(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】新規EGFR阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 417/14 20060101AFI20240927BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C07D417/14 CSP
A61P11/00
A61P35/00
A61K31/454
(21)【出願番号】P 2021574928
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2020067053
(87)【国際公開番号】W WO2020254544
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-15
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェスキー, ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】クーン, ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ナーゲル, イヴォン アリス
(72)【発明者】
【氏名】リッチ, アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ルーハー, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シュタイナー, サンドラ
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-522879(JP,A)
【文献】国際公開第2018/115218(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/220149(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/164945(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 417/14
A61P 11/00
A61P 35/00
A61K 31/454
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
(式中
R
1は
i)H、
ii)C
1~6-アルキル、及び
iii)ハロゲン
から選択され、
R
3はハロゲンであり、
R
4は、
i)H、
ii)C
1~6-アルキル、及び
iii)ハロゲン
から選択され、
R
5は、
i)R
6で置換され、任意に更にR
7及びR
8で置換されたフェニル、
ii)R
6で置換され、任意に更にR
7及びR
8で置換されたピリジニル、並びに
iii)R
6で置換され、任意に更にR
7及びR
8で置換されたピリミジニル
から選択され、
R
6は、
i)任意にR
9、R
11及びR
12で置換されたピペラジニル、
ii)任意にR
9、R
11及びR
12で置換されたピペリジニル、並びに
iii)任意にR
9、R
11及びR
12で置換されたモルホリニル
から選択され、
R
7及びR
8は、
i)C
1~6-アルキル、
ii)C
1~6-アルコキシ、
iii)ハロ-C
1~6-アルキル、
iv)ハロ-C
1~6-アルコキシ、
v)C
3~8-シクロアルキル、
vi)C
3~8-シクロアルコキシ、
vii)ハロゲン、及び
viii)ヒドロキシ
から独立して選択され、
R
9、R
11及びR
12は、
i)H、
ii)ハロゲン、
iii)C
1~6-アルキル、
iv)ハロ-C
1~6-アルキル、及び
v)C
3~8-シクロアルキル
から独立して選択され、
R
10は、
i)H、及び
ii)C
1~6-アルキル、
iii)C
3~8-シクロアルキル、及び
iv)ハロゲン
から選択される)の化合物、又は薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R
1がハロゲンである、請求項
1に記載の化合物。
【請求項3】
R
3がハロゲンである、請求項1
又は2に記載の化合物。
【請求項4】
R
5が、R
6で置換されたフェニルである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R
6が、R
9で任意に置換されたピペリジニルである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R
9が、
i)C
1~6-アルキル、及び
ii)ハロ-C
1~6-アルキル
から選択される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R
1が、ハロゲンであり、
R
3が、ハロゲンであり、
R
4が、
i)H、及び
ii)ハロゲン
から選択され、
R
5が、R
6で置換されたフェニルであり、
R
6が、R
9で任意に置換されたピペリジニルであり、
R
9が、
i)C
1~6-アルキル、及び
ii)ハロ-C
1~6-アルキル
から選択され、
R
10がハロゲンである、
請求項1に記載の式(I)の化合物、又は薬学的に許容される塩。
【請求項8】
式(II)
の化合物として更に定義される、請求項1又は2に記載の化合物、又は薬学的に許容される塩。
【請求項9】
式(IV)
の化合物として更に定義される、請求項1、2又は8のいずれか一項に記載の化合物、又は薬学的に許容される塩。
【請求項10】
R
1が、ハロゲンであり、
R
3が、ハロゲンであり、
R
4が、
i)H、及び
ii)ハロゲン
から選択され、
R
9が、
i)C
1~6-アルキル、及び
ii)ハロ-C
1~6-アルキル
から選択され、
R
10がHである、
請求項9に記載の化合物、又は薬学的に許容される塩。
【請求項11】
2-[6-[4-(1-エチル-4-ピペリジル)フェニル]-4-フルオロ-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-ヒドロキシ-フェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド、
2-[7-クロロ-6-
[4-(1-エチル-4-ピペリジル)フェニル]-4-フルオロ-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-ヒドロキシ-フェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド、
2-[4-フルオロ-6-[4-[1-(2-フルオロエチル)-4-ピペリジル]フェニル]-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-ヒドロキシ-フェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド
から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、又は薬学的に許容される塩。
【請求項12】
治療的に活性な物質としての使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物と、治療的に不活性な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項14】
がんの処置又は予防のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
非小細胞肺がんの処置又は予防のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
がん、特に非小細胞肺がんの治療処置及び/又は予防処置における使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
がん、特に非小細胞肺がんの治療処置及び/又は予防処置のための医薬品の製造における使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物を
含む、がん、特に非小細胞肺がんの治療処置及び/又は予防処置のための
医薬。
【請求項19】
がん、特に非小細胞肺がんに罹患しているEGFR活性化変異を有する患者におけるEGFR活性化変異の状態を判定することと、次いで、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物を前記患者に投与することとを含む前記患者の治療処置及び/又は予防処置において、医薬品として使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGFR突然変異体を含むT790M/L858R、T790M/L858R/C797S、L858R、L858R/C797Sの選択的アロステリック阻害剤である化合物、それらの製造、それらを含有する医薬組成物、及び治療的活性物質としてのそれらの使用を提供する。
