IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナミックス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】複合銅部材
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/00 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
C23C28/00 B
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2021553535
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2020039789
(87)【国際公開番号】W WO2021079952
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2019194444
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】小畠 直貴
(72)【発明者】
【氏名】小鍛冶 快允
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 牧子
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0109731(KR,A)
【文献】特開昭63-168077(JP,A)
【文献】特開平06-173015(JP,A)
【文献】特開平01-297883(JP,A)
【文献】特開平04-304382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 28/00
B32B 15/04、15/08、15/20
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅部材の表面の少なくとも一部に銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材であって、
樹脂基材に前記複合銅部材の前記表面を所定の条件で熱圧着し、熱圧着後に前記樹脂基材から前記銅部材を所定の条件で引き剥がし、減衰全反射吸収フーリエ変換赤外分光法(FT-IR/ATR法)を用いて、前記樹脂基材から引き剥がした前記銅部材の表面を解析した時、波長範囲700-4000cm-1において、検出される樹脂基材由来の物質に対応するピークのS/N比が10以下である、複合銅部材。
【請求項2】
前記ピークのS/N比が7以下である、請求項1に記載の複合銅部材。
【請求項3】
銅部材の表面の少なくとも一部に銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材であって、
樹脂基材に前記複合銅部材の前記表面を所定の条件で熱圧着し、熱圧着後に前記樹脂基材から前記銅部材を所定の条件で引き剥がした時、X線光電子分光法(XPS)のSurvey spectrum分析により得られるX線光電子分光スペクトルにおいて、前記銅酸化物を含む層に含まれる金属原子が、前記銅部材が引き剥がされた前記樹脂基材の表面から検出される、複合銅部材。
【請求項4】
前記銅部材が引き剥がされた前記樹脂基材の表面から検出される金属元素のメインピークの強度の合計がC1sのピーク強度よりも大きい、請求項3に記載の複合銅部材。
【請求項5】
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面において、XPSによる測定結果から算出された
[金属元素の表面原子組成百分率(Atom%)の合計]/[C1sの表面原子組成百分率(Atom%)]
が0.040以上である、請求項4に記載の複合銅部材。
【請求項6】
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面において、XPSによる測定結果から算出された
[金属元素の表面原子組成百分率(Atom%)の合計]/[C1sの表面原子組成百分率(Atom%)]
が0.010以上である、請求項4に記載の複合銅部材。
【請求項7】
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3とNi2p3の表面原子組成百分率の合計が3.0atom%以上である、請求項4に記載の複合銅部材。
【請求項8】
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3とNi2p3の表面原子組成百分率の合計が1.5atom%以上である、請求項4に記載の複合銅部材。
【請求項9】
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3の表面原子組成百分率が2.8atom%以上である、請求項4に記載の複合銅部材。
【請求項10】
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3の表面原子組成百分率が1.0atom%以上である、請求項4に記載の複合銅部材。
【請求項11】
前記銅酸化物を含む層が形成された表面のRaが0.04μm以上であって、前記Raに対する、前記樹脂基材から引き剥がした前記銅部材の表面のRaの割合が100%未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合銅部材。
【請求項12】
前記銅酸化物を含む層が形成された表面の表面積に対する、前記樹脂基材から引き剥がした前記銅部材の表面積の割合が100%未満である、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合銅部材。
【請求項13】
前記銅酸化物を含む層が形成された表面と前記樹脂基材から引き剥がした前記銅部材の表面の色差(ΔEab)が15以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合銅部材。
【請求項14】
前記樹脂基材は、ポリフェニレンエーテル(PPE)、エポキシ、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液晶ポリマー(LCP)、またはトリフェニルフォサイト(TPPI)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリシクロオレフィン、ビスマレイミド樹脂、低誘電率ポリイミド及びシアネート樹脂からなる群から選択された少なくとも1つの絶縁性樹脂を含有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合銅部材。
【請求項15】
前記熱圧着の所定条件が、50℃~400℃の温度、0.4~20MPaの圧力、1分~5時間の時間、の範囲内にある、請求項1~14のいずれか一項に記載の複合銅部材。
【請求項16】
前記銅酸化物を含む層が銅以外の金属を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の複合銅部材。
【請求項17】
前記銅以外の金属がNiである、請求項16に記載の複合銅部材。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の複合銅部材を使用したプリント配線板の製造方法であって、
1)前記複合銅部材の銅酸化物を含む層の上に樹脂基材を所定の条件で熱圧着する工程;
2)前記樹脂基材から前記銅部材を所定の条件で引き剥がし、前記銅酸化物を含む層を形成する金属の一部又は全部を有する樹脂基材を得る工程;及び
3)前記銅酸化物を含む層を形成する金属の一部又は全部を有する樹脂基材の表面に銅めっき処理を行う工程;
を含む、プリント配線板の製造方法。
【請求項19】
金属を有する樹脂基材の製造方法であって、
1)銅部材の表面の少なくとも一部に銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材の前記銅酸化物を含む層の上に樹脂基材を所定の条件で熱圧着する工程;及び
2)前記樹脂基材から前記銅部材を所定の条件で引き剥がし、前記銅酸化物を含む層を形成する金属の一部又は全部を有する樹脂基材を得る工程;
を含み、
前記金属を有する樹脂基材に対するX線光電子分光法(XPS)によるSurvey spectrum分析によって、前記銅酸化物を含む層に含まれる金属原子が検出される、製造方法。
【請求項20】
検出された金属元素のメインピークの強度の合計がC1sのスペクトルのピーク強度よりも大きい、請求項19に記載の樹脂基材の製造方法。
【請求項21】
前記XPSによる測定から算出される
[金属元素の表面原子組成百分率(Atom%)の合計]/[C1sの表面原子組成百分率(Atom%)]
が0.040以上である、請求項20に記載の樹脂基材の製造方法。
【請求項22】
前記XPSによる測定から算出される
[金属元素の表面原子組成百分率(Atom%)の合計]/[C1sの表面原子組成百分率(Atom%)]
が0.010以上である、請求項20に記載の樹脂基材の製造方法。
【請求項23】
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3とNi2p3の表面原子組成百分率の合計が3.0atom%以上である、請求項20に記載の樹脂基材の製造方法。
【請求項24】
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3とNi2p3の表面原子組成百分率の合計が1.5atom%以上である、請求項20に記載の樹脂基材の製造方法。
