(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】フライカット装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240930BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240930BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20240930BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20240930BHJP
B23D 5/00 20060101ALI20240930BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24B41/06 L
B23Q11/10 A
B23Q17/20 A
B23D5/00
H01L21/78 M
H01L21/78 N
(21)【出願番号】P 2020139473
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】石川 一政
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-21017(JP,A)
【文献】特開2019-29543(JP,A)
【文献】国際公開第2006/132126(WO,A1)
【文献】特開2015-208796(JP,A)
【文献】特開2015-107535(JP,A)
【文献】特開2018-182129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 41/06
B23Q 11/10
B23Q 17/20
B23D 5/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にバンプが形成されたバンプ領域と前記バンプ領域の周りの外周領域とを含むワークに貼付された保護フィルムの上面を切削するフライカット装置であって、
フライカットツールと、
前記フライカットツールが下端に取り付けられ、前記フライカットツールを回転させた状態で昇降可能なツールスピンドルと、
前記ワークを回転可能に保持するチャックと、
を備え、
前記フライカットツールが、前記保護フィルムの上面を中心から外周に向かって切削することを特徴とするフライカット装置。
【請求項2】
前記フライカットツールは、
前記ツールスピンドルに取り付けられるリングフレームと、
前記リングフレームの外周に装着され、前記保護フィルムを切削可能なバイトと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のフライカット装置。
【請求項3】
前記チャックの回転軸は、所定角度だけ傾斜して設定され、
前記チャックの前記ワークを保持する保持面は、中央が外周に比べて高い中凸状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフライカット装置。
【請求項4】
前記保護フィルムの上面に冷却水を供給する冷却水ノズルをさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のフライカット装置。
【請求項5】
前記フライカットツールによる切削中に前記保護フィルムの厚みを測定する厚みセンサと、
前記厚みセンサの測定値、前記フライカットツールの回転数、前記チャックの回転数及び前記ツールスピンドルの降下速度に基づいて、前記保護フィルムが仕上がり厚みに達する時間を演算する切削時間予測部と、
をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のフライカット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にバンプが形成されたワークに貼付された保護フィルムを切削するフライカット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ワーク」という)を薄く平坦に研削するものとして、回転する研削砥石の研削面をワークに押し当て、ワークの裏面を研削する。ワークの裏面研削の際には、ワーク表面に形成されたチップ及びバンプを保護するために、表面を保護するフィルムがワークに貼り付けられている。
【0003】
ワークの裏面研削が終了すると、ダイシングフィルム貼付装置においてダイシングフィルムがワークの裏面に貼付けられ、ワーク及びダイシングフレームが一体化される。次に、ワークの表面に貼付けられた保護フィルムが剥離された後に、ワークは、賽の目状にダイシングされる。ダイシングにより形成されたチップは、ピックアップされてリードフレームにマウントされる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、
