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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】生理用吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20240930BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20240930BHJP
   A61F 13/515 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
A61F13/532 200
A61F13/47 100
A61F13/515
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022203785
(22)【出願日】2022-12-20
(65)【公開番号】P2024088545
(43)【公開日】2024-07-02
【審査請求日】2024-03-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 風花
(72)【発明者】
【氏名】黒田 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 青
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-179230(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150378(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/119409(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、
液体吸収性繊維を有する吸収性コアと、
前記吸収性コアより肌側に位置する肌側シート部と、
前記吸収性コアより非肌側に位置する非肌側シート部と、
前記幅方向の両外側に延出する一対のウイング部と、
を有し、
前記一対のウイング部の前記厚さ方向の非肌側面には、接着剤が塗布されたウイング粘着部がそれぞれ設けられた
生理用吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、前記厚さ方向に貫通し、且つ、前記長手方向に沿った一対の開口部を備え、
前記開口部の少なくとも一部は、前記長手方向において前記ウイング粘着部と重なる位置に設けられており、
前記開口部の輪郭に外側から隣接する隣接部を有し、
前記隣接部に外側から隣接し、前記隣接部より前記液体吸収性繊維の坪量が高い高坪量部を有し、
前記厚さ方向に見て、前記開口部と重なる位置において、前記肌側シート部と前記非肌側シート部とが接合した接合部を有し、
前記吸収性コアにおいて、
前記高坪量部の全体における前記液体吸収性繊維の密度は、前記隣接部における前記液体吸収性繊維の密度より高い
ことを特徴とする生理用吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の生理用吸収性物品であって、
前記非肌側シート部より非肌側に位置するバックシートを有し、
前記バックシートの非肌側面には、接着剤が塗布された本体粘着部が設けられており、
前記厚さ方向に見て、前記開口部は、それぞれ前記本体粘着部と重なる部分を有することを特徴とする生理用吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の生理用吸収性物品であって、
一対の前記開口部は、前記幅方向に離間していることを特徴とする生理用吸収性物品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の生理用吸収性物品であって、
前記隣接部は、隣接する前記開口部に向かって突出する凸部を有することを特徴とする生理用吸収性物品。
【請求項5】
請求項4に記載に記載の生理用吸収性物品であって、
前記凸部において、
前記幅方向における前記凸部の先端側の前記液体吸収性繊維の坪量が、
前記幅方向における前記凸部の根元側の前記液体吸収性繊維の坪量より低いことを特徴とする生理用吸収性物品。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の生理用吸収性物品であって、
前記接合部の前記厚さ方向における中央が、前記生理用吸収性物品の前記厚さ方向における中央より非肌側に設けられていることを特徴とする生理用吸収性物品。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の生理用吸収性物品であって、
前記非肌側シート部より非肌側に位置するバックシートを有し、
前記バックシートの非肌側面には、接着剤が塗布された本体粘着部が設けられており、
前記厚さ方向において、前記接合部と前記バックシートとが離間していることを特徴とする生理用吸収性物品。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の生理用吸収性物品であって、
前記吸収性コアの前記厚さ方向における中央より肌側に位置する前記隣接部の前記液体吸収性繊維の量が、
前記吸収性コアの前記厚さ方向における中央より非肌側に位置する前記隣接部の前記液体吸収性繊維の量より多いことを特徴とする生理用吸収性物品。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の生理用吸収性物品であって、
前記吸収性コアの前記厚さ方向における中央より非肌側に位置する前記隣接部の前記液体吸収性繊維の量が、
前記吸収性コアの前記厚さ方向における中央より肌側に位置する前記隣接部の前記液体吸収性繊維の量より多いことを特徴とする生理用吸収性物品。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の生理用吸収性物品であって、
前記肌側シート部より肌側に位置する表面シートを有し、
少なくとも、前記表面シートと前記肌側シート部と前記非肌側シート部とを前記厚さ方向に圧搾した圧搾部を備え、
前記圧搾部は、前記長手方向に沿っており、
前記厚さ方向に見て、前記開口部と前記圧搾部とが重なる部分を有することを特徴とする生理用吸収性物品。
【請求項11】
請求項10に記載の生理用吸収性物品であって、
前記幅方向の一方側に位置する前記開口部は、前記幅方向の外側に湾曲する外側湾曲開口部を備え、
前記長手方向における前記ウイング粘着部と重なる位置において、前記圧搾部が、前記幅方向の外側に湾曲する外側湾曲圧搾部を有することを特徴とする生理用吸収性物品。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の生理用吸収性物品であって、
