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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-26
(45)【発行日】2024-10-04
(54)【発明の名称】フォトレジストの乾式現像プロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/30 569H
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022580826
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 US2021038758
(87)【国際公開番号】W WO2022005855
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】63/047,160
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/349,534
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】タイ, ユイチオン
(72)【発明者】
【氏名】サチャン, マドゥール
(72)【発明者】
【氏名】フリード, レジーナ
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ホヨン デーヴィッド
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/217749(WO,A1)
【文献】特開2014-209622(JP,A)
【文献】特開平08-320574(JP,A)
【文献】特表2019-500490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属オキソフォトレジストを現像する方法であって、
チャンバ内に前記金属オキソフォトレジストを有する基板を提供することであって、前記金属オキソフォトレジストが露光領域及び非露光領域を含み、前記非露光領域が前記露光領域よりも高い炭素濃度を有する、基板を提供することと、
前記チャンバ内に反応性ガスを含むガスを流入させることと、を含み、前記反応性ガスが、Cl 、Br 、H 、HBr、HCl、CH Cl 、CH 、BBr 、及びCH Br 、のうちの一又は複数を含み、前記ガスが前記非露光領域と反応して揮発性副生成物を生成する
方法。
【請求項2】
前記チャンバ内でプラズマを発生させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガスが不活性ガスを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記不活性ガスの流量と前記反応性ガスの流量との比率が0:1と50:1との間である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記ガスを前記非露光領域と反応させることが、プラズマを用いない熱プロセスで実装される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基板の基板温度が200℃以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ソース電力が1200W以下であり、バイアス電力が200W以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記バイアス電力がパルス化され、前記パルス化のデューティサイクルが0%と100%との間である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記金属オキソフォトレジストがSnOCを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記露光領域が架橋された金属酸化物ネットワークを含み、前記非露光領域が金属酸化物クラスタを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
金属オキソフォトレジストを現像する方法であって、
表面上に前記金属オキソフォトレジストを有する基板を提供することと、
露光領域及び非露光領域を形成するために前記金属オキソフォトレジストを露光させることであって、前記非露光領域は前記露光領域よりも高い炭素濃度を有する、前記金属オキソフォトレジストを露光させることと、
プラズマチャンバ内に前記基板を配置することと、
