(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】情報処理システム、装置、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20241001BHJP
【FI】
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2020082848
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2019103981
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】仲川 正則
(72)【発明者】
【氏名】谷口 竜
【審査官】坂庭 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-226449(JP,A)
【文献】特開2011-081431(JP,A)
【文献】特開2018-160219(JP,A)
【文献】特開2005-198970(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0125514(US,A1)
【文献】特開2012-003494(JP,A)
【文献】特開2017-049831(JP,A)
【文献】矢嶋知己,IoTを活用した看護業務改革の実際,ヘルスケアIT活用情報誌 ITvision No.38(INNERVISION 2018年7月号 別冊付録),日本,株式会社インナービジョン,2018年06月25日,pp.27-29
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線装置の識別情報、および、前記無線装置の位置を特定するための情報を取得する現在位置取得部と、
前記無線装置が付されている者の位置と、前記無線装置が付されている者の移動先
および前記移動先での行動の情報とを教師データとして機械学習した学習済みモデルを格納した学習済みモデル格納部と、
前記学習済みモデルに基づいて、前記無線装置の位置から、前記無線装置が付されている者の移動先
および前記移動先での行動の情報を推論する推論部と、
推論した前記移動先
および前記移動先での行動の情報を通知する通知部と
を備えた情報処理システム。
【請求項2】
前記無線装置が付されている者の位置と、前記無線装置が付されている者の移動先
および前記移動先での行動の情報とを教師データとして機械学習して前記学習済みモデルを生成する機械学習部をさらに備えた請求項1の情報処理システム。
【請求項3】
前記学習済みモデルは、前記無線装置が付されている者の位置および前記現在位置取得部が取得した時刻と、前記無線装置が付されている者の移動先
および前記移動先での行動の情報とを教師データとして機械学習した学習済みモデルであり、
前記推論部は、前記無線装置の位置および前記現在位置取得部が取得した時刻から、前記無線装置が付されている者の移動先
および前記移動先での行動の情報を推論する、請求項
1または2の情報処理システム。
【請求項4】
前記教師データは、前記現在位置取得部が取得したデータのうち異常が検知されたデータが削除されたデータである、請求項1から
3のいずれか一項の情報処理システム。
【請求項5】
前記無線装置が付されている者の過去の位置情報の入力値と前記入力値への所定の計算処理の出力値との傾向が所定の基準を超えて異なる場合、入力された前記過去の位置情報と前記出力値とは異常値であるとして、前記教師データの候補から削除する異常検知部をさらに備えた、請求項
4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記通知部は、通知端末の画面上に前記無線装置が付されている者の移動先
および前記移動先での行動の情報を表示させる、または、前記通知端末に音声で前記無線装置が付されている者の移動先
および前記移動先での行動の情報を出力させる、請求項1から
5のいずれか一項の情報処理システム。
【請求項7】
前記通知部は、前記無線装置が付されている者の1つの移動先、または、前記無線装置が付されている者の複数の移動先を示す動線を通知する、請求項1から
6のいずれか一項の情報処理システム。
【請求項8】
無線装置の識別情報、および、前記無線装置の位置を特定するための情報を取得する現在位置取得部と、
前記無線装置が付されている者の位置と、前記無線装置が付されている者の移動先
および前記移動先での行動の情報とを教師データとして機械学習した学習済みモデルを格納した学習済みモデル格納部と、
前記学習済みモデルに基づいて、前記無線装置の位置から、前記無線装置が付されている者の移動先
および前記移動先での行動の情報を推論する推論部と、
推論した前記移動先
および前記移動先での行動の情報を通知する通知部と
を備えた予測装置。
【請求項9】
コンピュータが実行する方法であって、
無線装置の識別情報、および、前記無線装置の位置を特定するための情報を取得するステップと、
前記無線装置が付されている者の位置と、前記無線装置が付されている者の移動先
および前記移動先での行動の情報とを教師データとして機械学習した学習済みモデルに基づいて、前記無線装置の位置から、前記無線装置が付されている者の移動先
