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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】CMP装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/013 20120101AFI20240930BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240930BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20240930BHJP
   B24B 37/20 20120101ALI20240930BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B24B37/013
H01L21/304 622S
H01L21/304 622F
B24B37/10
B24B37/20
B24B49/12
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020129762
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026349
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】中原 翔太
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-277634(JP,A)
【文献】特開2010-016016(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0059639(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B37/00-37/34
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨ヘッドに吸着保持されたワークをプラテンの表面上に取り付けられた研磨パッドに押し当てて研磨するCMP装置であって、
前記プラテンを貫通して形成された観測孔と、
研磨パッドに埋設され、前記観測孔に対応する位置に設けられた観測窓と、
前記観測孔を通過するとともに前記観測窓を透過するように光路が設定されて、前記ワークの膜厚を測定する光学式膜厚センサと、
前記観測孔と前記光学式膜厚センサとの間に設けられ、前記光学式膜厚センサの光路を開放又は遮蔽する切換機構と、
を備え
前記切換機構は、
前記プラテンの裏面側に配置されたトレイと、
前記トレイを移動させて、前記トレイが前記光路外に位置して前記光路が開放される開放位置と前記トレイが前記光路上に位置して前記光路が遮蔽される遮蔽位置とに前記トレイの位置を切換可能な移動部と、
を備え、
前記トレイの上面には、前記トレイが前記遮蔽位置に位置するときに前記観測孔の下方に位置するスラリ貯留用凹部が形成されていることを特徴とするCMP装置。
【請求項2】
研磨ヘッドに吸着保持されたワークをプラテンの表面上に取り付けられた研磨パッドに押し当てて研磨するCMP装置であって、
前記プラテンを貫通して形成された観測孔と、
研磨パッドに埋設され、前記観測孔に対応する位置に設けられた観測窓と、
前記観測孔を通過するとともに前記観測窓を透過するように光路が設定されて、前記ワークの膜厚を測定する光学式膜厚センサと、
前記観測孔と前記光学式膜厚センサとの間に設けられ、前記光学式膜厚センサの光路を開放又は遮蔽する切換機構と、
備え
前記切換機構は、
前記観測孔の下方に配置され、水平回転軸回りに回転可能で、径方向に沿って貫通孔が形成された略円筒状の回転ツールと、
前記回転ツールを周方向に回転させて、前記光路が前記貫通孔内を通過して前記光路が開放される開放姿勢と前記回転ツールが前記光路を遮蔽する遮蔽姿勢とに前記回転ツールの姿勢を切換可能な回転部と、
を備え、
前記回転ツールの周面には、前記回転ツールが前記遮蔽姿勢であるときに前記観測孔の下方に位置するスラリ貯留用凹部が形成されていることを特徴とするCMP装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークをCMP研磨するCMP装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等(以下、「ワーク」という)を平坦化するCMP装置が知られている。
【0003】
