(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】活性エネルギー線重合開始剤、活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク、インク収容容器、画像形成方法および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
C08F 4/00 20060101AFI20240930BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20240930BHJP
C08F 2/46 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
C08F4/00
C09D11/101
C08F2/46
(21)【出願番号】P 2020117238
(22)【出願日】2020-07-07
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】原田 成之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】廣川 悠哉
(72)【発明者】
【氏名】齋賀 拓也
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-524750(JP,A)
【文献】特開2005-154615(JP,A)
【文献】特開2002-187918(JP,A)
【文献】特開昭58-079991(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050551(WO,A1)
【文献】特開2010-284892(JP,A)
【文献】WEN,Y. et al.,Amphipathic hyperbranched polymeric thioxanthone photoinitiators (AHPTXs): Synthesis, characterization and photoinitiated polymerization,Polymer,2009年,Vol.50, No.16,pp.3917-3923
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
C08F 4/00-4/58
C09D 11/00-13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を有する活性エネルギー線重合開始剤。
【化1】
(一般式(1)中、R
1はH又はメトキシ基、R
2はH、又はC1~8の炭化水素基、AlkはC3~12の炭化水素基、及びLnkは
単結合、又は下記構造式(1)で表される基である。)
【化2】
【請求項2】
前記Lnkが前記構造式(1)で表される基である、請求項1に記載の活性エネルギー線重合開始剤。
【請求項3】
前記R
1がHである、請求項2に記載の活性エネルギー線重合開始剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型インク。
【請求項6】
請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型インクを収容したインク収容容器。
【請求項7】
請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型インクを、記録媒体上に吐出し画像を形成する画像形成方法。
【請求項8】
請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型インクを収容するインク収容容器と、前記インク収容容器に収容されているインクを、記録媒体上に吐出する吐出手段とを備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線重合開始剤、活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク、インク収容容器、画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、揮発性有機化合物の使用は、大気汚染の原因の一つとして懸念され、法的な制限を受ける場合がある。印刷用インクにおいても、ビヒクルとして水を主体とした水系インク組成物が必要とされている。
水系インクの多くは、媒体に画像を定着させるために、熱可塑性の樹脂エマルションを含有し、加熱乾燥により樹脂エマルションが造膜し、画像が形成される。また、画像の耐性、例えば、印刷時の滲み(ビーディング)防止性、画像形成後のエタノール等の接触による画像の滲み防止性、及び物理的な引っかきや擦れに対する耐性を、より強固にするために、電子線(EB)や紫外線(UV)などの活性エネルギー線で重合可能な、水溶性モノマー、水溶性オリゴマー、又は樹脂エマルションと、活性エネルギー線によりフリーラジカルを発生する水溶性重合開始剤と、を含む水系インクが使用される。
活性エネルギー線の光源は、省エネルギー及び省スペースの点で、350nm~400nmのUV発光ダイオード(LED)が望ましい。
特許文献1では、UVに対する高い感度と、水に対する高い溶解性とを有する光重合開始剤、及びそれを用いたインク組成物が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1で例示されている重合開始剤の吸収最大波長(λmax)は、301nm~318nmであり、350nm~400nmのUV-LED光源に対する感度は、不十分である。
従って、本発明の目的は、350nm~400nmのUVに対する高い感度と、水に対する高い溶解性を有する活性エネルギー線重合開始剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、下記の(1)の構成を備えた発明により解決される。
(1)下記一般式(1)で表される構造を有する活性エネルギー線重合開始剤。
【化1】
(一般式(1)中、R
1はH又はメトキシ基、R