【請求項25】
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3の表面原子組成百分率が2.8atom%以上である、請求項20に記載の樹脂基材の製造方法。
【請求項26】
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3の表面原子組成百分率が1.0atom%以上である、請求項20に記載の樹脂基材の製造方法。
【請求項27】
前記樹脂基材は、ポリフェニレンエーテル(PPE)、エポキシ、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液晶ポリマー(LCP)、トリフェニルフォサイト(TPPI)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリシクロオレフィン、ビスマレイミド樹脂、低誘電率ポリイミド及びシアネート樹脂から選ばれる少なくとも1つの絶縁性樹脂を含む、請求項1824のいずれか一項に記載の樹脂基材の製造方法。
【請求項28】
銅部材の表面の少なくとも一部に銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材と樹脂基材を含む積層体の製造方法であって、
前記銅酸化物を含む層の上に前記樹脂基材を所定の条件で熱圧着する工程を含み、
前記樹脂基材から前記銅部材を所定の条件で引き剥がした時、X線光電子分光法(XPS)による測定によって、前記銅酸化物を含む層に含まれる金属原子が、前記銅部材から引き剥がされた前記樹脂基材の表面から検出される、積層体の製造方法。
【請求項29】
銅部材の表面の少なくとも一部に銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材と樹脂基材を含む積層体の製造方法であって、
前記銅酸化物を含む層の上に樹脂基材を熱圧着する工程を含み、
前記樹脂基材から前記銅部材を所定の条件で引き剥がした時、減衰全反射吸収フーリエ変換赤外分光法(FT-IR/ATR法)による、波長範囲700-4000cm-1の範囲の測定によって、前記樹脂基材から引き剥がした前記銅部材の表面から検出される樹脂基材由来の物質に対応するピークのS/N比が10以下である、積層体の製造方法。
【請求項30】
請求項1または3に記載の複合銅部材の製造方法であって、
1)前記銅部材の前記表面をシランカップリング剤または防錆剤で部分コートする工程;及び
2)前記部分コートされた前記表面を酸化処理することにより前記銅酸化物を含む層を形成する工程;
を含む、複合銅部材の製造方法。
【請求項31】
請求項16に記載の複合銅部材の製造方法であって、
1)前記銅部材の前記表面をシランカップリング剤または防錆剤で部分コートする工程;
2)前記部分コートされた前記表面を酸化処理することにより前記銅酸化物を含む層を形成する工程;
3)酸化処理された前記表面に、銅以外の金属を含む層を形成する工程;
を含む、複合銅部材の製造方法。
【請求項32】
請求項16に記載の複合銅部材の製造方法であって、
1)前記銅部材の前記表面を酸化処理することにより前記銅酸化物を含む層を形成する工程;
2)前記酸化処理された前記表面を修飾剤で処理する工程;及び
3)前記修飾剤で処理された前記表面に銅以外の金属を含む層を形成する工程;
を含み、
前記修飾剤が、前記銅酸化物を溶解する成分を含む、複合銅部材の製造方法。
【請求項33】
請求項16に記載の複合銅部材の製造方法であって、
1)前記銅部材の前記表面を酸化処理することにより前記銅酸化物を含む層を形成する工程;
2)前記酸化処理された前記表面を修飾剤で処理する工程;及び
3)前記修飾剤で処理された前記表面に銅以外の金属を含む層を形成する工程;
を含み、
前記修飾剤が、塩化Ni、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化クロム、クエン酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸ニッケルアンモニウム、エチレンジアミン四酢酸、ジエタノールグリシン、L-グルタミン酸二酢酸・四ナトリウム、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、3-ヒドロキシ-2、2’-イミノジコハク酸ナトリウム、メチルグリシン2酢酸3ナトリウム、アスパラギン酸ジ酢酸4ナトリウム、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸ジナトリウム及びグルコン酸ナトリウムからなる群から選択される化合物を含む、
複合銅部材の製造方法。
【請求項34】
請求項16に記載の複合銅部材の製造方法であって、
1)前記銅部材の前記表面を酸化処理することにより前記銅酸化物を含む層を形成する工程;
2)前記酸化処理された前記表面を修飾剤で処理する工程;及び
3)前記修飾剤で処理された前記表面に銅以外の金属を含む層を形成する工程;
を含み、
前記修飾剤が、塩化スズ(II)、またはクエン酸を含む、
複合銅部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合銅部材に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板に使用される銅箔は、絶縁性樹脂基材との密着性が要求される。この密着性を向上させるため、エッチングなどで銅箔の表面を粗面化処理し、いわゆるアンカー効果による機械的接着力を上げる方法が用いられてきた。一方、プリント配線板の高密度化や高周波帯域での伝送損失の観点から、銅箔表面の平坦化が要求されるようになってきた。それらの相反する要求を満たすため、酸化工程と還元工程を行うなどの銅表面処理方法が開発されている(国際公開2014/126193号公報)。この方法では、銅箔をプリコンディショニングし、酸化剤を含有する薬液に浸漬することで銅箔表面を酸化させて酸化銅の凹凸を形成した後、還元剤を含有する薬液に浸漬し、酸化銅を還元することで、表面の凹凸を調整して表面の粗さを整える。その他にも、酸化・還元を利用した銅箔の処理における密着性の改善方法として、酸化工程において表面活性分子を添加する方法(特表2013-534054号公報)や、還元工程の後にアミノチアゾール系化合物等を用いて銅箔の表面に保護皮膜を形成する方法(特開平8-97559号公報)が開発されている。
【0003】
粗化処理により形成された凸部の長さや数が多いほど、銅箔と樹脂との機械的接着力は増すものの、同時に凸部の強度不足により、凸部が根元から脱落したり、途中から折れてしまうという問題があることも知られていた。その強度を増すため、凸部表面をめっき処理することが報告されていた(特開2016-188431号公報)。
【0004】
本発明者らも、粗化処理した銅箔に電解めっきによりNiをめっきした、複合銅箔を開発していた(国際公開2019/093494号公報)。
【0005】
プリント配線基板及び半導体パッケージ基板の回路形成工法について、近年の更なる微細配線化により、銅箔の表面プロファイルを使ったセミアディティブ工法(Semi-Additive Process)(SAP法)やM-SAP(Modified Semi-Additive Process)(MSAP法)といった新たな工法が注目されている(特開2017-034216号公報)。
銅箔の表面プロファイル(すなわち、粗化処理により形成された凹凸を有する表面形状)を使ったセミアディティブ工法の一例として、以下の方法が挙げられる。まず、樹脂基材に積層した銅箔を全面エッチングし、銅箔表面プロファイルが転写したエッチング基材面をレーザー等で穴開けし、穴開け部を導通させるための無電解銅めっきを施す。無電解銅めっき面をドライフィルムで被覆し、UV露光及び現像によって回路形成部のドライフィルムを除去し、ドライフィルムに被覆されていない無電解銅めっき面に、今度は電気銅めっきを施す。そして、ドライフィルムを剥離し、最後に硫酸、過酸化水素水を含有するエッチング液等によって無電解銅めっき層をエッチング(フラッシュエッチング、クイックエッチング)することにより微細な回路を形成する。
この工法において、表面処理銅箔に、樹脂基材を貼り合わせ、表面処理銅箔を剥離して、銅箔の表面プロファイルを樹脂基材に転写する必要があるが、銅箔表面のプロファイルを損なうこと無く良好に樹脂基材の表面に転写することが求められており、銅箔表面の凹凸の強度を保つ工夫がさらに必要になってきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の銅箔の表面プロファイルを使った工法では、例えば、粗化粒子を有する銅箔を粗化粒子側表面から樹脂基材に貼り合わせ、続いて銅箔を除去することで、銅箔表面のプロファイルを樹脂基材表面に転写し、当該転写表面上に銅めっきを施していた。しかしながら、表面の凹凸形状が複雑になると、めっき液が入り込めない場合がある。その場合、樹脂基材と(パターン)銅めっき層の間に空隙が生じ、加熱によって、空隙が膨張し、回路剥離または基板フクレが発生する等の問題が生じていた(特許文献6)。
そこで、本発明は、SAP法やMSAP法に好適な複合銅部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究の結果、粗化処理によって生じる凸部の強度を上げるのではなく、逆に下げることにより、SAP法やMSAP法に適した複合銅部材を作製できることを新たに見出した。
【0008】
本発明は以下の実施態様を有する:
[1]
