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特許7561882半導体製造プロセスで使用される敏感な層の試料損傷を防いで走査型電子顕微鏡撮像を可能にする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体製造プロセスで使用される敏感な層の試料損傷を防いで走査型電子顕微鏡撮像を可能にする方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240927BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/66 J
H01J37/22 502B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022578861
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 US2021038788
(87)【国際公開番号】W WO2021262913
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】202041027103
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】63/063,975
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/182,925
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パタンギ ハリ スリラマン
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-170924(JP,A)
【文献】再公表特許第2002/037527(JP,A1)
【文献】特開2011-154918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01J 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハ上の一部位の画像フレーム取り込みのために、電子ビームを、損傷閾値より小さい第1の電子ドーズの値で、方向付けることであって、前記半導体ウェハが有機材料の層を含むことと、
続いて、前記部位の第2の画像フレーム取り込みのために、前記電子ビームを、前記第1の電子ドーズの値より大きい第2の電子ドーズの値で、方向付けることと、
を含み、
前記第1の電子ドーズの値及び前記第2の電子ドーズの値は、ドーズ量、電子ドーズを受ける領域、及び画像フレームを取り込む時間を用いてそれぞれ決定され
前記第2の電子ドーズの値が前記損傷閾値より大きい、
方法。
【請求項2】
前記第2の電子ドーズの値を有する前記電子ビームを使用して、前記部位を撮像することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記層がフォトレジスト層である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記層が反射防止コーティングである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
プロセッサによって、前記有機材料のデータを使用して、前記損傷閾値を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
電子ビームを生成する電子ビーム源と、
前記電子ビームの経路に半導体ウェハを保持するように構成されたチャックと、
前記半導体ウェハが有機材料の層を含み、
前記半導体ウェハから前記電子ビームを受け取る検出器と、
前記電子ビーム源および前記検出器と電子通信するプロセッサと、を含むシステムであって、
前記プロセッサが、前記半導体ウェハ上の一部位の第1の画像フレーム取り込みのために、前記電子ビームを、損傷閾値より小さい第1の電子ドーズの値に調整するように、かつ、
前記部位の前記第1の画像フレーム取り込みに続く前記部位の第2の画像フレーム取り込みのために、前記電子ビームを、前記第1の電子ドーズの値より大きい第2の電子ドーズの値に調整するように構成されるとともに、前記第1の電子ドーズの値及び前記第2の電子ドーズの値は、ドーズ量、電子ドーズを受ける領域、及び画像フレームを取り込む時間を用いてそれぞれ決定され
前記第2の電子ドーズの値が、前記損傷閾値より大きい、
