(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
G03G15/20 555
(21)【出願番号】P 2018225168
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-09-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2017236431
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
【合議体】
【審判長】川俣 洋史
【審判官】門 良成
【審判官】殿川 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-59508(JP,A)
【文献】特開2016-18127(JP,A)
【文献】特開2017-198457(JP,A)
【文献】特開2009-244595(JP,A)
【文献】特開2017-9848(JP,A)
【文献】特開2008-185955(JP,A)
【文献】特開2008-192398(JP,A)
【文献】特開平11-194651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の長手方向に配設され、互いに電気的に並列に接続された複数の抵抗発熱体と、
前記複数の抵抗発熱体に電力を供給するように構成された電力制御手段と、
前記複数の抵抗発熱体のうちの一つの第1抵抗発熱体のみと前記長手方向の幅内で対向する第1温度検知手段と、
前記複数の抵抗発熱体のうちの前記第1抵抗発熱体と異なる一つの第2抵抗発熱体のみと前記長手方向の幅内で対向すると共に当該第2抵抗発熱体以外の抵抗発熱体とは前記長手方向の幅内で対向しないように配設された第2温度検知手段と、
前記第1温度検知手段で検知された結果
のみに基づいて、前記第1温度検知手段によって検知される温度が第1の所定温度になるように前記複数の抵抗発熱体が加熱されるよう前記電力制御手段からの電力の供給を制御し、かつ、前記第2抵抗発熱体を含む複数の抵抗発熱体が加熱され、前記第2温度検知手段によって検知された温度が第2の所定温度に到達したことが検知されたことに対応して前記電力制御手段から前記複数の抵抗発熱体の全てに供給される電力を遮断するように構成された制御部と、
を有し、
前記第1抵抗発熱体と前記第2抵抗発熱体との間に、前記第1抵抗発熱体と前記第2抵抗発熱体とは異なる抵抗発熱体を
有し、
前記複数の抵抗発熱体の温度を検知する温度検知手段は、前記第1温度検知手段と前記第2温度検知手段の2つのみであり、前記第2温度検知手段は、前記長手方向でもっとも端にある抵抗発熱体である前記第2抵抗発熱体に対向して配置されている
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、前記第2温度検知手段は前記第1温度検知手段と同種の温度検知手段であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
基材と、
前記基材の長手方向に配設され、互いに電気的に並列に接続された複数の抵抗発熱体と、
前記複数の抵抗発熱体のうちの一つの第1抵抗発熱体のみと前記長手方向の幅内で対向する第1温度検知手段と、
前記複数の抵抗発熱体のうちの前記第1抵抗発熱体と異なる一つの第2抵抗発熱体のみと前記長手方向の幅内で対向すると共に当該第2抵抗発熱体以外の抵抗発熱体とは前記長手方向の幅内で対向しないように配設された第2温度検知手段と、
前記第1温度検知手段を前記基材に付勢する力を発生する第1弾性部材と、を有し、
前記第1抵抗発熱体と前記第2抵抗発熱体との間に、前記第1抵抗発熱体と前記第2抵抗発熱体とは異なる抵抗発熱体を有し、
前記複数の抵抗発熱体の温度を検知する温度検知手段は、前記第1温度検知手段と前記第2温度検知手段の2つのみであり、前記第2温度検知手段は、前記長手方向でもっとも端にある抵抗発熱体である前記第2抵抗発熱体に対向して配置されており、
前記第1温度検知手段で検知された結果
のみに基づいて前記第1温度検知手段によって検知される温度が第1の所定温度になるように前記複数の抵抗発熱体が加熱され、かつ、前記第2抵抗発熱体を含む複数の抵抗発熱体が加熱され、前記第2温度検知手段によって検知された温度が第2の所定温度に到達したことが検知されたことに対応して前記複数の抵抗発熱体の全てに供給される電力が遮断されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1の画像形成装置において、前記第1温度検知手段は、前記複数の抵抗発熱体のうちの1つの上に位置決めされることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1の画像形成装置において、前記第2温度検知手段は、前記基材の長手方向の端部領域に配置されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1の画像形成装置において、前記複数の抵抗発熱体は、正の抵抗温度特性を有する抵抗材料からなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1の画像形成装置において、前記複数の抵抗発熱体の隣接する抵抗発熱体の少なくとも一部は、前記基材の長手方向で互いにオーバーラップしていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1の画像形成装置において、前記基材と前記複数の抵抗発熱体とを有する定着装置は、
加圧回転体と、
前記加圧回転体との間に定着ニップを形成し、当該定着ニップを通過した記録媒体上に現像剤を定着させるニップ形成部材と、
筒状のベルト部材と、
を有する画像形成装置
【請求項9】