銅部材の表面の少なくとも一部に銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材であって、
樹脂基材に前記複合銅部材の前記表面を所定の条件で熱圧着し、熱圧着後に前記樹脂基材から前記銅部材を所定の条件で引き剥がし、減衰全反射吸収フーリエ変換赤外分光法(FT-IR/ATR法)を用いて、前記樹脂基材から引き剥がした前記銅部材の表面を解析した時、波長範囲700-4000cm-1において、検出される樹脂基材由来の物質に対応するピークのS/N比が10以下である、複合銅部材。
[2]
前記ピークのS/N比が7以下である、[1]に記載の複合銅部材。
[3]
銅部材の表面の少なくとも一部に銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材であって、
樹脂基材に前記複合銅部材の前記表面を所定の条件で熱圧着し、熱圧着後に前記樹脂基材から前記銅部材を所定の条件で引き剥がした時、X線光電子分光法(XPS)のSurvey spectrum分析により得られるX線光電子分光スペクトルにおいて、前記銅酸化物を含む層に含まれる金属原子が、前記銅部材が引き剥がされた前記樹脂基材の表面から検出される、複合銅部材。
[4]
前記銅部材が引き剥がされた前記樹脂基材の表面から検出される金属元素のメインピークの強度の合計がC1sのピーク強度よりも大きい、[3]に記載の複合銅部材。
[5]
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面において、XPSによる測定結果から算出された
[金属元素の表面原子組成百分率(Atom%)の合計]/[C1sの表面原子組成百分率(Atom%)]
が0.040以上である、[4]に記載の複合銅部材。
[6]
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面において、XPSによる測定結果から算出された
[金属元素の表面原子組成百分率(Atom%)の合計]/[C1sの表面原子組成百分率(Atom%)]
が0.010以上である、[4]に記載の複合銅部材。
[7]
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3とNi2p3の表面原子組成百分率の合計が3.0atom%以上である、[4]に記載の複合銅部材。
[8]
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3とNi2p3の表面原子組成百分率の合計が1.5atom%以上である、[4]に記載の複合銅部材。
[9]
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3の表面原子組成百分率が2.8atom%以上である、[4]に記載の複合銅部材。
[10]
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3の表面原子組成百分率が1.0atom%以上である、[4]に記載の複合銅部材。
[11]
前記銅酸化物を含む層が形成された表面のRaが0.04μm以上であって、前記Raに対する、前記樹脂基材から引き剥がした前記銅部材の表面のRaの割合が100%未満である、[1]~[10]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[12]
前記銅酸化物を含む層が形成された表面の表面積に対する、前記樹脂基材から引き剥がした前記銅部材の表面積の割合が100%未満である、[1]~[11]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[13]
前記銅酸化物を含む層が形成された表面と前記樹脂基材から引き剥がした前記銅部材の表面の色差(ΔEab)が15以上である、[1]~[12]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[14]
前記樹脂基材は、ポリフェニレンエーテル(PPE)、エポキシ、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液晶ポリマー(LCP)、またはトリフェニルフォサイト(TPPI)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリシクロオレフィン、ビスマレイミド樹脂、低誘電率ポリイミド及びシアネート樹脂からなる群から選択された少なくとも1つの絶縁性樹脂を含有する、[1]~[13]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[15]
前記熱圧着の所定条件が、50℃~400℃の温度、0~20MPaの圧力、1分~5時間の時間、の範囲内にある、[1]~[14]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[16]
前記銅酸化物を含む層が銅以外の金属を含む、[1]~[15]のいずれか一項に記載の複合銅部材。
[17]
前記銅以外の金属がNiである、[16]に記載の複合銅部材。
[18]
[1]~[17]のいずれか一項に記載の複合銅部材を使用したプリント配線板の製造方法であって、
1)前記複合銅部材の銅酸化物を含む層の上に樹脂基材を所定の条件で熱圧着する工程;
2)前記樹脂基材から前記銅部材を所定の条件で引き剥がし、前記銅酸化物を含む層を形成する金属の一部又は全部を有する樹脂基材を得る工程;及び
3)前記銅酸化物を含む層を形成する金属の一部又は全部を有する樹脂基材の表面に銅めっき処理を行う工程;
を含む、プリント配線板の製造方法。
【0009】
[1A]
金属を有する樹脂基材の製造方法であって、
1)銅部材の表面の少なくとも一部に銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材の前記銅酸化物を含む層の上に樹脂基材を所定の条件で熱圧着する工程;及び
2)前記樹脂基材から前記銅部材を所定の条件で引き剥がし、前記銅酸化物を含む層を形成する金属の一部又は全部を有する樹脂基材を得る工程;
を含む、製造方法。
[2A]
前記金属を有する樹脂基材に対するX線光電子分光法(XPS)によるSurvey spectrum分析によって、前記銅酸化物を含む層に含まれる金属原子が検出される、[1A]に記載の製造方法。
[3A]
検出された金属元素のメインピークの強度の合計がC1sのスペクトルのピーク強度よりも大きい、[2A]に記載の樹脂基材の製造方法。
[4A]
前記XPSによる測定から算出される
[金属元素の表面原子組成百分率(Atom%)の合計]/[C1sの表面原子組成百分率(Atom%)]
が0.040以上である、[3A]に記載の樹脂基材の製造方法。
[5A]
前記XPSによる測定から算出される
[金属元素の表面原子組成百分率(Atom%)の合計]/[C1sの表面原子組成百分率(Atom%)]
が0.010以上である、[3A]に記載の樹脂基材の製造方法。
[6A]
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3とNi2p3の表面原子組成百分率の合計が3.0atom%以上である、[3A]に記載の樹脂基材の製造方法。
[7A]
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3とNi2p3の表面原子組成百分率の合計が1.5atom%以上である、[3A]に記載の樹脂基材の製造方法。
[8A]
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3の表面原子組成百分率が2.8atom%以上である、[3A]に記載の樹脂基材の製造方法。
[9A]
前記銅部材を引き剥がした前記樹脂基材の表面においてXPSにより、Survey spectrum分析を行い、検出された元素について成分比を求めた時に、Cu2p3の表面原子組成百分率が1.0atom%以上である、[3A]に記載の樹脂基材の製造方法。
[10A]
前記樹脂基材は、ポリフェニレンエーテル(PPE)、エポキシ、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液晶ポリマー(LCP)、トリフェニルフォサイト(TPPI)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリシクロオレフィン、ビスマレイミド樹脂、低誘電率ポリイミド及びシアネート樹脂から選ばれる少なくとも1つの絶縁性樹脂を含む、[1A]~[9A]のいずれか一項に記載の樹脂基材の製造方法。
【0010】
[1B]
銅部材の表面の少なくとも一部に銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材と樹脂基材を含む積層体の製造方法であって、
前記銅酸化物を含む層の上に前記樹脂基材を所定の条件で熱圧着する工程を含み、
前記樹脂基材から前記銅部材を所定の条件で引き剥がした時、X線光電子分光法(XPS)による測定によって、前記銅酸化物を含む層に含まれる金属原子が、前記銅部材から引き剥がされた前記樹脂基材の表面から検出される、積層体の製造方法。
[2B]
銅部材の表面の少なくとも一部に銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材と樹脂基材を含む積層体の製造方法であって、
前記銅酸化物を含む層の上に樹脂基材を熱圧着する工程を含み、
