(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ウェーハ外周部の研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20241001BHJP
B24B 37/02 20120101ALI20241001BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B24B37/24 Z
B24B37/02
H01L21/304 621E
H01L21/304 622F
(21)【出願番号】P 2020099438
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】里村 健治
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153939(JP,A)
【文献】国際公開第01/062436(WO,A1)
【文献】特許第6565780(JP,B2)
【文献】特開2015-207658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/24
B24B 37/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状のウェーハを水平に保持する円盤状のステージと、
前記ステージをその中心軸を回転軸として回転させる回転駆動部と、
内周面
の上部および下部に
それぞれ研磨パッドが装着された1つ以上の研磨ヘッドと、
前記ウェーハの外周部に前記研磨パッドを当接させ、前記ウェーハの前記外周部に所定の研磨圧力を付与しながら、前記ウェーハの中心軸に対して傾斜した方向に、又は鉛直方向に、前記研磨ヘッドを摺動させる研磨ヘッド駆動機構と、を備え、
前記内周面の下部に装着された前記研磨パッドの圧縮率は、前記内周面の上部に装着された前記研磨パッドの圧縮率よりも大きく、
前記内周面の上部に装着された前記研磨パッドの前記鉛直方向の長さ又は前記研磨ヘッドの内周面の斜面に沿った長さは、前記内周面の下部に装着された前記研磨パッドの前記鉛直方向の長さ又は前記研磨ヘッドの内周面の斜面に沿った長さより長く、
前記研磨ヘッド駆動機構は、
1回目の研磨工程において、前記内周面の上部に装着された研磨パッド内で前記研磨ヘッドを摺動させた後、2回目の前記研磨工程において、
前記内周面の下部に装着された研磨パッド内で前記研磨ヘッドを摺動させる
ことを特徴とするウェーハ外周部の研磨装置。
【請求項2】
前記内周面の下部に装着される前記研磨パッドの硬度は、前記内周面の上部に装着される前記研磨パッドの硬度よりも低い
ことを特徴とする請求項
1に記載のウェーハ外周部の研磨装置。
【請求項3】
前記研磨ヘッドの前記内周面は、前記ウェーハの前記外周部に接近、離隔可能であって、前記外周部の周方向に沿った弧状を呈している
ことを特徴とする請求項1
または請求項2に記載のウェーハ外周部の研磨装置。
【請求項4】
前記研磨ヘッドは、前記ウェーハの前記外周部を構成する下斜面を研磨する第1の研磨ヘッドと、前記ウェーハの前記外周部を構成する上斜面を研磨する第2の研磨ヘッドと、前記ウェーハを挟んで対向して設けられ、前記ウェーハの前記外周部を構成する端面を研磨する第3及び第4の研磨ヘッドとを備え、
前記研磨ヘッド駆動機構は、前記ウェーハの前記外周部に前記第1乃至第4の研磨ヘッドを当接させ、前記ウェーハの前記外周部に所定の研磨圧力を付与しながら、前記第1の研磨ヘッドは前記下斜面に沿う方向に、前記第2の研磨ヘッドは前記上斜面に沿う方向に、第3及び第4の研磨ヘッドは前記ウェーハの鉛直方向に、同時に摺動させる
ことを特徴とする請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載のウェーハ外周部の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転している円盤状のウェーハの外周部に研磨パッドを接触させて研磨するウェーハ外周部の研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、半導体ウェーハなどの円盤状のウェーハは、その上面及び下面が鏡面研磨されるとともに、その外周部が鏡面研磨される。ウェーハの外周部とは、