特許文献1記載の研磨装置は、化学的機械的研磨、いわゆるCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を適用した研磨装置である。このCMP装置は、研磨ヘッドに装着されたワークをプラテン上の研磨パッドに押圧してワークを研磨するものである。
【0004】
このような研磨装置では、ワークの研磨面で反射した反射光を解析してワークの研磨終点を検出する研磨終点検出装置が設けられている。研磨終点検出装置から照射させる光の光路上には、研磨パッドに取り付けられた窓部材及びプラテンに埋設された防水窓が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-32849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、窓部材及び防水窓の二重窓構造を採用した研磨装置では、防水窓において光の反射、屈折又は干渉等が生じ、研磨面からの反射光に基づいて研磨終点を正確に検出できない虞があった。
【0007】
そこで、研磨終点を正確に検出するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るCMP装置は、研磨ヘッドに吸着保持されたワークをプラテンの表面上に取り付けられた研磨パッドに押し当てて研磨するCMP装置であって、前記プラテンを貫通して形成された観測孔と、研磨パッドに埋設され、前記観測孔に対応する位置に設けられた観測窓と、前記観測孔を通過するとともに前記観測窓を透過するように光路が設定されて、前記ワークの膜厚を測定する光学式膜厚センサと、を備えている。
【0009】
この構成によれば、光学式膜厚センサが、観測孔において光の屈折等を伴うことなくワークの厚み測定を行うため、研磨終点を正確に検出することができる。
【0010】
また、本発明に係るCMP装置は、前記観測孔と前記光学式膜厚センサとの間に設けられ、前記光学式膜厚センサの光路を開放又は遮蔽する切換機構をさらに備えていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、切換機構が、光学式膜厚センサの光路の開放又は遮蔽を切換可能なことにより、研磨加工中に光学式膜厚センサの光路が開放されて、研磨終点を正確に検出することができる。さらに、研磨パッドを交換する際に、光学式膜厚センサの光路が遮蔽されることにより、プラテンに残留したスラリが観測孔を介して光学式膜厚センサに滴下して、光学式膜厚センサが汚染されることを抑制できる。
【0012】
また、本発明に係るCMP装置は、前記切換機構は、前記プラテンの裏面側に配置されたトレイと、前記トレイを移動させて、前記トレイが前記光路外に位置して前記光路が開放される開放位置と前記トレイが前記光路上に位置して前記光路が遮蔽される遮蔽位置とに前記トレイの位置を切換可能な移動部と、を備えていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、移動部がトレイを開放位置に移動させることにより、研磨加工中に光学式膜厚センサの光路が開放されて、研磨終点を正確に検出することができ、移動部がトレイを遮蔽位置に移動させることにより、研磨パッドを交換する際に、プラテンに残留したスラリが観測孔を介して光学式膜厚センサを汚染することを抑制できる。
【0014】
また、本発明に係るCMP装置は、前記トレイの上面には、スラリ貯留用凹部が形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、遮蔽位置に位置するトレイのスラリ貯留用凹部が、観測孔を介して滴下したスラリを受けるため、スラリがトレイから垂れてプラテンやトレイと周辺部材との摺動部分で固着することを抑制できる。
【0016】
また、本発明に係るCMP装置は、前記切換機構は、前記観測孔の下方に配置され、径方向に沿って貫通孔が形成された略円筒状の回転ツールと、前記回転ツールを周方向に回転させて、前記光路が前記貫通孔内を通過して前記光路が開放される開放姿勢と前記回転ツールが前記光路を遮蔽する遮蔽姿勢とに前記回転ツールの姿勢を切換可能な回転部と、を備えていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、回転部が回転ツールを開放姿勢に回転させることにより、研磨加工中に光学式膜厚センサの光路が開放されて、研磨終点を正確に検出することができ、回転部が回転ツールを遮蔽姿勢に回転させることにより、研磨パッドを交換する際に、プラテンに残留したスラリが観測孔を介して光学式膜厚センサを汚染することを抑制できる。
