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特許7562855高角度抽出光学系を含む装置及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】高角度抽出光学系を含む装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/32 20060101AFI20240930BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H01J37/32
H01J37/08
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023526531
(86)(22)【出願日】2021-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 US2021051002
(87)【国際公開番号】W WO2022098440
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】17/092,250
(32)【優先日】2020-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビロイウ, コステル
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレス, ジェイ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルズ, ケヴィン エム.
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア, フランク
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル, クリストファー
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0255243(US,A1)
【文献】特開平02-299144(JP,A)
【文献】国際公開第2019/125598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームシステム用の抽出プレートであって、
絶縁体本体であって、
プラズマチャンバの第1の側面に接続する周辺部と、
凹形を画定する中央部であって、抽出開孔が前記中央部の第1の面に沿って配置され、前記第1の面は前記第1の側面に対して高い角度で配向される、中央部と
を有する絶縁体本体と、
前記絶縁体本体の外側に前記プラズマチャンバの反対を向くように貼り付けられた、第1の部分と第2の部分とを含むパターニングされた電極であって、前記第1の部分は、前記絶縁体本体の一部によって形成された絶縁間隙によって前記第2の部分から分離されている、パターニングされた電極と
を備える、抽出プレート。
【請求項2】
前記パターニングされた電極の上に配置された保護層を備える、請求項1に記載の抽出プレート。
【請求項3】
前記パターニングされた電極は、10μmから100μmの厚さを有する、請求項1に記載の抽出プレート。
【請求項4】
前記保護層は、10μmから100μmの厚さを有する、請求項2に記載の抽出プレート。
【請求項5】
前記抽出開孔は細長く、前記抽出開孔は開孔長及び開孔幅を画定し、前記開孔長対前記開孔幅の比は100より大きい、請求項1に記載の抽出プレート。
【請求項6】
前記第1の面は、前記第1の側面に対して60度以上の角度を画定する、請求項1に記載の抽出プレート。
【請求項7】
前記抽出開孔は、第1の抽出開孔であり、前記中央部は、前記第1の面とは反対の第2の面を含み、前記第2の面は、前記第1の抽出開孔とは反対の第2の抽出開孔を含む、請求項1に記載の抽出プレート。
【請求項8】
前記第1の抽出開孔及び前記第2の抽出開孔は、左右対称の構成を含む、請求項7に記載の抽出プレート。
【請求項9】
イオンビーム処理装置であって、
プラズマチャンバと、
前記プラズマチャンバに隣接し、基板平面を画定する基板ステージを含む、プロセスチャンバと、
前記プラズマチャンバの側面に沿って配置され、前記基板ステージの方を向いた抽出プレートであって、
絶縁体本体であって、
前記プラズマチャンバの第1の側面に接続する周辺部と、
凹形を画定する中央部であって、抽出開孔が前記中央部の第1の面に沿って配置され、前記第1の面は前記第1の側面に対して高い角度で配向される、中央部と
を有する絶縁体本体と、
前記絶縁体本体の外側に前記プラズマチャンバの反対を向くように貼り付けられた、第1の部分と第2の部分とを含むパターニングされた電極であって、前記第1の部分は、前記絶縁体本体の一部によって形成された絶縁間隙によって前記第2の部分から分離されている、パターニングされた電極と
を含む抽出プレートと
を備える、イオンビーム処理装置。
【請求項10】
前記パターニングされた電極の上に配置された保護層を備える、請求項9に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項11】
前記パターニングされた電極は、10μmから100μmの厚さを有し、前記保護層は、10μmから100μmの厚さを有する、請求項10に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項12】
前記抽出開孔は細長く、前記抽出開孔は開孔長及び開孔幅を画定し、前記開孔長対開孔幅の比は100より大きい、請求項9に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項13】
