(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】発光モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20210101AFI20240930BHJP
【FI】
H01S5/022
(21)【出願番号】P 2021010873
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2024-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓也
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-192744(JP,A)
【文献】特開平03-232283(JP,A)
【文献】特開2009-142140(JP,A)
【文献】国際公開第2018/084101(WO,A1)
【文献】特開2014-154919(JP,A)
【文献】特開2020-195136(JP,A)
【文献】特表2017-507497(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088790(WO,A1)
【文献】特開2013-191479(JP,A)
【文献】特開2012-204106(JP,A)
【文献】特開2010-123715(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131439(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0237935(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106063057(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ素子と、
前記レーザ光のコヒーレンスを低下させる変換部材と、
前記変換部材に結合されたセンス配線と、
前記センス配線の第1端の電位が所定の範囲内にある場合に第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記範囲内にない場合に第2の値を出力する電位判定回路と、
前記レーザ素子に直列に接続され、前記電位判定回路の出力が前記第1の値であるときに導通し、前記電位判定回路の出力が前記第2の値であるときに導通しない第1スイッチング素子と、
前記レーザ素子及び前記第1スイッチング素子を含む回路に並列に接続され、前記電位判定回路の出力が前記第2の値であるときに導通し、前記電位判定回路の出力が前記第1の値であるときに導通しない第2スイッチング素子と、
を備えた発光モジュール。
【請求項2】
前記電位判定回路は、
前記センス配線の前記第1端の電位が第1基準電位よりも低い場合に前記第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記第1基準電位よりも高い場合に前記第2の値を出力する第1比較回路と、
前記第1端の電位が前記第1基準電位よりも低い場合に前記第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記第1基準電位よりも高い場合に前記第2の値を出力する第2比較回路と、
前記第1端の電位が前記第1基準電位よりも低い第2基準電位よりも高い場合に前記第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記第2基準電位よりも低い場合に前記第2の値を出力する第3比較回路と、
前記第1端の電位が前記第2基準電位よりも高い場合に前記第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記第2基準電位よりも低い場合に前記第2の値を出力する第4比較回路と、
を有する請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記第1スイッチング素子は、第1ゲートと第1ソースと第1ドレインとを有するトランジスタである請求項1または2に記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子の前記第1ゲートは前記電位判定回路の出力点に接続された請求項3に記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記第2スイッチング素子は、第2ゲートと第2ソースと第2ドレインとを有するトランジスタである請求項3または4に記載の発光モジュール。
【請求項6】
第3ゲートと第3ソースと第3ドレインとを有し、前記第3ゲートが前記電位判定回路の出力点に接続され、前記第3ソースが第3基準電位に接続された第1トランジスタと、
前記第1トランジスタの前記第3ドレインと第4基準電位との間に接続された第1抵抗素子と、
をさらに備え、
前記第2スイッチング素子の前記第2ゲートは前記第1トランジスタと前記第1抵抗素子との接続点に接続された請求項5に記載の発光モジュール。
【請求項7】
前記第1トランジスタは、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子と同じ導電型のトランジスタである請求項6に記載の発光モジュール。
【請求項8】
レーザ光を出射するレーザ素子と、
前記レーザ光のコヒーレンスを低下させる変換部材と、
前記変換部材に結合されたセンス配線と、
前記センス配線の第1端の電位が所定の範囲内にある場合に第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記範囲内にない場合に第2の値を出力する電位判定回路と、
前記レーザ素子に直列に接続され、前記電位判定回路の出力が前記第1の値であるときに導通し、前記電位判定回路の出力が前記第2の値であるときに導通しない第1スイッチング素子と、
を備え、
前記電位判定回路は、
前記センス配線の前記第1端の電位が第1基準電位よりも低い場合に前記第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記第1基準電位よりも高い場合に前記第2の値を出力する第1比較回路と、
前記第1端の電位が前記第1基準電位よりも低い場合に前記第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記第1基準電位よりも高い場合に前記第2の値を出力する第2比較回路と、
前記第1端の電位が前記第1基準電位よりも低い第2基準電位よりも高い場合に前記第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記第2基準電位よりも低い場合に前記第2の値を出力する第3比較回路と、
前記第1端の電位が前記第2基準電位よりも高い場合に前記第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記第2基準電位よりも低い場合に前記第2の値を出力する第4比較回路と、
を有する発光モジュール。
【請求項9】
前記センス配線の前記第1端と第5基準電位との間に接続された第2抵抗素子をさらに備え、
前記センス配線の第2端は第6基準電位に接続された請求項1~8のいずれか1つに記載の発光モジュール。
【請求項10】
前記変換部材は、前記レーザ光を異なる波長の光に変換する蛍光体を含有する請求項1~9のいずれか1つに記載の発光モジュール。
【請求項11】
筐体をさらに備え、
前記レーザ素子は前記筐体内に配置され、