および前記移動先での行動の情報を推論するステップと、
推論した前記移動先
および前記移動先での行動の情報を通知するステップと
を含む方法。
【請求項10】
コンピュータを
無線装置の識別情報、および、前記無線装置の位置を特定するための情報を取得する現在位置取得部、
前記無線装置が付されている者の位置と、前記無線装置が付されている者の移動先
および前記移動先での行動の情報とを教師データとして機械学習した学習済みモデルに基づいて、前記無線装置の位置から、前記無線装置が付されている者の移動先
および前記移動先での行動の情報を推論する推論部、
推論した前記移動先
および前記移動先での行動の情報を通知する通知部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、装置、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、看護師等の医療スタッフ(医療従事者ともいう)の病院等の医療施設内での位置情報を管理することができる技術が知られている。例えば、特許文献1には、医療に関与する人物(例えば、患者、医師、看護師等)の位置情報と、患者の医療情報と、を一元的に管理する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
病院等では、医療スタッフは病室等を効率よく移動するために、現在の位置での業務が終わった後、次に行くべき病室等を知る必要がある。しかしながら特許文献1では、患者の医療情報と医療スタッフ等の現在の位置の一元管理はできるものの、医療スタッフ等の移動先を提示することは実現できていなかった。
【0004】
そこで、本発明の一実施形態では、医療スタッフ等、無線装置を付した者の移動先を予測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態は、無線装置の識別情報、および、前記無線装置の位置を特定するための情報を取得する現在位置取得部と、前記無線装置が付されている者の位置と、前記無線装置が付されている者の移動先とを教師データとして機械学習した学習済みモデルを格納した学習済みモデル格納部と、前記学習済みモデルに基づいて、前記無線装置の位置から、前記無線装置が付されている者の移動先を推論する推論部と、推論した前記移動先を通知する通知部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、医療スタッフ等、無線装置を付した者の移動先を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る予測システムの全体の構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る予測装置のハードウェア構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る予測装置の機能ブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る変換前データおよび変換後データを説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る教師データ格納部に記憶されているデータの一例である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る推論フェーズを説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る異常検知を説明するための図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る学習処理のフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係る推論処理のフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態に係る通知端末に表示される画面の一例である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る通知端末に表示される画面の一例である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る予測システムの全体の構成図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るLSTMのモデル構造である。
【
図14】本発明の一実施形態に係るLSTMモデルにおける演算パラメータである。
【
図15】本発明の一実施形態に係る入力および出力のデータ形式である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る入力および出力のデータ形式である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0009】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る予測システム1(情報処理システムの一例である)の全体の構成図である。