前記プラズマチャンバ内に反応性ガスを含むガスを流入させることであって、前記反応性ガスが、Cl 、Br 、H 、HBr、HCl、CH Cl 、CH 、BBr 、及びCH Br 、のうちの一又は複数を含む、ガスを流入させることと、
前記プラズマチャンバ内でプラズマを発生させることであって、前記プラズマが前記非露光領域と反応して揮発性副生成物を生成する、プラズマを発生させることと、
前記プラズマチャンバをパージすることと、を含む、方法。
【請求項12】
前記ガスが不活性ガスを更に、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記不活性ガスの流量と前記反応性ガスの流量との比率が0:1と50:1との間である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プラズマチャンバから前記基板を取り出す前に前記基板をエッチングすることを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記金属オキソフォトレジストがSnOCを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記金属オキソフォトレジストを露光させることが、前記金属オキソフォトレジストを極紫外(EUV)放射に露光させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
金属オキソフォトレジストを現像する方法であって、
プラズマチャンバ内に前記金属オキソフォトレジストを有する基板を提供することであって、前記金属オキソフォトレジストは、SnOCを含み、かつ露光領域と非露光領域とを含み、前記非露光領域は前記露光領域よりも高い炭素濃度を有する、基板を提供することと、
前記プラズマチャンバ内に、Cl及びArを含むガスを流入させることと、
前記プラズマチャンバ内でプラズマを発生させることであって、前記プラズマが前記非露光領域と反応して揮発性副生成物を生成する、プラズマを発生させることと、
前記プラズマチャンバをパージすることと、を含む、方法。
【請求項18】
前記非露光領域と前記露光領域との間のエッチング選択性が10:1以上である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記Arの流量と前記Clの流量との比率が0:1と50:1の間である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2020年7月1日出願の米国仮出願第63/047,160号の利益を主張する、2021年6月16日出願の米国非仮出願第17/349,534号に対する優先権を主張するものであり、かかる出願の内容全体が、参照により本願に援用される。
【0002】
本開示の実施形態は半導体処理の分野に関し、詳細には、非湿式プロセスを使用して金属オキソフォトレジストをパターニングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
リソグラフィは、半導体業界において数十年間にわたり、マイクロエレクトロニクスデバイスに2D及び3Dのパターンを作成するために使用されてきた。リソグラフィプロセスは、膜(フォトレジスト)のスピンオン堆積、選択されたパターンを用いた膜へのエネルギー源による照射(露光)、及び、溶媒中で溶解させることによる、膜の露光(ポジティブトーン)領域又は非露光(ネガティブトーン)領域の除去(エッチング)、を伴う。残留溶媒を排除するためにはベイクが行われる。
【0004】
フォトレジストは、放射感受性材料であるはずであり、照射が行われると、膜の露光部分において化学的変換が発生し、これにより、露光領域と非露光領域の間で溶解度が変わることが可能になる。この溶解度の変化を使用して、フォトレジストの露光領域又は非露光領域のいずれかが除去(現像)される。本書で使用される場合、「現像する(develop)」とは、フォトレジスト内にパターンを形成するプロセスのことを指す。フォトレジストが現像されると、パターンは、エッチングによって下にある薄膜又は基板に転写されうる。パターンが転写された後に、残留フォトレジストが除去される。このプロセスを多数回反復することで、マイクロ電子デバイスにおいて使用される2D及び3Dの構造を得ることが可能になる。
【0005】
リソグラフィプロセスにおいては、いくつかの特性が重要になる。かかる重要な特性は、感受性、解像度、ラインエッジ粗さが低いこと(LER)、エッチング耐性、及び薄層形成能力を含む。感受性が高くなると、堆積された膜の溶解度を変えるのに必要なエネルギーは少なくなる。これにより、リソグラフィプロセスにおいて効率を向上させることが可能になる。リソグラフィプロセスによりどれほど狭小なフィーチャが実現されうるかは、解像度とLERによって決まる。深型構造を形成するためのパターン転写には、エッチング耐性の高い材料が必要になる。エッチング耐性の高い材料により、膜の薄化も可能になる。膜が薄くなるほど、リソグラフィプロセスの効率は向上する。