図4に示すように、円盤状のウェーハ31の外縁部に台形状又は円弧状に形成されるものである。ウェーハ31の外周部41は、面取り部又はエッジ部ともいう。
【0003】
図4に示すウェーハ31の外周部41は、台形状を呈し、上斜面51と、下斜面52と、端面53とから構成されている。上斜面51は、ウェーハ31の外縁部において、ウェーハ31の上面31Aに対して下面31B側に傾斜して形成されている。
【0004】
下斜面52は、ウェーハ31の外縁部において、ウェーハ31の下面31Bに対して上面31A側に傾斜して形成されている。端面53は、上斜面51と下斜面52との間に、ウェーハ31の中心軸に対して平行な方向に形成されている。外周部41の研磨とは、前記上斜面51、前記下斜面52及び前記端面53を研磨することをいう。
【0005】
従来のウェーハ外周部の研磨装置には、ウェーハを把持するウェーハ把持手段と、把持されたウェーハを回転させるウェーハ回転手段と、研磨パッドが装着された研磨面を有する研磨ヘッドと、研磨パッドの内部に研磨液(スラリー)を含浸させるスラリー含浸手段とを有するものがある。このウェーハ外周部の研磨装置では、研磨ヘッドに装着され、内部にスラリーを含浸させた研磨パッドとウェーハ外周部とが相対的に接触するように配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、従来のウェーハ外周部の研磨装置には、ウェーハをチャックしてウェーハの中心軸を回転軸として回転させるチャック手段と、ウェーハの上斜面を研磨する一対の上斜面研磨部材と、ウェーハの下斜面を研磨する下斜面研磨部材と、ウェーハの端面を研磨する端面研磨部材とを備えたものがある。一対の上斜面研磨部材はチャック手段を挟んで対向位置に配置され、下斜面研磨部材は一対の上斜面研磨部材の間であって、チャック手段に向かうように配置され、端面研磨部材は一対の上斜面研磨部材の間であって、チャック手段に向かうように配置されている。また、このウェーハ外周部の研磨装置は、ウェーハの上斜面、下斜面及び端面に向かう研磨圧をそれぞれの研磨部材に付与する荷重手段を備える(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-207658号公報
【文献】特開2003-257901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ウェーハの外周部を研磨パッドを用いて研磨することにより、ウェーハの外周部は所定の表面粗さRaに調整される。ウェーハの外周部の表面粗さRaは、使用する研磨パッドの硬度や圧縮率に応じて異なる。ウェーハの外周部の表面粗さRaは、例えば、低い硬度を有する研磨パッドを使用すれば小さくなり、大きい圧縮率を有する研磨パッドを使用すれば小さくなる。
【0009】
ウェーハの上面及び下面を研磨する際、一般に、粗研磨用の研磨装置では高い硬度を有する(硬質の)研磨パッドが使用され、仕上げ研磨用の研磨装置では低い硬度を有する(軟質の)研磨パッドが使用される。
【0010】
ウェーハの外周部を研磨する際、例えば、軟質の研磨パッドを使用した場合、この研磨パッドが研磨対象であるウェーハの外周部だけでなく、ウェーハの表面側(上面側、下面側)にまで回り込んで研磨するオーバーポリッシュという現象が発生する場合がある。オーバーポリッシュが発生した場合、ウェーハの外周部の厚みが薄くなるエッジロールオフという不具合を生じるため、ウェーハの上面及び下面の平坦度が悪化する。また、軟質の研磨パッドを使用した場合、研磨速度が遅いため生産性が劣るが、表面粗さRaを小さくすることができる。
【0011】
