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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】牛の評価装置及び牛の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20170101AFI20240930BHJP
   A01K 29/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G06T7/60 300Z
A01K29/00 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021041342
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141160
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 晃
(72)【発明者】
【氏名】西川 純
(72)【発明者】
【氏名】川出 哲生
【審査官】吉川 康男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0042584(US,A1)
【文献】特表2012-510278(JP,A)
【文献】酪農におけるセンシングシステムの構築とその応用,システム/制御/情報 第62巻 第12号,2018年12月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/60
A01K 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像から、前記牛の輪郭線を抽出する抽出部と、
前記輪郭線の上部の左右両側に存在する2つの山部の頂点から得られる基準点と、前記輪郭線のうち最も左側の第1の点と、を通る第1直線を決定する第1決定部と、
前記撮像画像内の垂線、水平線、前記輪郭線の右半部の前記第1の点に対応する第2の点と前記基準点とを通る直線、前記2つの山部の頂点を通る直線、又は前記2つの山部の頂点を通る直線に直交する直線のいずれかを第2直線として決定する第2決定部と、
前記第1直線と前記第2直線がなす角度を取得する角度取得部と、
前記角度取得部が取得した前記角度から、前記撮像画像に写された前記牛のルーメンサイズスコアを特定するスコア特定部と、を備える牛の評価装置。
【請求項2】
前記2つの山部の前記頂点を結ぶ線分の中点を前記基準点と特定する基準点特定部を備える、請求項1に記載の牛の評価装置。
【請求項3】
前記2つの山部は前記牛の腰角に対応する部分である、請求項1または2に記載の牛の評価装置。
【請求項4】
左側に存在する前記山部の前記頂点は、前記輪郭線のなかで前記撮像画像の左上端点からの距離が最も短い点であり、
右側に存在する前記山部の前記頂点は、前記輪郭線のなかで前記撮像画像の右上端点からの距離が最も短い点である、請求項1から3のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項5】
立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像に写された前記牛の肛門付近の基準点と左腹部の頂点とを通る第1直線を決定する第1決定部と、
前記撮像画像内の垂線、水平線、前記左腹部の頂点に対応する前記牛の右腹部の点と前記基準点とを通る直線、前記牛の左右の腰角の頂点を通る直線、又は前記牛の左右の腰角の頂点を通る直線に直交する直線のいずれかである第2直線を決定する第2決定部と、
第1直線と第2直線がなす角度を取得する角度取得部と、
前記角度取得部が取得した前記角度から、前記撮像画像に写された前記牛のルーメンサイズスコアを特定するスコア特定部と、を備える牛の評価装置。
【請求項6】
前記撮像画像内の前記牛の左右の腰角の頂点を結ぶ線分の中点を前記基準点と特定する基準点特定部を備える、請求項5に記載の牛の評価装置。
【請求項7】
前記牛を撮像する撮像部を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項8】
立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像から前記牛の輪郭線を抽出し、
抽出した前記輪郭線の上部の左右両側に存在する2つの山部の頂点から得られる基準点と、前記輪郭線のうち最も左側の第1の点と、を通る第1直線を決定し、
前記撮像画像内の垂線、水平線、前記輪郭線の右半部の前記第1の点に対応する第2の点と前記基準点とを通る直線、前記2つの山部の頂点を通る直線、又は前記2つの山部の頂点を通る直線に直交する直線のいずれかを第2直線として決定し、
決定した前記第1直線と前記第2直線がなす角度を取得し、
取得した前記角度から、前記撮像画像に写された前記牛のルーメンサイズスコアを特定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする牛の評価方法。
【請求項9】
立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像に写された前記牛の肛門付近の基準点と左腹部の頂点とを通る第1直線を決定し、
前記撮像画像内の垂線、水平線、前記左腹部の頂点に対応する前記牛の右腹部の点と前記基準点とを通る直線、前記牛の左右の腰角の頂点を通る直線、又は前記牛の左右の腰角の頂点を通る直線に直交する直線のいずれかである第2直線を決定し、
決定した第1直線と第2直線がなす角度を取得し、