請求項8の画像形成装置において、前記複数の抵抗発熱体は、前記ベルト部材の内側に配置され、前記ベルト部材は、前記定着ニップにおいて前記ニップ形成部材と前記加圧回転体で挟持されながら前記複数の抵抗発熱体の周りを回転させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項8の画像形成装置において、前記ベルト部材の熱は、前記加圧回転体を介して前記定着ニップに伝達されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1の画像形成装置において、さらに、現像剤で像を形成する画像形成部材と、記録媒体を前記画像形成装置に供給する記録媒体供給部と、を有し、前記基材と前記複数の抵抗発熱体とを有する定着装置は前記記録媒体上に像を定着させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項1の画像形成装置において、前記第1温度検知手段と前記第2温度検知手段はそれぞれサーミスタであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1の画像形成装置において、前記複数の抵抗発熱体は8つの部分に分かれていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項1の画像形成装置において、前記複数の抵抗発熱体は、折り返し蛇行状の発熱パターンで形成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項1の画像形成装置において、前記基材は窒化アルミニウム製であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項1の画像形成装置において、前記制御部は、前記複数の抵抗発熱体の全てを加熱するように、前記電力制御手段を制御するように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項3の画像形成装置において、さらに、前記基材に前記第2温度検知手段を押し付けるように配設された第2の弾性部材を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の抵抗発熱体を有する加熱装置、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で使用される定着装置は種々の型式が知られている。その1つに、低熱容量の薄肉定着ベルトを、基材と抵抗発熱体で構成された面状加熱体で加熱する型式がある。この面状加熱体は、定着ベルトの幅方向に配置された基材上に複数の抵抗発熱体を配設し、これら抵抗発熱体を電気的に並列接続したものである。これにより、小サイズ紙を通紙したときの非通紙部昇温の抑制を図るようにしている(特許文献1、2)。当該抵抗発熱体に正温度係数を有するPTCヒータを使用することで、非通紙部昇温をさらに抑制して省エネを図ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のように複数の抵抗発熱体を並列接続した場合、いずれか1つの抵抗発熱体が断線しても他の抵抗発熱体には電流が流れ続ける。各抵抗発熱体の加熱領域にサーミスタ等の温度検知センサが配設されていれば、抵抗発熱体の温度を個別に制御できるので、抵抗発熱体の異常温度上昇が発生することはない。
【0004】
しかし、それらすべてに温度検知センサを取り付けるとコストがかかる。そこで、例えば長手方向中央の1つの抵抗発熱体にのみ温度検知センサを取り付けると、当該抵抗発熱体が断線した場合、他の抵抗発熱体の電流が増加し続けて温度制御不能になるおそれがある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、面状加熱体の複数の抵抗発熱体をできるだけ少数の温度検知センサで温度制御し、異常温度上昇を防止可能な加熱装置、定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の加熱装置は、基材の長手方向に沿って複数配設され互いに電気的に並列接続された抵抗発熱体と、前記複数の抵抗発熱体に電力を供給する電力制御手段と、前記複数の抵抗発熱体の1つである第1抵抗発熱体の温度を検知する第1温度検知手段と、前記複数の抵抗発熱体の他の1つである第2抵抗発熱体の温度を検知する第2温度検知手段と、前記第1温度検知手段の検知結果に基いて、前記複数の抵抗発熱体の温度が第1の所定温度になるように前記電力制御手段の電力量を制御すると共に、前記第2温度検知手段が第2の所定温度を検知したとき前記電力制御手段から前記複数の抵抗発熱体への電力の供給を遮断する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1抵抗発熱体が断線して第1温度検知手段による複数の抵抗発熱体の温度制御が不能になっても、第2温度検知手段による第2の所定温度の検知により各抵抗発熱体への電力の供給が遮断されるので、各抵抗発熱体の異常温度上昇を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係る画像形成装置の原理図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係る第1の定着装置の断面図である。
【
図2B】本発明の実施形態に係る第2の定着装置の断面図である。
【
図2C】本発明の実施形態に係る第3の定着装置の断面図である。
【
図2D】本発明の実施形態に係る第4の定着装置の断面図である。
【
図3A】(a)~(c)は両端に電極を設けた面状発熱体の各抵抗発熱体の配列状態を示す平面図である。
【
図3B】(a)~(c)は片端に電極を設けた面状発熱体の各抵抗発熱体の配列状態を示す平面図である。
【
図4】加熱装置、電力制御回路及び制御部を示す図である。
【
図5】加熱装置の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る加熱装置と、当該加熱装置を使用した定着装置及び画像形成装置(レーザプリンタ)について図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付し、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。また各構成部品の説明にある寸法、材質、形状、その相対配置などは例示であって、特に特定的な記載がない限りこの発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【0010】