前記樹脂基材から前記銅部材を所定の条件で引き剥がした時、減衰全反射吸収フーリエ変換赤外分光法(FT-IR/ATR法)による、波長範囲700-4000cm-1の範囲の測定によって、前記樹脂基材から引き剥がした前記銅部材の表面から検出される樹脂基材由来の物質に対応するピークのS/N比が10以下である、積層体の製造方法。
【0011】
[1C]
[1]または[3]に記載の複合銅部材の製造方法であって、
1)前記銅部材の表面をシランカップリング剤または防錆剤で部分コートする工程;及び
2)前記部分コートされた前記表面を酸化処理することにより前記銅酸化物を含む層を形成する工程;
を含む、複合銅部材の製造方法。
[2C]
[16]に記載の複合銅部材の製造方法であって、
1)前記銅部材の前記表面をシランカップリング剤または防錆剤で部分コートする工程;
2)前記部分コートされた前記表面を酸化処理することにより前記銅酸化物を含む層を形成する工程;
3)酸化処理された前記表面に、銅以外の金属を含む層を形成する工程;
を含む、複合銅部材の製造方法。
[3C]
[16]に記載の複合銅部材の製造方法であって、
1)前記銅部材の前記表面を酸化処理することにより前記銅酸化物を含む層を形成する工程;
2)前記酸化処理された前記表面を修飾剤で処理する工程;及び
3)前記修飾剤で処理された前記表面に銅以外の金属を含む層を形成する工程;
を含み、
前記修飾剤が、塩化Ni、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化クロム、クエン酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸ニッケルアンモニウム、エチレンジアミン四酢酸、ジエタノールグリシン、L-グルタミン酸二酢酸・四ナトリウム、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、3-ヒドロキシ-2、2’-イミノジコハク酸ナトリウム、メチルグリシン2酢酸3ナトリウム、アスパラギン酸ジ酢酸4ナトリウム、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸ジナトリウム及びグルコン酸ナトリウムからなる群から選択される化合物を含む、
複合銅部材の製造方法。
[4C]
[16]に記載の複合銅部材の製造方法であって、
1)前記銅部材の前記表面を酸化処理することにより前記銅酸化物を含む層を形成する工程;
2)前記酸化処理された前記表面を修飾剤で処理する工程;及び
3)前記修飾剤で処理された前記表面に銅以外の金属を含む層を形成する工程;
を含み、
前記修飾剤が、塩化スズ(II)またはクエン酸を含む、
複合銅部材の製造方法。
==関連文献とのクロスリファレンス==
本出願は、令和1年10月25日付で出願した日本国特許出願2019-194444に基づく優先権を主張するものであり、当該基礎出願を引用することにより、本明細書に含めるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、熱圧着前と引き剥がし後における、本発明の複合銅部材の一例を模式図化したものである。
図2図2は、実施例1~8及び比較例2~4の複合銅箔を樹脂基材に圧着後、引き剥がした後の目視観察による結果(銅箔の表面が樹脂側に転移している場合は〇、転移していない場合は×と記した)、および両側の表面の代表的な写真を示した図である。
図3図3は、実施例1~3及び比較例1~4の樹脂基材のXPS解析の結果を示す図である。
図4図4は、実施例1~3及び比較例2~4の複合銅箔を、樹脂基材(R5670KJ)に熱圧着後、引き剥がした後、その表面をFT IR/ATR法で測定した結果である。
図5図5は、実施例3及び比較例3の複合銅箔を、樹脂基材(R1551GG)に熱圧着後、引き剥がした後、その表面をFT IR/ATR法で測定した結果である。
図6図6は、実施例4~8の複合銅箔を、樹脂基材(R5680J)に熱圧着後、引き剥がした後、その表面をFT IR/ATR法で測定した結果である。
図7図7は、実施例3及び比較例3の複合銅箔を、樹脂基材(NX9255)に熱圧着後、引き剥がした後、その表面をFT IR/ATR法で測定した結果である。
図8図8は、実施例3及び比較例3の複合銅箔を、樹脂基材(CT-Z)に熱圧着後、引き剥がした後、その表面をFT IR/ATR法で測定した結果である。
図9図9は、本発明の一実施態様の複合銅箔(“転写+転移”)と、従来の転写用の銅箔(“転写のみ”)をSAP法に適用した場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を用いて詳細に説明するが、必ずしもこれに限定するわけではない。なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0014】
==複合銅部材==
本発明の一実施態様は、銅部材の少なくとも一部の表面に銅酸化物を含む層が形成されている複合銅部材である。銅部材には、構造の一部となる、Cuが主成分として含まれる。銅部材は、具体的には、電解銅箔や圧延銅箔およびキャリア付き銅箔等の銅箔、銅線、銅板、銅製リードフレームであるが、これらに限定されない。銅部材は、Cu純度が99.9質量%以上の純銅からなる材料が好ましく、タフピッチ銅、脱酸銅、無酸素銅で形成されていることがより好ましく、含有酸素量が0.001質量%~0.0005質量%の無酸素銅で形成されていることがさらに好ましい。
【0015】
銅部材が銅箔の場合、その厚さは特に限定されないが、0.1μm以上100μm以下が好ましく、0.5μm以上50μm以下がより好ましい。
【0016】
銅酸化物を含む層は、銅部材の表面に形成され、酸化銅(CuO)及び/又は亜酸化銅(CuO)を含む。この銅酸化物を含む層は、銅部材表面を酸化処理をすることにより、形成することができる。この酸化処理によって、銅部材表面が粗面化される。銅酸化物を含む層に対し、溶解剤を用いて、酸化された銅部材表面の凸部が調整されていてもよい。また、この銅酸化物を含む層の表面を還元剤により還元処理してもよく、その場合、銅酸化物を含む層の表面に亜酸化銅が形成されてもよい。純銅の比抵抗値が1.7×10-8(Ωm)なのに対して、酸化銅は1~10(Ωm)、亜酸化銅は1×10~1×10(Ωm)であるため、銅酸化物を含む層は導電性が低く、例え、樹脂基材に転移した銅酸化物を含む層の量が多くても、本発明に係る複合銅部材を用いてプリント配線基板や半導体パッケージ基板の回路を形成する際、表皮効果による伝送損失が起こりにくい。
【0017】
銅酸化物を含む層は銅以外の金属を含んでいてもよい。含まれる金属は特に限定されないが、Sn、Ag、Zn、Al、Ti、Bi、Cr、Fe、Co、Ni、Pd、AuおよびPtからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属が含まれていてもよい。特に耐酸性及び耐熱性を有するためには、銅よりも耐酸性及び耐熱性の高い金属、例えばNi、Pd、AuおよびPtが含まれることが好ましい。
銅以外の金属は、めっきによって銅部材の最表面に形成されていてもよい。めっきの方法は特に限定されず、電解めっき、無電解めっき、真空蒸着、化成処理などが例示できるが、一様で薄いめっき層を形成することが好ましいため、電解めっきが好ましい。酸化処理をされた銅箔表面に電解めっきを施す場合、まず表面の酸化銅が還元され、亜酸化銅又は純銅になるのに電荷が使われるため、めっきされるまでに時間のラグが生じ、その後、金属層を形成する金属が析出し始める。その電荷量はめっき液種や銅酸化物量によって異なるが、例えば、Niめっきを銅部材に施す場合、その厚さを好ましい範囲に収めるためには電解めっき処理する銅部材の面積dmあたり、15C以上75C以下の電荷を与えることが好ましく、25C以上65C以下の電荷を与えることがより好ましい。
めっきによって銅部材の最表面に形成された銅以外の金属の垂直方向の平均の厚さは特に限定されないが、6nm以上であることが好ましく、10nm以上、14nm以上、18nm以上あるいは20nm以上であることがさらに好ましい。ただし、80nm以下であることが好ましく、70nm以下、60nm以下であることがさらに好ましい。
なお、銅酸化物を含む層に含まれる銅以外の金属の垂直方向の平均の厚さは、銅酸化物を含む層を酸性溶液で溶解し、ICP分析によって金属量を測定し、複合銅部材の面積で除して算出できる。あるいは、複合銅部材そのものを溶解し、銅酸化物を含む層に含まれる金属のみの量を測定することにより、算出できる。
【0018】
銅酸化物を含む層が形成された、複合銅部材の表面を樹脂基材に熱圧着(thermal press fitting)すると、複合銅部材の表面プロファイルが樹脂基材に転写される。そして、熱圧着後に樹脂基材から複合銅部材を引き剥がした時、樹脂基材には、銅酸化物を含む層に含まれる金属が付着(転移)する。複合銅部材の一実施態様を図1に例示する。
【0019】
樹脂基材は、樹脂を主成分として含有する材料であって、プリント配線基板及び半導体パッケージ基板等の回路形成に用いることができる。樹脂は特に限定されないが、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもよく、ポリフェニレンエーテル(PPE)、エポキシ、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液晶ポリマー(LCP)、トリフェニルフォサイト(TPPI)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリシクロオレフィン、ビスマレイミド樹脂、低誘電率ポリイミド、シアネート樹脂、或いはこれらの混合樹脂であることが好ましい。樹脂基材はさらに無機フィラーやガラス繊維を含んでいてもよい。