システム。
【請求項7】
前記第2の電子ドーズの値を有する電子ビームを使用して、前記部位を撮像することをさらに含む、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記層が、フォトレジスト層である、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記層が、反射防止コーティングである、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサがさらに、前記有機材料のデータを使用して、前記損傷閾値を決定するように構成されるとともに、
前記プロセッサが、電子データ記憶ユニットから前記有機材料の前記データを取り出し、前記データが、スキャンレートおよび視野に基づいた前記有機材料の結果を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の電子ドーズの値および前記第2の電子ドーズの値は電子ドーズ/nm/タイムで測定される、
請求項に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体の撮像に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2020年6月26日に出願されたインド特許出願第202041027103号および2020年8月11日に出願された米国特許出願第63/063975号の優先権を主張し、これらの開示を参照により本明細書に援用する。
【0003】
半導体製造業界の発展により、歩留まり管理、特に計測および検査のシステムに課せられる要求が大きくなっている。パターンの線幅(CD、Critical Dimension)の微細化が進む中、高歩留まりかつ高価値の製造を達成するため、時間についても短縮することが求められる。歩留まり上の問題を検出してからそれを修正するまでの総所要時間を最小限にすることが、半導体メーカの投資利益率を左右する。
【0004】
論理デバイスやメモリデバイスなどの半導体デバイスの製造は、その半導体デバイスの様々な機能や複数の階層を形成するために、典型的には、1枚の半導体ウェハを多数の製造プロセスで処理することを含んでいる。例えば、リソグラフィとは、レチクルから、半導体ウェハ上に配置されたフォトレジストへの、パターンの転写に関わる一半導体製造プロセスである。半導体製造プロセスの例には他にも、化学機械研磨(CMP)、エッチング、成膜、およびイオン注入が含まれるが、これらに限定されない。単一の半導体ウェハ上に製造された複数の半導体デバイスの配列は、個々の半導体デバイスに切り離され得る。
【0005】
半導体製造で使用するウェハを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像することが、計測、故障分析、欠陥検査、および欠陥レビューに一般に利用されている。SEMツールは、典型的には、定期的に製造ラインにフィードバックを提供しながら、所有コストを低く抑えるために可能な限り高いスループットで動作する。このスループットは、ビーム電流を小さくすると低下し得る。ビーム電流は、微小時間毎に試料に衝突する電子の総個数を支配している。ビーム電流が大きいほど、SEMツールは、より少ないフレームで、かつ/またはより速いスキャンレートで高画質の試料画像を取り込みできるようになることから、SEMツールのスループットが向上する。ただし、ビーム電流が大きくなると、ウェハ上の有機層が損傷し得る。こういった有機層には、フォトレジスト、反射防止コーティング、またはリソグラフィ反射率制御用のスピンオン層が含まれ得る。それ以外の、ウェハ上に存在する電子ビーム照射に敏感な無機層もまた、より大きなビーム電流で損傷し得る。
【0006】
この損傷を回避するために、最大ビーム電流が製造時に導入され得る。この電流は、リソグラフィプロセス後の現像後検査(ADI)のウェハ、およびその他の敏感な層に適用され得る。例えば、オーバーレイ計測およびCD均一性計測の使用事例に対して、最大ビーム電流が導入され得る。これらの事例は通常、仕様外のウェハをリワークできるようにするためにADIステップで実行される。ただし、最大ビーム電流によって、SEMツールのスループットが制限され得る。