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特許7561864レーザアブレーションによる可変深度構造の形成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】レーザアブレーションによる可変深度構造の形成
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20240927BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20240927BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20240927BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B27/02 Z
B23K26/36
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022554611
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 US2021016710
(87)【国際公開番号】W WO2021183236
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】16/818,457
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クルンチ, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】オルソン, ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンズ, モーガン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー ティマーマン タイセン, ラトガー
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0324202(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0143848(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス構造を形成する方法であって、
基板上にデバイス材料層を形成することと、
レーザアブレーションを使用して、前記デバイス材料層内に可変深度構造を形成することと、
前記デバイス材料層の上にハードマスク及びフォトレジストスタックを形成することであって、前記フォトレジストスタックは光学平坦化層とフォトレジスト層を備え、前記フォトレジスト層は前記光学平坦化層に直接接している、前記デバイス材料層の上にハードマスク及びフォトレジストスタックを形成することと、
前記フォトレジストスタックをエッチングすることと、
前記ハードマスクをエッチングすることと、
前記ハードマスクをエッチングした後に前記デバイス材料層をエッチングすることによって前記デバイス材料層内に複数のデバイス構造を形成することと、
を含む、デバイス構造を形成する方法。
【請求項2】
前記可変深度構造は、第1の末端から第2の末端へと深さが変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可変深度構造の前記深さが、前記第1の末端から前記第2の末端へと線形的に変化する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記可変深度構造の前記深さが、前記第1の末端から前記第2の末端へと非線形的に変化する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記可変深度構造の前記深さが、前記第1の末端から前記第2の末端へと変化し、周期的な深さのパターンを形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
デバイス構造を形成する方法であって、
基板上にデバイス材料層を形成することと、
前記デバイス材料上に犠牲層を形成することと、
レーザアブレーションを使用して、前記犠牲層内に可変深度構造を形成することと、
前記犠牲層の上にハードマスク及びフォトレジストスタックを形成することであって、前記フォトレジストスタックは光学平坦化層とフォトレジスト層を備え、前記フォトレジスト層は前記光学平坦化層に直接接している、前記犠牲層の上にハードマスク及びフォトレジストスタックを形成することと、
前記フォトレジストスタックをエッチングすることと、
前記ハードマスクをエッチングすることと、
前記ハードマスクをエッチングした後に前記デバイス材料層をエッチングすることによって前記デバイス材料層内に複数のデバイス構造を形成することと、
