IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社KOKUSAI ELECTRICの特許一覧

特許7561795基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
<>
  • 特許-基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム 図1
  • 特許-基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム 図2
  • 特許-基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム 図3
  • 特許-基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム 図4
  • 特許-基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム 図5
  • 特許-基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム 図6
  • 特許-基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
H01L21/31 B
H01L21/316 X
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2022098420
(22)【出願日】2022-06-17
(65)【公開番号】P2023184336
(43)【公開日】2023-12-28
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出貝 求
(72)【発明者】
【氏名】中谷 公彦
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-129227(JP,A)
【文献】特開2022-018973(JP,A)
【文献】特開2020-096155(JP,A)
【文献】特開2017-147417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/31
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表面に第1膜を有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする工程と、
を含むサイクルを所定回数行う工程を有し、
(b)では、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない Oを含む物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする基板処理方法。
【請求項2】
前記第1層は水素及び酸素を含む請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第1層はHOを含む請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第1層に含まれるHOの量は、前記第1膜に含まれるHOの量よりも多い請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1層を形成する際の処理温度は、前記第1膜を形成する際の処理温度よりも低い請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1層は酸化層である請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記エッチング剤はフッ素含有ガスである請求項1~のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記エッチング剤は水素及びフッ素含有ガスである請求項1~のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記物質Xは前記エッチング剤と反応することで、エッチングを促進させる物質である請求項1~のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第1膜は酸素含有膜を含む請求項1~のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
(b)では、前記第1膜の少なくとも一部をエッチングする際にも前記物質Xを生じさせる請求項1~のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
(b)では、前記第1膜の少なくとも一部をエッチングする際には前記物質Xを生じさせない請求項1~のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
(a)表面に第1膜を有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする工程と、
を含むサイクルを所定回数行う工程を有し、
(a)では、(a1)前記基板に対して前記処理剤として原料を供給する工程と、(a2)前記基板に対して前記処理剤として水素及び酸素を含む反応体を供給する工程と、を交互に行い、(a1)および(a2)のうち少なくともいずれかでは、前記基板に対してさらに触媒を供給し、
(b)では、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする基板処理方法。
【請求項14】
(a)表面に第1膜を有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする工程と、
を含むサイクルを所定回数行う工程を有し、
(b)では、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングし、
(a)において形成する前記第1層の厚さで、(b)における前記第1膜のエッチング量を制御する基板処理方法。
【請求項15】
(a)表面に酸素非含有膜を含む第1膜を有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする工程と、
を含むサイクルを所定回数行う工程を有し、
(b)では、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする基板処理方法。
【請求項16】
(a)表面に第1膜と第2膜とを有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする工程と、
(c)(a)を行う前に、前記基板に対して改質剤を供給することにより、前記第2膜の表面に第2層としてインヒビター層を形成する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う工程を有し、
(b)では、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする基板処理方法。
【請求項17】
(a)表面に第1膜を有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする工程と、
を含むサイクルを所定回数行う工程を有し、
(b)では、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない Oを含む物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
(a)表面に第1膜を有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする工程と、
を含むサイクルを所定回数行う工程を有し、
(b)では、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングし、
(a)において形成する前記第1層の厚さで、(b)における前記第1膜のエッチング量を制御する半導体装置の製造方法。
【請求項19】
(a)表面に酸素非含有膜を含む第1膜を有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする工程と、
を含むサイクルを所定回数行う工程を有し、
(b)では、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
(a)表面に第1膜と第2膜とを有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする工程と、
(c)(a)を行う前に、前記基板に対して改質剤を供給することにより、前記第2膜の表面に第2層としてインヒビター層を形成する工程と、
を含むサイクルを所定回数行う工程を有し、
(b)では、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする半導体装置の製造方法。
【請求項21】
板に対して処理剤を供給する処理剤供給系と、
板に対してエッチング剤を供給するエッチング剤供給系と、
a)表面に第1膜を有する基板に対して前記処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する処理と、(b)前記基板に対して前記エッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする処理と、を含むサイクルを所定回数行わせ、(b)において、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない Oを含む物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングするように、前記処理剤供給系および前記エッチング剤供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項22】
基板に対して処理剤を供給する処理剤供給系と、
基板に対してエッチング剤を供給するエッチング剤供給系と、
(a)表面に第1膜を有する基板に対して前記処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する処理と、(b)前記基板に対して前記エッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする処理と、を含むサイクルを所定回数行わせ、(b)において、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングし、(a)において形成する前記第1層の厚さで、(b)における前記第1膜のエッチング量を制御するように、前記処理剤供給系および前記エッチング剤供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項23】
基板に対して処理剤を供給する処理剤供給系と、
基板に対してエッチング剤を供給するエッチング剤供給系と、
(a)表面に酸素非含有膜を含む第1膜を有する基板に対して前記処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する処理と、(b)前記基板に対して前記エッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする処理と、を含むサイクルを所定回数行わせ、(b)において、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングするように、前記処理剤供給系および前記エッチング剤供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項24】
基板に対して処理剤を供給する処理剤供給系と、
基板に対してエッチング剤を供給するエッチング剤供給系と、
基板に対して改質剤を供給する改質剤供給系と、
(a)表面に第1膜と第2膜とを有する基板に対して前記処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する処理と、(b)前記基板に対して前記エッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする処理と、(c)(a)を行う前に、前記基板に対して改質剤を供給することにより、前記第2膜の表面に第2層としてインヒビター層を形成する処理と、を含むサイクルを所定回数行わせ、(b)において、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングするように、前記処理剤供給系、前記エッチング剤供給系および前記改質剤供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項25】