層の材料または用途が変われば、最大ビーム電流でもやはり損傷が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第6803572号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、改善された方法とシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一方法が、第1の実施形態で提供される。上記方法では、半導体ウェハ上の一部位の画像フレーム取り込みのために、電子ビームが、損傷閾値より小さい第1の電子ドーズ/nm/タイムの値で、方向付けられる。上記半導体ウェハは、有機材料の層を含む。続いて、上記部位の第2の画像フレーム取り込みのために、上記電子ビームが、上記第1の電子ドーズ/nm/タイムの値より大きい第2の電子ドーズ/nm/タイムの値で、方向付けられる。
【0010】
上記損傷閾値は、ビーム電流に応じて決まり得る。
【0011】
上記第2の電子ドーズ/nm/タイムの値は、上記損傷閾値より大きくなり得る。
【0012】
上記方法はさらに、上記第2の電子ドーズ/nm/タイムの値を有する電子ビームを使用して、上記部位を撮像することを含み得る。
【0013】
上記層は、フォトレジスト層または反射防止コーティングであり得る。
【0014】
上記方法はさらに、プロセッサによって、上記有機材料のデータを使用して、上記損傷閾値を決定することを含み得る。
【0015】
一システムが、第2の実施形態で提供される。上記システムは、電子ビームを生成する電子ビーム源と、上記電子ビームの経路に半導体ウェハを保持するように構成されたチャックと、上記半導体ウェハから上記電子ビームを受け取る検出器と、上記電子ビーム源および上記検出器と電子通信するプロセッサを含む。上記半導体ウェハは、有機材料の層を含む。上記プロセッサは、上記半導体ウェハ上の一部位の画像フレーム取り込みのために、上記電子ビームを、損傷閾値より小さい第1の電子ドーズ/nm/タイムの値に調整し、上記部位の上記第1の画像フレーム取り込みに続く上記部位の第2の画像フレーム取り込みのために、上記電子ビームを、上記第1の電子ドーズ/nm/タイムの値より大きい第2の電子ドーズ/nm/タイムの値に調整するように構成される。
【0016】
上記損傷閾値は、ビーム電流に応じて決まり得る。
【0017】
上記第2の電子ドーズ/nm/タイムの値は、上記損傷閾値より大きくなり得る。
【0018】
上記部位は、上記第2の電子ドーズ/nm/タイムの値を有する電子ビームを使用して、撮像され得る。
【0019】
上記層は、フォトレジスト層または反射防止コーティングであり得る。
【0020】
上記プロセッサはさらに、上記有機材料のデータを使用して、上記損傷閾値を決定するように構成され得る。上記プロセッサは、電子データ記憶ユニットから上記有機材料の上記データを取り出し得る。上記データは、スキャンレートおよび視野に基づいた上記有機材料の結果を含む。
【0021】
本開示の本質および目的を十分に理解するために、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】損傷がないことを示すSEM画像例である。
図2】高電子ドーズによる気泡状の損傷を示すSEM画像例である。
図3】高電子ドーズによるハニカムまたはボロノイ状パターンの損傷を示すSEM画像例である。
図4】高電子ドーズによるくぼみ状の損傷を示すSEM画像例である。
図5】電子ドーズの形態を様々に変えた変調の挙動を示す結果の表である。
図6A】本開示による方法の図である。
図6B】本開示による方法の図である。
図7】本開示によるシステムの実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで請求する主題について、特定の実施形態を用いて説明するが、本明細書に記載の利点および特徴の全てを提供しない実施形態を含むそれ以外の実施形態もまた、本開示の範囲に含まれる。本開示の範囲から逸脱することなく、様々な構造的、論理的、工程段階的、かつ電子的な変更を行うことができる。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義される。
【0024】
本明細書で開示する実施形態は、SEMツールを使用する際の試料の損傷を防止し得る。ウェハ検査、ウェハレビュー、またはウェハ計測に対して、高品質かつ高スループットの電子ビームの使用が実現され得る。
【0025】
典型的には、ビーム電流(BC)が5nAを超えると、有機層、または半導体処理で使用される、電子ビームに敏感な材料に損傷が生じ得る。この損傷が図1~4に示されている。図1は損傷のないSEM画像を示している。図2~3は、電子ビームによって引き起こされる様々なタイプの損傷を示している。この損傷(図2のものなど)により、パターンエッジのラフネスにも影響が及び得る。
