IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】表面形状を干渉測定する計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 9/02055 20220101AFI20240927BHJP
   G01B 9/021 20060101ALI20240927BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01B9/02055
G01B9/021
G01B11/24 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022519800
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2020076557
(87)【国際公開番号】W WO2021063766
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】102019214979.0
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】ステファン シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ フライマン
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-090819(JP,A)
【文献】米国特許第04904084(US,A)
【文献】特開平10-221007(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017217369(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/00-9/10
11/00-11/30
G01M 11/00-11/08
G02B 5/18、5/32
27/00-30/60
G03H 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物(14)の表面(12)の形状を干渉測定する計測装置(10)であって、
入力波(42)を供給する放射源と、
回折により前記入力波から、前記被検物(14)に指向され且つ自由曲面の形態の波面を有する被検波(66)及び少なくとも1つの較正波(70)を生成するよう構成された、多重符号化回折光学素子(60)であり、
前記較正波は非回転対称形状(68f)の波面を有し、
相互に横断する向きの横断面に沿った前記較正波(70)の前記波面の断面はそれぞれ湾曲形状を有し、且つ
異なる横断面における前記湾曲形状は開口パラメータが異なる、多重符号化回折光学素子(60)と、
参照波(40)を較正物(74)との相互作用後の前記較正波と重畳させることにより形成された較正インターフェログラムを取得する取得デバイス(46)と
を備えた計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計測装置において、
2つの前記異なる横断面の前記湾曲形状は、湾曲方向が異なる計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の計測装置において、
前記湾曲形状は円形状のセグメントにそれぞれ近似し、前記開口パラメータは円半径である計測装置。
【請求項4】
請求項3に記載の計測装置において、
前記湾曲形状は放物線形状のセグメントにそれぞれ近似し、前記開口パラメータは放物線開口である計測装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の計測装置において、
前記較正波の前記波面は非点収差形状を有する計測装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の計測装置において、
前記較正波(70)の前記非回転対称形状(68f)は、対称軸(92)について対称な面(90、90a、90b、90c)を回転軸(94)周りに回転させることにより形成される回転体(88)の表面の一部の形状に対応する計測装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の計測装置において、
前記較正波(70)の前記波面は、任意の回転対称形状からの偏差が50μm以上である計測装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の計測装置において、
前記回折光学素子(60)は、回折により前記入力波から、前記被検波に加えて少なくとも3つの較正波(68、70、72)を生成するよう構成される計測装置。
【請求項9】
被検物(14)の表面(12)の形状を干渉測定するための自由曲面の形態の波面を有する被検波(66)を生成するよう構成された回折光学素子(60)を較正する方法であって、
前記回折光学素子(60)に多重符号化を与え、該多重符号化での回折により前記被検波に加えて較正物(74)に指向された較正波(70)が生成されるように入力波(42)を放射するステップであり、
前記較正波は非回転対称形状(68f)の波面を有するステップと、
前記較正波が前記較正物(74)の表面(76)の異なる領域にそれぞれ実質的に垂直に入射するように、異なる較正位置(P1、P2)に前記較正物を配置するステップと、
参照波(40)を前記異なる較正位置での前記較正物との相互作用後の前記較正波(70)と重畳させることにより生成された較正インターフェログラムを取得し比較するステップと
を含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記較正物の前記異なる較正位置は、前記較正物(74)のシフト及び傾斜の組合せにより設定される方法。
【請求項11】