前記開口部は、前記長手方向に離間した第1開口部と第2開口部を備えることを特徴とする生理用吸収性物品。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の生理用吸収性物品であって、
前記開口部より前側に前側開口部と、前記開口部より後側に後側開口部を有し、
前記前側開口部と前記開口部と前記後側開口部は、互いに離間して設けられていることを特徴とする生理用吸収性物品。
【請求項14】
請求項13に記載の生理用吸収性物品であって、
前記肌側シート部より肌側に位置する表面シートを有し、
少なくとも、前記表面シートと前記肌側シート部と前記非肌側シート部とを前記厚さ方向に圧搾した圧搾部を備え、
前記圧搾部は、前記長手方向に沿っており、
前記厚さ方向に見て、前記圧搾部は、それぞれ、前記開口部と前記前側開口部と前記後側開口部と重なる部分を有することを特徴とする生理用吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
経血などの排泄物を吸収する吸収性物品として生理用ナプキン等が知られている。例えば、特許文献1には、排泄液を吸収しつつ、適度な柔軟性とフィット性を有する吸収性物品とするために、吸収体に高坪量部と低坪量部を設け、高坪量部と低坪量部を跨ぐように形成された溝を設けることが開示されている。特許文献1の吸収性物品は、それぞれ、長手方向及び幅方向に直線状に配された低坪量部を有しており、低坪量部は、吸収体の全域に亘って設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開第2012-245130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の吸収性物品は、吸収体の全域に亘って設けられた低坪量領域により吸収体が変形しやすくなりすぎてしまい、着用状態において、吸収性物品がヨレてしまったり、排泄液が吸収性物品の幅方向の外側から漏れてしまったりする恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、長手方向への排泄物の拡散を促しやすくしつつ、生理用吸収性物品のヨレを軽減させやすい生理用吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、液体吸収性繊維を有する吸収性コアと、前記吸収性コアより肌側に位置する肌側シート部と、前記吸収性コアより非肌側に位置する非肌側シート部と、前記幅方向の両外側に延出する一対のウイング部と、を有し、前記一対のウイング部の前記厚さ方向の非肌側面には、接着剤が塗布されたウイング粘着部がそれぞれ設けられた生理用吸収性物品であって、前記吸収性コアは、前記厚さ方向に貫通し、且つ、前記長手方向に沿った一対の開口部を備え、前記開口部の少なくとも一部は、前記長手方向において前記ウイング粘着部と重なる位置に設けられており、前記開口部の輪郭に外側から隣接する隣接部を有し、前記隣接部に外側から隣接し、前記隣接部より前記液体吸収性繊維の坪量が高い高坪量部を有し、前記厚さ方向に見て、前記開口部と重なる位置において、前記肌側シート部と前記非肌側シート部とが接合した接合部を有し、前記吸収性コアにおいて、前記高坪量部の全体における前記液体吸収性繊維の密度は、前記隣接部における前記液体吸収性繊維の密度より高いことを特徴とする生理用吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長手方向への排泄物の拡散を促しやすくしつつ、生理用吸収性物品のヨレを軽減させやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ナプキン1を肌側から見た平面図である。
図2】ナプキン1を非肌側から見た平面図である。
図3図1中のA―A矢視概略断面図である。
図4図4Aは、吸収性コア11の平面図である。図4Bは、図4A中のJ―J矢視概略断面図である。
図5図4A中のK―K矢視概略断面図である。
図6図3中の吸収体10の拡大図である。
図7】ナプキン1における排泄物の拡散を説明する図である。
図8図4A中の部分Xの拡大図である。
図9】吸収性コア11の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
態様1は、長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、液体吸収性繊維を有する吸収性コアと、前記吸収性コアより肌側に位置する肌側シート部と、前記吸収性コアより非肌側に位置する非肌側シート部と、前記幅方向の両外側に延出する一対のウイング部と、を有し、前記一対のウイング部の前記厚さ方向の非肌側面には、接着剤が塗布されたウイング粘着部がそれぞれ設けられた生理用吸収性物品であって、前記吸収性コアは、前記厚さ方向に貫通し、且つ、前記長手方向に沿った一対の開口部を備え、前記開口部の少なくとも一部は、前記長手方向において前記ウイング粘着部と重なる位置に設けられており、前記開口部の輪郭に外側から隣接する隣接部を有し、前記隣接部に外側から隣接し、前記隣接部より前記液体吸収性繊維の坪量が高い高坪量部を有し、前記厚さ方向に見て、前記開口部と重なる位置において、前記肌側シート部と前記非肌側シート部とが接合した接合部を有することを特徴とする生理用吸収性物品である。
【0010】
態様1によれば、開口部と高坪量部との間に、高坪量部よりも液体吸収性繊維の坪量が低い隣接部を有することによって、開口部の形状に沿うように長手方向への排泄物の拡散を促しやすくしつつ、開口部に設けられた接合部によって、肌側シート部と非肌側シート部と吸収体とを一体的に変形させやすくなるため、生理用吸収性物品のヨレを軽減させやすくなる。
【0011】
態様2は、前記吸収性コアにおいて、前記高坪量部における前記液体吸収性繊維の密度は、前記隣接部における前記液体吸収性繊維の密度より高い態様1に記載の生理用吸収性物品である。
【0012】
態様2によれば、吸収性コアで吸収された排泄物は、毛細管現象により、開口部における拡散よりも隣接部における拡散を促しやすくなり、且つ隣接部における拡散よりも高坪量部における拡散を促しやすくなるため、長手方向に沿った形状の開口部に沿って排泄物の拡散を促しやすくなることで、生理用吸収性物品の幅方向の外側から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0013】
態様3は、前記非肌側シート部より非肌側に位置するバックシートを有し、前記バックシートの非肌側面には、接着剤が塗布された本体粘着部が設けられており、前記厚さ方向に見て、前記開口部は、それぞれ前記本体粘着部と重なる部分を有する態様1又は2に記載の生理用吸収性物品である。
【0014】
態様3によれば、生理用吸収性物品を装着する際や、着用状態において、開口部の形状を維持した状態で生理用吸収性物品を着衣に固定しやすくなるため、開口部の形状が幅方向に潰れてしまう恐れを軽減させることができ、長手方向への排泄物の拡散を促しやすくしつつ、生理用吸収性物品のヨレを軽減させやすくなる。
【0015】
