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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】積層体の製造方法及び積層体
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/54 20120101AFI20240927BHJP
   G03F 1/82 20120101ALI20240927BHJP
【FI】
G03F1/54
G03F1/82
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022186958
(22)【出願日】2022-11-22
(65)【公開番号】P2023091743
(43)【公開日】2023-06-30
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0182720
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505232852
【氏名又は名称】エスケー エンパルス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK enpulse Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1043,Gyeonggi-daero,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do 17784, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、テワン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ゴンゴン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、スクヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、スヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ソンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンユン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ミンギョ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ハヒョン
(72)【発明者】
【氏名】シン、インキュン
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/086744(WO,A1)
【文献】特開2002-336804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
H01L 21/304
B08B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光膜が配置された処理前の積層体である処理対象を設ける準備ステップと、前記処理対象に紫外線及び炭酸水を加える第1洗浄を適用して、洗浄された積層体を設ける炭酸水洗浄ステップとを含み、
前記遮光膜は、遷移金属と、酸素、窒素、または炭素を含み、
前記積層体は、イオンクロマトグラフィー方法で測定した残留イオンの含量を有し、前記残留イオンは硫黄系イオン及び硝酸系イオンを含み、
前記硫黄系イオンの含量は、0ng/cm超0.1ng/cm以下であり、
前記硝酸系イオンの含量は、0ng/cm超0.1ng/cm以下である、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記遮光膜は、スパッタリング方式を適用する遮光膜の製造ステップで製造されたものであり、
前記スパッタリング方式は、遷移金属を含むターゲットを配置し、酸素原子含有気体、窒素原子含有気体、または炭素原子含有気体を含む反応性気体の存在下でスパッタリングを行う方式である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記炭酸水洗浄ステップにおいて、紫外線は、190nm~290nmに属するいずれか1つの波長が1mW/cm~11mW/cmの光量で照射される、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記炭酸水洗浄ステップにおいて、炭酸水は、電気伝導度が1μS/cm以上10μS/cm以下であるものである、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記炭酸水洗浄ステップの前に紫外線洗浄ステップがさらに含まれ、
前記紫外線洗浄ステップは、前記処理対象に、波長が120nm以上190nm未満である紫外線照射処理を行うステップである、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記炭酸水洗浄ステップにおいて、前記炭酸水はメガソニックと共に適用される、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記炭酸水洗浄ステップは第2洗浄をさらに含み、
前記第2洗浄は、前記第1洗浄が行われた処理対象に炭酸水と水素水を共に洗浄液として適用する過程である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
具現例は、光学的用途に適用される積層体の製造方法及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造過程において光学積層体が活用される。例えば、半導体用フォトマスクの場合、約3倍~約4倍の大きさに拡大されて半導体の製造過程の露光に活用される。半導体の配線が微細化かつ複雑化されるに伴い、さらに高いレベルのラインパターンの精度を要求したり、ほぼ完壁な粒子性異物の除去を要求するなど、光学積層体に要求される性能がますます難しくなっている。
【0003】
ブランクマスクは、光透過性基板、遮光膜などの薄膜を含むことができる。光透過性基板は、光透過特性を有する素材を形状加工した後、研磨過程及び洗浄過程などを経て製造することができる。
【0004】
ウエハ上に現像される回路パターンが微細化されるに伴い、ブランクマスクの製造過程で発生し得る欠陥をさらに効果的に抑制することが求められる。ブランクマスクの表面(金属含有薄膜など)に残留する特定のイオンは、露光光などのエネルギーの影響を受けるか、または他の化学物質などに露出されることによって、粒子性異物に成長し得る。また、前記イオンは、一定の条件が満たされると、ヘイズを高め、露光時に意図しない歪んだパターンを転写することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国登録特許第10-0316374号