被検物(14)の表面(12)の形状を干渉測定する方法であって、
多重符号化回折光学素子(60)を用意するステップであり、該多重符号化回折光学素子(60)は、回折により入力波(42)から、前記被検物に指向され且つ自由曲面の形態の波面を有する被検波及び少なくとも1つの較正波(70)を生成するよう構成されるステップと、
請求項9又は10に記載のように前記回折光学素子を較正するステップと、
前記参照波(40)を前記被検物の前記表面との相互作用後の前記被検波(66)と重畳させることにより生成された計測インターフェログラムを取得するステップと、
較正インターフェログラムを考慮して、前記計測インターフェログラムの評価により前記被検物の前記表面の前記形状を確認するステップと
を含む方法。
【請求項12】
複数の表面の各形状を干渉測定する方法であって、前記表面は自由曲面の形状をそれぞれ有し、ベストフィット球面からの各自由曲面の偏差の非点収差成分が70%~90%である方法において、
前記表面の干渉測定による形状計測結果を均一な較正面により較正するステップであり、ベストフィット球面からの前記均一な較正面の偏差が、前記複数の表面の前記非点収差成分の平均値に対応する非点収差成分を有するステップ
を含み、
前記較正面の形状は、較正波の非回転対称の目標形状に適合される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年9月30日付けの独国特許出願公開第10 2019 214 979.0号の優先権を主張する。上記特許出願の全開示を参照により本願に援用する。
【0002】
本発明は、被検物の表面の形状を干渉測定する計測装置、回折光学素子を較正する方法、被検物の表面の形状を干渉測定する方法、及びマイクロリソグラフィ露光装置の投影レンズ用の光学素子に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロリソグラフィ光学素子等の被検物の表面形状の高精度の干渉計測のために、多くの場合は回折光学装置がいわゆるゼロ光学系として用いられる。この場合、被検波の波面が、被検波の個別光線が表面の目標形状に全ての場所で垂直に入射しそこで反射して逆行するように、回折素子により目標形状に適合される。目標形状からの偏差は、参照波を反射した被検波と重畳することにより求めることができる。用いられる回折素子は、例えば計算機ホログラム(CGH)であり得る。
【0004】
形状計測の精度は、CGHの精度に応じて変わる。ここでの決定的要因は、CGHのできる限り正確な作製では必ずしもなく、CGHで生じ得る全ての誤差の最も正確な計測である。既知の誤差は、試験片の形状の計測時に算出することができる。よって、CGHは参照を形成する。回転対称非球面では全ての非回転対称誤差の較正が高精度で可能だが、自由曲面、すなわち回転対称でない非球面の場合、全てのCGH誤差が形状計測に影響を及ぼす。結果として、CGHの計測の精度に関する要件は大幅に増加する。CGHの回折構造の歪み、すなわち回折構造の目標位置に対するその横方向位置と、CGHのプロファイル形状とを高精度で把握することが重要である。しかしながら、従来技術から既知の計測デバイスを用いてこれらのパラメータを求めることができる計測精度は、高まり続ける要件にとって十分ではない。
【0005】
特許文献1は、複素符号化CGHを有するそのような計測装置を記載している。フィゾー素子を用いて、光波が最初に参照波及び被検波に分割される。被検波は、続いて複素符号化CGHにより、表面の目標形状に適合した波面を有する被検波と球面又は平面波面を有する較正波とに変換される。この目的で、CGHは適当な構成の回折構造を含む。較正波を用いてCGHが較正される。その後、被検物が被検位置に配置され、被検波での計測が実行される。被検波は、被検物の表面で反射してCGHにより再変換され、フィゾー素子を通過後に参照波と重畳される。平面で取得されたインターフェログラムから表面の形状を測定することが可能である。CGHの較正は精度を向上させるが、これは高度な用途には必ずしも十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第10 2012 217 800号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決し且つ特に自由曲面の形態の光学面の形状を高精度で測定することを可能にする、導入部で述べたタイプの計測装置及び計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、本発明によれば、例えば、被検物の表面の形状を干渉測定する計測装置であって、入力波を供給する放射源と、回折により入力波から、被検物に指向され且つ自由曲面の形態の波面を有する被検波及び非回転対称形状の波面を有する少なくとも1つの較正波を生成するよう構成された、多重符号化回折光学素子とを備えた計測装置により達成することができる。相互に横断する向きの横断面に沿った較正波の波面の断面は、それぞれ湾曲形状を有する。異なる横断面における湾曲形状は、ここでは開口パラメータが異なる。さらに、計測装置は、参照波を較正物との相互作用後の較正波と重畳させることにより形成された較正インターフェログラムを取得する取得デバイスを備える。
【0009】
自由曲面は、任意の回転対称非球面からの偏差が5μmを超える、特に10μmを超える形状を意味すると理解されたい。さらに、自由曲面は、任意の球面からの偏差が0.05mm以上、特に0.1mm以上、1mm以上、又は5mm以上である。特に、計測装置は、較正波との重畳により形成されたインターフェログラムを考慮して、参照波を被検物の表面との相互作用後の被検波と重畳させることにより取得されたインターフェログラムを評価することにより、表面の形状を測定する評価デバイスを備える。
【0010】
非回転対称な波面を有する較正波の本発明による設計は、以下で被検波面差とも称する被検波の波面と較正波の波面との間の差を最小化することを可能にする。