態様4は、一対の前記開口部は、前記幅方向に離間している態様1から3のいずれかに記載の生理用吸収性物品である。
【0016】
態様4によれば、幅方向への排泄物の拡散を軽減させやすくなる。
【0017】
態様5は、前記隣接部は、隣接する前記開口部に向かって突出する凸部を有する態様1から4のいずれかに記載の生理用吸収性物品である。
【0018】
態様5によれば、生理用吸収性物品が吸収した排泄物が、開口部で拡散する前に隣接部に沿って拡散することを促しやすくなるため、開口部への拡散を軽減させつつ、生理用吸収性物品の横方向の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0019】
態様6は、前記凸部において、前記幅方向における前記凸部の先端側の前記液体吸収性繊維の坪量が、前記幅方向における前記凸部の根元側の前記液体吸収性繊維の坪量より低い態様5に記載の生理用吸収性物品である。
【0020】
態様6によれば、毛細管現象によって、凸部における根元側における排泄物の拡散を促しやすくなり、開口部への拡散を軽減させて、生理用吸収性物品の横方向の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0021】
態様7は、前記接合部の前記厚さ方向における中央が、前記生理用吸収性物品の前記厚さ方向における中央より非肌側に設けられている態様1から6のいずれかに記載の生理用吸収性物品である。
【0022】
態様7によれば、接合部を生理用吸収性物品の厚さ方向における中央より肌側に設けた場合よりも、生理用吸収性物品が吸収した排泄物を厚さ方向における非肌側の部分で拡散させやすくなるため、着用者の肌に吸収した排泄物が当接し続ける恐れを軽減させ、不快感を軽減させることができる。
【0023】
態様8は、前記非肌側シート部より非肌側に位置するバックシートを有し、前記バックシートの非肌側面には、接着剤が塗布された本体粘着部が設けられており、前記厚さ方向において、前記接合部と前記バックシートとが離間している態様1から7のいずれかに記載の生理用吸収性物品である。
【0024】
態様8によれば、バックシートに設けられた本体粘着部によって生理用吸収性物品を着衣に固定しつつ、バックシートと離間した接合部を備えることで、着用者の身体の形状や動きに応じて吸収性コアを動かしやすくなるため、着用時におけるフィット感を向上させることができる。また、着衣から伝わる力と着用者の身体の形状や動きによる力との両方が接合部や開口部に加わることを軽減させることができるため、開口部の貫通した形状を維持しやすくなる。
【0025】
態様9は、前記吸収性コアの前記厚さ方向における中央より肌側に位置する前記隣接部の前記液体吸収性繊維の量が、前記吸収性コアの前記厚さ方向における中央より非肌側に位置する前記隣接部の前記液体吸収性繊維の量より多い態様1から8のいずれかに記載の生理用吸収性物品である。
【0026】
態様9によれば、吸収性コアの厚さ方向における中央より肌側に位置する隣接部の液体吸収性繊維の量を、吸収性コアの厚さ方向における中央より非肌側に位置する隣接部の液体吸収性繊維の量を少なくした場合よりも、吸収性コアの肌側から吸収した排泄物が開口部に隣接する隣接部で拡散しやすくなることで、開口部の輪郭に沿って拡散しやすくなり、開口部の内側に拡散が進むことを軽減させて、排泄物の長手方向への拡散を促しやすくなる。
【0027】
態様10は、前記吸収性コアの前記厚さ方向における中央より非肌側に位置する前記隣接部の前記液体吸収性繊維の量が、前記吸収性コアの前記厚さ方向における中央より肌側に位置する前記隣接部の前記液体吸収性繊維の量より多い態様1から8のいずれかに記載の生理用吸収性物品である。
【0028】
態様10によれば、吸収性コアの厚さ方向における中央より非肌側に位置する隣接部の液体吸収性繊維の量を、吸収性コアの厚さ方向における中央より肌側に位置する隣接部の液体吸収性繊維の量より少なくした場合よりも、着用状態で吸収性コアが吸収した排泄物を着用者の肌から離れた位置で拡散させやすくなるため、一旦吸収した排泄物が再び着用者の肌に当接する恐れを軽減させることができる。
【0029】
態様11は、前記肌側シート部より肌側に位置する表面シートを有し、少なくとも、前記表面シートと前記肌側シート部と前記非肌側シート部とを前記厚さ方向に圧搾した圧搾部を備え、前記圧搾部は、前記長手方向に沿っており、前記厚さ方向に見て、前記開口部と前記圧搾部とが重なる部分を有する態様1から10のいずれかに記載の生理用吸収性物品である。
【0030】
態様11によれば、厚さ方向に見て開口部と重なる位置に設けられた圧搾部により、生理用吸収性物品が過度に硬くなる恐れを軽減させつつ、排泄物の長手方向への拡散を促し、且つ開口部における接合部の接合をより強固にさせやすくなる。
【0031】
態様12は、前記幅方向の一方側に位置する前記開口部は、前記幅方向の外側に湾曲する外側湾曲開口部を備え、前記長手方向における前記ウイング粘着部と重なる位置において、前記圧搾部が、前記幅方向の外側に湾曲する外側湾曲圧搾部を有する態様11に記載の生理用吸収性物品である。
【0032】
態様12によれば、長手方向におけるウイング粘着部と重なる位置において、圧搾部を開口部の形状に沿う形状とすることで、生理用吸収性物品が過度に硬くなる恐れを軽減させつつ、開口部における接合部の接合をより広い範囲で強固にさせやすくなる。
【0033】
態様13は、前記開口部は、前記長手方向に離間した第1開口部と第2開口部を備える態様1から12のいずれかに記載の生理用吸収性物品である。
【0034】
態様13によれば、着用状態における外部からの力によって、開口部の全てが幅方向に潰れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0035】
態様14は、前記開口部より前側に前側開口部と、前記開口部より後側に後側開口部を有し、前記前側開口部と前記開口部と前記後側開口部は、互いに離間して設けられている態様1から13のいずれかに記載の生理用吸収性物品である。
【0036】
態様14によれば、生理用吸収性物品の開口部より前側及び後側において長手方向への拡散を促しつつ、各開口部が互いに離間していることで、着用状態において、外部からの力によって、全ての開口部が潰れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0037】
態様15は、前記肌側シート部より肌側に位置する表面シートを有し、少なくとも、前記表面シートと前記肌側シート部と前記非肌側シート部とを前記厚さ方向に圧搾した圧搾部を備え、前記圧搾部は、前記長手方向に沿っており、前記厚さ方向に見て、前記圧搾部は、それぞれ、前記開口部と前記前側開口部と前記後側開口部と重なる部分を有する態様14に記載の生理用吸収性物品である。
【0038】
態様15によれば、生理用吸収性物品が過度に硬くなる恐れを軽減させつつ、排泄物の長手方向への拡散を促し、且つ各開口部における接合部の接合をより強固にさせやすくなる。
【0039】
===本実施形態===