を含む、デバイス構造を形成する方法。
【請求項7】
前記可変深度構造は、第1の末端から第2の末端へと深さが変化する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記可変深度構造の前記深さが、前記第1の末端から前記第2の末端へと線形的に変化する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記可変深度構造の前記深さが、前記第1の末端から前記第2の末端へと非線形的に変化する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記可変深度構造の前記深さが、前記第1の末端から前記第2の末端へと変化し、周期的な深さのパターンを形成する、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、拡張現実、仮想現実、及び複合現実のための光学素子に関する。より具体的には、本明細書に記載される実施形態は、光学素子の、深さが変更されたデバイス構造を形成することを提供する。
【背景技術】
【0002】
仮想現実は、一般に、ユーザがあたかもそこに物理的に存在している、コンピュータが生成したシミュレートされた環境であると考えられる。仮想現実体験は、3Dで生成して、ヘッドマウントディスプレイ(HMD:head-mounted display)で、例えば、実際の環境に取って代わる仮想現実の環境を表示するための、レンズとしてのニアアイディスプレイパネルを有する眼鏡又は他のウェアラブルディスプレイデバイスで、見ることが可能である。
【0003】
しかしながら拡張現実では、ユーザが、眼鏡若しくは他のHMDデバイス、又はハンドヘルドデバイスのディスプレイレンズを通じて、周囲環境を未だ見ることが可能であるが、さらに加えて、ディスプレイに生成され環境の一部として出現する仮想オブジェクトの画像も見ることが可能な体験が可能となる。拡張現実は、音の入力及び触覚入力といった任意の種類の入力、並びにユーザが経験する環境を強化又は拡張する仮想画像、グラフィックス及び映像を含みうる。新たな技術として、拡張現実には多くの課題及び設計上の制約が存在する。
【0004】
そのような課題の1つは、周囲環境に重ねられた仮想画像を表示することである。光学素子は、画像を重ねるのを支援するために利用される。生成された光は、当該光が導波路から出て周囲環境に重ねられるまで、導波路を通って伝搬する。光学素子は不均一な特性を有する傾向にあるため、光学素子の作製は困難となりうる。これに対応して、当技術分野では、光学素子を作製する方法の改良が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、概して、表示装置又は他の用途において利用するためのデバイス構造を形成する方法に関する。より具体的には、本開示は、レーザアブレーションを使用して作製されたデバイス構造内での使用のための可変深度構造に関する。本明細書の方法は、ナノインプリントリソグラフィのためのマスタとして使用されるデバイス構造も形成することができる。
【0006】
一実施形態において、デバイス構造を形成する方法が提供される。本方法は、レーザアブレーションを使用して、デバイス材料層内に可変深度構造を形成することを含む。本方法は、デバイス材料層の上にハードマスク及びフォトレジストスタックを形成することも含む。本方法は、フォトレジストスタックをエッチングすることをさらに含む。本方法はまた、デバイス材料層内に複数のデバイス構造を形成することも含む。
【0007】
他の実施形態において、デバイス構造を形成する方法が提供される。本方法は、基板上にデバイス材料層を形成することと、レーザアブレーションを使用して、デバイス材料層内に可変深度構造を形成することと、を含む。本方法は、デバイス材料層の上にハードマスク及びフォトレジストスタックを形成することも含む。本方法は、フォトレジストスタックをエッチングすることと、デバイス材料層内に複数のデバイス構造を形成することと、をさらに含む。
【0008】
さらに別の実施形態において、デバイス構造を形成する方法が提供される。本方法は、基板上にデバイス材料層を形成することと、デバイス材料層上に犠牲層を形成することと、を含む。本方法は、レーザアブレーションを使用して、犠牲層内に可変深度構造を形成することをさらに含む。本方法は、デバイス材料層の上にハードマスク及びフォトレジストスタックを形成することも含む。本方法は、フォトレジストスタックをエッチングすることと、デバイス材料層内に複数のデバイス構造を形成することと、をさらに含む。
【0009】
本開示の上述の特徴を詳細に理解できるように、上記で簡単に要約されている本開示のより詳細な説明が、実施形態を参照することによって得られ、それらの実施形態の一部が添付図面に示される。しかしながら、添付の図面は例示的な実施形態を示しているのにすぎず、従って、その範囲を限定するものと見做すべきではなく、他の同等に有効な実施形態を許容しうることに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る光学素子の正面図である。
