(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】エアロゲル複合体の製造方法およびエアロゲル複合体
(51)【国際特許分類】
C01B 33/16 20060101AFI20240930BHJP
D06M 11/79 20060101ALI20240930BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
C01B33/16
D06M11/79
G10K11/16 120
(21)【出願番号】P 2023519132
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 KR2022004059
(87)【国際公開番号】W WO2022211353
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0043328
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】セ・ウォン・ベク
(72)【発明者】
【氏名】ミ・リ・キム
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/111763(WO,A1)
【文献】特開2018-140554(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0028082(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0082379(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0063799(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0179073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
D06M 11/00 - 11/84
D06M 16/00
D06M 19/00 - 23/18
G10K 11/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒化したシリカゾルを繊維マットに0.1~
0.8:1の体積比(触媒化したシリカゾル:繊維マット)で含浸し、ゲル化するステップ(S10)を含む、エアロゲル複合体の製造方法。
【請求項2】
前記触媒化したシリカゾルは、
シリカ前駆体、有機溶媒および水系溶媒を混合してシリカ前駆体組成物を製造するステップ(S1)と、
有機溶媒、塩基触媒および疎水化剤を混合して触媒組成物を製造するステップ(S2)と、
シリカ前駆体組成物および触媒組成物を混合して触媒化したシリカゾルを製造するステップ(S3)とを含んで製造される、請求項
1に記載のエアロゲル複合体の製造方法。
【請求項3】
前記(S1)ステップで製造されるシリカ前駆体組成物のシリカ濃度は、10kg/m
3~100kg/m
3である、請求項
2に記載のエアロゲル複合体の製造方法。
【請求項4】
前記(S1)ステップで製造されるシリカ前駆体組成物のシリカ濃度は、40kg/m
3~70kg/m
3である、請求項
2又は
3に記載のエアロゲル複合体の製造方法。
【請求項5】
前記エアロゲル複合体の製造方法は、
前記(S10)ステップでゲル化した湿潤ゲル複合体を熟成するステップ(S20)と、
前記(S20)ステップで熟成された湿潤ゲル複合体を乾燥してエアロゲル複合体を取得するステップ(S30)とを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載のエアロゲル複合体の製造方法。
【請求項6】
前記(S30)ステップで取得したエアロゲル複合体は、2nm~50nmの気孔径を有する気孔を含む、請求項
5に記載のエアロゲル複合体の製造方法。
【請求項7】
前記繊維マットは、ガラス繊維マットである、請求項1~
6のいずれか一項に記載のエアロゲル複合体の製造方法。
【請求項8】
前記繊維マットは、100μm~1,000μmの気孔径を有する気孔を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載のエアロゲル複合体の製造方法。
【請求項9】
繊維マットと、繊維マットの内部および表面に形成された
シリカエアロゲルとを含み、
50Hz~6,400Hzの周波数範囲で測定した吸音率を1/3オクターブバンドでデータ化して計算された周波数別の吸音係数の平均値である全体の平均吸音係数が0.41以上であ
り、
2,500Hz~6,400Hzの周波数範囲で測定した吸音率を1/3オクターブバンドでデータ化して計算された周波数別の吸音係数の平均値である高周波数平均吸音係数が0.44以上である、エアロゲル複合体。
(ただし、エアロゲル複合体が繊維およびナノサイズ多孔体の2成分からなる層3つが結合された3層以上の積層構造である場合を除く。)
【請求項10】
前記エアロゲル複合体は、常温熱伝導度が30.0mW/mK以下である、請求項
9に記載のエアロゲル複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年4月2日付けの韓国特許出願第10-2021-0043328号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、吸音率が向上して吸音素材として用いることができるエアロゲル複合体の製造方法およびこれにより製造されたエアロゲル複合体に関する。
【背景技術】
【0003】
吸音素材として主に使用されるガラス繊維マットまたはポリマーマットは、優れた断熱性能と吸音性能により、絶縁素材として幅広く使用されている。しかし、前記ガラス繊維マットまたはポリマーマットは、数ミクロン(μm)~数十ミクロン(μm)の直径を有する繊維とその他の空間にマクロポアを含むマットであるため、マットの厚さを増加させる方法以外には、断熱性能および吸音性能を向上させるのに限界が存在する。