図1に示されるように、予測システム1は、予測装置10と、RFIDタグ20と、RFID受信機30と、Gateway40と、通知端末50と、を含む。予測装置10は、任意のネットワーク60を介して、Gateway40を経由してRFID受信機30からデータを受信することができる。また、予測装置10は、任意のネットワーク60を介して、通知端末50へデータを送信することができる。以下、それぞれについて説明する。
【0010】
なお、医療スタッフ21には、RFIDタグ20が付されているものとする。
【0011】
予測装置10は、医療スタッフ21の現在の位置を取得して、その医療スタッフ21の移動先の位置(つまり、次の位置)を予測する。また、予測装置10は、移動先の位置の情報を通知端末50に通知することができる。後段で、
図3を参照しながら、予測装置10について詳細に説明する。
【0012】
RFID(radio frequency identifier)タグ20と、RFID受信機30と、Gateway40とは、医療スタッフ21の現在の位置を取得するための処理を実行する。
【0013】
RFIDタグ20には、RFIDタグ20を特定するための識別情報(以下、タグIDともいう)が埋め込まれている。上述したように、RFIDタグ20は、医療スタッフ21に付されている。
【0014】
RFID受信機30には、RFID受信機30を特定するための識別情報(以下、アンテナIDともいう)が付与されている。例えば、RFID受信機30は、病院内の各病室等の天井等に設置されている。RFID受信機30は、近距離無線通信を介して、RFIDタグ20からタグIDを受信する。また、RFID受信機30は、タグIDおよびアンテナIDをGateway40へ送信する。
【0015】
Gateway40は、RFID受信機30から収集したデータを予測装置10へ送信する。例えば、Gateway40は、複数の病室等に設置されたRFID受信機30からタグIDおよびアンテナIDを受信して、それらのタグIDおよびアンテナIDを予測装置10へ送信する。
【0016】
なお、医療スタッフ21の現在の位置を取得する方法は、上記のようなRFIDを用いた方法に限らず、ビーコンを用いた方法等の任意の方法であってよい。つまり、医療スタッフ21に付された任意の無線装置(例えば、RFIDタグ20)の位置を特定するための情報(例えば、アンテナID)を取得することができればよい。
【0017】
通知端末50は、医療スタッフ21の移動先の位置の情報を予測装置10から取得して、医療スタッフ21等に提示する。例えば、通知端末50は、病院内に設置されたデジタルサイネージ、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、医療スタッフ21が装着するウェアラブルデバイス等である。通知端末50は、画面上に移動先の位置の情報を表示してもよいし、あるいは、音声で移動先の位置の情報を出力してもよい。
【0018】
なお、実施例に記載された装置群は、本明細書に開示された実施形態を実施するための複数のコンピューティング環境のうちの1つを示すものにすぎない。例えば予測装置10は、複数のコンピュータから実現されるようにしてもよい。
【0019】
<ハードウェア構成>
図2は、本発明の一実施形態に係る予測装置10のハードウェア構成図である。
【0020】
図2に示されているように、予測装置10は、コンピュータによって構築されており、
図2に示されているように、CPU101、ROM102、RAM103、HD104、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ105、ディスプレイ106、外部機器接続I/F(Interface)108、ネットワークI/F109、データバス110、キーボード111、ポインティングデバイス112、DVD-RW(Digital Versatile Disk Rewritable)ドライブ114、メディアI/F116を備えている。
【0021】
これらのうち、CPU101は、予測装置10全体の動作を制御する。ROM102は、IPL等のCPU101の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM103は、CPU101のワークエリアとして使用される。HD104は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ105は、CPU101の制御にしたがってHD104に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。ディスプレイ106は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、又は画像などの各種情報を表示する。外部機器接続I/F108は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。この場合の外部機器は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリやプリンタ等である。ネットワークI/F109は、通信ネットワーク60を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。バスライン110は、