【0011】
本発明は、被検波の波面形状からの較正波の形状の偏差が小さいほど、生成される自由曲面被検波に対する回折光学素子の較正の品質が高くなるという知見に基づく。その理由は、較正波及び被検波の相互の類似性が高いほど、較正波及び被検波の生成を担う多重符号化回折光学素子の部分構造の類似性が高くなるからである。回折光学素子の製造中に、部分構造が同様であれば製造誤差も同様となり、それらの溝幅プロファイルの差は比較的小さい。
【0012】
非回転対称の波面を有する較正波を生成するように回折光学素子を構成することにより、被検波面差を最小限に保つことが可能となる。これによりさらに、較正波により求められる較正データを用いて高精度で被検波に対する回折光学素子の製造誤差の効果を予測することができる。
【0013】
上述のように、相互に横断する向きの横断面に沿った較正波の波面の断面は、それぞれ湾曲形状を有し、異なる横断面における断面形状は開口パラメータが異なる。特に、横断面は相互に対して垂直な向きである。
【0014】
一実施形態によれば、2つの異なる横断面における湾曲形状は、湾曲方向が異なる。
【0015】
さらに別の実施形態によれば、湾曲形状は、円形状のセグメントにそれぞれ近似し、開口パラメータは円半径である。これは、異なる断面における湾曲形状がそれぞれ円形状のセグメントを有するか又は円形状のセグメントに近似する、特に湾曲形状が円形状のセグメントにそれぞれ対応することを意味すると理解されたい。
【0016】
さらに別の実施形態によれば、湾曲形状は放物線形状のセグメントにそれぞれ近似し、開口パラメータは放物線開口である。これは、異なる断面における湾曲形状がそれぞれ放物線形状のセグメントに対応するか又は放物線形状のセグメントに近似することを意味する。放物線形状のセグメントは、特に放物線の頂点領域を含み、特にセグメントは放物線の対称な頂点領域を有する。
【0017】
さらに別の実施形態によれば、較正波の波面は非点形状を有する。
【0018】
さらに別の実施形態によれば、較正波の非回転対称形状は、以下で回転面とも称する対称軸について対称な面の回転軸に対する回転により形成された、回転体の表面の一部の形状に対応する。この回転体の表面の一部は、平面について対称性を有し、したがって鏡面対称とも称することができる。第1変形実施形態によれば、回転面は円形であり、回転軸は対称軸と真に平行である。この場合、得られる回転体はトーラスである。第2変形実施形態によれば、回転面は非回転対称、例えば楕円形である。
【0019】
さらに別の実施形態によれば、較正波の波面は、任意の回転対称形状からの偏差が50μm以上、特に100μm以上である。
【0020】
さらに別の実施形態によれば、回折光学素子は、回折により入力波から被検波に加えて少なくとも3つの較正波を生成するよう構成される。
【0021】
上記目的は、例えば、被検物の表面の形状を干渉測定するための自由曲面の形態の波面を有する被検波を生成するよう構成された回折光学素子を較正する方法によっても達成することができる。本発明による方法は、回折光学素子に多重符号化を与え、多重符号化での回折により被検波に加えて較正物に指向された較正波が生成されるように入力波を放射するステップであり、較正波は非回転対称形状の波面を有するステップを含む。さらに、本発明による方法は、較正波が較正物の表面の異なる領域にそれぞれ実質的に垂直に入射するように、異なる較正位置に較正物を配置するステップを含む。さらに、本発明による方法は、参照波を異なる較正位置での較正物との相互作用後の較正波と重畳させることにより生成された較正インターフェログラムを取得し比較するステップを含む。
【0022】
本発明による方法によれば、較正物は、較正波が較正物の表面の異なる領域にそれぞれ実質的に垂直に入射するように異なる較正位置に配置される。さらに、異なる較正位置で生成された較正インターフェログラムは、相互に比較される。換言すれば、種々の較正位置で、較正物の異なるサブアパーチャに較正波が照射される。適当な評価アルゴリズムにより種々の較正インターフェログラムの全体を評価することにより、較正波の波面誤差を較正物の形状誤差から分離することができる。
【0023】
一実施形態によれば、較正物の種々の較正位置は、較正物のシフト及び傾斜の組合せにより設定される。さらに、異なる較正位置で生じるリトレース誤差を計算により考慮することができる。
【0024】
さらに、本発明は、被検物の表面の形状を干渉測定する方法を提供する。この方法は、多重符号化回折光学素子を用意するステップであり、多重符号化回折光学素子は、回折により入力波から、被検物に指向され且つ自由曲面の形態の波面を有する被検波及び少なくとも1つの較正波を生成するよう構成されるステップと、前述の実施形態又は変形実施形態の1つに従って回折光学素子を較正するステップと、参照波を被検物の表面との相互作用後の被検波と重畳させることにより生成された計測インターフェログラムを取得するステップと、較正インターフェログラムを考慮して、計測インターフェログラムの評価により被検物の表面の形状を確認するステップとを含む。
【0025】
一実施形態によれば、複数の類似だが異なる自由曲面を検査する目的で、全ての被検波面差、すなわち被検波及び較正波の波面間の差の全体を、例えば実現された被検波面差を全ての被検自由曲面の被検波面差の平均値として選択することにより小さく保つことができる。
【0026】
さらに、本発明は、複数の表面の各形状を干渉測定する方法を提供する。表面はそれぞれ自由曲面の形態を有し、ベストフィット球面からの各自由曲面の偏差の非点収差成分が70%~90%、特に75%~85%である。本発明による方法は、表面の干渉測定による形状計測結果を均一な較正面により較正するステップであり、ベストフィット球面からの均一な較正面の偏差が、複数の表面の非点収差成分の平均値に対応する非点収差成分を有するステップを含む。