一方、ウェーハの外周部を研磨する際、硬質の研磨パッドを使用した場合、研磨速度が速いため、生産性に優れているとともに、研磨パッドがウェーハの表面側へ回り込むことが抑制され、前記オーバーポリッシュの発生を低減することができる。しかし、硬質の研磨パッドを使用した場合、ウェーハの外周部表面は、軟質の研磨パッドを使用した場合と比較して表面粗さRaが大きい。
【0012】
この点、粗研磨及び仕上げ研磨を1台の研磨装置を用いて行う場合、硬質の研磨パッドを使用して粗研磨した後、研磨ヘッドから硬質の研磨パッドを取り外し、研磨ヘッドに軟質の研磨パッドを装着して仕上げ研磨をすることが考えられる。しかし、研磨パッドを交換するための作業が必要となり、生産性の低下を招く。
【0013】
また、粗研磨専用の研磨装置と仕上げ研磨専用の研磨装置をそれぞれ設置することが考えられる。しかし、その場合、両装置間でウェーハを受け渡すためのウェーハ搬送機構が必要となるため、製造コストがかかるとともに、作業効率(サイクルタイム)が低下し、生産性が低下する。
【0014】
本発明は、前記様々な問題を解決することを課題の一例とするものであり、これらの課題を解決できるウェーハ外周部の研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るウェーハ外周部の研磨装置は、円盤状のウェーハを水平に保持する円盤状のステージと、前記ステージをその中心軸を回転軸として回転させる回転駆動部と、内周面に研磨パッドが装着された1つ以上の研磨ヘッドと、前記ウェーハの外周部に前記研磨パッドを当接させ、前記ウェーハの前記外周部に所定の研磨圧力を付与しながら、前記ウェーハの中心軸に対して傾斜した方向に、又は鉛直方向に、前記研磨ヘッドを摺動させる研磨ヘッド駆動機構と、を備え、前記研磨ヘッドの前記内周面には、物性値が異なる2種類以上の前記研磨パッドが前記研磨ヘッドの鉛直方向に装着されていることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るウェーハ外周部の研磨装置において、前記研磨ヘッド駆動機構は、1回の研磨工程において前記物性値が同一の前記研磨パッド内で前記研磨ヘッドを摺動させることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るウェーハ外周部の研磨装置において、前記研磨ヘッドの前記内周面は、前記ウェーハの前記外周部に接近、離隔可能であって、前記外周部の周方向に沿った弧状を呈していることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るウェーハ外周部の研磨装置において、前記研磨ヘッドは、前記ウェーハの前記外周部を構成する下斜面を研磨する第1の研磨ヘッドと、前記ウェーハの前記外周部を構成する上斜面を研磨する第2の研磨ヘッドと、前記ウェーハを挟んで対向して設けられ、前記ウェーハの前記外周部を構成する端面を研磨する第3及び第4の研磨ヘッドとを備え、前記研磨ヘッド駆動機構は、前記ウェーハの前記外周部に前記第1乃至第4の研磨ヘッドを当接させ、前記ウェーハの前記外周部に所定の研磨圧力を付与しながら、前記第1の研磨ヘッドは前記下斜面に沿う方向に、前記第2の研磨ヘッドは前記上斜面に沿う方向に、第3及び第4の研磨ヘッドは前記ウェーハの鉛直方向に、同時に摺動させることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るウェーハ外周部の研磨装置において、前記研磨パッドは前記内周面の上部に装着される研磨パッドと、前記内周面の下部に装着される研磨パッドで構成され、前記内周面の下部に装着される前記研磨パッドの圧縮率は、前記内周面の上部に装着される前記研磨パッドの圧縮率よりも大きいことを特徴とする。
【0020】
本発明に係るウェーハ外周部の研磨装置において、前記研磨パッドは前記内周面の上部に装着される研磨パッドと、前記内周面の下部に装着される研磨パッドで構成され、前記内周面の下部に装着される前記研磨パッドの硬度は、前記内周面の上部に装着される前記研磨パッドの硬度よりも低いことを特徴とする。
【0021】