【0026】
電子ビームによるこういった材料の損傷は、電子ドーズ(e)の影響を受ける。電子ドーズは、e/nm/タイムとして測定され得る。ここで、タイム(t)は、個別の撮像条件においての1フレームを取り込むために必要な時間である。面積の大きさとしてnmを特に示しているが、他の面積の大きさも使用され得る。半導体ウェハ上の特定の部位で使用される最初の画像フレームの、こういった撮像条件を変えることにより、損傷確率に影響が及び得る。一実施例では、同じe/nm/タイムの値でも、その値を使用してビーム電流を様々に変えたところ、20nAを超えるビーム電流で損傷が観察された。損傷に対する閾値ドーズは、ビーム電流と共に変化していく。ビーム電流が小さいほど、閾値ドーズも比例して小さくなる。
【0027】
損傷の発生は、電子ドーズによるものだけではない。したがって、ドウェルタイムを変えることで、損傷が必ずしもなくなる、または低減されるとはいえない場合がある。ツールの性能には、典型的には、一定の最小ドウェルタイムが必要である。損傷を防ぐためにドウェルタイムを短くすると、ツールの性能が低下する。これは通常、半導体メーカにとって容認できるものではない。
【0028】
高ビーム電流は損傷の原因になり得るものであるが、本明細書で開示する実施形態を用いると、ウェハ上の材料を損傷することなく高ビーム電流を使用することができる。本明細書で開示する実施形態は、損傷を発生させることなく高ビーム電流を使用するための解決策を示す。本明細書に開示しているとおり、e/nm/タイムがADIの損傷を決定する。図6A~6Bは、ADIの損傷または別の損傷を低減またはなくすことができる方法100を示している。
【0029】
図6Aでは、半導体ウェハ101は、有機材料102の層を含む。有機材料102の層は、例えば、フォトレジストまたは反射防止コーティングであり得る。フォトレジストは、半導体製造で使用される193iフォトレジストであっても、別のフォトレジストであってもよい。電子ビーム100Aが、画像フレーム取り込みのために、半導体ウェハ101上の部位103に方向付けられる。電子ビーム100Aは、損傷閾値より小さい第1の電子ドーズ/nm/タイムの値を有する。第1の電子ドーズ/nm/タイムの値は、ある特定のビーム電流におけるものであり得る。電子ビーム100Aは、実際の画像取り込みシーケンスの前の予備照射ステップの一部であり得る。この予備照射ステップは、単一のフレームで行われ得る。予備照射ステップでは、有機材料102の層を硬化させ得る。この予備照射ステップで、有機材料102の層のフォトレジストの化学的性質または別の材料特性が変化し得る。例えば、電子ビーム照射時にフォトレジスト鎖が架橋され得るか、または他のメカニズムが起こり得る。正確なメカニズムは、フォトレジストの化学的性質またはフォトレジストの官能基によって決まり得る。
【0030】
特定の層または材料のための上記損傷閾値は、ウェハに対するドーズの偏りを調整して、損傷を与える最小ドーズを判定することによって決定することができる。したがって、この損傷閾値を決定するために、1つの層または材料の様々な電子ビーム特性の実験結果を保存しておき、それらにアクセスすることができる。
【0031】
次に図6Bでは、上記に続いて、電子ビーム100Bが、部位103の第2の画像フレーム取り込みのために、方向付けられる。電子ビーム100Bは、第1の電子ドーズ/nm/タイムの値とは異なる第2の電子ドーズ/nm/タイムの値を有する。電子ビーム100Bは、一実施例では、第1の電子ドーズ/nm/タイムの値より大きい第2の電子ドーズ/nm/タイムの値を有する。ただし、第2の電子ドーズ/nm/タイムの値は、上記損傷閾値より大きくても、小さくても、同じであってもよい。一実施例では、第2の電子ドーズ/nm/タイムの値は、上記損傷閾値よりも大きい。これにより、ウェハに損傷を与えることなくスループットが向上し得る。部位103は、第2の電子ドーズ/nm/タイムの値を有する電子ビーム100Bを使用して撮像され得る。
【0032】
第1の電子ドーズを決定する式は、(e/nm/フレーム)=((625*BC)/SR)/((FoV*1000)/PD)である。この式では、eはドーズ、BCはビーム電流、SRはスキャンレート(つまり、ドウェルタイム)である。PDはピクセル密度(つまり、画像サイズ)であり、FoVは視野(単位はミクロン)である。この式の値は、上記損傷閾値よりも小さくすべきである。同じ式が第2の電子ドーズの決定に使用され得るが、その値は必ずしも上記損傷閾値よりも小さいとは限らない。一実施例では、第1の電子ドーズは約30であり、第2の電子ドーズは約600である。