前記第1の面は、前記第1の側面に対して60度以上の角度を画定する、請求項9に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項14】
前記抽出開孔は、第1の抽出開孔であり、前記中央部は、前記第1の面とは反対の第2の面を含み、前記第2の面は、前記第1の抽出開孔とは反対の第2の抽出開孔を含む、請求項9に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項15】
前記第1の抽出開孔及び前記第2の抽出開孔は、左右対称の構成を含む、請求項14に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項16】
前記抽出プレートの外部及び前記基板ステージは、5mmから30mmのZ間隙を画定する、請求項9に記載のイオンビーム処理装置。
【請求項17】
イオンビームで基板を処理する方法であって、
第1の側面を有するプラズマチャンバでプラズマを形成することと、
プラズマチャンバの前記第1の側面に沿って抽出プレートを設けることであって、前記抽出プレートは、絶縁体本体と、前記絶縁体本体の表面上に配置されたパターニングされた電極とを含み、前記パターニングされた電極は、第1の部分と第2の部分とを含み、前記第1の部分は、前記絶縁体本体の一部によって形成された絶縁間隙によって前記第2の部分から分離されている、プラズマチャンバの前記第1の側面に沿って抽出プレートを設けることと、
前記パターニングされた電極にバイアス電圧を印加しながら、前記プラズマから前記イオンビームを抽出することと
を含み、
前記絶縁体本体及び前記パターニングされた電極は、前記プラズマから前記イオンビームを抽出し、前記第1の側面に対する垂線に対して高い角度で前記イオンビームを前記基板へ方向づけする形状である、方法。
【請求項18】
前記パターニングされた電極の前記第1の部分と前記第2の部分とは、抽出開孔によっても分離されており、前記絶縁体本体は、前記プラズマチャンバの前記第1の側面に接続する周辺部と、凹形を画定する中央部とを有し、前記抽出開孔は、前記中央部の第1の面に沿って配置され、前記第1の面は、前記第1の側面に対して高い角度で配向される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記バイアス電圧が、前記基板と前記プラズマチャンバとの間に印加される抽出電圧に等しい、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記バイアス電圧が、前記基板と前記プラズマチャンバとの間に印加される抽出電圧とは異なる、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本実施形態は、プラズマ処理装置に関し、より具体的には、高角度イオンビームの生成を改善するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]基板をイオンで処理するために使用される既知の装置には、ビームラインイオン注入装置及びプラズマ浸漬イオン注入ツールが含まれる。これらのアプローチは、様々なエネルギー範囲のイオンで基板を処理するのに有用である。ビームラインイオン注入装置では、イオンはソースから抽出され、質量分析されてから、次に基板表面に輸送される。プラズマ浸漬イオン注入装置では、プラズマが生成されている間、基板は同じチャンバにプラズマに隣接して位置する。基板はプラズマに対して負の電位に設定されており、基板の前でプラズマシースを横切るイオンは、基板に垂直な入射角で衝突し得る。
【0003】
[0003]このようなアプローチの多くは、基板又はウェハへの垂直入射を採用するが、他の用途では、トレンチ側壁の制御エッチング、ホール伸長、フォトレジスト収縮、及び磁気ランダムメモリ構造エッチング等の傾斜エッチングを採用し、イオンビームは基板に対する垂線に対して非ゼロの平均入射角で画定される。このようなプロセスの制御は、通常の入射におけるイオンビーム処理の制御よりも困難であり得る。
【0004】
[0004]これら及び他の考慮事項に関して、本開示が提供される。
【発明の概要】
【0005】
[0005]一実施形態では、イオンビームシステム用の抽出プレートが提供される。抽出プレートは、プラズマチャンバの第1の側面に接続する周辺部を含み、凹形を画定する中央部を更に含む絶縁体本体を含み得る。このように、抽出開孔は、中央部の第1の面に沿って配置され、第1の面は第1の側面に対して高い角度で配向され得る。抽出プレートは、絶縁体本体の外側にプラズマチャンバの反対を向くように貼り付けられた、第1の部分と第2の部分とを含むパターニングされた電極を更に含んでいてよく、第1の部分は絶縁間隙によって第2の部分から分離されている。
【0006】
[0006]別の実施形態では、イオンビーム処理装置が提供される。本装置は、プラズマチャンバと、プラズマチャンバに隣接するプロセスチャンバとを含んでいてよく、プロセスチャンバは、基板平面を画定する基板ステージを含む。本装置はまた、プラズマチャンバの側面に沿って配置され、基板ステージの方を向いた抽出プレートを含み得る。抽出プレートは、プラズマチャンバの第1の側面に接続する周辺部と、凹形を画定する中央部とを有する絶縁体本体を含み得る。抽出開孔は、中央部の第1の面に沿って配置されていてよく、第1の面は、プラズマチャンバの第1の側面に対して高い角度で配向される。抽出プレートはまた、絶縁体本体の外側にプラズマチャンバの反対を向くように貼り付けられた、第1の部分と第2の部分とを含むパターニングされた電極を含んでいてよく、第1の部分は絶縁間隙によって第2の部分から分離されている。