【0004】
韓国登録特許公報第10-1391098号は、ガラス繊維マットの吸音性能を向上させるために、ガラス繊維をセルロース繊維および有機合成繊維とともに不織布で作製した吸音シートについて開示する。しかし、前記吸音シートは、平均気孔径が10μm~50μm水準と大きいため、断熱性能の向上は実質的に難しく、2,000Hz以上、特に、2,500Hz以上の高い周波数領域に対する吸音性能の向上は期待し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために導き出されたものであり、吸音率が向上して吸音素材として用いることができ、断熱性能まで確保することができるエアロゲル複合体の製造方法およびこれにより製造されたエアロゲル複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、エアロゲル複合体の製造方法およびこれにより製造されたエアロゲル複合体を提供する。
【0008】
(1)本発明は、触媒化したシリカゾルを繊維マットに0.1~1:1の体積比(触媒化したシリカゾル:繊維マット)で含浸し、ゲル化するステップ(S10)を含むエアロゲル複合体の製造方法を提供する。
【0009】
(2)本発明は、前記(1)において、前記(S10)ステップは、触媒化したシリカゾルを繊維マットに0.1~0.9:1の体積比(触媒化したシリカゾル:繊維マット)で含浸し、ゲル化して実施されるエアロゲル複合体の製造方法を提供する。
【0010】
(3)本発明は、前記(1)または(2)において、前記触媒化したシリカゾルは、シリカ前駆体、有機溶媒および水系溶媒を混合してシリカ前駆体組成物を製造するステップ(S1)と、有機溶媒、塩基触媒および疎水化剤を混合して触媒組成物を製造するステップ(S2)と、シリカ前駆体組成物および触媒組成物を混合して触媒化したシリカゾルを製造するステップ(S3)とを含んで製造されるエアロゲル複合体の製造方法を提供する。
【0011】
(4)本発明は、前記(3)において、前記(S1)ステップで製造されるシリカ前駆体組成物のシリカ濃度は、10kg/m3~100kg/m3であるエアロゲル複合体の製造方法を提供する。
【0012】
(5)本発明は、前記(3)または(4)において、前記(S1)ステップで製造されるシリカ前駆体組成物のシリカ濃度は、40kg/m3~70kg/m3であるエアロゲル複合体の製造方法を提供する。
【0013】
(6)本発明は、前記(1)~(5)のいずれか一つにおいて、前記エアロゲル複合体の製造方法は、前記(S10)ステップでゲル化した湿潤ゲル複合体を熟成するステップ(S20)と、前記(S20)ステップで熟成された湿潤ゲル複合体を乾燥してエアロゲル複合体を取得するステップ(S30)とを含むエアロゲル複合体の製造方法を提供する。
【0014】
(7)本発明は、前記(6)において、前記(S30)ステップで取得したエアロゲル複合体は、2nm~50nmの気孔径を有する気孔を含むエアロゲル複合体の製造方法を提供する。
【0015】
(8)本発明は、前記(1)~(7)のいずれか一つにおいて、前記繊維マットは、ガラス繊維マットであるエアロゲル複合体の製造方法を提供する。
【0016】
(9)本発明は、前記(1)~(8)のいずれか一つにおいて、前記繊維マットは、100μm~1,000μmの気孔径を有する気孔を含むエアロゲル複合体の製造方法を提供する。
【0017】
(10)本発明は、繊維マットと、繊維マットの内部および表面に形成されたエアロゲルとを含み、Impedance Tube P-S40-20を用いて、50Hz~6,400Hzの周波数範囲で測定した吸音率を1/3オクターブバンドでデータ化して計算された周波数別の吸音係数の平均値である全体の平均吸音係数が0.41以上であるエアロゲル複合体を提供する。
【0018】
(11)本発明は、前記(10)において、前記エアロゲル複合体は、Impedance Tube P-S40-20を用いて、2,500Hz~6,400Hzの周波数範囲で測定した吸音率を1/3オクターブバンドでデータ化して計算された周波数別の吸音係数の平均値である高周波数平均吸音係数が0.35以上であるエアロゲル複合体を提供する。
【0019】
(12)本発明は、前記(10)または(11)において、前記エアロゲル複合体は、常温熱伝導度が30.0mW/mK以下であるエアロゲル複合体を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のエアロゲル複合体の製造方法により製造されたエアロゲル複合体は、繊維マットのマクロポアが減少し、メソポアが増加して、吸音率が向上するとともに、断熱性能も向上する効果がある。
【0021】
本発明のエアロゲル複合体は、吸音性能および断熱性能に優れ、吸音素材として有用である。
【0022】
また、本発明のエアロゲル複合体は、高周波数領域での吸音性能が特に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例1~3で製造されたエアロゲル複合体および比較例1のガラス繊維マットに対して、Impedance Tube P-S40-20を用いて、50Hz~6,400Hzの周波数範囲で測定した吸音率を1/3オクターブバンド(third-one Octave band)でデータ化して周波数別の吸音係数を計算し、計算した周波数別の吸音係数を図示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。
【0025】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0026】
本発明において、用語「メソポア」および「マクロポア」は、IUPAC勧告にしたがって区分される気孔径を有する気孔を意味し、メソポアは、2nm~50nmの気孔径を有する気孔を意味し、マクロポアは、50nm超の気孔径を有する気孔を意味する。
【0027】