図2に示されているCPU101等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0022】
また、キーボード111は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティングデバイス112は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。DVD-RWドライブ114は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW113に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。なお、DVD-RWに限らず、DVD-R等であってもよい。メディアI/F116は、フラッシュメモリ等の記録メディア115に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。
【0023】
<機能ブロック>
図3は、本発明の一実施形態に係る予測装置10の機能ブロック図である。
図3に示されるように、予測装置10は、現在位置取得部201、教師データ格納部202、機械学習部203、学習済みモデル格納部204、推論部205、通知部206を備えることができる。また、予測装置10は、プログラムを実行することによって、現在位置取得部201、機械学習部203、推論部205、通知部206として機能することができる。以下、それぞれについて説明する。
【0024】
現在位置取得部201は、Gateway40を経由してRFID受信機30から、RFIDタグ20のタグIDおよびRFID受信機30のアンテナIDを取得する。また、現在位置取得部201は、取得したタグIDおよびアンテナIDのデータを変換する。以下、
図4を参照しながら、データの変換について説明する。
【0025】
図4は、本発明の一実施形態に係る変換前データおよび変換後データを説明するための図である。
図4上の(a)変換前データは、現在位置取得部201が取得したデータである。
図4に示されるように、(a)変換前データは、RFIDタグ20のタグIDと、そのRFIDタグ20を読み取ったRFID受信機30のアンテナIDと、RFID受信機30がRFIDタグ20を読み取った日時と、を含む。
図4下の(b)変換後データは、現在位置取得部201が(a)変換前データを変換した後のデータである。
図4に示されるように、(b)変化後データは、タグIDに紐付けられた医療スタッフ21(つまり、RFIDタグ20が付されている医療スタッフ21)を特定するための情報(例えば、氏名)と、アンテナIDに紐付けられたエリア(つまり、RFID受信機30が設置されている病室等)を特定するため情報(例えば、部屋番号)と、RFID受信機30がRFIDタグ20を読み取った日時と、を含む。
【0026】
図3に戻る。以下、<学習フェーズ>と<推論フェーズ>とに分けて説明する。
【0027】
<学習フェーズ>
教師データ格納部202には、機械学習のための教師データが格納されている。教師データ格納部202内の教師データは、現在位置取得部201が一定期間取得して蓄積された位置情報データを使い、所定の形式に変換したデータ(つまり、
図4の(b)変換後データ)である。以下、
図5を参照しながら、教師データ格納部202に記憶されているデータについて説明する。
【0028】
図5は、本発明の一実施形態に係る教師データ格納部202に記憶されているデータの一例である。図中「date time」は、現在位置取得部201により取得されたRFIDタグ20の取得日時を表している。「person」は当該RFIDタグ20を身につけた医療スタッフ21(nurse A)を表している。そして、各日時での医療スタッフ21がいるエリアを表わすベクトル(例えば、部屋番号を表わすベクトル)を、「101,102、・・・505」のように表現している。このような時系列データを複数備えた教師データが教師データ格納部202に格納されている。
【0029】
図3に戻る。機械学習部203は、医療スタッフ21に付されたRFIDタグ20の位置から、そのRFIDタグ20の移動先の位置(つまり、次の位置)を導出するための学習済みモデルを生成する。具体的には、機械学習部203は、医療スタッフ21がいるエリア(例えば、部屋番号)を入力データとし、その医療スタッフ21が次にいるエリア(例えば、部屋番号)を出力データとした教師データを用いて機械学習を行い、学習済みモデルを生成する。また、機械学習部203は、生成した学習済みモデルを学習済みモデル格納部204に格納する。
【0030】
学習済みモデル格納部204には、機械学習部203が生成した学習済みモデルが格納されている。
【0031】
<<現在時刻>>
<学習フェーズ>において、位置の情報に加えて、医療スタッフ21がその位置にいた時刻の情報も学習するようにしてもよい。具体的には、機械学習部203は、医療スタッフ21がいるエリア(例えば、部屋番号)、および、該エリアにいた時刻を入力データとし、その医療スタッフ21が次にいるエリア(例えば、部屋番号)を出力データとした教師データを用いて機械学習を行い、学習済みモデルを生成する。この場合、時間帯に応じた動き(例えば、昼間は101号室から102号室へ移動することが多いが、夜間は101号室から103号室へ移動することが多い等)を学習することができる。