【0007】
[0007]添付の図面は、その原理の実用化のためにこれまでに考案された本開示の実施形態の例示的なアプローチを示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本開示の様々な実施形態に係る高角度抽出アセンブリを含む抽出プレートを示す側面断面図である。
図1B】本開示の様々な実施形態に係る高角度抽出アセンブリを含む抽出プレートを示す正面図である。
図1C】本開示の様々な実施形態に係る高角度抽出アセンブリを含む抽出プレートを示す斜視図である。
図1D】本開示の様々な実施形態に係る高角度抽出アセンブリを含む処理装置を示すブロック図である。
図1E】3D構造に対するイオンビーム衝突による垂直対水平スパッタエッチング比を、(水平面上の法線に対する)入射角の関数として示す図である。
図2】A~Dは、本開示の様々な実施形態に従って配置された様々な抽出プレートによって生成された静電場及びイオンビーム形状のシミュレーションを示す図である。
図3】A~Dは、本開示の様々な実施形態に従って配置された、抽出プレートによって生成されたイオンビームの平均角度のシミュレーションを示す図である。
図4】A~Dは、本開示の様々な実施形態に従って配置された、抽出プレートによって生成されたイオンビームのイオン角度分布のシミュレーションを示す図である。
図5A】本開示の様々な実施形態に係る高角度抽出アセンブリを含む別の抽出プレートを示す側面断面図である。
図5B図5Aの抽出プレートの変形例によって生成された電界及びイオンビーム形状のシミュレーションを示す側面断面図である。
図5C図5Bのシミュレーションの詳細を示す図である。
図6】A~Dは、本開示の様々な実施形態に従って配置された追加の抽出プレートによって生成された静電場及びイオンビーム形状のシミュレーションを示す図である。
図7】例示的なプロセスフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0021]図面は必ずしも縮尺通りではない。図面は単なる表現であり、本開示の特定のパラメータを描写することを意図していない。図面は、本開示の例示的な実施形態を描写することを意図しており、したがって、範囲を限定するものとはみなすべきではない。図面において、同様の番号付けは、同様の要素を表す。
【0010】
[0022]更に、幾つかの図面における特定の要素は、例示的な明瞭さのために、省略されることがある、又は非縮尺で図示する場合がある。断面図は、例示的な明瞭さのために、さもなければ「真の」断面図において可視である特定の背景線を省略した「断片」、又は「近視眼的」断面図の形態であり得る。更に、分かりやすくするために、特定の図面では一部の参照番号を省略することがある。
【0011】
[0023]高角度抽出光学系を含む方法、装置、及びシステムを、本開示に従って、及び実施形態を示す添付の図面を参照して開示する。本実施形態は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載したものに限定されるものとして解釈されるべきではない。代わりに、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、当業者に方法、システム、及びデバイスの範囲を完全に伝えるように提供される。
【0012】
[0024]様々な実施形態では、プラズマ型イオン源から高入射角(「高角度」)イオンビームを生成するための、抽出プレートを含む抽出光学系、及び処理システムが提供される。このような抽出アセンブリは、基板がプラズマチャンバに近接して維持され、そのチャンバからイオンビームが抽出される、小型のイオンビーム処理装置での使用に適している。基板は、プラズマチャンバに隣接するハウジング又は処理チャンバに位置し、抽出アセンブリを通してプラズマチャンバのプラズマと連結し得る。様々な実施形態では、イオン抽出光学系は、極めて高い(法線に対して>65度)ウエハ上入射角を有するイオンビームレットの抽出を容易にする。異なる言い方をすれば、本実施形態のイオン抽出光学系は、小型のイオンビームシステム内で、基板の主面に対して斜めの入射角でイオンビームを提供する。様々な実施形態では、化学反応性プラズマによって生成される過酷な環境に耐えるために、抽出プレートが設けられる。
【0013】
[0025]様々な実施形態は、小型のイオンビームシステムで使用するのに適した抽出プレートを提供する。抽出プレートは、プラズマチャンバに結合する周辺部を含む絶縁体本体を有し、凹形、又は「ポケット形状」を有する中央部、又は凹部を有するように構成され得る。中央部は、高角度イオンビームを生成するための抽出開孔を含む1又は複数の傾斜面を含む、幾つかの面を画定し得る。更に、抽出プレートは、絶縁体本体の外面に貼付され、抽出された高角度イオンビームを修正するために使用される、パターニングされた電極を含み得る。以下に詳述するように、パターニングされた電極は、間隙によって分離された複数の部分を含んでいてよく、間隙の位置及び大きさは、抽出されたイオンビームの修正の方法及び程度を決定するのに役立つ。特定の実施形態では、パターニングされた電極は、絶縁体本体104の外面に導電性膜として印刷され、その後、化学的に不活性な誘電体材料の保護層で覆われ得る。異なる非限定的な実施形態では、パターニングされた電極110は、10μmから100μmの厚さを有し得る。異なる非限定的な実施形態では、保護層116は、10μmから100μmの厚さを有し得る。
【0014】