【0002】
本発明は、式(I)
(I)
(式中、
R
1は、
i)H、
ii)C
1~6-アルキル、及び
iii)ハロゲン
から選択され、
R
3はハロゲンであり、
R
4は、
i)H、
ii)C
1~6-アルキル、及び
iii)ハロゲン
から選択され、
R
5は、
i)R
6で置換され、任意に更にR
7及びR
8で置換されたフェニル、
ii)R
6で置換され、任意に更にR
7及びR
8で置換されたピリジニル、並びに
iii)R
6で置換され、任意に更にR
7及びR
8で置換されたピリミジニル
から選択され、
R
6は、
i)任意にR
9、R
11及びR
12で置換されたピペラジニル、
ii)任意にR
9、R
11及びR
12で置換されたピペリジニル、
iii)任意にR
9、R
11及びR
12で置換されたモルホリニル
から選択され、
R
7及びR
8は、
i)C
1~6-アルキル、
ii)C
1~6-アルコキシ、
iii)ハロ-C
1~6-アルキル、
iv)ハロ-C
1~6-アルコキシ、
v)C
3~8-シクロアルキル、
vi)C
3~8-シクロアルコキシ、
vii)ハロゲン、及び
viii)ヒドロキシ
から独立して選択され、
R
9、R
11及びR
12は、
i)H、
ii)ハロゲン、
iii)C
1~6-アルキル、
iv)ハロ-C
1~6-アルキル、及び
v)C
3~8-シクロアルキル
から独立して選択され、
R
10は、
i)H、及び
ii)C
1~6-アルキル、
iii)C
3~8-シクロアルキル、及び
iv)ハロゲン
から選択される)
の新規化合物、又は薬学的に許容される塩を提供する。
【0003】
受容体チロシンキナーゼのHERファミリーは、細胞増殖、分化、及び生存のメディエータである。この受容体ファミリーには、4つの異なるメンバー、すなわち、上皮増殖因子受容体(EGFR、ErbBl、又はHER1)、HER2(ErbB2)、HER3(ErbB3)、及びHER4(ErbB4)が含まれる。リガンドが結合すると、受容体はホモ二量体及びヘテロ二量体を形成し、続く内因性チロシンキナーゼ活性の活性化は、受容体の自己リン酸化及び下流シグナル伝達分子の活性化をもたらす(Yarden,Y.,Sliwkowski,MX.Untangling the ErbB signalling network.Nature Review Mol Cell Biol.2001 Feb;2(2):127-37)。過剰発現又は突然変異によるEGFRの脱調節は、結腸直腸がん、膵臓がん、神経膠腫、頭頸部がん、及び肺がんを含む多くの種類のヒトがん、特に非小細胞肺がん(non-small cell lung cancer:NSCLC)に関係しており、いくつかのEGFR標的化剤が長年にわたって開発されている(Ciardiello,F.,and Tortora,G.(2008).EGFR antagonists in cancer treatment.The New England journal of medicine 358,1160-1174)。EGFRチロシンキナーゼの可逆的阻害剤であるエルロチニブ(タルセバ(登録商標))は、再発性NSCLCの治療薬として数多くの国で承認されている。
【0004】
腫瘍が体細胞キナーゼドメイン変異を有するNSCLC患者のサブセットでは、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤の顕著な単剤活性が観察されるが、野生型EGFR患者における臨床的有益性は大幅に低下する(Paez,J.et al.(2004).EGFR mutations in lung cancer:correlation with clinical response to gefitinib therapy.Science(New York,NY304,1497-1500)。EGFRの最も一般的な体細胞変異は、デルタ746~750が最も一般的な変異であるエクソン19欠失であり、L858Rが最も高頻度の変異であるエクソン21アミノ酸置換である(Sharma SV,Bell DW,Settleman J,Haber DA.Epidermal growth factor receptor mutations in lung cancer.Nat Rev Cancer.2007 Mar;7(3):169-81)。
【0005】
治療抵抗性は高頻度で発生し、受容体のATP部位内の二次的T790M変異に起因することが多い。いくつかの開発された変異選択的不可逆性阻害剤はT790M変異体に対して高度に活性であるが、これらの有効性は、鍵となる共有結合をこれらが形成するシステイン残基であるC797Sの後天性変異によって損なわれる可能性がある(Thress,K.S.et al.Acquired EGFR C797S mutation mediates resistance to AZD9291 in non-small cell lung cancer harboring EGFR T790M.Nat.Med.21,560-562(2015))。C797S変異は、T790M標的化EGFR阻害剤に対する耐性の主要な機構であることがWangによって更に報告された(Wang et al.EGFR C797S mutation mediates resistance to third-generation inhibitors in T790M-positive non-small cell lung cancer,J Hematol Oncol.2016;9:59)。オシメルチニブに対する耐性を引き起こす更なる変異、例えばL718QがYangによって記載されている(Yang et al,Investigating Novel Resistance Mechanisms to Third-Generation EGFR Tyrosine Kinase Inhibitor Osimertinib in Non-Small Cell Lung Cancer Patients,Clinical Cancer Research,DOI:10.1158/1078-0432.CCR-17-2310)。Lu et al.(Targeting EGFRL858R/T790M and EGFRL858R/T790M/C797S resistance mutations in NSCLC:Current developments in medicinal chemistry,Med Res Rev 2018;1-32)は、NSCLC処置におけるEGFRL858R/T790M及びEGFRL858R/T790M/C797S耐性変異の標的化について総説論文で報告している。
【0006】
最も利用可能なEGFRチロシンキナーゼ阻害剤はキナーゼのATP部位を標的とするので、例えば薬剤耐性EGFR変異体を標的とすることによる、異なる働きをする新たな治療剤が必要である。
【0007】
最近の研究は、アロステリック部位を意図的に標的化することが変異体選択的阻害剤をもたらし得ることを示唆しているJia et al.Overcoming EGFR(T790M)and EGFR(C797S)resistance with mutant-selective allosteric inhibitoRS,June 2016,Nature 534,129-132)。
【0008】
がんの治療処置及び/又は予防処置に有用なEGFR変異体を含有するT790M/L858R、T790M/L858R/C797S、L858R、L858R/C797S、特にEGFR突然変異体を含有するT790M及びC797Sを特異的に阻害する選択的分子の生成が、まさに必要とされている。
【0009】
「C1~6-アルコキシ」という用語は、式-O-R’の基を表し、R’はC1~6-アルキル基、特にC1~3-アルキルを表す。C1~6-アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、及びtert-ブトキシが挙げられる。特定の例は、メトキシ、エトキシ、及びイソプロポキシである。より具体的な例は、メトキシである。
【0010】
「C1~6-アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子、特に1~3個の炭素原子の一価の直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素基を表す。C1~6-アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、及びペンチルが挙げられる。特定のC1~6アルキル基は、メチル、エチル、及びイソプロピルである。より具体的な例は、エチルである。
【0011】