以下の実施形態では「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は紙(用紙)だけでなくOHPシートや布帛、金属シート、プラスチックフィルム、或いは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。
【0011】
現像剤やインクを付着させることができる媒体、記録紙、記録シートと称されるものも、すべて「記録媒体」に含まれる。また「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。
【0012】
また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することも意味する。
【0013】
(レーザプリンタの構成)
図1Aは、本発明の加熱装置ないし定着装置300を備えた画像形成装置の一実施形態としてのカラーレーザプリンタ100の構成を概略的に示す構成図である。また
図1Bは当該レーザプリンタ100の原理を単純化して図示する。
【0014】
カラーレーザプリンタ100は、画像形成手段としての4つのプロセスユニット1K、1Y、1M、1Cを備えている。これらプロセスユニットは、カラー画像の色分解成分に対応するブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の現像剤によって画像を形成する。
【0015】
各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cは、互いに異なる色の未使用トナーを収容したトナーボトル6K、6Y、6M、6Cを有する以外は、同様の構成となっている。このため、1つのプロセスユニット1Kの構成を以下に説明し、他のプロセスユニット1Y、1M、1Cの説明を省略する。
【0016】
プロセスユニット1Kは、像担持体2K(例えば感光体ドラム)と、ドラムクリーニング装置3Kと、除電装置を有している。プロセスユニット1Kはさらに、像担持体の表面を一様帯電する帯電手段としての帯電装置4Kと、像担持体上に形成された静電潜像の可視像処理を行う現像手段としての現像装置5K等を有している。そして、プロセスユニット1Kは、レーザプリンタ100の本体に対して着脱自在に装着され、消耗部品を同時に交換可能となっている。
【0017】
露光器7は、このレーザプリンタ100に設置された各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cの上方に配設されている。そして、この露光器7は、画像情報に応じた書き込み走査、すなわち、画像データに基づいてレーザダイオードからレーザ光Lbをミラー7aで反射して像担持体2Kに照射するように構成されている。
【0018】
転写装置15は、この実施形態では各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cの下方に配設されている。この転写装置15は
図1Bの転写手段TMに対応する。一次転写ローラ19K、19Y、19M、19Cは、各像担持体2K、2Y、2M、2Cに対向して中間転写ベルト16に当接して配置されている。
【0019】
中間転写ベルト16は、各一次転写ローラ19K、19Y、19M、19C、駆動ローラ18、従動ローラ17に掛け渡された状態で循環走行するようになっている。二次転写ローラ20は、駆動ローラ18に対向し中間転写ベルト16に当接して配置されている。なお、像担持体2K、2Y、2M、2Cが各色の第1の像担持体とすれば、中間転写ベルト16はそれらの像を合成した第2の像担持体である。
【0020】
ベルトクリーニング装置21は、中間転写ベルト16の走行方向において、二次転写ローラ20より下流側に設置されている。また、クリーニングバックアップローラが中間転写ベルト16に対してベルトクリーニング装置21と反対側に設置されている。
【0021】
用紙Pを積載するトレイを有する用紙給送装置200は、レーザプリンタ100の下方に設置されている。この用紙給送装置200は記録媒体供給部を構成するもので、記録媒体としての多数枚の用紙Pを束状で収容可能であり、用紙Pの搬送手段としての給紙ローラ60やローラ対210と共にユニット化されている。用紙給送装置200は用紙の補給等のために、レーザプリンタ100の本体に対して挿脱可能とされている。給紙ローラ60とローラ対210は用紙給送装置200の上方に配置され、用紙給送装置200の最上位の用紙Pを給紙路32に向けて搬送するようになっている。
【0022】
分離搬送手段としてのレジストローラ対250は、二次転写ローラ20の搬送方向直近上流側に配置され、用紙給送装置200から給紙された用紙Pを一旦停止させることができる。この一旦停止により用紙Pの先端側に弛みが形成されて用紙Pの斜行(スキュー)が修正される。
【0023】
レジストローラ対250の搬送方向直近上流側にはレジストセンサ31が配設され、このレジストセンサ31によって用紙先端部分の通過が検知されるようになっている。レジストセンサ31が用紙先端部分の通過を検知した後、所定時間が経過すると、当該用紙はレジストローラ対250に突き当てられて一旦停止する。
【0024】
用紙給送装置200の下流端には、ローラ対210から右側に搬送された用紙を上方に向けて搬送するための搬送ローラ240が配設されている。
図1Aに示すように、搬送ローラ240は用紙を上方のレジストローラ対250へ向けて搬送する。
【0025】
ローラ対210は上下一対のローラで構成されている。当該ローラ対210はFRR分離方式又はFR分離方式とすることができる。FRR分離方式は、駆動軸によりトルクリミッタを介して反給紙方向に一定量のトルクを印加された分離ローラ(戻しローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップで用紙を分離する。FR分離方式は、トルクリミッタを介して固定軸に支持された分離ローラ(摩擦ローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップで用紙を分離する。
【0026】