【0020】
樹脂基材を複合銅部材の表面に熱圧着するには、例えば、樹脂基材と複合銅部材を密着させて積層した後、所定の条件で処理することにより、樹脂基材と複合銅部材を接着すればよい。所定の条件(温度、圧力、時間)として、各基材メーカーの推奨条件を用いてもよい。所定の条件とは、例えば以下のような条件が考えられる。
【0021】
1)樹脂基材がエポキシ樹脂を含むか、またはエポキシ樹脂からなる場合、50℃~300℃の温度で0~20MPaの圧力を1分~5時間かけることにより、樹脂基材に複合銅部材を熱圧着することが好ましい。
たとえば、
1-1)樹脂基材がR-1551(Panasonic製)の場合、
1MPaの圧力下で加熱し、100℃に到達後、その温度で5~10分保持し、
その後3.3MPaの圧力下でさらに加熱し、170~180℃に到達後、その温度で50分間保持することで熱圧着する。
1-2)樹脂基材がR-1410A(Panasonic製)の場合、
1MPaの圧力下で加熱し、130℃到達後、その温度で10分保持し、その後2.9MPaの圧力下でさらに加熱し、200℃到達後、その温度で70分間保持することで熱圧着する。
1-3)樹脂基材がEM-285(EMC製)の場合、
0.4MPaの圧力下で加熱し、100℃到達後、圧力を2.4~2.9MPaに上げてさらに加熱し、195℃到達後、その温度で50分間保持することで熱圧着する。
1-4)樹脂基材が、GX13(味の素ファインテクノ製)の場合、1.0MPaで加圧しながら加熱し、180℃で60分間保持することで熱圧着する。
【0022】
2)樹脂基材が、PPE樹脂を含むか、またはPPE樹脂からなる場合、50℃~350℃の温度で0~20MPaの圧力を1分~5時間かけることにより、樹脂基材に複合銅部材を熱圧着することが好ましい。
たとえば、
2-1)樹脂基材が、R5620(Panasonic製)の場合、
0.5MPaの圧力下で100℃になるまで加熱しながら熱圧着した後、温度と圧力を上げ、2.0~3.0MPa、200~210℃で、120分間保持することでさらに熱圧着する。
2-2)樹脂基材が、R5670(Panasonic製)の場合、
0.49MPaの圧力下で110℃になるまで加熱しながら熱圧着した後、温度と圧力を上げ、2.94MPa、210℃で120分間保持することで熱圧着する。
2-3)樹脂基材が、R5680(Panasonic製)の場合、0.5MPaの圧力下で110℃になるまで加熱しながら熱圧着した後、温度と圧力を上げ、3.0~4.0MPa、195℃で、75分間保持することで熱圧着する。
2-4)樹脂基材が、N-22(Nelco製)の場合、1.6~2.3MPaで加圧しながら加熱し、177℃で30分間保持後、さらに加熱し、216℃で60分間保持することで熱圧着する。
【0023】
3)樹脂基材が、PTFE樹脂を含むか、PTFE樹脂からなる場合、50℃~400℃の温度で0~20MPaの圧力を1分~5時間かけることにより、樹脂基材に複合銅部材熱を圧着することが好ましい。
たとえば、
3-1)樹脂基材が、NX9255(パークエレクトロケミカル製)の場合、0.69MPaで加圧しながら260℃になるまで加熱し、1.03~1.72MPaに圧力をあげて385℃になるまで加熱し、385℃で10分間保持することで熱圧着する。
3-2)樹脂基材が、RO3003(ロージャース製)の場合、プレス開始50分(おおよそ220℃)以降、2.4MPaに加圧し、371℃で30~60分間保持することで熱圧着する。
【0024】
樹脂基材から銅部材を引き剥がす条件は、特に限定しないが、90°剥離試験(日本工業規格(JIS)C5016「フレキシブルプリント配線板試験方法」;対応国際規格IEC249-1:1982、IEC326-2:1990 )に基づいて、行うことができる。
【0025】
銅部材を引き剥がした後の樹脂基材には、銅酸化物を含む層に含まれる金属が転移している。銅部材を引き剥がした後の樹脂基材の表面に転移した金属は、様々な方法(たとえば、X線光電子分光法(XPS)、エネルギー分散型X線分光法(EDS)、ICP発光分光分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法、ICP-OES/ICP-AES))を用いて検出できる。
XPSはX線を物体に照射し、物体のイオン化に伴い放出される光電子e-を捕捉することによりエネルギー分析を行う手法である。XPSによって、試料表面、あるいは表面から所定の深さまで(たとえば、6nmの深さまで)に存在する元素の種類、存在量、化学結合状態等を調べることができる。分析スポット径(すなわち、分析できる円柱形部分を断面が円になるように切った時の断面の直径)としては、1μm以上~1mm以下が適している。
【0026】
銅酸化物を含む層に含まれる金属が、転写された表面プロファイルの凹部の80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、99.9%以上を埋める形で樹脂基材に転移することが好ましい。凹部の大部分を埋める態様の場合、試料表面の元素分析を行うXPSによって、樹脂基材表面を測定した時に、金属原子(銅原子及び銅以外の金属の原子)のスペクトルのピーク強度の合計がC1sのスペクトルのピーク強度よりも大きくなる。金属元素のピークは複数種あるが、ここでは各金属元素のメインピークを指す。例えば、Cuは2p3軌道、Snは3d5軌道、Agは3d5軌道、Znは2p3軌道、Alは2p軌道、Tiは2p3軌道、Biは4f7軌道、Crは2p3軌道、Feは2p3軌道、Coは2p3軌道、Niは2p3軌道、Pdは3d5軌道、Auは4f7軌道、Ptは4f7軌道のピークがメインピークである。なお、ここで言うスペクトルのピークの強度とは、図3に示すXPSのスペクトルデータの縦軸の高さである。
【0027】
銅酸化物を含む層に含まれる金属の量について、X線光電子分光法(XPS)により測定された、銅部材を引き剥がした樹脂基材の表面における表面原子全体に対するCu2p3の割合が1.0atom%以上、1.8atom%以上、2.8atom%以上、3.0atom%以上、4.0atom%以上、5.0atom%以上、又は6.0atom%であることが好ましい。あるいは、XPSによって、転写後の銅部材表面を測定した時の、Cu2p3の表面原子組成百分率/C1sの表面原子組成百分率の割合が、0.010以上、0.015以上、0.020以上、0.025以上、0.030以上、0.035以上、0.040以上、0.045以上、0.050以上又は0.10以上であることが好ましい。
銅酸化物を含む層が銅以外の金属を含む場合は、X線光電子分光法(XPS)により測定された前記引き剥がされた樹脂基材の表面における金属原子(銅原子及び銅以外の金属の原子)の表面原子組成百分率の合計が1.0atom%以上、1.5atom%以上、1.8atom%以上、2.8atom%以上、3.0atom%以上、4.0atom%以上、5.0atom%以上、又は6.0atom%であることが好ましい。あるいは、金属原子(銅原子及び銅以外の金属の原子)の表面原子組成百分率の合計/C1sの表面原子組成百分率の割合が0.010以上、0.015以上、0.020以上、0.025以上、0.030以上、0.035以上、0.040以上、0.045以上、0.050以上又は0.10以上であることが好ましい。
【0028】
樹脂基材から引き剥がされた銅部材の表面から、樹脂基材由来の有機物が検出されないか、検出されても少量であることが好ましい。このことは、引き剥がし時に樹脂基材側での破断が起こらないことを示している。樹脂基材由来の有機物の検出方法は特に限定しないが、例えば減衰全反射吸収フーリエ変換赤外分光法(FT-IR法)による樹脂基材由来のピークの検出によって行うことができる。
FT-IR法は、測定対象の物質に赤外線を照射し、赤外線吸収スペクトルを利用して化合物を同定及び/又は定量する赤外分光法である。本件発明においては樹脂基材由来の有機物を検出するために用いることができる。
樹脂基材由来のピークは「Infrared and Raman Spectroscopy : Principles and Spectral Interpretation (Peter Larkin著)」に例示されている。波長範囲700-4000cm-1において、S/N比が10以下、9以下が好ましく、8以下、7以下がより好ましく、樹脂基材由来のピークが検出されないことが好ましい。
【0029】
銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.04μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、また、0.3μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがより好ましい。
銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材の表面の最大高さ粗さ(Rz)は0.2μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、また、2.0μm以下であることが好ましく、1.7μm以下であることがより好ましい。
Ra、Rzが小さすぎると樹脂基材との密着性が不足し、大きすぎると微細配線形成性や高周波特性が劣ることになる。
ここで、算術平均粗さ(Ra)とは基準長さlにおいて、以下の式で表される輪郭曲線(y=Z(x))におけるZ(x)(すなわち山の高さと谷の深さ)の絶対値の平均を表す。
【数1】