前記変換部材は前記レーザ素子から出射する前記レーザ光の経路上に配置された請求項1~10のいずれか1つに記載の発光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明装置や車両用の前照灯として、レーザダイオード(LD:Laser Diode)を用いた発光モジュールが開発されている。このような発光モジュールにおいては、LDから出射されたレーザ光が変換部材に照射され、変換部材によって波長が変換され、照明に適した光として外部に出射される。レーザ光はコヒーレンス(可干渉性)が比較的高い光であるが、変換部材を経由することでレーザ光よりもコヒーレンスが低下した光が外部に出射される。
【0003】
このような発光モジュールにおいては、外部からの衝撃等によって変換部材が破損すると、レーザ光が発光モジュールの外部に漏洩し、人の目に入る可能性がある。このため、変換部材が破損した場合にLDを停止させる停止手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような停止手段においては、変換部材が破損した際により確実にレーザ光を停止させることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、上述の問題点に鑑みてなされたものであって、変換部材が破損した際により確実にレーザ光を停止できる発光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る発光モジュールは、レーザ光を出射するレーザ素子と、前記レーザ光のコヒーレンスを低下させる変換部材と、前記変換部材に結合されたセンス配線と、前記センス配線の第1端の電位が所定の範囲内にある場合に第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記範囲内にない場合に第2の値を出力する電位判定回路と、前記レーザ素子に直列に接続され、前記電位判定回路の出力が前記第1の値であるときに導通し、前記電位判定回路の出力が前記第2の値であるときに導通しない第1スイッチング素子と、前記レーザ素子及び前記第1スイッチング素子を含む回路に並列に接続され、前記電位判定回路の出力が前記第2の値であるときに導通し、前記電位判定回路の出力が前記第1の値であるときに導通しない第2スイッチング素子と、を備える。
【0007】
本発明の他の実施形態に係る発光モジュールは、レーザ光を出射するレーザ素子と、前記レーザ光のコヒーレンスを低下させる変換部材と、前記変換部材に結合されたセンス配線と、前記センス配線の第1端の電位が所定の範囲内にある場合に第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記範囲内にない場合に第2の値を出力する電位判定回路と、前記レーザ素子に直列に接続され、前記電位判定回路の出力が前記第1の値であるときに導通し、前記電位判定回路の出力が前記第2の値であるときに導通しない第1スイッチング素子と、を備える。前記電位判定回路は、前記センス配線の前記第1端の電位が第1基準電位よりも低い場合に前記第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記第1基準電位よりも高い場合に前記第2の値を出力する第1比較回路と、前記第1端の電位が前記第1基準電位よりも低い場合に前記第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記第1基準電位よりも高い場合に前記第2の値を出力する第2比較回路と、前記第1端の電位が前記第1基準電位よりも低い第2基準電位よりも高い場合に前記第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記第2基準電位よりも低い場合に前記第2の値を出力する第3比較回路と、前記第1端の電位が前記第2基準電位よりも高い場合に前記第1の値を出力し、前記第1端の電位が前記第2基準電位よりも低い場合に前記第2の値を出力する第4比較回路と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、変換部材が破損した際により確実にレーザ光を停止できる発光モジュールを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る発光モジュールを示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る発光モジュールの発光部を示す断面図である。
【
図3】実施形態に係る発光モジュールを示す回路図である。
【
図4】実施形態に係る発光モジュールの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<構成>
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る発光モジュールを示すブロック図である。
図2は、本実施形態に係る発光モジュールの発光部を示す断面図である。
図3は、本実施形態に係る発光モジュールを示す回路図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る発光モジュール1においては、発光部10と、電力供給部30が設けられている。電力供給部30は、外部電源100に接続されて、発光部10に対して電力を供給する。発光部10は、電力供給部30から電力が供給されて、光L1を出射する。
【0012】
(発光部10)
図2に示すように、発光部10においては、筐体11が設けられている。筐体11の形状は、上面が開口した箱状である。なお、説明のために
図2において上に位置する面を上面と呼ぶが、発光モジュール1における上下方向はこれに限らない。筐体11は絶縁性材料からなる。筐体11はセラミックス材料を主成分として形成することができ、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム又は炭化ケイ素を含有することができる。
【0013】
筐体11の内部には、サブマウント12及び反射部材13が設けられている。サブマウント12及び反射部材13は、筐体11の底面11aに固定されている。サブマウント12は、例えば、セラミックス材料又は金属材料を主材料とする略直方体形状のブロックである。サブマウント12上には、レーザ素子14が設けられている。すなわち、レーザ素子14は筐体11内に配置されている。レーザ素子14は、例えば、III族窒化物半導体を有するレーザダイオード(LD)である。レーザ素子14はレーザ光L0を出射する。レーザ光L0は、例えば、青色である。レーザ素子14は少なくとも1つであり、複数であってもよい。レーザ素子14が複数である場合は、それらを直列または並列に接続することができる。
【0014】
反射部材13は、例えば、ガラス又は半導体からなるブロックとその表面に設けられた光反射膜とを有している。ブロックが金属材料などの光反射性の材料からなる場合は光反射膜を設けなくてもよい。反射部材13は、光反射面13aを有している。光反射面13aは、レーザ素子14に対向しており、筐体11の底面11aに対して傾斜している。反射部材13が光反射膜を有する場合は、光反射膜の設けられた面が光反射面13aである。
【0015】
筐体11の側壁11bの上部の内面には、段差11c及び11dが設けられている。上面視で、段差11c及び11dは、それぞれ筐体11の外縁に沿った枠状である。段差11dは段差11cよりも上方かつ外側に位置している。
【0016】