【文献】韓国登録特許第10-0745065号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
具現例の目的は、積層体の外面に存在するパーティクルなどを除去し、露光過程で意図しないヘイズが発生することを効果的に抑制できる積層体の製造方法、積層体などを提供することである。
【0007】
具現例の他の目的は、欠陥が減少したブランクマスク、その製造方法などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、具現例の積層体の製造方法は、遮光膜が配置された処理前の積層体である処理対象を設ける準備ステップと;前記処理対象に紫外線及び炭酸水を加える第1洗浄を適用して、洗浄された積層体を設ける炭酸水洗浄ステップと;を含む。
【0009】
前記遮光膜は、遷移金属と、酸素、窒素、または炭素を含む。
【0010】
前記積層体は、イオンクロマトグラフィー方法で測定した残留イオンの含量を有し、前記残留イオンは硫黄系イオン及び硝酸系イオンを含み、前記硫黄系イオンの含量は0ng/cm超0.1ng/cm以下であり、前記硝酸系イオンの含量は0ng/cm超0.1ng/cm以下であってもよい。
【0011】
前記遮光膜は、スパッタリング方式を適用する遮光膜の製造ステップで製造されたものであってもよい。
【0012】
前記スパッタリング方式は、遷移金属を含むターゲットを配置し、酸素原子含有気体、窒素原子含有気体、または炭素原子含有気体を含む反応性気体の存在下でスパッタリングを行う方式である。
【0013】
前記炭酸水洗浄ステップにおいて、紫外線は、190nm~290nmに属するいずれか1つの波長が1mW/cm~11mW/cmの光量で照射されてもよい。
【0014】
前記炭酸水洗浄ステップにおいて、炭酸水は、電気伝導度が1μS/cm以上10μS/cm以下であってもよい。
【0015】
前記炭酸水洗浄ステップの前に紫外線洗浄ステップがさらに含まれてもよい。
【0016】
前記紫外線洗浄ステップは、前記処理対象に、波長が120nm以上190nm未満である紫外線照射処理を行うステップ;である。
【0017】
前記炭酸水洗浄ステップにおいて、前記炭酸水はメガソニックと共に適用されてもよい。
【0018】
前記炭酸水洗浄ステップは第2洗浄をさらに含むことができる。
【0019】
前記第2洗浄は、前記処理対象に炭酸水と水素水を共に洗浄液として適用する過程である。
【0020】
前記積層体は、前記準備ステップの処理前の積層体と、前記炭酸水洗浄ステップを経た積層体との光学密度の変化が0%以上0.1%以下であってもよい。
【0021】
前記積層体は、前記準備ステップの処理前の積層体と、前記炭酸水洗浄ステップを経た積層体との厚さの変化が0オングストローム以上5オングストローム以下であってもよい。
【0022】
上記の目的を達成するために、他の具現例である積層体は、遮光膜が配置された積層体であり、前記遮光膜は、遷移金属と、酸素及び窒素のうちの少なくともいずれか1つとを含み、193nmの波長の光に対する前記遮光膜での反射率が35%以下であり、前記積層体は、イオンクロマトグラフィー方法で測定した残留イオンの含量を有し、前記残留イオンは硫黄系イオン及び硝酸系イオンを含み、前記硫黄系イオンの含量は0ng/cm超0.1ng/cm以下であり、前記硝酸系イオンの含量は0ng/cm超0.1ng/cm以下である。
【0023】
前記残留イオンはハロゲンイオンを含むことができ、前記ハロゲンイオンの含量は0ng/cm超0.1ng/cm以下であってもよい。
【0024】
前記遷移金属はクロムを含み、前記ハロゲンイオンは、フッ素イオン又は塩素イオンを含むことができる。
【0025】
前記残留イオンはアンモニアイオンを含むことができ、前記アンモニアイオンの含量は0ng/cm超1.0ng/cm以下であってもよい。
【0026】
前記残留イオンは、前記硫黄系イオン、前記硝酸系イオン、ハロゲンイオン及びアンモニアイオンであるイオン性不純物を含むことができ、前記イオン性不純物の含量は0ng/cm超1.5ng/cm以下であってもよい。
【0027】
前記残留イオンは、ナトリウムイオン、リン酸イオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンを含むことができ、前記ナトリウムイオンの含量、前記リン酸イオンの含量、前記カリウムイオンの含量、前記マグネシウムイオンの含量及び前記カルシウムイオンの含量の和は0ng/cm以上0.01ng/cm以下であってもよい。
【0028】
前記積層体は、フォトマスクブランクまたはフォトマスクであってもよい。
【発明の効果】
【0029】
具現例の積層体の製造方法、積層体などは、積層体の特性の変化を最小化しながら積層体の外面や表面上に存在するパーティクルなどを除去し、露光過程で意図しないヘイズが発生することを効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、具現例の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、具現例は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0031】
本明細書で使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質の許容誤差が提示されるとき、その数値で又はその数値に近接した意味で使用され、具現例の理解を助けるために正確又は絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0032】
本明細書全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群から選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0033】
本明細書全体において、「A及び/又はB」の記載は、「A、B、または、A及びB」を意味する。
【0034】
本明細書全体において、「第1」、「第2」又は「A」、「B」のような用語は、特に説明がない限り、同一の用語を互いに区別するために使用される。
【0035】
本明細書において、A上にBが位置するという意味は、A上にBが位置したり、それらの間に別の層が位置しながらA上にBが位置したりすることができることを意味し、Aの表面に当接してBが位置することに限定されて解釈されない。
【0036】
本明細書において、単数の表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数又は複数を含む意味で解釈される。
【0037】
本明細書において、特に言及なしに表示されるppmは重量を基準とする。
【0038】