【0018】
また、本発明に係るCMP装置は、前記回転ツールの周面には、スラリ貯留用凹部が形成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、遮蔽姿勢をとる回転ツールにおいてスラリ貯留用凹部が、観測孔を介して滴下したスラリを受けるため、スラリが回転ツールから垂れてプラテンや回転ツールと周辺部分との摺動箇所で固着することを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、光学式膜厚センサが、観測孔において光の屈折等を伴うことなくワークの厚み測定を行うため、研磨終点を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るCMP装置を模式的に示す斜視図である。
図2】CMP装置の要部を模式的に示す一部切り欠き断面図である。
図3】トレイを示す斜視図である。
図4】トレイが開放位置に位置する状態を示す模式図である。
図5】トレイが遮蔽位置に位置する状態を示す模式図である。
図6】変形例に係るCMP装置の要部を模式的に示す一部切り欠き断面図。
図7】回転ツールを示す斜視図である。
図8】(a)は、開放姿勢の回転ツールを模式的に示す正面図であり、(b)は、開放姿勢の回転ツールを模式的に示す側面図である。
図9】(a)は、遮蔽姿勢の回転ツールを模式的に示す正面図であり、(b)は、遮蔽姿勢の回転ツールを模式的に示す側面図である。
図10】(a)は、本発明の実施例に係るCMP装置の要部を示す模式図であり、(b)は、第1の比較例に係るCMP装置の要部を示す模式図であり、(c)は、第2の比較例に係るCMP装置の要部を示す模式図である。
図11】実施例及び第1、第2の比較例における研磨終点検出装置の観測位置を示す平面図である。
図12】実施例及び第1、第2の比較例における各観測位置での反射光の光量を示すグラフ。
図13】実施例及び第1、第2の比較例における各観測位置での反射光の反射率を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0023】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0024】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るCMP装置1を模式的に示す斜視図である。CMP装置1は、ワークWの一面を平坦に研磨するものである。CMP装置1は、プラテン2と、研磨ヘッド3と、を備えている。
【0026】
プラテン2は、円盤状に形成されており、プラテン2の下方に配置された回転軸4に連結されている。回転軸4がモータ5の駆動によって回転することにより、プラテン2は図1中の矢印D1の方向に回転する。プラテン2の上面には、研磨パッド6が貼付されており、研磨パッド6上に図示しないノズルから研磨剤と化学薬品との混合物であるCMPスラリが供給される。
【0027】
研磨ヘッド3は、プラテン2より小径に形成されており、研磨ヘッド3の上方に配置された回転軸3aに連結されている。回転軸3aが図示しないモータの駆動によって回転することにより、研磨ヘッド3は、図1中の矢印D2の方向に回転する。研磨ヘッド3は、図示しないヘッド移動機構によって垂直方向及び水平方向に移動可能に構成されている。研磨ヘッド3は、ワークWを研磨する際に下降して研磨パッド6にワークWを押圧する。
【0028】
CMP装置1の動作は、図示しない制御部7によって制御される。制御部7は、CMP装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御部7は、例えばコンピュータであり、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御部7の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作するものにより実現されても良い。制御部7は、後述する研磨終点検出装置としても機能する。
【0029】
次に、CMP装置1の要部について具体的に説明する。図2は、CMP装置1の要部を模式的に示す縦断面図である。
【0030】
研磨ヘッド3は、ヘッド本体8を備えている。ヘッド本体8は、回転軸3aに接続されており、回転軸3aと共に回転する。ヘッド本体8は、下方に配置された図示しない緻密体のキャリアに連結されており、ヘッド本体8及びキャリアは連動して回転する。