「C3~8-シクロアルコキシ」という用語は、式-O-R’の基を表し、R’はC3~8-シクロアルキル基である。シクロアルコキシ基の例としては、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、及びシクロオクチルオキシが挙げられる。特定の例は、シクロプロポキシである。
【0012】
「C3~8-シクロアルキル」という用語は、3~8個の環炭素原子を有する一価の飽和単環式又は二環式炭化水素基を表す。二環式とは、共通して1個又は2個の炭素原子を有する2個の飽和炭素環からなる環系を意味する。単環式C3~8-シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブタニル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルである。二環式C3~8-シクロアルキルの例は、スピロ[3.3]ヘプタニルである。具体的な単環式C3~8-シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブタニルである。より具体的な単環式C3~8-シクロアルキル基としては、シクロプロピルが挙げられる。
【0013】
「ハロ-C1~6-アルコキシ」という用語は、C1~6-アルコキシ基の水素原子の少なくとも1つが同一又は異なるハロゲン原子で置換されているC1~6-アルコキシ基を表す。「ペルハロ-C1~6-アルコキシ」という用語は、C1~6-アルコキシ基の全ての水素原子が同一又は異なるハロゲン原子で置換されているC1~6-アルコキシ基を表す。ハロ-C1~6-アルコキシの例としては、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フルオロエトキシ、ジフルオロエトキシ、トリフルオロエトキシ、トリフルオロメチルエトキシ、トリフルオロジメチルエトキシ、及びペンタフルオロエトキシが挙げられる。特定のハロ-C1~6-アルコキシ基としては、フルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ(rifluoroethoxy)、ジフルオロメトキシ、ジフルオロエトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルエトキシ、及びトリフルオロジメチルエトキシが挙げられる。より具体的な例は、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、及びトリフルオロメトキシである。
【0014】
「ハロ-C1~6-アルキル」という用語は、C1~6-アルキル基の水素原子の少なくとも1つが同一又は異なるハロゲン原子で置換されているC1~6-アルキル基を表す。「ペルハロ-C1~6-アルキル-C1~6-アルキル」という用語は、アルキル基の全ての水素原子が同一又は異なるハロゲン原子で置換されているC1~6-アルキル-C1~6-アルキル基を表す。ハロ-C1~6-アルキルの例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、トリフルオロメチルエチル、及びペンタフルオロエチルが挙げられる。特定のハロ-C1~6-アルキル基としては、フルオロメトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル、トリフルオロエチル及びジフルオロエチルが挙げられる。より具体的なハロ-C1~6-アルキル基としては、フルオロメチルが挙げられる。
【0015】
「ハロゲン」及び「ハロ」という用語は、本明細書において互換的に使用され、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表す。具体的なハロゲンとしては、フルオロ、クロロ等が挙げられる。
【0016】
「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を表す。
【0017】
「薬学的に許容される」との用語は、生物学的に又は別様に望ましくないものではない、遊離塩基又は遊離酸の生物学的有効性及び特性を保持する塩を指す。塩は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等、特に塩酸、並びに有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、N-アセチルシステイン等と共に形成される。また、これらの塩は、遊離酸に無機塩基や有機塩基を添加して調製してもよい。無機塩基に由来する塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム及びマグネシウム塩等が含まれるがこれらに限定されない。有機塩基に由来する塩には、第一級、第二級及び第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環式アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、リジン、アルギニン、N-エチルピペリジン、ピペリジン、ポリイミン樹脂等の塩が含まれるがこれらに限定されない。式(I)の化合物の特に薬学的に許容され得る塩は、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、及びクエン酸塩である。
【0018】
「薬学的に許容され得るエステル」とは、一般式(I)の化合物を官能基で誘導体化して、生体内で親化合物に戻すことが可能な誘導体を提供し得ることを意味する。そのような化合物の例としては、メトキシメチルエステル、メチルチオメチルエステル、及びピバロイロキシメチルエステル等の生理的に許容可能であり、かつ代謝的に不安定なエステル誘導体が挙げられる。さらに、一般式(I)の親化合物を生体内で産生することができる代謝的に不安定なエステルに類似する、一般式(I)の化合物の任意の生理学的に許容され得る等価物も、本発明の範囲内である。
【0019】
「保護基」(PG)という用語は、多官能性化合物の反応性部位を選択的に遮断し、他の保護されていない反応性部位で選択的に化学反応を行うことができるようにする基を意味し、合成化学では従来の意味で用いられている。保護基は、適切なポイントで除去することができる。例示的な保護基は、アミノ保護基、カルボキシ保護基又はヒドロキシ保護基である。具体的な保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基及びベンジル(Bn)基である。更に具体的な保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基及びフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基である。より具体的な保護基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基である。
【0020】
略語のuMはマイクロモルを意味し、記号μMに相当する。
【0021】
略語のuLはマイクロリットルを意味し、記号μLに相当する。
【0022】
略語のugはマイクログラムを意味し、記号のμgに相当する。
【0023】
式(I)の化合物は、数個の不斉中心を含むことができ、光学的に純粋な鏡像異性体、例えばラセミ体等の鏡像異性体の混合物、光学的に純粋なジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の混合物、ジアステレオ異性のラセミ体又はジアステレオ異性のラセミ体の混合物の形態で存在することができる。
【0024】
Cahn-Ingold-Prelog則によれば、不斉炭素原子は、「R」又は「S」立体配置のものであり得る。
【0025】
また、本発明の実施形態は、本明細書に記載の式(I)による化合物及びその薬学的に許容され得る塩又はエステル、特に本明細書に記載の式(I)による化合物及びその薬学的に許容され得る塩、より具体的には、本明細書に記載の式(I)による化合物である。
【0026】
本発明の具体的な実施形態は、本明細書に記載される式(I)
式中、
R1は、ハロゲンであり、
R3はハロゲンであり、
R4は、
i)H、及び
ii)ハロゲン
から選択され、
R5は、R6で置換されたフェニルであり、
R6は、任意にR9で置換されたピペリジニルであり、
R9は、
i)C1~6-アルキル、及び
ii)ハロ-C1~6-アルキル、
から選択される化合物又は薬学的に許容される塩を提供する。
【0027】
本発明の特定の実施形態は、R1がハロゲンである、本明細書に記載の式(I)による化合物を提供する。
【0028】
本発明の特定の実施形態は、R3がハロゲンである、本明細書に記載の式(I)による化合物を提供する。
【0029】
本発明の特定の実施形態は、R5がR6で置換されたフェニルである、本明細書に記載の式(I)による化合物を提供する。
【0030】