最大高さ粗さ(Rz)とは基準長さlにおいて、輪郭曲線(y=Z(x))の山高さZpの最大値と谷深さZvの最大値の和を表す。
Ra、RzはJIS B 0601:2001(国際基準ISO4287-1997準拠)に定められた方法により算出できる。
銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材の表面の熱圧着前のRaに対する引き剥がし後のRaの割合が100%未満、96%未満、95%未満、94%未満、93%未満、92%未満、91%未満、90%未満、80%未満、70%未満、65%未満又は60%未満であることが好ましい。この割合が小さいほど、銅酸化物を含む層を形成する金属が樹脂基材に転移したことを意味している。
【0030】
銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材の熱圧着前の表面積に対する引き剥がし後の表面積の割合が100%未満、98%未満、97%未満、96%未満、95%未満、94%未満、93%未満、92%未満、91%未満、90%未満、80%未満又は75%未満であることが好ましい。この割合が小さいほど、銅酸化物を含む層を形成する金属が樹脂基材に転移したことを意味している。
表面積は、コンフォーカル顕微鏡や原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。
【0031】
本発明の一実施態様における複合銅部材において、銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材の表面の粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、特に限定しないが、1500nm以下、1400nm以下、1300nm以下、1200nm以下、1100nm以下、1000nm以下、900nm以下、800nm以下、750nm以下、700nm以下、650nm以下、600nm以下、550nm以下、450nm以下、又は350nm以下が好ましく、100nm以上、200nm以上又は300nm以上が好ましい。ここで、RSmとは、ある基準長さ(lr)における粗さ曲線に含まれる1周期分の凹凸が生じている長さ(すなわち輪郭曲線要素の長さ:Xs1~Xsm)の平均を表し、以下の式で算出される。
【数2】
ここで算術平均粗さ(Ra)の10%を凹凸における最小の高さとし、基準長さ(lr)の1%を最小の長さとして1周期分の凹凸を定義する。一例として、Rsmは「原子間力顕微鏡によるファインセラミック薄膜の表面粗さ測定方法(JIS R 1683:2007)」に準じて測定算出することができる。
【0032】
熱圧着前の複合銅部材の表面と引き剥がされた後の銅部材の表面のΔEabが13以上、15以上、20以上、25以上、30以上、又は35以上であることが好ましい。この差が大きいほど、銅酸化物を含む層を形成する金属(すなわち、凹凸をを形成する金属)が樹脂基材に転移したことを意味している。
【0033】
==複合銅部材の製造方法==
本発明の一実施態様は、複合銅部材の製造方法であって、銅酸化物を含む層を銅部材から破断しやすくする工程を含む。
【0034】
この工程で、銅酸化物を含む層を銅部材から破断しやすくする方法は特に限定しないが、1)酸化処理前にシランカップリング剤または防錆剤等のコート剤で銅部材表面を部分コートする、2)酸化処理後に、銅酸化物を含む層を塩化Niで処理する、などによる。
【0035】
銅酸化物を含む層は、酸化剤を用いて銅部材表面を処理することにより形成されることが好ましい。酸化剤は特に限定されず、例えば、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム等の水溶液を用いることができる。酸化剤には、各種添加剤(たとえば、リン酸三ナトリウム十二水和物のようなリン酸塩)を添加してもよい。
【0036】
酸化反応条件は特に限定されないが、反応温度は40~95℃であることが好ましく、45~80℃であることがより好ましい。反応時間は0.5~30分であることが好ましく、1~10分であることがより好ましい。
【0037】
酸化処理以前に、脱脂処理、自然酸化膜除去を行い均一処理するための酸洗浄、または酸洗浄後に酸化工程への酸の持ち込みを防止するためのアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法は特に限定されないが、好ましくは0.1~10g/L、より好ましくは1~2g/Lのアルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液で、30~50℃、0.5~2分間程度処理すればよい。
また、銅酸化物を含む層を、溶解剤を含む溶解用薬液で溶解して、銅部材表面の凸部を調整してもよいし、還元剤を含む還元用薬液で銅酸化物を含む層の酸化銅を還元してもよい。
【0038】
溶解剤は特に限定されないが、キレート剤、特に生分解性キレート剤であることが好ましく、L‐グルタミン酸二酢酸四ナトリウム(CMG-40)、エチレンジアミン四酢酸(ナトリウム塩)、ジエタノールグリシン、L-グルタミン酸二酢酸・四ナトリウム、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、3-ヒドロキシ-2、2’-イミノジコハク酸ナトリウム、メチルグリシン2酢酸3ナトリウム、アスパラギン酸ジ酢酸4ナトリウム、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸ジナトリウム、グルコン酸ナトリウムなどが例示できる。
【0039】
還元剤としては、DMAB(ジメチルアミンボラン)、ジボラン、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等を用いることができる。また、還元用薬液は、還元剤、アルカリ性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、及び溶媒(例えば、純水等)を含む液体である。
【0040】
銅酸化物を含む層の上に銅以外の金属を含む層を形成させてもよい。銅以外の金属を含む層は、例えば銅以外の金属でめっき処理をすることで形成させることができる。めっき処理方法は、公知の技術を使うことができるが、例えば、銅以外の金属として、Sn、Ag、Zn、Al、Ti、Bi、Cr、Fe、Co、Ni、Pd、Au、Pt、あるいは様々な合金を用いることができる。めっき工程も特に限定されず、電解めっき、無電解めっき、真空蒸着、化成処理などによってめっきすることができるが、一様で薄いめっき層を形成することが好ましいため、電解めっきが好ましい。
【0041】
電解めっきの場合はニッケルめっき及びニッケル合金めっきが好ましい。ニッケルめっき及びニッケル合金めっきで形成される金属は、例えば、純ニッケル、Ni-Cu合金、Ni-Cr合金、Ni-Co合金 、Ni-Zn合金、Ni-Mn合金、Ni-Pb合金、Ni-P合金等が挙げられる。
めっきに用いる金属塩として、例えば、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酸化亜鉛、塩化亜鉛、ジアンミンジクロロパラジウム、硫酸鉄、塩化鉄、無水クロム酸、塩化クロム、硫酸クロムナトリウム、硫酸銅、ピロリン酸銅、硫酸コバルト、硫酸マンガンなどが挙げられる。
ニッケルめっきにおいて、その浴組成は、例えば、硫酸ニッケル(100g/L以上350g/L以下)、スルファミン酸ニッケル(100g/L以上600g/L以下)、塩化ニッケル(0g/L以上300g/L以下)及びこれらの混合物を含むものが好ましいが、添加剤としてクエン酸ナトリウム(0g/L以上100g/L以下)やホウ酸(0g/L以上60g/L以下)が含まれていてもよい。
【0042】
無電解ニッケルめっきの場合、触媒を用いた無電解めっきが好ましい。触媒としては鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、またはそれらの塩を用いることが好ましい。触媒を用いた無電解めっきを行うことで、一様で粒子が点在しない金属層を得ることができ、それによって、複合銅箔の耐熱性が向上する。
【0043】
本発明の複合銅部材の製造方法の一実施態様は、1)銅部材表面をシランカップリング剤または防錆剤で部分コートする工程;および、2)部分コートされた銅部材表面を酸化処理することにより銅酸化物を含む層を形成する工程;を含むか、或いは、1)銅部材表面をシランカップリング剤または防錆剤で部分コートする工程;2)部分コートされた銅部材表面を酸化処理することにより銅酸化物を含む層を形成する工程;および、3)銅酸化物を含む層の形成された複合銅部材表面に、銅以外の金属を含む層を形成する工程;を含む、複合銅部材の製造方法である。
シランカップリング剤または防錆剤等のコート剤で銅部材表面を部分的にコートすることにより、その部分が酸化処理を受けることを免れ、銅酸化物を含む層に空隙が生じ、銅部材から銅酸化物を含む層が破断しやすくなる。
【0044】