この実施形態ではローラ対210をFRR分離方式で構成している。すなわち、ローラ対210は、用紙をマシン内部に搬送する上側の給送ローラ220と、この給送ローラ220と逆方向にトルクリミッタを介して駆動軸により駆動力を与えられる下側の分離ローラ230で構成されている。
【0027】
分離ローラ230は給送ローラ220に向けてバネ等の付勢手段で付勢されている。なお、前記給紙ローラ60は、給送ローラ220の駆動力をクラッチ手段を介して伝達することで
図1Aで左回転するようになっている。
【0028】
レジストローラ対250に突き当てられて先端部に弛みが形成された用紙Pは、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせ、二次転写ローラ20と駆動ローラ18との二次転写ニップ(
図1Bでは転写ニップN)に送り出される。そして、送り出された用紙Pは、二次転写ニップにおいて印加されたバイアスによって、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が所望の転写位置に高精度に静電的に転写されるようになっている。
【0029】
転写後搬送路33は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップの上方に配設されている。定着装置300は、転写後搬送路33の上端近傍に設置されている。定着装置300は、加熱装置を内包する定着ベルト310と、この定着ベルト310に対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧部材としての加圧ローラ320を備えている。なお、定着装置300としては後述する
図2B~
図2Dのように他の構成も可能である。
【0030】
定着後搬送路35は、定着装置300の上方に配設され、定着後搬送路35の上端で、排紙路36と反転搬送路41に分岐している。この分岐部に切り替え部材42が配置され、切り替え部材42はその揺動軸42aを軸として揺動するようになっている。また排紙路36の開口端近傍には排紙ローラ対37が配設されている。
【0031】
反転搬送路41は、分岐部と反対側の他端で給紙路32に合流している。そして、反転搬送路41の途中には、反転搬送ローラ対43が配設されている。排紙トレイ44は、レーザプリンタ100の上部に、レーザプリンタ100の内側方向に凹形状を形成して、設置されている。
【0032】
粉体収容器10(例えばトナー収容器)は、転写装置15と用紙給送装置200の間に配置されている。そして、粉体収容器10は、レーザプリンタ100の本体に対して着脱自在に装着されている。
【0033】
本実施形態のレーザプリンタ100は、転写紙搬送の関係により、給紙ローラ60から二次転写ローラ20までの所定の距離が必要である。そして、この距離に生じたデッドスペースに粉体収容器10を設置し、レーザプリンタ全体の小型化を図っている。
【0034】
転写カバー8は、用紙給送装置200の上部で、用紙給送装置200の引出方向正面に設置されている。そして、この転写カバー8を開くことで、レーザプリンタ100の内部を点検可能にしている。転写カバー8には、手差し給紙用の手差し給紙ローラ45、及び手差し給紙用の手差しトレイ46が設置されている。
【0035】
なお、本実施形態のレーザプリンタは画像形成装置の一例であり、当該画像形成装置はレーザプリンタに限定されない。すなわち、画像形成装置は複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、及びインクジェット記録装置のいずれか一つ、又はこれらの少なくとも2つ以上を組み合わせた複合機として構成することも可能である。
【0036】
(レーザプリンタの作動)
次に、本実施形態に係るレーザプリンタの基本的動作について
図1Aを参照して以下に説明する。最初に、片面印刷を行う場合について説明する。給紙ローラ60は、
図1Aに示すように、レーザプリンタ100の制御部からの給紙信号によって回転する。そして、給紙ローラ60は、用紙給送装置200に積載された束状用紙Pの最上位の用紙のみを分離し、給紙路32へ送り出す。
【0037】
給紙ローラ60およびローラ対210によって送り出された用紙Pは、その先端がレジストローラ対250のニップに到達すると、弛みを形成し、その状態で待機する。そして、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像をこの用紙Pに転写する最適なタイミング(同期)を図ると共に、用紙Pの先端スキューを補正する。
【0038】
手差しによる給紙の場合は、手差しトレイ46に積載された束状用紙が、最上位の用紙から一枚ずつ手差し給紙ローラ45によって反転搬送路41の一部を通り、レジストローラ対250のニップまで搬送される。以後の動作は用紙給送装置200からの給紙と同一である。
【0039】
ここで、作像動作については、1つのプロセスユニット1Kを説明し、他のプロセスユニット1Y、1M、1Cについてのその説明を省略する。まず、帯電装置4Kは、像担持体2Kの表面を高電位に均一に帯電する。そして、露光器7は、画像データに基づいたレーザ光Lbを像担持体2Kの表面に照射する。
【0040】
レーザ光Lbが照射された像担持体2Kの表面は、照射された部分の電位が低下して、静電潜像を形成する。現像装置5Kは、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を有し、トナーボトル6Kから供給された未使用のブラックトナーを、現像剤担持体を介して、静電潜像が形成された像担持体2Kの表面部分に転移させる。トナーが転移した像担持体2Kは、その表面にブラックトナー画像を形成(現像)する。そして、像担持体2K上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト16に転写する。
【0041】
ドラムクリーニング装置3Kは、中間転写行程を経た後の像担持体2Kの表面に付着している残留トナーを除去する。除去された残留トナーは、廃トナー搬送手段によって、プロセスユニット1K内にある廃トナー収容部へ送られ回収される。また、除電装置は、クリーニング装置3Kによって残留トナーが除去された像担持体2Kの残留電荷を除電する。