【0027】
非点収差成分の定義に関しては、特に独国特許出願公開第10 2013 226 668号を参照されたい。計測された表面は、上記非点収差成分により相互に類似しているが相互に異なる。換言すれば、較正面をそれぞれ用いて複数の表面の各形状を測定するためには、単一の較正面しか必要ない。表面の形状計測結果の判定は、上述の干渉計測方法と同様にそれぞれ実行することができ、較正波は、上記均一な較正面にそれぞれ適合される。
【0028】
上述のように、ベストフィット球面からの均一な較正面の偏差は、複数の表面の非点収差成分の平均値に対応する非点収差成分を有する。つまり、均一な較正面に割り当てられた非点収差成分は、上記平均値からの偏差が10%以下、特に5%以下である。
【0029】
さらに、本発明によれば、自由曲面の形態の目標形状を有し且つ目標形状からの実際形状の偏差の二乗平均平方根が100pm以下である光学面を有する、マイクロリソグラフィ露光装置の投影レンズ用の光学素子であって、目標形状はそのベストフィット球面からの最大偏差が0.1mm~20mmの範囲にある光学素子が提供される。特に、目標形状からの実際形状の偏差の二乗平均平方根は、20pm以下、特に10pm以下である。二乗平均平方根は、略してRMSとしても知られている。マイクロリソグラフィ露光装置は、放射源と、マスクを照射する照明系と、マスク構造を基板に結像する投影レンズとを備える。さらに、目標形状は、任意の回転対称非球面からの偏差が5μm以上、特に10μm以上である。
【0030】
ベストフィット球面からの最大偏差の点において、目標形状は、0.1mm以上且つ20mm以下の偏差値を有する。換言すれば、任意の球面からの目標形状の最大偏差は0.1mm以上だが、ベストフィット球面からの偏差は20mm以下である。一実施形態によれば、目標形状のそのベストフィット球面からの最大偏差は、1mm以上、特に5mm以上である。さらに別の実施形態によれば、最大偏差は8mm以下である。
【0031】
一変形実施形態によれば、ベストフィット球面は、目標形状からの最大偏差が最小である球面を意味すると理解され得る。代替として、ベストフィット回転対称参照面を、偏差の二乗平均平方根の最小化により、又は平均偏差の最小化により求めることもできる。自由曲面は、回転対称性のない非球面を意味すると理解される。
【0032】
さらに別の実施形態によれば、光学素子は、EUV波長域のマイクロリソグラフィ露光装置用のミラー素子として構成される。EUV波長域(極紫外波長域)は、100nm未満の波長域、特に約13.5nm又は約6.8nmの波長を意味すると理解される。
【0033】
本発明による計測装置の上記実施形態、例示的な実施形態、又は変形実施形態等に関して特定した特徴は、本発明による較正方法又は形状を干渉測定する本発明による方法に適宜適用することができ、その逆でもある。本発明による実施形態のこれら及び他の特徴は、図面の説明及び特許請求の範囲で説明される。個々の特徴は、本発明の実施形態として別個に又は組み合わせて実施することができる。さらに、これらの特徴は、独立して保護可能であり必要な場合は本願の係属中又は決定後にのみ保護が求められる有利な実施形態を表すことができる。
【0034】
本発明の上記の及びさらに他の有利な特徴を、添付の概略図を参照して以下の本発明による例示的な実施形態の詳細な説明に示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】被検物の光学面の目標形状に適合した被検波を生成する回折光学素子を用いて光学面の形状を干渉測定する計測装置の実施形態を示す。
図2】被検波に加えて較正波を生成するための多重符号化回折構造パターンを有する図1に示す回折光学素子を示す。
図3a】第1較正波を用いた第1較正物の計測中の図2に示す回折光学素子を示す。
図3b】第2較正波を用いた第1較正物の計測中の図2に示す回折光学素子を示す。
図3c】第3較正波を用いた第1較正物の計測中の図2に示す回折光学素子を示す。
図3d】被検物の光学面の計測中の図2に示す回折光学素子を示す。
図3e】不利な特殊な場合が生じた場合の図3aに示す第1較正波及び図3cに示す被検波の図を示す。
図4】第1表面部分を明示したリングトーラスの実施形態を示す。
図5図4の線V-Vに沿った断面図である。
図6図4の線VI-VIに沿った断面図である。
図7】さらに別の表面部分を明示した図4に示すリングトーラスを示す。
図8図7の線VIII-VIIIに沿った断面図である。
図9図7の線IX-IXに沿った断面図である。
図10図4に示すリングトーラスを破断図で示す。
図11】一表面部分を明示した楕円スピンドルトーラスの実施形態を示す。
図12図11の線XII-XIIに沿った断面図である。
図13図11の線XIII-XIIIに沿った断面図である。
図14a図1に示す回折光学素子及び第1較正位置に配置された較正物を示す。
図14b図1に示す回折光学素子及び第2較正位置に配置された較正物を示す。
図15】異なる較正位置で照射された表面を示した較正物の上面図を示す。
図16a】第1断面での図1に示す被検物の光学面の例示的な目標形状、較正波の例示的な非回転対称形状、及び目標形状に対してベストフィットする円形状を示す。
図16b】第2断面での図1に示す被検物の光学面の例示的な目標形状、較正波の例示的な非回転対称形状、及び目標形状に対してベストフィットする円形状を示す。
図17】マイクロリソグラフィ露光装置の投影レンズの光学素子の光学面の例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に記載する例示的な実施形態又は実施形態又は変形実施形態において、相互に機能的又は構造的に同様の要素にはできる限り同一又は同様の参照符号を付す。したがって、特定の例示的な実施形態の個々の要素の特徴を理解するために、本発明の他の例示的な実施形態の説明又は概説を参照されたい。