本発明のより具体的な実施形態は、R5がR6で置換されたフェニルである、本明細書に記載の式(I)による化合物を提供する。
【0031】
本発明のより具体的な実施形態は、R6がR9によって任意に置換されたピペリジニルである、本明細書に記載の式(I)による化合物を提供する。
本発明の特定の実施形態は、R9が
i)C1~6-アルキル、及び
【0032】
ii)ハロ-C1~6-アルキルから選択される、本明細書に記載の式(I)による化合物を提供する。
【0033】
本発明の特定の実施形態は、式(II)
(II)
の化合物として更に定義される、本明細書に記載の化合物、又は薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0034】
本発明のより具体的な実施形態は、式(III)
(III)
の化合物として更に定義される、本明細書に記載の化合物、又は薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0035】
本発明の更に具体的な実施形態は、式(IV)
(IV)
の化合物として更に定義される、本明細書に記載の化合物、又は薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0036】
本発明の更に具体的な実施形態は、本明細書に記載される式(III)
式中、
R1は、ハロゲンであり、
R3はハロゲンであり、
R4は、
i)H、及び
ii)ハロゲン
から選択され、
R9は、
i)C1~6-アルキル、及び
ii)ハロ-C1~6-アルキル、
から選択される化合物、又は薬学的に許容される塩を提供する。
【0037】
本発明の更なる具体的な実施形態は、本明細書に記載される式(IV)
式中、
R1は、ハロゲンであり、
R3はハロゲンであり、
R4は、
iii)H、及び
iv)ハロゲン
から選択され、
R9は、
v)C1~6-アルキル、及び
vi)ハロ-C1~6-アルキル、
から選択される化合物、
又は薬学的に許容される塩を提供する。
【0038】
本明細書に記載される式(I)の化合物の具体例は、
2-[6-[4-(1-エチル-4-ピペリジル)フェニル]-4-フルオロ-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-ヒドロキシ-フェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド;
2-[7-クロロ-6-[4-(1-エチル-4-ピペリジル)フェニル]-4-フルオロ-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-ヒドロキ-シフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド;
2-[4-フルオロ-6-[4-[1-(2-フルオロエチル)-4-ピペリジル]フェニル]-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-ヒドロキシフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド;
又はそれらの薬学的に許容され得る塩である。
【0039】
本明細書に記載の式(I)の化合物を製造するためのプロセスも本発明の対象である。
【0040】
本発明の式(I)の化合物の調製は、逐次的又は収束的な合成経路で行うことができる。本発明の合成は、以下の一般的なスキームで示される。反応及びその結果得られる生成物の精製を実行するために必要な技能は、当業者に既知である。プロセスの以下の記載において使用される置換基及び指標は、別段の断りがない限り、本明細書に前述した有意性を有する。
【0041】
より詳細には、式(I)の化合物は、以下に示す方法、実施例に示す方法、又は類似の方法によって製造することができる。個々の反応工程のための適切な反応条件は、当業者に公知である。反応順序は、スキーム1に表示されているものに限定されないが、出発原料及びそれぞれの反応性に応じて、反応工程の順序を自由に変更することができる。出発物質は、市販のものであるか、又は後述の方法に類似の方法により、本記載又は実施例に引用される参照文献に記載の方法により、又は当該技術分野で既知の方法により、調製することができる。
【0042】
本発明の式(I)の化合物の調製は、逐次的又は収束的な合成経路で行うことができる。本発明の化合物の合成を、以下のスキーム1及び具体例の説明において示す。反応及びその結果得られる生成物の精製を実行するために必要な技能は、当業者に既知である。プロセスの以下の記載において使用される置換基及び指標は、別段の断りがない限り、本明細書に前述した有意性を有する。
【0043】
より詳細には、式(I)の化合物は、以下に示す方法、実施例に示す方法、又は類似の方法によって製造することができる。個々の反応工程のための適切な反応条件は、当業者に公知である。反応順序は、スキーム1に表示されているものに限定されないが、出発原料及びそれぞれの反応性に応じて、反応工程の順序を自由に変更することができる。出発物質は、市販のものであるか、又は後述の方法に類似の方法により、本記載又は実施例に引用される参照文献に記載の方法により、又は当該技術分野で既知の方法により、調製することができる。
【0044】
【0045】
一般式Iのイソインドリン系化合物は、例えば、予め調製されたアミノエステル1を、式2の適切に置換されたメチル2-(ブロモメチル)ベンゾエートで環化して、所望のイソインドリンエステル3を産生することによって得ることができる。式4の適切に置換されたアミンをHATUのようなカップリング剤と鹸化及びアミドカップリングすることで、一般式Iの所望のイソインドリン化合物を産生する(スキーム1)。
【0046】
一般的に言えば、式Iの化合物を合成するために使用される工程の順序、及び更なる官能化もまた、所定の場合に修正することができる。
【0047】
酸を伴う対応する薬学的に許容され得る塩は、当業者に公知の標準的方法、例えば、式Iの化合物を、例えばジオキサン又はテトラヒドロフラン等の好適な溶媒中に溶解し、適切な量の対応する酸を加えることによって得ることができる。生成物は通常、濾過又はクロマトグラフィーによって単離できる。式Iの化合物を薬学的に許容され得る塩へと塩基によって変換することは、そのような化合物をそのような塩基で処理することによって行うことができる。そのような塩を形成する1つの可能な方法は、例えば、1/n当量の例えばM(OH)n等の塩基性塩(M=金属又はアンモニウムカチオン、及びn=ヒドロキシドアニオン数)を好適な溶媒(例えば、エタノール、エタノール-水混合物、テトラヒドロフラン-水混合物)中の化合物の溶液に加え、蒸発又は凍結乾燥によって溶媒を除去することによる方法である。特定の塩は、塩酸塩、ギ酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩である。
【0048】
それらの調製が実施例に記載されていない限り、式Iの化合物及び全ての中間体生成物は、類似の方法又は本明細書に記載の方法に従って調製することができる。出発物質は市販されており、当技術分野で公知であるか、又は当技術分野で公知の方法によって、若しくはそれに類似する方法で調製することができる。
【0049】
本発明における一般式Iの化合物を官能基で誘導体化して、in vivoで親化合物に変換して戻すことができる誘導体を提供できることが、理解されるであろう。
【0050】
本発明の特定の実施形態は、治療的活性物質として使用するための、本明細書に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩に関する。
【0051】
本発明の特定の実施形態は、がん、特に非小細胞肺がんの治療処置及び/又は予防処置で使用するための、本明細書に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩に関する。
【0052】
本発明の特定の実施形態は、非小細胞肺がんの治療処置及び/又は予防処置で使用するための、本明細書に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩に関する。
【0053】
本発明の特定の実施形態は、がん、特に非小細胞肺がんの治療処置及び/又は予防処置のための医薬品を製造するための、本明細書に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩に関する。
【0054】
本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩、及び薬学的に許容され得る補助物質を含む、医薬組成物に関する。
【0055】
本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩を患者に投与することによる、がん、特に非小細胞肺がんの治療処置及び/又は予防処置のための方法に関する。
【0056】