2はH、又はC1~8の炭化水素基、AlkはC3~12の炭化水素基、及びLnkは結合手、又は下記構造式(1)で表される基である。)
【化2】
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、350nm~400nmのUVに対する高い感度と、水に対する高い溶解性を有する活性エネルギー線重合開始剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の活性エネルギー線重合開始剤の吸収スペクトルの一例を示す図である。
【
図2】本発明の活性エネルギー線重合開始剤の吸収スペクトルの一例を示す図である。
【
図3】従来の活性エネルギー線重合開始剤の吸収スペクトルの一例を示す図である。
【
図4】従来の活性エネルギー線重合開始剤の吸収スペクトルの一例を示す図である。
【
図5】従来の活性エネルギー線重合開始剤の吸収スペクトルの一例を示す図である。
【
図6】本発明における像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図7】本発明における別の像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図8】本発明におけるさらに別の像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明の活性エネルギー線重合開始剤は、下記一般式(1)で表される構造を有する。
【化1】
(一般式(1)中、R
1はH又はメトキシ基、R
2はH、又はC1~8の炭化水素基、AlkはC3~12の炭化水素基、及びLnkは結合手、又は下記構造式(1)で表される基である。)
【化2】
【0008】
一般式(1)で表される構造を有する活性エネルギー線重合開始剤は、R1又はAlk-O-で表されるアルコキシ基を有するチオキサントン部が光を吸収して、重合開始剤自身、又は第二の化合物から水素を引き抜き、フリーラジカルを発生させる。チオキサントン部による水素引き抜きは、窒素原子に隣接した炭化水素から起こりやすいため、グルカミン部の窒素原子に隣接した炭化水素が有効に作用する。
また、一般式(1)のグルカミン部が水溶性を与える。一般式(1)のAlk及びR2は、水溶性の点からは、炭素数は少ない程好ましい。
また、一般式(1)のLnkは、合成及び精製の点から、構造式(1)で表される基が好ましい。
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、少なくとも前記一般式(1)で表される構造を有する活性エネルギー線重合開始剤と、重合生成物の所望の特性に応じて適宜選択される他の成分と、からなる。他の成分としては、重合性モノマー、重合開始剤、有機溶媒、水、界面活性剤、樹脂などが挙げられる。
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物において、前記一般式(1)で表される構造を有する活性エネルギー線重合開始剤の含有量は、該組成物の用途等によって適宜決定すればよいが、1~30質量%が好ましく、5~15質量%がさらに好ましい。
【0011】
重合性モノマーとして、以下のような(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテルなどを併用することもできる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトンアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ホルマール化トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート〔CH2=CH-CO-(OC2H4)n-OCOCH=CH2(n≒4)〕、同(n≒9)、同(n≒14)、同(n≒23)、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート〔CH2=C(CH3)-CO-(OC3H6)n-OCOC(CH3)=CH2(n≒7)〕、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、プロピレンオキサイド変性テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルペンタ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタントリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンペンタ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジシクロペンタジエンビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、エチルオキセタンメチルビニルエーテルなど。
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物において、重合性モノマーの含有量は、該組成物の用途等によって適宜決定すればよいが、70~99質量%が好ましく、85~95質量%がさらに好ましい。
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、前記一般式(1)で表される構造を有する活性エネルギー線重合開始剤以外の、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物において、前記一般式(1)で表される構造を有する活性エネルギー線重合開始剤以外の重合開始剤の含有量は、該組成物の用途等によって適宜決定すればよいが、例えば0~5質量%である。
【0015】
また、上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミンおよび4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0016】
本発明の活性エネルギー線重合開始剤は、水溶性を示すため、親水性の有機溶剤と併用することも可能である。
【0017】