【0037】
説明を容易にするために、デカルトxyz座標系が図示されており、この座標系から図示のコンポーネントの各位置関係が見てとれる。図1では、x方向が図の平面に対して垂直に延びる、y方向は上向きに延び、z方向は右向きに延びる。
【0038】
図1は、本発明の例示的な実施形態における干渉計測装置10を示す。計測装置10は、光学素子の形態の被検物14の表面12の形状の干渉測定に適している。これは、目標形状からの表面12の実際形状の偏差を確認することにより達成される。
【0039】
被検物14は、例えば光学レンズ素子又はミラーの形態で設計することができる。図示の場合、被検物14は、EUVリソグラフィ用の凹面ミラー、すなわちEUV波長域の露光波長を用いるマイクロリソグラフィ投影露光装置で用いるように、特に投影露光装置の投影レンズで用いるように設計されたミラーである。EUV波長域は、100nm未満の波長に及び、特に約13.5nm及び/又は約6.8nmの波長に関する。
【0040】
光学被検物14は、ホルダ(図示せず)により計測装置10に取り付けられる。計測装置10は、目標形状が自由曲面である光学面12を計測するよう構成される。本文中では、自由曲面は、任意の回転対称非球面からの偏差が5μmを超える、特に10μmを超える形状を意味すると理解されたい。さらに、自由曲面は、任意の球面からの偏差が0.1mm以上、特に1mm以上又は5mm以上である。
【0041】
干渉計測装置10は、干渉計16を備え、干渉計16はさらに、光源18、ビームスプリッタ34、及び干渉計カメラの形態の取得デバイス46を含む。光源18は、照明放射線20を生成し、この目的で、例えばレーザビーム24を生成するヘリウムネオンレーザ等のレーザ22を含む。照明放射線20は、干渉計測を実行するのに十分なコヒーレント光を有する。ヘリウムネオンレーザの場合、照明放射線20の波長は約633nmである。しかしながら、照明放射線20の波長は、電磁放射線の可視及び不可視波長域の他の波長でもあり得る。
【0042】
レーザビーム24は、コヒーレント光の発散ビーム30がアパーチャから出るように集束レンズ素子26により絞り28に集束される。発散ビーム30の波面は実質的に球面である。発散ビーム30は、レンズ群32によりコリメートされ、その結果として照明放射線20が本例では実質的に平面状の波面で生成される。照明放射線20は、干渉計16の光軸56に沿って伝播してビームスプリッタ34を通過する。
【0043】
照明放射線20は、続いてフィゾー面38を有するフィゾー素子36に入射する。照明放射線20の光の一部は、フィゾー面38で参照波40として反射される。フィゾー面38を通過する照明放射線20の光は、以下で入力波42と称する到来計測波として平面波面44で光軸56に沿ってさらに伝播し、複素符号化回折光学素子60に入射する。計測装置10の他の実施形態において、入力波42の波面も球面であり得る。
【0044】
回折光学素子60は、照明放射線20の波長を透過する基板62と、基板52に配置された計算機ホログラム(CGH)の形態の回折構造パターン64とを含む。
【0045】
第1実施形態において、構造パターン64は、入力波42が構造パターン64で自由曲面の形態の被検波66と非回転対称形状の少なくとも1つの較正波68(図2参照)とに分割されるように構成される。概して、非回転対称形状は、任意の回転対称形状からの偏差が50μm以上である形状を意味すると理解されたい。変形実施形態によれば、非回転対称形状は、任意の回転対称非球面からの偏差が5μmを超える。さらに、非回転対称形状は、自由曲面の上記定義による形状を有し得る。任意の回転対称形状からの偏差が50μm以上であるという一般的な特徴に加えてさらに他のパラメータを特徴とする、非回転対称形状の種々の実施形態を以下で説明する。
【0046】
参照波40を生成するフィゾー素子36を有する図1に示す干渉計測装置10の代替として、参照波は、例えば独国特許出願公開第10 2015 209 490号の図1に示すように回折光学素子60で生成されて、参照ミラーで反射されることもできる。
【0047】
図2に示す実施形態において、較正波68に加えて、2つのさらなる較正波70及び72が構造パターン64で生成される。較正波70及び72は、それぞれが平面波面又は球面波面を有し得る。一実施形態によれば、さらなる較正波70及び72の一方又は両方が、較正波68のように、非回転対称形状、但し較正波68とは異なるタイプの非回転対称形状をそれぞれ有する。
【0048】
被検波66は、図1にも示されており、これを用いて被検物14の光学面12の実際形状が計測される。この目的で、被検波66は、光学面12の目標形状に適合した波面を有する。上述のように、被検波66は自由曲面の形状を有する。
【0049】
被検物14を図1に示すように被検波66のビーム経路に配置して計測する前に、計測装置10は、まず較正モードで作動される。このモードでは、図3aに概略的に示すように、被検物14ではなく第1較正物74が回折光学素子60に対して出力波側に、正確には第1較正波68のビーム経路に最初に配置される。誤差偏差を除いて、較正波68の形状は、較正物74の較正面76の形状に対応し、換言すれば、較正物74の較正面76の形状は、較正波68の上記非回転対称の目標形状に適合される。よって、この非回転対称の目標形状は、較正波68及び較正物74の両方の目標形状となる。
【0050】
較正波68は、較正物74の較正面76に入射し、それによりそこで反射して逆行する。反射した較正波68は、回折光学素子60を再度通過し、ビームスプリッタ34での反射後に、取得デバイス46のレンズ系48により取得デバイス46のカメラチップ52の取得面50へ指向される(較正波68を被検波66に置き換えて図1を参照)。
【0051】