【発明の概要】
【0006】
本書で開示している実施形態は、非湿式プロセスで金属オキソフォトレジストを現像する方法を含む。一実施形態では、この方法は、チャンバ内に金属オキソフォトレジストを有する基板を提供することを含む。一実施形態では、金属オキソフォトレジストは露光領域と非露光領域とを含み、非露光領域は露光領域よりも高い炭素濃度を有する。一実施形態では、方法は、チャンバ内にガスを流入させることを更に含み、このガスは非露光領域と反応して、揮発性副生成物を生成する。
【0007】
実施形態は、金属オキソフォトレジストを現像する方法であって、表面上に金属オキソフォトレジストを有する基板を提供することと、金属オキソフォトレジストを露光させて露光領域及び非露光領域を形成することと、を含む、方法も含みうる。一実施形態では、非露光領域は、露光領域よりも高い炭素濃度を有する。一実施形態では、方法は、プラズマチャンバ内に基板を配置することと、プラズマチャンバ内にガスを流入させることと、プラズマチャンバ内でプラズマを発生させること(striking a plasma)と、を更に含みうる。一実施形態では、プラズマは、非露光領域と反応して揮発性副生成物を生成する。一実施形態では、方法は、プラズマチャンバをパージすることを更に含みうる。
【0008】
実施形態は、金属オキソフォトレジストを現像する方法であって、プラズマチャンバ内に、SnOCを含む金属オキソフォトレジストを有する基板を提供することを含む、方法も含みうる。一実施形態では、金属オキソフォトレジストは露光領域と非露光領域とを含み、非露光領域は露光領域よりも高い炭素濃度を有する。一実施形態では、この方法は、プラズマチャンバ内に、Cl及びArを含むガスを流入させることと、プラズマチャンバ内でプラズマを発生させることと、を更に含む。一実施形態では、プラズマは、非露光領域と反応して揮発性副生成物を生成する。方法は、プラズマチャンバをパージすることを更に含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態による、プラズマプロセスを使用して金属オキソフォトレジストを現像するプロセスを説明しているフロー図である。
図2A】本開示の一実施形態による、図1のフロー図における工程を示す基板及びフォトレジストの断面図である。
図2B】本開示の一実施形態による、図1のフロー図における工程を示す基板及びフォトレジストの断面図である。
図2C】本開示の一実施形態による、図1のフロー図における工程を示す基板及びフォトレジストの断面図である。
図2D】本開示の一実施形態による、図1のフロー図における工程を示す基板及びフォトレジストの断面図である。
図3】本開示の一実施形態による、図1のプロセスの部分を実装するために使用されうる処理ツールの断面図である。
図4】本開示の一実施形態による、例示的なコンピュータシステムのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本書では、非湿式プロセスを使用して金属オキソフォトレジストをパターニングする方法について説明している。以下の説明には、本開示の実施形態の網羅的な理解を提供するために、フォトレジストを現像するための多数の具体的な詳細事項(反応性プラズマプロセスや材料レジームなど)が記載される。これらの具体的な詳細事項がなくとも本開示の実施形態は実践可能であることが、当業者には自明となろう。他の事例では、本開示の実施形態を不必要に不明瞭にしないために、集積回路の製造といった周知の態様については、詳細に説明していない。更に、図に示している様々な実施形態は例示的な表現であり、必ずしも縮尺どおりには描かれていないことを理解されたい。
【0011】
理解を助けるために更に言うと、極紫外(EUV)リソグラフィで使用されるフォトレジスト系には、効率が悪いという問題がある。つまり、EUVリソグラフィ用の既存のフォトレジスト材料系は、フォトレジスト材料の現像を可能にするのに必要な溶解度スイッチを提供するために、高線量を必要とする。有機-無機ハイブリッド材料(例えば金属オキソ材料系)が、EUV放射に対する感受性が高いことにより、EUVリソグラフィ用の材料系として提案されるようになった。かかる材料系は、典型的には、金属(例えばSn、Hf、Zrなど)、酸素、及び炭素を含む。場合によっては、金属オキソ材料系は、窒素及び水素を更に含むこともある。金属オキソベースの有機-無機ハイブリッド材料は、低LER及び高解像度(これらは狭小フィーチャを形成するために必要な特性である)を提供することも分かっている。