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物において、有機溶剤の含有量は、該組成物の用途等によって適宜決定すればよいが、例えば10~60質量%である。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、例えばシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0020】
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物において、界面活性剤の含有量は、該組成物の用途等によって適宜決定すればよいが、例えば1~5質量%である。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、樹脂を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションを含有してもよい。
樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物において、樹脂の含有量は、該組成物の用途等によって適宜決定すればよいが、例えば10~90質量%である。
【0024】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、重合性モノマー、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液にさらに重合性モノマー、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0025】
本発明の活性エネルギー線重合開始剤に適用される活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0026】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、活性エネルギー線硬化型組成物、色材、必要に応じてその他の成分を含有することができる。
【0027】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0028】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0029】
顔料をインク中に分散させるには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした自己分散顔料等が使用できる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能なものを用いることができる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0031】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、及び/又はpH調整剤を含有してもよい。
【0032】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0033】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0034】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0035】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0036】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0037】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形用樹脂、塗料、接着剤、絶縁材、離型剤、コーティング材、シーリング材、各種レジスト、各種光学材料などが挙げられる。
【0038】
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、インクとして用いて2次元の文字や画像、各種基材への意匠塗膜を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。この立体造形用材料は、例えば、粉体層の硬化と積層を繰り返して立体造形を行う粉体積層法において用いる粉体粒子同士のバインダーとして用いてもよく、また、
図7や
図8に示すような積層造形法(光造形法)において用いる立体構成材料(モデル材)や支持部材(サポート材)として用いてもよい。なお、
図7は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を所定領域に吐出し、活性エネルギー線を照射して硬化させたものを順次積層して立体造形を行う方法であり(詳細後述)、
図8は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物5の貯留プール(収容部)1に活性エネルギー線4を照射して所定形状の硬化層6を可動ステージ3上に形成し、これを順次積層して立体造形を行う方法である。
【0039】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を用いて立体造形物を造形するための立体造形装置としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、該組成物の収容手段、供給手段、吐出手段や活性エネルギー線照射手段等を備えるものが挙げられる。
【0040】
また、本発明は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させて得られた硬化物や当該硬化物が基材上に形成された構造体を加工してなる成形加工品も含む。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された硬化物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形することが必要な用途に好適に使用される。