本明細書において、室温は、約20℃~約25℃のいずれか1つの温度である。
【0039】
本明細書において、湿度は、相対湿度を意味する。
【0040】
本明細書において、光の強度は、光源の強度を意味する。
【0041】
以下、具現例をより詳細に説明する。
【0042】
積層体の製造方法
前記目的を達成するために、具現例の一実施例に係る積層体の製造方法は、準備ステップ及び炭酸水洗浄ステップを含む。
【0043】
前記積層体の製造方法は、遮光膜の製造ステップ、準備ステップ及び炭酸水洗浄ステップを含むことができる。
【0044】
前記積層体の製造方法は、準備ステップ、紫外線洗浄ステップ及び炭酸水洗浄ステップを含むことができる。
【0045】
前記積層体の製造方法は、遮光膜の製造ステップ、準備ステップ、紫外線洗浄ステップ及び炭酸水洗浄ステップを含むことができる。
【0046】
前記積層体の製造方法は、準備ステップ、炭酸水洗浄ステップ及びリンスステップを含むことができる。
【0047】
前記積層体の製造方法は、遮光膜の製造ステップ、準備ステップ、炭酸水洗浄ステップ及びリンスステップを含むことができる。
【0048】
前記積層体の製造方法は、準備ステップ、紫外線洗浄ステップ、炭酸水洗浄ステップ及びリンスステップを含むことができる。
【0049】
前記積層体の製造方法は、遮光膜の製造ステップ、準備ステップ、紫外線洗浄ステップ、炭酸水洗浄ステップ及びリンスステップを含むことができる。
【0050】
準備ステップは、処理対象を設けるステップである。処理対象は、後述する遮光膜が配置された処理前の積層体が適用される。
【0051】
前記準備ステップは、チャンバ内に処理対象を配置して固定するか、または多数の処理対象が並んで配置された装備をチャンバ内に配置する過程が含まれ得る。
【0052】
紫外線洗浄ステップは、前記処理対象に、波長が120nm以上190nm未満である紫外線照射処理を行うステップである。前記紫外線の波長は、138nm以上185nm未満であってもよく、または154nm以上178nm未満であってもよい。
【0053】
紫外線の照射は、光源によって行われ得、光源は、1つまたは多数個が配置されてもよい。この場合、洗浄対象の基板の表面に全体的に均一な強度の光が照射され得る。
【0054】
前記紫外線洗浄ステップは、20mW/cm以上55mW/cm以下の光量で行われてもよい。前記紫外線洗浄ステップは、30mW/cm以上50mW/cm以下の光量で行われてもよい。前記紫外線洗浄ステップは、35mW/cm以上45mW/cm以下の光量で行われてもよい。
【0055】
紫外線洗浄ステップを通じて、後続ステップを行う前に、約100nm~約190nmの領域帯の波長を強く吸収する化合物を効率的に除去することができる。具体的に、前記紫外線洗浄ステップは、有機物を含むパーティクルなどに光エネルギーを伝達して、前記有機物内の化学的結合が切断され得るように誘導し、有機物を含むパーティクルの分解及び除去を促進することができ、これを通じて、全体的に製造方法の信頼性をさらに向上させることができる。
【0056】
炭酸水洗浄ステップは、処理対象に紫外線及び炭酸水を加える炭酸水洗浄過程を適用して、洗浄された積層体を設けるステップである。
【0057】
炭酸水洗浄ステップは、以下で説明する第1洗浄、第2洗浄及び第3洗浄が選択的に適用されてもよい。
【0058】
第1洗浄は、紫外線と炭酸水が共に適用される過程である。
【0059】
前記炭酸水洗浄ステップにおいて、紫外線は、190nm~290nmに属するいずれか1つの波長が適用されてもよい。前記紫外線は、230nm~280nmに属するいずれか1つの波長が適用されてもよい。前記炭酸水洗浄ステップにおいて、紫外線は、1mW/cm以上11mW/cm以下の光量で照射されてもよい。前記炭酸水洗浄ステップにおいて、紫外線は、3mW/cm以上10mW/cm以下の光量で照射されてもよい。前記炭酸水洗浄ステップにおいて、紫外線は、4mW/cm以上9mW/cm以下の光量で照射されてもよい。この場合、炭酸水と共に適用して、基板の損傷を最小化すると共に、効率的な洗浄が可能である。
【0060】
前記炭酸水洗浄ステップにおいて、炭酸水は、電気伝導度が1μS/cm以上10μS/cm以下である炭酸水を適用してもよい。前記炭酸水は、電気伝導度が2μS/cm以上8μS/cm以下であってもよい。前記炭酸水は、電気伝導度が3μS/cm以上7μS/cm以下であってもよい。前記電気伝導度を有する炭酸水を適用すれば、積層体の表面の損傷を最小化すると共に、優れた洗浄効果を得ることができる。
【0061】
前記炭酸水洗浄ステップにおいて、炭酸水は、前記積層体の面積504cm当たり1,500~4,000ml/minの速度で供給されてもよい。また、前記炭酸水は、前記積層体の面積504cm当たり2,000~3,000ml/minの速度で供給されてもよい。前記炭酸水は、一つのノズルで供給されてもよく、または2つ以上のノズルで供給されてもよい。
【0062】
紫外線と炭酸水を共に適用すれば、優れた洗浄結果をもたらしながらも、積層体の表面の損失を減少させることができ、工程の効率性も同時に図ることができる。
【0063】
洗浄液である前記炭酸水と共にメガソニックが適用され得る。メガソニックは、洗浄液がノズルを介して噴射されるとき、ノズルに装着されたメガソニック発生装置を通じて適用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0064】
前記積層体の前面(遮光膜が露出された面)を洗浄する場合には、前記メガソニックは、0.5MHz~1.3MHz、及び5W~12Wとして適用され得る。また、前記積層体の後面(クォーツが露出された面)を洗浄する場合には、前記メガソニックは、1MHz~1.8MHz、及び20W~45Wとして適用され得る。メガソニックを共に適用する場合、より効率的な洗浄の実施が可能である。
【0065】
第2洗浄は、炭酸水と水素水が共に適用される過程である。前記第1洗浄後に第2洗浄が行われ得る。洗浄液である炭酸水(DICO)と水素水(DIH)を共に適用して洗浄する過程を意味し、炭酸水と水素水は1:0.1~10の体積比、または1:0.5~2の体積比で適用されてもよい。このとき、適用される炭酸水についての具体的な説明は上述した通りであるので、その記載を省略する。
【0066】
水素水は、水素含量が0.7ppm~3ppmであるものが適用されてもよく、または0.9ppm~2ppmであるものが適用されてもよい。
【0067】
第2洗浄でもメガソニックは適用され得、その具体的な内容は上述した通りである。
【0068】
第3洗浄は、水素水で表面を洗浄する過程である。このとき、水素水の濃度、メガソニックの適用有無及びその具体的な条件などは、上述した通りである。前記第3洗浄は、第1洗浄または第2洗浄と共に適用されることが良い。
【0069】
リンスステップは、炭酸水及び/又は水素水で前記積層体をすすぐステップである。