シランカップリング剤は特に限定しないが、シラン、テトラオルガノ‐シラン、アミノエチル-アミノプロピル-トリメトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア)((l-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]urea))、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、((3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン)、(3-クロロプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、エチルトリアセトキシシラン、トリエトキシ(イソブチル)シラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリス(2‐メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、クロロトリメチルシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、及びエチレン‐トリメトキシシランから選択されてもよい。
防錆剤は特に限定しないが、1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、5-アミノ-1H-ベンゾトリアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、1,3-ジメチル-5-ピラゾロン、ピロール、3-メチルピロール、2,4-ジメチルピロール、2-エチルピロール、ピラゾール、3-アミノピラゾール、4-メチルピラゾール、3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール、チアゾール、2-アミノチアゾール、2-メチルチアゾール、2-アミノ-5-メチルチアゾール、2-エチルチアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、5-アミノイミダゾール、6-アミノイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-(メチルチオ)ベンゾイミダゾールから選択されてもよい。
シランカップリング剤または防錆剤による処理は、酸化処理前であればいつ行われてもよく、脱脂処理、自然酸化膜除去を行い均一処理するための酸洗浄、または酸洗浄後に酸化工程への酸の持ち込みを防止するためのアルカリ処理と共に行われてもよい。
シランカップリング剤または防錆剤による処理は、銅部材表面を部分的に(例えば、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%以上で、100%未満)コートすることが好ましく、そのためには、0.1%、0.5%、1%又は2%以上の濃度で、室温で30秒、1分又は2分以上反応させることが好ましい。
【0045】
本発明の複合銅部材の製造方法の一実施態様は、1)銅部材表面を酸化処理することにより銅酸化物を含む層を形成する工程;および、2)銅酸化物を含む層が形成された銅部材表面を修飾剤で処理する工程;を含む、複合銅部材の製造方法、または、1)銅部材表面を酸化処理することにより銅酸化物を含む層を形成する工程;2)銅酸化物を含む層が形成された銅部材表面を修飾剤で処理する工程;および、3)修飾剤で処理された、銅酸化物を含む層が形成された複合銅部材表面に銅以外の金属を含む層を形成する工程、を含む複合銅部材の製造方法である。
修飾剤で処理することによって、銅部材と銅酸化物を含む層の界面付近の銅酸化物が部分的に溶解され、銅酸化物を含む層が銅部材から破断しやすくなると考えられる。
銅酸化物を含む層を銅部材から破断させやすくするための修飾剤は、銅酸化物を溶解する成分が含まれていればよく、塩化Niに限定されず、塩化物(塩化亜鉛、塩化鉄、塩化クロムなど)、アンモニウム塩(クエン酸アンモニウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸ニッケルアンモニウムなど)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸、ジエタノールグリシン、L-グルタミン酸二酢酸・四ナトリウム、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、3-ヒドロキシ-2、2’-イミノジコハク酸ナトリウム、メチルグリシン2酢酸3ナトリウム、アスパラギン酸ジ酢酸4ナトリウム、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸ジナトリウム、グルコン酸ナトリウムなど)、塩化スズ(II)、及びクエン酸から選択されてもよい。
塩化Niで処理する場合は、特に限定しないが、塩化Ni溶液(濃度45g/L以上)に室温で5秒以上、銅酸化物を含む層が形成された銅部材を浸漬することが好ましい。また、塩化Ni単独で処理するだけではなく、酸化処理と同時に行ってもよいし、酸化処理後、めっき処理と同時に行ってもよい。例えば、めっき液の中に塩化Niを含有させ、めっき前に5秒、10秒、15秒、20秒、30秒、1分、または2分間めっき液の中に、銅酸化物を含む層が形成された銅部材を浸漬してもよい。浸漬する時間は、酸化膜厚により適宜変更可能である。
【0046】
==複合銅部材の使用方法==
本発明に係る複合銅部材は
(1)樹脂基材に圧着して積層体を製造すること;
(2)樹脂基材に圧着して、引き剥がし、銅酸化物を含む層を形成する金属の一部又は全部を有する樹脂基材を得ること;
(3)SAP法やMSAP法において、樹脂基材に圧着して、引き剥がし、銅酸化物を含む層を形成する金属の一部又は全部を有する樹脂基材を得、引き剥がした樹脂基材の面に銅めっき処理を行うことにより、プリント配線板の製造すること;
等に用いることができる。
(1)~(3)において、樹脂基材及び、樹脂基材に加熱圧着する方法は、X線光電子分光スペクトル測定の際の条件と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(2)~(3)において、引き剥がす方法は、X線光電子分光スペクトル測定の際の条件と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(3)において、銅めっきする方法は、電解めっきでも無電解めっきでもよい。
【実施例
【0047】
<1.複合銅箔の製造>
実施例1~9、比較例2~3は、古河電気工業株式会社製の銅箔(DR-WS、厚さ:18μm)のシャイニー面(光沢面。反対面と比較したときに平坦である面。)を用いた。比較例4は、古河電気工業株式会社製の銅箔(FV-WS、厚さ:18μm)のマット面を用い、未処理のまま試験片とした。
【0048】
(1)前処理(PS)
まず、銅箔を以下に記載の溶液で、25℃1分間浸漬した。すなわち、
実施例1及び2は、炭酸カリウム2.5g/L;KBE-903(3-アミノプロピルトリエトキシシラン;信越シリコーン社製)1vol%、
実施例3は、炭酸カリウム2.5g/L;炭酸水素カリウム0.06g/L、
実施例4~6は、水酸化カリウム5g/L、
実施例7は、水酸化カリウム5g/L;KBM-603(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン;信越シリコーン社製)5vol%、
実施例8は、水酸化カリウム5g/L;BTA(ベンゾトリアゾール)1wt%、
比較例2は、炭酸カリウム2.5g/Lの溶液、
比較例3は、炭酸カリウム2.5g/Lの溶液;炭酸水素カリウム0.06g/L、を用いた。
【0049】
(2)酸化処理(AS)
前処理を行った銅箔を、酸化剤に浸漬して酸化処理を行った。
実施例1、2、7、8及び比較例2は、酸化剤として、亜塩素酸ナトリウム58.3g/L;水酸化カリウム20g/L;炭酸カリウム39.1g/Lの溶液を用いた。
実施例3~6は、酸化剤として亜塩素酸ナトリウム45g/L;水酸化カリウム12g/L;KBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;信越シリコーン社製)2g/Lの溶液を用いた。
比較例3は、酸化剤として、亜塩素酸ナトリウム58.8g/L;水酸化カリウム8.8g/L;炭酸カリウム3g/L;KBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;信越シリコーン社製)2g/Lの溶液を用いた。
実施例1、2、7、及び8は酸化剤に73℃で6分間浸漬し、実施例3~6、比較例2及び3は酸化剤に73℃で2分間浸漬した。
(3)めっき前処理
酸化処理後、実施例4~6は、以下のように修飾剤を用いてめっき前処理を行った。
実施例4は、塩化スズ(II)・二水和物45g/L;塩酸1mL/Lの溶液を用い、45℃で10秒処理した。
実施例5は、塩化アンモニウム45g/Lの溶液を用い、45℃で60秒処理した。
実施例6は、50%クエン酸溶液5mL/Lの溶液を用い、45℃で60秒処理した。
(4)電解めっき処理
酸化処理後、実施例2、3及び比較例3は、第1のNi電解めっき液(硫酸ニッケル240g/L;塩化ニッケル45g/L;クエン酸ナトリウム20g/L)を用いて電解めっきを行った。実施例4~7は、めっき前処理後、第2のNi電解めっき液(硫酸ニッケル240g/L;クエン酸ナトリウム20g/L)を用いて電解めっきを行った。実施例3は電解めっき前にNi電解めっき液に1分間浸漬させた。50℃で電流密度0.5A/dm×45秒(=22.5C/dm銅箔面積)で電解めっきを行った。
【0050】
実施例及び比較例について、各々同じ上記条件で複数の試験片を作製した。表1に上記条件をまとめた。
【表1】
【0051】
<2.樹脂基材の圧着及び引き剥がし>
(1)方法
実施例1~8及び比較例2~4の試験片に対し、プリプレグとして、R5670KJ(Panasonic製)、R5680J(Panasonic製)、CT-Z(クラレ製)、NX9255(パークエレクトロケミカル製)、及びR1551GG(Panasonic製)を用いて、樹脂基材の引き剥がし試験を行った。