【0041】
上記基材としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又はこれらの複合材料などが挙げられ、加工性の観点からはプラスチック基材が好ましい。
【0042】
本発明のインク収容容器は、活性エネルギー線硬化型インクが収容された状態の容器を意味し、上記のような用途に供する際に好適である。例えば、本発明のインク収容容器は、インクカートリッジやインクボトルとして使用することができ、これにより、インク搬送やインク交換等の作業において、インクに直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。また、インクへのごみ等の異物の混入を防止することができる。また、容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、または容器が遮光性シート等で覆われていることが望ましい。
【0043】
本発明の画像形成方法は、本発明の活性エネルギー線硬化型インクを、記録媒体上に吐出し画像を形成する工程を有する。
また本発明の画像形成装置は、本発明の活性エネルギー線硬化型インクを収容するインク収容容器と、前記インク収容容器に収容されているインクを記録媒体上に吐出する吐出手段とを備える。
以下、具体例として像の形成方法について説明する。
【0044】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクを活性エネルギー線で硬化させるためには、活性エネルギー線を照射する照射工程を有し、本発明の像の形成装置は、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、本発明の活性エネルギー線硬化型インクを収容するための収容部と、を備え、該収容部には前記容器を収容してもよい。さらに、活性エネルギー線硬化型インクを吐出する吐出工程、吐出手段を有していてもよい。吐出させる方法は特に限定されないが、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
【0045】
図6は、インクジェット吐出手段を備えた像形成装置の一例である。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色活性エネルギー線硬化型インクのインクカートリッジと吐出ヘッドを備える各色印刷ユニット23a、23b、23c、23dにより、供給ロール21から供給された記録媒体22にインクが吐出される。その後、インクを硬化させるための光源24a、24b、24c、24dから、活性エネルギー線を照射して硬化させ、カラー画像を形成する。その後、記録媒体22は、加工ユニット25、印刷物巻取りロール26へと搬送される。各印刷ユニット23a、23b、23c、23dには、インク吐出部でインクが液状化するように、加温機構を設けてもよい。また必要に応じて、接触又は非接触により記録媒体を室温程度まで冷却する機構を設けてもよい。また、インクジェット記録方式としては、吐出ヘッド幅に応じて間欠的に移動する記録媒体に対し、ヘッドを移動させて記録媒体上にインクを吐出するシリアル方式や、連続的に記録媒体を移動させ、一定の位置に保持されたヘッドから記録媒体上にインクを吐出するライン方式のいずれであっても適用することができる。
【0046】
記録媒体22は、特に限定されないが、紙、フィルム、セラミックスやガラス、金属、これらの複合材料等が挙げられ、シート状であってもよい。また片面印刷のみを可能とする構成であっても、両面印刷も可能とする構成であってもよい。一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、ダンボール、壁紙や床材等の建材、コンクリート、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。
更に、光源24a、24b、24cからの活性エネルギー線照射を微弱にするか又は省略し、複数色を印刷した後に、光源24dから活性エネルギー線を照射してもよい。これにより、省エネ、低コスト化を図ることができる。
【0047】
本発明のインクにより記録される記録物としては、通常の紙や樹脂フィルムなどの平滑面に印刷されたものだけでなく、凹凸を有する被印刷面に印刷されたものや、金属やセラミックなどの種々の材料からなる被印刷面に印刷されたものも含む。また、2次元の画像を積層することで、一部に立体感のある画像(2次元と3次元からなる像)や立体物を形成することもできる。
【0048】
図7は、本発明に係る別の像形成装置(3次元立体像の形成装置)の一例を示す概略図である。
図7の像形成装置39は、インクジェットヘッドを配列したヘッドユニット(AB方向に可動)を用いて、造形物用吐出ヘッドユニット30から第一の活性エネルギー線硬化型インクを、支持体用吐出ヘッドユニット31、32から第一の活性エネルギー線硬化型インクとは組成が異なる第二の活性エネルギー線硬化型インクを吐出し、隣接した紫外線照射手段33、34でこれら各組成物を硬化しながら積層するものである。より具体的には、例えば、造形物支持基板37上に、第二の活性エネルギー線硬化型インクを支持体用吐出ヘッドユニット31、32から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて溜部を有する第一の支持体層を形成した後、当該溜部に第一の活性エネルギー線硬化型インクを造形物用吐出ヘッドユニット30から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて第一の造形物層を形成する工程を、積層回数に合わせて、上下方向に可動なステージ38を下げながら複数回繰り返すことで、支持体層と造形物層を積層して立体造形物35を製作する。その後、必要に応じて支持体積層部36は除去される。なお、
図7では、造形物用吐出ヘッドユニット30は1つしか設けていないが、2つ以上設けることもできる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0050】
<<活性エネルギー線重合開始剤の調製>>