【0070】
前記リンスステップにおいて、炭酸水は、前記積層体の面積504cm当たり500~2,000ml/minの速度で前記積層体の後面(クォーツが表面に露出された面、遮光膜から遠い面)に供給され得る。
【0071】
前記リンスステップにおいて、炭酸水は、電気伝導度が1μS/cm以上10μS/cm以下である炭酸水を適用することができる。前記炭酸水は、電気伝導度が2μS/cm以上8μS/cm以下であってもよい。前記炭酸水は、電気伝導度が3μS/cm以上7μS/cm以下であってもよい。前記炭酸水は、電気伝導度で測定した濃度が炭酸水洗浄ステップでの濃度と同じものが適用されてもよく、または異なる濃度のものが適用されてもよい。
【0072】
前記リンスステップは、オゾン水が適用され得る。前記オゾン水は、積層体の後面の処理にのみ適用され、前面(遮光膜が表面に露出された面)の処理に実質的に適用されない。これを通じて、洗浄による積層体の光学的特性の変化をより効率的に制御することができる。
【0073】
前記オゾン水は、オゾンの濃度が40~120ppm(重量基準)であってもよい。前記オゾン水は、オゾンの濃度が50~110ppm(重量基準)であってもよく、または80~105ppm(重量基準)であってもよい。前記オゾン水は、MKS社のオゾンジェネレータを用いて製造され得る。
【0074】
前記オゾン水は、前記積層体の面積504cm当たり300~1,000ml/minの速度で前記積層体の後面(クォーツが表面に露出された面、遮光膜から遠い面)に供給され得る。
【0075】
前記積層体の製造方法は、前記準備ステップから前記リンスステップの間に遮光膜に別途のオゾン水を適用しない。これを通じて、遮光膜の表面層の化学的な変化や損失を最小化することができる。
【0076】
上述した炭酸水と水素水にはオゾンの含量が実質的にない。炭酸水及び/又は水素水にオゾンが実質的に含まれていないという意味は、オゾン水として機能できない程度の微量のオゾンが含まれた場合を含み、例示的にオゾンの濃度が10ppm以下であってもよい。
【0077】
前記炭酸水、または前記炭酸水と前記水素水を適用する場合、オゾンを原因とする遮光膜の損失を実質的に抑制することができる。また、洗浄などの過程で発生し得る遮光膜の物性変化を最小化することができる。
【0078】
遮光膜は、遷移金属Mと酸素Oとの酸化膜の形態によって耐久性が異なって示されるものと考えられる。具体的には、酸化膜がMの形態である場合がより一層安定したものと考えられる。しかし、M酸化膜は、オゾンと会うと、その一部がMOの形態に変化し得る。MOは、遮光膜自体の表面損失や遮光膜全体の物性変化をもたらす原因になることもある。これは、M酸化膜は、洗浄時に容易に損傷又は脱落しないが、MO酸化膜は、相対的に洗浄時に容易に損傷又は脱落し得るためであると考えられる。
【0079】
具現例の炭酸水洗浄ステップなどを適用すれば、遮光膜の損失や物性変化を最小化すると共に、微量の異物や残留イオンの検出が最小化された積層体を提供することができる。
【0080】
表面の酸化物の形態、洗浄後に積層体から確認される残留イオンの程度などの積層体自体についての具体的な説明は、後で詳細に説明するので、その記載を省略する。
【0081】
積層体は、支持体上に配置された遮光膜を含むもので、スパッタリング方式を適用する遮光膜の製造ステップで製造され得る。
【0082】
支持体についての具体的な説明は、後述する積層体についての説明と重複するので、詳細な記載を省略する。
【0083】
遮光膜は、スパッタリング方式により製造され得る。
【0084】
スパッタリング方式は、遷移金属を含むターゲットを配置し、酸素原子含有気体、窒素原子含有気体、または炭素原子含有気体を含む反応性気体含有雰囲気でスパッタリングが行われる方式である。前記雰囲気は、反応性気体と不活性気体が共に含まれたものであってもよい。
【0085】
前記ターゲットは、遷移金属を含有する一つのターゲットを適用してもよい。
【0086】
前記ターゲットは、遷移金属を含有する一つのターゲットを含めて2以上のターゲットが共に適用されてもよい。
【0087】
遷移金属を含有するターゲットは遷移金属を90at%以上含んでもよい。遷移金属を含有するターゲットは遷移金属を95at%以上含んでもよい。遷移金属を含有するターゲットは遷移金属を99at%含んでもよい。
【0088】
遷移金属を含むターゲットは、遮光膜に含まれる遷移金属からなるターゲットが適用され得る。このとき、遷移金属からなるということは、遷移金属1種からなるか、または2種以上が混在するように設けられたものであってもよい。ここで、遷移金属からなるということは、不可避な不純物を有する場合を含み、厳格な意味で遷移金属のみからなるものに限定されて解釈されない。
【0089】
遷移金属は、Cr、Ta、Ti及びHfのうちの少なくともいずれか1つを含むことができる。遷移金属はCrを含むことができる。
【0090】
前記反応性気体は、前記遷移金属と共に反応してスパッタリング膜を形成する。例示的に、遷移金属の酸化物、遷移金属の窒化物、遷移金属の炭化物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つが遮光膜として形成されてもよい。前記遮光膜は、全体的に非晶質であってもよく、または部分的に結晶が含まれた非晶質であってもよい。
【0091】
酸素原子含有気体は、酸素、炭素酸化物(CO、COなど)、窒素酸化物(NO、NO、NO、Nなど)などがその例示である。窒素原子含有気体は、窒素、窒素酸化物(NO、NO、NO、Nなど)などがその例示である。炭素原子含有気体は、炭素酸化物(CO、COなど)、メタンなどがその例示である。酸素原子を遮光膜に導入するために、酸素自体よりは酸素含有化合物を適用することが、反応の制御がより容易であるという面で良い。
【0092】
不活性気体は、例示的に、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが適用されてもよいが、これに限定されない。
【0093】
前記スパッタリングは、i)チャンバ内にターゲットと支持体を配置し、チャンバ内に雰囲気ガスを注入し、ii)スパッタリング装備に電力を印加し、iii)ターゲットから離脱した遷移金属粒子が反応性ガスに含まれた酸素、窒素、または炭素と共に支持体上に膜を形成する過程により行われる。
【0094】
前記遷移金属粒子の離脱は、スパッタリングガスによって行われ得る。スパッタリングガスは、プラズマ雰囲気でイオン化してターゲットと衝突するガスを意味する。
【0095】
スパッタリングガスは、アルゴン(Ar)ガスであってもよい。
【0096】
スパッタリングに適用される電源は、DC電源を使用してもよく、またはRF電源を使用してもよい。
【0097】
スパッタリングに適用される電力を1.5kW以上2.5kW以下として適用することができる。
【0098】