(a)表面に第1膜を有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する手順と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする手順と、
を含むサイクルを所定回数行う手順と、
(b)において、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない Oを含む物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項26】
(a)表面に第1膜を有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する手順と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする手順と、
を含むサイクルを所定回数行う手順と、
(b)において、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングし、(a)において形成する前記第1層の厚さで、(b)における前記第1膜のエッチング量を制御する手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項27】
(a)表面に酸素非含有膜を含む第1膜を有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する手順と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする手順と、
を含むサイクルを所定回数行う手順と、
(b)において、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項28】
(a)表面に第1膜と第2膜とを有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する手順と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする手順と、
(c)(a)を行う前に、前記基板に対して改質剤を供給することにより、前記第2膜の表面に第2層としてインヒビター層を形成する手順と、
を含むサイクルを所定回数行う手順と、
(b)において、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板の表面に露出した膜をエッチングにより除去する処理が行われることがある(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-082774号公報
【文献】特開2022-018973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エッチングの際に用いるエッチング剤とエッチング対象膜との組み合わせによっては、制御性よく安定したエッチングを行うことができないことがある。
【0005】
本開示は、制御性よく安定したエッチングを行うことが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
(a)表面に第1膜を有する基板に対して処理剤を供給することにより、前記第1膜の表面上に第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してエッチング剤を供給することにより、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする工程と、
を含むサイクルを所定回数行う工程を有し、
(b)では、前記第1層をエッチングする際に、前記エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、該物質Xと前記エッチング剤との混合物を用いて、前記第1層と、前記第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、制御性よく安定したエッチングを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
図2図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA-A線断面図で示す図である。
図3図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
図4図4(a)は、表面に第1膜を有するウエハの表面部分を示す断面模式図である。図4(b)は、図4(a)の状態からステップAを行うことで、第1膜の表面上に第1層が形成された後のウエハの表面部分を示す断面模式図である。図4(c)は、図4(b)の状態からステップBを開始することで、第1膜の表面上に第1層が形成されたウエハに対してエッチング剤が供給された際のウエハの表面部分を示す断面模式図である。図4(d)は、図4(c)の状態からステップBを継続することで、第1層をエッチングし、エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせた際のウエハの表面部分を示す断面模式図である。図4(e)は、図4(d)の状態からステップBをさらに継続することで、物質Xとエッチング剤との混合物を用いて、第1層と第1膜の一部とをエッチングさせた後のウエハの表面部分を示す断面模式図である。
図5図5(a)は、表面に第1膜と第2膜とを有するウエハの表面部分を示す断面模式図である。図5(b)は、図5(a)の状態からステップCを行うことで、第1膜および第2膜のうち第2膜の表面に選択的に第2層としてのインヒビター層が形成された後のウエハの表面部分を示す断面模式図である。図5(c)は、図5(b)の状態からステップAを行うことで、第1膜の表面上に選択的に第1層が形成された後のウエハの表面部分を示す断面模式図である。図5(d)は、図5(c)の状態からステップBを開始することで、第2膜の表面に第2層が形成され、第1膜の表面上に第1層が形成されたウエハに対してエッチング剤が供給された際のウエハの表面部分を示す断面模式図である。図5(e)は、図5(d)の状態からステップBを継続することで、第1層をエッチングし、エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせた際のウエハの表面部分を示す断面模式図である。図5(f)は、図5(e)の状態からステップBをさらに継続することで、物質Xとエッチング剤との混合物を用いて、第1層と第1膜の一部とをエッチングさせた後のウエハの表面部分を示す断面模式図である。
図6図6は、実施例1~実施例3におけるエッチング量を示すグラフである。
図7図7は、実施例4~実施例6におけるエッチング量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、図1図3図4(a)~図4(e)を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整器(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0012】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを、それぞれ第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249a,249cのそれぞれは、ノズル249bに隣接して設けられている。
【0013】
ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241cおよび開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232d,232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232e,232gがそれぞれ接続されている。ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、ガス供給管232hが接続されている。ガス供給管232d~232hには、ガス流の上流側から順に、MFC241d~241hおよびバルブ243d~243hがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232hは、例えば、SUS等の金属材料により構成されている。
【0014】
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249bは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249a,249cは、ノズル249bと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249bとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249aと反対側に設けられているということもできる。ノズル249a,249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0015】
ガス供給管232aからは、改質剤が、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232bからは、原料が、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。原料は、処理剤の1つとして用いられる。
【0017】
ガス供給管232cからは、反応体が、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。反応体は、処理剤の1つとして用いられる。反応体としては、水素(H)及び酸素(O)を含む反応体を用いることができる。
【0018】
ガス供給管232dからは、触媒が、MFC241d、バルブ243d、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。触媒は、処理剤の1つとして用いられる。
【0019】
ガス供給管232eからは、エッチング剤が、MFC241e、バルブ243e、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0020】
ガス供給管232f~232hからは、不活性ガスが、それぞれMFC241f~241h、バルブ243f~243h、ガス供給管232a~232c、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0021】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、改質剤供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、原料供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、反応体供給系が構成される。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、触媒供給系が構成される。主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、エッチング剤供給系が構成される。主に、ガス供給管232f~232h、MFC241f~241h、バルブ243f~243hにより、不活性ガス供給系が構成される。原料供給系、反応体供給系、触媒供給系のそれぞれ或いは全てを処理剤供給系とも称する。
【0022】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243hやMFC241a~241h等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232hのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232h内への各種物質(各種ガス)の供給動作、すなわち、バルブ243a~243hの開閉動作やMFC241a~241hによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232h等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0023】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、さらに、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めてもよい。