本発明の特定の実施形態は、がん、特に非小細胞肺がんに罹患したEGFR活性化突然変異を有する患者におけるEGFR活性化突然変異状態を決定し、次いで、本明細書に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩を該患者に投与することを含む該患者の治療処置及び/又は予防処置において、医薬品として使用するための、本明細書に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩に関する。
【0057】
本発明の特定の実施形態は、がん、特に非小細胞肺がんに罹患したEGFR突然変異T790M/L858R、T790M/L858R/C797S、L858R、及び/又はL858R/C797Sを有する患者におけるEGFR活性化突然変異状態を決定し、次いで、本明細書に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩を該患者に投与することを含む該患者の治療処置及び/又は予防処置において医薬品として使用するための、本明細書に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩に関する。
【0058】
本発明の特定の実施形態は、がん、特に非小細胞肺がんに罹患した、cobas(登録商標)EGFR変異検査v2で決定されたEGFR活性化突然変異を有する患者の治療処置及び/又は予防処置において医薬品として使用するための、本明細書に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩に関し、該患者におけるEGFR活性化突然変異状態を決定し、次いで、本明細書に記載の式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩を該患者に投与することを含む。
【0059】
さらに、本発明は、式Iの化合物の対応する重水素化形態の置換基を、適用可能な場合は全て含む。
【0060】
さらに、本発明は、式Iの化合物の全ての光学異性体、すなわち、ジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体混合物、ラセミ混合物、それらの全ての対応する鏡像異性体、及び/又は互変異性体、並びにそれらの溶媒和物を、適用可能な場合に含む。
【0061】
式Iの化合物は、1つ以上の不斉中心を含むことができ、したがって、ラセミ体、ラセミ混合物、単一鏡像異性体、ジアステレオ異性体混合物、及び個々のジアステレオ異性体として生じ得る。分子上の種々の置換基の性質に応じて、付加的な不斉中心が存在してもよい。このような不斉中心の各々は独立して2つの光学異性体を生成し、混合物及び純粋又は部分的に精製された化合物として可能性のある光学異性体及びジアステレオマの全てが、本発明に含まれることが意図される。本発明は、これらの化合物の全てのそのような異性体形態を包含することを意味する。これらのジアステレオマの独立した合成又はそれらのクロマトグラフィーによる分離は、本明細書で開示されている方法を適切に修正することで、当技術分野で公知のように達成することができる。それらの絶対立体化学は、結晶生成物又は結晶中間体のX線結晶学によって決定することができ、これらは、必要であれば、既知の絶対配置の不斉中心を含む試薬で誘導体化される。所望であれば、化合物のラセミ混合物を分離して、個々の鏡像異性体を単離することができる。分離は、化合物のラセミ混合物を鏡像異性的に純粋な化合物にカップリングさせてジアステレオ異性混合物を形成し、続いて、分別再結晶化又はクロマトグラフィーのような標準的方法によって個々のジアステレオマを分離するような、当該技術分野で公知の方法で行うことができる。
【0062】
一実施形態では、光学的に純粋な鏡像異性体が提供される場合、光学的に純粋な鏡像異性体とは、化合物が所望の異性体を90重量%超、具体的には所望の異性体を95重量%超、又はより具体的には所望の異性体を99重量%超含有することを意味し、該重量パーセントは、化合物の異性体の全重量を基準とする。キラル的に純粋な又はキラルに富化された化合物は、キラル選択的合成によって、又は鏡像異性体の分離によって調製することができる。鏡像異性体の分離は、最終生成物で、又は代替的に好適な中間体上で行うことができる。
【0063】
また、本発明の一実施形態は、記載されるプロセスのいずれか1つに従って製造された場合の、本明細書に記載の式(I)の化合物である。
【0064】
アッセイ手順
HTRFホスホEGFR TMLRCSアッセイ(細胞)
細胞株及び培地
BaF3-TMLRCS細胞株を、Crownbio(米国カリフォルニア州サンディエゴ)から得た。細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco)を補充したRPMI ATCC(Gibco 31870)+2mMグルタミン+ピューロマイシン0.5μg/ml中にて、37℃、5%CO2で維持した。
【0065】
プロトコル
プレートが、12.5nlの試験される化合物(用量反応)のDMSO溶液又はDMSOのみで予め充填された後、12.5μlの増殖培地/ウェル中において、20000細胞/ウェルでGreiner Bio-Oneの第784-08号マイクロタイタープレートに上記のように細胞を移す。プレートを300×gで30秒間回転させた後、細胞を4時間、37℃、5%CO2、湿度95%でインキュベートした。細胞を、4μl/ウェルの補充された溶解緩衝液(Cis-bio、リン酸化EGFR HTRFキット、64EG1PEH)の化合物混合物に添加することによって溶解し、続いて、振盪しながら(400rpm)30分間室温でインキュベートした。次いで、プレートを凍結し、-80°Cで一晩保存した。翌日、プレートを解凍した後に、補充した検出緩衝液中で調製した抗リン酸化EGFRクリプテートと抗リン酸化EGFR-d2抗体溶液との混合物4μlを、各ウェルに加えた。次いで、蓋をしたプレートを4時間室温でインキュベートし、その後、Envisionリーダ(Perkin Elmer)を用いて616及び665nmでの蛍光発光を読み取った。データは、665対616のシグナルの正規化された比に10,000を乗じて、上記と同様の方法で分析した。
【0066】
【0067】
式(I)の化合物及びその薬学的に許容され得る塩は、医薬品(例えば薬学的調製物の形態)として使用することができる。本発明の医薬製剤は、経口投与(例えば、錠剤、被覆錠剤、ドラジェ、硬軟ゼラチンカプセル、溶液、乳剤又は懸濁液の形)、経鼻投与(例えば、鼻スプレーの形)、直腸投与(例えば、座薬の形)、又は眼局所投与(例えば、溶液、軟膏、ゲル又は水溶性高分子挿入剤の形)等の内服投与が可能である。しかしながら、投与は、筋肉内、静脈内、眼内等の非経口的に(例えば、滅菌注射液の形態で)行うこともできる。
【0068】
式(I)の化合物及びその薬学的に許容され得る塩は、錠剤、コーティングされた錠剤、ドラゼ、硬質ゼラチンカプセル、注射液又は外用剤の製造のための薬学的に不活性な、無機又は有機アジュバントと共に処理することができる。ラクトース、コーンスターチ又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩等は、例えば、錠剤、ドラゼ及び硬質ゼラチンカプセルのためのそのようなアジュバントとして、使用することができる。
【0069】
軟質ゼラチンカプセルに適したアジュバントとしては、例として、植物油、ワックス、油脂、半固形物、液体ポリオール等が挙げられる。
【0070】
液剤及びシロップ剤の生産に適したアジュバントは、例えば、水、ポリオール、サッカロース、転化糖、グルコース等である。
【0071】
注射液に適したアジュバントは、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油等である。
【0072】
座剤に適したアジュバントは、例えば、天然又は硬化油、ワックス、脂肪、半固体又は液体ポリオール等である。
【0073】
眼部外用剤形のための適切なアジュバントは、例として、シクロデキストリン、マンニトール、又は当技術分野で知られている多くの他の担体及び賦形剤である。
【0074】
さらに、医薬製剤は、防腐剤、可溶化剤、粘度増加物質、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、マスキング剤、又は酸化防止剤を含むことができる。また、更に他の治療上有用な物質を含有することもできる。
【0075】
投与量は広範に変化させることができ、当然、各特定の症例における個々の要件に適合させる。一般に、経口投与の場合、体重1kgあたり約0.1mg~20mg、好ましくは体重1kgあたり約0.5mg~4mg(例えば、1人あたり約300mg)を1日量として、好ましくは1~3回に分けて個別に投与され、これは、適切であれば、例えば、同量で構成することができる。局所投与の場合、製剤は、0.001重量%~15重量%の医薬を含むことができ、0.1~25mgの間であり得る必要量は、1日あたりの単回投与でも、1週間あたりの単回投与でも、1日あたりの複数回の投与(2~4回)でも、1週間あたりの複数回の投与でもよい。ただし、これが示されている場合は、ここに記載されている上限又は下限を超える可能性があることは明らかである。