参照波40との重畳により較正干渉パターンが取得面50で生成され、このパターンから、較正波68のその目標波面からの偏差が評価デバイス54により求められる。しかしながら、これは、目標形状からの較正物74の任意の偏差が無視できる程度であるという仮定の下で行われる。よって、較正波68の実際の波面は、較正物により高精度で測定される。較正波68のその目標波面からの偏差は、較正偏差K1として評価デバイス54に記憶される。
【0052】
図14a、図14b、及び図15に示す較正偏差K1の測定の変形実施形態によれば、較正物74は、複数の異なる較正位置で計測される。この目的で、較正物74は、較正面76の直径が較正波68の直径より5%以上、特に10%以上大きい、すなわち較正波68が中心に照射された場合に対応する非照射周辺領域が較正面76に残るように構成されることが好ましい。
【0053】
異なる較正位置を設定するには、較正物74を位置決めデバイス(図示せず)により傾斜及び特にシフトの組合せで変位させる。図14aは、較正波68が較正面76の実質的に中心に入射する較正物74の第1較正位置を示す。較正波68の個別光線は、この場合は較正面76に実質的に垂直に入射する。
【0054】
図14bは、第1較正位置から開始して較正物74を下方に傾斜させる(すなわちx軸に対して傾斜させる)ことにより設定される結果として、較正波68を照射された較正面の領域が例えば較正波68の直径の5%以上又は10%以上上方にシフトする、第2較正位置を示す。ここでも、較正波68の個別光線は較正面に実質的に垂直に入射する。これを確実にするために、較正物74のyz平面での適当なシフトが上記傾斜に加えて行われる。
【0055】
以下でより詳細に説明するように、較正面76の、したがって同じく較正波70の波面の断面形状は、例えば円形又は放物線状である。傾斜及びシフトの適当な組合せにより、図14bに示す第2較正位置でも、円形及び放物線状の断面形状の両方の場合に、較正波68の個別光線による実質的に垂直な照射をもたらすことができる。円形の断面形状の場合、傾斜及びシフトの組合せを「球面化」とも称する。
【0056】
図15は、異なる較正位置で較正波68を照射した各面を較正面76の平面図で示す。図14aを参照して説明した中心較正位置をP1で示し、図14bを参照して説明した下方傾斜較正位置をP2で示す。yz平面でのシフトと同時に較正物74を適切に上方に傾斜させることにより、P3で示す較正位置を設定することができる。さらに、P4及びP5で示す較正位置は、較正物74をxy平面で同時にシフトさせながら較正物を左右に傾斜させる(すなわち、y軸に関して傾斜させる)ことにより設定することができる。
【0057】
一実施形態によれば、これらのさらなる較正位置P2~P5のいくつか又は全てについて、場合によっては較正位置P1と類似のさらなる較正位置について、対応する較正インターフェログラムが記録される。適当な評価アルゴリズムを用いて評価デバイス54により記録された全ての較正インターフェログラムの評価により、このとき較正波68の波面誤差を較正物74の形状誤差から分離することができる。換言すれば、この実施形態によれば、目標形状からの較正物74の実際の偏差を考慮することができ、較正波68の実際の波面及び較正偏差K1をこうしてさらに高い精度で測定することができる。較正偏差K1の精度をさらに向上させるために、種々の較正位置P1~P5で起こるリトレース誤差、すなわち干渉計測装置10の光学ユニット内の被検波66のビーム経路に応じた光学ユニットのレンズ誤差により蓄積した誤差を、計算により考慮することができる。
【0058】
一実施形態によれば、異なる較正インターフェログラムの評価中に、異なる較正位置P1~P5にあり且つ較正面76の各サブアパーチャを照明する較正波68の波面部分が、既知のようにスティッチング法により組み合わせられる。
【0059】
較正波68により測定された較正偏差K1に加えて、図2に示す実施形態によるさらなる較正波70及び72を用いてさらなる較正偏差K2及びK3を測定することができる。較正波70及び72の伝播方向は、相互に異なり且つ較正波68の伝播方向と異なる。較正偏差K2及びK3は、較正面80を有する図3bに示す較正物78を較正波70のビーム経路に配置すること及び較正面84を有する図3cに示す較正物82を較正波72のビーム経路に配置することにより、較正偏差K1の測定と同様に測定される。
【0060】
確認された較正偏差K1~K3を評価することにより、較正波68、70、及び72を生成する回折光学素子60の回折構造パターン64の位相関数の歪みのx及びy座標を次に確認することができる。さらに、回折構造パターン64を有する回折光学素子60の基板表面の形状及び/又はプロファイル偏差を、較正偏差K1~K3から求めることができる。こうして得られた歪み座標と形状及び/又はプロファイル誤差とから、回折構造パターン64全体のx及びy座標の歪みと形状及び/又はプロファイル偏差とが続いて推測される。これらの偏差データは、評価デバイス54に記憶され、以下に述べる被検物14の表面形状の計測中に被検波66を補正するのに用いられる。
【0061】
この目的で、被検物14は、図1及び図3dに示すように、被検波66がオートコリメーションで光学面12に入射してそこで反射されるように被検波66のビーム経路に配置される。反射した波は、続いて回折光学素子60を逆戻りして戻り被検波66として干渉計16に入る。戻り被検波66は、取得面50で参照波40に干渉することにより、テストインターフェログラムを生成する。テストインターフェログラムは、評価デバイス54により評価され、光学面12のその目標形状からの実際形状の偏差がそこから確認される。較正面の計測中に確認済みの全ての偏差データが評価で考慮される。
【0062】
図3eは、極86と称する場所で較正波と被検波との間の回折方向が一致する不利な特殊な場合を示すが、これは、非回転対称形状を有する較正波の本発明による構成により可能となる自由度により回避することができる。この不利な特殊な場合を、被検物14の表面12の形状に適合した被検波66の個別光線66-1~66-6と、第1較正物74aの不利な実施形態の較正面76aに適合した較正波68aの個別光線68a-1~68a-6とを同時に図示することにより、図3eに示す。