[0026]ここで、本開示の様々な実施形態に係る高角度抽出光学系を含む抽出プレート100を示す側面断面図である図1Aを参照する。図1Bは、本開示の様々な実施形態に係る高角度抽出アセンブリを含む抽出プレート100の変形例を示す正面図である。図1Cは、図1Bの抽出プレート100の一部を示す拡大斜視図である。この設計は、この抽出プレートを通して抽出されたイオンビームが、特に表面特徴の1つの側壁又は側面だけを処理し得るため、3D構造を有する基板を処理するのに適切である。しかしながら、基板が回転するように備えることにより、基板の走査の間に基板を回転させることによって、表面特徴の複数の側面を処理することが可能である。
【0015】
[0027]図示した抽出プレート100は、抽出プレート100の外部においてプラズマチャンバ102に貼り付けられており、プラズマは通常、抽出プレート100の上に形成され、基板120は抽出プレート100の下に位置決めされる。抽出プレート100は、異なる実施形態に係る石英、アルミナ、又は他の誘電体セラミック等の適切な材料で形成された絶縁体本体104を含む。抽出プレート100はまた、ポケット形状又は凹形を有する凹部108を画定する。図1Aの実施形態では、抽出プレートは、表面114に対して垂直に配置された抽出開孔112を含む。抽出開孔112の対称軸は、図示のデカルト座標系のX-Y平面等の基板120の主面Pに対する垂線115に対して幾何学的入射角(θとして示す)を形成し得る。言い換えれば、開孔112から抽出されたイオンが完全に直線で移動する場合、イオンは、θで基板と交差する。このように、抽出開孔112は、垂線115に対して65度、75度、80度、85度の角度を画定し得る。したがって、抽出開孔112から抽出されたイオンビームは、基板120の平面Pに対して比較的斜めの入射を画定し、垂線115に対して45度を上回る等のこの斜めの入射は、本明細書において、「高角度」又は「高入射角」と称され得る。
【0016】
[0028]抽出プレート100は、プラズマチャンバ102に接続するための周辺部107と、凹部108と称される中央部とを有し得る。図1Aに(また図1Dにも)更に示すように、抽出プレート100は、絶縁体本体104の外面106に貼り付けられた、パターニングされた電極110を含み得る。パターニングされた電極110は、元素金属、金属合金等の任意の適切な導電性材料で製造され得る。異なる実施形態によれば、パターニングされた電極110は、火炎トーチ、電着、プラズマスプレー、蒸発、又は他の適切な方法等によって、外面106に印刷され得る。パターニングされた電極110は、少なくとも一部が凹部108の上に延在していてよく、図1Aに示す部分110-A、部分110-B、及び部分110-C等の異なる部分に形成されていてよい。本開示の様々な実施形態によれば、パターニングされた電極110の異なる部分は、互いに物理的に接続され得る、又は互いに電気的に接続され得る。他の実施形態では、パターニングされた電極110等の電極の異なる部分は、互いに物理的に分離していてよい、及び/又は互いに電気絶縁されていてよい。
【0017】
[0029]オプションの実施形態では、図1Aに示すように、原子及び分子イオン、ラジカル及び光子等のプラズマによって生成されるエッチング液種に対して化学的に不活性である電気絶縁層等の保護層116が、電極110の上に形成され得る。
【0018】
[0030]図1Bの実施形態では、パターニングされた電極110は3つの部分に形成され、部分110-A及び部分110-Cは互いに接続され、部分110-Bは部分110-A又は部分110-Cに物理的に接続されていない。このように、部分110-A及び部分110-Cは同じ電位(電圧)に接続されていてよく、部分110-Bは部分110-A及び部分110-Cと同じ電位に接続されている、又は接続されていない場合がある。一実装態様では、バイアス電圧の電気接続は一端が部分110-Aに接続され、電圧のリードバックは他端である部分110-Cにある。このような態様では、電気経路の不連続を容易に診断することができる。特に、バイアス及びリードバック端子機能として作用する電極部の末端に端子を設けることで、所定の電極の電気的導通の便利なリアルタイムチェックが得られる。
【0019】
[0031]部分110-Bは、部分110-A及び部分110-Bに接続されていないため、幾つかの実装態様では、部分110-Bは、抽出されたイオンビーム角度分布を更に形作るために、例えば、基板120とは異なる電位の二次バイアス電圧源を使用して独立してバイアスをかけられることがある。
【0020】
[0032]図1Bに更に示すように、抽出開孔112は、イオンがそれを通って抽出されるときにリボンイオンビームを画定するように、X方向に沿って細長くなっていてよく、X方向に沿った開孔長の寸法が幾つかの実施形態では少なくとも300mm、又は他の実施形態では少なくとも400mmであってよく、非限定的な実施形態では2mmから6mmのY方向に沿った開孔幅を有していてよい。
【0021】
[0033]図1Dは、本開示の様々な実施形態に係る高角度抽出アセンブリを含む処理装置150を示すブロック図である。この実施形態では、抽出プレート100は、プラズマチャンバ102に結合される。その中でプラズマ160を生成するために、RF電力ジェネレータ154が、インピーダンス整合ネットワーク155及びRFアンテナ156を通して、プラズマチャンバに結合され得る。プラズマチャンバ102は、RF誘導結合プラズマ(ICP)源、容量結合プラズマ(CCP)源、ヘリコン源、電子サイクロトロン共鳴(ECR)源)、間接加熱カソード(IHC)源、グロー放電源、又は当業者に周知の他のプラズマ源等のプラズマ源の一部として機能し得る。図1Dに示すこの特定の実施形態では、プラズマ源は、RF電力ジェネレータ154からの電力がインピーダンス整合ネットワーク155を通してプラズマに結合されるICP源である。RFジェネレータからガス原子及び/又は分子へのRF電力の伝達は、RFアンテナ156及び誘電体窓(図示せず)を通して行われる。