【0031】
ヘッド本体8とキャリアとの間には、図示しないキャリア押圧手段が設けられている。キャリア押圧手段は、図示しない圧縮空気源から供給されるエアによって膨張するエアバッグ等である。圧縮空気源から供給されるエアの圧力は、図示しないレギュレータによって調整される。キャリア押圧手段は、供給されるエアの圧力に応じて、キャリアを介してワークWを研磨パッド6に押圧する。このようにして、研磨ヘッド3は、所謂エアーフロート方式でワークWを研磨する。
【0032】
キャリアの下面には、図示しないチャックが設けられている。チャックの下面に収容された多孔質材料からなるポーラスチャックが、図示しない真空源、圧縮空気源に接続されている。ポーラスチャックと真空源との接続及びポーラスチャックと圧縮空気源との接続の切り替えは、図示しない切換弁等を用いて行ってもよいし、ポーラスチャックと圧縮空気源とを接続する管路とポーラスチャックと真空源とを接続する管路とをそれぞれ用意し、各管路を必要に応じて開閉制御するものであっても構わない。
【0033】
研磨パッド6は、観測窓6aを備えている。観測窓6aは、研磨パッド6に収容されており、研磨加工中に研磨パッド6上のスラリ等が漏水しないように、観測窓6aの周面が研磨パッド6に接着される等して研磨パッド6に一体化されている。観測窓6aの材質は、後述する光学式膜厚センサ9の光の波長に対して光学的に透明であれば如何なるものであってもよく、例えばウレタン製である。
【0034】
プラテン2には、上下方向に貫通した観測孔2aが形成されている。観測孔2aは、研磨ヘッド3の下方に位置するように、プラテン2の回転中心から径方向Rにオフセットして設けられている。観測窓6a及び観測孔2aは、互いに対応した形状、例えば平面から視て長楕円形状に形成されている。
【0035】
CMP装置1は、光学式膜厚センサ9を備えている。光学式膜厚センサ9は、プラテン2の下方に配置されている。光学式膜厚センサ9が測定したワークWの膜厚に基づいて、制御部7が、ワークWの研磨終点を演算する。
【0036】
光学式膜厚センサ9は、いわゆる光干渉式膜厚計であり、図示しない光学ユニット及び分光器に接続されている。光学式膜厚センサ9は、光学ユニットから出射された照射光をワークWの被研磨面W1に向けて照射する。また、光学式膜厚センサ9がワークWの被研磨面W1で反射した反射光を受光すると、反射光は分光器に導かれる。そして、分光器は、反射光の分光強度分布を測定し、ワークWの残膜変化を検出する。照射光及び反射光の光路は、観測孔2aを通過するとともに観測窓6aを透過するように設定されている。なお、光学式膜厚センサ9は、上述した光干渉式膜厚計に限らず、例えばレーザー干渉計等であっても構わない。なお、符号9aは、光学式膜厚センサ9に接続された光ファイバーである。
【0037】
プラテン2と光学式膜厚センサ9との間には、切換機構10が設けられている。切換機構10は、光学式膜厚センサ9の光路を開放又は遮蔽することができる。
【0038】
切換機構10は、トレイ11と、移動部12と、を備えている。
【0039】
トレイ11は、図2~3に示すように、側面から視て先端側に向かって漸次縮幅のテーパ状に形成されている。なお、トレイ11の形状は、如何なるものであっても構わない。トレイ11の上面には、スラリ貯留用凹部13が設けられている。スラリ貯留用凹部13は、トレイ11が後述する遮蔽位置に位置する際に、観測孔2aの下方に位置するように配置されている。
【0040】
プラテン2の下方には、トレイ11の形状に応じた支持フレーム14が設けられている。支持フレーム14は、先端側フレーム14aと、先端側フレーム14aよりプラテン2の径方向Rの内側に設けられた後端側フレーム14bと、を備えている。先端側フレーム14aと後端側フレーム14bとは、光学式膜厚センサ9の光路を確保するように互いに隙間を空けて設けられている。先端側フレーム14a及び後端側フレーム14bには、水平方向に貫通して形成された支持部14c、14dが設けられている。支持部14c、14dは、トレイ11のテーパ状の断面形状に応じて傾斜しており、トレイ11をプラテン2の径方向Rの外側に案内し易くなっている。
【0041】
移動部12は、トレイ11をプラテン2の径方向Rに進退移動させる。移動部12は、例えば、トレイ11に接続されたロッドを空気圧で進退移動させるエアシリンダ等であるが、これに限定されるものではない。なお、移動部12は、トレイ11を直線移動させるものに限定されず、揺動させるもの等であっても構わない。
【0042】