前記遮光膜は、熱処理を経たものであってもよい。熱処理過程は、遮光膜の形成過程などで発生した不必要な応力を除去し、遮光膜の平滑度を向上させるなどの物性向上効果をもたらすことができる。
【0099】
前記熱処理が酸素含有雰囲気で行われる場合、前記遮光膜の表面に酸素含量が増加した遮光膜表面層を形成することができる。
【0100】
前記熱処理が窒素含有雰囲気で行われる場合、前記遮光膜の表面に窒素含量が増加した遮光膜表面層を形成することができる。
【0101】
前記熱処理は、約150℃以上約330℃以下で行われてもよい。
【0102】
前記熱処理は、約5分以上約30分以下の時間行われてもよい。
【0103】
このように製造された遮光膜は、積層体において詳細に説明する特徴を有する。
【0104】
前記積層体の製造方法は、積層体の洗浄過程として、準備ステップ、紫外線洗浄ステップ、炭酸水洗浄ステップ及びリンスステップを含むことができる。
【0105】
積層体
処理対象である積層体は遮光膜を含む。
【0106】
処理対象である積層体には遮光膜が配置されている。
【0107】
具体的に、前記積層体は、支持体上に配置された遮光膜を含むことができる。
【0108】
前記遮光膜は、支持体の一面全体を覆っていてもよく、または一部のみを覆っていてもよい。
【0109】
支持体は光透過性基板であってもよい。
【0110】
支持体は、光透過性基板上に直接遮光膜が配置されたものであってもよい。
【0111】
支持体は、光透過性基板上に位相反転膜が配置され、その上に遮光膜が配置されたものであってもよい。
【0112】
支持体は、遮光膜が部分的に配置されたものであってもよい。具体的に、遮光膜は、光透過性基板上に前記光透過性基板と直接当接して配置されてもよい。または、遮光膜は、光透過性基板上に配置された位相反転膜の上に配置されてもよい。また、支持体は、上述した配置が一つの基板上に混在しているものであってもよい。
【0113】
処理対象は、遮光膜を含む積層体であり得る。前記積層体は光学用途を有することができる。処理対象は、フォトマスクブランクまたはフォトマスクであってもよい。
【0114】
光透過性基板はクォーツ基板などであってもよい。このとき、光透過性基板ということは、露光光の透過率が約85%以上約100%以下である基板を意味し、このとき、露光光はArF光であってもよいが、これに限定されない。
【0115】
位相反転膜は、フォトマスクの分野で適用される位相反転膜であれば適用可能である。例示的に、位相反転膜は、モリブデン及び/又は珪素を含むものであってもよく、これらの酸化物又はこれらの窒化物を含むものであってもよい。
【0116】
積層体は、支持体上で位相反転膜を有さない部分(透光部)と、位相反転膜を有する部分(位相反転部)とを共に含むことができる。前記透光部と前記位相反転部は、位相差が約160°~約230°であってもよく、または約168°~約185°であってもよい。
【0117】
遮光膜は、遷移金属と、酸素、窒素、または炭素を含む膜であってもよい。
【0118】
遷移金属は、Cr、Ta、Ti及びHfのうちの少なくともいずれか1つを含むことができる。遷移金属はCrを含むことができる。
【0119】
具体的に、前記遮光膜は、Crと、酸素、窒素、炭素及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つとを含むことができる。
【0120】
具体的に、前記遮光膜は、CrO、CrON、CrOCN及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つを含むことができる。
【0121】
遮光膜は、実質的に2層の構造を有するものであり得る。例示的に、遮光膜の表面強度などを制御する目的で、遮光膜の表面側に酸素又は窒素の含量が高くなるように遮光膜表面層を構成することができる。遮光膜表面層以外の遮光膜は、遮光膜表面層と区別する目的で遮光膜下層と称する。
【0122】
遮光膜表面層は30~80nmの厚さであってもよく、または40~70nmの厚さであってもよい。遮光膜下層と遮光膜表面層は1:0.02~0.25の厚さ比を有してもよく、または1:0.04~0.18の厚さ比を有してもよい。但し、遮光膜表面層と遮光膜下層は、その境界が明らかに観察されないことがある。このような場合、酸素含量が25原子%以下である領域を遮光膜表面層として取り扱うことができる。
【0123】
遮光膜表面層は、上述した炭酸水洗浄ステップなどを適用する場合、洗浄過程前後の物性変化を最小化し、遮光膜表面層の損傷を実質的に抑制することができる。
【0124】
積層体は、前記準備ステップの処理前の積層体と、前記炭酸水洗浄ステップを経た積層体との厚さの変化が約0オングストローム以上約5オングストローム以下であってもよい。前記厚さの変化は、約0オングストローム以上約2オングストローム以下であってもよく、または約0.1オングストローム以上約1.5オングストローム以下であってもよい。厚さの変化は、厚さが薄くなる傾向を示す。これは、上述した酸化反応による一部の金属酸化物の離脱のためであると考えられる。但し、前記厚さの変化は、厚さの増加も発生し得、厚さの減少に限定されて解釈されない。
【0125】
積層体は、前記準備ステップの処理前の積層体と、前記炭酸水洗浄ステップを経た積層体との透過率の変化が約0%以上0.05%以下であってもよい。前記透過率の変化は約0%以上0.03%以下であってもよく、または約0%以上0.008%以下であってもよい。
【0126】
前記積層体は、前記準備ステップの処理前の積層体と、前記炭酸水洗浄ステップを経た積層体との光学密度の変化が約0%以上約0.1%以下であってもよい。前記光学密度の変化は約0%以上約0.05%以下であってもよく、または約0%以上約0.01%以下であってもよい。前記光学密度の変化は、光学密度が小さくなる傾向を示し、これは、前記の厚さの変化と関連するものと考えられる。但し、前記光学密度の変化は、減少に限定されて解釈されない。
【0127】
積層体は、前記準備ステップの処理前の積層体と、前記炭酸水洗浄ステップを経た(処理後)積層体との反射率の変化が約0%以上約0.5%以下であってもよい。前記反射率の変化は約0%以上約0.25%以下であってもよい。
【0128】
処理後(洗浄後)の前記積層体は、50nm以下のサイズの極微細粒子が実質的に検出されないものであり得る。このとき、極微細粒子が実質的に検出されないということは、1個の積層体を検査したとき、極微細粒子が2個以下、1個以下、または検出されないことを意味する。
【0129】
処理後の前記積層体は、残留イオンの含量も後述するように制御されたものであり得る。このとき、残留イオンの含量が僅かであるということは、特定の方法により測定した残留イオンの含量が後述する含量未満であるということを意味する。
【0130】
具現例の積層体は、イオンクロマトグラフィー方法で測定した残留イオンの含量が僅かであるという特徴を有する。
【0131】