【0022】
[0034]当技術分野で周知のように、ガスマニホールド(図示せず)が、適切なガスライン及びガス入口を通してプラズマチャンバ102に接続され得る。プラズマチャンバ102又は処理装置150の他の構成要素もまた、回転ポンプ又は膜ポンプによって支援されるターボ分子ポンプ等の真空システム(図示せず)に接続され得る。プラズマチャンバ102は、チャンバ壁によって画定され、プラズマチャンバ102から電気絶縁された、又は電気絶縁されていないプロセスチャンバ162に隣接して配置され得る。プロセスチャンバ162は、基板ホルダ124及びウェハ又は基板120を含み得る。
【0023】
[0035]幾つかの実施形態では、プラズマチャンバ102が接地されている間、基板120及び/又は基板ホルダ124は、バイアス電圧供給部158を使用して負の電位に保持され得る。例えば、基板120(又は基板ホルダ124)は、プラズマチャンバ102及びプロセスチャンバ162が接地され得る間に、-1000V(抽出電圧)等の高い負電圧でパルス化され得る。あるいは、プラズマチャンバ102は、プロセスチャンバ162、基板120、及び基板ホルダ124が接地され得る一方で、高い正電圧でパルス化され得る。パルス抽出は、基板表面での電荷中和に有用である。様々な実施形態では、バイアス電圧供給部158は、0から100%の可変デューティサイクルで20kHzから50kHzの周波数の電圧パルスを提供する。幾つかの実施形態では、バイアス電圧供給部158はまた、基板ホルダ124、したがって基板120と同じバイアス電圧を提供するために、パターニングされた電極110を電気的に結合させ得る。
【0024】
[0036]これらのシナリオでは、プラズマ160から正イオンが抽出され、イオン電荷と、プラズマチャンバ102と基板120との間の電位差との積に等しいイオンエネルギーで、リボンイオンビームとして基板120に方向づけされ得る。抽出プレート100は、1つのイオンビームを生成するように配置され、イオンビーム164は、図1Aに関して先に定義したように、基板120の平面Pに対する垂線115に対して高入射角(θ)を画定する平均入射角を有する。θの好適な値の例は、様々な非限定的な実施形態によれば60度から85度、より具体的には65度から80度である。そのような高い角度は、3D構造の側壁等の基板120の特徴を処理するのに適している。
【0025】
[0037]図1Aに示すように、抽出開孔112の軸は、基板上の法線又はz軸に対して幾何学的(自然)角度θに配向される。抽出領域内、すなわち抽出プレート104と基板120との間の空間における電界強度及び配向により、イオンビーム164が幾何学的角度θから(図1Dに示すように)より小さい角度θへと傾くことがある。抽出領域における電界の強度及び配向は、抽出電圧、抽出開孔112と基板との間の距離、及び抽出領域と境を接する導電性表面のトポロジーによって設定される。イオンビーム164の角度分布、すなわち、平均角度θ、角度広がりΔθを好適に制御するために、電界の配向を修正することにより、イオンビーム164の軌道を変更する(又は、イオンビーム164中のイオンの軌道を変更する)ように、パターニングされた電極110にバイアスがかけられ得る。
【0026】
[0038]本発明者らは、パターニングされた電極110の表面トポロジーが、抽出されたイオンビームのイオン角度分布(IAD)、ならびに基板120上の抽出されたイオンビームのサイズ又はフットプリントを含む、抽出開孔112を通して抽出されたイオンビームの様々な特性の決定に役立つことを見出した。更に、表面トポロジーだけでなく、パターニングされた電極110に印加されるバイアス電圧を調整することによって、イオンビームの平均角度θ、角度広がりΔθを、抽出開孔を出た後に調整することができる。特に高入射角では、IADと同様に平均入射角の正確な制御が求められ得る。
【0027】
[0039]図1Eは、イオンビームによる表面の高入射角処理における、角度変化によるイオンドーズ比の変化を示す図である。より定量的には、図1Eは、D(垂直面上のイオンドーズ)/D(水平面上のイオンドーズ)が、基板上のイオンビーム入射角θによってどのように変化するかを示している。3D構造のイオンアシストエッチング等の用途では、垂直面(トレンチ壁)を多くエッチングし、(エッチングマスクが位置する)水平面をできるだけエッチングしないことが有用である。物理的なエッチング(スパッタリング)の要素のみを考慮すると、それぞれの面でのエッチング速度は、単位時間当たりにそれらの面に到達するイオンの数、すなわちイオンドーズに比例する。垂直面(D)上のイオンドーズaは、水平面(D)上のイオンドーズのtanθ倍となる。したがって、図1Eは、θを75度から85度まで変化させると、水平(Z軸に垂直な)面に対する垂直(Z軸に平行な)面のドーズ比が3倍を超えた倍数で増加することを示している。したがって、平均角度及び高平均角度における角度広がりを正確に制御することで、垂直面対水平面の相対的なイオンフラックスを制御することができる。
【0028】
