に優れていた。
【0154】
(実施例7)
メタクリル系樹脂(A2)のペレット64部、多層構造重合体粒子(b1)のペレット30部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット2部、ブロック共重合体(C1)のペレット4部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(7)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(7)は、透明性、表面硬度、耐割れ性、および滑り性に優れていた。
【0155】
(実施例8)
メタクリル系樹脂(A2)のペレット70部、多層構造重合体粒子(b1)のペレット24部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット2部、ブロック共重合体(C1)のペレット4部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(8)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(8)は、耐割れ性がやや劣るものの透明性、表面硬度、および滑り性に優れていた。
【0156】
(比較例1)
多層構造重合体粒子(b1)のペレット39.75部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット0.05部、ブロック共重合体(C1)のペレット4部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(9)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(9)は、耐割れ性および滑り性が低下した。
【0157】
(比較例2)
多層構造重合体粒子(b1)のペレット31.8部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット8部、ブロック共重合体(C1)のペレット4部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(10)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(10)は、ヘイズが高く折り曲げ白化が見られた。
【0158】
(比較例3)
多層構造重合体粒子(b1)のペレット41.75部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット2部、ブロック共重合体(C1)のペレット0.05部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(11)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(11)は、耐割れ性と滑り性に優れていたものの、耐割れ性が低下した。
【0159】
(比較例4)
多層構造重合体粒子(b1)のペレット33.8部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット2部、ブロック共重合体(C1)のペレット8部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(12)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(12)は、鉛筆硬度が低下した。
【0160】
(比較例5)
メタクリル系樹脂(A2)のペレット44部、多層構造重合体粒子(b1)のペレット50部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット2部、ブロック共重合体(C1)のペレット4部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(13)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(13)は、耐割れ性と滑り性に優れていたものの、ヘイズが高く折り曲げ白化が見られた。
【0161】
(比較例6)
メタクリル系樹脂(A2)のペレット79部、多層構造重合体粒子(b1)のペレット15部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット2部、ブロック共重合体(C1)のペレット4部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(14)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(14)は、耐割れ性が低下した。
【0162】
(比較例7)
メタクリル系樹脂(A2)のペレット54.8部、多層構造重合体粒子(b1)のペレット37.2部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット0部、ブロック共重合体(C2)のペレット8部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(15)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(15)は、滑り性が低下し、折り曲げ白化が見られた。
【0163】
(比較例8)
メタクリル系樹脂(A2)のペレット52.8部、多層構造重合体粒子(b1)のペレット37.2部、多層構造重合体粒子(b2)のペレット10部、ブロック共重合体(C2)のペレット0部に変更した以外は実施例1と同じ方法で樹脂フィルム(16)を得た。評価結果を表2に示す。樹脂フィルム(16)は、折り曲げ白化が見られた。
【0164】
【0165】
以上の結果は、本発明のアクリル系樹脂組成物が、透明性、表面硬度、滑り性、成形性および成形後の外観に優れ、加飾用途に好適であることを実証している。