本発明は、エアロゲル複合体の製造方法を提供する。前記エアロゲル複合体の製造方法により製造されたエアロゲル複合体は、吸音率が向上し、吸音素材として有用であることができる。
【0028】
本発明の一実施形態によると、前記エアロゲル複合体の製造方法は、触媒化したシリカゾルを繊維マットに0.1~1:1の体積比(触媒化したシリカゾル:繊維マット)で含浸し、ゲル化するステップ(S10)を含むことができる。
【0029】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップは、エアロゲル複合体を形成するためのステップとして、繊維マットに触媒化したシリカゾルを含浸し、ゲル化して、繊維マットの内部および表面にエアロゲルを形成するためのステップであることができる。
【0030】
本発明の一実施形態によると、前記「含浸」は、繊維マットに流動性のある触媒化したシリカゾルを投入して実施されることができ、この際、繊維マット内部の気孔に触媒化したシリカゾルが浸透して実施されることができる。
【0031】
本発明の一実施形態によると、前記「ゲル化」は、繊維マットに含浸された触媒化したシリカゾルのゲル化によって実施されることができ、触媒化したシリカゾルが含浸された繊維マットを放置して実施されることができる。前記ゲル化は、前記含浸と同時に実施されることができる。
【0032】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップは、反応容器に触媒化したシリカゾルおよび繊維マットを投入して実施されることができ、またはロールツーロール工程によってコンベアベルトで移動する繊維マット上に触媒化したシリカゾルを投入して実施されることができる。
【0033】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップが、反応容器に触媒化したシリカゾルおよび繊維マットを投入して実施される場合、反応容器に触媒化したシリカゾルおよび繊維マットを投入する順序は特に制限されない。具体的な例として、前記(S10)ステップの含浸は、反応容器に繊維マットを投入した後、触媒化したシリカゾルを投入する方法と、反応容器に触媒化したシリカゾルを投入した後、繊維マットを投入する方法と、反応容器に触媒化したシリカゾルを投入しながら繊維マットを投入する方法のいずれか一つの方法で投入されることができる。中でも、より均一な含浸を誘導する面で、繊維マットを投入した後、触媒化したシリカゾルを投入する方法が好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップは、上述のように、触媒化したシリカゾルを繊維マットに0.1~1:1の体積比(触媒化したシリカゾル:繊維マット)で含浸し、ゲル化して実施されることができる。このように、繊維マットに含浸される触媒化したシリカゾルの体積比を調節することで、繊維マット内にエアロゲルの形成によって繊維マットのマクロポアを減少させながらメソポアを増加させ、エアロゲル複合体の吸音性能を向上させるとともに、繊維マットの内部および表面に形成されたエアロゲルから断熱性能を向上させることができる効果がある。
【0035】
本発明の一実施形態によると、繊維マットに対して断熱性能を所定水準以上向上させるとともに、吸音性能、特に高周波数(High frequency、2,500Hz以上を意味)領域での吸音性能をより改善するための観点で、前記触媒化したシリカゾルは繊維マットに0.1以上、0.2以上、または0.3以上の体積比で含浸させることができ、1.0以下、0.9以下、0.8以下、または0.7以下の体積比で含浸させることがある。具体的な例として、前記(S10)ステップは、触媒化したシリカゾルを繊維マットに0.1~0.9:1、0.2~0.8、または0.3~0.7の体積比(触媒化したシリカゾル:繊維マット)で含浸し、ゲル化して実施されることができ、この場合、繊維マットに対して断熱性能を所定水準以上に確保するとともに、高周波数での吸音性能をより向上させることができる。
【0036】
本発明の一実施形態によると、前記触媒化したシリカゾルは、シリカ前駆体、有機溶媒および水系溶媒を混合してシリカ前駆体組成物を製造するステップ(S1)と、有機溶媒、塩基触媒および疎水化剤を混合して触媒組成物を製造するステップ(S2)と、シリカ前駆体組成物および触媒組成物を混合して触媒化したシリカゾルを製造するステップ(S3)とを含んで製造されることができる。
【0037】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップで製造されるシリカ前駆体組成物は、前記(S2)ステップで製造される触媒組成物との混合によって、前記(S3)ステップで製造される触媒化したシリカゾルのゲル化反応により最終的にシリカエアロゲルを製造するためのシリカ前駆体組成物であることができる。
【0038】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップのシリカ前駆体は、前記(S10)ステップによりゲル化されて製造されるエアロゲルがシリカを含有するようにするためのものであり、テトラメチルオルトシリケート(tetra methyl ortho silicate;TMOS)、テトラエチルオルトシリケート(tetra ethyl ortho silicate;TEOS)、メチルトリエチルオルトシリケート(methyl triethyl ortho silicate)、ジメチルジエチルオルトシリケート(dimethyl diethyl ortho silicate)、テトラプロピルオルトシリケート(tetra propyl ortho silicate)、テトライソプロピルオルトシリケート(tetra isopropyl ortho silicate)、テトラブチルオルトシリケート(tetra butyl ortho silicate)、テトラセカンダリーブチルオルトシリケート(tetra secondarybutyl ortho silicate)、テトラターシャリーブチルオルトシリケート(tetra tertiarybutyl ortho silicate)、テトラヘキシルオルトシリケート(tetra hexyl ortho silicate)、テトラシクロヘキシルオルトシリケート(tetra cyclohexyl ortho silicate)およびテトラドデシルオルトシリケート(tetra dodecyl ortho silicate)からなる群から選択される1種以上であることができ、前記化合物の前加水分解物(pre-hydrolysate)であることができる。