下側の段差11c内には透光性部材15が設けられている。透光性部材15は、レーザ光L0を透過させる板状の部材であり、例えば、サファイア又はガラスからなる。透光性部材15の外周部分は段差11cに接合されている。これにより、透光性部材15は筐体11の内部を気密的に封止している。
【0017】
透光性部材15の上面には、配線パターン16が設けられている。配線パターン16は透光性部材15の上面に例えばスパッタリングにより形成される。配線パターン16には一対の配線17が接続されている。配線17は筐体11の内部に設けられた導電部材を介して、電力供給部30に電気的に接続される。透光性部材15及び配線パターン16上には、変換部材22が設けられている。変換部材22は、支持部18及びコヒーレンス低減部19を有する。支持部18は、例えば、セラミックス材料からなり、形状は板状であり、開口部18aが設けられている。
【0018】
支持部18の開口部18a内には、コヒーレンス低減部19が設けられている。支持部18はコヒーレンス低減部19を支持している。コヒーレンス低減部19は、レーザ素子14から出射し、反射部材13の光反射面13aにおいて反射し、透光性部材15を透過したレーザ光L0が入射する位置に配置されている。すなわち、コヒーレンス低減部19はレーザ光L0の経路上に配置されている。コヒーレンス低減部19は例えばセラミックスである。コヒーレンス低減部19においては、例えば透光性の無機材料からなる母材中に、蛍光体が含有されている。透光性の無機材料は例えば酸化アルミニウムである。
【0019】
コヒーレンス低減部19は、レーザ素子14から出射したレーザ光L0が入射して、レーザ光L0のコヒーレンスを低下させる。コヒーレンス低減部19は例えばレーザ光L0を異なる波長の光に変換する蛍光体を含有する。言い換えると、コヒーレンス低減部19として例えば蛍光体含有部材を用いる。コヒーレンス低減部19に含有された蛍光体は、例えば、青色のレーザ光L0を吸収して、黄色の光を放射する。これにより、コヒーレンス低減部19からは、レーザ光L0が拡散された青色の光と、蛍光体により放射された黄色の光が出射し、全体として白色の光L1が出射する。コヒーレンス低減部19が蛍光体を含有することにより、レーザ光L0のコヒーレンスを低下させることができ、レーザ光L0よりもコヒーレンスの低い光L1を出射させることができる。コヒーレンス低減部19として、拡散板などの光拡散部材を用いてもよい。この場合、コヒーレンス低減部19は蛍光体を含有しなくてもよい。
【0020】
コヒーレンス低減部19に含有される蛍光体としては、例えば、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)蛍光体、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG)蛍光体、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO-Al2O3-SiO2)蛍光体、ユウロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)2SiO4)蛍光体、αサイアロン蛍光体、βサイアロン蛍光体等が挙げられる。なかでも、耐熱性が良好なYAG蛍光体を用いることが好ましい。
【0021】
変換部材22には、センス配線20が結合されている。センス配線20は、例えば、変換部材22の下面、すなわち、透光性部材15に対向する面に固定されている。センス配線20を設ける位置は、変換部材22の下面に限らず、例えば変換部材22の上面に形成されていてもよい。また、センス配線20は、変換部材22の支持部18及びコヒーレンス低減部19の双方に結合されていてもよく、いずれか一方のみに結合されていてもよい。センス配線20を支持部18のみに結合させることにより、センス配線20が光を吸収して光の取出効率を低下させることを抑制できる。
【0022】
センス配線20は、導電性の材料からなる。センス配線20は、例えば透光性かつ導電性の材料からなる。センス配線20は、例えば、ITO(Indium-Tin-Oxide:酸化インジウムスズ)からなる。センス配線20は金属材料を有していてもよい。センス配線20は配線パターン16に接続されている。したがって、センス配線20は、配線パターン16及び配線17を介して、電力供給部30に電気的に接続されている。変換部材22及びセンス配線20は、レーザ素子14を封止する筐体11及び蓋(例えば透光性部材15)から離間した位置に配置されてもよい。この場合、配線パターン16及び配線17を設ける必要はなく、センス配線20は例えば筐体11から離間して設けられた配線を介して電力供給部30に電気的に接続される。
【0023】
(電力供給部30)
図3に示すように、電力供給部30においては、配線基板50が設けられており、配線基板50に、第1スイッチング素子31、第2スイッチング素子32、第3スイッチング素子(第1トランジスタ33)、第1抵抗素子34、第2抵抗素子35、第3抵抗素子36、第1比較回路41、第2比較回路42、第3比較回路43、及び、第4比較回路44が搭載されている。第1比較回路41、第2比較回路42、第3比較回路43、及び、第4比較回路44は、電位判定回路40を構成する。配線基板50と発光部10は、例えばコネクタを有する配線によって接続することができる。あるいは、電力供給部30と発光部10とを1つの基板に固定してもよい。
【0024】
電力供給部30には、外部電源100を介して、第1基準電位V1、第2基準電位V2、第3基準電位V3、第4基準電位V4、第5基準電位V5、第6基準電位V6、アノード電位Va、及び、カソード電位Vcが供給される。第3基準電位V3と第6基準電位V6は同じ配線を介して供給されてもよく、第4基準電位V4と第5基準電位V5は同じ配線を介して供給されてもよい。なお、必ずしもすべての基準電位が外部電源100から供給されていなくてもよい。例えば、第1基準電位V1及び第2基準電位V2は配線基板50に搭載された回路から供給されてもよい。
【0025】
第1基準電位V1は、第5基準電位V5よりも低く、第2基準電位V2よりも高い。第2基準電位V2は第1基準電位V1よりも低く、第6基準電位V6よりも高い。すなわち、各電位を高い順に列挙すると、V5>V1>V2>V6である。
【0026】
一例では、第5基準電位V5は5V(電源電位)であり、第1基準電位V1は3~4.5Vであり、第2基準電位V2は0.5~2Vであり、第6基準電位V6は0V(接地電位)である。また、第3基準電位V3は0V(接地電位)であり、第4基準電位V4は5V(電源電位)である。一例では、アノード電位Vaは5~24Vであり、カソード電位Vcは0~10V且つアノード電位Vaより低い値である。
【0027】
センス配線20の第1端20aは第1ノードNa及び第3抵抗素子36の第1端36aに接続されており、センス配線20の第2端20bは第6基準電位V6に接続されている。第3抵抗素子36の第2端36bは第5基準電位V5に接続されている。これにより、第5基準電位V5と第6基準電位V6との間に第3抵抗素子36とセンス配線20が直列に接続されている。
【0028】
電位判定回路40を構成する第1比較回路41、第2比較回路42、第3比較回路43、及び、第4比較回路44(以下、総称して単に「比較回路」ともいう)は、それぞれ、2つの入力端子と1つの出力端子を有し、2つの入力端子の電位を比較して、比較結果を出力端子から出力する。各比較回路には、高電位側基準電位及び低電位側基準電位が供給されている。高電位側基準電位は例えば5V(電源電位)であり、低電位側基準電位は例えば0V(接地電位)であるが、これには限定されない。