以下、本実施形態に係る生理用吸収性物品の一例として、生理用ナプキンを例に挙げて説明する。ただし、生理用吸収性物品は生理用ナプキンに限定されず、ショーツ型ナプキン等であってもよい。
【0040】
<<<本実施形態のナプキン1の構成>>>
図1は、ナプキン1を肌側から見た平面図である。図2は、ナプキン1を非肌側から見た平面図である。図3は、図1中のA―A矢視概略断面図である。ナプキン1は、長手方向と幅方向と厚さ方向を有する。長手方向において、着用者の下腹部に当接する側を前側とし、着用者の臀部に当接する側を後側とする。厚さ方向において着用者の肌に当接する側が肌側であり、その反対側が非肌側である。図1等に示す中心線C-Cは、幅方向におけるナプキン1の中心を示し、中心線CLは、長手方向におけるナプキン1の中心を示す。図3は、ナプキン1の断面図を模式的に示しており、必ずしも寸法は正確ではない。
【0041】
ナプキン1は、吸収体10、トップシート21、一対のサイドシート23、バックシート31を有する。吸収体10より肌側で、トップシートより非肌側に、シート状のセカンドシート22を有してもよい。厚さ方向に互いに隣接する各資材はホットメルト等の接着剤で接合されている。
【0042】
ナプキン1は、長手方向の中央部に、幅方向の両外側に延出した一対のウイング部1Wを有する。ウイング部1Wは、主にサイドシート23とバックシート31によって形成されている。
【0043】
トップシート21は、吸収体10より肌側に位置する液透過性のシートである。トップシート21は、後述の肌側シート部12a(コアラップシート12)より肌側に位置する表面シートである。トップシート21としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の合成繊維からなる不織布(例えばエアスルー不織布やスパンボンド不織布等)や、貫通孔を有する合成樹脂フィルム、綿からなる不織布シート等の柔軟なシートを例示することができる。本実施形態のトップシート21は、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)、若しくは、コットンやレーヨン等の保水性繊維を含んだエアスルー不織布やスパンレース不織布の液透過性のシートで形成されている。
【0044】
一対のサイドシート23は、トップシート21及びセカンドシート22より非肌側で、吸収体10より肌側に設けられており、トップシート21等の幅方向の両側部からそれぞれ外側に延出したシートである。サイドシート23としては、トップシート21と同じ柔軟な液透過性の不織布や、疎水性の不織布等を例示することができる。また、トップシート21、セカンドシート22、及び吸収体10より幅方向の外側で、サイドシート23とバックシート31との厚さ方向の間には、サイドシート23の強度を補強するための補強シート24が設けられている。補強シート24としては、例えば、バックシート31と同様のシート部材、紙やSMS等のシート部材を用いることができる。
【0045】
バックシート31は、吸収体10より非肌側に位置するシートである。バックシート31としては、ポリエチレン(PE)の樹脂フィルム等の液不透過性のシートを例示することができる。バックシート31の形状は、ナプキン1の外形とほぼ同一である。
【0046】
バックシート31の非肌側面に複数の本体粘着部32を備える。本実施形態の本体粘着部32は、長手方向に沿った複数の帯状のホットメルト接着剤が塗布された領域である。ナプキン1の着用時には、本体粘着部32を下着(着衣)の股下部(クロッチ部)の内側に貼付することで、着用者の身体に対してナプキン1の位置がずれないようにすることができる。
【0047】
また、ウイング部1Wにおいて、バックシート31の非肌面側に、ウイング粘着部33を備える。本実施形態のウイング粘着部33は、矩形形状のホットメルト接着剤が塗布された領域である。ナプキン1の着用時には、ウイング部1Wを下着の非肌側面に折り返し、ウイング粘着部33を下着の股下部における非肌側面に貼付することで、ナプキン1を下着に固定することができる。
【0048】
長手方向においてウイング粘着部33と重なる位置(図1参照)は、股下領域CAである。股下領域CAは、着用状態において長手方向における着用者の股下と当接する領域であり、着用者の排泄物が排出される排血口と当接する領域である。
【0049】
吸収体10は、吸収性コア11と、コアラップシート12を有する。吸収性コア11としては、パルプ繊維、セルロース系吸収性繊維、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル、アクリレート等からなる合成繊維などの液体吸収性繊維を所定の形状に成形したものに高吸収性ポリマー(SAP)を加えたもの等を例示できる。図4Aは、吸収性コア11の平面図である。図4Bは、図4A中のJ―J矢視概略断面図である。図5は、図4A中のK―K矢視概略断面図である。なお、図4A図4B及び図5において、圧搾部EL等の圧搾部による凹凸を省略して示している。
【0050】
吸収性コア11は、液体吸収性繊維の坪量が異なる領域を有する。吸収性コア11は、一対の開口部11hを有する。開口部11hは、吸収性コア11が厚さ方向に貫通した部分で、液体吸収性繊維の坪量が零(0)の部分である。吸収性コア11は、開口部11hの輪郭に外側から隣接する隣接部11nを有する。また、隣接部11nに外側から隣接し、隣接部11nより液体吸収性繊維の坪量が高い高坪量部11fを有する。つまり、隣接部11nは、高坪量部11fより液体吸収性繊維の坪量が低い。高坪量部11fは、長手方向におけるウイング粘着部33と重なる位置で、且つ、幅方向における一対の開口部11hとの間に、周囲よりも厚みがある(厚さ方向の長さが長い)中高部11dを有する。高坪量部11fにおいて、中高部11dは、周囲よりも液体吸収性繊維の坪量がさらに高い部分である。本実施形態の中高部11dは、厚さ方向において非肌側に突出した部分であり、平面視で略楕円形状の領域である。中高部11dを吸収性コア11の幅方向における中央部で、且つ平面視で股下領域CAと重なる位置に設けることで、着用状態において着用者の排泄口から排出された排泄物を吸収性コア11内で保持しやすくなる。 なお、吸収性コア11の中高部11dを、厚さ方向の肌側に突出させてもよい。中高部11dを肌側に突出させることで、着用状態において、着用者の排泄口に当接させやすくなり、ナプキン1を着用者の身体にフィットさせやすくしつつ、排泄物を素早く吸収させやすくなる。
【0051】
一対の開口部11hは、幅方向に離間しており、長手方向に沿った形状である。本実施形態では、一対の開口部11hは、それぞれ長手方向に複数設けられており、吸収性コア11の幅方向の長さを3等分したうちの両外側にそれぞれ設けられている。なお、吸収性コア11を構成する液体吸収性繊維や高吸収性ポリマー(SAP)は、柔らかい素材であったり、流動的であったりすることから、開口部11hは、吸収性コア11が完全に貫通しており、液体吸収性繊維が全く設けられていない部分であるだけでなく、開口部11hには、多少の液体吸収性繊維や高吸収性ポリマー(SAP)等が含まれていてもよい。