取得した前記角度から、前記撮像画像に写された前記牛のルーメンサイズスコアを特定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする牛の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛の評価装置及び牛の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛の健康状態を評価する方法としてルーメンサイズスコアを用いる方法が知られている(例えば非特許文献1)。非特許文献1に記載の方法は、獣医師や酪農の専門家などが判定シートを用いてルーメンサイズスコアを特定する。この方法では、獣医師や専門家それぞれにおいては安定したルーメンサイズスコアの評価が得られるが、獣医師や専門家間でルーメンサイズスコアにばらつきが生じてしまう。一方、RGBカメラを用いた画像解析により牛の健康状態を評価する方法(例えば特許文献1)や、牛の三次元画像に基づいて牛の健康状態を評価する方法(例えば特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-173732号公報
【文献】国際公開第2017/187719号
【非特許文献】
【0004】
【文献】二村 治司著、「乳牛の群管理におけるルーメンサイズスコアの応用」、牛歩誌、2006年、第34号、p44-48
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法は、牛の画像上での特徴点を線で結んだ線画を用いて牛の健康状態を評価する。この特許文献1の方法では、人が画像上で線画を入力するため、健康状態の評価結果が入力する人ごとにばらつくおそれがある。また、特許文献2に記載の方法は、牛の三次元画像を用いて牛の健康状態を示すスコアを算出するため、大掛かりな設備が設置された特定の場所での撮像が必要であり、多様な飼育現場に適用することは難しい。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、二次元の撮像画像を用いて牛のルーメンサイズスコアを精度よく特定することができる牛の評価装置及び牛の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の牛の評価装置は、立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像を取得する画像取得部と、前記撮像画像から、前記牛の輪郭線を抽出する抽出部と、前記輪郭線の上部の左右両側に存在する2つの山部の頂点から得られる基準点と、前記輪郭線のうち最も左側の第1の点と、を通る第1直線を決定する第1決定部と、前記撮像画像内の垂線、水平線、前記輪郭線の右半部の前記第1の点に対応する第2の点と前記基準点とを通る直線、前記2つの山部の頂点を通る直線、又は前記2つの山部の頂点を通る直線に直交する直線のいずれかを第2直線として決定する第2決定部と、前記第1直線と前記第2直線がなす角度を取得する角度取得部と、前記角度取得部が取得した前記角度から、前記撮像画像に写された前記牛のルーメンサイズスコアを特定するスコア特定部と、を備える。
【0008】
本発明の牛の評価装置は、立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像に写された前記牛の肛門付近の基準点と左腹部の頂点とを通る第1直線を決定する第1決定部と、前記撮像画像内の垂線、水平線、前記左腹部の頂点に対応する前記牛の右腹部の点と前記基準点とを通る直線、前記牛の左右の腰角の頂点を通る直線、又は前記牛の左右の腰角の頂点を通る直線に直交する直線のいずれかである第2直線を決定する第2決定部と、第1直線と第2直線がなす角度を取得する角度取得部と、前記角度取得部が取得した前記角度から、前記撮像画像に写された前記牛のルーメンサイズスコアを特定するスコア特定部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二次元の撮像画像を用いて牛のルーメンサイズスコアを精度よく特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態に係る牛の評価装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態における制御部の機能ブロック図である。
図3図3は、画像取得部が取得する牛の撮像画像の一例である。
図4図4は、第1の実施形態における制御部がルーメンサイズスコアを特定するときに実行する処理を示す図である。
図5図5(a)から図5(c)は、第1胃(ルーメン)の充満度が異なる場合を想定した牛の撮像画像である
図6図6(a)から図6(c)は、第1胃(ルーメン)の充満度と角度取得部が取得する角度との関係を示す図である。
図7図7は、ルーメンサイズスコアと角度との相関を調査した実験結果である。
図8図8は、第1の実施形態におけるルーメンサイズスコアの特定方法の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、第2の実施形態における制御部がルーメンサイズスコアを特定するときに実行する処理を示す図である。
図10図10は、第3の実施形態における制御部がルーメンサイズスコアを特定するときに実行する処理を示す図である。
図11図11は、第4の実施形態における制御部がルーメンサイズスコアを特定するときに実行する処理を示す図である。
図12図12は、第5の実施形態における制御部の機能ブロック図である。
図13図13は、第5の実施形態におけるルーメンサイズスコアの特定方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態に係る牛の評価装置100について、図1図8に基づいて説明する。図1には、第1の実施形態に係る牛の評価装置100の構成がブロック図にて示されている。評価装置100は、例えばユーザにより携帯されて利用される携帯型情報機器である。評価装置100として、例えばスマートフォン、タブレット型パソコン、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートグラスなどを採用することができる。本第1の実施形態では、評価装置100はスマートフォンであるとする。評価装置100は、電話機能やメール機能、インターネットなどに接続するための通信機能、及びプログラムを実行するためのデータ処理機能などを有する。
【0012】
牛の評価装置100は、図1に示すように、表示部12と、操作部14と、通信部16と、撮像部18と、記憶部20と、制御部22と、を備える。
【0013】