【0076】
医薬組成物
式Iの化合物及び薬学的に許容され得る塩は、治療的活性物質として、例えば、医薬製剤の形態で、使用することができる。医薬製剤は、経口、例えば、錠剤、コーティング錠、ドラゼ、硬質ゼラチンカプセル及び軟質ゼラチンカプセル、溶液、エマルジョン、又は懸濁液の形態で投与することができる。しかしながら、投与はまた、例えば坐薬の形態で直腸に、又は、例えば注射液の形態で非経口的に行うこともできる。
【0077】
式Iの化合物及びその薬学的に許容され得る塩は、医薬製剤の生産のために、薬学的に不活性な、無機、又は有機担体と共に処理することができる。ラクトース、コーンスターチ若しくはその誘導体、タルク、及びステアリン酸又はその塩等は、例えば、錠剤、コーティング錠、ドラゼ、及び硬質ゼラチンカプセルの担体として使用することができる。軟質ゼラチンカプセルに好適な担体は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体及び液体ポリオール等である。しかしながら、活性物質の性質にもよるが、軟質ゼラチンカプセルの場合には通常、担体は必要とされない。溶液及びシロップ剤の製造に適した担体材料は例えば、水、ポリオール、グリセロール、植物油等である。坐剤に適した担体は、例えば、天然油又は硬化油、ワックス、油脂、半液体又は液体ポリオール等である。
【0078】
さらに、医薬製剤は、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝液、マスキング剤、又は酸化防止剤等の薬学的に許容され得る補助物質を含むことができる。また、更に他の治療上有用な物質を含有することもできる。
【0079】
式Iの化合物又はその薬学的に許容され得る塩、及び治療的に不活性な担体を含有する医薬品もまた、本発明により提供され、その生産プロセスは、式Iの1つ以上の化合物及び/又はその薬学的に許容され得る塩、並びに所望により、1つ以上の他の治療上有用な物質を、1つ以上の治療的に不活性な担体と共に生薬投与形態とすることを含む。
【0080】
投与量は、広範囲内で変化することができ、当然、それぞれの具体的なケースで個々の要件に調整されなければならない。経口投与の場合、成人の投薬量は、一般式Iの化合物の約0.01mg~約1000mg/日、又はその薬学的に許容され得る塩の対応する量であり得る。1日投与量は、単回用量又は分割用量で投与することができ、更に、必要であると判明した場合、上限を超えることもできる。
【0081】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明するが、本発明の代表例に過ぎない。医薬製剤は、簡便に、約1~500mg、特に1~100mgの式Iの化合物を含有する。本発明に係る組成物の実施例は、以下の通りである。
【0082】
実施例A
以下の組成の錠剤は、通常の方法で製造される。
【0083】
製造手順
1.成分1、2、3及び4を混合し、精製水で造粒する。
2.顆粒を50℃で乾燥させる。
3.顆粒を適切な粉砕装置に通す。
4.材料5を加えて3分間混ぜ、適当なプレス機で圧縮する。
【0084】
【0085】
製造手順
1.成分1、2及び3を適切なミキサーで30分間混合する。
2.成分4及び5を添加し、3分間混合する。
3.適切なカプセルに充填する。
【0086】
式Iの化合物、ラクトース、及びコーンスターチを、先ずミキサ中で混合し、次いで粉砕機中で混合する。混合物をミキサに戻し、そこにタルクを加えてよく混ぜ合わせる。この混合物は、機械によって適当なカプセル、例えば硬質ゼラチンカプセルに充填される。
【0087】
実施例B-2
次の組成の軟質ゼラチンカプセルを製造する:
【0088】
製造手順
式Iの化合物を他の成分の温かい融解物に溶解し、混合物を適当なサイズの軟質ゼラチンカプセルに充填する。充填した軟質ゼラチンカプセルを、通常の手順に従って処理する。
【0089】
【0090】
製造手順
坐薬練剤(suppository mass)をガラス又はスチール容器中で溶融し、充分に混合し、45℃に冷却する。次いで、これに式Iの微粉末化合物を加え、完全に分散するまで撹拌する。混合物を好適な大きさの坐薬型に注ぎ、冷えるまで放置し、その後後、坐薬を型から取り出して、ろう紙又は金属箔で個別に包装する。
【0091】
【0092】
製造手順
式Iの化合物を、ポリエチレングリコール400と注射用水(一部)の混合物に溶解する。pHは酢酸により5.0に調整する。残量の水を加えて、体積を1.0mlに調整する。溶液をフィルタにかけ、適切な過量を用いてバイアルに充填し、滅菌する。
【0093】
実施例E
次の組成のサシェ剤(sachet)を製造する。
【0094】
製造手順
式Iの化合物を、ラクトース、微結晶セルロース、及びカルボキシルメチルセルロースナトリウムと混合し、水中のポリビニルピロリドンの混合物で顆粒化する。顆粒にステアリン酸マグネシウム及び香味添加剤を混ぜ、サシェ剤に充填する。
【0095】
実験部分
以下の実施例は、本発明の例示のために提供される。これらは本発明の範囲を制限されるものとして見なされるべきではなく、単にこれらを代表するものとして理解されるべきである。
【0096】
実施例1
(2RS)-2-[6-[4-(1-エチル-4-ピペリジル)フェニル]-4-フルオロ-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-ヒドロキ-シフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド
工程1:tert-ブチルN-[(1RS)-1-(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)-2-オキソ-2-(チアゾール-2-イルアミノ)エチル]カルバメート
(2RS)-2-(Tert-ブトキシカルボニルアミノ)-2-(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)酢酸(2.2g、7.35mmol)を22mlのDMFに溶解した。チアゾール-2-アミン(880mg、8.82mmol、1.2当量)、ヒューニッヒ塩基(3.85ml、22.1mmol、3当量)及びTBTU(2.6g、8.09mmol、1.1当量)を室温で添加した。混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を水で抽出し、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を水及び10%LiCl水溶液で抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮乾固した。粗生成物をエーテル中でトリチュエートし、乾燥させると、所望のtert-ブチルN-[(1RS)-1-(5-フルオロ-2-メトキシ-フェニル)-2-オキソ-2-(チアゾール-2-イルアミノ)エチル]カルバメート(2.4g、収率85%)が白色固体として得られた(MS:m/e=382.5(M+H
+))。
【0097】
工程2:(2RS)2-アミノ-2-(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミドヒドロクロリド
tert-ブチルN-[(1RS)-1-(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)-2-オキソ-2-(チアゾール-2-イルアミノ)エチル]カルバメート(実施例1、工程1)(2.4g、6.27mmol)を62mlのメタノールに溶解し、HCl(ジオキサン中4N)(15.7ml、62.7mmol、10当量)を室温で添加した。混合物を25℃で18時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮すると、所望の(2RS)-2-アミノ-2-(5-フルオロ-2-メトキシ-フェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミドヒドロクロリド(定量的収率)が淡緑色固体として得られた(MS:m/e=282.4(M+H
+))。
【0098】
工程3:メチル5-ヨード-2-(ブロモメチル)-3-フルオロ-ベンゾエート