【0032】
<推論フェーズ>
推論部205は、医療スタッフ21に付されたRFIDタグ20の現在の位置を取得して、そのRFIDタグ20の移動先の位置(つまり、次の位置)を推論する。
【0033】
具体的には、推論部205は、現在位置取得部201から、医療スタッフ21を特定するための情報(例えば、氏名)と、医療スタッフ21がいるエリアを特定するための情報(例えば、部屋番号)と、を取得する。また、推論部205は、学習済みモデル格納部204内の学習済みモデルに"医療スタッフ21がいるエリア(例えば、部屋番号)"を入力して、"その医療スタッフ21が次にいるエリア(例えば、部屋番号)"を出力させる。
【0034】
ここで、本発明の一実施形態におけるモデルについて説明する。本発明の一実施形態では、LSTM(Long short-term memory)を用いてモデルを構築する。以下、
図13を参照しながら具体的なネットワーク構成、
図14を参照しながら具体的なパラメータについて説明する。
【0035】
図13は、本発明の一実施形態に係るLSTMのモデル構造である。
図13に示されるように、中間層において、活性化関数にReLU関数、Batch Normalization、Dropout=0.2の3層構造を適用する。また、出力層の直前にsoftmax関数を用いる。
【0036】
図14は、本発明の一実施形態に係るLSTMモデルにおける演算パラメータである。
図14に示されるように、「ステップ数」は、3、5、10であり、「ミニバッチサイズ」は、128であり、「学習回数」は25である。
【0037】
<<現在時刻>>
<推論フェーズ>において、位置の情報に加えて、医療スタッフ21が現在の位置にいた時刻の情報も学習済みモデルに入力するようにしてもよい。具体的には、推論部205は、学習済みモデル格納部204内の学習済みモデルに"医療スタッフ21がいるエリア(例えば、部屋番号)"と"RFID受信機30がRFIDタグ20を読み取った日時"とを入力して、"その医療スタッフ21が次にいるエリア(例えば、部屋番号)"を出力させる。この場合、時間帯に応じた動き(例えば、昼間は101号室から102号室へ移動することが多いが、夜間は101号室から103号室へ移動することが多い等)を考慮した推論をすることができる。
【0038】
図6は、本発明の一実施形態に係る推論フェーズを説明するための図である。
図6に示されるように、機械学習部203が生成した学習済みモデル格納部204内の学習済みモデルは、医療スタッフ21の現在のエリア(つまり、RFIDタグ20の現在の位置)の情報(さらに、現在の時刻を加えてもよい)が入力されると、医療スタッフ21が移動すべきエリア(つまり、RFIDタグ20の次の位置)の情報を出力する。
【0039】
<<動線の予測>>
上記の<学習フェーズ><推論フェーズ>において、次に移動すべき直近の1つの位置ではなく、次に移動すべき複数の位置(つまり、動線)を学習および推論するようにしてもよい。具体的には、機械学習部203は、医療スタッフ21がいるエリア(例えば、部屋番号)を入力データとし、その医療スタッフ21が移動すべき複数のエリア(つまり、次のエリア、次の次のエリア、・・・)を出力データとした教師データを用いて機械学習を行い、学習済みモデルを生成する。推論部205は、学習済みモデル格納部204内の学習済みモデルに"医療スタッフ21がいるエリア(例えば、部屋番号)"を入力して、"その医療スタッフ21が移動すべき複数のエリア(つまり、次のエリア、次の次のエリア、・・・)"を出力させる。
【0040】
<<位置と行動の予測>>
上記の<学習フェーズ><推論フェーズ>において、位置の情報に加えて、医療スタッフ21の行動の情報を学習および推論するようにしてもよい。具体的には、機械学習部203は、医療スタッフ21がいるエリア(例えば、部屋番号)を入力データとし、その医療スタッフ21が次にいるエリア(例えば、部屋番号)、および、該次のエリアでの行動を出力データとした教師データを用いて機械学習を行い、学習済みモデルを生成する。推論部205は、学習済みモデル格納部204内の学習済みモデルに"医療スタッフ21がいるエリア(例えば、部屋番号)"を入力して、"その医療スタッフ21が次にいるエリア(例えば、部屋番号)、および、該次の位置での行動の情報"を出力させる。例えば、行動の情報は、医療スタッフ21が病室等のエリアで実行すべき行動と、その行動のために必要な物とのうちの少なくとも一方の情報である。この場合、医療スタッフ21の業務日誌等に基づいて教師データが生成されうる。
【0041】
なお、上記の<<現在時刻>>と<<動線の予測>>と<<位置と行動の予測>>との任意の組み合わせが可能である。
【0042】
ここで、本発明の一実施形態における入力および出力のデータ形式について説明する。以下、
図15を参照しながら、医療スタッフ21が移動すべきエリア(つまり、RFIDタグ20の次の位置)を推論する場合を説明し、
図16を参照しながら、医療スタッフ21が移動すべきエリア(つまり、RFIDタグ20の次の位置)および該次の位置での行動の情報を推論する場合を説明する。
【0043】