[実施例1]
反応容器に、8.42g(150mmol)の水酸化カリウムを20.0gのイオン交換水に溶解した溶液を調製し、50mLのテトラヒドロフラン(THF)、及び12.34g(50mmol)の2-クロロチオキサントンを順に加えた。得られた混合物に15分間窒素ガスをバブリングした後、0.485g(1mmol)の2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-2’,4’,6’-トリイソプロピル-3,6-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル(t-ButylBrettPhos、MercK社製)を加えた。
【0051】
試験管に6mLのTHFを加え、窒素ガスを1分間バブリングした後、0.86g(1mmol)の[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2′,4′,6′-トリイソプロピル-1,1′-ビフェニル)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホン酸(t-BuBrettPhos Pd G3、Merck社製)を加え、窒素バブリングしながら溶解した。得られた溶液をシリンジで上記の反応溶液に窒素をバブリングしながら加え、12時間加熱環流した後、室温まで冷却した。得られた反応溶液を300mLの酢酸エチルで希釈し、25gの6Nの塩酸を加えて中和した後、200mLの塩水で3回洗浄した。単離した有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残留物を溶離液としてトルエン/酢酸エチル(体積比8/2~5/5)混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、7.85gの2-ヒドロキシチオキサントンを得た。
【0052】
次いで、1.60g(7mmol)の2-ヒドロキシチオキサントン、4.25g(21mmol)の1,3-ジブロモプロパン、及び1.45gの炭酸カリウムを25mLのメチルエチルケトン(MEK)に加え、10時間加熱環流した後、冷却した。得られた反応溶液を40mLの酢酸エチルで希釈し、ろ紙でろ過した。ろ液を濃縮し、残留物を溶離液としてトルエンを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、1.85gの2-(3-ブロモプロポキシ)チオキサントンを得た。
【0053】
次いで、0.57g(3.2mmol)のD-グルカミン(東京化成社製)を5mLの水と5gのエタノール混合溶媒の溶解し、0.46gの炭酸カリウム、及び1.05g(3.0mmol)の2-(3-ブロモプロピル)-9H-チオキサンテン-9-オンを加え、18時間加熱環流した後、冷却した。反応溶液から溶媒を留去し、残留物に50mLの塩化メチレンと50mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.11gの式(1)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-1)を得た。
【化3】
【0054】
[実施例2]
1.60g(7mmol)の2-ヒドロキシチオキサントン、5.13g(21mmol)の1,6-ジブロモヘキサン、及び1.45gの炭酸カリウムを25mLのMEKに加え、10時間加熱環流した後、冷却した。得られた反応溶液を40mLの酢酸エチルで希釈し、ろ紙でろ過した。ろ液を濃縮し、残留物を溶離液としてトルエンを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、2.34gの2-(3-ブロモヘキシルオキシ)チオキサントンを得た。
次いで、0.57g(3.2mmol)のD-グルカミン(東京化成社製)を5mLの水と5gのエタノール混合溶媒の溶解し、0.46gの炭酸カリウム、及び1.18g(3mmol)の2-(3-ブロモヘキシルオキシ)チオキサントンを加え、18時間加熱環流した後、冷却した。反応溶液から溶媒を留去し、残留物に50mLの塩化メチレンと50mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.26gの式(2)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-2)を得た。
【化4】
【0055】
[実施例3]
1.60g(7mmol)の2-ヒドロキシチオキサントン、6.90g(21mmol)の1,12-ジブロモドデカン、及び1.45gの炭酸カリウムを30mLのMEKに加え、10時間加熱環流した後、冷却した。得られた反応溶液を40mLの酢酸エチルで希釈し、ろ紙でろ過した。ろ液を濃縮し、残留物を溶離液としてトルエンを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、2.88gの2-(3-ブロモドデシルオキシ)チオキサントンを得た。
次いで、0.57g(3.2mmol)のD-グルカミン(東京化成社製)を5mLの水と5gのエタノール混合溶媒の溶解し、0.46gの炭酸カリウム、及び1.43g(3mmol)の2-(3-ブロモドデシルオキシ)チオキサントンを加え、18時間加熱環流した後、冷却した。反応溶液から溶媒を留去し、残留物に50mLの塩化メチレンと50mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.41gの式(3)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-3)を得た。
【化5】
【0056】
[実施例4]
0.62g(3.2mmol)のN-メチル-D-グルカミン(東京化成社製)を5mLの水と5gのエタノール混合溶媒の溶解し、0.46gの炭酸カリウム、及び1.05g(3.0mmol)の2-(3-ブロモプロポキシ)チオキサントンを加え、18時間加熱環流した後、冷却した。反応溶液から溶媒を留去し、残留物に50mLの塩化メチレンと50mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.05gの式(4)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-4)を得た。