ここで、前記前加水分解物を使用する場合、酸の添加が不要であり、シリカ前駆体の加水分解工程を短縮または省略することができ、表面改質効果を促進することができる。具体的な例として、前記シリカ前駆体は、前加水分解されたポリエチルシリケート(HTEOS)であることができ、前記前加水分解されたポリエチルシリケート(HTEOS)は、広い分子量分布を有する前加水分解されたエチルポリシリケートオリゴマーとして、前加水分解程度(水和度)を異ならせてテトラエチルオルトシリケート(TEOS)からオリゴマー形態に合成する時に、ゲル化時間などの物性を調節することができることから、ユーザの反応条件に合わせて容易に適用されることができる。
【0039】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップの有機溶媒は、アルコールであることができる。前記アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノールなどの1価アルコール;またはグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびソルビトールなどの多価アルコールであることができ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。中でも、水系溶媒およびエアロゲルとの混和性を考慮すると、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノールなどの炭素数1~6の1価アルコールであることができ、具体的な例として、エタノールであることができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップの水系溶媒は、水であることができ、具体的な例として、蒸留水であることができる。
【0041】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップで製造されるシリカ前駆体組成物のシリカ濃度は、10kg/m3~100kg/m3であることができる。前記シリカ濃度は、シリカ前駆体に含まれたシリカのシリカ前駆体組成物に対する濃度として、シリカ前駆体、有機溶媒および水系溶媒の組成から調節されることができる。具体的な例として、前記(S1)ステップで製造されるシリカ前駆体組成物のシリカ濃度は、20kg/m3~80kg/m3、30kg/m3~70kg/m3、30kg/m3~60kg/m3、または35kg/m3~45kg/m3であることができ、この範囲内で、繊維マット内にエアロゲルの形成により繊維マットのマクロポアを減少させながらメソポアを増加させて、エアロゲル複合体の吸音性能を向上させるとともに、繊維マットの内部および表面に形成されたエアロゲルから断熱性能を向上させることができる効果がある。
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップは、(S1)ステップにより製造されるシリカ組成物前駆体のシリカ濃度を満たすために、前記シリカ前駆体、有機溶媒および水系溶媒を1:0.1~1.5:0.1~0.5、1:0.5~1.5:0.1~0.4、または1:0.5~1.2:0.1~0.3の重量比で混合して実施されることができる。
【0043】
本発明の一実施形態によると、前記(S2)ステップで製造される触媒組成物は、前記(S1)ステップで製造されるシリカ前駆体組成物との混合により、前記(S3)ステップで製造される触媒化したシリカゾルのゲル化反応を誘導して、最終的にシリカエアロゲルを製造するための触媒組成物であることができる。
【0044】
本発明の一実施形態によると、前記(S2)ステップの有機溶媒は、アルコールであることができる。前記アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノールなどの1価アルコール;またはグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびソルビトールなどの多価アルコールであることができ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。中でも、水系溶媒およびエアロゲルとの混和性を考慮すると、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノールなどの炭素数1~6の1価アルコールであることができ、具体的な例として、エタノールであることができる。
【0045】
本発明の一実施形態によると、前記(S2)ステップの塩基触媒は、触媒化したシリカゾルのゲル化が行われるようにpHの条件を形成することができるようにする塩基触媒であることができ、一例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;または水酸化アンモニウムのような有機塩基が挙げられる。
【0046】