図15は、本発明の一実施形態に係る入力および出力のデータ形式である。
【0044】
入力データは、日時(
図15の「date time」)、および、各日時に医療スタッフ21がいるエリア(
図15の「101,102、・・・505」)である。
図15の例では、2019年11月1日12時10分および102号室、2019年11月1日12時15分および101号室、2019年11月1日12時20分および102号室が、入力データとして用いられる。
【0045】
出力データは、日時(
図15の「date time」)、その日時に医療スタッフ21が移動すべきエリア(
図15の「101,102、・・・505」)である(なお、最も確率の高いエリアを次の移動先とする)。
図15の例では、上記の入力データから、2019年11月1日12時25分に101号室へ移動すべきであると推論される。
【0046】
なお、複数の移動先を予測(つまり、動線の予測)する場合には、予測した結果(
図15の出力データ)と、入力データのうち直近のデータから所定の個数のデータ(
図15の例では、12時15分のデータと12時20分のデータ)と、を入力データとして、再度予測が行われる。
【0047】
図16は、本発明の一実施形態に係る入力および出力のデータ形式である
【0048】
入力データは、日時(
図16の「date time」)、医療スタッフ21(
図16の「person」)、その日時にその医療スタッフ21がいるエリア(
図16の「101,102、・・・505」)である。
図16の例では、2019年11月1日12時10分およびnurse Aおよび102号室、2019年11月1日12時15分およびnurse Aおよび101号室、2019年11月1日12時20分およびnurse Aおよび102号室が、入力データとして用いられる。
【0049】
出力データは、日時(
図16の「date time」)、医療スタッフ21(
図16の「person」)、その日時にその医療スタッフ21が移動すべきエリア(
図16の「101,102、・・・505」。なお、最も確率の高いエリアを次の移動先とする)、該次の位置での行動の情報(
図16の「action」)である。
図16の例では、上記の入力データから、2019年11月1日12時25分に医療スタッフ21(nurse A)が101号室へ移動して、健康診断に関する行動を実行すべきであると推論される。
【0050】
なお、複数の移動先を予測(つまり、動線の予測)する場合は、
図15と同様である。
【0051】
通知部206は、推論部205が推論した結果(つまり、医療スタッフ21が次に移動すべきエリア(例えば、部屋番号))を通知端末50に通知する。上述したように、通知部206は、通知端末50が画面上で表示するように通知してもよいし、あるいは、通知端末50が音声で出力するように通知してもよい。なお、通知部206は、次の位置に加えて、該次の位置で実行すべき行動の情報を通知する構成とすることもできる。
【0052】
以下、上記の実施形態に追加することができる機能について説明する。
【0053】
<<異常検知>>
本発明の一実施形態では、予測装置10は、現在位置取得部201が過去の一定期間にて取得したデータのなかから、異常が検知されたデータを削除したうえで、教師データとする異常検知部をさらに備えることができる。以下、
図7を参照しながら、異常検知について説明する。
【0054】
図7は、本発明の一実施形態に係る異常検知をするニューラルネットワークの一例である。このニューラルネットワークは、
図3における教師データ格納部202に格納される教師データを生成する前工程のデータ処理に用いられる。このニューラルネットワークは、医療スタッフ21の過去の一定期間の移動履歴(位置情報の履歴)を入力すると、次の位置を予測結果として出力するエンコーダ部と、出力された次の位置から過去の移動履歴を出力するデコーダ部とを有している。
【0055】
エンコーダ部に入力された入力ベクトル(部屋番号など、医療スタッフ21がいるエリアを表わすベクトル)と、デコーダ部から出力された出力ベクトルとが、所定の基準以上に異なる場合には、そのデータは教師データの候補から削除される。
【0056】
このようにすることで、医療スタッフ21に付されたRFIDタグ20の位置の情報のうち、異常が検知されたと判断された位置の情報(例えば、医療スタッフ21の変則的な動きにかかる情報)に関するデータは教師データの候補から削除される。そして、クレンジングされたデータで移動・行動予測をすることになるため、教師データの精度を向上させることが可能となる。
【0057】
<<クラスタリング>>
本発明の一実施形態では、移動のパターンに基づいて医療スタッフ21をクラスタリングして、クラスタごとに医療スタッフ21の移動先や行動を予測する(つまり、クラスタごとの学習済みモデルを生成する)ようにすることができる。具体的には、クラスタに属する医療スタッフ21に共通する属性に応じた学習済みモデルを用いるようにする。これにより、医療スタッフ21の移動・行動の予測の精度を向上させることが可能となる。
【0058】
<<各種の予定との照合>>
本発明の一実施形態では、予測した移動先や行動と、医療施設や医療スタッフ21の予定とを照合して、不適切な予測結果(例えば、医療施設や医療スタッフ21の予定を勘案すると非現実的な予測結果)を排除するようにすることができる。