【化6】
【0057】
[実施例5]
0.66g(3.2mmol)のN-エチル-D-グルカミン(東京化成社製)を5mLの水と5gのエタノール混合溶媒の溶解し、0.46gの炭酸カリウム、及び1.05g(3.0mmol)の2-(3-ブロモプロポキシ)チオキサントンを加え、18時間加熱環流した後、冷却した。反応溶液から溶媒を留去し、残留物に50mLの塩化メチレンと50mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.18gの式(5)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-5)を得た。
【化7】
【0058】
[実施例6]
0.92g(3.2mmol)のN-n-オクチル-D-グルカミン(東京化成社製)を5mLの水と5gのエタノール混合溶媒の溶解し、0.46gの炭酸カリウム、及び1.05g(3.0mmol)の2-(3-ブロモプロピル)チオキサントンを加え、18時間加熱環流した後、冷却した。反応溶液から溶媒を留去し、残留物に50mLの塩化メチレンと50mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.36gの式(6)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-6)を得た。
【化8】
【0059】
[実施例7]
19.8gの濃硫酸に5.00g(40mmol)の2-メルカプトサリチル酸を少量ずつ加えた後、6.33g(40mmol)の2-メトキシフェノールを少量ずつ加え、室温で22時間撹拌した。得られた反応溶液を60℃の200mLの水に投下した。析出物をろ別し、2Lの水で洗浄した後、乾燥し、溶離液としてトルエン/酢酸エチル(体積比9/1~8/2)混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、6.27gの2-ヒドロキシ-3-メトキシチオキサントンを得た。
次いで、1.29g(5mmol)の2-ヒドロ-3-メトキシキシチオキサントン、5.05g(25mmol)の1,3-ジブロモプロパン、及び1.04gの炭酸カリウムを30mLのメチルエチルケトン(MEK)に加え、10時間加熱環流した後、冷却した。得られた反応溶液を40mLの酢酸エチルで希釈し、ろ紙でろ過した。ろ液を濃縮し、残留物を溶離液としてトルエンを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、1.54gの2-(3-ブロモプロポキシ)-3-メトキシチオキサントンを得た。
次いで、0.62g(3.2mmol)のN-メチル-D-グルカミン(東京化成社製)を5mLの水と5gのエタノール混合溶媒の溶解し、0.46gの炭酸カリウム、及び1.14g(3.0mmol)の2-(3-ブロモプロポキシ)-3-メトキシチオキサントンを加え、18時間加熱環流した後、冷却した。反応溶液から溶媒を留去し、残留物に50mLの塩化メチレンと50mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.22gの式(7)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-7)を得た。
【化9】
【0060】
[実施例8]
30mLの無水エタノール(和光純薬社製)及び30mLの超脱水ジクロロメタン(和光純薬社製)の混合溶媒に、5.93g(40mmol)の無水フタル酸(東京化成社製)窒素気流下で加え、溶解した後、7.25g(40mmol)のD-グルカミンを窒素気流下で加え、室温で24時間撹拌した。得られた反応溶液から溶媒を留去して、13.12gの2-(2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシルカルバモイル)安息香酸を得た。
次いで、10mLのイオン交換水に0.12gの水酸化カリウムを溶解し、0.69g(2.1mmol)の2-(2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシルカルバモイル)安息香酸を加え、溶解した。この溶液に、0.70g(2.0mmol)の2-(3-ブロモプロポキシ)チオキサントンを2mLのジメチルホルムアミドに溶解した溶液を加え、100℃で15時間撹拌した後、冷却した。得られた反応溶液から溶媒を留去し、残留物に70mLの塩化メチレンと30mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.03gの式(8)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-8)を得た。
【化10】
【0061】
[実施例9]
10mLのイオン交換水に0.12gの水酸化カリウムを溶解し、0.70g(2.1mmol)の2-(2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシルカルバモイル)安息香酸を加え、溶解した。この溶液に、0.79g(2.0mmol)の2-(6-ブロモヘキシルオキシ)チオキサントンを2mLのジメチルホルムアミドに溶解した溶液を加え、100℃で15時間撹拌した後、冷却した。得られた反応溶液から溶媒を留去し、残留物に70mLの塩化メチレンと30mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.17gの式(9)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-9)を得た。
【化11】
【0062】
[実施例10]