メチル5-ヨード-3-フルオロ-2-メチルベンゾエート(4.0g、13.0mmol)をクロロベンゼン40mlに溶解し、N-ブロモスクシンイミド(3.45g、19.47mmol、1.5当量)及びAIBN(590mg、3.89mmol、0.3当量)を室温で添加した。混合物を90℃で12時間撹拌した。反応混合物を冷却し、水で抽出し、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮乾固した。粗生成物を、酢酸エチル:ヘプタン0:100から50:50の勾配で溶出するシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、所望のメチル5-ヨード-2-(ブロモメチル)-3-フルオロ-ベンゾエートを得た。
【0099】
工程4:(2RS)-2-(4-フルオロ-6-ヨード-1-オキソ-イソインドリン-2-イル)-2-(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド
(2RS)2-アミノ-2-(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミドヒドロクロリド(実施例1、工程2)(400mg、1.27mmol、1当量)を2mlのDMFに溶解した。メチル5-ヨード-2-(ブロモメチル)-3-フルオロ-ベンゾエート(実施例1、工程3)(474mg、1.27mmol、1当量)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.9ml、5.09mmol、4当量)を室温で添加した。混合物を室温で90分間撹拌し、70℃で更に90分間撹拌した。反応混合物を水で抽出し、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を塩水で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮乾固した。粗生成物を、ジクロロメタン:メタノール100:0から90:10の勾配で溶出するシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、所望の(2RS)-2-(4-フルオロ-6-ヨード-1-オキソ-イソインドリン-2-イル)-2-(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド(300mg、収率41%)が白色固体として得られた(MS:m/e=542.0(M+H
+))。
【0100】
工程5:4-(4-ブロモフェニル)-1-シクロプロピル-ピペリジン
4-(4-ブロモフェニル)ピペリジン(5g、20.8mmol)を25mlのDMFに溶解した。ヨウ化エチル(1.85ml、22.9mmol、1.1当量)及びヒューニッヒ塩基(7.3ml、41.6mmol、2当量)を室温で添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、次いで酢酸エチル及び水で抽出した。水層を酢酸エチルで逆抽出した。有機層を塩水で洗浄した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、フィルタにかけ、濃縮乾固した。粗生成物を、ジクロロメタン:メタノール100:0から80:20の勾配で溶出するシリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、所望の4-(4-ブロモフェニル)-1-エチル-ピペリジン(4.6g、収率78%)が黄色液体として得られた(MS:m/e=268.1/270.1(M+H
+))。
【0101】
工程6:1-エチル-4-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ピペリジン
4-(4-ブロモフェニル)-1-エチル-ピペリジン(実施例1、工程5)(4.6g、15.4mmol、1.0当量)及びビス(ピナコラト)ジボロン(4.31g、17mmol、1.1当量)をジオキサン40mlに溶解した。酢酸カリウム(4.54g、46.3mmol、3.0当量)及びジクロロ1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロロメタン付加物(630mg、0.77mmol、0.05当量)を加え、反応混合物を90℃で20時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、濃縮乾固した。粗生成物を、ジクロロメタン:メタノール100:0から80:20の勾配で溶出するシリカゲルカラム上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物(定量的収率)を暗褐色油状物として得た(MS:m/e=316.2(M+H
+))。
【0102】
工程7:(2RS)-2-[6-[4-(1-エチル-4-ピペリジル)フェニル]-4-フルオロ-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-メトキシ-フェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド
(2RS)-2-(4-フルオロ-6-ヨード-1-オキソ-イソインドリン-2-イル)-2-(5-フルオロ-2-メトキシ-フェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド(実施例1、工程4)(150mg、0.277mmol)及び1-エチル-4-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ピペリジン(実施例1、工程6)(114mg、0.36mmol、1.3当量)を4mlのTHFに溶解した。炭酸セシウム(270mg、0.83mmol、3当量)、PdCl
2(dppf)-CH
2Cl
2付加物(23mg、0.028mmol、0.1当量)及び水1mlを添加し、反応混合物を65℃で24時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、次いで酢酸エチル及び水で抽出した。水層を酢酸エチルで逆抽出した。有機層を水及び塩水で洗浄した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、フィルタにかけ、isolute(登録商標)で濃縮して乾燥させた。粗生成物を、ジクロロメタン:メタノール100:0から80:20の勾配で溶出するシリカゲルカラム上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。所望の(2RS)-2-[6-[4-(1-エチル-4-ピペリジル)フェニル]-4-フルオロ-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-メトキシ-フェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド(160mg、収率67%、純度=70%)を暗緑色の泡沫として得た(MS:m/e=603.3(M+H
+))。
【0103】
工程8:(2RS)-2-[6-[4-(1-エチル-4-ピペリジル)フェニル]-4-フルオロ-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-ヒドロキ-シフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド
(2RS)-2-[6-[4-(1-エチル-4-ピペリジル)フェニル]-4-フルオロ-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-メトキシ-フェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド(実施例1、工程7)(156mg、0.26mmol)を5mlのジクロロメタンに溶解した。BBr3(ジクロロメタン中1M)(1.04ml、1.04mmol、4当量)を室温で添加した。混合物を25℃で3時間撹拌した。反応混合物を、飽和NaHCO3水溶液の添加によってクエンチした。反応混合物をジクロロメタン:メタノール9:1の混合物で抽出した。水層をジクロロメタン:メタノール9:1の混合物で3回逆抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、フィルタにかけ、濃縮乾固した。粗生成物を、ジクロロメタン:メタノール100:0から80:20の勾配で溶出するアミノ-シリカゲルカラムでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、所望の(2RS)-2-[6-[4-(1-エチル-4-ピペリジル)フェニル]-4-フルオロ-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-ヒドロキシフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド(37mg、収率22%)が淡黄色固体として得られた(MS:m/e=589.2(M+H
+))。