図3の4つの比較回路の高電位側基準電位はすべて同じ電位であってよく、
図3の4つの比較回路の低電位側基準電位はすべて同じ電位であってよい。
【0029】
第1比較回路41の第1の入力端子は第1基準電位V1に接続されており、第2の入力端子はセンス配線20の第1端20a(第1ノードNa)に接続されている。第1比較回路41は、センス配線20の第1端20aの電位が第1基準電位V1よりも低い場合に第1の値(H)を出力し、第1端20aの電位が第1基準電位V1よりも高い場合に第2の値(L)を出力する。例えば、第1の値(H)は、電力供給部30を構成するスイッチング素子及びトランジスタを導通状態(オン状態)とする電位であり、第2の値(L)は、これらのスイッチング素子及びトランジスタを非導通状態(オフ状態)とする電位である。例えば、第1比較回路41の低電位側基準電位が0V(接地電位)である場合、第2の値(L)は0Vである。
【0030】
第2比較回路42についても、第1の入力端子は第1基準電位V1に接続されており、第2の入力端子はセンス配線20の第1端20a(第1ノードNa)に接続されている。第2比較回路42は、センス配線20の第1端20aの電位が第1基準電位V1よりも低い場合に第1の値(H)を出力し、第1端20aの電位が第1基準電位V1よりも高い場合に第2の値(L)を出力する。すなわち、第2比較回路42は第1比較回路41と同じ動作をする。
【0031】
第3比較回路43の第1の入力端子はセンス配線20の第1端20a(第1ノードNa)に接続されており、第2の入力端子は第2基準電位V2に接続されている。第3比較回路43は、センス配線20の第1端20aの電位が第2基準電位V2よりも高い場合に第1の値(H)を出力し、第1端20aの電位が第2基準電位V2よりも低い場合に第2の値(L)を出力する。
【0032】
第4比較回路44についても、第1の入力端子はセンス配線20の第1端20a(第1ノードNa)に接続されており、第2の入力端子は第2基準電位V2に接続されている。第4比較回路44は、センス配線20の第1端20aの電位が第2基準電位V2よりも高い場合に第1の値(H)を出力し、第1端20aの電位が第2基準電位V2よりも低い場合に第2の値(L)を出力する。すなわち、第4比較回路44は第3比較回路43と同じ動作をする。
【0033】
第1比較回路41の出力端子、第2比較回路42の出力端子、第3比較回路43の出力端子、及び、第4比較回路44の出力端子は、第2ノードNbに接続されている。第2ノードNbは電位判定回路40の出力点となっている。全ての比較回路の出力が全て第1の値(H)であるとき、第2ノードNbの電位は第1の値(H)となる。一方、いずれかの比較回路の出力が第2の値(L)となると、第2ノードNbの電位は低電位側基準電位に引かれ、第2の値(L)となる。
【0034】
このため、電位判定回路40は、センス配線20の第1端20a(第1ノードNa)の電位が所定の範囲内、すなわち、第2基準電位V2より高く第1基準電位V1よりも低い範囲内にある場合に、第1の値(H)を出力する。以下、第2基準電位V2より高く第1基準電位V1よりも低い範囲を「正常範囲」という。一方、電位判定回路40は、センス配線20の第1端20a(第1ノードNa)の電位が正常範囲外、すなわち、第2基準電位V2よりも低いか第1基準電位V1よりも高い場合に、第2の値(L)を出力する。
【0035】
第2ノードNbと第4基準電位V4(例えば、電源電位)との間には、第2抵抗素子35が接続されている。第4基準電位V4と第3基準電位V3(例えば、接地電位)との間には、第1抵抗素子34及び第3スイッチング素子(第1トランジスタ33)が直列に接続されている。第3スイッチング素子はトランジスタに限るものではないが、第3スイッチング素子として第1トランジスタ33を用いることでスイッチング速度を向上させることができる。第1トランジスタ33は、例えばnチャネル型のFET(Field-Effect Transistor:電界効果トランジスタ)である。第1トランジスタ33は、例えばnチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)である。第1トランジスタ33は、第3ゲート33gと第3ソース33sと第3ドレイン33dとを有する。第1トランジスタ33は、第3ゲート33gに第1の値(H)が入力された場合に導通状態となり、第2の値(L)が入力された場合に非導通状態となる。言い換えると、第3ゲート33gがオンとなる閾値電圧は第1の値(H)と第2の値(L)の間の値である。
【0036】
第1トランジスタ33の第3ゲート33gは、第2ノードNb、すなわち、電位判定回路40の出力点に接続されており、第3ソース33sは第3基準電位V3(例えば、接地電位)に接続されている。第3ドレイン33dは第1抵抗素子34の第1端に接続されている。第1抵抗素子34の第2端は第4基準電位V4(例えば、電源電位)に接続されている。
【0037】
図3では、第2スイッチング素子32としてトランジスタ(第2トランジスタ)を用いている。第2スイッチング素子32は、例えばnチャネル型のFETである。第2スイッチング素子32は、例えば、nチャネル型のMOSFETである。第2スイッチング素子32は、第2ゲート32gと、第2ソース32sと、第2ドレイン32dとを有する。第2ゲート32gは第1トランジスタ33と第1抵抗素子34との接続点である第3ノードNcに接続されている。第2ソース32sはカソード電位Vcに接続される。第2ドレイン32dはアノード電位Vaに接続される。第1抵抗素子34の抵抗は、第2スイッチング素子32の第2ゲート32gと第2ソース32s間の抵抗よりも低い。第2スイッチング素子32はトランジスタに限るものではないが、比較的大きな電流を流すためにはトランジスタが適しているため、第2スイッチング素子32としてトランジスタを用いることが好ましい。
【0038】
第1抵抗素子34と第1トランジスタ33との接続点、すなわち、第3ノードNcの電位は、第1トランジスタ33が導通状態である場合は、第3基準電位V3と実質的に等しいといえる。このため、第3基準電位V3は、第2スイッチング素子32が導通状態となる閾値よりも低い値とする。これにより、第1トランジスタ33が導通状態である場合は、第2スイッチング素子32は導通しない。第2の値「L」と第3基準電位V3が等しい電位である場合(例えばいずれも接地電位である場合)、第1トランジスタ33が導通状態である場合の第3ノードNcの電位は、第2の値「L」とほぼ等しいといえる。
【0039】
一方、第1トランジスタ33が非導通状態である場合は、第3ノードNcの電位は第4基準電位V4(例えば、電源電位)に引かれて、第1トランジスタ33が導通状態である場合よりも高い電位となる。第1トランジスタ33が非導通状態である場合の第3ノードNcの電位が、第2スイッチング素子32が導通状態となる閾値よりも高くなるように、第4基準電位V4を設定する。第1トランジスタ33が非導通状態である場合の第3ノードNcの電位は、例えば第1の値「H」と等しい。このため、第1トランジスタ33が非導通状態である場合は、第2スイッチング素子32は導通する。このように、第2スイッチング素子32は、電位判定回路40の出力、すなわち、第2ノードNbの電位が第2の値(L)であるときに導通し、電位判定回路40の出力が第1の値(H)であるときに導通しない。
【0040】