図9に示す手順によってワーク100が加工される。すなわち、ワーク100は、表面101にバンプ102が形成されるとともにバンプ102を覆うようにBGフィルム103が貼り付けられる(BGフィルム貼付工程)。その後、ワーク100は、裏面104が上方を向くようにチャックテーブル105に吸着保持された状態で、研削砥石106によって裏面104が研削される(ワーク研削工程)。その後、ワーク100の内部にレーザを集光させて、裏面104から所定深さに改質ライン107を形成する(レーザダイシング(ML)工程)。その後、ワーク100の裏面104を搬送アームのチャック108で吸着し、ワーク100がDCテープ貼付装置に搬送される(ワーク搬送工程)。そして、ワーク100が転置されたチャック109に保持された状態で、転圧ローラ110が、ワーク100の裏面104にDCテープ111を押し付けて貼付して、ワーク100がダイシングフレーム112に保持された後に、剥離テープ113を介してBGフィルム103が剥離される(DCテープ貼付、BGフィルム剥離工程)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図9に示す手順でワーク100を加工する場合、BGフィルム103がバンプ102の分だけワーク100の中央が外周より盛り上がるため、BGフィルム103の外周とチャックテーブル105との間の隙間からリークが生じてワーク100の吸着保持が不十分になりがちで、研削時にワーク100がばたつき易くなり、ワーク100にダメージを与える虞があった。さらに、ワーク100の外周側が中央側より厚く研削されがちなため、その後のML工程では、改質ライン107がワーク100の深さ方向で大きくずれて形成され、搬送工程でチャック108とワーク100との間で負圧が生じたり、剥離工程でBGフィルム103の粘着力を上回る剥離力がワーク100に作用すると、ワーク100内に画像検査でも検出不能なほど微小なクラックが生じる虞があった。
【0007】
そこで、表面にバンプが形成されたワークを安全に加工するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るフライカット装置は、表面にバンプが形成されたバンプ領域と前記バンプ領域の周りの外周領域とを含むワークに貼付された保護フィルムの上面を切削するフライカット装置であって、フライカットツールと、前記フライカットツールが下端に取り付けられ、前記フライカットツールを回転させた状態で昇降可能なツールスピンドルと、前記ワークを回転可能に保持するチャックと、を備え、前記フライカットツールが、前記保護フィルムの上面を中心から外周に向かって切削する。
【0009】
この構成によれば、保護フィルムのうち中央領域が外周領域より相対的に薄く切削されることにより、保護フィルムの上面側をチャックで吸着保持した場合に、保護フィルム全面がチャックに吸着保持可能なため、ワークを安全に研削することができるとともに、ML工程において改質ラインがワークの裏面から略一定の深さに形成されるため、搬送工程や剥離工程においてワーク内に微小なクラックが生じることを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、バンプ付きワークを全面に亘って略均一な厚みに形成されるため、保護フィルム全面がチャックに吸着保持されて、ワークを安全に研削することができるとともに、ML工程において改質ラインがワークの裏面から略一定の深さに形成されるため、搬送工程や剥離工程においてワーク内に微小なクラックが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフライカット装置の概要を示す模式図である。
【
図2】(a)は、フライカットツールの斜視図である。(b)は、フライカットツールの要部拡大図である。
【
図3】フライカットラインの位置、厚みセンサの測定位置を示す平面図である。
【
図4】(a)は、ワークの平面図である。(b)は、ワークの縦断面図である。(c)は、ワークの要部拡大図である。
【
図5】バンプ付きワークを加工する手順を示す模式図である。
【
図6】BGフィルムを切削する手順を示す模式図である。
【
図7】隣り合うフライカットラインの位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図8】フライカットツール及びチャックの位置関係を模式的に示す側面図である。
【
図9】従来のバンプ付きワークを加工する手順を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0013】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0014】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0015】
図1に示すフライカット装置1には、後述するシリコン製のワーク7が供給される。フライカット装置1は、切削手段2と、チャック3と、を備えている。
【0016】
切削手段2は、フライカットツール21と、ツールスピンドル22と、スピンドル送り機構23と、を備えている。
【0017】