本発明に係るウェーハ外周部の研磨装置において、前記内周面の上部に装着される前記研磨パッドの前記鉛直方向の長さ又は前記研磨ヘッドの内周面の斜面に沿った長さは、前記内周面の下部に装着される前記研磨パッドの前記鉛直方向の長さ又は前記研磨ヘッドの内周面の斜面に沿った長さより長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、作業効率(サイクルタイム)を低下させることなく、オーバーポリッシュの発生を抑制できるとともに、ウェーハ外周部表面の粗さを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るウェーハ外周部の研磨装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図4】ウェーハ外周部の形状の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
[ウェーハ外周部の研磨装置の構成]
図1は本発明の一実施形態に係るウェーハ外周部の研磨装置1の構成の一例を示す概念図、
図2は
図1のA-A’断面図、
図3は
図1のB-B’断面図である。
【0025】
ウェーハ外周部の研磨装置1は、ステージ11と、回転駆動部12と、研磨ヘッド13、14、15及び16と、第1研磨パッド21、22、23及び24と、第2研磨パッド25、26、27及び28と、ノズル29と、研磨ヘッド駆動機構30とを備えている。なお、
図1には、ステージ11、回転駆動部12、第2研磨パッド27及び28、ノズル29並びに研磨ヘッド駆動機構30を示していない。
【0026】
図2及び
図3に示すステージ11は、ほぼ円盤状を呈している。ステージ11は、ウェーハ31の下面31Bを真空吸着して又は、ウェーハ31の下面31Bを静電気によって付着してウェーハ31を水平に保持する。ステージ11の直径は特に限定されないが、直径300mmのウェーハ31の外周部41を研磨する場合には280±10mm程度、直径450mmのウェーハ31の外周部41を研磨する場合には、430±10mm程度とすることができる。回転駆動部12は、ステージ11の中心部下部に取りつけられ、ステージ11をその中心軸を回転軸として回転させる。
【0027】
研磨ヘッド13は、ウェーハ31の外周部41に接近、離隔可能であって、外周部41の周方向に沿った弧状を呈した内周面を有し、この内周面上部に第1研磨パッド21が装着され、前記内周面下部に第2研磨パッド25が装着され、ウェーハ31の外周部41を構成する下斜面52(
図4参照)を研磨する。
【0028】
研磨ヘッド14は、ウェーハ31の外周部41に接近、離隔可能であって、外周部41の周方向に沿った弧状を呈した内周面を有し、この内周面上部に第1研磨パッド22が装着され、前記内周面下部に第2研磨パッド26が装着され、ウェーハ31の外周部41を構成する上斜面51(
図4参照)を研磨する。
【0029】
研磨ヘッド15は、ウェーハ31の外周部41に接近、離隔可能であって、外周部41の周方向に沿った弧状を呈した内周面を有し、この内周面上部に第1研磨パッド23が装着され、前記内周面下部に第2研磨パッド27が装着され、ウェーハ31の外周部41を構成する端面53(
図4参照)を研磨する。
【0030】
研磨ヘッド16は、ウェーハ31の外周部41に接近、離隔可能であって、外周部41の周方向に沿った弧状を呈した内周面を有し、この内周面上部に第1研磨パッド24が装着され、前記内周面下部に第2研磨パッド28が装着され、ウェーハ31の外周部41を構成する端面53(
図4参照)を研磨する。
【0031】
研磨ヘッド13、14、15及び16は、ウェーハ31の外周部41との接触面積を最大とするために、外周部41に沿って配置されている。
【0032】
第1研磨パッド21、22、23及び24並びに第2研磨パッド25、26、27及び28を総称する際には、単に、研磨パッドという。
【0033】