積層体に吸着されて洗浄過程でも完全に除去されていない極微細粒子や積層体自体に残留していたイオンは、積層体の品質に悪影響を及ぼすことがある。積層体を活用する過程で前記積層体が繰り返してエネルギーの照射を受けて不安定になった元素が表面に移動し得、積層体の内部にあった残留イオンが他のイオンと会って意図しない反応が行われ得る。このとき、粒子性不純物が形成されたり、積層体の一部にヘイズを発生させたりすることがある。
【0132】
洗浄後の検査過程で検出される残留イオンの含量が僅かである場合、粒子性不純物の形成及び/又はヘイズの発生を減少させることができる。また、このような粒子性不純物の形成の抑制及びヘイズの発生の抑制は、半導体のデザインがさらに細線に進化するにつれ、最近さらに重要な特性として評価されている。
【0133】
イオンクロマトグラフィー方法を活用した残留イオンの測定は、実施例で説明する方式に従う。残留イオンの測定過程を簡単に説明すると、製品保管ボックスに保管された積層体1個をクリーンバッグに入れ、脱イオン水100mlを注入した後、90℃で用意した水槽に前記クリーンバッグを入れる。その後、120分間、積層体の表面からイオンが十分に抜け出られるように放置する。クリーンバッグから回収した脱イオン水をイオンクロマトグラフィー方法で検出して濃度を定量する。積層体の大きさは、横約5インチ~約7インチ、縦約5インチ~約7インチ、高さ約0.1インチ~約0.5インチであるものを適用することを基準とし、積層体の大きさ(表面積)が変化する場合などに比例して前記脱イオン水の含量を異なって適用できる。
【0134】
前記残留イオンは硫黄系イオンを含むことができる。
【0135】
硫黄系イオンは、硫酸イオン(SO 2-)のようなSOxを含む。
【0136】
前記残留イオンは硝酸系イオンを含むことができる。
【0137】
硝酸系イオンは、亜硝酸イオン(NO )、硝酸イオン(NO )のようなNOxを含む。
【0138】
前記硫黄系イオンの含量は、約0.1ng/cm以下であってもよく、または約0.8ng/cm以下であってもよい。前記硫黄系イオンの含量は、約0ng/cm超であってもよく、約0.1ng/cm超であってもよく、または約0.3ng/cm超であってもよい。
【0139】
前記硝酸系イオンの含量は、約0.1ng/cm以下であってもよく、または約0.05ng/cm以下であってもよい。前記硝酸系イオンの含量は、約0ng/cm超であってもよく、または約0.1ng/cm超であってもよい。
【0140】
前記のような前記硫黄系イオン及び前記硝酸系イオンの含量は、積層体をフォトマスクとして適用するのに優れた残留イオンの程度であり、特に、フォトマスクの使用過程で発生し得るヘイズの発生を実質的に抑制することができる。
【0141】
前記残留イオンはハロゲンイオンを含むことができる。
【0142】
ハロゲンイオンは、フッ素イオン、塩素イオン、またはこれらの両方を含むことができる。
【0143】
前記ハロゲンイオンの含量は、約0.1ng/cm以下であってもよく、約0.05ng/cm以下であってもよく、または約0.03ng/cm以下であってもよい。前記ハロゲンイオンの含量は、約0ng/cm超、または約0.01ng/cm以上であってもよい。
【0144】
前記遷移金属としてクロムを含む場合、前記ハロゲンイオンの含量が高く示され得る。これは、クロムが塩素イオンなどと高い親和度を有しているため、空気中または処理溶液中の塩素イオンなどを引き込むためであると考えられる。
【0145】
前記残留イオンはアンモニアイオンを含むことができる。
【0146】
前記アンモニアイオンの含量は、約1.0ng/cm以下であってもよく、約0.7ng/cm以下であってもよく、または約0.5ng/cm以下であってもよい。前記アンモニアイオンの含量は、約0ng/cm超であってもよく、約0.1ng/cm超であってもよく、または約0.3ng/cm超であってもよい。前記アンモニアイオンの含量が前記の範囲である場合、粒子性不純物の発生やヘイズの発生を実質的に抑制することができる。
【0147】
前記残留イオンは、硫黄系イオン、硝酸系イオン、ハロゲンイオン及びアンモニアイオンを含むことができ、具体的に、SO 2-、NO 、NO 、Cl及びNH をイオン性不純物と称する。
【0148】
前記イオン性不純物の含量は、約1.5ng/cm以下であってもよく、約1.0ng/cm以下であってもよく、または約0.7ng/cm以下であってもよい。前記イオン性不純物の含量は、約0ng/cm超であってもよく、約0.1ng/cm超であってもよく、または約0.3ng/cm超であってもよい。
【0149】
このような特徴を有する積層体は、遮光膜が形成された状態でイオン性不純物の含量が非常に良好に制御されたものと考えられ、このような積層体をフォトマスクなどとして適用する場合、欠陥の制御がより容易である。
【0150】
前記残留イオンはナトリウムイオンを含むことができる。
【0151】
前記残留イオンはリン酸イオンを含むことができる。
【0152】
前記残留イオンはカリウムイオンを含むことができる。
【0153】
前記残留イオンはマグネシウムイオンを含むことができる。
【0154】
前記残留イオンはカルシウムイオンを含むことができる。
【0155】
前記ナトリウムイオンの含量、前記リン酸イオンの含量、前記カリウムイオンの含量、前記マグネシウムイオンの含量及び前記カルシウムイオンの含量の和は、約0ng/cm以上約0.01ng/cm以下であってもよい。このような場合、前記積層体の残留イオンの濃度が良好に制御されることで、実質的に粒子性欠陥の発生可能性を低下させ、ヘイズの発生程度を低下させたフォトマスクを提供することができる。
【0156】
遮光膜は、露光光に対する反射率が約35%以下であってもよく、または約30%以下であってもよい。前記反射率は、約20%以上であってもよく、約23%以上であってもよく、または約25%以上であってもよい。
【0157】
前記露光光は、約193nmの波長の光であってもよい。
【0158】
前記露光光はArF光であってもよい。
【0159】
遮光膜は、意図する波長の光を少なくとも一部遮断する役割を果たす。したがって、遮光膜は、光透過性膜と比較して相対的に表面反射率が高く示され得る。しかし、遮光膜の反射率が過度に高い場合には、積層体の欠陥の有無などを確認する検査の結果の正確度が低下することがある。検査過程は、遮光膜の表面欠陥、不純物の有無などを確認するための過程であって、フォトマスクブランクの製造過程に適用される過程である。すなわち、遮光膜の表面反射率が過度に高い場合、結局、積層体の信頼度を低下させることがある。したがって、遮光膜の表面反射率を調節する必要がある。検査光は、露光光と同様に適用されたり、異なって適用されたりするが、前記では露光光を基準とした反射率を提示した。
【0160】