【0012】
金属オキソフォトレジスト系では、EUV放射への露光によって炭素が除去され、金属酸化物ネットワークが架橋する。露光領域と非露光領域との間の、炭素割合及び結合強度の差が、現像中に溶解度スイッチとして使用される。詳細には、炭素含有量が高く結合強度が弱い非露光領域が、現像液により優先的にエッチングされる。
【0013】
金属オキソフォトレジスト系は現在、湿式化学作用を使用して現像されている。つまり、露光後に、フォトレジストの非露光領域が、スピン乾燥プロセスで使用される有機溶媒/塩基溶液によって現像される。ベイク後アニール処理も含まれることがある。しかし、高アスペクト比のフィーチャに対処する場合、湿式法は、(特にライン構造やピラー構造では)パターン崩壊のリスクがあるため、困難でありうる。加えて、湿式プロセスでは、溶媒及び溶存する副生成物を除去するのに機械的力が使用されるので、除去されるはずの材料が全ては除去されない可能性があり、小型フィーチャ内に膜材料/副生成物/溶媒などがトラップされることがある。更に、フィーチャがより小さく複雑なものである場合、非露光レジストの全領域に溶媒(通常その分子は大きい)が浸透するのは困難になる。このことはフォトレジストの部分的現像につながり、不具合が生じる。スピンドライプロセスにより、ラインのよれ(wiggling)やフォールオフ(falling off)さえもが生じることもある。これにより、フォトレジストの厚さ及びアスペクト比が制限される。
【0014】
したがって、本開示の実施形態は、金属オキソフォトレジストを現像するためのプラズマエッチングプロセスを提供する。詳細には、プラズマエッチングプロセスにより、1)湿性副生成物の生成がなくなること、2)除害(abatement)システムを通じて乾式化学物質が処理されるため、廃棄流が減少すること、3)不具合及び不純物が減少すること、4)LER、LWR、及び、表面張力と毛細管力とスピンドライプロセスとにより生じた低周波粗さがあればそれが、改善されること、5)フォトレジストを現像し、パターンを下層に転写するための、一括プロセスを提供すること、及び6)非露光領域のエッチング選択性を金属オキソフォトレジストの露光領域に対して高めること、
という利点が提供される。
【0015】
本書で開示している実施形態は、金属オキソフォトレジストが好適な電磁放射源(例えばEUV源)で部分的に露光された後に実行される、プラズマエッチングプロセスを提供する。一実施形態では、プラズマチャンバ内に、露光された金属オキソフォトレジストを含む基板が配置される。プラズマチャンバ内に反応性ガスと不活性ガスとを含むガスが流し込まれ、プラズマが生成される。この反応性ガスは、金属オキソフォトレジストの金属と反応して揮発性種を形成する成分を有するガスである。例えば、反応性ガスは、Cl、H、Br、HBr、HCl、BCl、CHCl、CH、BBr、及びCHBr、のうちの一又は複数を含む。ある特定の実施形態では、反応性ガスはHBrを含み、不活性ガスはArを含む。一部の実施形態では、ガスがチャンバ内に流し込まれるが、プラズマの発生はない(すなわち熱プロセス)。他の実施形態では、プラズマが生成されうる。一実施形態では、露光されていない金属オキソフォトレジストの露光された金属オキソフォトレジストに対するエッチング選択性は、10:1以上でありうる。ある特定の実施形態では、このエッチング選択性はおよそ12:1である。一実施形態では、現像された金属オキソフォトレジストのパターンは、基板をプラズマチャンバから取り出すことなく、下層に転写されうる。
【0016】
ここで図1を参照するに、本開示の一実施形態による、基板表面上の金属オキソフォトレジストを現像するためのプロセス120を示すフロー図が提示されている。図2Aから図2Dは、プロセス120における様々な工程の後の基板261及び金属オキソフォトレジスト262の断面図である。
【0017】
一実施形態では、プロセス120は、金属オキソフォトレジストを有する基板を提供することを含む、工程121で始まりうる。図2Aは、金属オキソフォトレジスト262が基板261の表面を覆うように配置されている、基板261の断面図である。一実施形態では、基板261は、半導体製造環境において特徴的な、任意の一又は複数の基板材料を含みうる。例えば、基板261は半導体材料を含みうる。基板261は、半導体デバイス又は半導体デバイスの部分を含みうる。かかる半導体デバイスの例は、シリコン基板に製造され、誘電体層に包まれた、メモリデバイス又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)トランジスタを含むが、これらに限定されるわけではない。基板261は更に、デバイス又はトランジスタの上方の、周りを取り囲む誘電体層内に形成された複数の金属相互接続部を含んでよく、かつ、デバイス又はトランジスタを電気的に連結して集積回路を形成するために使用されうる。一実施形態では、基板261はウエハでありうる。