【0052】
本実施形態の一対の開口部11hとして、それぞれ、長手方向の前側から順に第1開口部11ha、第2開口部11hb、第3開口部11hcが設けられている。具体的には、長手方向においてウイング粘着部33より前側に設けられた一対の第1開口部11ha、長手方向において少なくとも一部がウイング粘着部33と重なる位置に設けられた一対の第2開口部11hb、長手方向においてウイング粘着部33より後側に設けられた一対の第3開口部11hcが設けられている。第1開口部11ha、第2開口部11hb、第3開口部11hcは、それぞれ、長手方向に沿った、幅方向の長さより長手方向の長さが長い開口である。
【0053】
各開口部11hの外側に、隣接部11nが設けられている。具体的には、第1開口部11ha、第2開口部11hb、第3開口部11hcは、それぞれ、各開口部11ha、11hb、11hcの輪郭に外側から隣接する第1隣接部11na、第2隣接部11nb、第3隣接部11ncが設けられている。第1隣接部11na、第2隣接部11nb、第3隣接部11ncは、それぞれ、第1開口部11ha、第2開口部11hb、第3開口部11hcの輪郭の全域を囲むように設けられている。それぞれ、第1開口部11ha、第2開口部11hb、第3開口部11hcが、長手方向に沿った形状であることから、第1開口部11ha、第2開口部11hb、第3開口部11hcに外側から隣接する第1隣接部11na、第2隣接部11nb、第3隣接部11ncも、それぞれ、長手方向に沿った形状である。
【0054】
コアラップシート12は、液透過性のシート部材であり、例えば、ティッシュ等を例示できる。本実施形態では、コアラップシート12の両側端部を吸収性コア11の非肌側に折り返すことで、吸収性コア11の肌側面及び非肌側面をコアラップシート12で覆っているが、これに限られない。例えば、コアラップシート12を2枚のシート部材として、吸収性コア11の肌側と非肌側にそれぞれ配置する構成であってもよい。
【0055】
図6に示すように、コアラップシート12は、吸収性コア11より肌側に位置する肌側シート部12aと、吸収性コア11より非肌側に位置する非肌側シート部12bを有する。図6は、図3中の吸収体10の拡大図である。
【0056】
コアラップシート12は、肌側シート部12aの非肌側面に所定の塗布パターンでホットメルト接着剤等の接着剤を塗布し、非肌側シート部12bの肌側面に所定の塗布パターンで接着剤を塗布して、吸収性コア11に固定させている。図7における領域Sは、肌側シート部12aの非肌側面及び非肌側シート部12bの肌側面にそれぞれ接着剤を塗布した領域である。領域Sに塗布された接着剤によって、厚さ方向に見て各開口部11hと重なる位置において、肌側シート部12aと非肌側シート部12bとが接合され、接合部12sを形成する。領域Sにおける接着剤の塗布パターンとしては、スパイラルパターン、オメガ(Ω)パターン、波状パターン、線状(ストライプ)パターン等とすることができる。
【0057】
図1等に示すように、ナプキン1は、線状圧搾部ELを有する。線状圧搾部ELは、トップシート21、セカンドシート22、吸収体10の少なくとも一部を厚さ方向に圧搾した部分である。線状圧搾部ELを備えることで、各部材の厚さ方向の接合を強固にし、繊維の密度を高くして、液体の吸液性を向上させることができる。線状圧搾部ELは、平面視で長手方向に沿った線状の圧搾部であり、幅方向に所定の間隔を空けた状態で一対設けられている。
【0058】
また、幅方向における中央部、且つ、長手方向における股下領域CAと重なる位置に、複数の円形圧搾部eeを備える。円形圧搾部eeは、平面視で円形状の圧搾部であり、トップシート21、セカンドシート22、吸収体10の少なくとも一部を厚さ方向に圧搾した部分である。
【0059】
線状圧搾部EL及び円形圧搾部eeは、厚さ方向に重ねられた部材を押しつぶされた部分であるため、各圧搾部における各部材の繊維密度は、圧搾部が設けられていない部分の繊維密度よりも高い。線状圧搾部EL及び円形圧搾部eeは、例えば、複数の凸部を有する凸ローラーと、表面が平らなアンビルローラーとの間のロール間隙に製造過程のナプキン1を通して、圧搾することで形成される。
【0060】
<<<開口部11h及び隣接部11nについて>>>
従来、生理用ナプキン等の生理用吸収性物品は、幅方向への拡散よりも長手方向への拡散を促して排泄物の漏れを軽減させつつ、生理用吸収性物品を柔軟にして、着用中における快適性を向上させることが望まれている。しかし、長手方向への拡散を促すために、略矩形形状に液体吸収性繊維で成型された吸収性コアに長手方向に沿った圧搾部を設けると、吸収性コアの剛性が高くなり、着用者に違和感を与えてしまう恐れがある。一方、着用者の快適性を向上させるために、生理用吸収性物品の柔軟性を上げるほど、生理用吸収性物品がヨレやすくなり、生理強吸収性物品の変形によって、却って着用者に違和感を与えてしまう恐れがある。
【0061】
これに対し、ナプキン1は、一対の開口部11h(第2開口部hb)を備えることで、吸収性コア11の剛性を低下させて、ナプキン1の柔軟性を向上させている。そして、長手方向においてウイング粘着部33と重なる位置(股下領域CA)に、第2開口部11hbの少なくとも一部が設けられており、第2開口部11hbの輪郭に外側から隣接する第2隣接部11nbを有し、第2隣接部11nbに外側から隣接し、第2隣接部11nbより液体吸収性繊維の坪量が高い高坪量部11fを有している。
【0062】
図7は、ナプキン1における排泄物の拡散を説明する図である。図7において、便宜上、円形圧搾部eeや中高部11d等を省略して示している。図7に示すように、着用状態において、まず、長手方向においてウイング粘着部33と重なる位置である股下領域CAで、且つ、幅方向における中央部で経血等の排泄物を吸収する。この股下領域CAで、且つ、幅方向における中央部は、吸収性コア11の高坪量部11fであり、本実施形態のナプキン1では、中高部11dでもある。そして、吸収した排泄物は、長手方向及び幅方向の外側に向かってそれぞれ拡散し始める。幅方向の外側に向かって拡散した排泄物は、第2隣接部11nbに到達すると、毛細管現象及び親水性の違いにより、幅方向の外側に位置する第2開口部11hbよりも第2隣接部11nbに沿って長手方向の前側又は後側に向かって拡散しやすい。第2隣接部11nbは、第2開口部11hbよりも液体吸収性繊維の密度が高く、且つ、親水性が高い。これによって、排泄物を幅方向よりも長手方向に拡散させやすくなり、ナプキン1の幅方向の外側から排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0063】