次に、本実施形態に係るCMP装置1を用いてワークWを研磨加工する場合について、図面に基づいて説明する。
【0043】
まず、ワークWの被研磨面W1が下方を向いた状態で、ワークWが研磨ヘッド3に吸着保持される。次に、研磨パッド6がプラテン2上に移動し、プラテン2及び研磨ヘッド3が互いに逆向きに回転する。そして、研磨パッド6上にスラリが供給されながら、研磨ヘッド3が、エアーフロート方式でワークWを研磨パッド6に押圧し、ワークWを研磨する。
【0044】
研磨加工中には、光学式膜厚センサ9が、ワークWの膜厚をリアルタイムで測定する。具体的には、まず、図4に示すように、移動部12は、光学式膜厚センサ9の光路が開放される位置(開放位置)にトレイ11を径方向Rの内側に退避させる。次に、光学式膜厚センサ9が、ワークWの被研磨面W1で反射した反射光からワークWの膜厚を測定する。
【0045】
そして、制御部7は、光学式膜厚センサ9が測定した加工中のワークWの膜厚と予め記憶された研磨終点に応じた膜厚の設定値とを比較し、ワークWの膜厚の測定値が設定値に達すると、制御部7は、プラテン2及び研磨ヘッド3を停止させ、研磨が終了する。
【0046】
次に、本実施形態に係るCMP装置1の研磨パッド6を交換する場合について、図面に基づいて説明する。
【0047】
CMP装置1では、観測孔2aを従来のような防水窓で閉塞していないため、研磨パッド6をプラテン2から剥がして研磨パッド6を交換させる際に、プラテン2に残存するスラリが観測孔2aを介して光学式膜厚センサ9に滴下して、光学式膜厚センサ9を汚す虞がある。
【0048】
そこで、図5に示すように、研磨パッド6の交換に先行して、移動部12は、トレイ11が支持部14c、14dに支持されるまでトレイ11を径方向Rの外側に向かって水平移動させる。このとき、トレイ11は、光学式膜厚センサ9の光路を遮蔽する位置(遮蔽位置)に位置している。これにより、スラリが観測孔2aから滴下して光学式膜厚センサ9を汚すことを抑制できる。
【0049】
また、トレイ11が遮蔽位置に位置するとき、スラリ貯留用凹部13が、観測孔2aの下方に位置している。これにより、トレイ11に滴下したスラリがトレイ11から零れることなくスラリ貯留用凹部13に貯留されることにより、スラリが乾燥してスラリに含まれる砥粒がトレイ11と支持フレーム14等の周辺部材との間の摺動部分で固着することを抑制できる。
【0050】
次に、上述した実施形態の変形例に係るCMP装置1について説明する。図6は、本変形例に係るCMP装置1の要部を模式的に示す縦断面図である。なお、本変形例に係るCMP装置1は、切換機構10を除いて、上述した実施形態に係るCMP装置1の構成と共通する。したがって、本変形例に係るCMP装置1の構成のうち、上述した実施形態に係るCMP装置1と共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0051】
切換機構10は、回転ツール15と、回転部16と、を備えている。
【0052】
図7に示すように、回転ツール15は、略円柱状に形成されている。回転ツール15は、観測孔2aの下方に設けられている。回転ツール15は、上下一対の支持フレーム17によって中心軸16a回りに回転可能に支持されている。
【0053】
回転ツール15には、回転ツール15の径方向(図7紙面上で垂直方向)に沿って貫通する貫通孔18が形成されている。貫通孔18は、回転ツール15が後述する開放姿勢をとる際に、観測孔2aの下方に位置するように配置されている。また、回転ツール15の周面には、スラリ貯留用凹部19が設けられている。スラリ貯留用凹部19は、回転ツール15が後述する遮蔽姿勢をとる際に、観測孔2aの下方に位置するように配置されている。
【0054】
回転部16は、回転ツール15を中心軸16a回りに周方向に回転させる。回転部16は、例えば、回転ツール15を図示しないギアを介して回転させるモータ等であるが、これに限定されるものではない。
【0055】
本変形例に係るCMP装置1も用いてワークWの研磨加工を行う際には、図8(a)、(b)に示すように、回転部16は、貫通孔18が垂直方向と略平行になるように回転ツール15を回転させて、回転ツール15をその姿勢(開放姿勢)で保持する。これにより、光学式膜厚センサ9の光路が観測孔2a内を通過して光路が開放されるため、光学式膜厚センサ9は、ワークWの膜厚を精度良く測定することができる。
【0056】