図3では、第1スイッチング素子31としてトランジスタ(第3トランジスタ)を用いている。第1スイッチング素子31は、例えばnチャネル型のFETである。第1スイッチング素子31は、第2スイッチング素子32及び第1トランジスタ33と同じ導電型のトランジスタであり、例えば、nチャネル型のMOSFETである。第1スイッチング素子31は、第1ゲート31gと、第1ソース31sと、第1ドレイン31dとを有する。第1ゲート31gは第2ノードNb、すなわち、電位判定回路40の出力点に接続されている。このため、第1スイッチング素子31は、第2ノードNb、すなわち、電位判定回路40の出力点の電位によって導通状態と非導通状態が切り替わる。第1スイッチング素子31は、電位判定回路40の出力点の電位が第1の値(H)であるときに導通し、第2の値(L)であるときに導通しない。第1スイッチング素子31としては、このような動作をする素子であればトランジスタに限らず用いることができるが、比較的大きな電流を流すためにはトランジスタが適しているため、第1スイッチング素子31としてトランジスタを用いることが好ましい。
【0041】
第1スイッチング素子31の第1ドレイン31dはレーザ素子14のカソードに接続されている。第1ソース31sはカソード電位Vcに接続される。レーザ素子14のアノードは、アノード電位Vaに接続される。これにより、アノード電位Vaとカソード電位Vcとの間に、レーザ素子14と第1スイッチング素子31が直列に接続される。また、第2スイッチング素子32は、アノード電位Vaとカソード電位Vcとの間で、レーザ素子14及び第1スイッチング素子31を含む回路に並列に接続される。
【0042】
第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32には、レーザ素子14に流れる電流が流れる場合がある。一方で、第1トランジスタ33にはレーザ素子14に流れる電流は流れない。このため、第1トランジスタ33のドレイン電流の定格値は、第1スイッチング素子31の定格値及び第2スイッチング素子32の定格値よりも低くてもよい。第1トランジスタ33のドレイン電流の定格値は、第1スイッチング素子31の定格値及び第2スイッチング素子32の定格値の10%以下であってよく、1%以下であってもよい。例えば、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32のドレイン電流の定格値は数十~数百A(アンペア)であり、第1トランジスタ33のドレイン電流の定格値は1A未満であってもよい。第1トランジスタ33の定格値を小さくすることにより、発光モジュール1の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0043】
<動作>
次に、本実施形態に係る発光モジュールの動作について説明する。
図4は、本実施形態に係る発光モジュールの動作を示す図である。
本実施形態においては、センス配線20が正常である場合を「通常モード」とし、センス配線20にオープン不良が発生した場合を「オープンモード」とし、センス配線20が短絡した場合を「ショートモード」とする。
【0044】
発光モジュール1が正常であれば、センス配線20も正常であり、発光モジュール1は「通常モード」である。通常モードにおいては、発光モジュール1に電力が供給されたときにレーザ素子14が発光すること、すなわちレーザ素子14がレーザ発振し、レーザ素子14からレーザ光L0が出射することが要求される。
【0045】
一方、例えば、変換部材22が破損した場合には、センス配線20が断線し、「オープンモード」となる。オープンモードにおいては、レーザ光L0が筐体11の外部に漏洩しないように、レーザ光L0を停止させること、すなわちレーザ素子14のレーザ発振を停止させることが要求される。なお、レーザ発振の停止とは、レーザ素子14をレーザ光L0を出射しない状態とすることを指す。例えばレーザ素子14にレーザ発振の閾値未満の電流が流れている状態は、レーザ発振の停止に含まれる。
【0046】
また、例えば、センス配線20に異物が付着した場合には、センス配線20が短絡し、「ショートモード」となる。また、センス配線20ではなくセンス配線20と電気的に接続された導通経路に異物が付着した場合も、センス配線20が短絡した場合と実質的に同じとなる場合があり、これもショートモードといえる。ショートモードにおいては、変換部材22が破損してセンス配線20が断線しても、異物によって疑似的にセンス配線20の導通状態が維持され、変換部材22の破損を検知できない可能性がある。このため、ショートモードにおいても、レーザ素子14のレーザ発振を停止させることが要求される。
【0047】
なお、
図4においては、比較回路の出力端子の電位又は各ノードの電位が第1の値である場合を「H」と表記し、第2の値である場合を「L」と表記する。第3ノードNcが取り得る2種類の電位は第1の値及び第2の値と必ずしも一致しなくてもよいが、
図4では一致する場合を例示する。比較回路、スイッチング素子又はトランジスタが故障してオープン状態になった場合を「NG」と表記する。スイッチング素子又はトランジスタが導通している場合を「ON」と表記し、導通していない場合を「OFF」と表記する。レーザ素子14が発光している場合を「ON」と表記し、発光していない場合を「OFF」と表記する。また、
図4においては、説明の便宜上、行番号を付している。以下、各モードにおける発光モジュール1の動作を説明する。
【0048】
(通常モード)
先ず、通常モードの動作について説明する。上述の如く、通常モードにおいては、変換部材22は正常であり、センス配線20も正常である。
【0049】
図4の第1行に示すように、電力供給部30の各回路素子も正常である場合を説明する。なお、「回路素子」とは、各比較回路、第1スイッチング素子31、第2スイッチング素子32、及び、第1トランジスタ33の総称である。
【0050】
図1に示すように、発光モジュール1が外部電源100に接続されると、発光モジュール1の各部に所定の電位が印加される。具体的には、第3抵抗素子36及びセンス配線20が直列に接続された回路の両端に、第5基準電位V5(例えば、電源電位)と第6基準電位V6(例えば、接地電位)が印加される。また、電位判定回路40に第1基準電位V1及び第2基準電位V2が印加される。第2基準電位V2は第1基準電位V1よりも低い。また、第1抵抗素子34及び第1トランジスタ33が直列に接続された回路の両端に、第4基準電位V4(例えば、電源電位)と第3基準電位V3(例えば、接地電位)が印加される。また、レーザ素子14と第1スイッチング素子31が直列に接続された回路の両端に、アノード電位Vaとカソード電位Vcが印加される。
【0051】
第5基準電位V5と第6基準電位V6との電位差は、第3抵抗素子36とセンス配線20によって抵抗分圧される。これにより、第1ノードNaの電位は、第2基準電位V2よりも高く第1基準電位V1よりも低い範囲(正常範囲)内の値となる。
【0052】
第1比較回路41は、第1基準電位V1と第1ノードNaの電位とを比較する。
図4の第1行に示す状態では、第1ノードNaの電位、すなわち、センス配線20の第1端20aの電位が第1基準電位V1よりも低いため、第1比較回路41は第1の値(H)を出力する。第2比較回路42も、第1基準電位V1と第1ノードNaの電位とを比較し、第1ノードNaの電位が第1基準電位V1よりも低いため、第1の値(H)を出力する。
【0053】
第3比較回路43は、第1ノードNaの電位と第2基準電位V2とを比較する。第1ノードNaの電位は第2基準電位V2よりも高いため、第3比較回路43は第1の値(H)を出力する。第4比較回路44も、第1ノードNaの電位と第2基準電位V2とを比較し、第1ノードNaの電位は第2基準電位V2よりも高いため、第1の値(H)を出力する。このように、全ての比較回路の出力が第1の値(H)であるため、電位判定回路40の出力点、すなわち、第2ノードNbの電位は、第1の値(H)となる。