また、厚さ方向に見て、第2開口部11hbと重なる位置において、肌側シート部12aと非肌側シート部12bとが接合した接合部12sを有する。ナプキン1では、上述のように、コアラップシート12の肌側シート部12aの非肌側面と非肌側シート部12bの肌側面にそれぞれ塗布された接着剤(図4Aにおける領域S)で、図6に示すように、肌側シート部12aと非肌側シート部12bが接合されて接合部12sとなる。第2開口部11hbを備えることで、吸収性コア11の形が崩れたり、ナプキン1がヨレやすくなったりする恐れがあるが、接合部12sを有することで、肌側シート部12aと非肌側シート部12bが吸収性コア11の形が崩れる恐れを軽減させることができる。また、吸収性コア11が排泄物を吸収すると、吸収性コア11が肌側シート部12a及び非肌側シート部12bと離れて変形する恐れがあるが、接合部12sを有することで、吸収性コア11を肌側シート部12a及び非肌側シート部12bと一体的に変形させやすくなり、着用者に与える違和感を軽減させることができる。
【0064】
吸収性コア11について、高坪量部11fにおける液体吸収性繊維の密度が、第2隣接部11nbの密度より高いことが好ましい。図7に示すように、吸収性コア11で吸収され、第2隣接部11nbまで到達した排泄物は、毛細管現象によって、第2開口部11hbへの拡散よりも、第2隣接部11nbへの拡散を促しやすくなり、且つ、第2隣接部11nbよりも高坪量部11fへの拡散を促しやすくなる。これによって、長手方向に沿った形状を有する第2開口部11hbに沿うように排泄物を拡散させやすくなるため、ナプキン1において、幅方向の外側へ向かう拡散よりも、長手方向の外側へ向かう拡散を促しやすくなり、ナプキン1の幅方向の外側から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0065】
上述のとおり、ナプキン1は非肌側シート部12bより非肌側に位置するバックシート31を有しており、バックシート31の非肌側面に本体粘着部32が設けられている。図2に示すように、厚さ方向に見て、第2開口部11hbが、それぞれ、本体粘着部32と重なる部分を有することが好ましい。特に、厚さ方向に見て、第2開口部11hbの輪郭の少なくとも一部が、それぞれ、本体粘着部32と重なる部分を有することが好ましい。これによって、ナプキン1を装着する際や、着用状態において、第2開口部11hbの形状を維持しやすくなるため、第2開口部11hbの形状を維持した状態でナプキン1を下着や衣服等の着衣に固定させやすくなる。第2開口部11hbの形状を維持した状態での着用状態とすることで、ナプキン1の幅方向への排泄物の拡散よりも長手方向への排泄物の拡散を促しつつ、第2開口部11hbの内側における接合部12sを維持しやすくなるため、ナプキン1のヨレを軽減させやすくなる。
【0066】
また、図1等に示すように、一対の第2開口部11hbは、幅方向に離間していることが好ましい。第2開口部11hbが互いに幅方向に離間した状態で設けられていることで、第2開口部11hb同士が連続している場合よりも、排泄物の幅方向の外側への拡散をより軽減させやすくなる。
【0067】
第2隣接部11nbが、隣接する第2開口部11hbに向かって突出する凸部tを有することが好ましい。図8は、図4A中の部分Xの拡大図である。本実施形態の吸収性コア11は、図8に示すように、第2隣接部11nbと第2開口部11hbとの境界が全域に亘って凹凸形状であり、この凹凸形状により、第2隣接部11nbは、第2開口部11hbに向かって突出する複数の凸部tが設けられている。第2隣接部11nbが凸部tを有することで、ナプキン1が吸収した排泄物が、第2開口部hb内に拡散する前に、第2隣接部11nbに沿って拡散することを促しやすくなる。また、第2隣接部11nbと第2開口部hbとの境界が凹凸形状であることで、第2隣接部11nbに沿う拡散をゆっくり進めやすくなる。これによって、第2開口部hbへの拡散を軽減させやすくなり、ナプキン1の横方向の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0068】
この凸部tにおいて、幅方向における凸部tの先端側の液体吸収性繊維の坪量が、幅方向における凸部の根元側の液体吸収性繊維の坪量より低いことが好ましい。凸部tにおける先端側は、吸収性コア11における第2開口部11hb側であり、凸部tにおける根元側は、第2開口部11hbとは反対側であり、高坪量部11f側である。凸部tにおいて、幅方向における先端側の液体吸収性繊維の坪量を幅方向における根元側の液体吸収性繊維の坪量より低くすることで、毛細管現象によって、凸部tの先端側よりも、凸部tの根元側における排泄物の拡散を促しやすくなる。これによって、第2開口部11hbの内側への拡散を軽減させて、ナプキン1の横方向の外側に排泄物が漏れる恐れを軽減させることができる。
【0069】
さらに、図8に示すように、幅方向の一方側に設けられた第2隣接部11nbにおいて、第2開口部11hbの太さの幅方向における中央chより一方側(幅方向の外側)に凸部t1が設けられ、第2開口部11hbの太さの幅方向における中央chより他方側(幅方向の内側)に凸部t2が設けられている。このとき、長手方向の凸部t1の幅方向の頂点p1の位置における凸部t1の頂点から凸部t1より幅方向の外側(一方側)に位置する高坪量部11fまでの幅方向の長さdp1より、長手方向における凸部t2の幅方向の頂点p2の位置における凸部t2の頂点から凸部t2より幅方向の内側(幅方向の内側)に位置する高坪量部11fまでの幅方向の長さdp2の方が長いことが好ましい。長さdp2を長さdp1より長くすることで、長さdp2を長さdp1より長くした場合よりも、第2開口部11hbの中央chより幅方向の内側での第2隣接部11nbでの拡散を促しやすくなるため、第2開口部11hbの中央chより幅方向の内側で、排泄物を長手方向に拡散させやすくなる。一方、第2隣接部11nbは高坪量部11fよりも柔らかい部分であるため、長さdp1を長さdp2より短くすることで、長さdp1を長さdp2より長くした場合よりも、ナプキン1に対して幅方向の外側から力が加えられた場合でも、第2開口部11hbの太さの幅方向における中央chより一方側(幅方向の外側)の形状が崩れる恐れを軽減させることができる。
【0070】
また、図3に示すように、接合部12sの厚さ方向における中央scが、ナプキン1の厚さ方向における中央より非肌側に設けられていることが好ましい。着用状態にナプキン1が排泄物を吸収した場合において、吸収性コア11における股下領域CAで、且つ、幅方向の中央部で吸収した排泄物は、第2開口部11hbの縁まで到達すると、厚さ方向において第2開口部11hbと重なる位置に設けられた肌側シート部12aと非肌側シート部12bで排泄物が拡散され得る。このとき、接合部12sの厚さ方向における中央を、ナプキン1の厚さ方向における中央より非肌側に設けることで、接合部12sの厚さ方向における中央scを、ナプキン1の厚さ方向における中央より肌側に設けた場合よりも、厚さ方向における非肌側の部分で排泄物を拡散させやすくなる。そのため、一旦ナプキン1が吸収した排泄物が、着用者の肌に当接し続ける恐れを軽減させることができ、着用者に与える不快感を軽減させやすくなる。
【0071】