【0059】
<処理方法>
以下、学習処理と推論処理の方法について説明する。
【0060】
図8は、本発明の一実施形態に係る学習処理のフローチャートである。
【0061】
ステップ11(S11)において、現在位置取得部201は、RFIDタグ20のタグIDと、そのRFIDタグ20を読み取ったRFID受信機30のアンテナIDとを取得する。
【0062】
ステップ12(S12)において、現在位置取得部201は、S11で取得したタグIDおよびアンテナIDを、タグIDに紐付けられた医療スタッフ21を特定するための情報(例えば、氏名)と、アンテナIDに紐付けられたエリアを特定するため情報(例えば、部屋番号)とに変換する。
【0063】
ステップ13(S13)において、機械学習部203は、S12の変換後データ(つまり、医療スタッフ21がいるエリアを表わすベクトル(例えば、部屋番号を表わすベクトル)の時系列データ)を教師データとして機械学習を行う。具体的には、機械学習部203は、医療スタッフ21がいるエリア(例えば、部屋番号)を入力データとし、その医療スタッフ21が次にいるエリア(例えば、部屋番号)を出力データとした教師データを用いて機械学習を行い、学習済みモデルを生成する。
【0064】
ステップ14(S14)において、機械学習部203は、S13で生成した学習済みモデルを学習済みモデル格納部204に格納する。
【0065】
図9は、本発明の一実施形態に係る推論処理のフローチャートである。
【0066】
ステップ21(S21)において、現在位置取得部201は、RFIDタグ20のタグIDと、そのRFIDタグ20を読み取ったRFID受信機30のアンテナIDとを取得する。
【0067】
ステップ22(S22)において、現在位置取得部201は、S21で取得したタグIDおよびアンテナIDを、タグIDに紐付けられた医療スタッフ21を特定するための情報(例えば、氏名)と、アンテナIDに紐付けられたエリアを特定するため情報(例えば、部屋番号)とに変換する。
【0068】
ステップ23(S23)において、推論部205は、学習済みモデル格納部204内の学習済みモデルにS22の"医療スタッフ21がいるエリア(例えば、部屋番号)"を入力して、"その医療スタッフ21が次にいるエリア(例えば、部屋番号)"を出力させる。
【0069】
ステップ24(S24)において、通知部206は、S23で推論部205が推論した結果を通知端末50に通知する。
【0070】
図10および
図11は、本発明の一実施形態に係る通知端末50に表示される画面の一例である。例えば、
図10のように、1または複数の医療スタッフ21が次に移動すべき直近の1つの位置(例えば、病室、治療室、ナースステーション等)を通知端末50の画面上に表示するようにしてもよい。あるいは、例えば、
図11のように、1または複数の医療スタッフ21が次に移動すべき複数の位置(例えば、病室、治療室、ナースステーション等)を示す動線を通知端末50の画面上に表示するようにしてもよい。
【0071】
<別の実施形態>
なお、本発明の一実施形態において、通知端末50または通知端末50に接続されたコンピュータ(例えば、病院内に設置されたコンピュータ)が、予測装置10の機能の一部または全部を有するようにすることもできる。例えば、
図12の例では、予測装置10が機械学習部203を備え、通知端末50が推論部205を備える。そして、予測装置10の機械学習部203が上記の<学習フェーズ>の処理を行い、通知端末50の推論部205が上記の<推論フェーズ>の処理を行う。具体的には、予測装置10は、機械学習の処理を行い学習済みモデルを生成する。通知端末50は、予測装置10が生成した学習済みモデルを用いて推論の処理を行う。
【0072】
<他の分野への適用>
本明細書では医療現場の医療スタッフの実施形態を説明したが、本発明の予測システム、装置、方法、およびプログラムは、医療現場の医療スタッフ以外にも利用されうる。例えば、病院等の医療施設の患者や介護施設の入居者の移動・行動を予測したり、工場の生産ラインの従業員の移動・行動を予測したり、観光客の移動・行動を予測したりすることができる。
【0073】
このように、本発明の一実施形態では、医療スタッフ等の現在の位置に基づいて、移動先(つまり、次の位置)を予測することができる。予測の際には、医療スタッフ等の時間帯に応じた動きを考慮することができる。そのため、病院内の状況や医療スタッフの業務のスケジュールに応じた移動先を予測することができる。
【0074】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0075】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 予測システム
10 予測装置
20 RFIDタグ
21 医療スタッフ
30 RFID受信機
40 Gateway
50 通知端末
60 ネットワーク
201 現在位置取得部
202 教師データ格納部
203 機械学習部
204 学習済みモデル格納部
205 推論部
206 通知部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】