研磨パッドの種類としては、例えば、不織布タイプ、発泡ポリウレタンタイプ、スウェードタイプなどがある。不織布タイプは、例えば、ポリエステルフェルトにポリウレタン樹脂を含浸させたものである。スウェードタイプは、例えば、ポリエステルフェルトにポリウレタンを含浸させた基材に、前記ポリウレタン内に発泡層を成長させ、表面部位を除去し発泡層に開口部を設けたもの(この層をナップ層と呼ぶ)である。ナップ層には、研磨液が貯留される。
【0034】
研磨パッドの物性値としては、例えば、硬度、圧縮率、厚さなどがある。圧縮率とは、所定形状の成形体に一定の荷重をかけたときに縮む割合をいう。主な研磨パッドの硬度の測定方法は、以下に示す(1)及び(2)であり、主な圧縮率の測定方法は、以下に示す(3)である。
【0035】
(1)硬度(JIS)
硬度(JIS)は、日本工業規格(JIS K7312-1996)のタイプAによる硬さ試験に準拠して測定する。
(2)硬度(ASKER)
硬度(ASKER)は、ASKER C硬度計で測定する。
【0036】
(3)圧縮率(JIS)
圧縮率(JIS)は、日本工業規格(JIS L 1021)に準拠して、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用いて測定する。具体的には、初荷重で30秒間加圧した後の厚さt0を測定し、次に最終圧力の下で5分間放置後の厚さt1を測定する。これらから、圧縮率を式(1)により算出する。このとき、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2とする。
圧縮率(%)=(t0-t1)/t0×100 ・・・(1)
【0037】
研磨パッドの具体例について、表1に示す。
【0038】
【0039】
本実施形態では、ウェーハ31の外周部41の粗研磨から仕上げ研磨までを1台の研磨装置を用いて行う。第1研磨パッド21、22、23及び24は、同一の物性値を備えたものを使用する。また、第2研磨パッド25、26、27及び28は、同一の物性値を備えたものを使用する。
【0040】
一方、第1研磨パッド21と第2研磨パッド25とは、互いの物性値が異なるものを使用する。同様に、第1研磨パッド22と第2研磨パッド26、第1研磨パッド23と第2研磨パッド27並びに、第1研磨パッド24と第2研磨パッド28は、互いの物性値が異なるものを使用する。
【0041】
第1研磨パッド21、22、23及び24と、対応する第2研磨パッド25、26、27及び28との組み合わせは、研磨後のウェーハ31の外周部41の表面粗さRaについてユーザから要求される仕様に応じて、表1に示す物性値を有する研磨パッドの中から選択すれば良い。
【0042】
硬度を基準とする場合、第1研磨パッド21、22、23及び24は、第2研磨パッド25、26、27及び28よりも高い硬度を有するものを選択する。また、圧縮率を基準とする場合、第1研磨パッド21、22、23及び24は、第2研磨パッド25、26、27及び28よりも小さい圧縮率を有するものを選択する。第1研磨パッド21、22、23及び24と、第2研磨パッド25、26、27及び28との組み合わせは、同一タイプの研磨パッドの中で物性値の異なるものを選択しても良い。
【0043】
以下、前記した研磨パッドの装着方法を採用する理由について説明する。低い硬度又は大きい圧縮率を有する研磨パッドは、劣化しやすいので、ウェーハ31の外周部41の研磨中に研磨パッド本体から分離する分離屑が発生しやすい。
【0044】
このため、研磨ヘッド13、14、15及び16の内周面上部に低い硬度又は大きい圧縮率を有する研磨パッドを装着した場合、次のウェーハ31の外周部41を研磨する際、前記分離屑が当該ウェーハ31の外周部41の研磨精度を悪化させる原因の1つとなるおそれがある。
【0045】
この点、研磨ヘッド13、14、15及び16の内周面上部に、高い硬度又は小さい圧縮率を有する研磨パッドを装着した場合、ウェーハ31の外周部41の研磨中にウェーハ31の外周部41自体から研磨屑が分離する。
【0046】