この接合部12sについて、厚さ方向において、図3に示すように、接合部12sとバックシート31とが離間していることが好ましい。ナプキン1が、非肌側シート部12bより非肌側に位置するバックシート31の非肌側面に設けられた本体粘着部32でナプキン1を着衣に固定しつつ、バックシート31と離間した接合部12sを備えることで、着用者の身体の形状や動きに応じて吸収性コア11を動かしやすくなる。つまり、着用状態において、バックシート31が着衣に固定された状態で、バックシート31と離間した接合部12sや吸収性コア11の第2開口部11hbに相当する部分を、着衣への固定の影響を受けにくくして、着用者の身体の形状や動きに応じて変形させやすく、動かしやすくなる。そのため、着用時におけるフィット感を向上させ、着用時における快適性を向上させることができる。また、着用状態における着衣から伝わる力と着用者の身体の形状や動きによる力の両方が接合部12sや第2開口部11hbに加わることを軽減させることができるため、これらの力によって、第2開口部11hbが潰れてしまう恐れを軽減させることができる。第2開口部11hbの貫通した形状を維持することで、ナプキン1において、幅方向の外側へ向かう拡散よりも、長手方向の外側へ向かう拡散を促しやすくなり、ナプキン1の幅方向の外側から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0072】
図5等に示すように、吸収性コア11の厚さ方向の長さ(厚み)は、11Tであり、吸収性コア11の厚さ方向における中央11tc(11Tの1/2)より肌側に位置する第2隣接部11nbの液体吸収性繊維の量が、吸収性コアの厚さ方向における中央11tcより非肌側に位置する第2隣接部11nbの液体吸収性繊維の量より多いことが好ましい。これによって、吸収性コア11の厚さ方向における中央11tcより肌側に位置する第2隣接部11nbの液体吸収性繊維の量を、吸収性コア11の厚さ方向における中央11tcより非肌側に位置する第2隣接部11nbの液体吸収性繊維の量より少なくした場合よりも、ナプキン1の着用状態に、股下領域CAで、且つ、幅方向における中央部における吸収性コア11の肌側面から吸収した排泄物が水平方向に拡散した場合でも、第2開口部11hbに隣接する第2隣接部11nbの液体吸収性繊維が吸収性コア11の厚さ方向の中央11tcより肌側に多く設けられていることで、第2隣接部11nbの輪郭に沿うように排泄物が拡散しやすくなり、第2開口部11hbの内側に拡散が進む恐れを軽減させることができる。その結果、ナプキン1において、幅方向の外側へ向かう拡散よりも、長手方向の外側へ向かう拡散を促しやすくなり、ナプキン1の幅方向の外側から排泄物が漏れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0073】
また、ナプキン1は、線状圧搾部ELを備え、線状圧搾部ELは、厚さ方向において、少なくともトップシート21と肌側シート部12aと非肌側シート部12bとを厚さ方向に圧搾している。この線状圧搾部ELは、長手方向に沿うことが好ましく、厚さ方向に見て、第2開口部11hbと線状圧搾部ELとが重なる部分を有することが好ましい。具体的には、本実施形態のナプキン1では、図7等に示すように、厚さ方向において高坪量部11f及び隣接部11nと重なる部分では、線状圧搾部ELは、トップシート21とセカンドシート22と肌側シート部12aと吸収性コア11と非肌側シート部12bとを厚さ方向に圧搾しており、厚さ方向において開口部11hと重なる部分では、線状圧搾部ELは、トップシート21とセカンドシート22と肌側シート部12aと非肌側シート部12bとを厚さ方向に圧搾している。厚さ方向に見て第2開口部11hbと重なる位置に線状圧搾部ELを設けることで、第2開口部11hbと重ならない位置のみに線状圧搾部ELを設けた場合よりも吸収性コア11やナプキン1が過度に硬くなる恐れを軽減させることができる。また、厚さ方向に圧搾した線状圧搾部ELによって、各部材の繊維密度が高くなることから、第2開口部11hbの内側まで排泄物が達した場合でも、毛細管現象により、長手方向に沿った線状圧搾部ELに沿うように、排泄物を長手方向に拡散を促しやすくなる。さらに、第2開口部11hbと重なる位置に設けられた線状圧搾部ELによって、接合部12sの接合(肌側シート部12aと非肌側シート部12bの接合)をより強固にさせやすくなり、吸収性コア11を肌側シート部12a及び非肌側シート部12bと一体的に変形させやすくなり、着用者に与える違和感を軽減させることができる。
【0074】
また、図7に示すように、幅方向の一方側に位置する第2開口部11hbは、幅方向の外側に湾曲する外側湾曲開口部11hbsを備え、長手方向におけるウイング粘着部33と重なる位置(股下領域CA)において、線状圧搾部ELが、幅方向の外側に湾曲する外側湾曲圧搾部ELsを有することが好ましい。厚さ方向に見て、線状圧搾部ELが第2開口部11hbと重なる部分を有することで、ナプキン1が過度に硬くなる恐れを軽減させつつ、長手方向におけるウイング粘着部33と重なる位置において、線状圧搾部ELを第2開口部11hbの形状に沿う形状とすることで、線状圧搾部ELが第2開口部11hbの内側における接合部12sを厚さ方向に圧搾する範囲をより広く設けやすくなる。そのため、接合部12sの接合をより強固にさせやすくなり、吸収性コア11を肌側シート部12a及び非肌側シート部12bと一体的に変形させやすくなり、着用者に与える違和感を軽減させることができる。
【0075】
さらに、ナプキン1のように、第2開口部11hbより前側に第1開口部(前側開口部)11haと、第2開口部11hbより後側に第3開口部(後側開口部)11hcを有することが好ましく、第1開口部11haと第2開口部11hbと第3開口部11hcとが、互いに離間して設けられていることが好ましい(図1等)。第2開口部11hbだけでなく、第1開口部11haと第3開口部11hcが設けられていることで、ナプキン1の長手方向におけるウイング粘着部33と重なる部分より前側及び後側においても、排泄物の長手方向への拡散を促しやすくなる。また、各開口部11ha、11hb、11hcが互いに離間していることで、着用状態において、着用者の身体の形状や動き等の外部からの力によって、全ての開口部11ha、11hb、11hcが一体的に潰れてしまう恐れを軽減させることができる。
【0076】