表示部12は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)であり、画像や、各種情報、及びタッチ操作ボタンなどの操作入力用画像などを表示する。
【0014】
操作部14は、タッチパネルとスイッチを備える。タッチパネルは、ユーザが触れたことに応じて情報入力を受け付け、受け付けた操作情報を制御部22に送信する。タッチパネルは、例えば表示部12に組み込まれている。したがって、タッチパネルは、ユーザが表示部12の表面をタッチすることに応じて、種々の情報入力を受け付ける。スイッチは、ユーザから評価装置100に対する操作を受け付ける操作部材であり、受け付けた操作情報を制御部22に送信する。
【0015】
通信部16は、他の機器と近距離無線通信(例えばNFC(Near Field Communication))や、ネットワークに接続された他の機器と無線通信(例えば携帯電話回線や無線LAN(Local Area Network)などを用いた通信)を行う。
【0016】
撮像部18は、レンズ、撮像素子、画像処理部などを備え、静止画や動画などの画像を撮像する。撮像部18は、評価装置100を携帯する作業者が操作部14を操作することに応じて撮像する。作業者は、牛のルーメンサイズスコアを評価する場合において、撮像部18によって立位にある牛を略真後ろから撮像する。略真後ろから撮像するとは、牛の左右の腰角及び左右の腹部が写る範囲で撮像することである。したがって、作業者は、例えば、牛の後方数m(例えば1m~2m)の位置から牛の足元まで入るようにして、牛の左右の腰角及び左右の腹部が写るように撮像する。
【0017】
記憶部20は、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性の半導体メモリであり、各種情報が記憶されている。
【0018】
制御部22は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを備える。制御部22は、CPUがROMなどに格納されているプログラムを実行することにより、評価装置100全体を制御する。
【0019】
制御部22は、牛のルーメンサイズスコアを評価する際、ROMなどに格納されたプログラムをCPUが実行することで、図2に示すような、画像取得部30、抽出部32、基準点特定部34、第1直線決定部36、第2直線決定部38、角度取得部40、及びスコア特定部42として機能する。
【0020】
図3には、画像取得部30が取得する牛の撮像画像50の一例が示されている。図3に示すように、画像取得部30は、立位にある牛が略真後ろから撮像された撮像画像50を取得する。なお、図3では、後述する輪郭線60の抽出が精度良く行われるよう、撮像画像50内の牛以外の背景を除去する処理が行われた後の撮像画像50が示されている。
【0021】
画像取得部30が取得する牛の撮像画像50は、撮像部18が撮像した画像であってもよいし、他の機器が撮像した画像を通信部16により受信した画像であってもよい。また、取得する牛の撮像画像50は、記憶部20に記憶されていたものであってもよい。画像取得部30は、取得した牛の撮像画像50を表示部12に表示してもよい。これにより、作業者は、これからルーメンサイズスコアを評価する牛を表示部12上で視覚的に認識することができる。
【0022】
図4には、第1の実施形態においてルーメンサイズスコアを特定するときに、抽出部32、基準点特定部34、第1直線決定部36、第2直線決定部38、及び角度取得部40が実行する処理の一例が示されている。抽出部32は、図4に示すように、画像取得部30が取得した牛の撮像画像50から、牛の輪郭をなぞった輪郭線60を抽出する。輪郭線60の抽出は、一般的に知られた画像処理技術を用いることができる。抽出部32は、抽出した牛の輪郭線60のみを表した抽出撮像画像51を表示部12に表示してもよい。これにより、作業者は、これからルーメンサイズスコアを評価する牛の輪郭を表示部12上で視覚的に認識することができる。抽出撮像画像51の外形は撮像画像50の外形と同じであり、画像の枠に対する牛の位置は抽出撮像画像51と撮像画像50とで同じである。
【0023】
基準点特定部34は、牛の輪郭線60の上部の左側に存在する山部62aの頂点64aと右側に存在する山部62bの頂点64bとから基準点を特定する。2つの山部62a、62bは牛の腰角に対応する部分である。例えば、基準点特定部34は、山部62aの頂点64aと山部62bの頂点64bとを結ぶ線分66の中点を基準点68と特定する。左右の腰角の間の中央付近には肛門がある。したがって、基準点68は肛門付近に位置する点となる。
【0024】
山部62aの頂点64aと山部62bの頂点64bの特定は、以下の方法により行うことができる。例えば、抽出撮像画像51内で上から左下に向かって傾いた第1傾斜直線80を抽出撮像画像51の左上端点52から輪郭線60に向かって近づけて行き、第1傾斜直線80が輪郭線60に最初に接した点を左側に存在する山部62aの頂点64aと特定してもよい。同様に、抽出撮像画像51内で上から右下に向かって傾いた第2傾斜直線82を抽出撮像画像51の右上端点54から輪郭線60に向かって近づけて行き、第2傾斜直線82が輪郭線60に最初に接した点を右側に存在する山部62bの頂点64bと特定してもよい。第1傾斜直線80及び第2傾斜直線82は、抽出撮像画像51内の水平線から例えば30°~60°傾いた直線としてもよく、40°~50°傾いた直線としてもよく、45°傾いた直線としてもよい。また、第1傾斜直線80及び第2傾斜直線82は、山部62a、62bの下側が頂点64a、64bと特定されるような角度で傾斜していてもよい。また、抽出撮像画像51内で上から左下に向かって第1の所定角度で傾いた第3傾斜直線を左上端点52から輪郭線60に向かって近づけて最初に接する第1点を特定し、第2の所定角度で傾いた第4傾斜直線を左上端点52から輪郭線60に向かって近づけて最初に接する第2点を特定し、輪郭線60上において第1点と第2点の中央に位置する点を山部62aの頂点64aと特定してもよい。同様に、抽出撮像画像51内で上から右下に向かって第3の所定角度で傾いた第5傾斜直線を右上端点54から輪郭線60に向かって近づけて最初に接する第3点を特定し、第4の所定角度で傾いた第6傾斜直線を右上端点54から輪郭線60に向かって近づけて最初に接する第4点を特定し、輪郭線60上において第3点と第4点の中央に位置する点を山部62bの頂点64bと特定してもよい。