【0024】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0025】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0026】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0027】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0028】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。また、コントローラ121には、外部記憶装置123を接続することが可能となっている。
【0029】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に記録され、格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121によって、基板処理装置に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0030】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241h、バルブ243a~243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0031】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241hによる各種物質(各種ガス)の流量調整動作、バルブ243a~243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0032】
コントローラ121は、外部記憶装置123に記録され、格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行うようにしてもよい。
【0033】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程(製造方法)の一工程として、基板を処理する方法、すなわち、基板としてのウエハ200の表面における第1膜をエッチングするための処理シーケンスの例について、主に、図4(a)~図4(e)を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0034】
本態様における処理シーケンスでは、
(a)表面に第1膜を有するウエハ200に対して処理剤を供給することにより、第1膜の表面上に第1層を形成するステップAと、
(b)ウエハ200に対してエッチング剤を供給することにより、第1層と、第1膜の少なくとも一部と、をエッチングするステップBと、
を含むサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行い、
ステップBでは、第1層をエッチングする際に、エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質X(以下、単に、物質Xともいう)を生じさせ、物質Xとエッチング剤との混合物を用いて、第1層と、第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする。
【0035】
以下の例では、ステップAにて、ウエハ200に対して、処理剤として、原料と、H及びOを含む反応体と、を供給する場合について説明する。具体的には、以下の例では、ステップAにて、ウエハ200に対して原料を供給するステップA1と、ウエハ200に対してH及びOを含む反応体を供給するステップA2と、を交互に行い、ステップA1およびステップA2のうち少なくともいずれかでは、ウエハ200に対してさらに触媒を供給する場合について説明する。
【0036】
すなわち、以下に説明する処理シーケンスでは、
(a)表面に第1膜を有するウエハ200に対して原料を供給するステップA1と、ウエハ200に対してH及びOを含む反応体を供給するステップA2と、を含むサイクルを所定回数(m回、mは1以上の整数)行い、ステップA1およびステップA2のうち少なくともいずれかでは、ウエハ200に対してさらに触媒を供給するステップAと、
(b)ウエハ200に対してエッチング剤を供給することにより、第1層と、第1膜の少なくとも一部と、をエッチングするステップBと、
を含むサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行い、
ステップBでは、第1層をエッチングする際に、エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、物質Xとエッチング剤との混合物を用いて、第1層と、第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする例を示している。なお、ステップAでは、処理条件によっては触媒の供給を省略することもできる。
【0037】
なお、以下の例では、上述のように、ステップAにてウエハ200に供給する処理剤が、原料、H及びOを含む反応体、および触媒を含む場合について説明する。原料、H及びOを含む反応体、および触媒は、それぞれ分子構造が異なる。
【0038】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すことがある。なお、以下の変形例等の説明においても、これらと同様の表記を用いる場合がある。
[(原料+触媒→反応体+触媒)×m→エッチング剤]×n
[(原料+触媒→反応体)×m→エッチング剤]×n
[(原料→反応体+触媒)×m→エッチング剤]×n
【0039】
本明細書において用いる「ウエハ」という用語は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「ウエハの表面」という言葉は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0040】
本明細書において用いる「剤」という用語は、ガス状物質および液体状物質のうち少なくともいずれかを含む。液体状物質はミスト状物質を含む。すなわち、処理剤(原料、反応体、触媒)、エッチング剤、酸化剤、改質剤、および洗浄剤のそれぞれは、ガス状物質を含んでいてもよく、ミスト状物質等の液体状物質を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0041】
本明細書において用いる「層」という用語は、連続層および不連続層のうち少なくともいずれかを含む。例えば、第1層は、エッチング促進作用を生じさせることが可能であれば、連続層を含んでいてもよく、不連続層を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。また例えば、第2層であるインヒビター層は、反応阻害作用を生じさせることが可能であれば、連続層を含んでいてもよく、不連続層を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0042】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。このようにして、ウエハ200は、処理室201内に準備されることとなる。
【0043】
なお、ボート217に装填されるウエハ200は、図4(a)に示すように、表面にエッチング対象膜(被エッチング膜)である第1膜を有する。エッチング対象膜である第1膜は、エッチング剤との反応性が低く、エッチング剤のみでは直接エッチングすることができない膜、または、エッチング剤のみでは直接エッチングしにくい膜を含む。第1膜としては、例えば、シリコン酸化膜(SiO膜)などの酸素(O)含有膜を用いることができ、また、シリコン窒化膜(SiN膜)などの酸素(O)非含有膜を用いることもできる。また、第1膜としては、例えば、熱酸化法や熱窒化法や化学気相成長法(CVD法)等により形成された膜(熱酸化膜、熱窒化膜、CVD酸化膜、CVD窒化膜等)を用いることができる。第1膜を形成する際の処理温度としては、例えば、350~1200℃、好ましくは450~1100℃が例示される。
【0044】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0045】
(ステップA)
その後、ウエハ200に対して処理剤を供給することにより、第1膜の表面上に第1層を形成する。具体的には、次のステップA1、ステップA2を順次実行する。なお、以下の例では、ステップA1およびステップA2の両方のステップにおいて、触媒を供給する。また、以下の例では、第1層を形成する際の処理温度を、第1膜を形成する際の処理温度よりも低くする。具体的には、ステップA1、ステップA2では、ヒータ207の出力を調整し、処理温度を、第1膜を形成する際の処理温度よりも低くした状態を維持する。
【0046】
[ステップA1]
ステップA1では、ウエハ200、すなわち、表面に第1膜を有するウエハ200に対して、処理剤として、原料(原料ガス)および触媒(触媒ガス)を供給する。
【0047】
具体的には、バルブ243b,243dを開き、ガス供給管232b,232d内へ原料、触媒をそれぞれ流す。原料、触媒は、それぞれ、MFC241b,241dにより流量調整され、ノズル249b,249aを介して処理室201内へ供給され、処理室201内で混合されて、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して原料および触媒が供給される(原料+触媒供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0048】
後述する処理条件下でウエハ200に対して原料と触媒とを供給することにより、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を、第1膜の表面上に化学吸着させることが可能となる。これにより、第1膜の表面上に第1前駆層が形成される。第1前駆層は、原料の残基である、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を含む。すなわち、第1前駆層は、原料を構成する原子の少なくとも一部を含む。本ステップでは、触媒を、原料とともに供給することにより、第1前駆層の形成を、後述するような低い温度条件下で進行させることができる。第1前駆層の形成を、後述するような低い温度条件下で行うことにより、処理室201内において原料が熱分解(気相分解)、すなわち、自己分解しないようにすることができる。これにより、第1膜の表面上に、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部が多重堆積することを抑制することができ、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を吸着させることが可能となる。
【0049】
ステップA1にて原料および触媒を供給する際における処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~200℃、好ましくは室温~150℃
処理圧力:133~1333Pa
原料供給流量:0.001~2slm
触媒供給流量:0.001~2slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
各物質供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
が例示される。
【0050】
なお、本明細書における「25~200℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「25~200℃」とは「25℃以上200℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、処理時間とは、その処理を継続する時間を意味する。また、供給流量に0slmが含まれる場合、0slmとは、その物質(ガス)を供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0051】