【0054】
これにより、第1スイッチング素子31の第1ゲート31gには第1の値(H)が印加され、第1スイッチング素子31は導通する。一方、第1トランジスタ33の第3ゲート33gにも第1の値(H)が印加され、第1トランジスタ33が導通する。このため、第3ノードNcの電位は第3基準電位V3に引かれて第2の値(L)となる。これにより、第2スイッチング素子32の第2ゲート32gに第2の値(L)が印加されて、第2スイッチング素子32は非導通状態となる。
【0055】
この結果、アノード電位Vaとカソード電位Vcとの間において、第1スイッチング素子31を含む経路には電流が流れ、第2スイッチング素子32を含む経路には実質的に電流が流れない。これにより、レーザ素子14に電流が流れて、レーザ素子14がレーザ発振し、レーザ素子14からレーザ光L0が出射する。
【0056】
図2に示すように、レーザ素子14から出射したレーザ光L0は、反射部材13の光反射面13aにおいて反射し、透光性部材15を透過して、変換部材22のコヒーレンス低減部19に入射する。コヒーレンス低減部19に入射したレーザ光L0の一部は、コヒーレンス低減部19に含有された蛍光体によってコヒーレンスが低下、例えば、異なる波長の光に変換される。例えば、青色のレーザ光L0が黄色の光に変換される。コヒーレンス低減部19に入射したレーザ光L0の残部は、コヒーレンス低減部19内で拡散されるなどしてコヒーレンス低減部19を通過する。この結果、コヒーレンス低減部19から、黄色の光と青色の光が混色した白色の光L1が出射する。
【0057】
次に、電力供給部30を構成する回路素子のうち、一部の回路素子が故障してオープン状態となった場合について説明する。
【0058】
図4の第2行に示すように、第1比較回路41が故障してオープン状態となった場合は、第1比較回路41の出力端子が浮遊状態となる。しかしながら、第2比較回路42は第1の値(H)を出力し、第3比較回路43及び第4比較回路44も第1の値(H)を出力するため、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第1の値(H)のままである。このため、
図4の第1行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光し、発光モジュール1から光L1が出射する。
【0059】
図4の第3行に示すように、第2比較回路42が故障してオープン状態となった場合は、第2比較回路42の出力端子が浮遊状態となる。しかしながら、第1比較回路41は第1の値(H)を出力し、第3比較回路43及び第4比較回路44も第1の値(H)を出力するため、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第1の値(H)のままである。このため、
図4の第1行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光し、発光モジュール1から光L1が出射する。このように、通常モードにおいて、第1比較回路41と第2比較回路42は相互補完の関係にある。
【0060】
図4の第4行に示すように、第3比較回路43が故障してオープン状態となった場合は、第3比較回路43の出力端子が浮遊状態となる。しかしながら、第4比較回路44は第1の値(H)を出力し、第1比較回路41及び第2比較回路42も第1の値(H)を出力するため、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第1の値(H)のままである。このため、
図4の第1行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光し、発光モジュール1から光L1が出射する。
【0061】
図4の第5行に示すように、第4比較回路44が故障してオープン状態となった場合は、第4比較回路44の出力端子が浮遊状態となる。しかしながら、第3比較回路43は第1の値(H)を出力し、第1比較回路41及び第2比較回路42も第1の値(H)を出力するため、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第1の値(H)のままである。このため、
図4の第1行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光し、発光モジュール1から光L1が出射する。このように、通常モードにおいて、第3比較回路43と第4比較回路44は相互補完の関係にある。
【0062】
図4の第6行に示すように、第1トランジスタ33が故障してオープン状態になると、第3ノードNcが第3基準電位V3(例えば、接地電位)から絶縁されるため、第3ノードNcの電位は第4基準電位V4(例えば、電源電位)に引かれて第1の値(H)となる。これにより、第2スイッチング素子32が導通する。一方、第2ノードNbの電位は第1の値(H)であるため、第1スイッチング素子31も導通する。しかしながらこの場合は、レーザ素子14に十分な電流が流れなくなり、レーザ素子14のレーザ発振は停止する。例えば、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32としてFETを用いて、レーザ素子14としてIII族窒化物半導体を有するレーザダイオードを用いる。この場合、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32の両方が導通状態である場合にレーザ素子14に流れる電流は、レーザ素子14のレーザ発振の閾値未満とすることができる。
【0063】
図4の第7行に示すように、第2スイッチング素子32が故障してオープン状態になっても、第1スイッチング素子31は導通し続けるため、レーザ素子14は発光する。
【0064】
図4の第8行に示すように、第1スイッチング素子31が故障してオープン状態になると、レーザ素子14に電流が供給されなくなり、レーザ素子14のレーザ発振は停止する。
【0065】
このように、通常モードにおいては、第1トランジスタ33が故障した場合(
図4の第6行)及び第1スイッチング素子31が故障した場合(
図4の第8行)にはレーザ素子14のレーザ発振が停止するものの、比較回路又は第2スイッチング素子が故障してもレーザ素子14は発光状態を維持する。したがって、発光モジュール1は、電力供給部30の回路素子の一部が故障しても、高い確率で発光状態を維持することができる。
【0066】
(オープンモード)
次に、オープンモードの動作について説明する。上述の如く、変換部材22が破損すると、センス配線20が断線してオープンモードとなる。オープンモードにおいては、レーザ素子14のレーザ発振を停止させることが要求される。
【0067】
図4の第9行に示すように、電力供給部30の各回路素子が正常である場合は、センス配線20が断線すると、第1ノードNaの電位は第5基準電位V5(例えば、電源電位)に引かれて、第1基準電位V1よりも高くなる。これにより、第1比較回路41の出力と第2比較回路42の出力が第2の値(L)となり、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第2の値(L)となる。なお、第3比較回路43の出力と第4比較回路44の出力は第1の値(H)のままである。
【0068】