【0042】
各色のプロセスユニット1Y、1M、1Cにおいても、同様にして像担持体2Y、2M、2C上にトナー画像を形成し、各色トナー画像が重なり合うように中間転写ベルト16に転写する。
【0043】
各色トナー画像が重なり合うように転写された中間転写ベルト16は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップまで走行する。一方、レジストローラ対250は、それに突き当てられた用紙を所定のタイミングで挟み込んで回転し、中間転写ベルト16上に重畳転写して形成されたトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせて、二次転写ローラ20の二次転写ニップまで搬送する。このようにして、中間転写ベルト16上のトナー画像をレジストローラ対250によって送り出された用紙Pに転写する。
【0044】
トナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送される。そして、定着装置300に搬送された用紙Pは、定着ベルト310と加圧ローラ320によって挟まれ、加熱・加圧することで未定着トナー画像が用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。
【0045】
切り替え部材42は、定着装置300から用紙Pが送り出されたタイミングでは、
図1Aの実線で示すように定着後搬送路35の上端近傍を開放している位置にある。そして、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着後搬送路35を経由して排紙路36へ送り出される。排紙ローラ対37は、排紙路36へ送り出された用紙Pを挟み込み、回転駆動することで排紙トレイ44に排出することで片面印刷を終了する。
【0046】
次に、両面印刷を行う場合について説明する。片面印刷の場合と同様に、定着装置300は用紙Pを排紙路36へ送り出す。そして、両面印刷を行う場合、排紙ローラ対37は、回転駆動によって用紙Pの一部をレーザプリンタ100外に搬送する。
【0047】
そして、用紙Pの後端が、排紙路36を通過すると、切り替え部材42は、
図1Aの点線で示すように揺動軸42aを軸として揺動し、定着後搬送路35の上端を閉鎖する。この定着後搬送路35の上端の閉鎖とほぼ同時に、排紙ローラ対37は、用紙Pをレーザプリンタ100外へ搬送する方向と逆の方向に回転し、反転搬送路41へ用紙Pを送り出す。
【0048】
反転搬送路41へ送り出された用紙Pは、反転搬送ローラ対43を経て、レジストローラ対250に至る。そして、レジストローラ対250は、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像を用紙Pのトナー画像未転写面に転写する最適なタイミング(同期)を図り、用紙Pを二次転写ニップへ送り出す。
【0049】
そして、二次転写ローラ20と駆動ローラ18は、用紙Pが二次転写ニップを通過する際に用紙Pのトナー画像未転写面(裏面)にトナー画像を転写する。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送される。
【0050】
定着装置300は、定着ベルト310と加圧ローラ320によって、搬送された用紙Pを挟み、加熱・加圧することで未定着トナー画像を用紙Pの裏面に定着する。このようにして、表裏両面にトナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。
【0051】
切り替え部材42は、定着装置300から用紙Pが送り出されたタイミングでは、
図1Aの実線で示すように定着後搬送路35の上端近傍を開放している位置にある。そして、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着搬送路を経由して排紙路36へ送り出される。排紙ローラ対37は、排紙路36へ送り出された用紙Pを挟み、回転駆動し排紙トレイ44に排出することで両面印刷を終了する。
【0052】
中間転写ベルト16上のトナー画像を用紙Pに転写した後、中間転写ベルト16上には残留トナーが付着している。ベルトクリーニング装置21は、この残留トナーを中間転写ベルト16から除去する。また、中間転写ベルト16から除去されたトナーは、廃トナー搬送手段によって、粉体収容器10へと搬送され、粉体収容器10内に回収される。
【0053】
(定着装置)
次に、本発明の実施形態に係る加熱装置と第1~第4の定着装置300について、以下さらに説明する。本実施形態の加熱装置は、定着装置300の定着ベルト310を加熱するためのものである。加熱装置は面状加熱体で構成され、
図3A(a)と
図4に示すように、細長の金属製薄板部材を絶縁材料で被覆した基材350と、この基材350上に配設された発熱部材360を有する。
【0054】
発熱部材360は、基材350の長手方向で直線状かつ等間隔に配置された複数の抵抗発熱体361~368で構成されている。各抵抗発熱体361~368の短手方向両側には小抵抗値の給電線360a、360bが直線状に互いに平行に配設され、この給電線360a、360bに各抵抗発熱体361~368の両端が接続されている。そして給電線360a、360bの各一端部に形成された電極360c、360dに、
図4のように電力制御手段が接続される。
【0055】
本実施形態の加熱装置は、抵抗発熱体の温度を検知する温度検知手段として、第1温度検知センサ(第1温度検知手段)TH1と第2温度検知センサ(第2温度検知手段)TH2を有する。これら温度検知センサTH1、TH2は例えばサーミスタで構成することができる。
【0056】
第1温度検知センサTH1と第2温度検知センサTH2は、
図4のように、基材350の裏側に対してバネにより圧着する形で配設されている。第1温度検知センサTH1は温度制御用で、第2温度検知センサTH2が安全補償用である。2つの温度検知センサTH1、TH2は、ともに熱時定数が1秒未満の接触式のサーミスタで構成することができる。
【0057】