図1等に示すように、第1開口部11haと第2開口部11hbと第3開口部11hcとを備えるナプキン1において、厚さ方向に見て、長手方向に沿った線状圧搾部ELが、それぞれ第1開口部11haと第2開口部11hbと第3開口部11hcと重なる部分を有することが好ましい。上述のように、線状圧搾部ELは、厚さ方向において、少なくともトップシート21と肌側シート部12aと非肌側シート部12bとを厚さ方向に圧搾しており、本実施形態のナプキン1では、厚さ方向において各開口部11ha、11hb、11hcと重なる部分では、線状圧搾部ELは、トップシート21とセカンドシート22と肌側シート部12aと非肌側シート部12bとを厚さ方向に圧搾している。厚さ方向に見て各開口部11ha、11hb、11hcと重なる位置に線状圧搾部ELを設けることで、開口部11ha、11hb、11hcと重ならない位置のみに線状圧搾部ELを設けた場合よりも吸収性コア11やナプキン1が過度に硬くなる恐れを軽減させることができる。また、厚さ方向に圧搾した線状圧搾部ELによって、各部材の繊維密度が高くなることから、各開口部11ha、11hb、11hcの内側まで排泄物が達した場合でも、毛細管現象により、長手方向に沿った線状圧搾部ELに沿うように、排泄物を長手方向に拡散を促しやすくなる。さらに、各開口部11ha、11hb、11hcと重なる位置に設けられた線状圧搾部ELによって、各開口部11ha、11hb、11hcの内側の接合部12sの接合(肌側シート部12aと非肌側シート部12bの接合)をより強固にさせやすくなり、吸収性コア11を肌側シート部12a及び非肌側シート部12bと一体的に変形させやすくなり、着用者に与える違和感を軽減させることができる。
【0077】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0078】
図9は、吸収性コア11の変形例を説明する図である。図9に示すように、吸収性コア11の厚さ方向の長さ(厚み)は、11Tであり、吸収性コア11の厚さ方向における中央11tc(11Tの1/2)より非肌側に位置する第2隣接部11nbの液体吸収性繊維の量が、吸収性コアの厚さ方向における中央11tcより肌側に位置する第2隣接部11nbの液体吸収性繊維の量より多くしてもよい。これによって、吸収性コア11の厚さ方向における中央11tcより非肌側に位置する第2隣接部11nbの液体吸収性繊維の量を、吸収性コア11の厚さ方向における中央11tcより肌側に位置する第2隣接部11nbの液体吸収性繊維の量より少なくした場合よりも、ナプキン1の着用状態において、吸収性コア11が吸収した排泄物を着用者の肌から離れた位置で拡散させやすくなる。具体的には、吸収性コア11の股下領域CAの幅方向における中央部で吸収した排泄物が、第2隣接部11nbまで到達すると、第2隣接部11nbにおいて、吸収性コア11の厚さ方向における中央11tcより非肌側で拡散されやすくなる。そのため、着用者の肌に一旦吸収した排泄物が、再び着用者の肌に当接する恐れを軽減させることができ、着用時における不快感を軽減させやすくなる。
【0079】
また、上述の実施形態では、長手方向において、ウイング粘着部33と重なる位置において、一対の第2開口部11hbとして開口部11hを長手方向に1つずつ配置したが、これに限られない。ウイング粘着部33と重なる位置に設けられた一対の第2開口部11hbが、長手方向に離間した第1開口部(不図示)と第2開口部(不図示)を備えていてもよい。具体的には、図1等に示す幅方向における一方側(又は他方側)の第2開口部11hbを、長手方向に2つ以上に分割し、ウイング粘着部33と重なる位置に、複数の開口部11h(複数の第2開口部11hb)を備える構成であってもよい。これによって、着用状態における着用者の身体の形状や動き等の外部からの力によって、第2開口部11hbの全てが一体的に幅方向に潰れてしまう恐れを軽減させることができる。また、ナプキン1の製造過程において、吸収性コア11を成型させる際に、第2開口部11hbに隣接する領域から液体吸収性繊維が第2開口部11hbに侵出して、第2開口部11hbの全てが一体的に貫通した形状を失ってしまう恐れを軽減させることができる。
【0080】
上述の実施形態のナプキン1では、接合部12sを形成する肌側シート部と非肌側シートをコアラップシート12(肌側シート部12a、非肌側シート部12b)としたが、これに限られない。例えば、吸収体10(ナプキン1)がコアラップシート12を備えない構成であってもよい。吸収体10がコアラップシート12を備えない場合は、吸収性コア11より肌側に位置するセカンドシート22又はトップシート21を肌側シート部とし、バックシート31を非肌側シート部とすることができる。
【0081】
上述の実施形態では、吸収性コア11が、全ての開口部11ha、11hb、11hcの輪郭に外側から隣接する隣接部11na、11nb、11ncを備えたが、これに限られない。少なくとも長手方向においてウイング粘着部33と重なる位置に設けられた第2開口部11hbの輪郭に外側から隣接する第2隣接部11nbを有する構成であればよく、必ずしも第1隣接部11na、第3隣接部11ncを有さない構成であってもよい。但し、吸収性コア11が、第2隣接部1nbより前側及び後側に位置する第1隣接部11na、第3隣接部11ncを有することで、排泄物の長手方向への拡散をより促しやすくなる。
【0082】
また、上述の実施形態では、第1隣接部11na、第2隣接部11nb、第3隣接部11ncを、それぞれ、第1開口部11ha、第2開口部11hb、第3開口部11hcの輪郭の全域を囲むように設けたが、これに限られない。第1隣接部11na、第2隣接部11nb、第3隣接部11ncが、第1開口部11ha、第2開口部11hb、第3開口部11hcの輪郭の少なくとも一部と隣接する部分でもよい。
【0083】
上述の実施形態では、一対の開口部11h及び線状圧搾部ELを、それぞれ、幅方向の中央C-Cに対して対称な形状及び配置としたが、これに限られない。一対の開口部11hと線状圧搾部ELを、それぞれ、幅方向の中央C-Cに対して非対称な形状及び配置としてもよい。
【0084】
さらに、上述の実施形態では、吸収性コア11の一対の開口部11hについて、一方側(又は他方側)には、それぞれ1つの第1開口部11haと第1隣接部11na、1つの第2開口部11hbと第2隣接部11nb、1つの第3開口部11hcと第3開口部11ncが設けられたが、これに限られない。例えば、一方側(又は他方側)に、幅方向に並んだ2つの第1開口部11haと第1隣接部11na、2つの第2開口部11hbと第2隣接部11nb、2つの第3開口部11hcと第3隣接部11ncが設けられた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 ナプキン(生理用吸収性物品)、
1W ウイング部、
10 吸収体、
11 吸収性コア、
11h 開口部、
11ha 第1開口部(前側開口部)、
11hb 第2開口部(開口部)、
11hc 第3開口部(後側開口部)、
11d 中高部、
11f 高坪量部、
11n 隣接部、
11na 第1隣接部、
11nb 第2隣接部、
11nc 第3隣接部、
12 コアラップシート、
12a 肌側シート部、
12b 非肌側シート部、
12s 接合部、
21 トップシート(表面シート)、
22 セカンドシート、
23 サイドシート、
24 補強シート、
31 バックシート、
32 本体粘着部、
33 ウイング粘着部、
CA 股下領域、
ee 円形圧搾部、
EL 線状圧搾部、
t 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9