本発明の一実施形態によると、前記有機塩基は、水酸化アンモニウム(NH4OH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、モノイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、コリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノエタノール、2-(エチルアミノ)エタノール、2-(メチルアミノ)エタノール、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ニトリルロータリエタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、1-アミノ-2-プロパノール、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミンおよびジブタノールアミンなどからなる群から選択される1種以上であることができ、具体的な例として、前記水酸化アンモニウム(アンモニア水;NH4OH)であることができる。
【0047】
本発明の一実施形態によると、前記(S2)ステップの疎水化剤は、アルキルシラン化合物であることができ、具体的な例として、疎水化を誘導するアルキル基と、湿潤ゲルの「-Si-O-」官能基と反応することができるシラン官能基を含むアルキルシラン化合物であることができる。さらに具体的な例として、前記疎水化剤は、トリメチルエトキシシラン(trimethylethoxysilane、TMES)、トリメチルシラノール(TMS)、トリメチルクロロシラン(Trimethylchlorosilane、TMCS)、メチルトリメトキシシラン(methyltrimethoxysilane、MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、ジメチルジエトキシシラン(DMDEOS)、エチルトリエトキシシラン(ethyltriethoxysilane)およびフェニルトリエトキシシラン(phenyltriethoxysilane)からなる群から選択される1種以上であることができる。前記アルキルシラン化合物は、共同前駆体(co-precursor)として、前記シリカ前駆体のゲル化反応にともに参加することができ、これにより、ゲル化により形成された湿潤ゲル複合体を疎水化することができる。すなわち、アルキルシラン化合物は、前記(S10)ステップのゲル化時に、シリカ前駆体とともにゲル化されることができる。また、ゲル化されず、ゲルの中に閉じ込められたアルキルシラン化合物は、熟成時に、アルキル-Si-O-Siネットワーキングを形成して、湿潤ゲル複合体を疎水化することができる。
【0048】
本発明の一実施形態によると、前記(S2)ステップは、前記有機溶媒、塩基触媒および疎水化剤を1:0.01~0.1:0.1~0.5、1:0.02~0.08:0.1~0.3、または1:0.04~0.06:0.1~0.2の重量比で混合して実施されることができる。
【0049】
本発明の一実施形態によると、前記(S3)ステップは、前記(S10)ステップで繊維マットに含浸およびゲル化される触媒化したシリカゾルを製造するためのステップとして、前記(S1)ステップで製造されたシリカ前駆体組成物および前記(S2)ステップで製造された触媒組成物を混合して実施されることができる。
【0050】
本発明の一実施形態によると、前記(S3)ステップは、シリカ前駆体組成物および触媒組成物を1:0.1~10.0、1:0.5~5.0、1:0.7~2.0、または1:0.8~1.2の体積比で混合して実施されることができる。
【0051】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップの含浸およびゲル化により製造されたエアロゲル複合体は、溶媒を含むゲル化した湿潤ゲル複合体の形態で取得されることができる。これにより、前記エアロゲル複合体の製造方法は、乾燥したエアロゲル複合体を取得するために、前記(S10)ステップでゲル化した湿潤ゲル複合体を熟成させるステップ(S20)と、前記(S20)ステップで熟成された湿潤ゲル複合体を乾燥してエアロゲル複合体を取得するステップ(S30)とを含むことができる。
【0052】
本発明の一実施形態によると、前記(S20)ステップは、ゲル化した湿潤ゲル複合体を適正温度で放置して、化学的変化が完全に行われるようにするための熟成ステップとして、ゲル化によって形成された網状構造をより強固に形成させることができ、エアロゲル複合体の機械的安定性を向上させることができる。
【0053】
本発明の一実施形態によると、前記(S20)ステップは、前記ゲル化した湿潤ゲル複合体をそれ自体で適正温度で放置して実施されることができ、他の例として、前記湿潤ゲルブランケット複合体の存在下で、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、トリエチルアミン、ピリジンなどの塩基触媒を有機溶媒に1~10%の濃度で希釈した溶液を添加して実施されることができる。このような場合、エアロゲル内にSi-O-Si結合(bonding)を最大限に誘導して、シリカゲルの網状構造をより強固にし、以降行われる乾燥工程で気孔構造の維持をより容易にする効果がある。この際、有機溶媒は、上述のアルコールであることができ、具体的には、エタノールを含むことができる。
【0054】
本発明の一実施形態によると、前記(S20)ステップは、気孔構造の強化のために、30℃~70℃、40℃~70℃、または50℃~70℃の温度で、1時間~30時間、10時間~30時間、または20時間~25時間放置して実施されることができ、この範囲内で、生産性の低下を防止し、且つ蒸発による溶媒の損失を防止して、生産コストの増加を防止することができる。
【0055】
本発明の一実施形態によると、前記(S20)ステップは、ゲル化した湿潤ゲル複合体を回収した後、別の反応容器で行うこともでき、または前記(S10)ステップが実施された反応容器の内部で実施されることができる。
【0056】
本発明の一実施形態によると、前記(S30)ステップは、乾燥されたエアロゲル複合体を取得するために、前記(S20)ステップで熟成された湿潤ゲル複合体を乾燥してエアロゲル複合体を取得するステップとして、前記乾燥は、熟成されたゲルの気孔構造をそのまま維持しながら溶媒を除去するために、超臨界乾燥または常圧乾燥により実施されることができる。