【0063】
図3eに見られるように、関連する回折光学素子60aの回折構造パターン64aの極86と称する点から出る、図示の不利な実施形態における(被検波66の)個別光線66-4及び(較正波68の)68a-4は、同じ経路に沿って進む。極86では、関連する回折構造パターン64aの2つの関連する位相関数間の差はゼロであり、回折構造パターン64aの溝間隔が比較的大きくなる。これらはさらに、回折強度に悪影響を及ぼし得る。簡単に言うと、この場合は、回折構造パターン64aのギャップにつながる。既に上述したように、非回転対称形状、特に非点形状を用いて較正波68に利用可能な較正波68の構成の自由度により、このような極を回避することができる。
【0064】
一実施形態によれば、複数の光学面12の目標形状が、それぞれ自由曲面の形態を有し、70%~90%の値のベストフィット球面からの各自由曲面の偏差の各非点収差成分を有するという点で同様であるとき、かかる複数の光学面の各形状の干渉計測のために、均一な較正面を用いて形状計測結果を較正することができる。この場合、均一な較正面は、ベストフィット球面からの較正面の偏差が複数の光学面の非点収差成分の平均値に対応する非点収差成分を有するように構成することができる。
【0065】
較正波68及び関連する較正物74の上記非回転対称形状の種々の実施形態を、図4図13を参照して以下で説明する。上述のように、非回転対称形状は、任意の回転対称形状からの偏差が50μm以上であることを特徴とする。以下に示す非回転対称形状の実施形態は、較正波70及び72等の、回折光学素子60の回折構造パターン64で生成されるさらに他の較正波で用いることができる。
【0066】
図4図13に示す実施形態の全てにおいて、以下では68fと称する較正波68の非回転対称形状は、図10に示す回転体88の表面89の一部の形状に対応する。この回転体88は、対称軸92について対称な回転面90を回転軸94周りに回転させることにより形成される。図示の実施形態において、対称軸は回転軸94と平行に配置される。代替的な実施形態において、対称軸92は、回転軸94に対して非平行に整列させることもできる。その軸対称性から「鏡面対称」と表すこともできる回転面90は、例えば、回転対称、したがって円形(回転面90a参照)、又は楕円等の非回転対称(回転軸94に対して垂直な半長軸を有する回転面90b及び回転軸94に対して垂直な半短軸を有する回転面90c参照)であるよう構成され得る。
【0067】
回転軸94と対称軸92との間の距離は、回転体88の半径Rである。半径Rは、回転面90aの半径r又は対称軸92に対して垂直な回転面90b若しくは90cの半軸より大きいか、これらと等しいか、又は小さい場合がある。円形の回転面90aの場合、回転体88に関してR>rでは図10に示すリングトーラスが得られ、R=rではホーントーラスとして知られるものが得られ、R<rではスピンドルトーラスとして知られるものが得られる。円形の回転面90aの場合、本発明によればR≠0が当てはまる。
【0068】
楕円形の回転面90b及び90cの場合、R>aでは「楕円リングトーラス」、R=aでは「楕円ホーントーラス」、R<aでは「楕円スピンドルトーラス」とここでは称する類似の立体が得られる。楕円形の回転面90b又は90cの場合、R=0の場合も許容される。R=0の「楕円スピンドルトーラス」の例を図11に示す。
【0069】
図4及び図7では、リングトーラスの形態の図10に示す回転体88の表面89からの2つの異なる部分が、例としてそれぞれ較正波68の非回転対称形状68fとして選択されている。この形状68fは、図4にV-Vで示す線又は図7にVIII-VIIIで示す線を通る鏡面に対してそれぞれ鏡面対称である。図4に示す実施形態において、選択された部分はリングトーラスの外側にあり、したがって凸形状を有する。
【0070】
図5は、図4の右側部分に示す非回転対称形状68fの画像の線V-Vに沿った断面図を示し、図6は、上記画像の線VI-VIに沿った断面図を示す。換言すれば、図5及び図6は、相互に対して垂直に配置された横断面に沿った、正確には1つは1yz平面、1つはxz平面に沿った較正波68の波面の実施形態の断面を示す。これら2つの横断面のそれぞれで、波面の形状68fは円形状、したがって湾曲形状を有する。円形状は、湾曲方向が同じであり、各自の半径の形態の開口パラメータr又はrが異なる。
【0071】
図7に示す実施形態において、選択された部分はリングトーラスの内側にあり、したがって鞍形を有する。図8は、図7の右側部分に示す非回転対称形状68fの画像の線VIII-VIIIに沿った断面図を示し、図9は、上記画像の線IX-IXに沿った断面を示す。
【0072】
図5及び図6と同様に、図8及び図9は、相互に対して垂直に配置された横断面に沿った、正確には1つはyz平面、1つはxz平面に沿った図7に示す較正波68の波面の実施形態の断面を示す。ここでも、波面は、これら2つの横断面のそれぞれで円形状、したがって湾曲形状を有する。円形状は、湾曲方向が異なり、したがって開口パラメータが既に異なり、具体的には符号の半径が異なり(r>0又はr<0)、さらに、2つの半径の絶対値も異なる(|r|<|r|)。
【0073】
R=0の「楕円スピンドルトーラス」の形態の図11に示す回転体88の実施形態において、回転体88の前側で選択された部分68fは、図5に示す部分と同様に凸形状を有するが、放物線状の断面プロファイルである。部分68fの形状は、XII-XIIで示す線を通る鏡面に対して鏡面対称である。
【0074】