遮光膜の表面反射率を調節し、耐久性を向上させるなどの効果を得るために、遮光膜表面層と遮光膜下層の特性を異なって制御することもある。そのために、遮光膜表面層が遮光膜下層よりも酸素や窒素の分布がさらに多くなるように積層するか、または既に形成された遮光膜の表面に酸化処理や窒化処理を行う方式などが適用されてもよい。
【0161】
遮光膜がM形態の化合物を含む場合(Mは遷移金属、Oは酸素)、酸化などの処理によってその一部がMO形態に変化し得る。例えば、遷移金属としてクロムを適用する場合、Cr中の一部は酸化処理、洗浄などの影響によりCrOに変化し、遮光膜表面層でCrOの含量が実質的に多くなり得る。Crが相対的に外力や損傷にさらに強い特性を有するので、CrOは、Crと比較して損失が容易に発生する。そのため、CrOが多く含有される遮光膜は、洗浄などの過程で膜自体の損失が発生しやすい。これは、厚さの変化、光学密度の変化、透過率の変化、反射率の変化など、様々な光学的な物性の変化をもたらすことがある。また、CrOが多く含有される遮光膜は、比較的強い酸化洗浄処理を行う場合にさらに容易に発生するものと考えられる。しかし、洗浄が十分でない場合には、積層体に残留イオンや不純物が十分に除去されないことがある。
【0162】
前記遮光膜は、上述した洗浄過程を含む製造方法などを適用することで、反射率などの遮光膜の光学的物性の変化を最小化しながら、不純物や残留イオンの含量などを減少させた積層体の製造方法を提示する。
【0163】
遮光膜は、遷移金属と、酸素及び窒素のうちの少なくともいずれか1つとを含む。
【0164】
遮光膜は、遷移金属を約35at%以上含んでもよく、約40at%以上含んでもよく、約45at%以上含んでもよく、または約50at%以上含んでもよい。遮光膜は、遷移金属を約75at%以下含んでもよく、約70at%以下含んでもよく、約65at%以下含んでもよく、または約60at%以下含んでもよい。このとき、遮光膜の遷移金属含量は、遮光膜下層と遮光膜表面層を含む遮光膜全体での遷移金属含量を平均した値を意味する。
【0165】
遮光膜は、酸素を約15at%以上含んでもよく、約20at%以上含んでもよく、または約25at%以上含んでもよい。前記遮光膜は、酸素を約55at%以下含んでもよく、約50at%以下含んでもよく、または約45at%以下含んでもよい。このとき、遮光膜の酸素含量は、遮光膜下層と遮光膜表面層を含む遮光膜全体での酸素含量を平均した値を意味する。
【0166】
遮光膜は、窒素を約15at%以上含んでもよく、約20at%以上含んでもよく、または約25at%以上含んでもよい。前記遮光膜は、窒素を約55at%以下含んでもよく、約50at%以下含んでもよく、または約45at%以下含んでもよい。このとき、遮光膜の窒素含量は、遮光膜下層と遮光膜表面層を含む遮光膜全体での窒素含量を平均した値を意味する。
【0167】
遮光膜は、炭素を約1at%以上含んでもよく、約2at%以上含んでもよく、または約3at%以上含んでもよい。前記遮光膜は、炭素を約10at%以下含んでもよく、または約8at%以下含んでもよい。このとき、遮光膜の炭素含量は、遮光膜下層と遮光膜表面層を含む遮光膜全体での炭素含量を平均した値を意味する。
【0168】
遮光膜表面層は、遷移金属を約10at%以上含んでもよく、約15at%以上含んでもよく、または約20at%以上含んでもよい。遮光膜表面層は、遷移金属を約45at%以下含んでもよく、約40at%以下含んでもよく、約35at%以下含んでもよく、または約30at%以下含んでもよい。
【0169】
遮光膜表面層は、酸素を約35at%以上含んでもよく、約40at%以上含んでもよく、または約42at%以上含んでもよい。前記遮光膜表面層は、酸素を約65at%以下含んでもよく、約60at%以下含んでもよく、約55at%以下含んでもよく、または約50at%以下含んでもよい。
【0170】
遮光膜表面層は、窒素を約1at%以上含んでもよく、約3at%以上含んでもよく、または約5at%以上含んでもよい。前記遮光膜表面層は、窒素を約25at%以下含んでもよく、約20at%以下含んでもよく、または約15at%以下含んでもよい。
【0171】
遮光膜表面層は、炭素を約3at%以上含んでもよく、約5at%以上含んでもよく、または約10at%以上含んでもよい。前記遮光膜表面層は、炭素を約35at%以下含んでもよく、約30at%以下含んでもよく、または約25at%以下含んでもよい。
【0172】
以下、具体的な実施例を通じてより具体的に説明する。下記の実施例は本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0173】
実験実施例:製造例
(遮光膜を有する積層体の製造)
横6インチ、縦6インチ、厚さ0.25インチの合成クォーツ光透過性基板上に波長193nmの光に対して約180°の位相差を有する位相反転膜を有する同一の基板を用意し、以下の遮光膜の製造に適用した。
【0174】
位相反転膜は、スパッタリング方式により製造され、成膜時に過量の窒素ガスを投入して高濃度のNHの生成を誘導し、Noの生成を抑制処理したものが適用された。具体的に、位相反転膜は、Mo、Siがそれぞれ10.75at%、89.25at%の組成比を有するターゲットを適用した反応性スパッタリングを通じて、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)を含む位相反転膜を成膜し、2kWの電力を印加し、ガスを投入し、光透過性基板を回転させながら、スパッタリングを通じた成膜を行った。成膜時に、70体積%の窒素(N)ガスとアルゴンガスの残量を維持するように投入し、表面のアンモニウム濃度が50ng/cm~110ng/cmになるように処理した。このように形成された位相反転膜は、400℃の温度で40分間熱処理を行い、その後、25℃で40分間冷却処理した。
【0175】
遮光膜もスパッタリング方式により製造した。
【0176】
位相反転膜が成膜された基板をDCスパッタリング装備のチャンバ内に配置し、クロムターゲットのT/S距離が255mm、基板とターゲットとの間の角度が25°になるように設定した。雰囲気ガスは、窒素(N)と二酸化炭素(CO)の比率を1:3~3.5の体積比で適用した。成膜時に適用した電力は、約1.5kW~約1.85kであった。
【0177】
基板を回転させながらスパッタリングを行い、クロム含有遮光膜を成膜した。その後、熱処理は、同一に200℃~300℃で15分間適用し、熱処理を終えた遮光膜は、20℃~30℃の雰囲気で5分間乾燥空気を適用して冷却処理した。全厚約460~約580オングストロームの遮光膜が位相反転膜上に成膜されて、積層体が用意された。
【0178】
このように形成された遮光膜は、元素含量が、深さに応じてクロム35.5~41.9原子%、窒素8.4~10.5原子%、酸素33.0~36.3原子%、及び炭素14.0~15.4原子%と確認された。その他の微量のSi(0~6.5原子%)が確認された。
【0179】
(遮光膜の洗浄:実施例)
(1)紫外線洗浄ステップ