温度制御用の第1温度検知センサTH1は、最小通紙幅内である長手方向中央領域の第1抵抗発熱体としての抵抗発熱体364(左端から4番目)の加熱領域に配置されている。安全補償用の第2温度検知センサTH2は、長手方向最端部である第2抵抗発熱体としての抵抗発熱体368(左端から8番目)(又は抵抗発熱体361(左端から1番目))の加熱領域に配置されている。
【0058】
2つの温度検知センサTH1、TH2は、共に、発熱量低下が発生する抵抗発熱体間の隙間を回避した抵抗発熱体364、368の領域内に配置されている。これにより温度制御性が良くなり、また一部の抵抗発熱体で断線が生じた場合の断線検知もしやすくなる。
【0059】
なお、第1温度検知センサTH1は抵抗発熱体363、365、366のいずれかの加熱領域に配置してもよい。また第2温度検知センサTH2は、長手方向端部領域であれば、左端から2番目の抵抗発熱体362又は7番目の抵抗発熱体367に配置することも可能であり、必ずしも長手方向最端部に配置する必要はない。
【0060】
図4の加熱装置の下方に、抵抗発熱体361~368に給電(電力供給)するための電力制御手段としての電力制御回路を示している。この電力制御回路は、交流電源410とトライアック420で構成されている。交流電源410とトライアック420は、電極360c、360dの間を直列に接続している。
【0061】
第1温度センサTH1と第2温度センサTH2で検知された温度T4、T8は、制御手段としての制御部400に入力される。制御部400は、第1温度センサTH1から得られた温度T4に基いて、各抵抗発熱体361~368が所定温度になるように、トライアック420により電極360c、360dに対する供給電力量を制御する。
【0062】
制御部400は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータで構成することができる。定着ニップSNに通紙すると、通紙による抜熱分(用紙への熱移動分)が発生するので、第1温度センサTH1から得られた温度T4だ
けでなく、当該抜熱分も考慮して供給電力量を制御することで、定着ベルト310の温度を所望の温度に制御することができる。
【0063】
第1の定着装置は
図2Aに示すように、低熱容量の薄肉の定着ベルト310と加圧ローラ320で構成されている。定着ベルト310は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。
【0064】
定着ベルト310の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。
【0065】
また、定着ベルト310の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト310の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0066】
加圧ローラ320は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金321と、この芯金321の表面に形成された弾性層322と、弾性層322の外側に形成された離型層323とで構成されている。弾性層322はシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層322の表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層323を形成するのが望ましい。定着ベルト310に対して加圧ローラ320が付勢手段により圧接している。
【0067】
定着ベルト310の内側に、ステー330及びフォルダ340が軸線方向に配設されている。ステー330は金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が加熱装置の両側板に支持されている。ステー330は加圧ローラ320の押圧力を確実に受けとめて定着ニップSNを安定的に形成する。
【0068】
フォルダ340は加熱装置の基材350を保持するためのもので、ステー330によって支持されている。フォルダ340は好ましくはLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成することができ、これによりフォルダ340への熱伝達が減って効率的に定着ベルト310を加熱することができる。
【0069】
フォルダ340の形状は、基材350の高温部との接触を回避するために、基材350の短手方向両端部付近の各2箇所のみを支持する形状にしている。これにより、フォルダ340へ流れる熱量をさらに低減して効率的に定着ベルト310を加熱することができる。
【0070】
抵抗発熱体361~368と給電線360a、360bは薄い絶縁層370によって覆われている。この絶縁層370は例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスで構成することができる。絶縁層370によって抵抗発熱体361~368と給電線360a、360bを絶縁・保護すると共に、後述するように定着ベルト310との摺動性を維持する。
【0071】
基材350の材料としては低コストなアルミやステンレスなどが好ましい。基材350は金属製に限定されたものではなく、アルミナや窒化アルミなどのセラミックや、ガラス、マイカなどの耐熱性と絶縁性に優れた非金属材料で構成することも可能である。加熱装置の均熱性を向上し画像品位を高めるため、基材350を銅、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導率の材料で構成してもよい。本実施形態では、短手幅8mm、長手幅270mm、厚さ1.0mmのアルミナ基材を使用している。
【0072】
抵抗発熱体361~368は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材350に塗工し、その後、当該基材350を焼成することによって形成することができる。本実施形態では抵抗発熱体361~368の抵抗値を常温で80Ωとした。
【0073】