図2】一実施形態に係る、デバイス構造を形成する方法のフロー図である。
図3A】一実施形態に係る、可変深度構造の一部分の概略的な断面図である。
図3B】一実施形態に係る、可変深度構造の一部分の概略的な断面図である。
図3C】一実施形態に係る、可変深度構造の一部分の概略的な断面図である。
図3D】一実施形態に係る、可変深度構造の一部分の概略的な断面図である。
図3E】一実施形態に係る、可変深度構造の一部分の概略的な断面図である。
図3F】一実施形態に係る、可変深度構造の一部分の概略的な断面図である。
図3G】一実施形態に係る、可変深度構造の一部分の概略的な断面図である。
図3H】一実施形態に係る、可変深度構造の一部分の概略的な断面図である。
図4A-C】可変深度構造の形状の例の拡大断面図である。
図5A】可変深度構造の三次元形状の例の斜視図である。
図5B】可変深度構造の三次元形状の例の斜視図である。
図5C】可変深度構造の三次元形状の例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
理解が容易になるよう、可能な場合には、各図に共通する同一の要素を示すために同一の参照番号を使用した。1の実施形態の構成要素及び特徴が、更なる記載がなくとも、他の実施形態に有益に組み込まれうることが想定されている。
【0012】
本明細書に記載の実施形態は、深さが可変的な傾斜したデバイス構造を有するデバイス構造を形成する方法に関する。このことを実現するために、方法は、レーザアブレーションを使用して、デバイス材料層内に可変深度構造を形成することを含む。複数のチャネルが、可変深度構造において形成され、当該可変深度構造において傾斜したデバイス構造が画定される。可変深度構造が、レーザアブレーションを使用して形成され、傾斜したデバイス構造が、選択的なエッチングプロセスを使用して形成される。本明細書に記載の方法は、ナノインプリントリソグラフィのためのマスタとして機能するデバイス構造を作製するためにも使用されうる。
【0013】
図1は、光学素子100の正面図である。以下に記載する光学素子100は例示的な光学素子であると理解されたい。一実施形態において、光学素子100は、拡張現実感導波路コンバイナといった導波路コンバイナである。他の実施形態において、光学素子100は、メタサーフェスといった平坦な光学素子である。光学素子100は、複数のデバイス構造104を含む。デバイス構造104は、サブミクロン寸法、例えば、1μm未満の臨界寸法といったナノサイズの寸法を有するナノ構造とすることができる。一実施形態において、デバイス構造104の領域が、格子領域102a及び102bといった1つ以上の格子102に対応している。一実施形態において、光学素子100は、第1の格子領域102a及び第2の格子領域102bを含み、第1の格子領域102a及び第2の格子領域102bのそれぞれが、複数のデバイス構造104をそれぞれ含んでいる。
【0014】
格子102の深さは、本明細書に記載の実施形態では、格子領域102a及び102bを通じて変化しうる。幾つかの実施形態において、格子102の深さは、第1の格子領域102aにわたって、及び第2の格子領域102bにわたって滑らかに変化しうる。例示的な一実施形態において、深さが、格子領域のうちの1つにわたって約10nmから約400nmまでの範囲でありうる。格子領域102aは、例示的な実施形態において、所定の側面において約20mmから約50mmまでの範囲でありうる。従って、一例として、格子102の深さの変化の角度が、0.0005度のオーダでありうる。
【0015】
本明細書に記載の実施形態では、デバイス構造104が、レーザアブレーションを使用して作製されうる。本明細書では、レーザアブレーションは、デバイス材料において三次元の微細構造を作製するために、又は任意選択的に、可変深度構造処理の一部として、デバイス材料を覆う犠牲層内に可変深度構造を作製するために使用される。レーザアブレーションを使用してデバイス構造104を作製することで、既存の方法より少ない処理工程、及び既存の方法より高い可変深度分解能が可能となる。
【0016】
図2は、可変深度構造を有する、図3A図3Hに示される光学素子300の一部分を形成する方法200のフロー図であり、光学素子300の上記一部分が、格子領域102a又は102bと対応している。工程201では、図3Aに示すように、デバイス材料層306が基板302の表面の上に形成される。基板302が、所望の波長又は波長範囲内の光を適切に透過させることができ、かつ光学素子300の上記一部分のための適切な支持体として機能することができるという前提で、基板302は、任意の適切な材料から形成されうる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態において、基板302の材料は、1つ以上のケイ素(Si)含有材料、二酸化ケイ素(SiO)含有材料、又はサファイア含有材料を含むが、これらに限定されない。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる他の実施形態において、基板302の材料は、屈折率が約1.7と約2.0との間の材料を含むが、これに限定されない。