まず、試験片に対し、プリプレグを積層し、真空高圧プレス機を用いて真空中で熱圧着することにより、積層体試料を得た。なお、樹脂基材がR5670KJ(Panasonic製)の場合は、0.49MPaの圧力下で110℃になるまで加熱しながら熱圧着した後、温度と圧力を上げ、2.94MPa、210℃で120分間保持することで熱圧着した。樹脂基材がR5680J(Panasonic製)の場合は、0.5MPaの圧力下で110℃になるまで加熱しながら熱圧着した後、温度と圧力を上げ、3.5MPa、195℃で、75分間保持することで熱圧着した。樹脂基材がNX9255(パークエレクトロケミカル製)の場合は、0.69MPaで加圧しながら260℃になるまで加熱し、1.5MPaに圧力をあげて385℃になるまで加熱し、385℃で10分間保持することで熱圧着した。樹脂基材がR1551GG(Panasonic製)の場合は、1MPaの圧力下で加熱し、100℃に到達後、その温度で10分保持し、その後3.3MPaの圧力下でさらに加熱し、180℃に到達後、その温度で50分間保持することで熱圧着した。樹脂基材がCTーZ(クラレ製)の場合は、0MPaの圧力下で加熱し、260℃で15分間保持後、4MPaで加圧しながらさらに加熱し、300℃で10分間保持することで熱圧着した。これらの積層体試料に対して90°剥離試験(日本工業規格(JIS)C5016)に準じて、銅部材を樹脂基材から引き剥がした(図1)。目視による観察結果を図2-1に示す。また、代表的な組み合わせについて、引き剥がした後の樹脂側および銅箔側の表面の写真を図2-2に示す。
図2から、実施例では、銅箔の表面が樹脂側に転移しているのが容易に観察できるのに対し、比較例では、銅箔の表面は樹脂側に転移していなかった。このことを物質として証明するため、以下のように表面解析を行った。
【0052】
<3.引き剥がした後の樹脂基材の表面解析>
引き剥がした後の樹脂基材の表面の元素分析を行った。具体的には、得られた樹脂基材を、QuanteraSXM(ULVAC-PHI製)を用いて以下の条件で分析を行った。陰性対照として何も処理していない樹脂基材(R5670KJ;MEGTRON6)を分析した(比較例1)。
(1)Survey spectrum
まず、以下の条件で元素を検出した。
X線光源: 単色化Al Kα(1486.6eV)
X線ビーム径: 100μm(25w15kV)
パスエネルギー: 280eV,1eVステップ
ポイント分析: φ100μm
積算回数 8回
【0053】
(2)結果
結果を表2及び図3に示す。
実施例において、転移した銅原子に由来するCu2p3のスペクトルのピーク強度が樹脂基材に起因するC1sのスペクトルのピーク強度よりも大きいのに対して、比較例はCu2p3のスペクトルのピークが検出されないか、その強度がC1sのスペクトルのピーク強度よりも小さかった。これは、比較例においては、銅原子が、樹脂基材にほとんど転移していないか、XPSで検出できる樹脂基材表層部分にはほとんど存在していないことを示す。
実施例1では複合銅箔がめっき処理をされていないため、Cu原子のみが転移し、樹脂基材側で検出された。実施例2及び3では、Niめっき処理がされているため、Cu原子とNi原子が転移し、樹脂側で検出された。
また、比較例に比べて実施例はいずれもC1sの割合が小さかった。実施例では、酸化銅又は亜酸化銅が転写されたことにより、表面におけるC1sの割合が相対的に小さくなったと考えられる。
【表2】
【0054】
<4.熱圧着前と引き剥がし後の複合銅箔のRa及び表面積の測定>
(1)方法
実施例1~8及び比較例2~4の複合銅箔試験片について、熱圧着前と引き剥がし後の表面積を、共焦点走査電子顕微鏡 OPTELICS H1200(レーザーテック株式会社製)を用いて算出した。測定条件として、モードはコンフォーカルモード、スキャンエリアは100μm×100μm、Light sourceはBlue、カットオフ値は1/5とした。オブジェクトレンズはx100、コンタクトレンズはx14、デジタルズームはx1、Zピッチは10nmの設定とし、3箇所のデータを取得し、表面積は3箇所の平均値とした。
(2)結果
表3に記載のように、熱圧着前と引き剥がし後では、実施例ではRa及び表面積が減少したのに対し、比較例では逆に増加した。これは実施例では、複合銅部材の凸部全部または一部が樹脂側に転移したのに対して、比較例では逆に樹脂の一部が複合銅部材に転移したことを示している。
【表3】
【0055】
<5.熱圧着前と引き剥がし後の複合銅箔のΔEabの算出>
(1)方法
熱圧着前と引き剥がし後の各複合銅部材試験片の銅箔表面の色差(L、a、b)を測定し、得られた値から、以下の式に従い、ΔEabを算出した。
ΔEab = [(ΔL + (Δa + (Δb1/2
(2)結果
表4に記載のように、熱圧着前と引き剥がし後で、実施例ではΔEabが15以上なのに対して、比較例では15未満であった。これは、実施例では銅酸化物を含む層に含まれる金属が樹脂基材に転移するため、銅部材の色変化が大きくなるのに対して、比較例では銅酸化物を含む層はそのまま銅部材に残るため、銅部材の色変化は小さくなるため、銅酸化物を含む層に含まれる金属が多く転移するほど、それらの差が大きくなるからである。実際、図2の写真においても、引き剥がし後に、実施例では樹脂側の着色が大きいが、比較例では樹脂側はほぼ白いままである。
【表4】
【0056】
<5.減衰全反射吸収フーリエ変換赤外分光法(FT IR/ATR法)による転移後の複合銅箔表面の解析>
(1)方法
樹脂基材として、R1551GG(エポキシ系)、R5670KJ、R5680J(以上、PPE系)、NX9255(PTFE系)、またはCT-Z(LCP系)を用いて熱圧着し、引き剥がした後の各複合銅部材試験片をFT-IR/ATR法により以下の測定条件で解析した。
測定条件
Parkin Elmer製 Specrtum100
ATR法
クリスタル:ゲルマニウム
分解能:4
スキャン数:4回
圧力(フォースゲージ):40±5 [N]
スペクトル表示:吸光度
(2)S/N(シグナル/ノイズ)比の算出
複合銅部材と熱圧着する時と同じ条件で樹脂基材のみを加熱及び加圧処理後、樹脂基材をFT-IRを測定し、樹脂由来のピークがない任意の波長を50cm-1の範囲で選定した。本実施例では、3800-3850cm-1を樹脂由来のピークがない波長とした。さらに、波長範囲700-4000cm-1において、最大ピークを検出した波長を同定した。樹脂基材としてR1551GGを用いた場合は1200cm-1付近、R5670KJおよびR5680Jを用いた場合は1190cm-1付近、NX9255を用いた場合は1232cm-1付近、CT-Zを用いた場合は、1741cm-1付近を最大ピーク検出波長とした(図4~8の矢印が最大ピーク検出波長を示す)。
転移後の銅部材表面をFT-IRで測定し、最大ピーク検出波長におけるピークの両端の極点間を直線で結んだベースラインを引き、ベースラインとピークの最大高さの差をシグナル値(S)とした。波長3800-3850cm-1において、検出されるピークの最大値と最小値の差をノイズ値(N)として、S/N比を算出した。
(3)結果
結果を図4~8及び表5に示す。
【表5】
【0057】
表5に示すように、実施例では複合銅箔側に樹脂由来の有機物に対応するS/N比が10以上のピークは検出されなかったが、比較例では、複合銅箔側に樹脂由来の有機物に対応するS/N比が10以上のピークが検出された。
これは、比較例では、複合銅部材表面の金属はほとんど転移せず、樹脂基材から複合銅部材を引き剥がす時に樹脂の凝集破壊が生じ、破壊された樹脂が複合銅部材表面に付着するため樹脂由来の有機物に対応するピークが検出されたためである。一方、実施例では複合銅部材表面の金属は樹脂基材へ転移したために、樹脂基材から複合銅部材を引き剥がした後の複合銅部材には樹脂の付着はほとんどなく、樹脂由来の有機物に対応するS/N比が10以上のピークは検出されなかった。
すなわち、比較例は樹脂基材の強度より、銅酸化物を含む層が形成する凸部の強度が大きいため、複合銅部材表面の金属は転移せずに樹脂の凝集破壊が生じる。一方、実施例は銅酸化物を含む層が形成する凸部の強度が樹脂基材の強度より小さいため、複合銅部材表面の金属が転移するので樹脂の付着は殆どない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によって、新規な複合銅部材を提供することができるようになった。かかる複合銅部材はSAP法やMSAP法に好適である(図9)。凹部の先最深部までめっき液を浸入させるためには、凹部の形状がある程度大きい必要があり、微細配線の形成には不向きであった。しかしながら、本発明の複合銅箔を用いた場合、凹凸を形作る銅酸化物を含む層そのものが転移されるため、めっき液を凹部の最深部まで浸透させる必要がなく、転移させた銅酸化物を含む、凹凸の無い層の上に(パターン)銅めっきを行えばよく、たとえ元の複合銅部材表面にある凹部の形状が長く細くても樹脂基材と(パターン)銅めっき層の間に空隙が生じる可能性が少なく、微細配線の形成に好適である。
加えて、銅酸化物を含む層の上に銅をめっきするので、銅めっきの、酸化銅を含む層に対する結合親和性が高く、樹脂基材と(パターン)銅めっき層の間のピール強度は、銅めっき層と結合した銅酸化物を含む層の結合により担保されることになる。
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図3-7】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9