抵抗発熱体361~368の材料は、前述したもの以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。給電線360a、360bや電極360c、360dの材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)をスクリーン印刷等で形成することができる。
【0074】
抵抗発熱体361~368の絶縁層370側が定着ベルト310と接触して加熱し、伝熱により定着ベルト310の温度を上昇させ、定着ニップSNに搬送される未定着画像を加熱して定着する。
【0075】
図3A(a)のように、抵抗発熱体361~368は長手方向に8分割され、それぞれ電気的に並列接続されている。各抵抗発熱体361~368は所望の出力(抵抗値)を得るために、折り返し蛇行状の焼成パターンで構成することができる。図示例では細幅線を2回折り返した1往復半の曲折パターンで抵抗発熱体361~368を構成している。
【0076】
基材350と抵抗発熱体361~368は、それぞれの材料及び熱伝導率を調節することによって、定着ニップSNを抵抗発熱体361~368だけでなく基材350を介して加熱することができる。このため、基材350の材料としては窒化アルミニウムのような熱伝導率の高い材料が望ましい。
【0077】
抵抗発熱体361~368の相互間には絶縁を確保するため隙間が形成されている。当該隙間は大きすぎると隙間部分の発熱量低下による定着ムラが発生する。反対に隙間が小さすぎると絶縁できずに抵抗発熱体361~368間でショートが発生する。
【0078】
そこで隙間の大きさは0.3mm~1mmが好ましく、0.4mm~0.7mmがさらに好ましい。なお、前述したように基材350を介して定着ニップSNを加熱することで抵抗発熱体361~368間の隙間による定着ムラを抑制することができる。
【0079】
また、抵抗発熱体361~368は
図5(a)のように、PTC(正の温度抵抗係数)特性を有する材料で構成することもできる。このPTC特性を有する材料は、温度Tが上昇すると抵抗値が上昇(電流Iが低下してヒータ出力が低下)する特徴がある。温度抵抗係数(TCR=Temperature Coefficient of Resistance)は、例えば1500PPM(parts per million)とすることができる。当該温度抵抗係数は、制御部400のメモリに格納することができる。
【0080】
この特徴により、例えば抵抗発熱体361~368の全幅よりも狭い紙(例えば抵抗発熱体363~366の幅内)を印刷した場合、紙幅より外側の抵抗発熱体361、362、367、368は紙に熱を奪われないため温度が上昇する。するとそれら抵抗発熱体361、362、367、368の抵抗値が上昇する。
【0081】
抵抗発熱体361~368にかかる電圧は一定なので、用紙幅より外側の抵抗発熱体361、362、367、368の出力が相対的に低下し、端部温度上昇が抑制される。抵抗発熱体361~368を電気的に直列に接続した場合、連続印刷において紙幅よりも外側の抵抗発熱体の温度上昇を抑制するには、印刷スピードを低下させる以外に方法がない。抵抗発熱体361~368を電気的に並列接続することで、印刷スピードを維持したまま非通紙部温度上昇を抑制することができる。
【0082】
抵抗発熱体361~368の配置は
図3A(a)の状態に限られない。
図3A(a)では抵抗発熱体361~368の相互間に短手方向に続く隙間がある。また、
図3A(b)と(c)では抵抗発熱体361~368の端部同士を長手方向で互いにオーバーラップさせている。
【0083】
図3A(b)は抵抗発熱体361~368の端部にL字状の切り欠きによる段部を形成し、当該段部を隣接する抵抗発熱体の端部の段部とオーバーラップさせている。
図3(c)は抵抗発熱体361~368の端部に斜めの切り欠きによる傾斜部を形成し、当該傾斜部を隣接する抵抗発熱体の端部の傾斜部とオーバーラップさせている。このように抵抗発熱体361~368の端部同士を互いにオーバーラップさせることで、抵抗発熱体間の隙間での発熱量低下の影響を抑制することができる。
【0084】
また電極360c、360dは抵抗発熱体361~368の両端に配置する他、
図3B(a)~(c)のように抵抗発熱体361~368の片側に配置することも可能である。このように電極360c、360dを片側配置にすることで長手方向の省スペース化を図ることができる。
【0085】
(定着動作)
図2Aにおいて、定着ニップSNに向けて矢印方向から用紙Pを通紙すると、定着ベルト310と加圧ローラ320との間で用紙Pが加熱されてトナー像が用紙Pに定着される。この際、定着ベルト310は発熱部材360の絶縁層370と摺動しつつ発熱部材360からの熱で加熱される。
【0086】
定着ベルト310を所定温度にする発熱部材360の温度制御において、第1温度検知センサTH1のみ配置した場合、第1温度検知センサTH1を配置している抵抗発熱体364のみが部分的に断線して電力供給が遮断すると、当該抵抗発熱体364の温度が上昇しない。第1温度検知センサTH1と第2温度検知センサTH2を同じ抵抗発熱体の加熱領域内に配置した場合も同様である。このため、当該抵抗発熱体364を温度制御により一定温度(第1の所定温度)にしようとして、他の正常な抵抗発熱体361~363、365~368に必要以上の電力供給が続いて異常高温が発生する。
【0087】
そこで本実施形態では、第1温度検知センサTH1と第2温度検知センサTH2を、異なる抵抗発熱体364、368の加熱領域に配置している。これにより、第1温度検知センサTH1を配置している抵抗発熱体364のみが部分的に断線して電力供給が遮断された場合でも、第2温度検知センサTH2で、他の正常な抵抗発熱体368の異常高温を第1の所定温度よりも高いあらかじめ定められている温度を第2の所定温度として検知するすることで、安全に電力供給を遮断することができる。例えば、第2の所定温度とは、あらかじめ実験などで求められた温度であり、これ以上、上がると支障をきたす温度である。
【0088】
特に抵抗発熱体368は基材350の長手方向最端部に配置されているので、端部温度上昇の影響により第2の所定温度を早期に検知しやすい。したがって、第2温度検知センサTH2を長手方向最端部以外の抵抗発熱体に配置した場合より、より安全に電力供給を遮断することができる。なお、第2温度検知センサTH2は抵抗発熱体368の第1の所定温度よりも低いあらかじめ定めれている温度(断線)を検知して電力供給を遮断することも可能である。例えば、この場合の検知する温度は、あらかじめ実験などで求められた温度であり、これ以上、下がると支障をきたす温度である。