ウエハ200の第1膜の表面上に第1前駆層を形成した後、バルブ243b,243dを閉じ、処理室201内への原料、触媒の供給をそれぞれ停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。ノズル249a~249cより供給される不活性ガスは、パージガスとして作用し、これにより、処理室201内がパージされる(パージ)。
【0052】
ステップA1にてパージを行う際における処理条件としては、
処理圧力:1~30Pa
処理時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.5~20slm
が例示される。なお、本ステップにてパージを行う際における処理温度は、原料および触媒を供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0053】
原料としては、例えば、シリコン(Si)及びハロゲン含有ガス(Si及びハロゲン含有物質)を用いることができる。ハロゲンは、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等を含む。Si及びハロゲン含有ガスは、ハロゲンを、Siとハロゲンとの化学結合の形で含むことが好ましい。Si及びハロゲン含有ガスとしては、例えば、Si-Cl結合を有するシラン系ガス、すなわち、クロロシラン系ガスを用いることができる。Si及びハロゲン含有ガスは、さらに、Cを含んでいてもよく、その場合、CをSi-C結合の形で含むことが好ましい。Si及びハロゲン含有ガスとしては、例えば、Si、Cl、及びアルキレン基を含み、Si-C結合を有するシラン系ガス、すなわち、アルキレンクロロシラン系ガスを用いることができる。アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等を含む。また、Si及びハロゲン含有ガスとしては、例えば、Si、Cl、及びアルキル基を含み、Si-C結合を有するシラン系ガス、すなわち、アルキルクロロシラン系ガスを用いることができる。アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を含む。Si及びハロゲン含有ガスは、さらに、Oを含んでいてもよく、その場合、OをSi-O結合の形で、例えば、シロキサン結合(Si-O-Si結合)の形で含むことが好ましい。Si及びハロゲン含有ガスとしては、例えば、Si、Cl、およびシロキサン結合を有するシラン系ガス、すなわち、クロロシロキサン系ガスを用いることができる。これらのガスは、いずれも、ClをSi-Cl結合の形で含むことが好ましい。原料としては、これらの他、アミノシラン系ガス等のSi及びアミノ基含有ガス(Si及びアミノ基含有物質)を用いることもできる。
【0054】
原料としては、例えば、ビス(トリクロロシリル)メタン((SiClCH、略称:BTCSM)、1,2-ビス(トリクロロシリル)エタン((SiCl、略称:BTCSE)、1,1,2,2-テトラクロロ-1,2-ジメチルジシラン((CHSiCl、略称:TCDMDS)、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン((CHSiCl、略称:DCTMDS)、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン(CClSi、略称:TCDSCB)等を用いることができる。また、原料としては、例えば、テトラクロロシラン(SiCl、略称:4CS)、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCDS)、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)等を用いることができる。また、原料としては、例えば、ヘキサクロロジシロキサン(ClSi-O-SiCl、略称:HCDSO)、オクタクロロトリシロキサン(ClSi-O-SiCl-O-SiCl、略称:OCTSO)等を用いることができる。原料としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0055】
また、原料としては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH、略称:4DMAS)、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C、略称:BDEAS)、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH[NH(C)]、略称:BTBAS)、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH[N(C]、略称:DIPAS)等を用いることもできる。原料としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0056】
触媒としては、例えば、炭素(C)、窒素(N)、及び水素(H)を含むアミン系ガス(アミン系物質)を用いることができる。アミン系ガスとしては、環状アミン系ガス(環状アミン系物質)や鎖状アミン系ガス(鎖状アミン系物質)を用いることができる。触媒としては、例えば、ピリジン(CN)、アミノピリジン(C)、ピコリン(CN)、ルチジン(CN)、ピリミジン(C)、キノリン(CN)、ピペラジン(C10)、ピペリジン(C11N)、アニリン(CN)等の環状アミンを用いることができる。また、触媒としては、例えば、トリエチルアミン((CN)、ジエチルアミン((CNH)、モノエチルアミン((C)NH)、トリメチルアミン((CHN)、ジメチルアミン((CHNH)、モノメチルアミン((CH)NH)等の鎖状アミンを用いることができる。触媒としては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述するステップA2においても同様である。
【0057】
不活性ガスとしては、窒素(N)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0058】
[ステップA2]
ステップA1が終了した後、ウエハ200、すなわち、第1膜の表面上に第1前駆層を形成した後のウエハ200に対して、処理剤として、H及びOを含む反応体(反応ガス)および触媒(触媒ガス)を供給する。以下、H及びOを含む反応体を、単に、反応体ともいう。
【0059】
具体的には、バルブ243c,243dを開き、ガス供給管232c,232d内へ反応体、触媒をそれぞれ流す。反応体、触媒は、それぞれ、MFC241c,241dにより流量調整され、ノズル249c,249aを介して処理室201内へ供給され、処理室201内で混合されて、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して反応体および触媒が供給される(反応体+触媒供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0060】
後述する処理条件下でウエハ200に対して反応体と触媒とを供給することにより、ステップA1にてウエハ200の第1膜の表面上に形成された第1前駆層の少なくとも一部を酸化させることが可能となる。これにより、第1膜の表面上に、第1前駆層が酸化されてなる第2前駆層が形成されることとなる。本ステップでは、触媒を、反応体とともに供給することにより、上述の酸化反応を、後述するような低い温度条件下で進行させることが可能となる。
【0061】
ステップA2にて反応体および触媒を供給する際における処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~200℃、好ましくは室温~150℃
処理圧力:133~1333Pa
反応体供給流量:0.001~2slm
触媒供給流量:0.001~2slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
各物質供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
が例示される。
【0062】
第1膜の表面上に形成された第1前駆層を酸化させて第2前駆層へと変化(変換)させた後、バルブ243c,243dを閉じ、処理室201内への反応体、触媒の供給をそれぞれ停止する。そして、ステップA1におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、本ステップにてパージを行う際における処理温度は、反応体および触媒を供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0063】
H及びOを含む反応体としては、例えば、酸化剤すなわち酸化ガスであるH及びO含有ガス(H及びO含有物質)を用いることができる。H及びO含有ガスとしては、例えば、水蒸気(HOガス)、過酸化水素(H)ガス、水素(H)ガス+酸素(O)ガス、Hガス+オゾン(O)ガス等を用いることができる。すなわち、H及びO含有ガスとしては、H含有ガス+O含有ガス(還元ガス+酸化ガス)を用いることもできる。この場合において、H含有ガス、すなわち、還元ガスとして、Hガスの代わりに重水素(D)ガスを用いることもできる。H及びOを含む反応体としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0064】
なお、本明細書における「Hガス+Oガス」のような2つのガスの併記記載は、HガスとOガスとの混合ガスを意味する。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(プリミックス)させた後、処理室201内へ供給するようにしてもよいし、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。
【0065】
触媒としては、例えば、上述のステップA1で例示した各種触媒と同様の触媒を用いることができる。
【0066】
[所定回数実施]
上述のステップA1とステップA2とを非同時に、すなわち、同期させることなく交互に行うサイクルを所定回数(m回、mは1以上の整数)行うことにより、図4(b)に示すように、ウエハ200の第1膜の表面上に、所望の厚さの第1層を形成する(成長させる)ことができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成される第2前駆層の厚さを所望の厚さよりも薄くし、第2前駆層を積層することで形成される第1層の厚さが所望の厚さになるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0067】
上述のサイクルを所定回数行うことにより形成された第1層は、後述するステップBにおいてエッチングされる際に、エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせることができる。ステップBでは、第1層から生じた物質Xとエッチング剤との混合物を用いて、第1層とともに第1膜の少なくとも一部をエッチングする。よって、第1層は、第1膜に対するエッチング促進層であるといえ、また、第1膜に対するエッチング促進作用を有するともいえる。
【0068】
例えば、上述の原料、反応体、触媒を用いる場合、上述のサイクルを所定回数行うことにより、第1膜の表面上に、H及びOを含む第1層を形成することができる。第1層中のH及びOは、H及びOを含む化合物として第1層中に含まれることが好ましい。すなわち、第1層はH及びOを含む化合物を含むことが好ましい。H及びOを含む第1層は、H及びOを含む化合物として、例えば、HOを含むことが好ましい。すなわち、第1層は、H及びOを含むことができ、好ましくはH及びOを含む化合物を含むことができ、より好ましくはHOを含むことができる。第1層が、H及びOを含む、好ましくはHOを含むことで、後述するステップBにて第1層をエッチングする際に、エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを効率的に生じさせることが可能となる。
【0069】
上述のように第1層がH及びOを含む化合物としてHOを含む場合、第1層に含まれるHO分子は、例えば、第1層中の他の成分(分子)と水素結合することで、第1層中に保持される。そのため、第1層中にHO分子が保持された状態の第1層がエッチングされると、上述の水素結合が切断されて、HO分子が気体となって第1層から脱離して、放出されるものと考えられる。このように、第1層に含まれるHOは、後述するステップBにて第1層をエッチングする際に、物質Xとして、第1層から生じることとなる。つまり、HOを含む第1層をエッチングする際には、物質Xとして、HOが生じることとなる。なお、第1層中のHO分子は、第1層をエッチングする際またはそれ以外の際に第1層表面に液体として滲みだす場合もある。