[0040]図2A図2Dは、本開示の様々な実施形態に従って配置された様々な抽出プレートによって生成される静電場及びイオンビーム形状のシミュレーションを示す図である。抽出プレート202~208は概して、上述した抽出プレート100の変形例として配置される。図2Aでは、抽出プレート202は、様々な部分(先に説明した部分110-A、部分110-B、部分110-Cを参照)が、外面106がコーティングされていない面を表す、つまりその上に電極を有しない外面領域を意味する間隙によって分離されているパターニングされた電極110を含む。抽出開孔112を通る幾何学的抽出角度は、80度である。図2Aでは、間隙G1の値(部分110-Bと部分110-Cとの間の間隙に対応する)は27mmであり、図2Bでは、間隙G1の値は30mmであり、図2Cでは、間隙G1の値は33mmであり、図2Dでは、間隙G1の値は30mmであるが、抽出開孔112を囲む間隙G2(部分110-Bと部分110-Aとの間の間隙に対応する)の値は、他の構成では(~18mmを~10mmと比較して)かなり小さくなっている。シミュレーションは、抽出電圧1.5kV、Z軸に沿った抽出開孔112の中心と基板120との間の距離を意味する「Z間隙」15mm、プラズマ源に印加されるRF電力600Wで行われた。更に、パターニングされた電極110は、基板120と同じ電圧(抽出電圧)でバイアスがかけられる。抽出プレート電極と基板が同じ静電電位にあることは、それらの領域においてプラズマチャンバ102と基板との間に電界が存在しないことを意味する。しかし、G1及びG2等の絶縁体本体104のコーティングされていない面は、静電電位線(絶縁体本体104から発せられる曲線として示される)に対して透明であり、このために抽出領域において電界がリークする。電界(電界は電位線の勾配に等しい)の強度及び配向は、バイアス電圧の大きさと、抽出プレート絶縁体本体の外面に沿った電極の形状、サイズ、相対位置を意味する電極トポロジーにより設定される。電界はプラズマチャンバ102から基板に向かう配向であるため、この電界により、特定のエネルギーと特定のイオン角度分布(平均角度及び角度広がり)の正イオンの抽出が確保される。例えば図2Aに示すように、電界線群は、凹部108に形成された間隙G1から、図1で見て抽出開孔112の左側に概ね反り出している。イオンビーム212は、抽出開孔112の出口で初期軌道から概ね偏向されることにより、最終的な平均軌道が図中右に向かって曲がっている。
【0029】
[0041]図2A図2Cの閲読により明らかなように、間隙G1のサイズを変えると、生成されるイオンビームの形状寸法が変化する。図2A図2Cに示す傾向は、以下のように説明することができる。間隙G1のサイズが大きくなると、透明領域のサイズが大きくなり、その結果、抽出プレート(202、204、206)と基板120との間の間隙における等電位線の分布が鋭くなり、その結果、電界の垂直成分が増加し、結果的に、イオンビーム(212、214、216)が抽出開孔112から出るときに仮想幾何学的軌道からますます傾くようになる。更に、角度広がりが減少し、その結果、基板上のイオンビームのフットプリントが減少する。図2Dでは、G2の値を減少させるために、抽出開孔112の近くにパターニングされた電極110の一部を追加すると、等電位線が更に湾曲し、結果的に、電界の垂直成分が更に大きくなり、イオンビーム218がさらに曲がり、したがって基板上のフットプリントが更に小さくなる。
【0030】
[0042]図3A図3Dは、本開示の様々な実施形態に従って配置された抽出プレートにより生成されたイオンビームのイオン角度分布のシミュレーションに基づくグラフ(放射率曲線)である。イオン抽出光学系のモデル化は、図2A図2Dによる、600Wの入力RF電力、1.5kVの抽出電圧、及び15mmのz間隙に対応するプラズマ密度であるが、電極の異なるトポロジーに対するものである。したがって、図3Aのグラフは図2Aに対応し、図3Bのグラフは図2Bに対応する等である。放射率曲線は、基板に沿ったY位置の関数としての平均角度をグラフにしたものである。これらの曲線は、図2Aに示す構成から図2Dに示す構成になるにつれ、平均角度が72度から68度へと単調に減少する発散ビームを示している。G1のサイズが大きくなるにつれて、平均角度はわずかに減少する。図2A図2Bに示す構成では、放射率曲線は最大値を示し、図2Aの構成では81度、図2Bの構成では80度の角度を示している。この状況は、ビームの上部が、プラズマチャンバ102の接地されたハウジングの存在によって静電場分布が変化する領域を横切るために起こる。図2Dの構成において電気的にバイアスがかけられた電極を追加すると、その効果により、所定のイオンビームがさらに曲がることになる。平均角度の減少と同時に、ウエハ上のビームのフットプリントも、図2Aに対応するケースにおける130mmから、構成2B、2C、及び2Dにそれぞれ対応する105mm、90mm、及び65mmに減少する。平均角度は高い方が望ましいが、フットプリントは小さい方が望ましい。フットプリントが小さいと、所定の基板に対する走査範囲が短くなり、処理スループットの向上につながる。
【0031】
[0043]図4A図4Dは、本開示の様々な実施形態に従って配置された抽出プレートによって生成されたイオンビームのイオン角度分布のシミュレーションを示す図である。イオン抽出光学系のモデル化は、図2A図2Dによる、600Wの入力RF電力、1.5kVの抽出電圧、及び15mmのz間隙に対応するプラズマ密度であるが、電極の異なるトポロジーに対するものである。したがって、図4Aのグラフは図2Aに対応し、図4Bのグラフは図2Bに対応する等である。イオン角度の広がりを描いた図に示すように、この値は15.5から17度でわずかに変化するが、平均角度の変化のような系統的な変化はない。イオンビームのフットプリントの変化は、平均角度の減少と角度広がりの減少の複合効果であることに留意されたい。