【0089】
(定着装置の他の実施形態)
定着装置300は
図2Aの第1の定着装置に限定されない。以下、
図2B~
図2Dを参照して第2~第4の定着装置について説明する。第2の定着装置は、
図2Bに示すように、加圧ローラ320と反対側に押圧ローラ390を有し、当該押圧ローラ390と加熱装置との間で定着ベルト310を挟んで加熱する。
【0090】
定着ベルト310の内側に前述した加熱装置が配設されてる。ステー330の片側に補助ステー331が取り付けられ、反対側にニップ形成部材332が取り付けられている。加熱装置はこの補助ステー331に保持されている。ニップ形成部材332は定着ベルト310を介して加圧ローラ320と当接して定着ニップSNを形成している。
【0091】
第3の定着装置は、
図2Cに示すように、定着ベルト310の内側に加熱装置が配設されてる。この加熱装置は、前述した押圧ローラ390を省略する代わりに、定着ベルト310との周方向接触長さを長くするため、定着ベルト310の曲率に合わせて基材350と絶縁層370の横断面を円弧状に形成している。発熱部材360は円弧状の基材350の中央に配置されている。その他は
図2Bの第2の定着装置と同じである。
【0092】
第4の定着装置は、
図2Dに示すように、加熱ニップHNと定着ニップSNに分けて構成している。すなわち、加圧ローラ320の定着ベルト310とは反対側に、ニップ形成部材332と、金属製のチャンネル材で構成されたステー333を配置し、これらニップ形成部材332とステー333を内包するように加圧ベルト334を周回可能に配設している。そして当該加圧ベルト334と加圧ローラ320との間の定着ニップSNに用紙Pを通紙して加熱・定着する。その他は
図2Aの第1の定着装置と同じである。
【0093】
また、安全補償用の第2温度検知センサTH2は、
図2Aの破線にて示すように、温度制御用の第1温度検知センサTH1が検知する抵抗発熱体366とは異なる抵抗発熱体368で加熱される定着ベルト310の内周面(抵抗発熱体368の下流側内周面)に、付勢手段により圧着するように配置してもよい。抵抗発熱体の数を増加すると温度検知センサの配設スペースを確保しにくくなるが、第2温度検知センサTH2を前記のように配設することでスペース確保の困難性を緩和することができる。また安全補償用の第2温度検知センサTH2は、抵抗発熱体368だけでなく、定着ベルト310の内周面を含む、他の抵抗発熱体361~363、365~367の領域毎に配置してもよい。
【0094】
(フローチャート)
図5は前述した制御部400によって実行される加熱装置の制御動作を示すフローチャートである。
図5のステップS1において、カラーレーザプリンタ100に対して印刷ジョブの実行が指示される。すると、ステップS2において、制御部400により交流電源410から発熱部材360の各抵抗発熱体361~368への給電が開始される。そしてステップS3において、第1温度検知センサTH1により発熱部材360の中央領域に位置する抵抗発熱体364の温度T
4が検知される。
【0095】
次に、ステップS4で発熱部材360の温調制御が開始される。またステップS5で第2温度検知センサによって抵抗発熱体368の温度T8が検知される。そしてステップS6で温度T8≦Ts(Ts:安全上限温度)か否かが判定され、Ts<T8であれば異常温度発生として発熱部材360への電力供給が遮断(OFF)され、カラーレーザプリンタ100の操作パネルにエラー表示が示される。T8≦Tsであれば異常温度発生なしとしてステップS9で印字動作が開始される。
【0096】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば本発明の加熱装置は乾燥装置など定着装置以外の用途に使用することも可能である。また抵抗発熱体のオーバーラップの形態は、凹凸形状や櫛歯形状の相互嵌合など、
図3A(b)(c)や
図3B(b)(c)以外も可能であることは勿論である。また、抵抗発熱体の数は8個未満又は9個以上としてもよい。さらに抵抗発熱体を基材350の短手方向に複数列で配置することも可能である。
【符号の説明】
【0097】
SN:定着ニップ HN:加熱ニップ
Lb:レーザ光 P:用紙
TM:転写手段 TH1:第1温度検知センサ
TH2:第2温度検知センサ 361-368:抵抗発熱体
1K,1Y,1M,1C:プロセスユニット 2K,2Y,2M,2C:像担持体
3K,3Y,3M,3C:ドラムクリーニング装置 4K,4Y,4M,4C:帯電装置
5K,5Y,5M,5C:現像装置(作像部) 6K,6Y,6M,6C:トナーボトル
7:露光器 7a:ミラー
8:転写カバー 10:粉体収容器
15:転写装置 16:中間転写ベルト
17:従動ローラ 18:駆動ローラ
19K,19Y,19M,19C:一次転写ローラ 20:二次転写ローラ
21:ベルトクリーニング装置 31:レジストセンサ
32:給紙路 33:転写後搬送路
35:定着後搬送路 36:排紙路
37:排紙ローラ対 41:反転搬送路
42:部材 42a:揺動軸
43:反転搬送ローラ対 44:排紙トレイ
45、60:給紙ローラ 46:トレイ
100:カラーレーザプリンタ 200:用紙給送装置(記録媒体供給部)
210:ローラ対 220:給送ローラ
230:分離ローラ 240:搬送ローラ
250:レジストローラ対 300:定着装置
310:定着ベルト 320:加圧ローラ
321:鉄製芯金 321:芯金
322:弾性層 323:離型層
330、333:ステー 331:補助ステー
332:ニップ形成部材 334:加圧ベルト
340:フォルダ 350:基材
360:発熱部材 360a、360b:給電線
360c、360d:電極 361~368:抵抗発熱体
370:絶縁層 390:押圧ローラ
400:制御部 410:交流電源
420:トライアック
【先行技術文献】
【特許文献】
【0098】
【文献】特開2015-194713号公報
【文献】特開2016-18127号公報