【0070】
また、第1層がHOを含む場合、第1層に含まれるHOの量を、第1膜に含まれるHOの量よりも多くすることが好ましい。これにより、後述するステップBにて第1膜をエッチングする際に生じる物質X(ここではHO)の量を超える量の物質X(ここではHO)を、第1膜をエッチングする際に、より正確には、第1膜のエッチング開始時に、生じさせることが可能となる。これにより、第1膜のエッチングをより促進させることが可能となる。なお、このケースは、第1膜に含まれるHOの量がゼロである場合、すなわち、第1膜がHOを含まない場合をも含む。この場合、第1層に僅かにでもHOを含ませることで、第1層に含まれるHOの量を、第1膜に含まれるHOの量よりも多くすることができる。
【0071】
また、例えば、上述の原料、反応体、触媒を用いる場合、上述のサイクルを所定回数行うことにより、第1膜の表面上に、第1層として、酸化層である、シリコン酸化層(SiO層)またはシリコン酸炭化層(SiOC層)を形成させることができる。第1層が酸化層である場合、後述するステップBにて第1層をエッチングする際に、エッチング剤と第1層とを化学反応させることにより物質Xを生成させることが可能となる。この場合、酸化層は、H及びOを含む化合物としてHOを含み得る。すなわち、この場合、第1膜の表面上に、第1層として、HOを含む酸化層を形成することもできる。第1層がHOを含む酸化層である場合、第1層をエッチングする際に、物質X(ここではHO)を第1層から脱離させて、放出させ、効率的に生じさせることが可能となるだけでなく、エッチングの際の第1層とエッチング剤との化学反応により物質X(ここではHO)を生成させることも可能となる。
【0072】
上述のように、第1層としてHOを含む酸化層を形成する場合、第1層をエッチングする際に、第1層から脱離する物質Xと、第1層とエッチング剤との化学反応により生成される物質Xと、が生じることとなる。この場合、エッチング剤との化学反応により物質Xが生成されない第1層を形成する場合と比べて、第1層のエッチングの際に生じる物質Xの量を多くすることができる。これにより、第1膜をエッチングする際に、より正確には、第1膜のエッチング開始時において、物質Xが、より多く存在することから、第1膜のエッチングをより促進させることが可能となる。
【0073】
本ステップでは、第1層を形成する際の処理時間、すなわち、上述のサイクルの実施回数を調整することで、所望の厚さの第1層を得ることができる。そして、本ステップで形成する第1層の厚さで、後述するステップBにおける第1膜のエッチング量を制御することができる。これは、第1層をエッチングする際に第1層より生じる物質Xの量を、第1層の厚さにより変化させることができるためである。例えば、同じ組成の第1層であれば、第1層の厚さが厚いほど第1層から生じる物質Xの量が多くなり、第1層の厚さが薄いほど第1層から生じる物質Xの量は少なくなる。第1層の厚さを厚くし、第1層から生じる物質Xの量を多くすることで、第1膜のエッチングをより促進させることが可能となる。また、第1層の厚さを変えることで、第1層から生じる物質Xの量を調整し、第1膜のエッチング量を制御することも可能となる。結果として、第1膜のエッチング量の制御性や均一性をより高めることが可能となる。
【0074】
なお、本ステップにおける処理温度、すなわち、第1層を形成する際の処理温度を、第1膜を形成する際の処理温度よりも低くすることが好ましい。このようにすることで、例えば、上述のように、第1層に含まれるHOの量を、第1膜に含まれるHOの量よりも多くすることが容易となる。これは、処理温度を低くするほど、層や膜にHOが取り込まれ易くなり、処理温度を高くするほど、層や膜にHOが取り込まれ難くなるためである。このように、第1膜を形成する際の処理温度に比べて第1層を形成する際の処理温度を低くすることで、第1膜に比べて第1層に含まれるHOの量、すなわち、物質Xの量を多くすることができる。これにより、第1膜をエッチングする際に生じる物質Xの量を超える量の物質Xを、第1膜をエッチングする際に、より正確には、第1膜のエッチング開始時に、生じさせることが可能となり、第1膜のエッチングをより促進させることが可能となる。
【0075】
なお、第1層を形成する際の処理温度を、第1膜を形成する際の処理温度よりも低くする際、第1層は、H及びOを含む場合もあり、HOを含む場合もあり、酸化層である場合もあり、HOを含む酸化層である場合もある。また、上述の第1膜は、O含有膜を含む場合もあり、O非含有膜を含む場合もある。例えば、本ステップでは、HOを含む酸化層である第1層を形成する際の処理温度を、O含有層である第1膜を形成する際の処理温度よりも低くすることができる。
【0076】
(ステップB)
ステップBでは、ステップAを行った後、ウエハ200に対してエッチング剤を供給することにより、第1層と、第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする。本ステップでは、第1層をエッチングする際に、エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、物質Xとエッチング剤との混合物を用いて、第1層と、第1膜の少なくとも一部と、をエッチングする。
【0077】
具体的には、バルブ243eを開き、ガス供給管232e内へエッチング剤を流す。エッチング剤は、MFC241eにより流量調整され、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対してエッチング剤が供給される(エッチング剤供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0078】
後述する処理条件下で、図4(c)に示すように、ウエハ200に対してエッチング剤を供給することにより、第1膜の表面上に形成された第1層のエッチングが開始される。第1層のエッチングが開始されると、図4(d)に示すように、第1層から物質Xが気体として放出され、放出された物質Xは、ウエハ200に対して供給されるエッチング剤と混合することとなる。このようにして得られた物質Xとエッチング剤との混合物中では、物質Xがエッチング剤と反応し、活性化したエッチング剤が生成されることで、第1層、次いで第1膜といった順にエッチングが進行していく。物質Xとエッチング剤との混合物によるエッチングを継続することで、図4(e)に示すように、第1層と第1膜の一部とがエッチングされることとなる。
【0079】
このように、物質Xは、それ単独ではエッチングに寄与しないものの、エッチング剤と反応することで、エッチングを促進させることができる物質である。つまり、物質Xは、エッチング剤と反応することで、エッチングを促進させる物質であるといえ、エッチング剤を活性化させる物質であるともいえる。なお、物質Xは、第1層から放出された気体である場合の他、液体を含んでいる場合もある。例えば、第1層をエッチングする際に第1層表面に物質Xが液体として滲みだしている場合には、この液体である物質Xとウエハ200に対して供給されるエッチング剤との混合物を用いることで、第1層と第1膜の少なくとも一部とのエッチングを行うことが可能となる。
【0080】
なお、第1層のエッチングの際には、第1層から物質Xが継続的に生じる。これにより、第1層がエッチングされて消失してしまった後の第1膜のエッチング開始時においても、第1層から生じた物質Xが残存し、この物質Xにより、ウエハ200に対して供給されるエッチング剤を活性化させることができる。これにより、混合物中の物質Xの割合がゼロになるまでは、第1膜のエッチングが進行することとなる。つまり、本ステップでは、第1層をエッチングする際に生じた物質Xにより、ウエハ200に対して供給されるエッチング剤を活性化させることで、第1層に加え、第1膜の少なくとも一部をもエッチングすることが可能となる。なお、第1膜が、エッチング剤のみでは直接エッチングすることができない膜、または、エッチング剤のみでは直接エッチングしにくい膜であっても、その少なくとも一部をエッチングすることが可能となる。
【0081】
本ステップにて、第1層をエッチングする際に生じる物質Xは、H及びOを含むことができ、好ましくはHOを含むことができる。物質Xが、H及びOを含む、好ましくはHOを含むことで、エッチング剤を効率的に活性化させることができ、第1膜のエッチングをより促進させることが可能となる。結果として、第1膜のエッチングをより安定して行うことが可能となる。
【0082】
ステップBにてエッチング剤を供給する際における処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~300℃、好ましくは室温~200℃
処理圧力:1~1333Pa
エッチング剤供給流量:0.001~2slm
エッチング剤供給時間:1秒~100分、好ましくは1分~60分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
が例示される。
【0083】
第1層と第1膜の少なくとも一部のエッチングが終了した後、バルブ243eを閉じ、処理室201内へのエッチング剤の供給を停止する。そして、ステップA1におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、本ステップにてパージを行う際における処理温度は、エッチング剤を供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0084】
なお、ステップBにおける処理温度をステップAにおける処理温度と同様とすることもできる。その場合、処理温度の変更に要する時間を削減することができ、基板処理のスループットを向上させることが可能となる。
【0085】
エッチング剤としては、例えば、フッ素(F)含有ガスを用いることができる。F含有ガスとしては、例えば、三フッ化塩素(ClF)ガス、フッ化塩素(ClF)ガス、フッ化窒素(NF)ガス、フッ化水素(HF)ガス、フッ素(F)ガス等を用いることができる。また、エッチング剤としては、例えば、H及びF含有ガスを用いることができる。H及びF含有ガスとしては、例えば、HFガスを用いることができる。HFガスは、F含有ガスであり、H及びF含有ガスでもある。エッチング剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0086】
エッチング剤がF含有ガスである場合、第1層をエッチングする際に、物質Xを効率的に生じさせることが可能となる。また、エッチング剤がH及びF含有ガスである場合、第1層をエッチングする際に、物質Xを効率的に生じさせることが可能となるだけでなく、エッチングの際のエッチング剤と第1層との化学反応により物質Xを生成させることも可能となる。なお、上述の第1層は、H及びOを含む場合もあり、HOを含む場合もあり、酸化層である場合もあり、HOを含む酸化層である場合もある。例えば、エッチング剤がH及びF含有ガスである場合、HOを含む酸化層である第1層をエッチングする際に、物質XとしてのHOを第1層から脱離させて効率的に生じさせることが可能となるだけでなく、エッチングの際のエッチング剤と第1層との化学反応により物質XとしてのHOを生成させることも可能となる。
【0087】
ここで、一例として、物質XがHOであり、エッチング剤がHFであり、第1膜がSiO膜である場合のエッチングについて説明する。この例の場合、物質XであるHOとエッチング剤であるHFとの間では、以下に示すような化学反応が生じ、それぞれがイオン化し、活性化したエッチング剤(HF )が生成する。そして、第1膜であるSiO膜と、活性化したエッチング剤(HF )およびHと、の間で、以下に示すような化学反応が生じ、エッチングが進行することとなる。
【0088】
【化1】
【0089】
上述のように、物質Xとエッチング剤との混合物を用いると、物質Xとエッチング剤とが反応し、活性化したエッチング剤が生成することで、第1膜をエッチングすることができる。このように、第1膜をエッチングする際には、エッチング剤とともに物質Xを用いる必要がある。そのため、第1膜をエッチングする際、混合物中の物質Xの割合がゼロになると、すなわち、ウエハ200に対してエッチング剤のみが供給されることとなると、第1膜のエッチングがストップ(停止)することとなる。つまり、第1膜のエッチングは、混合物中の物質Xの割合がゼロになるまでは進行するともいえる。そのため、ステップAにて、第1層としてHOを含む酸化層を形成するなどして、第1層からより多くの物質Xを生じさせるようにすることで、第1膜のエッチングをより促進させることが可能となる。