UV処理法を通じて、電磁放射の一種であるUV(紫外線、172nmの波長)をRT(23℃)、湿度45%±5%の条件でUniform radiation exposureの条件で照射した。前記照射は、40mW/cmのハイパワー(High power)で行い、プロセスガス(Process Gas)としてN、Oなどのガスを使用して、工程中の強い排気(Exhaust)(0.01~1kPa)を通じて、汚染源がマスクの表面で再結合したり、バウンスバック(Bounce back)による逆汚染などを防止しながら行われた。このUV処理を通じて、約100nm~約190nmの領域帯の波長を強く吸収する化合物を、後続の洗浄過程を行う前に予め除去した。
【0180】
(2)炭酸水洗浄ステップ
UV(波長254nm)と洗浄液である炭酸水(DICO)を同時に使用して洗浄を行った(第1洗浄)。
【0181】
このとき、前記炭酸水などを洗浄液として活用した洗浄は、メガソニックを適用して行われ、ノズルによる洗浄液の噴射時にメガソニックが共に適用された。積層体の前面(遮光膜面)の洗浄時には1MHz、10Wのメガソニックを、そして、積層体の後面(クォーツ面)の洗浄時には1.5MHz、40Wのメガソニックを洗浄液と共に適用した。このとき、炭酸水は、電気伝導度(conductivity)が3~6μS/cmであるものを適用した。
【0182】
次に、水素水及び炭酸水を含む洗浄液を使用して表面洗浄を行った(第2洗浄)。前記水素水は、水素の濃度が1.0~2.0ppmであるものを適用した。前記炭酸水の濃度、前面及び後面に適用するメガソニックなどは、上述と同様に適用された。前記水素水と前記炭酸水は、4:3の体積比で適用された。
【0183】
その後、水素水(DIH)で表面洗浄を行った(第3洗浄)。水素水の水素イオンの濃度及びメガソニックの適用は、上述と同様に適用された。
【0184】
(3)リンスステップ
洗浄が完了した後、炭酸水(DICO)でリンス処理した後、ランプアップ(Ramp-up)方式の乾燥を行う。
【0185】
(遮光膜の洗浄:比較例)
洗浄過程に炭酸水(DICO)を投入しないという点を除いては、他の過程は全て前記の洗浄方法と同様に行った。
【0186】
洗浄前と洗浄後の遮光膜の特性を測定し、下記表3に示した。
【0187】
実験実施例:測定例1
(サンプリング及び前処理)
保管/前処理条件:製品保管ボックス(Shipping Box)で保管し、SBP(Shipping Box Port)を介してアンローディング(Unloading)してポッド(Pod)にローディング(Loading)した。全てのサンプルは、独立したポッドに入れられて個別に工程を行い、洗浄を経た積層体は、イオンクロマトグラフィー(IC)検査のために、別途の洗浄が完了した製品保管ボックスに個別に入れ、評価のための工程条件の変化(制御変数)以外の全ての条件(制御変数)を同一にして行った。
【0188】
(イオンクロマトグラフィー評価)
サーモサイエンティフィック(ThermoScientific)社のDionex ICS-2100イオンクロマトグラフィーモデルを用いて、以下の方法により評価を行った。表1のサンプルにそれぞれ同じ方法を適用した。
【0189】
イオンの抽出)クリーンバッグに、用意した積層体サンプルを製品保管ボックスの開封直後に入れ、脱イオン水(DeIonized Water)100mlを注入した。サンプルが入っているクリーンバッグを、90℃で用意した水槽(Water Bath)に入れ、120分間、積層体の表面上にイオンが十分に抜け出られるようにした。
【0190】
溶離液の送液)イオンの分離を助ける溶離液(Eluent)を得、後続過程が行われる間に溶離液(eluent)の濃度及び組成が常に一定になるようにアイソクラチック(Isocratic)工程を行った。
【0191】
測定:溶離液とサンプルを測定装置に注入し、イオンの分離及び検出を行った。
【0192】
イオン交換カラムは、サーモサイエンティフィック(ThermoScientific)社のDinex ICS-2100イオンクロマトグラフィーモデルを適用し、分離されたイオンの電気伝導度から得られるシグナルとイオンのRT(retention time)を活用してイオンの濃度を定量化し、その結果を、それぞれ下記表1及び表2に示した。
【0193】
実験実施例:測定例2
(サンプリング及び前処理)
保管/前処理条件:全ての積層体は、独立したポッド(Pod)に入れられて個別に工程を行い、洗浄を経た積層体は、エリプソメータの測定のために、別途の洗浄が完了したポッド(POD)に個別に入れ、評価のための工程条件の変化(制御変数)以外の全ての条件(制御変数)を同一にして行った。
【0194】
(エリプソメータの評価)
Nanoview社のMG-PROモデルを用いて、サンプルの7×7points(計49points)に対して測定を行った。
【0195】
測定結果
(残留イオンの含量)
イオンクロマトグラフィー(IC)検査の結果は、下記表1と表2に分けて示した。実施例として、炭酸水洗浄を経たサンプル、そして、比較例として、炭酸水を活用しなかったサンプルをそれぞれ測定した結果を示す。
【0196】
イオン含量の計算は、以下の方式に従った。
ng/積層体=(IC分析の結果-Blank)×DIWの量、
ng/cm=(ng/積層体)/504(積層体の面積、cm
ppb=100ml基準。
【0197】
【表1】
【0198】
【表2】
【0199】
実験実施例:追加の比較例及び測定例3
(追加の比較例)
前記の実施例と同様に遮光膜を成膜及び洗浄し、洗浄液として、炭酸水の代わりにオゾン水を適用した。オゾン水のオゾン濃度は80~105ppmを適用した。
【0200】
追加の比較例は、前記の実施例と同様に、洗浄前後の光特性などの変化を評価した。
【0201】
(洗浄前後の光特性などの変化)
実施例は、計23回の反復実験を通じて、洗浄前後の積層体の厚さの変化、光特性の変化を確認し、その結果を下記表3に示した。また、追加の比較例は、計15回の実験を通じて、洗浄前後の積層体の厚さの変化、光特性の変化を確認し、その結果を下記表4に示した。
【0202】
【表3】
【0203】
【表4】
【0204】
表1及び表2を参照すると、洗浄で炭酸水を活用した積層体において、フォトマスクとして活用時にヘイズの発生原因となり得るイオンの生成を抑制することが確認できた。また、表3及び表4を参照すると、炭酸水を適用した洗浄は、異物及びイオンの除去活性に優れながらも、膜の変化が僅かであるという点が確認できた。これは、オゾンを適用した追加の比較例と比較すると、その効果がさらに明確であり、同一に製造した遮光膜を含む積層体を適用しても、洗浄過程に応じて、厚さの変化の場合に約2倍、透過率の変化の場合に約10倍、そして、光学密度の変化の場合に約7倍の変化率の差があるという点が確認できた。
【0205】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属する。