【0057】
本発明の一実施形態によると、前記超臨界乾燥は、超臨界二酸化炭素を用いて実施されることができる。二酸化炭素(CO2)は、常温および常圧では気体状態であるが、臨界点(supercritical point)と称する所定の温度および高圧の限界を超えると、蒸発過程が行われず気体と液体の区別ができない臨界状態になり、この臨界状態にある二酸化炭素を超臨界二酸化炭素とする。超臨界二酸化炭素は、分子の密度は液体に近いが、粘性度は低くて気体に近い性質を有し、拡散が速く、熱伝導性が高くて乾燥効率が高く、乾燥工程時間を短縮することができる。前記超臨界乾燥は、超臨界乾燥反応器内に熟成した湿潤ゲル複合体を投入し、液体状態の二酸化炭素を満たし、湿潤ゲル内部のアルコール溶媒を二酸化炭素で置換する溶媒置換工程を実施する。この後、0.1℃/min~1℃/minの昇温速度で、40℃~80℃、50℃~80℃、または60℃~80℃に昇温した後、二酸化炭素が超臨界状態になる圧力以上の圧力、具体的には、100bar~150barの圧力を維持して、二酸化炭素(CO2)の超臨界状態で、所程の時間、具体的には20分~1時間維持する。一般的に、二酸化炭素は、31℃の温度、73.8barの圧力で超臨界状態になる。二酸化炭素が超臨界状態になる所程の温度および所程の圧力で、2時間~12時間、より具体的には2時間~6時間維持した後、徐々に圧力を除去して超臨界乾燥工程を完了し、エアロゲル複合体を取得することができる。ここで、超臨界乾燥により湿潤ゲル複合体から除去された有機溶媒などの溶媒は、超臨界乾燥反応器と連結された分離器を介して別に回収されることができる。
【0058】
本発明の一実施形態によると、前記常圧乾燥は、70℃~200℃の温度および常圧(1±0.3atm)下で、熱風乾燥、赤外線乾燥(IR drying)などの通常の方法により実施されることができる。
【0059】
本発明の一実施形態によると、前記(S30)ステップで取得したエアロゲル複合体は、2nm~50nmの気孔径を有する気孔を含むことができ、具体的な例として、2nm~50nmの気孔径を有する気孔の体積比が、100μm~1,000μmの気孔径を有する気孔より大きいことができ、これにより、繊維マット内にエアロゲルの形成によって繊維マットのマクロポアを減少させながらメソポアを増加させ、エアロゲル複合体の吸音性能を向上させるとともに、繊維マットの内部および表面に形成されたエアロゲルから断熱性能を向上させることができる効果がある。
【0060】
本発明の一実施形態によると、前記繊維マットは、吸音素材として使用されることができるガラス繊維マットであることができ、具体的な例として、1μm超の直径、1μm~100μmの直径を有する繊維またはガラス繊維で形成された繊維マットであることができ、また、前記繊維マットは、前記繊維またはガラス繊維の間に50nm超の気孔径、具体的な例として、100μm~1,000μmの気孔径を有する気孔を有する気孔、すなわち、マクロポアを含むことができる。
【0061】
本発明のエアロゲル複合体の製造方法によると、前記のように、それ自体で吸音素材として使用されることができる繊維マット、具体的には、ガラス繊維マットに対してエアロゲル複合体を形成することで、繊維マットのマクロポアを減少させながらメソポアを増加させて、吸音性能および断熱性能を同時に向上させることができる。
【0062】
本発明は、エアロゲル複合体を提供する。前記エアロゲル複合体は、前記エアロゲル複合体の製造方法により製造されたことができ、これにより、吸音率が向上して、吸音素材として有用であることができる。
【0063】
本発明の一実施形態によると、前記エアロゲル複合体は、繊維マットと、繊維マットの内部および表面に形成されたエアロゲルとを含み、Impedance Tube P-S40-20を用いて、50Hz~6,400Hzの周波数範囲で測定した吸音率を1/3オクターブバンドでデータ化して計算された周波数別の吸音係数の平均値である全体の平均吸音係数が0.41以上であることができる。
【0064】
本発明の一実施形態によると、前記繊維マットは、上記エアロゲル複合体の製造方法において記載した繊維マットと同一であることができ、前記エアロゲルは、上記エアロゲル複合体の製造方法により形成されたエアロゲルであることができる。
【0065】
本発明の一実施形態によると、前記エアロゲル複合体は、繊維マット由来の1μm超の直径、1μm~100μmの直径を有する繊維またはガラス繊維で形成された100μm~1,000μmの気孔径を有する気孔を含む繊維マット成分と、繊維マット内のマクロポア、具体的な例として、100μm~1,000μmの気孔径を有する気孔にエアロゲルが形成されてメソポアになった2nm~50nmの気孔径を有する気孔を含むことができる。このように、繊維マット内のエアロゲルを形成して、マクロポアを減少させながらメソポアを増加させると、繊維マット内の全体的な気孔の平均直径が減少して吸音性能を向上させることができ、また、繊維マット内に形成されたエアロゲルにより断熱性能も向上する。
【0066】
本発明の一実施形態によると、前記エアロゲル複合体は繊維マット由来の50nm超の気孔径を有する気孔、具体的な例として、100μm~1,000μmの気孔径を有する気孔、すなわち、マクロポアを一部含むことができる。ただ、この場合にも、前記エアロゲル複合体は、2nm~50nmの気孔径を有する気孔、すなわち、メソポアの体積比が50nm超の気孔径を有する気孔、すなわち、マクロポアより大きいことができ、これにより、繊維マット内にエアロゲルの形成によって繊維マットのマクロポアを減少させながらメソポアを増加させ、エアロゲル複合体の吸音性能を向上させるとともに、繊維マットの内部および表面に形成されたエアロゲルから断熱性能を向上させることができる効果がある。
【0067】