図2(a)、(b)に示すように、フライカットツール21は、ツールスピンドル22の下端に取り付けられるリングフレーム21aと、リングフレーム21aの外周に装着されたバイト21bと、を備えている。リングフレーム21aは、例えばボルト等を介してツールスピンドル22に取り付けられる。また、バイト21bは、ボルト21cを介してリングフレーム21aに装着されるため、バイト21bが消耗した場合には、バイト21bのみを交換可能である。バイト21bは、例えば単石ダイヤモンドである。
【0018】
ツールスピンドル22は、回転軸22a回りに
図1中の矢印A方向に回転駆動するように構成されている。ツールスピンドル22の回転駆動には、誘導モータが用いられている。なお、ツールスピンドル22の回転方向は、
図1中の矢印Aの向きに限定されず、反対向きであっても構わない。
【0019】
スピンドル送り機構23は、ツールスピンドル22を上下方向に昇降させる。スピンドル送り機構23は、例えば、ツールスピンドル22の移動方向を案内する複数のリニアガイドと、ツールスピンドル22を昇降させるボールネジスライダ機構と、で構成されている。スピンドル送り機構23は、ツールスピンドル22とコラム24との間に介装されている。
【0020】
チャック3は、チャックスピンドル31を備えている。チャックスピンドル31は、回転軸31a回りに
図1中の矢印B方向に回転駆動するように構成されている。なお、チャックスピンドル31の回転方向は、
図1中の矢印Bの向きに限定されず、反対向きであっても構わない。
【0021】
チャック3は、上面にアルミナ等の多孔質材料からなる吸着体32が埋設されている。吸着体32の気孔の粗さは、例えば#400又は#800等である。チャック3は、内部を通って表面に延びる図示しない管路を備えている。管路は、図示しないロータリージョイントを介して真空源、圧縮空気源又は給水源に接続されている。真空源が起動すると、吸着体32に載置されたワーク7がチャック3の保持面3aに吸着保持される。また、圧縮空気源又は給水源が起動すると、ワーク7と保持面3aとの吸着が解除される。
【0022】
フライカット装置1は、冷却水ノズル4を備えている。冷却水ノズル4は、バイト21bが後述するBGフィルム75を切削するフライカットラインLに純水等の冷却水を供給する。
【0023】
フライカット装置1は、厚みセンサ5を備えている。厚みセンサ5は、ワーク7の厚みを測定するインプロセスゲージであり、具体的には、
図3に示すように、一方の測定ヘッド51がワーク7の高さを測定し、他方の測定ヘッド52がチャック3の高さを測定し、それらの差分からチャック3に対するワーク7を加工中に測定することができる。
【0024】
フライカット装置1の動作は、制御部6によって制御される。制御部6は、フライカット装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御部6は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御部6の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0025】
また、制御部6は、厚みセンサ5の測定値、ツールスピンドル22の回転数、チャックスピンドル31の回転数及びスピンドル送り機構23の降下速度に基づいて、BGフィルム75が仕上がり厚みに達する時間を演算する切削時間予測部としても機能する。
【0026】
ワーク7は、
図4(a)、(b)に示すように、バンプ71を備えた図示しない複数のチップが表面72に形成されている。具体的には、ワーク7は、複数のチップがワーク7の表面72における中央領域73にのみ形成されており、各チップには、電気接点としてのバンプ71が形成されている。すなわち、チップ及びバンプ71は、ワーク7の外周領域74には形成されていない。以下、中央領域73をバンプ領域73という。バンプ71の高さは、例えば100μm以下である。
【0027】
ワーク7の表面72側には、全面を覆うようにBGフィルム75が貼り付けられている。BGフィルム75は、後述する切削時や裏面76の研削時に、チップ及びバンプ71を保護する。
図4(b)、(c)に示すように、BGフィルム75は、バンプ領域73が、バンプ71の高さに応じて外周領域74よりも相対的に高くなっている。
【0028】
次に、ワーク7を加工する一連の手順について、
図5に基づいて説明する。
【0029】
[BGフィルム貼付]
まず、公知のフィルム貼付装置を用いて、ワーク7の表面72にBGフィルム75が貼り付けられる。BGフィルム75は、基材75aと粘着剤75bとから成り、例えば、基材75aがポリオレフィン製であり、粘着剤75bがアクリル製である。
【0030】
[BGフィルム切削]
次に、フライカット装置1を用いて、BGフィルム75の上面75cを切削する。具体的には、まず、ワーク7の裏面76がチャック3に吸着保持される。次に、ツールスピンドル22及びチャックスピンドル31をそれぞれ回転させた状態で、冷却水ノズル4から冷却水を供給しながら、スピンドル送り機構23がバイト21bをBGフィルム75に切り込ませる。
【0031】
図6(a)~(c)及び