【0033】
上記式はe/nm/フレームを用いてここに開示しているが、同じことがe/nm/タイムにも適用され得る。e/nm/タイムを使用した画像では、1フレームの中に、十分な信号が存在しない可能性がある。したがって、一画像に対して複数のフレームの平均が使用され得る。その代わりにe/nm/フレームの値が使用され得る。
【0034】
画像フレームの取り込み中に使用される電子ドーズe/nm/タイムによって、部位103または有機材料102の層への損傷が決まる。視野は使用者が設定でき、その設定は、画像フレーム取り込みのサイズに影響を与え得る。ただし、視野に関係なく、損傷閾値を超えるとすぐに損傷が発生し得る。例えば、図5は、電子ドーズの形態を様々に変えた変調の挙動を示す、高ビーム電流での実験データに基づいた結果の表を示している。図5にある結果を得た実験では、スキャンレート(SR)および視野(FoV)を変更して、e/nm/タイムの値を変調した。超えると損傷が発生する損傷閾値e/nm/タイムがそこに存在している。
【0035】
ビーム電流、スキャンレート、ピクセル密度、および視野の全てが、ビームの状態に影響を与え得る。したがって、これらの値のいずれかを変更すると、第1の電子ドーズまたは第2の電子ドーズが損傷閾値を超えるかどうかに影響を与え得る。例えば、電子ビーム100Aまたは100Bのビーム電流に応じて、損傷閾値が決まり得る。というのは、そのビーム電流が、所与の時点でウェハに方向付けられる電子の量に影響を与えるからである。
【0036】
図5では、e/nm/タイム<40の場合、部位に損傷は発生しなかった。フォトレジストの物質的挙動は、損傷に至らなかった。例えば、官能基が損傷の回避に十分な強度を有していた可能性がある。e/nm/タイム>51の場合、部位に損傷が発生し、ウェハの損傷確率が100%になり得る。e/nm/タイムが約40~51の場合、複数の部位から断続的な損傷が発生し、ウェハの損傷確率が約60%~70%になり得る。損傷がある場合、断続的な損傷がある場合、および損傷がない場合の値を破線で囲み、それらに陰影を付けている。これらの結果は、特定の材料または薄膜に固有のものである。各種材料または薄膜の特性について同様のデータ表を提供するには、それらを実験によって評価する必要があり得る。
【0037】
特定の部位に損傷を引き起こす確率は、その部位の撮像履歴にも依存し得る。特定の部位(例えば、部位103)における最初のSEMフレームが損傷閾値より小さいe/nm/タイムで照射された場合、後続のフレームはおそらく損傷を引き起こさずにいずれかのe/nm/タイムの値で取り込まれ得る。最初のSEMフレームが損傷閾値より大きいe/nm/タイムで照射された場合、その部位は損傷し得る。この損傷は、図2または図3のような損傷であり得る。この損傷は恒久的なものであり得る。部位が損傷した後は、その損傷を元に戻すことは不可能であり得る。
【0038】
後続のフレームに対して、上限閾値が存在し得る。特定の部位(例えば、部位103)の最初のSEMフレームが損傷閾値より小さいe/nm/タイムで照射された場合でも、やはり損傷をもたらす第2のSEMフレームのe/nm/タイムの値が存在し得る。これは、材料または薄膜の特性に依存し得る。
【0039】
特定の部位が損傷した後でも、ズームアウトし、損傷領域周囲の損傷を含まない画像を取り込むことが可能である。これが図4に示されている。
【0040】
撮像の実行方法として、電子ビームをここに開示している。予備照射ステップを実行するには、この電子ビームの使用不使用を問わず、光および/または熱が使用され得る。一実施例では、電子ビーム予備照射ステップの前に、光および/または熱のステップが実行される。光および/または熱はフォトレジストを安定させ、その化学的性質に作用し得る。ランプおよび/またはヒータが、フォトレジストに作用するように使用され得る。別の実施例では、光および/または熱が電子ビームで印加され得る。
【0041】
図7は、システム200の一実施形態のブロック図である。システム200は、ウェハ204の画像を生成するように構成されたウェハ検査ツール(電子鏡筒201を含む)を含む。
【0042】