図12は、図11の右側部分に示す非回転対称形状68fの画像の線XII-XIIに沿った断面図を示し、図13は、上記画像の線XIII-XIIIに沿った断面図を示す。換言すれば、図12及び図13は、相互に対して垂直に配置された横断面に沿った、正確には1つはyz平面、1つはxz平面に沿った較正波68の波面の実施形態の断面を示す。これら2つの横断面のそれぞれで、波面の形状68fは、放物線形状96-1又は96-2の頂点領域98にそれぞれ近似し、したがって湾曲形状を有する。
【0075】
図12に示す放物線形状96-1は、z=a+bと記述することができ、図13に示す放物線形状96-2は、z=a+bと記述することができ、この場合はb=0及びb=0である。放物線開口の形態の放物線形状の開口パラメータa及びaは、相互に異なる(a<a)。よって、図11に示す実施形態の較正波68の波面は、非点形状を有する。
【0076】
図16a及び図16bにおいて、光学面12の例示的な目標形状12aを、較正波68の非回転対称形状68f及びベストフィット円形状100と共に図12又は図13の各断面図で、すなわち2つの相互に直交する断面で示す。説明を目的として、図12及び図13のように、放物線形状96-1及び96-2の各頂点領域98に近似した形状が較正波68の非回転対称形状68fとして選択される。図16a及び図16bに示すベストフィット円形状100は、目標形状12aにベストフィットする球面の断面図をそれぞれ表し、したがって同じ半径を有する。
【0077】
図16a及び図16bの2つの断面図における光学面12の目標形状12aと較正波68の形状68fとの間の振れ102-1又は102-1、すなわち最大偏差をこのとき考慮した場合、目標形状12aとベストフィット円形状100との間の対応する振れ102a―1又は102a-2に比べて上記振れは大幅に小さくなることが明らかとなる。この振れの低減により、非対称形状68fを有する本発明による較正波68の使用は、従来技術で通常用いられるような球面較正波の使用に比べて回折光学素子60の達成可能な較正精度の大幅な向上を可能にする。
【0078】
図17において、図1の被検物14として指定されるタイプの光学素子の光学面12を、yz平面で概略的に示す。特に、光学素子14は、マイクロリソグラフィ露光装置の投影レンズの素子、特にEUV波長域用のミラー素子である。
【0079】
実際形状の光学面12に加えて、光学面の目標形状12aと目標形状12aにベストフィットする球面104の断面図とを、図16aと同様に図17に示す。2次元偏差D(x,y)で表す目標形状12aからの光学面12の実際形状の偏差を、大幅に拡大して概略的に示し、x及びyは表面12上の座標を示す。
【0080】
光学面12の全体で確認された偏差D(x,y)の二乗平均平方根は、100pm以下、特に20pm以下である。これに対し、目標形状12aは、ベストフィット球面104に比べて0.1mm~20mmの範囲の最大偏差Δを有し、すなわち最大偏差Δは0.1以上且つ20mm以下である。特に、範囲の下限値は1mm又は5mmであり、上限値は特に8mmであり得る。
【0081】
xz平面における光学素子14の光学面12の断面では、光学面12は、D(x,y)で表される偏差を除いて図16bに示す目標形状12aに沿って延びる。ベストフィット球面104からの目標形状12aの最大偏差は、この断面では図17に示す断面の偏差Δより小さい。この実施形態において、図17に示す断面での最大偏差は、他のどの断面におけるよりも大きい。したがって、図17に示す最大偏差Δは、既に上述したように、ベストフィット球面に対する最大偏差Δとみなされる。
【0082】
xz平面の目標形状12a(図16a)は、yz平面の目標形状12a(図16b)とは大きく異なるので、目標形状12aは、任意の回転対称非球面からの3次元形態の偏差が大きい。本実施形態によれば、任意の回転対称非球面からの目標形状12aの最大偏差は、5μm以上、特に10μm以上である。
【0083】
例示的な実施形態、実施形態、又は変形実施形態の上記説明は、例として示すと理解されたい。それにより行われる開示は、第1に当業者が本発明及びそれに関連する利点を理解できるようにし、第2に当業者の理解では自明でもある記載の構造及び方法の変更及び修正を包含する。したがって、添付の特許請求の範囲の記載に従って本発明の範囲内に入る限りの全てのそのような変更及び修正、並びに等価物は、特許請求の範囲の保護の対象となることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
10 干渉計測装置
12 光学面
12a 目標形状
14 被検物
16 干渉計
18 光源
20 照明放射線
22 レーザ
24 レーザビーム
26 集束レンズ素子
28 絞り
30 発散ビーム
32 レンズ群
34 ビームスプリッタ
36 フィゾー素子
38 フィゾー面
40 参照波
42 入力波
44 平面波面
46 取得デバイス
48 レンズ系
50 取得面
52 カメラチップ
54 評価デバイス
56 光軸
60 回折光学素子
60a 不利な実施形態の回折光学素子
62 基板
64 回折構造パターン
64a 不利な実施形態の回折構造パターン
66 被検波
66-1~66-6 被検波66の個別光線
68 較正波
68a-1~68a-6 較正波68aの個別光線
68f 非回転対称形状
70 較正波
72 較正波
74 第1較正物
74a 不利な実施形態の第1較正物
76 較正面
76a 較正物76の較正面
78 第2較正物
80 較正面
82 第3較正物
84 較正面
86 極
88 回転体
89 表面
90、90a、90b、90c 回転面
92 対称軸
94 回転軸
96-1、96-2 放射線形状
98 頂点領域
100 ベストフィット円形状
102-1、102-2 非回転対称較正波の使用時の振れ
102a-1、102a-2 球面較正波の使用時の振れ
104 ベストフィット球面
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図15
図16a
図16b
図17