【0018】
一実施形態では、金属オキソフォトレジスト262(単に「フォトレジスト262」とも称される)は、任意の金属オキソ材料系でありうる。かかる材料系は、典型的には、金属(例えばSn、Hf、Zrなど)、酸素、及び炭素を含む。ある特定の実施形態では、フォトレジスト262はSnOCを含む。実施形態は、SnOCに加えて、窒素及び水素を更に含む金属オキソ材料系を含むこともある。
【0019】
フォトレジスト262は、任意の好適な堆積プロセスを使用して、基板261の表面上に配置されうる。一実施形態では、フォトレジストは、スピンオンプロセスを使用する湿式化学作用を用いて、基板261の表面上に配置される。代替的な実施形態では、フォトレジストは、気相プロセス(すなわち乾式プロセス)を使用して、基板261の表面上に配置される。気相プロセスでは、金属前駆体と酸化剤(oxidant)とが真空チャンバ内へと気化されうる。その際、金属前駆体と酸化剤とが反応して、基板261の表面上に金属オキソフォトレジスト262を堆積させる。かかる乾式プロセスは、化学気相堆積(CVD)プロセス、原子層堆積(ALD)プロセス、プラズマCVD(PE-CVD)プロセス、又はプラズマALD(PE-ALD)プロセスとして特徴付けられうる。
【0020】
一実施形態では、プロセス120は、金属オキソフォトレジストを部分的に露光させて、露光領域と非露光領域とを作成することを含む、工程122に続きうる。図2Bは露光プロセスを示す断面図である。図示しているように、電磁放射264が、マスク263を通過して露光領域262を露光する。非露光領域262Uは、マスク263によって電磁放射から遮蔽される。一実施形態では、電磁放射はEUV放射である。EUV放射が使用される場合、EUV放射264は、マスクを通過せずに、マスクに反射しうる。本書ではEUV放射について具体的に開示しているが、金属オキソフォトレジスト262における溶解度スイッチを始動させうる任意の好適な波長の電磁放射が使用されうることを認識されたい。例えば、一部の実施形態では、DUV放射が使用されうる。
【0021】
一実施形態では、溶解度スイッチは、露光領域における炭素の損失及び金属オキソネットワークの架橋によってもたらされる。詳細には、電磁放射への露光により、露光領域262から炭素が除去される。非露光領域262において炭素含有量が高くなり、弱い結合が増えることで、非露光領域は、後続の非湿式現像プロセスにおけるパターニングに対する感受性が高まる。
【0022】
一実施形態では、プロセス120は、プラズマチャンバ内に基板を配置することを含む、工程123に続きうる。一実施形態では、プラズマチャンバは、大気圧未満の圧力条件においてプラズマを発生させるのに適した任意のチャンバでありうる。プラズマチャンバは、プラズマプロセスの熱制御を提供するために、加熱/冷却機能も含みうる。例えば、基板261が載置されるチャックは、能動的に加熱及び/又は冷却されるチャックでありうる。加えて、一部の実施形態では、プラズマチャンバの壁が能動的に加熱及び/又は冷却されうる。好適なプラズマチャンバについてのより詳細な説明を、下記で図7に関連して提示する。
【0023】
一実施形態では、プロセス120は、プラズマチャンバ内にガスを流入させること、及びプラズマチャンバ内でプラズマを発生させることを含む、工程124及び125に続きうる。一実施形態では、このガスは反応性ガス及び不活性ガスを含む。反応性ガスは、Cl、Br、HBr、HCl、H、BCl、CHCl、CH、BBr、及びCHBr、のうちの一又は複数を含みうる。一実施形態では、不活性ガスはAr、N、又はHeを含みうる。ある特定の実施形態では、反応性ガスはHBrを含み、不活性ガスはArを含む。一実施形態では、反応性ガスによって形成されたプラズマは、金属オキソフォトレジストの非露光領域262と反応して揮発性副生成物を形成する。例えば、金属M(例えばSn)とClとが反応して揮発性MCLを形成する。非露光領域262を揮発性副生成物に変換した後の、現像されたフォトレジストの例を図2Cに示している。プラズマの発生はオプションであることを認識されたい。つまり一部の実施形態では、非湿式プロセスは、プラズマを発生させることなく、チャンバ内に反応性ガスを流入させることを含みうる。かかるプロセスは、プラズマプロセスとは対照的な熱プロセスと見なされうる。このような場合、反応性ガスをイオン化する必要はなく、反応性ガスは、金属オキソフォトレジストの非露光領域262と直接反応しうる。