【0032】
[0044]図5Aは、本開示の様々な実施形態に係る高角度抽出アセンブリを含む抽出プレート500を示す側面断面図である。図5Bは、図5Aの抽出プレートの変形例によって生成された静電等電位線分布及びイオンビーム形状のシミュレーションを示す側面断面図である。図5Cは、図5Bのシミュレーションの詳細を示す図である。抽出プレート500は、絶縁体本体504と、絶縁体本体の外面506に部分的に分布する電極510とを含む。図1Aの実施形態と同様に、凹部508は、ポケット形状又は凹形を有する。凹部508は、第1の面508-Aと、第1の面とは反対の第2の面508-Bとを含み、第1の抽出開孔512が第1の面508-Aに沿って位置し、第2の抽出開孔516が第2の面508-Bに沿って位置する。これらの開孔は、図1Aに関連して前述した60度から85度等の高角度で延在し得る。幾つかの変形例では、第1の抽出開孔512及び第2の抽出開孔516は、2つの開孔が、±70度、±75度等のように、垂線115(図1A参照)に対して同じ絶対値を有する角度を画定することを意味する対称的な構成を含む。更に、第1の面508-A及び第2の面508-Bは同じ長さであってよく、外面508-Cは外面508-Dと同一平面上にあってよい。更に、幾つかの実施形態によれば、電極510の異なる部分は、部分510-Aが部分510-Eに対して鏡像を形成し、部分510-Bが部分510-Dの鏡像であり、部分510-Cが第1の抽出開孔512と第2の抽出開孔516との中間に配置されるように、対称に配置され得る。
【0033】
[0045]このように、イオンビーム522及びイオンビーム524として示す一対の高角度イオンビームが生成され得る。図5Bの例では、イオンの双方向入射が、±θによって定義される2つの異なるイオンビームの幾何学的角度を用いて提供される。この構成では、単方向抽出光学系ほどに高い平均角度を有するイオンビームの抽出は提供し得ないが、この構成では、抽出されたイオンビームフラックスが2倍になり、暗黙的に高いスループットが得られる。また、基板上の法線に対するビームレットの対称性のため、イオンビームが狭いトレンチのアレイ等の特徴の側壁エッチングに使用される用途では、1つのビームレット(例えばイオンビーム522)によってスパッタされ、ポンプ除去されずに反対側の側壁に再堆積した原子が、対称的なビームレット(例えばイオンビーム524)によって再スパッタされることになる。図1Aの場合と同様に、この実施形態では、抽出プレート500と基板120との間の領域における電界は、電極510のトポグラフィ及び電極510の部分間の間隙によって形作られる。
【0034】
[0046]図6A図6Dは、本開示の様々な実施形態に従って配置された追加の抽出プレートによって生成された静電等電位線及びイオンビーム形状のシミュレーションを示す図である。全ての図面において、抽出電圧はバイアス電圧に等しい1.5kVであり、RF電力は600Wであり、z間隙は10mmである。異なる電極トポロジーに対するイオンビーム形状が図示されている。図6Aでは、抽出プレート500Aの部分510-Cは、高さ=5mm、それぞれの開孔の周りの部分は0.5mmであり、図6Bでは、抽出プレート500Bの部分510-Cは、高さ=5mm、それぞれの開孔の周りの部分は3.5mmであり、図6Cでは、抽出プレート500Cの部分510-Cは、高さ=10mm、それぞれの開孔の周りの部分は3.5mmであり、図6Dでは、抽出プレート500Dの部分510-Cは、高さ=10mm、それぞれの開孔の周りの部分は3.5mmであり、抽出プレート500Dは部分510-Cの領域で反り形状を有する。
【0035】
[0047]対応する放射率曲線がシミュレートされ、図6Aの構成は66度の平均角度を生成し、図6Bは68度の平均角度を生成し、図6Cは70度の平均角度を生成し、図6Dは63度の平均角度を生成した。対応するイオン角度分布がシミュレートされ、図6Aの構成は12度のIADを生成し、図6B図6Dは16度のIADを生成した。
【0036】
[0048]図7は、例示的なプロセスフロー700を示す図である。ブロック702において、プラズマチャンバでプラズマが生成される。その後、フローは、ブロック704及びブロック706に進み、ブロック704及びブロック706の異なる工程が互いに同時に実行され得る。
【0037】
[0049]ブロック704において、イオンビームは、抽出開孔が基板平面の法線に対して高い幾何学的入射角で配置される抽出プレートの抽出開孔を通してプラズマチャンバから抽出される。幾何学的入射角は、様々な非限定的な実施形態では、60度から85度であってよい。
【0038】
[0050]ブロック706において、ブロック704の抽出電圧の印加と同時に、抽出プレートの外面に配置された電極にバイアス電圧が印加され、電極は、間隙によって分離した複数の部分に配置され、イオンビームは、幾何学的入射角よりも小さい入射角を形成する。場合によっては、電極のバイアス電圧は、基板電位と同じ電圧であってよい。一例では、基板がプラズマチャンバに対して負にバイアスされる場合、電極は、基板に近いが基板とは異なる電位、例えば、基板電位に対して±100Vから±200Vのバイアスがかけられ得る。間隙の効果により、抽出後のイオンビームの平均角度を変化させる電界が発生し得る。このように、イオンビームは、高い幾何学的入射角よりも小さい第2の入射角を形成し得る。より具体的には、イオンビームは、抽出開孔に近接して高い平均幾何学的入射角を画定し得るが、イオンビームが基板に衝突する領域では、イオンビームは、高い幾何学的入射角よりも小さい第2の平均入射角を画定する。幾つかの非限定的な例では、高い平均幾何学的入射角と第2の平均入射角の差は、数度、5度、10度、又は15度の規模であり得る。