また、研磨パッド6を交換する際には、図9(a)、(b)に示すように、回転部16は、回転ツール15の貫通孔18が垂直方向に略垂直になるように回転ツール15を回転させて、回転ツール15をその姿勢(遮蔽姿勢)で保持する。これにより、回転ツール15が、プラテン2に残存したスラリが観測孔2aを通って光学式膜厚センサ9に滴下して、光学式膜厚センサ9が汚れることを抑制できる。
【0057】
また、遮蔽姿勢をとる回転ツール15においてスラリ貯留用凹部19が観測孔2aの下方に位置することにより、回転ツール15に滴下したスラリが回転ツール15から零れることなくスラリ貯留用凹部19に貯留されることにより、スラリが乾燥してスラリに含まれる砥粒が回転ツール15と支持フレーム17等の周辺部材との間の摺動部分に固着することを抑制できる。
【実施例
【0058】
以下、上述した実施形態に係るCMP装置1(実施例)と本発明の比較例に係るCMP装置(比較例1、2)とを比較して、光学式膜厚センサ9が受光する光の強度及び反射率を評価した。
【0059】
[構造]
・実施例:図10(a)に示すように、標準物質としてのワークWと研磨パッド6との間にスラリの代わりとして水20が介在している。観測窓6aはウレタン製であり、観測孔2aは中空である。
【0060】
・比較例1:図10(b)に示すように、観測孔2aをアクリル製の防水窓21で閉塞した以外は、CMP装置1と同様の構成である。
【0061】
・比較例2:図10(c)に示すように、観測窓6aが取り除かれ、水20が存在しない以外は、CMP装置1と同様の構成である。
【0062】
[評価]
実施例及び比較例1~2について、光干渉式膜厚計を用いて、複数の測定点において反射光の光強度の測定及び反射率の算出を行った。なお、本評価では、光干渉式膜厚計として、大塚電子株式会社製の分光干渉式厚み測定計(SF-3)を用いた。
【0063】
具体的には、図11に示すように、プラテン2を3度刻みで送り、観測孔2a中の異なる5点(測定点A、B、C、D、E)において反射光の光強度をそれぞれ測定し、さらに、反射光の光強度に基づいて各測定点A、B、C、D、Eにおける反射率を算出した。なお、反射率は、平面から視て観測孔2aの略中央に位置する測定点Cにおける光強度及び既知のワークWの反射率に基づいて得られるレンズや観測窓等に起因する装置固有のノイズを算出し、このノイズを測定点A、B、C、D、Eで測定した反射光の光強度からそれぞれキャンセルすることにより算出した。なお、反射光を反射させた標準物質(ワークW)の反射率は、全波長領域で1.00に設定した。
【0064】
図12(a)~(o)の各グラフは、横軸が波長、縦軸が光強度に設定されている。図12(a)~(e)は、実施例1において測定点A、B、C、D、Eで取得した反射光の光強度を示す。同様に、図12(f)~(j)は、比較例1において測定点A、B、C、D、Eで取得した反射光の光強度を示し、図12(k)~(o)は、比較例2において測定点A、B、C、D、Eで取得した反射光の光強度を示す。
【0065】
図13(a)~(o)の各グラフは、横軸が波長、縦軸が反射率に設定されている。図13(a)~(e)は、実施例1において測定点A、B、C、D、Eで取得した反射光の反射率を示す。同様に、図13(f)~(j)は、比較例1において測定点A、B、C、D、Eで取得した反射光の反射率を示し、図13(k)~(o)は、比較例2において測定点A、B、C、D、Eで取得した反射光の反射率を示す。
【0066】
図13(a)~(e)によれば、実施例は、測定位置の違いによって反射率は大きく変動していないことが分かる。一方、図13(f)~(j)によれば、比較例1は、測定位置の違いによって反射率の違いが生じており、観測孔2aに嵌入された防水窓21によって反射光の光学的変化が生じていることが分かる。このような反射光の光学的変化は、防水窓21の形状に起因するものと考えられる。
【0067】
一方、図13(k)~(o)によれば、比較例2は、実施例と同様に測定位置の違いによって反射率は大きく変動しておらず、観測窓6aの有無によって反射光の光学的な変化が生じていないことが分かる。
【0068】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0069】
1 :CMP装置
2 :プラテン
2a :観測孔
3 :研磨ヘッド
6 :研磨パッド
6a :観測窓
7 :制御部
9 :光学式膜厚センサ
10 :切換機構
11 :トレイ
12 :移動部
15 :回転ツール
16 :回転部
18 :貫通孔
W :ワーク
W1 :被研磨面
図1
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