本発明の一実施形態によると、前記エアロゲル複合体は、Impedance Tube P-S40-20を用いて、50Hz~6,400Hzの周波数範囲で測定した吸音率を1/3オクターブバンドでデータ化して計算された周波数別の吸音係数の平均値である全体の平均吸音係数が0.41以上、0.41~0.60、または0.43~0.54であることができ、この範囲内で、吸音性能に優れるものと考えられる。
【0068】
本発明の一実施形態によると、前記エアロゲル複合体は、Impedance Tube P-S40-20を用いて、2,500Hzの周波数で測定した吸音率を1/3オクターブバンドでデータ化して計算された吸音係数が0.50以上、0.51以上、または0.59以上であることができ、また、1.00以下、0.95以下、または0.91以下であることができる。また、前記エアロゲル複合体は、高周波数領域での吸音性能を確保する観点で、前記2,500Hzの周波数の吸音係数が0.60以上、0.65以上、0.70以上、0.71以上、または0.82以上であることができる。
【0069】
本発明の一実施形態によると、前記エアロゲル複合体は、Impedance Tube P-S40-20を用いて、3,150Hzの周波数で測定した吸音率を1/3オクターブバンドでデータ化して計算された吸音係数が0.35以上、0.39以上、または0.41以上であることができ、また、1.00以下、0.95以下、0.90以下または0.89以下であることができる。また、前記エアロゲル複合体は、高周波数領域での吸音性能を確保する観点で、前記3,150Hzの周波数の吸音係数が0.47以上、0.52以上、0.60以上、0.70以上、または0.77以上であることができる。
【0070】
本発明の一実施形態によると、前記エアロゲル複合体は、Impedance Tube P-S40-20を用いて、4,000Hzの周波数で測定した吸音率を1/3オクターブバンドでデータ化して計算された吸音係数が0.28以上、0.31以上、または0.36以上であることができ、また、1.00以下、0.95以下、0.90以下または0.87以下であることができる。また、前記エアロゲル複合体は、高周波数領域での吸音性能を確保する観点で、前記4,000Hzの周波数の吸音係数が0.37以上、0.40以上、0.50以上、0.60以上、または0.61以上であることができる。
【0071】
本発明の一実施形態によると、前記エアロゲル複合体は、Impedance Tube P-S40-20を用いて、5,000Hzの周波数で測定した吸音率を1/3オクターブバンドでデータ化して計算された吸音係数が0.25以上、0.27以上、または0.35以上であることができ、また、1.00以下、0.90以下、0.80以下または0.79以下であることができる。また、前記エアロゲル複合体は、高周波数領域での吸音性能を確保する観点で、前記5,000Hzの周波数の吸音係数が0.52以上、0.53以上、0.60以上、0.67以上、または0.69以上であることができる。
【0072】
本発明の一実施形態によると、前記エアロゲル複合体は、Impedance Tube P-S40-20を用いて、6,300Hzの周波数で測定した吸音率を1/3オクターブバンドでデータ化して計算された吸音係数が0.25以上、0.35以上、または0.36以上であることができ、も、1.00以下、0.90以下、0.80以下または0.74以下であることができる。また、前記エアロゲル複合体は高周波数領域での吸音性能を確保する観点で、前記6,300Hzの周波数の吸音係数が0.43以上、0.50以上、0.60以上、0.62以上、または0.68以上であることができる。
【0073】
本発明の一実施形態によると、前記エアロゲル複合体は、Impedance Tube P-S40-20を用いて、2,500Hz~6,400Hzの周波数範囲で測定した吸音率を1/3オクターブバンドでデータ化して計算された周波数別の吸音係数の平均値である高周波数平均吸音係数が0.35以上、0.44以上、または0.48以上であることができ、また、1.00以下、0.95以下、0.90以下、0.85以下、または0.82以下であることができる。また、前記エアロゲル複合体は高周波数領域での吸音性能を確保する観点で、前記高周波数平均吸音係数が0.53以上、0.60以上、0.65以上、または0.69以上であることができる。
【0074】
本発明の一実施形態によると、前記エアロゲル複合体は、吸音性能だけでなく、断熱性能にも優れ、常温熱伝導度が30.0mW/mK以下、1.0mW/mK~30.0mW/mK、10.0mW/mK~29.0mW/mK、または18.3mW/mK~28.8mW/mKであることができ、この範囲内で、断熱性能が十分に確保されると考えられる。
【0075】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施するように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0076】
実施例
実施例1
反応器に前加水分解されたTEOS(シリカ含量:20重量%、HTEOS)、エタノールおよび蒸留水を1:0.9:0.22の重量比でそれぞれ添加し、混合して、シリカ前駆体組成物を製造した。ここで、シリカ前駆体組成物内のシリカ濃度は、40kg/m3であった。これと同時に、他の反応器にエタノール、アンモニア水(濃度:30重量%)およびトリメチルエトキシシラン(TMES)を1:0.054:0.154の重量比でそれぞれ添加し、混合して、触媒組成物を製造した。前記製造されたシリカ前駆体組成物と触媒組成物を1:1の体積比で混合して、触媒化したシリカゾルを製造した。
【0077】