【0017】
デバイス材料層306は、物理的気相堆積(PVD:Physical Vapor Deposition)プロセス、化学気相堆積(CVD:chemical vapor deposition)プロセス、プラズマ強化(PECVD:plasma-enhanced)プロセス、流動性CVD(FCVD:flowable CVD)、原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)プロセス、又はスピンオンプロセスのうちの1つ以上によって、基板302の表面の上に配置されうる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態において、デバイス材料層306のデバイス材料が、光学デバイス300の上記一部分の複数のデバイス構造104のそれぞれの変更された深さ及び傾斜角と、基板302の屈折率と、に基づいて選択される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態において、デバイス材料層306は、窒化ケイ素(SiN)含有材料、シリコンオキシカーバイド(SiOC)含有材料、二酸化チタン(TiO)含有材料、二酸化ケイ素(SiO)含有材料、酸化バナジウムVOx(IV)含有材料、酸化アルミニウム(Al)含有材料、酸化インジウムスズ(ITO)含有材料、酸化亜鉛(ZnO)含有材料、五酸化タンタル(Ta)含有材料、窒化ケイ素(Si)含有材料、二酸化ジルコニウム(ZrO)含有材料、又は炭窒化ケイ素(SiCN)含有材料のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態において、デバイス材料層306のデバイス材料は、約1.5と約2.65との間の屈折率を有しうる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる他の実施形態において、デバイス材料層306のデバイス材料は、約3.5と約4.0との間の屈折率を有しうる。
【0018】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態において、エッチング停止層304が、任意選択的に、基板302とデバイス材料層306との間の基板302の表面上に配置されうる。エッチング停止層304は、PVDプロセス、CVD、PECVDプロセス、FCVDプロセス、ALDプロセス、又はスピンオンプロセスのうちの1つ以上によって配置されうる。エッチング停止層304が本明細書に記載のエッチングプロセスに対して耐性があるという前提で、エッチング停止層304は、任意の適切な材料から形成することができ、例えば、とりわけ、窒化チタン(TiN)又は窒化タンタル(TaN)から形成することができる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態において、エッチング停止層304は、デバイス構造104が形成された後に除去される非透過性エッチング停止層である。他の実施形態において、エッチング停止層304は、透過性エッチング停止層である。
【0019】
工程202において、図3Bに示すように、犠牲層308が、デバイス材料層306の上に形成される。一実施形態において、犠牲層308は、SiN層、SiOx層又はフォトレジスト層である。一実施形態において、犠牲層308を形成することが、デバイス材料層306の上にレジスト材料を配置することと、リソグラフィプロセスを利用してレジスト材料を現像することと、を含む。レジスト材料は、感光性ポリマー含有材料を含みうるが、これに限定されない。レジスト材料を現像することは、フォトリソグラフィ、デジタルリソグラフィ及び/又はレーザアブレーションといった、リソグラフィプロセスを実施することを含みうる。本実施形態では、左側が深さD、右側が深さD’の長さLにわたって、犠牲層308に対してレーザアブレーションが実施され、犠牲層308の範囲内に可変深度構造301の形状が作られる。上述のように、レーザアブレーションを使用して、犠牲層308において任意の所望の一次元、二次元、又は三次元形状を作ることができる。レーザアブレーションでは、除去すべき領域にわたって走査するレーザ光線の可変的なパルス繰り返しが使用される。グレートーンレジストプロセスといった他の可変深度プロセスに対するレーザアブレーションの1つの利点は、レーザアブレーションが、限られた保存可能期間を有しうるグレートーンレジストを使用する化学的プロセスとは対照的な物理的プロセスだということである。レーザアブレーションはまた、マスクを必要とせずに、より高速のスループット及び可変深度構造へのより迅速な変化をもたらす。レーザアブレーションはまた、典型的なエッチングプロセスに対して、空間的な忠実度又は解像度の向上をもたらす。