図7(a)に示すように、バイト21bは、BGフィルム75の上面75cを中心から外周に向けて切削する。バイト21bが、BGフィルム75の外周から中心に向かって切削する場合には、バイト21bが当たるBGフィルム75の周縁が弾性変形して所望の形状に切削できない虞があるのに対して、バイト21bが、BGフィルム75の中心から外周に向けて切削することにより、BGフィルム75を安定して切削することができる。各種切削条件は、例えば、ツールスピンドル22の回転量が3000rpm、チャックスピンドル31の回転量が1rpm、スピンドル送り機構23の降下速度が0.2μm/s等である。
【0032】
また、バイト21bが1度の切削で除去するBGフィルム75の除去量(フライカットラインLのサイズ)は、上述した切削条件の場合、厚み(深さ)は12μmとなる。さらに、
図7(a)~(c)に示すように、バイト21bがBGフィルム75を切削した後、バイト21bが1回転する間のBGフィルム75の回転量(0.3mm)は、隣り合うフライカットラインLのピッチ間隔に相当する。
【0033】
また、
図8に示すように、チャック3は、回転軸31aがツールスピンドル22の回転軸22aに対して傾斜し、チャック3の保持面3aが、中央が外周に比べて高い中凸状に形成されている。すなわち、バイト21bがBGフィルム75を切削する範囲では、チャック3とツールスピンドル22とが略平行である一方、チャック3の回転中心を挟んでバイト21bがBGフィルム75を切削する範囲の反対側では、チャック3がツールスピンドル22から離間するようになっている。これにより、バイト21bが、BGフィルム75の外周から外部に切り抜けた後にBGフィルム75の中心に戻るまでの間、BGフィルム75とバイト21bとの間に隙間が確保されているため、バイト21bが意図しない位置でBGフィルム75に接触することが抑制される。なお、
図7では、保持面3aの下端からチャック3の回転中心までの距離であるエスケープ量を60μmに設定している。
【0034】
BGフィルム75の切削終了のタイミングは、以下の手順により決定される。すなわち、厚みセンサ5が、加工中にチャック3に対するワーク7の厚みを測定する。制御部6は、厚みセンサ5の測定値、ツールスピンドル22の回転数、チャックスピンドル31の回転数及びスピンドル送り機構23の降下速度に基づいて、厚みセンサ5の測定値が予め設定されたワーク7の仕上がり厚みに達するまでの時間を演算し、その時間が経過すると、制御部6は、加工中のワーク7の厚みが仕上がり厚みに達したとして、
図6(d)に示すように、スピンドル送り機構23による送りを停止させる。
【0035】
なお、厚みセンサ5は、
図3に示すように、直近のフライカットラインLとは異なる地点においてワーク7の高さを測定するため、厚みセンサ5の測定位置と直近のフライカットラインLとの位置関係を考慮する必要がある。例えば、
図3の厚みセンサ5の測定位置におけるワーク7の厚みは、直近のフライカットラインLでのワーク7の厚みより約12μm程度厚くなるため、厚みセンサ5の測定値から約12μmを減じて、厚みセンサ5の測定値を直近のフライカットラインLにおけるワーク7の厚みに略一致するように補正しても構わない。なお、フライカット後のBGフィルム75の形状(すなわち、フライカットによる総除去量)は、バンプ71の高さに応じて任意に変更可能である。
【0036】
ワーク7が仕上がり厚みに達すると、BGフィルム75の上面75cは螺旋状の曲面であり、さらに、
図6(d)に示すように直近のフライカットラインLにおける段差77が形成されている。そこで、
図6(e)に示すように、スピンドル送り機構23が停止した状態で、ツールスピンドル22及びチャックスピンドル31をそれぞれ回転させるスパークアウトを行うことにより、BGフィルム75の上面75cが滑らかに仕上げられる。
【0037】
このようにして、BGフィルム75の上面75cうち、外周領域74に対して相対的に厚く形成された中央領域73をバイト21bで除去することにより、BGフィルム75を含むワーク7の厚みを全面に亘って略均一に形成することができる。
【0038】
[ワーク研削]
次に、ワーク7が公知の研削装置に搬送されて、研削砥石81でワーク7の裏面研削を行う。このとき、BGフィルム75の上面75cがフライカットされていることにより、バンプ71にかかわらず、BGフィルム75の上面75c全面が略平坦に研削チャック82に吸着保持されるため、ワーク7の外周での真空漏れや研削時のワーク7のばたつきが抑制され、研削後のワーク7の裏面76が、略平坦に形成される。
【0039】
[レーザダイシング]
次に、ワーク7が公知のレーザダイシング装置に搬送されて、ワーク7を透過する波長のレーザをワーク7内に集光させてワーク7に平面視で格子状に改質ライン78を形成するレーザダイシング(ML)を行う。改質ライン78は、ワーク7を個片化する際にワーク7の分割起点となるものである。BGフィルム75の上面75cがフライカットされていることにより、バンプ71にかかわらず、BGフィルム75が略平坦にMLチャック83に吸着保持されるとともに、ワーク7の裏面76が略平坦に研削されていることから、改質ライン78をワーク7の裏面76から所定深さに安定して形成することができる。
【0040】
[ワーク搬送]