次いで、反応容器に100μm~1,000μmの気孔径を有する気孔を含むガラス繊維マット(Hyundai Fiber社製)を投入し、前記触媒化したシリカゾルをガラス繊維マット体積に対して0.3:1の体積比(触媒化したシリカゾル:ガラス繊維マット)で含浸させ、10分後、ゲル化して湿潤ゲル複合体を製造した。次に、前記ゲル化した湿潤ゲル複合体を70℃のチャンバで24時間放置して熟成させた。熟成が完了した湿潤ゲル複合体を7.2L超臨界抽出器(extractor)に入れ、二酸化炭素(CO2)を注入した。次に、抽出器内の温度を75℃に昇温し、75℃、150barに達した時に、20分間、0.5L/minの速度で、二酸化炭素を注入および排出し、20分間二酸化炭素の注入を停止した状態で維持する過程を4回繰り返した。二酸化炭素の注入および排出時に、分離器の下端を介してエタノールを回収した。次に、2時間にわたり二酸化炭素を排出(venting)した。超臨界乾燥が完了した後、乾燥が完了したエアロゲル複合体を取得した
【0078】
実施例2
前記実施例1で、前記触媒化したシリカゾルをガラス繊維マット体積に対して0.7:1の体積比(触媒化したシリカゾル:ガラス繊維マット)で含浸させ、10分後、ゲル化して湿潤ゲル複合体を製造した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。
【0079】
実施例3
前記実施例1で、前記触媒化したシリカゾルをガラス繊維マット体積に対して1:1の体積比(触媒化したシリカゾル:ガラス繊維マット)で含浸させ、10分後、ゲル化して湿潤ゲル複合体を製造した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。
【0080】
実施例4
前記実施例1で、シリカ前駆体組成物の製造時に、シリカ前駆体組成物内のシリカ濃度が50kg/m3になるように、反応器に前加水分解されたTEOS(シリカ含量:20重量%、HTEOS)、エタノールおよび蒸留水の重量比を調節してシリカ前駆体組成物を製造した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。
【0081】
実施例5
前記実施例4で、前記触媒化したシリカゾルをガラス繊維マット体積に対して0.7:1の体積比(触媒化したシリカゾル:ガラス繊維マット)で含浸させ、10分後、ゲル化して湿潤ゲル複合体を製造した以外は、前記実施例4と同じ方法で実施した。
【0082】
実施例6
前記実施例4で、前記触媒化したシリカゾルをガラス繊維マット体積に対して1:1の体積比(触媒化したシリカゾル:ガラス繊維マット)で含浸させ、10分後、ゲル化して湿潤ゲル複合体を製造した以外は、前記実施例4と同じ方法で実施した。
【0083】
実施例7
前記実施例1で、シリカ前駆体組成物の製造時に、シリカ前駆体組成物内のシリカ濃度が70kg/m3になるように、反応器に前加水分解されたTEOS(シリカ含量:20重量%、HTEOS)、エタノールおよび蒸留水の重量比を調節してシリカ前駆体組成物を製造した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。
【0084】
実施例8
前記実施例7で、前記触媒化したシリカゾルをガラス繊維マット体積に対して0.7:1の体積比(触媒化したシリカゾル:ガラス繊維マット)で含浸させ、10分後、ゲル化して湿潤ゲル複合体を製造した以外は、前記実施例7と同じ方法で実施した。
【0085】
実施例9
前記実施例7で、前記触媒化したシリカゾルをガラス繊維マット体積に対して1:1の体積比(触媒化したシリカゾル:ガラス繊維マット)で含浸させ、10分後、ゲル化して湿潤ゲル複合体を製造した以外は、前記実施例7と同じ方法で実施した。
【0086】
比較例1
100μm~1,000μmの気孔径を有する気孔を含むガラス繊維マット(Hyundai Fiber社製)をそのまま使用した。
【0087】
実験例
前記実施例1~9および比較例1で製造されたエアロゲル複合体またはガラス繊維マットに対して、周波数別の吸音係数、平均吸音係数および常温熱伝導度を測定し、下記表1に示した。
【0088】
*周波数別の吸音係数および平均吸音係数:エアロゲル複合体を30cm×30cmに裁断して試験片を製造し、Bruel&Kjaer社製のImpedance Tube P-S40-20を用いて、50Hz~6,400Hzの周波数範囲で測定した吸音率を1/3オクターブバンドでデータ化して周波数別の吸音係数を計算した。これにより、全体の平均値に対する全体の平均吸音係数と、高周波数範囲(2,500Hz~6,300Hz)での平均値に対する高周波数平均吸音係数をそれぞれ計算した。
【0089】
また、実施例1~3で製造されたエアロゲル複合体および比較例1のガラス繊維マットに対して前記計算された周波数別の吸音係数をグラフに図示し、
図1に示した。
【0090】
*常温(23±5℃)熱伝導度(mW/mK):エアロゲル複合体またはガラス繊維マットを30cm×30cmに裁断して試験片を製造し、NETZSCH社製のHFM 436 Lambda装備を用いて、常温(23±5℃)熱伝導度を測定した。
【0091】
【0092】
前記表1と、
図1に示したように、本発明により製造された実施例1~9のエアロゲル複合体は、比較例1のガラス繊維マットに比べて、全体の平均吸音係数が高くて吸音性能が向上し、常温熱伝導度が低くて断熱性能に優れることを確認することができた。
【0093】
特に、エアロゲル複合体の製造時に、触媒化したシリカゾルを繊維マットに0.3:1および0.7:1の体積比(触媒化したシリカゾル:繊維マット)で含浸し、ゲル化して製造した実施例1、2、4、5、7および8の場合、比較例1に比べて、十分な断熱性能を確保するとともに、それぞれの実施例と同じシリカ濃度を有し、且つ触媒化したシリカゾルを繊維マットに1:1の体積比(触媒化したシリカゾル:繊維マット)で含浸し、ゲル化して製造した実施例3、6および9に比べて、いずれも高周波数範囲での各周波数別の吸音係数と、高周波数平均吸音係数がより向上することを確認することができた。
【0094】
このような結果から、本発明のエアロゲル複合体の製造方法によりエアロゲル複合体を製造する場合、繊維マットのマクロポアが減少し、メソポアが増加して吸音率が向上するとともに、断熱性能も向上することを確認することができ、これにより、本発明のエアロゲル複合体は、吸音性能および断熱性能に優れ、吸音素材として有用であることを確認することができた。