【0020】
本実施形態では、工程203において、次いで、犠牲層308の可変深度構造301に対して転写エッチングプロセスが実施され、デバイス材料層306の範囲内に可変深度構造301が形成される。工程203の結果が、図3Cに示されている。本実施形態では、転写エッチングプロセスによって犠牲層308を除去し、下にあるデバイス材料層306をエッチングして、デバイス材料層306の範囲内に可変深度構造301を生成する。
【0021】
本実施形態における可変深度構造301は、第1の末端と第2の末端との間の長さLを有する。可変深度構造301の第1の末端が深さFを有し、第2の末端が深さF’を有する。即ち、可変深度構造301の深さは、第1の末端において最小であり、第2の末端において最大である。FからF’にかけての深さはおおまかに、約0nmから約700nmの範囲内にある。本実施形態では、長さLは、深さF及びF’と比べてかなり大きい。例えば、長さLは約25mmとすることができ、第1の末端における深さFは約0nm~約50nmであり、第2の末端における深さF’は約250nm~約700nmである。これに対応して、可変深度構造301は、実質的に浅い傾斜を有する。本実施例では、傾斜の角度は1度未満であり、例えば0.1度未満、例えば、約0.0005度である。可変深度構造301の傾斜は、ここでは明確にするために、誇張された角度で示されている。
【0022】
デバイス設計プロセスが上述の犠牲層308の堆積を必要としない、他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態において、レーザアブレーションは、デバイス材料層306に対して直接的に実施され、可変深度構造301が形成されうる。レーザアブレーションが、左側が深さF、右側が深さF’の長さLにわたって、可変深度構造301の形状を生成するために実施される。一実施形態において、長さLにわたる可変深度構造301の形状は、深度レベルが変化する楔の形状をしている。可変深度構造301の形状によって、図3Hに示されるような、基板302にわたるデバイス構造104の深さDの変更が決定される。
【0023】
工程204において、ハードマスク312が、デバイス材料層306及び可変深度構造301の上に配置される。工程204の結果が、図3Dに示されている。ハードマスク312は、液体材料注入成形プロセス、スピンオンコーティングプロセス、液体スプレーコーティングプロセス、乾燥粉末コーティングプロセス、スクリーン印刷プロセス、ドクターブレード(doctor blading)プロセス、PVDプロセス、CVDプロセス、PECVDプロセス、FCVDプロセス、ALDプロセス、蒸着プロセス、又はスパッタリングプロセスのうちの1つ以上によって、デバイス材料層306の上に配置されうる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態において、ハードマスク312は非透過性であり、光学デバイス300の一部分が形成された後で除去される。他の実施形態において、ハードディスク312は透過性である。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態において、ハードマスク312は、クロム(Cr)、銀(Ag)、Si、SiO、TiN、又は炭素(C)を含む材料を含むが、これらに限定されない。ハードマスク312は、ハードマスク312の厚さが実質的に均一になるように堆積することができる。さらに別の実施形態において、ハードマスク312は、デバイス材料層306上の様々な点で厚さが約30nmから約50nmまで変化するように、堆積されうる。ハードマスク312は、当該ハードマスク312の傾斜が可変深度構造301の傾斜と似ているように、堆積されている。
【0024】
工程205において、有機平坦化層314がハードマスク312の上に配置される。工程205の結果が、図3Eに示されている。有機平坦化層314は、感光性材料を含む感光性有機ポリマーを含むことができ、感光性材料は、電磁(EM)放射に曝露されると化学的に変化し、従って、現像溶媒で除去されるよう構成されている。有機平坦化層314は、任意の有機ポリマーと、有機ポリマーの分子構造に結合しうる分子構造を有する光活性化合物と、を含みうる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態において、有機平坦化層314が、スピンオンコーティングプロセスを使用して配置されうる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる他の実施形態において、有機平坦化層314は、ポリアクリレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、又はベンゾシクロブテン(BCB)のうちの1つ以上を含みうるが、これらに限定されない。