第1の所定角度及び第3の所定角度は抽出撮像画像51内の水平線から15°~30°とし、第2の所定角度及び第4の所定角度は抽出撮像画像51内の水平線から60°~75°としてもよい。また、抽出撮像画像51をX-Y座標系に変換し、抽出撮像画像51の各画素のX、Y座標から2つの山部62a、62bの頂点64a、64bを特定してもよい。山部62aの頂点64aは輪郭線60のなかで抽出撮像画像51の左上端点52からの距離が最も短い点、山部62bの頂点64bは輪郭線60のなかで抽出撮像画像51の右上端点54からの距離が最も短い点としてもよい。また、上記いずれかの方法で山部62a又は山部62bのいずれか一方の頂点を特定し、特定した頂点を通る抽出撮像画像51内の水平線が他方の山部の輪郭線60に交わる点を他方の山部の頂点と特定してもよい。
【0025】
第1直線決定部36は、基準点68と、輪郭線60のうち最も左側の点70と、を通る第1直線74を決定する。例えば、抽出撮像画像51を左下端点56を原点とするX-Y座標系に変換し、y=ax+bで表される第1直線74を決定する。輪郭線60のうち最も左側の点70の特定は、以下の方法により行うことができる。例えば、抽出撮像画像51内の垂線を輪郭線60の左側から輪郭線60に向かって近づけて行き、垂線が輪郭線60に最初に接した点を輪郭線60のうち最も左側の点70と特定してもよい。また、抽出撮像画像51をX-Y座標系に変換し、抽出撮像画像51の各画素のX、Y座標から輪郭線60のうち最も左側の点70を特定してもよい。牛の左腹部には第1胃(ルーメン)が存在する。したがって、採食に伴う腹部の膨らみ方は左右対称ではなく第1胃(ルーメン)の膨らみ具合によって点70の位置が変化することになる。
【0026】
第2直線決定部38は、輪郭線60の右半部に位置して点70に対応する点72と、基準点68と、を通る第2直線76を決定する。例えば、抽出撮像画像51を左下端点56を原点とするX-Y座標系に変換し、y=a´x+b´で表される第2直線76を決定する。点72の特定は、例えば抽出撮像画像51内の水平線であって点70を通る直線が右半部の輪郭線60に交わる点を点70に対応する点72と特定してもよい。また、輪郭線60のうち最も右側の点を点72と特定してもよい。最も右側の点は、上述した最も左側の点70を特定する方法と同様の方法を用いて特定することができる。
【0027】
角度取得部40は、第1直線決定部36が決定した第1直線74と第2直線決定部38が決定した第2直線76とがなす角度αを取得する。角度αは、例えば第1直線74と第2直線76が交差することで形成される複数の角度のうち基準点68の上下に位置する角度とする。
【0028】
スコア特定部42は、角度取得部40が取得した角度αからルーメンサイズスコアを特定する。
【0029】
ここで、ルーメンサイズスコアは、牛の健康状態を示す指標の一つであり、第1胃(ルーメン)の充満度を評価するものである。第1胃(ルーメン)が健全な牛は乾物摂取量が多くなるため、第1胃(ルーメン)の膨らみが大きくなる。第1胃(ルーメン)は左腹部に位置することから、第1胃(ルーメン)の膨らみが大きくなるほど、左腹部の張り出しが大きくなる。この左腹部の張り出し具合を立位にある牛を略真後ろから見た腹部全体の相対形状から評価したのがルーメンサイズスコアである。
【0030】
図5(a)から図5(c)は、第1胃(ルーメン)の充満度が異なる場合を想定した牛の撮像画像50a~50cである。図5(a)は、第1胃(ルーメン)の充満度が低いと想定した牛の撮像画像50a、図5(b)は、第1胃(ルーメン)の充満度が図4(a)よりも高いと想定した牛の撮像画像50b、図5(c)は、第1胃(ルーメン)の充満度が更に高いと想定した牛の撮像画像50cである。
【0031】
図6(a)から図6(c)は、第1胃(ルーメン)の充満度と角度取得部40が取得する角度αとの関係を示す図である。図6(a)から図6(c)には、図5(a)から図5(c)に示した牛の撮像画像50a~50cに写された牛の輪郭線60を抽出した抽出撮像画像51a~51cが示されている。図6(a)から図6(c)に示すように、第1胃(ルーメン)の充満度が高いほど、左腹部の張り出し具合が大きくなるため、角度αは大きくなる。このため、角度αを求めることで、第1胃(ルーメン)の充満度を評価でき、ルーメンサイズスコアを特定できることが考えられる。
【0032】
そこで、非特許文献1に記載されている判定シートを用いて専門家が特定したルーメンサイズスコアと、牛の撮像画像50を用いて求めた角度αの大きさと、の相関を調査する実験を行った。実験は、乳牛(ホルスタイン種)に対して行った。
【0033】
図7には、ルーメンサイズスコアと牛の撮像画像50から求めた角度αとの相関を調査した実験結果が示されている。図7の横軸(X軸)は専門家が判定シートを用いて特定したルーメンサイズスコアであり、縦軸(Y軸)は牛の撮像画像50から求めた角度αである。図7中の複数の黒丸が実験を行った乳牛1頭1頭を示していて、点線の直線は近似直線を示している。図7に示すように、角度αが大きくなるほど、ルーメンサイズスコアも大きくなる。近似直線(点線の直線)は、y=4.2352x+67.248と求まり、決定係数Rは0.7292であった。このことから、ルーメンサイズスコアと角度αには強い相関関係があることが確認された。なお、図7は乳牛に対する実験結果であるが、乳牛と同様の骨格を有する肉牛も同様の結果になると考えられる。
【0034】
そこで、図2のスコア特定部42は、角度取得部40が取得した角度αから、撮像画像50に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。スコア特定部42は、記憶部20に記憶された、角度とルーメンサイズスコアとが関連付けられたスコア情報を用いて、角度αからルーメンサイズスコアを特定する。
【0035】