【0024】
一実施形態では、不活性ガスの流量の反応性ガスの流量に対する比率は、0:1と50:1との間である。例えば、不活性ガスの流量は300sccmであってよく、反応性ガスの流量は50sccmでありうる。化学物質が希釈されることで、エッチング速度は遅くなり、エッチング均一性が向上する。不活性ガスは、プラズマチャンバ全体において反応性ガスをに均一に分布させるのに役立つので、均一性が向上する。加えて、一般に、反応性ガスの流量が増加することで、露光領域262と比較して非露光領域262のエッチングが増大することが分かっている。一実施形態では、圧力およそ1mtorrとおよそ100mtorrとの間でありうる。ある特定の実施形態では、圧力はおよそ5mtorrとおよそ20mtorrとの間でありうる。更に別の実施形態では、圧力はおよそ1mtorrとおよそ10torrとの間でありうる。
【0025】
一実施形態では、工程124及び125において、基板261は制御された温度を有しうる。例えば、温度はおよそ0℃とおよそ500℃との間で変動しうる。ある特定の実施形態では、温度はおよそ50℃とおよそ150℃との間で変動しうる。通常、低い(例えば500℃未満の)温度では、金属オキソフォトレジストの熱分解が起こらないので、かかる低温は有益である。更に別の実施形態では、温度はおよそ200℃未満でありうる。例えば、温度はおよそ40℃とおよそ100℃との間でありうる。
【0026】
一実施形態では、プラズマエッチングプロセスのRF電力が制御されうる。一般に、RF電力が低くなることにより、エッチング選択性は向上しうる。一実施形態では、ソース電力はおよそ200Wとおよそ1200Wとの間でありうる。ある特定の実施形態では、ソース電力はおよそ400Wでありうる。一実施形態では、バイアス電力はおよそ0Wとおよそ200Wとの間でありうる。ある特定の実施形態では、バイアス電力はおよそ50Wでありうる。バイアス電力をおよそ100Wまで増大させると、非露光領域262のエッチング選択性は露光領域262に対して強化されることが分かっている。
【0027】
一実施形態では、工程125は、パルスバイアス(pulsed bias)を用いて実装されうる。パルス化のデューティサイクルは0%と100%との間でありうる。ある特定の実施形態では、デューティサイクルはおよそ50%である。かかるデューティサイクルにより、副生成物を除去するための時間が確保され、イオン衝突が低減する。したがって、非露光領域262のエッチング選択性は露光領域262に対して向上する。
【0028】
一実施形態では、工程125は、任意の望ましい持続時間にわたって実装されうる。期間が長くなることで、より多くの非露光領域262を除去することが可能になる。一実施形態では、工程125は、およそ5秒とおよそ120秒との間の持続時間を有しうる。ある特定の実施形態では、工程125はおよそ15秒の持続時間を有しうる。
【0029】
上述したようなプラズマ現像プロセスの様々なパラメータを変化させることにより、金属オキソフォトレジストの非露光領域262のエッチング選択性は、金属オキソフォトレジストの露光領域262に対して高くなる。例えば、そのエッチング選択性はおよそ10:1以上になりうる。ある特定の実施形態では、エッチング選択性はおよそ12:1になりうる。エッチング選択性が高くなることで、いくつかの利点が得られる。かかる利点のうちの1つは、フォトレジストの厚さを低減しうることである。これにより、フォトレジストを十分に現像するために使用される電磁放射の線量を低減することが可能になる。
【0030】
一実施形態では、プロセス120は、プラズマチャンバをパージすることを含む、工程126に続きうる。プラズマチャンバをパージすることで、プラズマチャンバから、工程125における反応による副生成物が除去される。一実施形態では、工程125におけるエッチングが完了した後に、単一回のパージが実装されうる。代替的な実施形態では、工程124/125、及び126は、エッチングのパルスとそれに続くパージとを含むサイクルを画定しうる。かかる実施形態では、フォトレジストの非露光領域262を取り除くために、サイクルが複数回反復されうる。
【0031】
本書で開示している実施形態は、1つのプラズマチャンバ内で実装されるという、追加的な利点を提供する。このことは、後続の基板261のパターニングがプラズマエッチングを使用して実行される場合に、特に有益である。詳細には、基板261が、フォトレジスト現像プロセスの後に、プラズマチャンバから取り出される必要はない。つまり、パターンの現像及びパターンの下層へのパターン転写のための一括的な手法(すなわち一括チャンバ)が提供される。