ウェハ検査ツールは、少なくとも1つのエネルギー源と1つの検出器を含んだ、出力取得サブシステムを含む。出力取得サブシステムは、電子ビームベースの出力取得サブシステムであり得る。例えば、一実施形態では、ウェハ204に方向付けられるエネルギーは電子を含んでおり、ウェハ204から検出されるエネルギーも電子を含んでいる。このように、エネルギー源は電子ビーム源であり得る。図7に示されているかかる一実施形態では、出力取得サブシステムは、コンピュータサブシステム202に結合された電子鏡筒201を含む。ステージ210がウェハ204を保持し得る。
【0043】
図7にやはり示されているように、電子鏡筒201は、電子を生成するように構成された電子ビーム源203を含む。この電子は、1つまたは複数の要素205によってウェハ204に集束される。電子ビーム源203は、例えば、カソード源またはエミッタチップを含み得る。1つまたは複数の要素205は、例えば、ガンレンズ、アノード、ビーム制限アパーチャ、ゲートバルブ、ビーム電流選択アパーチャ、対物レンズ、および走査サブシステムを含み得るが、これらにはいずれも、当技術分野で知られているかかる任意の適当な要素が含まれ得る。
【0044】
ウェハ204から戻ってきた電子(例えば、二次電子)は、1つまたは複数の要素206によって検出器207に集束され得る。1つまたは複数の要素206は、例えば、要素205に含まれているのと同じ走査サブシステムであり得る走査サブシステムを含み得る。
【0045】
電子鏡筒201はまた、当技術分野で知られているその他任意の適当な要素を含み得る。
【0046】
図7に示されている電子鏡筒201の構成は、電子がウェハ204に向かって傾斜した入射角に方向付けられ、かつ、それとは別の傾斜角度でそのウェハ204から散乱するようになっているが、この電子ビームは、ウェハ204に向かって任意の適当な角度に方向付けられ、ウェハ204から任意の適当な角度で散乱され得る。さらに、電子ビームベースの出力取得サブシステムは、複数のモードを用いて(例えば、様々な照射角度、収集角度などで)ウェハ204の画像を生成するように構成され得る。電子ビームベースの出力取得サブシステムのそういった複数のモードでは、その出力取得サブシステムの画像生成パラメータのいずれかが異なり得る。
【0047】
上記の検出器207に、コンピュータサブシステム202が結合され得る。検出器207は、ウェハ204の表面から戻ってきた電子を検出することができ、それにより、ウェハ204の電子ビーム画像を形成する。この電子ビーム画像には、任意の適当な電子ビーム画像が含まれ得る。コンピュータサブシステム202は、検出器207の出力および/または電子ビーム画像を使用して、本明細書に記載の機能のいずれかを実行するように構成され得る。コンピュータサブシステム202は、本明細書に記載の任意の追加のステップを実行するように構成され得る。図7に示されている出力取得サブシステムを含んだシステム200がさらに、本明細書に記載のように構成され得る。
【0048】
尚、図7を本明細書に提示しているのは、本明細書に記載の実施形態で使用され得る電子ビームベースの出力取得サブシステムの構成の概要を説明するためである。本明細書に記載の電子ビームベースの出力取得サブシステム構成は、商用の出力取得システムを設計する際に通常行われるのと同様に、出力取得サブシステムの性能を最適化するように変更され得る。さらに、本明細書に記載のシステムは、既存のシステムを使用して実装され得る(例えば、既存のシステムに、本明細書に記載の機能を追加することにより)。いくつかのかかるシステムに対して、本明細書に記載の方法は、(例えば、そのシステムの他の機能に加えて)そのシステムのオプションの機能として提供され得る。あるいは、本明細書に記載のシステムは、完全に新しいシステムとして設計され得る。
【0049】
電子ビームベースの出力取得サブシステムである出力取得サブシステムについて上で説明したが、この出力取得サブシステムは、イオンビームベースの出力取得サブシステムであってもよい。かかる出力取得サブシステムは、図7に示されているように構成され得るが、電子ビーム源が当技術分野で知られている任意の適当なイオンビーム源に置き換わり得る点が異なる。さらに、出力取得サブシステムは、商用の集束イオンビーム(FIB)システム、ヘリウムイオン顕微鏡(HIM)システム、および二次イオン質量分析(SIMS)システムに含まれるサブシステムなど、その他任意の適当なイオンビームベースの出力取得サブシステムであってもよい。
【0050】
コンピュータサブシステム202は、プロセッサ208および電子データ記憶ユニット209を含む。プロセッサ208には、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または他のデバイスが含まれ得る。