この結果、第1スイッチング素子31の第1ゲート31gの電位も第2の値(L)となり、第1スイッチング素子31が非導通状態となる。一方、第1トランジスタ33の第3ゲート33gの電位も第2の値(L)となり、第1トランジスタ33も非導通状態となる。これにより、第3ノードNcの電位が第4基準電位V4に引かれて第1の値(H)となり、第2スイッチング素子32の第2ゲート32gの電位も第1の値(H)となる。このため、第2スイッチング素子32は導通状態となる。
【0069】
この結果、アノード電位Vaとカソード電位Vcとの間において、第2スイッチング素子32を含む経路に電流が流れ、第1スイッチング素子31を含む経路には電流が流れない。これにより、レーザ素子14には電流が流れず、レーザ発振を停止する。したがって、発光モジュール1は光L1を出射しない。
【0070】
図4の第10行に示すように、第1比較回路41が故障してオープン状態となった場合は、第1比較回路41の出力端子が浮遊状態となる。しかしながら、第2比較回路42は第2の値(L)を出力するため、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第2の値(L)のままである。このため、
図4の第9行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光しない。したがって、発光モジュール1から光L1は出射しない。
【0071】
図4の第11行に示すように、第2比較回路42が故障してオープン状態となった場合は、第2比較回路42の出力端子が浮遊状態となる。しかしながら、第1比較回路41は第2の値(L)を出力するため、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第2の値(L)のままである。このため、
図4の第9行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光しない。したがって、発光モジュール1から光L1は出射しない。このように、オープンモードにおいて、第1比較回路41と第2比較回路42は相互補完の関係にある。
【0072】
図4の第12行に示すように、第3比較回路43が故障してオープン状態となっても、第1比較回路41及び第2比較回路42は第2の値(L)を出力するため、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第2の値(L)のままである。このため、
図4の第9行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光しない。したがって、発光モジュール1から光L1は出射しない。
【0073】
図4の第13行に示すように、第4比較回路44が故障してオープン状態となっても、第1比較回路41及び第2比較回路42は第2の値(L)を出力するため、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第2の値(L)のままである。このため、
図4の第9行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光しない。したがって、発光モジュール1から光L1は出射しない。
【0074】
図4の第14行に示すように、第1トランジスタ33が故障してオープン状態になっても、回路動作上は第1トランジスタ33が非導通状態である場合と等価であるため、
図4の第9行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光しない。したがって、発光モジュール1から光L1は出射しない。
【0075】
図4の第15行に示すように、第2スイッチング素子32が故障してオープン状態になった場合は、第2スイッチング素子32を含む経路には電流が流れなくなる。しかしながら、第2ノードNbの電位は第2の値(L)であるため、第1スイッチング素子31の第1ゲート31gの電位も第2の値(L)であり、第1スイッチング素子31は導通しない。したがって、レーザ素子14は発光せず、発光モジュール1から光L1は出射しない。
【0076】
図4の第16行に示すように、第1スイッチング素子31が故障してオープン状態になっても、回路動作上は第1スイッチング素子31が非導通状態である場合と等価であるため、レーザ素子14は発光しない。したがって、発光モジュール1から光L1は出射しない。なお、第2スイッチング素子32は導通状態であるため、アノード電位Vaとカソード電位Vcとの間において、第2スイッチング素子32を含む経路に電流が流れる。
【0077】
このように、オープンモードにおいては、いずれかの回路素子が故障しても、レーザ素子14はレーザ発振が停止した状態を維持する。このため、変換部材22が破損すると共にいずれかの回路素子が故障しても、レーザ光L0が発光部10の外に漏洩することがない。
【0078】
(ショートモード)
次に、ショートモードの動作について説明する。上述の如く、センス配線20に異物が付着するなどの原因により、実質的にセンス配線20が短絡してショートモードとなる場合がある。ショートモードにおいては、センス配線20が変換部材22の破損を検出できない可能性があるため、レーザ素子14のレーザ発振を停止させることが要求される。
【0079】
図4の第17行に示すように、電力供給部30の各回路素子が正常である場合は、センス配線20が短絡すると、第1ノードNaの電位は第6基準電位V6(例えば、接地電位)に引かれて、第2基準電位V2よりも低くなる。これにより、第3比較回路43の出力と第4比較回路44の出力が第2の値(L)となり、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第2の値(L)となる。このため、
図4の第9行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光せず、発光モジュール1から光L1は出射しない。なお、第1比較回路41の出力と第2比較回路42の出力は第1の値(H)である。
【0080】
図4の第18行に示すように、第1比較回路41が故障してオープン状態となっても、第3比較回路43及び第4比較回路44は第2の値(L)を出力するため、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第2の値(L)のままである。このため、
図4の第17行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光せず、発光モジュール1から光L1は出射しない。
【0081】
図4の第19行に示すように、第2比較回路42が故障してオープン状態となっても、第3比較回路43及び第4比較回路44は第2の値(L)を出力するため、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第2の値(L)のままである。このため、
図4の第17行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光せず、発光モジュール1から光L1は出射しない。
【0082】
図4の第20行に示すように、第3比較回路43が故障してオープン状態となった場合は、第3比較回路43の出力端子が浮遊状態となる。しかしながら、第4比較回路44は第2の値(L)を出力するため、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第2の値(L)のままである。このため、
図4の第17行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光しない。したがって、発光モジュール1から光L1は出射しない。