【0025】
図3Eに示されるように、実質的に平面的な上面が形成されるように、有機平面化層314は厚さが変化する。傾斜したコンフォーマルな(conformal)ハードマスク312と、有機平面化層314の実質的に平面的な上面と、の間の空間が、完全に充填され、楔形状の傾斜した構造301にわたって厚さが変化するように、有機平面化層314は厚さが変化する。
【0026】
図3E図3Hを参照すると、工程206において、パターニングされたフォトレジスト316が、有機平坦化層314の上に配置される。パターニングされたフォトレジスト316は、有機平坦化層314上にフォトレジスト材料を配置しフォトレジスト材料を現像することによって、形成される。パターニングされたフォトレジスト316が、図3Eに示すハードマスクパターン315を定め、このハードマスクパターン315は、図3Gに示された、デバイス材料層306の露出区分321に対応している。ハードマスク315は、傾斜したデバイス構造104を形成するためのパターンガイドとして機能する。図3Gに示される、エッチングされるデバイス材料層306の露出区分321は、図3Hに示されるデバイス構造104間の間隙324に対応している。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態において、フォトレジスト材料が、スピンオンコーティングプロセスを使用して、有機平坦化層314上に配置されうる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる他の実施形態において、パターニングされたフォトレジスト316は、感光性ポリマー含有材料を含みうるが、これに限定されない。フォトレジスト材料を現像することは、フォトリソグラフィ及び/又はデジタルリソグラフィといったリソグラフィプロセスを実施することを含みうる。
【0027】
工程207において、レジストハードマスクパターン315によって露出した、有機平坦化層314の有機平坦化層の部分317が除去される。有機平坦化層の部分317を除去すると、ハードマスクパターン315のネガのハードマスク部分319が露出し、このネガのハードマスク部分319は、デバイス構造104間の間隙324に対応している。有機平坦化層の部分317は、IBE、RIE、方向性RIE、プラズマエッチング、ウェットエッチング、及び/又はリソグラフィによって除去されうる。工程207の結果が図3Fに示されている。
【0028】
工程208において、ハードマスクパターン315のネガのハードマスク部分319がエッチングされる。工程208の結果が図3Fに示されている。ネガのハードマスク部分319をエッチングすると、デバイス材料層306の露出区分321が露出し、この露出区分321は、ハードマスクパターン315に対応している。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態において、ネガのハードマスク部分319をエッチングすることは、IBE、RIE、指向性RIE、又はプラズマエッチングのうちの少なくとも1つを含みうるが、これらに限定されない。
【0029】
工程209において、パターニングされたフォトレジスト316及び有機平坦化層314が除去される。工程208の結果が、図3Gに示されている。有機平坦化層314及びパターニングされたフォトレジスト層316を剥離すると、ネガのハードマスク部分319のセットが得られる。
【0030】
工程210において、エッチングプロセスが実施される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態において、角度を付けたエッチングが実施される。角度を付けたエッチングプロセスは、IBE、RIE、又は方向性RIEのうちの少なくとも1つを含みうるが、これらに限定されない。IBEによって生成されるイオンビームは、リボンビーム、スポットビーム、又はフル基板サイズのビームのうちの少なくとも1つを含みうるが、これらに限定されない。角度を付けたエッチングプロセスを実施すると、デバイス材料層306の露出区分321がエッチングされ、複数のデバイス構造104が形成される。図3Hに示されるように、角度を付けたエッチングプロセスによって、複数のデバイス構造104が形成され、これにより、デバイス構造104は、基板302の表面に対して傾斜角θを有する。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態において、各デバイス構造104の傾斜角θが実質的に同じである。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる他の実施形態において、複数のデバイス構造104のうちの少なくとも1つのデバイス構造の傾斜角θが異なっている。