【0039】
[0051]したがって、80度等の高い幾何学的入射角で抽出されたイオンビームは、電極に印加される電圧によって生成される電界によって形作られ、75度の第2の入射角で基板に当たり得る。このように、イオンビームは、電極にバイアス電圧が印加されていないときのフットプリント(例えば、80度入射)よりも小さいフットプリントを基板上に(例えば、75度入射で)生成し得る。
【0040】
[0052]ブロック708において、基板は、基板の平面内で、イオンビームに対して第1の方向に沿って走査される。
【0041】
[0053]以上のことから、上記実施形態は、基板上の許容可能なビームフットプリントを維持しながら、できるだけ高い角度でイオンビームを抽出することで、基板走査範囲を短縮し、したがってスループットを向上させる装置及び技術を提供する。したがって、高角度とビームフットプリントとの間にはトレードオフが存在する。更に、異なる部分間の絶縁間隙によって特徴づけられるバイアス電極を使用することで、ビームブローアップを防止しながら、抽出されたイオンビームを比較的高い平均角度で導く手段を提供し、抽出されたイオンビームが基板の標的領域にちょうど当たるようにする。更に、バイアス電極の少なくとも一部が凹形に位置するようにすることにより、バイアス電極に影響を与えずに、又はバイアス電極への影響を最小限に抑えながら、高角度のイオンビームを抽出することができる。
【0042】
[0054]様々な追加の実施形態では、第2のバイアスを印加する別のバイアス電極を抽出プレートの外面に配置して、ウエハ上のビームフットプリントを低減し、抽出されたイオンビームの角度分布の調整性を与えることを含む更なる制御を得ることができる。この調整機能は、トレンチ特徴のエッチングプロセスにおいて特に有用であり、エッチングがトレンチの底部に向かって進行するにつれて、イオンビームの平均入射角を減少させることが必要となる場合があり、この減少は、エッチング中に第2のバイアス電圧を調整することによってインシトゥで達成され得る。
本明細書で使用する、単数形で記載され、単語「a」又は「an」が前に付く要素又は工程は、除外すると明示されていない限り、複数の要素又は工程も含むと理解すべきである。更に、本開示の「一実施形態」への言及は、限定的なものではない。追加の実施形態に言及された特徴を組み込むことも可能である。
【0043】
[0055]更に、用語「実質的な」又は「実質的に」、並びに用語「おおよそ」又は「約」は、幾つかの実施形態において交換可能に使用することができ、当業者によって受け入れられる任意の相対的尺度を使用して説明することができる。例えば、これらの用語は、意図する機能を提供することができる偏差を示すために、基準パラメータとの比較として機能し得る。非限定的であるが、基準パラメータからの偏差は、例えば、1%未満、3%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満等の量であってよい。
【0044】
[0056]また更に、当業者は、層、領域、又は基板等の要素が、別の要素の「上に」形成される、堆積される、又は配置されると言及される場合、その要素は別の要素の上に直接あってよい、又は介入する要素が存在する場合があることを理解するだろう。対照的に、ある要素が別の要素の「上に直接」あると言及される場合、介在する要素は存在しない。
【0045】
[0057]利便性と明瞭性のために、「上部」、「底部」、「上方」、「下方」、「垂直」、「水平」、「横」、「縦」等の用語は、図に示すこれらの構成要素とその構成部品の相対配置と配向を説明するために本明細書で使用される。また、用語は、具体的に言及された単語、その派生語、及び類似の輸入語句を含むものとする。
【0046】
[0058]まとめると、本実施形態は、抽出されたイオンビームを高い入射角で提供するために、新規な非平面形状寸法を有する1又は複数の抽出プレートを通常配置した新規な装置及び抽出アセンブリを提供する。別の利点は、抽出光学系から基板を切り離すことであり、この切り離しは、イオンの基板表面への衝突による二次電子放出によって発生するバックストリーミング電子によるプロセスドリフトが存在しないことを意味する。また、本実施形態は、金属汚染を軽減し、抽出開孔上の電極(複数可)に印加する電圧を調整することにより、イオンビームのイオン角度分布をリアルタイムで制御することができる。また、本実施形態は、基板の走査中の圧力変動を排除し、エッチング副生成物によるプラズマチャンバの汚染を低減し、粒子の発生を低減し、差動バイアスモードで動作させた場合に、イオンビームの角度調整範囲を広げることが可能である。
【0047】
[0059]本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて、本開示の他の様々な実施形態及び変更が、前述の説明及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。したがって、そのような他の実施形態及び変更は、本開示の範囲内に含まれるものとする。更に、本開示を、特定の目的のための特定の環境における特定の実装態様の文脈で本明細書に記載してきた。当業者であれば、その有用性がそれらに限定されず、本開示が、任意の数の目的のための任意の数の環境で有益に実装され得ることを認識するであろう。したがって、以下に示す特許請求の範囲は、本明細書に記載の本開示の全域と主旨を考慮して解釈されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7