【0051】
コンピュータサブシステム202は、プロセッサ208が出力を受信できるように、任意の適当な方法でシステム200の構成要素に結合され得る(例えば1つまたは複数の伝送媒体を介して。そういった伝送媒体には、有線および/または無線の伝送媒体が含まれ得る)。プロセッサ208は、上記出力を使用していくつかの機能を実行するように構成され得る。上記ウェハ検査ツールは、プロセッサ208から命令または別の情報を受け取り得る。プロセッサ208および/または電子データ記憶ユニット209は、任意選択で、別のウェハ検査ツール、ウェハ計測ツール、またはウェハレビューツール(図示せず)と電子通信して、追加情報を受信したり、命令を送信したりすることができる。
【0052】
プロセッサ208は、検出器207などのウェハ検査ツールと電子通信する。プロセッサ208は、検出器207からの測定値を使用して生成された画像を処理するように構成され得る。プロセッサ208はまた、図6A~6Bの方法の実施形態を実行するために命令を送信し得る。
【0053】
本明細書に記載の、コンピュータサブシステム202または別のシステムまたは別のサブシステムは、様々なシステムの一部分であり得る。この様々なシステムには、パーソナルコンピュータシステム、イメージコンピュータ、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、ネットワークアプライアンス、インターネットアプライアンス、または他のデバイスが含まれる。上記サブシステムまたはシステムはまた、並列プロセッサなどの当技術分野で知られている任意の適当なプロセッサを含み得る。さらに、上記サブシステムまたはシステムは、スタンドアロンまたはネットワーク化されたツールとして、高速処理のプラットフォームとソフトウェアを含み得る。
【0054】
プロセッサ208および電子データ記憶ユニット209は、システム200または別のデバイスの中に配設されても、または別の形でシステム200または別のデバイスの一部分であってもよい。一実施例では、プロセッサ208および電子データ記憶ユニット209は、スタンドアロン制御ユニットの一部分であっても、または集中型品質管理ユニット内にあってもよい。プロセッサ208または電子データ記憶ユニット209は複数使用されてもよい。有機材料のデータを、電子データ記憶ユニット209が含んでいても、または別の形で保存してもよい。このデータは、損傷閾値を決定するために使用する情報を含み得る。
【0055】
プロセッサ208は、実際には、ハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアの任意の組み合わせによって実装され得る。また、本明細書に記載のプロセッサ208の機能は、1つのユニットによって実行されても、または別々の構成要素に分割されてもよい。各構成要素は、ハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアの任意の組み合わせによって実装され得る。プロセッサ208が様々な方法および機能を実施するためのプログラムコードまたは命令は、電子データ記憶ユニット209内のメモリや、別のメモリなど、可読記憶媒体に保存され得る。
【0056】
システム200が複数のコンピュータサブシステム202を含む場合、そのサブシステム間で画像、データ、情報、命令などが送信され得るように、異なるサブシステムが互いに結合され得る。例えば、一サブシステムが、任意の適切な伝送媒体によって別のサブシステムに結合され得る。この伝送媒体には、当技術分野で知られている任意の適当な有線および/または無線の伝送媒体が含まれ得る。共有のコンピュータ可読記憶媒体(図示せず)によっても、かかるサブシステムのうちの2つ以上が事実上結合され得る。
【0057】
プロセッサ208は、システム200の出力または別の出力を使用していくつかの機能を実行するように構成され得る。例えば、プロセッサ208は、上記出力を電子データ記憶ユニット209または別の記憶媒体に送信するように構成され得る。プロセッサ208は、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って構成され得る。プロセッサ208はまた、システム200の出力を使用して、あるいは別の供給源からの画像またはデータを使用して、別の機能または追加のステップを実行するように構成され得る。
【0058】