【0090】
なお、本ステップでは、第1膜の少なくとも一部をエッチングする際にも物質Xを生じさせるようにすることができる。例えば、第1膜が、SiO膜などのO含有膜を含む場合、第1層と同様、第1膜をエッチングする際に、物質X(例えばHO)を生じさせることができる。つまり、物質Xとエッチング剤との混合物を用いてO含有膜である第1膜をエッチングする際、O含有膜である第1膜は、エッチングされると共に、エッチング剤と化学反応することにより物質Xを生成させることができる。よって、第1膜がO含有膜を含む場合は、この第1膜をエッチングする際に物質Xが生成し続け、混合物中の物質Xの割合がゼロにはならないことから、エッチング反応が不飽和となり、第1膜のエッチングをより促進させることが可能となる。また、この場合、第1膜の全てをエッチングすることも可能となる。
【0091】
また、本ステップでは、第1膜の少なくとも一部をエッチングする際には物質Xを生じさせないようにすることもできる。例えば、第1膜が、SiN膜などのO非含有膜を含む場合、第1膜をエッチングする際に、物質X(例えばHO)を生じさせないようにすることができる。つまり、物質Xとエッチング剤との混合物を用いてO非含有膜である第1膜をエッチングする際、混合物中の物質Xの割合は徐々に減少することとなる。そして、混合物中の物質Xの割合がゼロにならない限りはエッチングが進行し、混合物中の物質Xの割合がゼロになったときにエッチングがストップ(停止)することとなる。よって、第1膜がO非含有膜を含む場合は、本ステップにおいて、エッチング反応を飽和させることができ、エッチング量の制御性や均一性をより高めることが可能となる。
【0092】
なお、本ステップでは、第1膜から物質Xを生じさせる場合であっても、第1膜からの物質Xの生成速度と、第1膜から生成される物質Xの反応系からの脱離速度と、のバランスを制御することにより、第1膜のエッチング反応の飽和特性(飽和、不飽和)を制御することができる。ここで、第1膜から生成される物質Xの反応系からの脱離速度とは、第1膜から生成される物質Xがエッチング剤と反応することなく、その反応系から脱離する速度をいう。
【0093】
例えば、第1膜からの物質Xの生成速度が、第1膜から生成される物質Xの反応系からの脱離速度よりも小さくなるような処理条件(例えば第1処理温度)とし、第1膜からの物質Xの生成速度を、第1膜から生成される物質Xの反応系からの脱離速度よりも小さくする場合、第1膜のエッチング反応を飽和させることができる。この場合、物質Xとエッチング剤との混合物を用いて第1膜をエッチングする際に、第1膜から物質Xが生成されるものの、その物質Xの大部分はエッチング剤との反応に寄与することなく、反応系から脱離する。その結果、エッチングが進行するにつれて、混合物中の物質Xの割合は徐々に減少することとなる。そして、混合物中の物質Xの割合がゼロにならない限りはエッチングが進行し、混合物中の物質Xの割合がゼロになったときにエッチングがストップ(停止)することとなる。すなわち、第1膜がO非含有膜を含む場合と同様なエッチング反応が生じることとなる。このように、第1膜からの物質Xの生成速度を、第1膜から生成される物質Xの反応系からの脱離速度よりも小さくすることで、エッチング反応を飽和させることができ、エッチング量の制御性や均一性をより高めることが可能となる。
【0094】
また、例えば、第1膜からの物質Xの生成速度が、第1膜から生成される物質Xの反応系からの脱離速度よりも大きくなるような処理条件(例えば上述の第1処理温度よりも低い第2処理温度)とし、第1膜からの物質Xの生成速度を、第1膜から生成される物質Xの反応系からの脱離速度よりも大きくする場合、第1膜のエッチング反応を不飽和とすることができる。この場合、第1膜から生成される物質Xのうち、エッチング剤と反応する物質Xの割合が、エッチング剤と反応することなく反応系から脱離する物質Xの割合を上回る。その結果、第1膜をエッチングする際に物質Xが生成され続け、混合物中の物質Xの割合がゼロにはならないことから、エッチング反応が不飽和となり、エッチングが継続的に進行することとなる。このように、第1膜からの物質Xの生成速度を、第1膜から生成される物質Xの反応系からの脱離速度より大きくし、エッチング剤と物質Xとの反応を継続的に生じさせることで、エッチング反応を不飽和とすることが可能となり、第1膜のエッチングをより促進させることが可能となる。
【0095】
(所定回数実施)
上述のステップAとステップBとを非同時に、すなわち、同期させることなく交互に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、エッチング対象膜である第1膜の一部がエッチングされる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりにエッチングされる第1膜の厚さを第1膜の所望のエッチング厚よりも薄くし、第1膜のエッチング厚が所望の厚さ(深さ)になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。上述のサイクルを複数回繰り返すことで、第1膜の全てをエッチングすることもできる。
【0096】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
エッチングが完了した後、ノズル249a~249cのそれぞれからパージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0097】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0098】
ステップA、ステップBは、同一処理室内にて(in-situにて)行うことが好ましい。これにより、ステップAによりウエハ200の第1膜の表面上に第1層を形成した後、ウエハ200を大気に曝すことなく、すなわち、ウエハ200の表面を清浄な状態に保持したまま、ステップBを行うことができ、エッチング対象膜である第1膜のエッチングを適正に行うことが可能となる。
【0099】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0100】
ステップBでは、エッチング対象膜(被エッチング膜)である第1膜の表面上に第1層(エッチング促進層)が形成された後のウエハ200に対して、エッチング剤を供給することで、第1層と第1膜の少なくとも一部とをエッチングする。このステップでは、第1層をエッチングする際に、エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを生じさせ、この物質Xとエッチング剤との混合物を用いることで、第1層と第1膜の少なくとも一部とをエッチングする。このようにすることで、第1膜が、エッチング剤との反応性が低く、エッチング剤のみでは直接エッチングすることができない膜、または、エッチング剤のみでは直接エッチングしにくい膜である場合であっても、第1膜を十分にエッチングすることが可能となる。すなわち、エッチング対象膜である第1膜のエッチングを促進させることが可能となる。また、エッチング対象膜である第1膜に対して、制御性よく安定したエッチングを行うことも可能となり、第1膜のエッチング量の制御性や均一性を高めることも可能となる。
【0101】
ステップAでは、ウエハ200に対して、処理剤として、原料と、H及びOを含む反応体と、を供給する。具体的には、ステップAでは、ウエハ200に対して原料を供給するステップA1と、ウエハ200に対してH及びOを含む反応体を供給するステップA2とを交互に行うサイクルを所定回数行い、ステップA1およびステップA2のうち少なくともいずれかにおいて、ウエハ200に対して触媒をさらに供給する。このようにすることで、第1層中に、H及びO、好ましくはHOを効果的に含ませることができる。つまり、ステップAにより、H及びO、好ましくはHOを含む第1層を形成することができる。これにより、第1層をエッチングする際に、エッチング剤とは反応するがそれ単独ではエッチングに寄与しない物質Xを効率的に生じさせることが可能となり、第1膜のエッチングを促進させることが可能となる。なお、ステップAでは、処理条件によっては触媒の供給を省略することもできる。
【0102】
また、ステップAにより、HOを含む酸化層である第1層を形成することもできる。これにより、第1層をエッチングする際に、物質Xを第1層から脱離させて効率的に生じさせることが可能となるだけでなく、エッチングの際の第1層とエッチング剤との化学反応により物質Xを生成させることも可能となる。結果として、第1膜をエッチングする際に生じる物質Xの量を超える量の物質Xを、第1膜をエッチングする際に、より正確には、第1膜のエッチング開始時に、生じさせることが可能となり、第1膜のエッチングをより促進させることが可能となる。
【0103】
物質Xが、エッチング剤と反応することで、エッチングを促進させる物質であることにより、第1膜が、エッチング剤のみでは直接エッチングすることができない膜、または、エッチング剤のみでは直接エッチングしにくい膜である場合であっても、第1膜をエッチングすることが可能となる。すなわち、エッチング対象膜である第1膜のエッチングを促進させることが可能となる。また、エッチング対象膜である第1膜に対して、制御性よく安定したエッチングを行うことも可能となり、第1膜のエッチング量の制御性や均一性を高めることも可能となる。特に、エッチング剤と反応することで、エッチングを促進させる物質Xが、H及びO、好ましくはHOを含む場合に、これらの効果をより高めることが可能となる。
【0104】
(4)変形例
本態様におけるウエハ200の表面や処理シーケンスは、以下に示す変形例のように変更することができる。これらの変形例は、任意に組み合わせることができる。特に説明がない限り、各変形例の各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の基板処理シーケンスの各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0105】
(変形例1)
図5(a)に示すように、ウエハ200は表面に、第1膜と、第2膜と、を有していてもよい。すなわち、ウエハ200は表面に第1膜の他、第2膜を有していてもよい。その場合に、以下に示す処理シーケンスのように、ステップAを行う前に、ウエハ200に対して改質剤を供給することにより、第2膜の表面に第2層としてインヒビター層を形成するステップCをさらに行うようにしてもよい。以下に示す処理シーケンスは、ステップAとステップBとを含むサイクルを所定回数行う前に、ステップCを1回行う例を示している。本変形例では、ウエハ200の表面におけるエッチング対象膜である第1膜と、エッチング非対象膜である第2膜と、のうち、第1膜を選択的にエッチングすることができる。
【0106】
改質剤→[(原料+触媒→反応体+触媒)×m→エッチング剤]×n
改質剤→[(原料+触媒→反応体)×m→エッチング剤]×n
改質剤→[(原料→反応体+触媒)×m→エッチング剤]×n
【0107】
本変形例における処理シーケンスの例について、主に、図5(a)~図5(f)を用いて説明する。以下では、便宜上、代表的な例として、第1膜(エッチング対象膜)がO非含有膜としてのSiN膜であり、第2膜(エッチング非対象膜)がO含有膜としてのSiO膜である場合について説明する。
【0108】
(ステップC)
上述の態様の処理シーケンスと同様に、ウエハチャージ、ボートロード、圧力調整、および温度調整を行った後、ステップCを行う。ステップCでは、図5(a)に示すような、表面に第1膜と第2膜とを有するウエハ200に対して改質剤を供給することにより、第2膜の表面に第2層としてのインヒビター層を形成する。
【0109】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ改質剤を流す。改質剤は、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して改質剤が供給される(改質剤供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0110】