【0032】
一実施形態では、プロセス120は、基板261をエッチングすることを含む、オプションの工程127に続きうる。図2Dは、金属オキソフォトレジストの露光領域262のパターンが基板261に転写された後の、基板261の断面図である。図示しているように、パターン転写によって、基板261内にトレンチ265が形成されうる。一実施形態では、基板261のエッチングは、プラズマエッチングプロセスを使用して実装されうる。プラズマエッチングプロセスは、金属オキソフォトレジストを現像するために使用されるのと同じチャンバ内で実行されうる。
【0033】
図3は、本開示の一実施形態による、金属オキソフォトレジストのプラズマベースの現像を実施するよう構成されたプラズマチャンバの概略図である。プラズマチャンバ300は接地されたチャンバ305を含む。基板310は、開口315を通じてローディングされ、温度制御されたチャック320にクランプされる。
【0034】
プロセスガスが、ガス源344から、それぞれの質量流量コントローラ349を通ってチャンバ305の内部に供給される。ある種の実施形態では、ガス分配プレート335が、プロセスガス344(Cl、Br、H、HCl、HBr、及び/又は不活性ガスなど)の分配のために設けられる。チャンバ305は、排気ポンプ355を介して排気される。
【0035】
基板310の処理中にRF電力が印加されると、基板310の上方のチャンバ処理領域内でプラズマが形成される。バイアス電力RF生成装置325が、温度制御されたチャック320に連結される。バイアス電力RF生成装置325は、バイアス電力を提供して、必要であればプラズマを励起する。バイアス電力RF生成装置325は、例えば約2MHzと60MHzとの間の低周波数を有してよく、ある特定の実施形態では13.56MHz帯域のものである。ある種の実施形態では、プラズマチャンバ300は、約2MHzの帯域の周波数の第3バイアス電力RF生成装置326を含み、第3バイアス電力RF生成装置326は、バイアス電力RF生成装置325と同じRFマッチ327に接続される。ソース電力RF生成装置330は、ソース電力を提供してプラズマを励起するために、マッチ(図示せず)を通じてプラズマ生成要素(例えばガス分配プレート335)に連結される。ソースRF生成装置330は、例えば100と180MHzとの間の周波数を有してよく、ある特定の実施形態では162MHz帯域のものである。時の経過とともに基板の直径が150mmから200mm、300mmなどに変化してきたので、当該技術分野では、プラズマエッチングシステムのソース電力及びバイアス電力を基板面積に対して標準化する(normalize)ことは一般的である。
【0036】
プラズマチャンバ300は、コントローラ370によって制御される。コントローラ370は、CPU372、メモリ373、及びI/Oインターフェース374を含みうる。CPU372は、メモリ373に記憶された命令に従って、プラズマチャンバ300内で処理工程を実行しうる。例えば、一又は複数のプロセス(上述したプロセス120の部分など)が、コントローラ370によって、プラズマチャンバ内で実行されうる。
【0037】
図4は、例示的な形態のコンピュータシステム400における機械の図式表現を示しており、コンピュータシステム400において、本書に記載の方法論のうちの一又は複数の任意のものを機械に実施させるための命令セットが実行されうる。代替的な実施形態では、機械は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、イントラネット、エクストラネット、又はインターネットにおいて、他の機械に接続され(例えばネットワーク化され)うる。機械は、クライアント-サーバネットワーク環境においてはサーバ若しくはクライアント機械の役割で、又は、ピアツーピア(若しくは分散)ネットワーク環境においてはピア機械として、作動しうる。機械は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯電話、ウェブアプライアンス、サーバ、ネットワークルータ、スイッチ若しくはブリッジ、又は、この機械によって行われる動作を特定する(連続した若しくは連続していない)命令セットを実行可能な任意の機械でありうる。更に、単一の機械のみを図示しているが、「機械(machine)」という語は、本書に記載の方法論のうちの一又は複数の任意のものを実施するために、命令セット(又は複数の命令セット)を個別に又は連携的に実行する、機械(コンピュータなど)の任意の集合体を含むとも、解釈すべきである。
【0038】