【0104】
実施例2
(2RS)-2-[7-クロロ-6-[4-(1-エチル-4-ピペリジル)フェニル]-4-フルオロ-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-ヒドロキ-シフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド
工程1:2-クロロ-3-ヨード-6-メチル-5-ニトロ安息香酸
6-クロロ-2-メチル-3-ニトロ安息香酸(CAS899821-27-3)(3.8g、15.9mmol)を、18mLの硫酸中に溶解した。1,3-ジヨード-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン(6.9g、18.2mmol、1.15当量)を室温で加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ入れ、得られた沈殿を濾別した。固体を乾燥して、所望の2-クロロ-3-ヨード-6-メチル-5-ニトロ安息香酸(5.37g、定量的収率)を褐色泡状物として得た(MS:m/e=339.8/341.7(M+H
+))。
【0105】
工程2:メチル2-クロロ-3-ヨード-6-メチル-5-ニトロベンゾエート
2-クロロ-3-ヨード-6-メチル-5-ニトロ安息香酸(実施例2、工程1)(5.37g、14.2mmol)を、25mLのDMF中に溶解した。炭酸カリウム(3.9g、28.3mmol、2当量)及びヨードメタン(2.1g、14.9mmol、1.05当量)を室温で加えた。混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液で抽出し、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を水及び10%塩化リチウム溶液で抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮乾固した。粗生成物を、ヘプタン:酢酸エチル100:0から60:40の勾配で溶出するシリカゲルカラム上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、所望のメチル2-クロロ-3-ヨード-6-メチル-5-ニトロベンゾエート(2.89g、収率57%)が淡黄色固体として得られた(MS:m/e=353.9/355.9(M+H
+))。
【0106】
工程3:メチル3-アミノ-6-クロロ-5-ヨード-2-メチルベンゾエート
メチル2-クロロ-3-ヨード-6-メチル-5-ニトロベンゾエート(実施例2、工程2)(2.89g、8.13mmol)を、30mLのメタノール及び15mLの水中に溶解した。塩化アンモニウム(4.35g、81.3mmol、10当量)及び鉄(2.72g、48.8mmol、6当量)を室温で加えた。混合物を70℃で16時間撹拌した。反応混合物をフィルタにかけ、蒸発乾固させた。残留物を飽和重炭酸ナトリウム溶液で抽出し、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を水及び塩水で抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮乾固した。粗生成物を、ヘプタン:酢酸エチル100:0から30:70の勾配で溶出するシリカゲルカラム上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、所望のメチル3-アミノ-6-クロロ-5-ヨード-2-メチルベンゾエート(1.9g、収率72%)が橙色油状物として得られた(MS:m/e=324.9/326.9(M+H
+))。
【0107】
工程4:メチル2-クロロ-5-フルオロ-3-ヨード-6-メチルベンゾエート(696mg、2.12mmol、収率49.1%)
メチル3-アミノ-6-クロロ-5-ヨード-2-メチルベンゾエート(実施例2、工程3)(1.4g、4.3mmol)を、10mLのジオキサン中に溶解した。テトラフルオロホウ酸ニトロソニウム(0.55g、4.74mmol、1.1当量)を、室温で部分的に及び氷冷下において加えた。混合物を室温で30分間撹拌し、110℃で90分間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を塩水で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮乾固した。粗生成物を、ヘプタン:酢酸エチル100:0から75:25の勾配で溶出するシリカゲルカラム上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製すると、所望のメチル2-クロロ-5-フルオロ-3-ヨード-6-メチルベンゾエート(696mg、収率49%)が無色油状物として得られた(MS:m/e=327.1/329.1(M-H
+))。
【0108】
工程5:メチル2-(ブロモメチル)-6-クロロ-3-フルオロ-5-ヨードベンゾエート
メチル2-クロロ-5-フルオロ-3-ヨード-6-メチルベンゾエート(実施例2工程4)から出発し、実施例1、工程3に記載されるものと同様の化学を使用して、無色固体として標題化合物を得た(MS:m/e=409.0(M+H
+))。
【0109】
工程6:(2RS)-2-(7-クロロ-4-フルオロ-6-ヨード-1-オキソ-イソインドリン-2-イル)-2-(5-フルオロ-2-メトキシフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド
(2RS)-2-アミノ-2-(5-フルオロ-2-メトキシ-フェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミドヒドロクロリド(実施例1、工程2)及びメチル2-(ブロモメチル)-6-クロロ-3-フルオロ-5-ヨードベンゾエート(実施例2、工程6)から出発して、実施例1の工程4に記載されるものと同様の化学を使用し、黄色固体として標題化合物を得た(MS:m/e=576.0(M+H
+))。
【0110】
工程7:(2RS)-2-[7-クロロ-6-[4-(1-エチル-4-ピペリジル)フェニル]-4-フルオロ-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-ヒドロキ-シフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド
(2RS)-2-(7-クロロ-4-フルオロ-6-ヨード-1-オキソ-イソインドリン-2-イル)-2-(5-フルオロ-2-メトキシ-フェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド(実施例2、工程6)及び1-エチル-4-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ピペリジン(実施例1、工程6)から出発して、実施例1、工程7及び工程8に記載されるものと同様の化学を使用し、白色固体として標題化合物を得た(MS:m/e=623.3(M+H
+))。
【0111】
実施例3
(2RS)-2-[4-フルオロ-6-[4-[1-(2-フルオロエチル)-4-ピペリジル]フェニル]-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-ヒドロキシフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド
工程1:1-(2-フルオロエチル)-4-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ピペリジン
4-(4-ブロモフェニル)ピペリジン及び2-フルオロエチル4-メチルベンゼンスルホネートから出発して、実施例1、工程5及び工程6に記載されるもの同様の化学を使用して、暗赤色固体として標題化合物を得た(MS:m/e=334.2(M+H
+))。
【0112】
工程2:(2RS)-2-[4-フルオロ-6-[4-[1-(2-フルオロエチル)-4-ピペリジル]フェニル]-1-オキソ-イソインドリン-2-イル]-2-(5-フルオロ-2-ヒドロキシフェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド
(2RS)-2-(4-フルオロ-6-ヨード-1-オキソ-イソインドリン-2-イル)-2-(5-フルオロ-2-メトキシ-フェニル)-N-チアゾール-2-イル-アセトアミド(実施例1、工程4)及び1-(2-フルオロエチル)-4-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ピペリジン(実施例3、工程1)から出発して、実施例1、工程7及び工程8に記載されるものと同様の化学を使用し、白色固体として標題化合物を得た(MS:m/e=607.6(M+H
+))。