表1には、記憶部20に記憶されたスコア情報の一例が示されている。表1に示すように、スコア情報においては、角度とルーメンサイズスコアとが関連付けられている。例えば、角度がa°未満である場合のルーメンサイズスコアは1.00、a°以上b°未満である場合のルーメンサイズスコアは1.50などのように、角度とルーメンサイズスコアとが関連付けられている。なお、表1では、ルーメンサイズスコアが2.00~4.00の間は0.25刻み、それ以外は0.50刻みとしているが、その他の場合でもよい。例えば、全ての範囲で0.25刻み又は0.50刻みとしてもよい。
【表1】
【0036】
なお、記憶部20に記憶されるスコア情報は、角度とルーメンサイズスコアとが関連付けられた情報であれば、表1に示したスコア情報以外であってもよい。例えば、図7に示す近似直線のような一次関数(y=ax+b)がスコア情報として記憶部20に記憶されていてもよい。この場合、yに角度を代入することで得られたxの値に対して四捨五入や、切り上げ、切り捨てなどの端数処理を行ってルーメンサイズスコアを特定してもよい。
【0037】
次に、ルーメンサイズスコアの特定方法の一例について、図8のフローチャートに沿って説明する。図8の処理は、評価装置100の制御部22によって実行される。なお、本処理の前提として、ルーメンサイズスコアを特定するためのアプリ(スコア特定アプリ)がインストールされているものとする。また、記憶部20には、一例として表1のようなスコア情報が格納されているとする。
【0038】
図8の処理では、まず、ステップS10において、制御部22の画像取得部30は、スコア特定アプリが起動されるまで待機する。この場合、作業者の操作(例えば、操作部14への入力、又はマイク(不図示)への音声入力)に応じて制御部22がスコア特定アプリを起動した段階で、ステップS12に移行する。
【0039】
ステップS12に移行すると、画像取得部30は、ルーメンサイズスコアの評価を行う牛が撮像された撮像画像50を取得する。牛の撮像画像50は、上述したように、立位にある牛が略真後ろから撮像された画像である。例えば、画像取得部30は、作業者が撮像部18を用いて撮像した牛の撮像画像、通信部16を介して他の機器から受信した牛の撮像画像、又は記憶部20に記憶された複数の牛の撮像画像の中から作業者が操作部14を操作することで選択した牛の撮像画像を取得する。なお、画像取得部30は、スコア特定アプリが起動した後に、作業者が撮像部18によって牛を撮像できるよう、カメラ機能を立ち上げてもよい。この場合、撮像された牛の撮像画像と、この撮像画像を選択するか否かを問う選択ボタンと、を表示部12に表示し、作業者が選択しないことを選んだ場合、カメラ機能を再度立ち上げるようにしてもよい。
【0040】
制御部22の抽出部32は、ステップS14において、ステップS12で取得した牛の撮像画像50から牛の輪郭をなぞった輪郭線60を抽出する。輪郭線60を抽出するにあたり、抽出部32は、輪郭線60を良好な精度で抽出するために、撮像画像50内の牛以外の背景を除去する処理を行ってもよい。
【0041】
次いで、ステップS16では、制御部22の基準点特定部34は、輪郭線60の上部の左右両側に存在する2つの山部62a、62bの頂点64a、64bから基準点68を特定する。例えば、基準点特定部34は、上述したように、抽出撮像画像51内で斜めに傾いた第1傾斜直線80及び第2傾斜直線82を輪郭線60に近づけて行き、輪郭線60に最初に接した点を山部62a、62bの頂点64a、64bと特定する。そして、基準点特定部34は、2つの山部62a、62bの頂点64a、64bを結ぶ線分66の中点を基準点68と特定する。
【0042】
なお、基準点特定部34は、線分66が抽出撮像画像51内の水平線(あるいは抽出撮像画像51の枠)に対して所定の角度以上傾いている場合など、取得した撮像画像50がルーメンサイズスコアの特定に適していないと判断した場合には、撮像画像50を再度取得し直すように作業者に促すメッセージを表示部12などに表示したり、音声を出力したりしてもよい。この場合、ステップS12から再度実行し直すことになる。
【0043】
次いで、ステップS18では、制御部22の第1直線決定部36は、基準点68と、輪郭線60のうち最も左側の点70と、を通る第1直線74を決定する。例えば、第1直線決定部36は、上述したように、抽出撮像画像51内の垂線を輪郭線60の左側から輪郭線60に近づけて行き、垂線が輪郭線60に最初に接した点を最も左側の点70と特定する。そして、第1直線決定部36は、基準点68と最も左側の点70とを通る第1直線74を決定する。
【0044】
次いで、ステップS20では、制御部22の第2直線決定部38は、輪郭線60のうち最も左側の点70に対応する輪郭線60の右半部の点72と、基準点68と、を通る第2直線76を決定する。例えば、第2直線決定部38は、上述したように、抽出撮像画像51内の水平線であって点70を通る直線が右半部の輪郭線60に交わる点を点72と特定する。そして、第2直線決定部38は、点72と基準点68とを通る第2直線76を決定する。
【0045】
次いで、ステップS22では、制御部22の角度取得部40は、ステップS18で決定した第1直線74とステップS20で決定した第2直線76とがなす角度αを取得する。
【0046】
次いで、ステップS24では、制御部22のスコア特定部42は、ステップS22で取得した角度αと記憶部20に記憶された表1のようなスコア情報とから、撮像画像50に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。次いで、ステップS26では、スコア特定部42は、ステップS24で特定したルーメンサイズスコアを表示部12に表示すると共に、記憶部20に記憶する。例えば、スコア特定部42は、牛の撮像画像50と共にルーメンサイズスコアを表示部12に表示してもよい。また、スコア特定部42は、ルーメンサイズスコアを特定した牛の個体識別番号と、当該牛を撮像した撮像画像50と、撮像日と、当該牛のルーメンサイズスコアと、を関連付けた1つの情報として記憶部20に記憶してもよい。