【0031】
デバイス構造のパターン310は、デバイス構造104の深さDが設けられており、基板302にわたって勾配が変更されている。例えば、図3Hに示されるように、デバイス構造104の深さDが、基板302にわたってX方向に減少する。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態において、デバイス構造104の深さDの勾配が連続的である。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態において、デバイス構造104の深さDの勾配が段階状である。上述したように、デバイス構造104の深さDを変更することで、光学素子100の格子102による光の入射及び出射の制御がもたらされる。
【0032】
工程211において、ハードマスク312を剥離するために、任意選択の工程が実施されうる。幾つかの実施形態において、ウェット洗浄が行われうる。
【0033】
本明細書に記載のレーザアブレーションプロセスによって、有利に、可変深度構造が、1つ以上の方向に傾斜及び/又は湾曲を有することが可能となる。図4A図4Cは、可変深度構造のために使用可能な形状の他の例を示している。図4Aは、光学素子400の一部分のデバイス材料層406における可変深度構造420を示している。可変深度構造420は、2つの平面的な傾斜部を有し、この2つの平面的な傾斜部は、それぞれの周辺領域420a、420bから中央領域420cに向かって延びている。図4Bは、光学素子430の一部分のデバイス材料層436における可変深度構造450を示している。可変深度構造450は、湾曲した構造をしており、周辺領域450a、450bでは深さDが浅く、中央領域450cにおいて深さが増大する。一例において、可変深度構造450は放物線状の形状をしている。深さDは、周辺領域450a、450bから中央領域450cへと非線形的に増大する。図4Cは、光学素子460の一部分のデバイス材料層466における可変深度構造480を示している。可変深度構造480は、第1の末端480aから第2の末端480bへと深さDが変動しており、このことにより、可変深度構造480の周期的な深さDのパターンが形成される。深さDが線形的に、のこぎり歯状に変動する可変深度構造480が示されている。しかしながら、深さDは非線形的に変化することができ、これにより、可変深度構造は深さDが波状に変動しうることが考えられる。可変深度構造、例えば楔形状の可変深度構造420、450、480の深さDは、可変深度構造の長さLにわたって、第1の末端(即ち、420a、450a、480a)から第2の末端(即ち、420b、450b、480b)へと線形的又は非線形的に変化しうる。グレースケールリソグラフィ、レーザアブレーション、及び、本明細書に記載の技術を利用して、形状が変化する可変深度構造が、従来技術で必要とされる複数回の工程の代わりに、単一パスでパターニングされうる。
【0034】
他の例において、可変深度構造が三次元形状を有する。即ち、深さが、図5A図5Cの例で示すように、複数の方向に(即ち、第1の方向X、及び、第2の方向Y)で変化する。図5Aは、鞍点形状に湾曲している(即ち、双曲放物面形状をしている)可変深度構造520を示している。図5Bは、正の曲率を有する楕円放物面の形状をした可変深度構造550を示している。図5Cは、負の曲率を有する楕円放物面の形状をした可変深度構造580を示している。可変深度構造の三次元形状は、図5A図5Cの例には限定されない。他の所望の形状、例えば、とりわけ、正の曲率又は負の曲率を有する平方領域における放物面、楕円面、及び、線形状に傾斜した形状もここでは考えられ、利用されうる。これらのケースでは、可変深度構造の深さが、X方向とY方向の両方において変化する。従って、傾斜したデバイス構造の上面は、可変深度構造の曲率の形状によって定義されるように湾曲する。
【0035】
まとめると、深さが可変的な、傾斜したデバイス構造を有するデバイス構造を形成する方法が、本明細書に記載される。本方法は、レーザアブレーションを使用して、デバイス材料層において、深さが変更された可変深度構造を形成することを含む。複数のデバイス構造が、可変深度構造において形成され、当該可変深度構造において傾斜したデバイス構造が画定される。可変深度構造がレーザアブレーションを使用して形成され、傾斜したデバイス構造が、エッチングプロセスを用いて形成される。本明細書に記載の方法は、ナノインプリントリソグラフィのためのマスタとして機能するデバイス構造を作製するためにも使用されうる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A-C】
図5A
図5B
図5C