次に、公知の搬送アームのチャック84にワーク7の裏面76が吸着保持されて、ワーク7がダイシング(DC)テープ貼付装置に搬送される。このとき、改質ライン78がワーク7の裏面76から所定深さに均一に形成されていることから、ワーク7を負圧で吸引しても、ワーク7内にクラックが生じることなく、ワーク7を安全に搬送することができる。
【0041】
[DCテープ貼付、BGフィルム剥離]
次に、公知のDCテープ貼付装置を用いて、チャック85に転置されたワーク7がDCテープ86を介してダイシングフレーム87に貼着される。DCテープ86の貼付は、転圧ローラ88がワーク7の裏面76にDCテープ86を押し付けることで行われる。このとき、改質ライン78がワーク7の裏面76から所定深さに均一に形成されていることから、転圧ローラ88がワーク7を押圧しても、ワーク7内にクラックが生じることなく、DCテープ86を安全に貼付することができる。
【0042】
その後、公知の剥離装置を用いて、ワーク7からBGフィルム75を剥離する。BGフィルム75の剥離は、BGフィルム75に圧着された剥離テープ89を巻き上げることにより、BGフィルム75がワーク7の表面72から剥離される。このとき、改質ライン78がワーク7の裏面76から所定深さに均一に形成されていることから、BGフィルム75がワーク7から剥離する際にも、ワーク7内にクラックが生じることなく、DCテープ86を安全に貼付することができる。
【0043】
以上説明したとおり、本発明の実施形態に係るフライカット装置1は、表面72にバンプ71が形成されたバンプ領域73とバンプ領域73の周りの外周領域74とを含むワーク7に貼付されたBGフィルム75の上面75cを切削するフライカット装置1であって、フライカットツール21と、フライカットツール21が下端に取り付けられ、フライカットツール21を回転させた状態で昇降可能なツールスピンドル22と、ワーク7を回転可能に保持するチャック3と、を備え、フライカットツール21が、BGフィルム75の上面75cを中心から外周に向かって切削する構成とした。
【0044】
この構成によれば、BGフィルム75のうち中央領域73が外周領域74より相対的に薄く切削されることにより、BGフィルム75の上面75c側をチャック3で吸着保持した場合に、BGフィルム75全面がチャック3に吸着保持可能なため、ワーク7を安全に研削することができるとともに、ML工程において改質ライン78がワーク7の裏面76から略一定の深さに形成されるため、ワーク7を搬送する際、DCテープ86を貼付する際又はBGフィルム75を剥離する際に、ワーク7内に微小なクラックが生じることを抑制できる。
【0045】
また、フライカット装置1は、フライカットツール21が、ツールスピンドル22に取り付けられるリングフレーム21aと、リングフレーム21aの外周に装着され、BGフィルム75を切削可能なバイト21bと、を備えている構成とした。
【0046】
この構成によれば、ツールスピンドル22にリングフレーム21aを介してバイト21bを装着することができる。
【0047】
また、フライカット装置1は、チャック3の回転軸31aは、所定角度だけ傾斜して設定され、チャック3のワーク7を保持する保持面3aは、中央が外周に比べて高い中凸状に形成されている構成とした。
【0048】
この構成によれば、バイト21bが、BGフィルム75の外周から外部に切り抜けた後にBGフィルム75の中心に戻るまでの間に、BGフィルム75とバイト21bとの間に隙間が確保されるため、バイト21bが意図しない位置でBGフィルム75に接触することが抑制される。
【0049】
また、フライカット装置1は、BGフィルム75の上面75cに冷却水を供給する冷却水ノズル4を備えている構成とした。
【0050】
この構成によれば、BGフィルム75を切削する際に、BGフィルム75が過度に昇温することを抑制できる。
【0051】
また、フライカット装置1は、フライカットツール21による切削中にBGフィルム75の厚みを測定する厚みセンサ5と、厚みセンサ5の測定値、フライカットツール21の回転数、チャック3の回転数及びツールスピンドル22の降下速度に基づいて、BGフィルム75が仕上がり厚みに達する時間を演算する制御部6と、を備えている構成とした。
【0052】
この構成によれば、BGフィルム75の仕上がり厚みを適切に管理することができる。
【0053】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0054】
1 :フライカット装置
2 :切削手段
21 :フライカットツール
21a :リングフレーム
21b :バイト
21c :ボルト
22 :ツールスピンドル
22a :回転軸
23 :スピンドル送り機構
24 :コラム
3 :チャック
3a :保持面
31 :チャックスピンドル
31a :回転軸
32 :吸着体
4 :冷却水ノズル
5 :厚みセンサ
51、52:測定ヘッド
6 :制御部
7 :ワーク
71 :バンプ
72 :表面
73 :バンプ領域
74 :外周領域
75 :BGフィルム
75a :基材
75b :粘着剤
75c :上面
76 :裏面
77 :段差
78 :改質ライン
L :フライカットライン