後述する処理条件下でウエハ200に対して、改質剤を供給することにより、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部であるインヒビター分子をウエハ200の第2膜の表面に選択的に化学吸着させて、図5(b)に示すように、第2膜の表面に選択的に第2層(インヒビター層)を形成することができる。インヒビター層は、第1層が形成される反応を阻害する作用を生じさせることが可能であることから、反応阻害層(吸着阻害層)であるともいえる。本ステップで形成されるインヒビター層は、改質剤由来の残基である、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を含む。インヒビター層は、ステップAにおいて、第2膜の表面への原料(処理剤)の吸着を防ぎ、第2膜の表面上に第1層が形成されることを阻害(抑制)する。また、インヒビター層は、第2膜の表面を被覆している層であり、ステップBにおいて、第2膜のエッチングを阻害(抑制)することもできる。このように、第2層は、エッチング阻害作用を生じさせることが可能であることから、エッチング阻害層であるともいえる。
【0111】
改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部、すなわち、インヒビター分子としては、例えば、トリメチルシリル基(-SiMe)やトリエチルシリル基(-SiEt)等のトリアルキルシリル基を例示することができる。トリアルキルシリル基は、炭化水素基の1種であるアルキル基を含む。インヒビター分子がこれらを含む場合、トリメチルシリル基やトリエチルシリル基のSiが、ウエハ200の第2膜の表面における吸着サイトに吸着する。第2膜がSiO膜である場合、第2膜の表面は吸着サイトとしてOH終端(OH基)を含み、トリメチルシリル基やトリエチルシリル基のSiは、第2膜の表面におけるOH終端(OH基)のOと結合し、第2膜の表面が、メチル基やエチル基などのアルキル基により終端されることとなる。第2膜の表面を終端した、メチル基(トリメチルシリル基)やエチル基(トリエチルシリル基)等のアルキル基(アルキルシリル基)に代表される炭化水素基は、インヒビター層を構成し、ステップAにおいて、第2膜の表面への原料(処理剤)の吸着を阻害(抑制)し、第2膜の表面での第1層が形成される反応の進行を阻害(抑制)することができる。また、第2膜の表面を終端した炭化水素基は、ステップBにおいて、第2膜のエッチングを阻害(抑制)することもできる。
【0112】
なお、第2膜の表面における吸着サイトに吸着したインヒビター分子がトリメチルシリル基(-SiMe)やトリエチルシリル基(-SiEt)等のトリアルキルシリル基である場合、インヒビター分子はアルキル基(アルキルシリル基)を含み、インヒビター層はアルキル基(アルキルシリル基)終端を含むこととなる。インヒビター層がアルキル基(アルキルシリル基)終端などの炭化水素基終端を含む場合、高い反応阻害効果(吸着阻害効果)が得られることとなる。なお、アルキル基(アルキルシリル基)終端、炭化水素基終端を、それぞれ、アルキル(アルキルシリル)終端、炭化水素終端とも称する。
【0113】
なお、本ステップでは、ウエハ200の第1膜の表面の一部に、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部が吸着することもあるが、その吸着量は僅かであり、ウエハ200の第2膜の表面への吸着量の方が圧倒的に多くなる。このような選択的(優先的)な吸着が可能となるのは、本ステップにおける処理条件を処理室201内において改質剤が気相分解しない条件としているためである。また、SiO膜である第2膜の表面が、その全域にわたりOH終端されているのに対し、SiN膜である第1膜の表面の多くの領域がOH終端されていないためである。本ステップでは、処理室201内において改質剤が気相分解しないことから、第1膜の表面および第2膜の表面には、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部が多重堆積することはなく、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部は、第1膜の表面および第2膜の表面のうち、第2膜の表面に選択的に吸着し、これにより第2膜の表面が、選択的に、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部により終端されることとなる。
【0114】
ステップCにて改質剤を供給する際における処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~500℃、好ましくは室温~250℃
処理圧力:5~2000Pa、好ましくは10~1000Pa
改質剤供給流量:0.001~3slm、好ましくは0.001~0.5slm
改質剤供給時間 :1秒~120分、好ましくは30秒~60分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
が例示される。
【0115】
なお、ステップCにおける処理温度を、ステップAおける処理温度およびステップBにおける処理温度と同様とすることもできる。その場合、処理温度の変更に要する時間を削減することができ、基板処理のスループットを向上させることが可能となる。
【0116】
ウエハ200の第2膜の表面に選択的にインヒビター層を形成した後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への改質剤の供給を停止する。そして、ステップA1におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、本ステップにてパージを行う際における処理温度は、改質剤を供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0117】
改質剤としては、例えば、Siにアミノ基が直接結合した構造を有する化合物や、Siにアミノ基とアルキル基とが直接結合した構造を有する化合物を用いることができる。これらの化合物におけるアミノ基としては、メチル基やエチル基などのアルキル基で置換された置換アミノ基であることが好ましい。
【0118】
改質剤としては、例えば、(ジメチルアミノ)トリメチルシラン((CHNSi(CH)、(ジエチルアミノ)トリエチルシラン((CNSi(C)、(ジメチルアミノ)トリエチルシラン((CHNSi(C)、(ジエチルアミノ)トリメチルシラン((CNSi(CH)、(ジプロピルアミノ)トリメチルシラン((CNSi(CH)、(ジブチルアミノ)トリメチルシラン((CNSi(CH)、(トリメチルシリル)アミン((CHSiNH)、(トリエチルシリル)アミン((CSiNH)、(ジメチルアミノ)シラン((CHNSiH)、(ジエチルアミノ)シラン((CNSiH)、(ジプロピルアミノ)シラン((CNSiH)、(ジブチルアミノ)シラン((CNSiH)等を用いることができる。改質剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0119】
また、改質剤としては、例えば、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン([(CHN]Si(CH)、ビス(ジエチルアミノ)ジエチルシラン([(CN]Si(C)、ビス(ジメチルアミノ)ジエチルシラン([(CHN]Si(C)、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン([(CN]Si(CH)、ビス(ジメチルアミノ)シラン([(CHN]SiH)、ビス(ジエチルアミノ)シラン([(CN]SiH)、ビス(ジメチルアミノジメチルシリル)エタン([(CHN(CHSi])、ビス(ジプロピルアミノ)シラン([(CN]SiH)、ビス(ジブチルアミノ)シラン([(CN]SiH)、ビス(ジプロピルアミノ)ジメチルシラン([(CN]Si(CH)、ビス(ジプロピルアミノ)ジエチルシラン([(CN]Si(C)、(ジメチルシリル)ジアミン((CHSi(NH)、(ジエチルシリル)ジアミン((CSi(NH、(ジプロピルシリル)ジアミン((CSi(NH)、ビス(ジメチルアミノジメチルシリル)メタン([(CHN(CHSi]CH)、ビス(ジメチルアミノ)テトラメチルジシラン([(CHN](CHSi)等を用いることもできる。改質剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0120】
ステップCが終了した後、上述の態様の処理シーケンスと同様に、ステップAとステップBとを含むサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)実施する。なお、ステップAでは、図5(c)に示すように、第2膜の表面に第2層(インヒビター層)が形成されたウエハ200に対して、処理剤を供給することで、第1膜の表面上に第1層が形成される。また、ステップBでは、図5(d)に示すように、ウエハ200に対してエッチング剤が供給されると、図5(e)に示すように、第1層から物質Xが生じ、第1層から生じた物質Xとウエハ200に対して供給されたエッチング剤との混合物を用いて、第1層と第1膜の少なくとも一部とがエッチングされる。ステップBが完了することで、図5(f)に示すように、第2層の一部と、第1層と第1膜の少なくとも一部とがエッチングされる。なお、上述の態様と同様、上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。また、上述の態様と同様、上述のサイクルを複数回繰り返すことで、第1膜の全てをエッチングすることもできる。
【0121】
本変形例におけるステップAの処理手順、処理条件は、上述の態様の処理シーケンスにおけるステップAの処理手順、処理条件と同様とすることができる。また、本変形例におけるステップBの処理手順、処理条件は、上述の態様の処理シーケンスにおけるステップBの処理手順、処理条件と同様とすることができる。また、本変形例において、ステップCを行う前に行うウエハチャージ、ボートロード、圧力調整、温度調整等や、ステップBを行った後に行うアフターパージ、不活性ガス置換、大気圧復帰、ボートアンロード、ウエハディスチャージ等は、上述の態様の処理シーケンスと同様に行うことができる。
【0122】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、第1膜および第2膜のうち、第1膜の表面上に選択的に、第1層を形成することができ、第1膜および第2膜のうち、第1膜を選択的にエッチングすることが可能となる。
【0123】
(変形例2)
変形例1におけるステップCを、ステップAとステップBとを含むサイクル内で行うようにしてもよい。すなわち、ステップAとステップBとを含むサイクルが、ステップCをさらに含むようにしてもよい。
【0124】
例えば、ステップAとステップBとを含むサイクルを所定回数行う際、ステップCを毎サイクル行うようにしてもよい。この場合、以下に示す処理シーケンスのように、ステップC、ステップA、ステップBを含むサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うこととなる。
【0125】
[改質剤→(原料+触媒→反応体+触媒)×m→エッチング剤]×n
[改質剤→(原料+触媒→反応体)×m→エッチング剤]×n
[改質剤→(原料→反応体+触媒)×m→エッチング剤]×n
【0126】
また、例えば、以下に示す処理シーケンスのように、ステップCを1回行った後に、ステップAとステップBとを含むサイクルを所定回数(p回、pは2以上の整数)行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うようにしてもよい。この場合、ステップCは、ステップAとステップBとを含むサイクルを所定回数(p回)行う度に行われる。
[改質剤→{(原料+触媒→反応体+触媒)×m→エッチング剤}×p]×n
[改質剤→{(原料+触媒→反応体)×m→エッチング剤}×p]×n
[改質剤→{(原料→反応体+触媒)×m→エッチング剤}×p]×n
【0127】
本変形例においても、上述の態様および上述の変形例1と同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、第2膜の表面に形成した第2層(インヒビター層)を、ステップAとステップBとを所定回数行う度に修復および/または補強することができる。例えば、テップAとステップBとを行うことで、第2層がダメージを受け、その機能が低下する場合であっても、その都度、第2層を修復および/または補強することができる。これにより、第2層による反応阻害作用とエッチング阻害作用とをより高めることが可能となる。結果として、第1膜(エッチング対象膜)をエッチングする際の選択性を高めることが可能となる。
【0128】
(変形例3)
以下に示す処理シーケンスのように、ステップAまたはステップCを行う前に、ウエハ200の表面を洗浄剤により洗浄するステップDをさらに行うようにしてもよい。ステップDを行うことで、例えば、処理前のウエハ200の表面に形成された自然酸化膜を除去することができる。