【0047】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、画像取得部30は、立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像50を取得する。抽出部32は、画像取得部30が取得した撮像画像50から、牛の輪郭線60を抽出する。第1直線決定部36は、輪郭線60の上部の左右両側に存在する2つの山部62a、62bの頂点64a、64bから得られる基準点68と、輪郭線60のうち最も左側の点70(第1の点)と、を通る第1直線74を決定する。第2直線決定部38は、輪郭線60の右半部の点70に対応する点72(第2の点)と、基準点68と、を通る第2直線76を決定する。そして、角度取得部40は、第1直線74と第2直線76がなす角度αを取得する。スコア特定部42は、角度取得部40が取得した角度αから、撮像画像50に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。このように、本第1の実施形態では、制御部22が、第1直線74と第2直線76とを決定し、これら直線のなす角度αを取得して、取得した角度αからルーメンサイズスコアを特定するため、ルーメンサイズスコアを精度よく特定することができる。また、2次元画像上において相似性を有する角度情報である角度αからルーメンサイズスコアを特定するため、撮像画像50に写された牛の大きさの影響を受けにくく、正規化などの処理を行わなくてもルーメンサイズスコアを良好に特定することができる。更に、立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像50に基づいてルーメンサイズスコアを特定するため、牛の三次元画像に基づいてルーメンサイズスコアを特定する場合に比べて、スマートフォンなどの携帯性に優れて汎用性の高い簡易な評価装置100によってルーメンサイズスコアを特定することができる。
【0048】
また、本第1の実施形態では、基準点特定部34は、輪郭線60の上部の左右両側に存在する山部62a、62bの頂点64a、64bを結ぶ線分66の中点を基準点68と特定する。このように特定された基準点68は牛の肛門付近に位置する。肛門付近に位置する基準点68と、輪郭線60のうち最も左側に位置し、左腹部の頂点に対応する点70と、を通る第1直線74を基準線とし、この基準線である第1直線74と第2直線76とがなす角度αからルーメンサイズスコアを特定することで、より正確なルーメンサイズスコアの特定が可能となる。なお、図4などでは、線分66は抽出撮像画像51内でほぼ水平となっているが、山部62a、62bの頂点64a、64bの位置によっては水平とならない場合がある。また、線分66は、頂点64a、64bの求め方によっては、図4から上下方向に多少ずれることもある。しかしながら、線分66が多少傾斜しても基準点68の位置はほとんど変わらないし、線分66が上下に多少ずれても角度αの値はほとんど変わらないため、ルーメンサイズスコアの特定精度への影響はほとんどない。
【0049】
また、本第1の実施形態では、輪郭線60の上部の左右両側に存在する山部62a、62bは、牛の腰角に対応する部分である。このような山部62a、62bの頂点64a、64b(牛の腰角に対応する部分の頂点)から基準点68を得ることで、牛が太っていても、痩せていても、基準点68は牛の肛門付近に位置するようになる。したがって、上述したように、より正確なルーメンサイズスコアの特定が可能となる。
【0050】
また、本第1の実施形態では、輪郭線60の上部の左側に存在する山部62aの頂点64aを、輪郭線60のなかで抽出撮像画像51の左上端点52からの距離が最も短い点とすることができる。輪郭線60の上部の右側に存在する山部62bの頂点64bを、輪郭線60のなかで抽出撮像画像51の右上端点54からの距離が最も短い点とすることができる。立位にある牛を略真後ろから撮像した撮像画像50では、このような山部62aの頂点64a及び山部62bの頂点64bは、牛の腰角の頂点に対応する。したがって、このような山部62a、62bの頂点64a、64bから基準点68を得ることで、基準点68は牛の肛門付近に位置するようになり、上述したように、より正確なルーメンサイズスコアの特定が可能となる。
【0051】
《第2の実施形態》
第2の実施形態に係る牛の評価装置の構成は、図1の第1の実施形態に係る牛の評価装置100の構成と同じであるため図示及び説明を省略する。第2の実施形態では、図2の機能ブロック図のうち、第2直線決定部38が特定する第2直線、及び、角度取得部40が取得する角度が、第1の実施形態と異なっている。
【0052】
図9には、第2の実施形態においてルーメンサイズスコアを特定するときに、抽出部32、基準点特定部34、第1直線決定部36、第2直線決定部38、及び角度取得部40が実行する処理の一例が示されている。抽出部32、基準点特定部34、及び第1直線決定部36の処理は、第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。第2直線決定部38は、図9に示すように、抽出撮像画像51内の水平線(抽出撮像画像51の横方向に延びる外形線、すなわち左上端点52と右上端点54を結ぶ直線、に平行な直線)を第2直線76aと決定する。本第2の実施形態では、第2直線76aは輪郭線60のうち最も左側の点70を通るが、点70を通らない場合でもよい。角度取得部40は、第1直線74と第2直線76aがなす角度βを取得する。角度βは、例えば第1直線74と第2直線76aが交差することで形成される複数の角度のうち点70の右上又は左下に位置する角度とする。
【0053】
第2の実施形態におけるルーメンサイズの特定方法の一例は、図8のフローチャートと同様であるため図示及び説明を省略する。
【0054】
本第2の実施形態によれば、第1直線決定部36は、基準点68と、輪郭線60のうち最も左側の点70と、を結ぶ第1直線74を決定する。第2直線決定部38は、抽出撮像画像51内の水平線を第2直線76aと決定する。角度取得部40は、第1直線74と第2直線76aがなす角度βを取得する。スコア特定部42は、角度取得部40が取得した角度βから、撮像画像50に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。輪郭線60のうち最も左側の点70は、牛の左腹部の頂点に対応する点であることから、第1胃(ルーメン)の充満度によって位置が変動する。したがって、このような点70と基準点68とを通る第1直線74と水平線である第2直線76aがなす角度βは、第1胃(ルーメン)の充満度によって変化する。したがって、角度βからルーメンサイズスコアを特定することで、上記第1の実施形態と同様に、ルーメンサイズスコアを精度よく特定することができる。また、第2直線76aは抽出撮像画像51内の水平線であることから、第2直線76aの決定が容易であるとともに、角度βも容易に取得することができる。なお、角度βは、第1の実施形態における角度αとは反対に、第1胃(ルーメン)の充満度が高いほど小さくなる。