10mLのイオン交換水に0.12gの水酸化カリウムを溶解し、0.69g(2.1mmol)の2-(2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシルカルバモイル)安息香酸を加え、溶解した。この溶液に、0.95g(2.0mmol)の2-(12-ブロモドデシルオキシ)チオキサントンを2mLのジメチルホルムアミドに溶解した溶液を加え、100℃で15時間撹拌した後、冷却した。得られた反応溶液から溶媒を留去し、残留物に70mLの塩化メチレンと30mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.33gの式(10)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-10)を得た。
【化12】
【0063】
[実施例11]
30mLの無水エタノール(和光純薬社製)及び30mLの超脱水ジクロロメタン(和光純薬社製)の混合溶媒に、5.93g(40mmol)の無水フタル酸(東京化成社製)窒素気流下で加え、溶解した後、7.82g(40mmol)のN-メチル-D-グルカミンを窒素気流下で加え、室温で24時間撹拌した。得られた反応溶液から溶媒を留去して、13.66gの2-(N-(2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル)-N-メチルカルバモイル)安息香酸を得た。
次いで、10mLのイオン交換水に0.12gの水酸化カリウムを溶解し、0.72g(2.1mmol)の2-(N-(2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル)-N-メチルカルバモイル)安息香酸を加え、溶解した。この溶液に、0.70g(2.0mmol)の2-(3-ブロモプロポキシ)チオキサントンを2mLのジメチルホルムアミドに溶解した溶液を加え、100℃で15時間撹拌した後、冷却した。得られた反応溶液から溶媒を留去し、残留物に70mLの塩化メチレンと30mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.18gの式(11)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-11)を得た。
【化13】
【0064】
[実施例12]
30mLの無水エタノール(和光純薬社製)及び30mLの超脱水ジクロロメタン(和光純薬社製)の混合溶媒に、5.93g(40mmol)の無水フタル酸(東京化成社製)を窒素気流下で加え、溶解した後、8.38g(40mmol)のN-エチル-D-グルカミンを窒素気流下で加え、室温で24時間撹拌した。得られた反応溶液から溶媒を留去して、14.22gの2-(N-(2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル)-N-エチルカルバモイル)安息香酸を得た。
次いで、10mLのイオン交換水に0.12gの水酸化カリウムを溶解し、0.75g(2.1mmol)の2-(N-(2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル)-N-エチルカルバモイル)安息香酸を加え、溶解した。この溶液に、0.70g(2.0mmol)の2-(3-ブロモプロポキシ)チオキサントンを2mLのジメチルホルムアミドに溶解した溶液を加え、100℃で15時間撹拌した後、冷却した。得られた反応溶液から溶媒を留去し、残留物に70mLの塩化メチレンと30mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.14gの式(12)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-12)を得た。
【化14】
【0065】
[実施例13]
30mLの無水エタノール(和光純薬社製)及び30mLの超脱水ジクロロメタン(和光純薬社製)の混合溶媒に、5.93g(40mmol)の無水フタル酸(東京化成社製)を窒素気流下で加え、溶解した後、12.3g(40mmol)のN-オクチル-D-グルカミンを窒素気流下で加え、室温で24時間撹拌した。得られた反応溶液から溶媒を留去して、17.55gの2-(N-(2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル)-N-オクチルカルバモイル)安息香酸を得た。
次いで、10mLのイオン交換水に0.12gの水酸化カリウムを溶解し、0.929g(2.1mmol)の2-(N-(2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル)-N-オクチルカルバモイル)安息香酸を加え、溶解した。この溶液に、0.70g(2.0mmol)の2-(3-ブロモプロポキシ)チオキサントンを2mLのジメチルホルムアミドに溶解した溶液を加え、100℃で15時間撹拌した後、冷却した。得られた反応溶液から溶媒を留去し、残留物に70mLの塩化メチレンと30mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.30gの式(13)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-13)を得た。
【化15】
【0066】
[実施例14]
10mLのイオン交換水に0.12gの水酸化カリウムを溶解し、0.64g(2.1mmol)の2-(2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシルカルバモイル)安息香酸を加え、溶解した。この溶液に、0.76g(2.0mmol)の2-(3-ブロモプロポキシ)-3-メトキシチオキサントンを2mLのジメチルホルムアミドに溶解した溶液を加え、100℃で15時間撹拌した後、冷却した。得られた反応溶液から溶媒を留去し、残留物に70mLの塩化メチレンと30mLのエタノールを加え、溶解した。得られた溶液を100mLのイオン交換水で洗浄した後、有機相を単離し、溶媒を留去して、1.14gの式(14)で表される本発明の活性エネルギー線重合開始剤(TX-14)を得た。
【化16】
【0067】
[比較例1]