【0129】
洗浄剤→[(原料+触媒→反応体+触媒)×m→エッチング剤]×n
洗浄剤→[(原料+触媒→反応体)×m→エッチング剤]×n
洗浄剤→[(原料→反応体+触媒)×m→エッチング剤]×n
洗浄剤→[改質剤→(原料+触媒→反応体+触媒)×m→エッチング剤]×n
洗浄剤→[改質剤→(原料+触媒→反応体)×m→エッチング剤]×n
洗浄剤→[改質剤→(原料→反応体+触媒)×m→エッチング剤]×n
洗浄剤→[改質剤→{(原料+触媒→反応体+触媒)×m→エッチング剤}×p]×n
洗浄剤→[改質剤→{(原料+触媒→反応体)×m→エッチング剤}×p]×n
洗浄剤→[改質剤→{(原料→反応体+触媒)×m→エッチング剤}×p]×n
【0130】
洗浄剤は、ガス状物質であってもよく、液体状物質であってもよい。また、洗浄剤は、ミスト状物質等の液体状物質であってもよい。洗浄剤としては、例えば、上述したF含有ガスや、酢酸(CHCOOH)ガス、ギ酸(HCOOH)ガス、ヘキサフルオロアセチルアセトン(C)ガス、水素(H)ガス等を用いることができる。また、洗浄剤としては、酢酸水溶液、ギ酸水溶液、後述する各種洗浄液等を用いることもできる。洗浄剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0131】
例えば、ステップDでは、洗浄剤としてHF水溶液を用い、ウエハ200に対してDHF洗浄を行うようにすることもできる。また例えば、ステップDでは、洗浄剤としてアンモニア水と過酸化水素水と純水を含む洗浄液を用い、ウエハ200に対してSC-1洗浄(APM洗浄)を行うようにすることもできる。また例えば、ステップDでは、洗浄剤として塩酸と過酸化水素水と純水を含む洗浄液を用い、ウエハ200に対してSC-2洗浄(HPM洗浄)を行うようにすることもできる。また例えば、ステップDでは、洗浄剤として硫酸と過酸化水素水を含む洗浄液を用い、ウエハ200に対してSPM洗浄を行うようにすることもできる。
【0132】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、第1膜の表面上への第1層の形成や、第2膜の表面への第2層(インヒビター層)の形成をより適正に行うことが可能となる。
【0133】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0134】
例えば、ウエハ200は、エッチング対象膜である第1膜として、上述のように、SiO膜などのO含有膜およびSiN膜などのO非含有膜のうち少なくともいずれかを有していてもよい。第1膜は、例えば、少なくともSiと、O及びNのうち少なくともいずれか1つと、を含む膜であってもよく、例えば、上述のSiO膜、SiN膜の他、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)等であってもよい。また例えば、ウエハ200は、第1膜として、材質の異なる複数種類の領域を有していてもよい。また例えば、ウエハ200は、第1膜として、その表面に第2層としてのインヒビター層が形成されにくい膜を有していてもよい。本態様においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0135】
また例えば、ウエハ200は、エッチング非対象膜である第2膜として、その表面に第2層としてのインヒビター層が形成されやすい膜を有していてもよい。第2膜は、第1膜よりも、その表面に第2層としてのインヒビター層が形成されやすい膜であることが好ましい。第2膜は、例えば、上述のSiO膜の他、SiOCN膜、SiON膜、SiOC膜、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン炭化膜(SiC膜)、シリコン硼炭窒化膜(SiBCN膜)、シリコン硼窒化膜(SiBN膜)、シリコン硼炭化膜(SiBC膜)、シリコン膜(Si膜)、ゲルマニウム膜(Ge膜)、シリコンゲルマニウム膜(SiGe膜)等の半導体元素を含む膜や、チタン窒化膜(TiN膜)、タングステン膜(W膜)、モリブデン膜(Mo膜)、ルテニウム膜(Ru膜)、コバルト膜(Co膜)、ニッケル膜(Ni膜)、銅膜(Cu膜)等の金属元素を含む膜や、アモルファスカーボン膜(a-C膜)の他、単結晶Si(Siウエハ)等であってもよい。また例えば、ウエハ200は、第2膜として、材質の異なる複数種類の領域を有していてもよい。本態様においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0136】
また例えば、ウエハ200が有する第1膜(エッチング対象膜)と第2膜(エッチング非対象膜)との組み合わせとしては、変形例1で示した、第1膜がSiN膜であり、第2膜がSiO膜である組み合わせの他、第1膜がSiO膜であり、第2膜がSi膜である組み合わせや、第1膜がSiN膜であり、第2膜がSi膜である組み合わせ等であってもよい。また、第1膜と第2膜との組み合わせとしては、第1膜として例示した各種膜のうち少なくともいずれか1つと、第2膜として例示した各種膜のうち少なくともいずれか1つと、の組み合わせであってもよい。この場合において、第2膜が第1膜よりも、その表面に第2層が形成されやすいことが好ましい。本態様においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0137】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜に対するエッチング処理を、再現性よく行うことができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0138】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意するようにしてもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールするようにしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0139】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いてエッチング処理を行う例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いてエッチング処理を行う場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いてエッチング処理を行う例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いてエッチング処理を行う場合にも、好適に適用することができる。
【0140】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0141】
上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例
【0142】
<実施例1~3>
表面に第1膜としてCVD法により形成されたSiN膜を有するウエハに対し、上述の態様のステップAと同様の処理を行い、第1膜の表面上に、第1層としてHOを含むSiO層を形成し、実施例1~3の評価サンプル1~3をそれぞれ作製した。評価サンプル1~3を作製する際のステップAにおける処理条件は、上述のステップAにおける処理条件の範囲内の所定の条件とした。ただし、評価サンプル1~3を作製する際のステップAにおける処理時間(サイクル数)をそれぞれ異ならせることで、評価サンプル1~3における第1層(HOを含むSiO層)の厚さをそれぞれ異ならせた。具体的には、評価サンプル1~3を作製する際のステップAにおける処理時間(サイクル数)を、評価サンプル1,2,3の順に長く(多く)することで、評価サンプル1,2,3における第1層の厚さを、それぞれ、1~3nm,4~6nm,8~10nmとした。なお、いずれの評価サンプルを作製する際も、第1層を形成する際の処理温度を、CVD法によりSiN膜を形成する際の処理温度よりも低くした。また、いずれの評価サンプルを作製する際も、原料として上述の態様で例示したクロロシラン系ガスを用い、H及びOを含む反応体として上述の態様で例示したH及びO含有ガスを用い、触媒として上述の態様で例示した環状アミン系ガスを用いた。
【0143】
<実施例4~6>
表面に第1膜として熱酸化法により形成されたSiO膜を有するウエハに対し、上述の態様のステップAと同様の処理を行い、第1膜の表面上に、第1層としてHOを含むSiO層を形成し、実施例4~6の評価サンプル4~6をそれぞれ作製した。評価サンプル4~6を作製する際のステップAにおける処理条件は、上述のステップAにおける処理条件の範囲内の所定の条件とした。ただし、評価サンプル4~6を作製する際のステップAにおける処理時間(サイクル数)をそれぞれ異ならせることで、評価サンプル4~6における第1層(HOを含むSiO層)の厚さをそれぞれ異ならせた。具体的には、評価サンプル4~6を作製する際のステップAにおける処理時間(サイクル数)を、評価サンプル4,5,6の順に長く(多く)することで、評価サンプル4,5,6における第1層の厚さを、それぞれ、1~3nm,4~6nm,8~10nmとした。なお、いずれの評価サンプルを作製する際も、第1層を形成する際の処理温度を、熱酸化法によりSiO膜を形成する際の処理温度よりも低くした。また、いずれの評価サンプルを作製する際も、原料、H及びOを含む反応体、および触媒は、評価サンプル1~3を作製する際のそれらと同じとした。
【0144】
作製した各評価サンプルに対し、上述の態様のステップBと同様の処理を行うことで、第1膜に対してエッチングを行い、第1膜(SiN膜またはSiO膜)のエッチング量を求めた。なお、ステップBにおける処理条件は、上述の態様のステップBにおける処理条件の範囲内の所定の条件とした。なお、エッチングを行う際、エッチング剤として上述の態様で例示したH及びF含有ガスを用いた。
【0145】
結果を、評価サンプル1~3については図6に、評価サンプル4~6については図7に示す。図6および図7において、横軸はエッチング剤の供給時間(min)を示しており、縦軸はSiN膜またはSiO膜のエッチング量(Å)を示している。
【0146】
図6から明らかなように、評価サンプル1~3のエッチング量は、エッチング剤の供給時間が長くなるにつれ増加していくが、60min以降ではほとんど増加しないことが分かる。なお、SiN膜の表面上に第1層を形成していない比較用評価サンプルに対し、上述の各評価サンプルに対して行った処理と同様の処理を行ったところ、SiN膜を殆どエッチングできないことを確認した。すなわち、この比較用評価サンプルに比べ、評価サンプル1~3では、第1膜のエッチングを促進させることができることを確認することができた。
【0147】
図7から明らかなように、評価サンプル4~6のエッチング量は、エッチング剤の供給時間が長くなるにつれて増加していくこと分かる。なお、SiO膜の表面上に第1層を形成していない比較用評価サンプルに対し、上述の各評価サンプルに対して行った処理と同様の処理を行ったところ、SiO膜を殆どエッチングできないことを確認した。すなわち、この比較用評価サンプルに比べ、評価サンプル4~6では、第1膜のエッチングを促進させることができることを確認することができた。
【0148】
また、評価サンプル1~3の場合には、エッチング剤の供給時間を長くしても、あるエッチング量以上はエッチングされないことが分かる。これにより、第1膜がSiN膜のようにO非含有膜を含む場合、エッチング反応を飽和させることができることが確認された。一方で、評価サンプル4~6の場合、評価サンプル1~3の場合とは異なり、エッチング剤の供給時間を長くすることで、エッチング量を増加させることができることが分かる。これにより、第1膜がSiO膜のようにO含有膜を含む場合、エッチング反応を不飽和とすることができることが確認された。
【0149】
また、評価サンプル1~6のいずれの場合も、第1層の厚さを1~3nm以上とすれば、第1膜のエッチングを促進させることができることが分かる。また、評価サンプル1~6のいずれの場合も、第1層の厚みが厚い程、第1膜のエッチング量が多くなることが分かる。これにより、ステップAにおいて形成する第1層の厚さにより、ステップBにおける第1膜のエッチング量が制御されることも確認された。
【符号の説明】
【0150】
200 ウエハ(基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7