一実施例では、プロセッサ208は、半導体ウェハ204上の一部位の画像フレーム取り込みのために、電子ビームを、損傷閾値より小さい第1の電子ドーズ/nm/タイムの値に調整するように構成される。プロセッサ208はまた、上記部位の第1の画像フレーム取り込みに続く上記部位の第2の画像フレーム取り込みのために、電子ビームを、第1の電子ドーズ/nm/タイムの値とは異なる第2の電子ドーズ/nm/タイムの値に調整するように構成される。第2の電子ドーズ/nm/タイムの値は、上記損傷閾値より大きくても、小さくても、同じであってもよい。一実施例では、第2の電子ドーズ/nm/タイムの値が上記損傷閾値よりも大きい。システム200は、第2の電子ドーズ/nm/タイムの値を有する電子ビームを使用して、上記部位を撮像し得る。
【0059】
プロセッサ208はさらに、有機材料のデータを使用して上記損傷閾値を決定するように構成され得る。プロセッサ208は、電子データ記憶ユニット209などの電子データ記憶ユニットから、有機材料のデータを取り出し得る。上記データは、スキャンレートおよび視野に基づいた有機材料の結果を含む。上記データはまた、ビーム電流またはピクセル密度に基づいた結果を含み得る。プロセッサ208は、特定の有機材料の結果と既に設定されているいずれかの変数とに基づいて、損傷閾値より小さいe/nm/タイムの値を決定し得る。例えば、特定の有機材料の視野が25μmである場合、プロセッサ208は、損傷閾値、損傷閾値より小さいe/nm/タイムを提供するスキャンレート、および/または損傷閾値より小さいe/nm/タイムを提供するその他の変数を決定し得る。プロセッサ208はまた、後続の画像フレーム取り込みのためのe/nm/タイムの値を決定し得る。
【0060】
プロセッサ208またはコンピュータサブシステム202は、欠陥レビューシステム、検査システム、計測システム、またはその他のタイプのシステムの一部分であり得る。したがって、本明細書で開示する実施形態は、各種用途にほぼ適した様々な能力を有するシステム向けに何らかの方法で調整できる複数の構成を示している。
【0061】
プロセッサ208は、当技術分野で知られている任意の方法で、システム200の様々な構成要素またはサブシステムのいずれかに、通信するように結合され得る。さらに、プロセッサ208は、別のシステムからデータまたは情報を(例えば、レビューツールなどの検査システムからの検査結果や、設計データを含んだリモートデータベースなど)、有線部および/または無線部を含み得る伝送媒体によって、受信かつ/または取得するように構成され得る。このようにして、上記伝送媒体は、プロセッサ208と、システム200の別のサブシステムまたはシステム200の外部のシステムとの間のデータリンクとして働き得る。
【0062】
システム200の様々なステップ、機能、および/または動作、ならびに本明細書で開示する方法は、電子回路、論理ゲート、マルチプレクサ、プログラマブル論理デバイス、ASIC、アナログもしくはデジタル制御機構/スイッチ、マイクロコントローラ、またはコンピューティングシステムのうちの1つまたは複数によって実行される。本明細書に記載の方法などの方法を実施するプログラム命令は、担持媒体を介して送信、または担持媒体に保存され得る。上記担持媒体には、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気または光ディスク、不揮発性メモリ、ソリッドステートメモリ、磁気テープなどの記憶媒体が含まれ得る。担持媒体は、ワイヤ、ケーブル、または無線伝送リンクなどの伝送媒体を含み得る。例えば、本開示全体にわたって説明した様々なステップは、単一のプロセッサ208(またはコンピュータサブシステム202)、あるいは複数のプロセッサ208(または複数のコンピュータサブシステム202)によって実行され得る。さらに、システム200の各種サブシステムは、1つまたは複数のコンピューティングまたは論理回路のシステムを含み得る。したがって、上記の説明は、本開示を限定するものではなく、単なる例示であると解釈すべきである。
【0063】
本開示を1つまたは複数の特定の実施形態に関して説明したが、本開示の別の実施形態も本開示の範囲から逸脱することなく構成され得ることが理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲およびその合理的解釈だけが、本開示を限定するとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7