4.57g(20mmol)の2-ヒドロキシチオキサントン、5.99g(24mmol)の1-ブロモドデカン、及び4.15gの炭酸カリウムを60mLのMEKに加え、10時間加熱環流した後、冷却した。得られた反応溶液を600mLの酢酸エチルで希釈し、ろ紙でろ過した。ろ液を濃縮し、残留物を溶離液としてトルエンを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、式(15)で表される、比較活性エネルギー線重合開始剤(Ref-1)として6.98gの2-ドデシルオキシチオキサントンを得た。
【化17】
【0068】
[比較例2]
3.97g(20mmol)の2-ヒドロキシベンゾフェノン(富士フィルム和光純薬社製)、5.90(24mmol)の12-ブロモドデカン(東京化成社製)、及び4.15gの炭酸カリウムを60mLのメチルエチルケトンに加え、10時間加熱環流した後、室温まで冷却した。得られた反応溶液をろ紙でろ過した。ろ液を濃縮し、残留物を溶離液としてトルエンを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、式(16)で表される、比較活性エネルギー線重合開始剤(Ref-2)として6.32gの(2-(ドデシルオキシ)フェニル)(フェニル)メタノンを得た。
【化18】
【0069】
[比較例3]
2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(東京化成社製)を比較例3の活性エネルギー線重合開始剤とした。
【0070】
上記の調製した本発明の活性エネルギー線重合開始剤の構造を表1にまとめた。
【0071】
【0072】
<<活性エネルギー線重合開始剤の評価>>
上記で得た実施例1~14、比較例1~3の重合開始剤について下記の評価方法で評価した。
<吸収スペクトル>
実施例1、8の活性エネルギー線重合開始剤TX-1、TX-8の塩化メチレン溶液の吸収スペクトルを、紫外可視近赤外分光光度計 V-680(日本分光(株)社製)により測定した。TX-1、及びTX-8の吸収スペクトルをそれぞれ
図1及び
図2に示す。
また、比較例1~3の活性エネルギー線重合開始剤Ref-1、Ref-2、Ref-3の吸収スペクトルを、上記と同様に測定した。結果をそれぞれ
図3、
図4及び
図5に示した。
本発明の重合開始剤TX-1とTX-8、比較重合開始剤Ref-1は、440nm以下の波長の光を吸収し、活性エネルギー線重合開始剤として365nm、385nm、及び395nmのLED光源に対応していることを確認した。
一方、比較重合開始剤Ref-2は、400nm以下の光を吸収するが、重合開始剤TX-1やTX-2より著しく弱く、また比較重合開始剤Ref-3は350nm以上の光を全く吸収せず、365nm、385nm、及び395nmの光源に対応した重合開始剤でないことを確認した。
【0073】
<反応性>
365nmのUV-LED照射装置(LIGHTINGCURETM LC-L1、浜松ホトニクス社製)、385nmのUV-LED照射装置(UV-LED LIGHT SOURCE EXECURE-H-1VCII、HOYA社製)、又は395nmのUV-LED照射装置(JOL-1205AIT)を備えた、高感度型示差走査熱量計(DSC7020、SIIナノテクノロジー(株)社製)を用いて、活性エネルギー線重合開始剤の機能を評価した。
実施例1~14の活性エネルギー線重合開始剤(TX-1~TX-14)又は比較例1~3の活性エネルギー線重合開始剤(Ref-1~Ref-3)と、N-ビニルアセトアミド(東京化成社製)とを1:1の質量基準で混合し、得られた混合物の10mgをアルミニウム製パン上に秤量し、10mW/cm2の365nm、385nm、又は395nmの紫外線を室温で30秒間照射して、最大発熱量(Hmax[mW])と最大発熱量となるまでの時間(Tmax[sec])を測定した。
表2に示した結果から、本発明の活性エネルギー線重合開始剤は、比較例の活性エネルギー線重合開始剤と比較して、各波長の紫外線により高速に反応することが明らかとなった。
【0074】
<水溶性>
イオン交換水とメタノールとを1:1の質量基準で混合した溶液に、実施例1~14の活性エネルギー線重合開始剤(TX-1~TX-14)又は比較例1~3の活性エネルギー線重合開始剤(Ref-1~Ref-3)を加えて、水溶性を評価し、以下のように判定した。
A:混合溶液に対して、5質量%以上溶解する
B:混合溶液に対して、1.5質量%以上5質量%未満溶解する
C:混合溶液に対して、0.5質量%以上1.5質量%未満溶解する
D:混合溶液に対して、0.5質量%未満溶解する
結果を表2に示した。表2に示した結果から、本発明の活性エネルギー線重合開始剤は、比較例の活性エネルギー線重合開始剤と比較して、水溶性が高いことが明らかとなった。
【0075】
【0076】
本発明は下記(1)の活性エネルギー線重合開始剤にかかるものであるが、下記(2)~(8)を実施形態として含む。
(1)下記一般式(1)で表される構造を有する活性エネルギー線重合開始剤。
【化1】
(式中、R
1はH又はメトキシ基、R
2はH、又はC1~8の炭化水素基、AlkはC3~12の炭化水素基、及びLnkは結合手、又は下記構造式(1)で表される基である。)
【化2】
(2)前記Lnkが前記構造式(1)で表される基である、上記(1)に記載の活性エネルギー線重合開始剤。
(3)前記R
1がHである、上記(2)に記載の活性エネルギー線重合開始剤。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型組成物。
(5)上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型インク。
(6)上記(5)に記載の活性エネルギー線硬化型インクを収容したインク収容容器。
(7)上記(5)に記載の活性エネルギー線硬化型インクを、記録媒体上に吐出し画像を形成する画像形成方法。
(8)上記(5)に記載の活性エネルギー線硬化型インクを収容するインク収容容器と、前記インク収容容器に収容されているインクを、記録媒体上に吐出する吐出手段とを備える画像形成装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】