【0055】
《第3の実施形態》
第3の実施形態に係る牛の評価装置の構成は、図1の第1の実施形態に係る牛の評価装置100の構成と同じであるため図示及び説明を省略する。第3の実施形態では、図2の機能ブロック図のうち、第2直線決定部38が特定する第2直線、及び、角度取得部40が取得する角度が、第1の実施形態と異なっている。
【0056】
図10には、第3の実施形態においてルーメンサイズスコアを特定するときに、抽出部32、基準点特定部34、第1直線決定部36、第2直線決定部38、及び角度取得部40が実行する処理の一例が示されている。抽出部32、基準点特定部34、及び第1直線決定部36の処理は、第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。第2直線決定部38は、図10に示すように、抽出撮像画像51内の垂線(抽出撮像画像51の縦方向に延びる外形線、すなわち左上端点52と左下端点56を結ぶ直線、に平行な直線)を第2直線76bと決定する。本第3の実施形態では、第2直線76bは基準点68を通るが、基準点68を通らない場合でもよい。角度取得部40は、第1直線74と第2直線76bがなす角度γを取得する。角度γは、例えば第1直線74と第2直線76bが交差することで形成される複数の角度のうち基準点68に対して左下又は右上の角度とする。
【0057】
第3の実施形態におけるルーメンサイズの特定方法の一例は、図8のフローチャートと同様であるため図示及び説明を省略する。
【0058】
本第3の実施形態によれば、第1直線決定部36は、基準点68と、輪郭線60のうち最も左側の点70と、を結ぶ第1直線74を決定する。第2直線決定部38は、抽出撮像画像51内の垂線を第2直線76bと決定する。角度取得部40は、第1直線74と第2直線76bがなす角度γを取得する。スコア特定部42は、角度取得部40が取得した角度γから、撮像画像50に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。輪郭線60のうち最も左側の点70は、牛の左腹部の頂点に対応する点であることから、第1胃(ルーメン)の充満度によって位置が変動する。したがって、このような点70と基準点68とを通る第1直線74と垂直線である第2直線76bがなす角度γは、第1胃(ルーメン)の充満度によって変化する。したがって、角度γからルーメンサイズスコアを特定することで、上記第1の実施形態と同様に、ルーメンサイズスコアを精度よく特定することができる。また、第2直線76aは抽出撮像画像51内の水平線であることから、第2直線76aの決定が容易であるとともに、角度βも容易に取得することができる。
【0059】
なお、上記第3の実施形態では、第2直線76bは抽出撮像画像51内の垂線である場合を例に示したが、第2直線76bは山部62aの頂点64aと山部62bの頂点64bとを通る直線に直交する直線であってもよい。この場合、例えば牛が画角に対して少し傾斜して撮像された場合でも、その影響を抑えてルーメンサイズスコアを特定することができる。
【0060】
《第4の実施形態》
第4の実施形態に係る牛の評価装置の構成は、図1の第1の実施形態に係る牛の評価装置100の構成と同じであるため図示及び説明を省略する。第4の実施形態では、図2の機能ブロック図のうち、第2直線決定部38が特定する第2直線、及び、角度取得部40が取得する角度が、第1の実施形態と異なっている。
【0061】
図11には、第4の実施形態においてルーメンサイズスコアを特定するときに、抽出部32、基準点特定部34、第1直線決定部36、第2直線決定部38、及び角度取得部40が実行する処理の一例が示されている。抽出部32、基準点特定部34、及び第1直線決定部36の処理は、第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。第2直線決定部38は、図11に示すように、山部62a、62bの頂点64a、64bを通る直線を第2直線76cと決定する。角度取得部40は、第1直線74と第2直線76cがなす角度σを取得する。角度σは、例えば第1直線74と第2直線76cが交差することで形成される複数の角度のうち基準点68に対して左下又は右上の角度とする。
【0062】
第4の実施形態におけるルーメンサイズの特定方法の一例は、図8のフローチャートと同様であるため図示及び説明を省略する。
【0063】
本第4の実施形態によれば、第1直線決定部36は、基準点68と、輪郭線60のうち最も左側の点70と、を結ぶ第1直線74を決定する。第2直線決定部38は、山部62a、62bの頂点64a、64bを通る直線を第2直線76cと決定する。角度取得部40は、第1直線74と第2直線76cがなす角度σを取得する。スコア特定部42は、角度取得部40が取得した角度σから、撮像画像50に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。輪郭線60のうち最も左側の点70は、牛の左腹部の頂点に対応する点であることから、第1胃(ルーメン)の充満度によって位置が変動する。したがって、このような点70と基準点68とを通る第1直線74と第2直線76cがなす角度σは、第1胃(ルーメン)の充満度によって変化する。したがって、角度σからルーメンサイズスコアを特定することで、上記第1の実施形態と同様に、ルーメンサイズスコアを特定することができる。また、第2直線76cは、山部62a、62bの頂点64a、64bを通る直線であることから、線分66を特定するときに同時に特定することができる。よって、第2直線76cの特定処理が簡易となる。