【0083】
図4の第21行に示すように、第4比較回路44が故障してオープン状態となった場合は、第4比較回路44の出力端子が浮遊状態となる。しかしながら、第3比較回路43は第2の値(L)を出力するため、電位判定回路40の出力点(第2ノードNb)の電位は、第2の値(L)のままである。このため、
図4の第17行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光しない。したがって、発光モジュール1から光L1は出射しない。このように、ショートモードにおいては、第3比較回路43と第4比較回路44は相互補完の関係にある。
【0084】
図4の第22行に示すように、第1トランジスタ33が故障してオープン状態になっても、回路動作上は第1トランジスタ33が非導通状態である場合と等価であるため、
図4の第17行に示す動作と同様に、レーザ素子14は発光しない。したがって、発光モジュール1から光L1は出射しない。
【0085】
図4の第23行に示すように、第2スイッチング素子32が故障してオープン状態になった場合は、第2スイッチング素子32を含む経路には電流が流れなくなる。しかしながら、第2ノードNbの電位は第2の値(L)であるため、第1スイッチング素子31の第1ゲート31gの電位も第2の値(L)であり、第1スイッチング素子31は導通しない。したがって、レーザ素子14は発光せず、発光モジュール1から光L1は出射しない。
【0086】
図4の第24行に示すように、第1スイッチング素子31が故障してオープン状態になっても、回路動作上は第1スイッチング素子31が非導通状態である場合と等価であるため、レーザ素子14は発光しない。したがって、発光モジュール1から光L1は出射しない。なお、第2スイッチング素子32は導通状態であるため、アノード電位Vaとカソード電位Vcとの間において、第2スイッチング素子32を含む経路に電流が流れる。
【0087】
このように、ショートモードにおいては、いずれかの回路素子が故障しても、レーザ素子14はレーザ発振が停止した状態を維持する。このため、ショートモードにおいて、変換部材22が破損すると共にいずれかの回路素子が故障しても、レーザ光L0が発光部10の外に漏洩することがない。
【0088】
(その他の故障モード)
図4では、比較回路、スイッチング素子又はトランジスタの故障状態がオープン状態である場合を示したが、それらの故障状態はショート状態もあり得る。例えば、それらの故障状態はショート状態を経てオープン状態となる。
【0089】
第1スイッチング素子31がショートの故障状態であって且つセンス配線20の異常がオープンモード又はショートモードである場合、比較回路は第2の値(L)を出力するが、第1スイッチング素子31はショート状態であるため非導通状態にならない。しかし一方で、比較回路が第2の値(L)を出力することによって、第2スイッチング素子32が導通する。これによって、レーザ素子14のレーザ発振を停止させることができる。
【0090】
第2スイッチング素子32がショートの故障状態である場合は、通常モード、オープンモード及びショートモードのいずれであるかに関わらず、レーザ素子14のレーザ発振は停止する。第1トランジスタ33がショートの故障状態である場合は、第2スイッチング素子32が非導通状態になり、第1スイッチング素子31が導通状態か否かに応じてレーザ素子14がレーザ発振をするか否かが決定される。比較回路のオープン状態以外の故障状態は、例えば比較回路の一部が短絡することによって入力値に関わらず第2の値(L)を出力する場合が想定されるが、この場合は、第2ノードNbが第2の値(L)になるため、通常モード、オープンモード及びショートモードのいずれであるかに関わらず、レーザ素子14のレーザ発振が停止する。
【0091】
<効果>
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態に係る発光モジュール1は、オープンモードにおいては、第1比較回路41と第2比較回路42が相互補完の関係にあり、第1比較回路41及び第2比較回路42のうち一方が故障しても、他方が第2の値(L)を出力することができる。このため、第2ノードNbの電位を第2の値(L)に維持し、レーザ素子14のレーザ発振をより確実に停止させることができる。
【0092】
また、ショートモードにおいては、第3比較回路43と第4比較回路44が相互補完の関係にあり、第3比較回路43及び第4比較回路44のうち一方が故障しても、他方が第2の値(L)を出力することができる。このため、第2ノードNbの電位を第2の値(L)に維持し、レーザ素子14のレーザ発振をより確実に停止させることができる。
【0093】
また、本実施形態に係る発光モジュール1は、第2スイッチング素子32を有することにより、第1スイッチング素子31の故障状態がオープン状態でなくショート状態である場合であっても、レーザ素子14のレーザ発振を停止させることができる。これによって、レーザ素子14のレーザ発振をより確実に停止させることができる。
【0094】
このように、本実施形態によれば、一部の回路素子が故障しても、通常モードにおいては高い確率で発光を維持しつつ、オープンモード及びショートモードにおいてはレーザ素子14のレーザ発振をより確実に停止させることができる。これにより、変換部材が破損した際により確実にレーザ光を停止できる発光モジュールを実現できる。
【0095】
例えば、本実施形態に係る発光モジュール1を自動車等の車両用の前照灯として使用したときに、車両の事故等により発光モジュール1が損傷を受けて、変換部材22と共に電力供給部30の一部が破壊されても、レーザ光L0が発光モジュール1の外部に出射することを抑制できる。この結果、高い安全性を実現することができる。
【0096】
なお、比較回路、スイッチング素子又はトランジスタの故障状態によっては、センス配線20が正常な通常モードであってもレーザ素子14のレーザ発振が停止する場合があるが、この場合は、更なる故障が発生する前に発光モジュール1の使用者に異常を知らせることができるという利点がある。
【0097】
前述の実施形態は、本発明を具現化した例であり、本発明はこの実施形態には限定されない。例えば、前述の実施形態において、いくつかの構成要素を追加、削除又は変更したものも本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、例えば、照明装置又は車両用の前照灯等に利用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1:発光モジュール
10:発光部
11:筐体
11a:底面
11b:側壁
11c、11d:段差
12:サブマウント
13:反射部材
13a:光反射面
14:レーザ素子
15:透光性部材
16:配線パターン
17:配線
18:支持部
18a:開口部
19:コヒーレンス低減部
20:センス配線
20a:第1端
20b:第2端
22:変換部材
30:電力供給部
31:第1スイッチング素子
31d:第1ドレイン
31g:第1ゲート
31s:第1ソース
32:第2スイッチング素子
32d:第2ドレイン
32g:第2ゲート
32s:第2ソース
33:第1トランジスタ
33d:第3ドレイン
33g:第3ゲート
33s:第3ソース
34:第1抵抗素子
35:第2抵抗素子
36:第3抵抗素子
36a:第1端
36b:第2端
40:電位判定回路
41:第1比較回路
42:第2比較回路
43:第3比較回路
44:第4比較回路
50:配線基板
100:外部電源
L0:レーザ光
L1:光
Na:第1ノード
Nb:第2ノード
Nc:第3ノード