例示的なコンピュータシステム400は、バス430を介して互いに通信する、プロセッサ402、メインメモリ404(例えば読出専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、同期DRAM(SDRAM)又はランバスDRAM(RDRAM)といったダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)など)、スタティックメモリ406(例えばフラッシュメモリ、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、MRAMなど)、及び二次メモリ418(データ記憶デバイスなど)を含む。
【0039】
プロセッサ402は、マイクロプロセッサや中央処理装置などといった、一又は複数の汎用処理デバイスを表わしている。より詳細には、プロセッサ402は、複雑命令セット演算(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セット演算(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、その他の命令セットを実装するプロセッサ、又は、命令セットの組み合わせを実装するプロセッサでありうる。プロセッサ402は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサなどといった、一又は複数の特定目的処理デバイスであることもある。プロセッサ402は、本書に記載の工程を実施するための処理ロジック426を実行するよう構成される。
【0040】
コンピュータシステム400は、ネットワークインターフェースデバイス408を更に含みうる。コンピュータシステム400は、ビデオディスプレイユニット410(液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオードディスプレイ(LED)、又はカソードレイチューブ(CRT)など)、英数字入力デバイス412(例えばキーボード)、カーソル制御デバイス414(例えばマウス)、及び信号生成デバイス416(例えばスピーカー)も含みうる。
【0041】
二次メモリ418は、本書に記載の方法論又は機能のうちの一又は複数の任意のものを具現化する一又は複数の命令セット(ソフトウェア422など)が記憶されている、機械アクセス可能記憶媒体(又はより具体的には、コンピュータ可読記憶媒体)432を含みうる。ソフトウェア422は、それがコンピュータシステム400によって実行されている間、メインメモリ404及び/又はプロセッサ402の中に、全体的に又は少なくとも部分的に常駐してもよく、メインメモリ404及びプロセッサ402も、機械可読記憶媒体を構成する。このソフトウェア422は更に、ネットワークインターフェースデバイス408を介してネットワーク420経由で送受信されうる。
【0042】
例示的な一実施形態では、機械アクセス可能記憶媒体432を単一の媒体として図示しているが、「機械可読記憶媒体(machine-readable storage medium)」という語は、一又は複数の命令セットを記憶する単一の媒体又は複数の媒体(例えば、集中データベース若しくは分散データベース、並びに/又は関連するキャッシュ及びサーバ)を含むと、解釈すべきである。「機械可読記憶媒体」という語は、機械によって実行される命令セットを記憶すること又は符号化することが可能であり、かつ、機械に、本開示の方法論のうちの一又は複数の任意のものを実施させる、任意の媒体を含むとも、解釈すべきである。したがって、「機械可読記憶媒体」という語は、ソリッドステートメモリと、光媒体及び磁気媒体とを含むが、これらに限定されるわけではないと解釈すべきである。
【0043】
本開示の一実施形態によると、機械アクセス可能記憶媒体は命令を記憶しており、この命令は、データ処理システムに、プラズマプロセスを用いて基板上の金属オキソフォトレジストを現像する方法を実施させる。この方法は、金属オキソフォトレジストを露光させて露光領域及び非露光領域を設けることと、真空チャンバ内に露光されたフォトレジストを有する基板を配置することとを含む。一実施形態では、プラズマチャンバ内にガスが流し込まれ、プラズマが生成される。このガスは反応性ガス及び不活性ガスを含みうる。一実施形態では、プラズマは、フォトレジストの非露光領域と反応して、フォトレジストの非露光領域を揮発性副生成物に変換する。揮発性副生成物はプラズマチャンバからパージされうる。例えば、反応性ガスは、Cl、Br、HBr、HCl、及びHのうちの一又は複数を含みうる。
【0044】
ゆえに、プラズマプロセスを使用して金属オキソフォトレジストの現像を行うための方法が開示された。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4