【0064】
《第5の実施形態》
第1の実施形態から第4の実施形態では基準点68及び輪郭線60のうち最も左側の点70を制御部22が自動で特定する場合を例に示したが、第5の実施形態では、作業者が指定する場合について説明する。第5の実施形態に係る牛の評価装置の構成は、図1の第1の実施形態に係る牛の評価装置100の構成と同じであるため図示及び説明を省略する。図12は、第5の実施形態において牛のルーメンサイズを評価する際に、制御部22が実行する機能を示す機能ブロック図である。第5の実施形態において、制御部22は、牛のルーメンサイズスコアを評価する際、画像取得部30、第1直線決定部36、第2直線決定部38、角度取得部40、及びスコア特定部42として機能する。
【0065】
図13は、第5の実施形態におけるルーメンサイズスコアの特定方法の一例を示すフローチャートである。第5の実施形態においても、第1の実施形態と同じく、ルーメンサイズスコアを特定するためのアプリ(スコア特定アプリ)がインストールされているものとし、記憶部20には一例として表1のようなスコア情報が格納されているものとする。
【0066】
図13の処理では、まず、ステップS30において、制御部22の画像取得部30は、スコア特定アプリが起動されるまで待機する。作業者の操作に応じて制御部22がスコア特定アプリを起動した段階で、ステップS32に移行する。
【0067】
ステップS32に移行すると、画像取得部30は、ルーメンサイズスコアの評価を行う牛が撮像された撮像画像50を取得する。次いで、ステップS34では、画像取得部30は、取得した牛の撮像画像50を表示部12に表示する。これにより、作業者は、表示部12に表示された牛の撮像画像50において牛の肛門付近の基準点、左腹部の頂点、及び左右の腰角の頂点を指定することが可能となる。
【0068】
次いで、ステップS36では、制御部22の第1直線決定部36は、作業者が操作部14を操作することで指定した牛の肛門付近の基準点と左腹部の頂点とを通る第1直線を決定する。次いで、ステップS38では、制御部22の第2直線決定部38は、撮像画像50内の垂線、水平線、左腹部の頂点に対応する右腹部の点と基準点とを結ぶ直線、作業者が操作部14を操作することで指定した左右の腰角の頂点を通る直線、又は左右の腰角の頂点を通る直線に直交する直線のいずれかである第2直線を決定する。右腹部の点は、第1の実施形態と同様に、第2直線決定部38が自動で特定する場合でもよいし、作業者が操作部14を操作することで指定する場合でもよい。
【0069】
次いで、ステップS40では、制御部22の角度取得部40は、ステップS36で決定した第1直線とステップS38で決定した第2直線とがなす角度を取得する。次いで、ステップS42では、制御部22のスコア特定部42は、ステップS40で取得した角度と記憶部20に記憶された表1のようなスコア情報とから、撮像画像50に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。次いで、ステップS44では、スコア特定部42は、ステップS42で取得したルーメンサイズスコアを表示部12に表示すると共に、記憶部20に記憶する。
【0070】
本第5の実施形態によれば、表示部12に表示された牛の撮像画像50に対して作業者は牛の肛門付近の基準点、左腹部の頂点、及び左右の腰角の頂点を指定する。第1直線決定部36は、牛の肛門付近の基準点と左腹部の頂点とを通る第1直線を決定する。第2直線決定部38は、撮像画像50内の垂線、水平線、左腹部の頂点に対応する右腹部の点と基準点とを通る直線、左右の腰角の頂点を通る直線、又は左右の腰角の頂点を通る直線に直交する直線のいずれかである第2直線を決定する。角度取得部40は、第1直線と第2直線がなす角度を取得する。スコア特定部42は、角度取得部40が取得した角度から、撮像画像50に写された牛のルーメンサイズスコアを特定する。本第5の実施形態では、作業者が牛の肛門付近の基準点と左腹部の頂点を指定するが、第1直線及び第2直線は制御部22が決定し、制御部22が決定したこれらの直線のなす角度からルーメンサイズスコアを特定するため、ルーメンサイズスコアを精度よく特定することができる。
【0071】
なお、本第5の実施形態において、作業者は表示部12に表示された牛の撮像画像50に対して、肛門付近の基準点を指定する代わりに、左右の腰角の頂点を指定してもよい。この場合、制御部22は、作業者により指定された左右の腰角の頂点を結ぶ線分の中点を基準点として特定してもよい。
【0072】
なお、上記各実施形態では、牛のルーメンサイズスコアを特定する評価装置が、作業者が携帯して利用される撮像部18を備える携帯型情報機器である場合を例に示したが、その他の場合でもよい。例えば、ネットワークに接続された他の機器と通信可能なサーバなどの据置型情報機器の場合でもよい。この場合、作業者は例えばスマートフォンなどの携帯型情報機器を用いて撮像した牛の撮像画像をネットワークを介してサーバなどの据置型情報機器に送信する。据置型情報機器では、第1、第2直線を決定し、これらのなす角度を取得し、取得した角度からルーメンサイズスコアを特定する。そして、据置型情報機器は、特定したルーメンサイズスコアをネットワークを介して作業者が携帯する携帯型情報機器に送信する。これにより、スマートフォンに掛かる負荷を低減できる。
【0073】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
12 表示部
14 操作部
16 通信部
18 撮像部
20 記憶部
22 制御部
30 画像取得部
32 抽出部
34 基準点特定部
36 第1直線決定部
38 第2直線決定部
40 角度取得部
42 スコア特定部
50、50a、50b、50c 撮像画像
51、51a、51b、51c 抽出撮像画像
52 左上端点
54 右上端点
56 左下端点
60 輪郭線
62a、62b 山部
64a、64b 頂点
66 線分
68 基準点
70、72 点
74 第1直線
76、76a、76b、76c 第2直線
80 第1傾斜直線
82 第2傾斜直線
100 評価装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13