しかし、ウェーハ31の外周部41の研磨中は、ウェーハ31上方から常時供給されている研磨液により大部分の前記研磨屑は除去され、残存する前記研磨屑は微細であって、ウェーハ31と同一の材質であるため、ウェーハ31の外周部41を研磨する際の前記研磨屑の影響は無視できると思われる。
【0047】
これに対し、低い硬度又は大きい圧縮率を有する研磨パッドの前記分離屑は、ウェーハ31とは異種の材質であるので、前記研磨屑よりもウェーハ31の外周部41を研磨する際の影響が大きいと思われる。
【0048】
次に、第1研磨パッド21、22、23及び24と、第2研磨パッド25、26、27及び28のサイズについて説明する。端面53を研磨する第1研磨パッド23及び24の長さは、対応する研磨ヘッド15及び16の内周面の鉛直方向の長さの60%~90%の範囲内にすることが好ましい。下斜面52を研磨する第1研磨パッド21及び上斜面51を研磨する第1研磨パッド22の長さは、対応する研磨ヘッド13及び14の内周面の斜面長の60%~90%の範囲内にすることが好ましい。
【0049】
ここで、第1研磨パッド23及び24並びに第2研磨パッド27及び28の長さとは、鉛直方向の長さをいう。一方、第1研磨パッド21及び22並びに、第2研磨パッド25及び26における前記長さとは、対応する研磨ヘッド13及び14の内周面の斜面に沿った長さをいう。
【0050】
前記長さの範囲の下限は第1研磨の仕事量を考慮するとともに、高い硬度又は小さい圧縮率を有する研磨パッドの寿命を延ばすため、前記長さの範囲の上限は第2研磨の仕事量を考慮するためである。
【0051】
端面53を研磨する第2研磨パッド27及び28の長さは、対応する研磨ヘッド15及び16の内周面の鉛直方向の長さの40%~10%の範囲内にすることが好ましい。下斜面52を研磨する第2研磨パッド25及び上斜面51を研磨する第2研磨パッド26の長さは、対応する研磨ヘッド13及び14の内周面の斜面長の40%~10%の範囲内にすることが好ましい。前記長さの範囲の下限は、第2研磨の仕事量を考慮するため、前記長さの範囲の上限は第1研磨と第2研磨との仕事量のバランスを考慮するためである。
【0052】
図2及び
図3に示すように、ステージ11の略中央部上方には、研磨液(スラリー)をウェーハ31のほぼ中心に供給するためのノズル29が設けられている。ウェーハ31が装着されたステージ11がその中心軸を回転軸として回転駆動部12によって回転されることにより、ノズル29から供給された研磨液が遠心力によりウェーハ31の上面31Aを外周部41に向かって流れ、研磨対象であるウェーハ31の外周部41に供給される。
【0053】
第1研磨パッド21、22、23及び24の使用時には、研磨液として、砥粒が含有されたアルカリ水溶液を使用することが好ましい。このうち、砥粒としては平均粒径50nmのコロイダルシリカ(SiO2)、アルカリ水溶液としてはpH10~11程度の水酸化カリウム(KOH)水溶液を使用することが特に好ましい。
【0054】
一方、第2研磨パッド25、26、27及び28の使用時には、研磨液として、砥粒が含有されないアルカリ水溶液を使用することが好ましい。アルカリ水溶液としてはpH10~11程度の水酸化カリウム(KOH)水溶液を使用することが特に好ましい。また、研磨液には、ポリマーが添加されていることが好ましい。
【0055】
図2及び
図3に示す研磨ヘッド駆動機構30は、研磨ヘッド13、14、15及び16をステージ11の中心軸に向かう方向及びステージ11の中心軸から離れる方向に水平移動させるとともに、研磨ヘッド13、14、15及び16を鉛直方向に上下移動させる。研磨ヘッド駆動機構30は、研磨ヘッド13及び14については、ウェーハ31の外周部41を構成する上斜面51及び下斜面52を研磨する際に、上斜面51及び下斜面52がウェーハ31の上面31A及び下面31Bに対し所望の角度をなすように、水平移動及び上下移動を連動させる(
図2の斜めの矢印参照)。
【0056】
研磨ヘッド駆動機構30は、上下及び水平方向へ移動自在のすべり部材と、これらを駆動するボールネジ、その他の直動駆動機構とから構成されている。直動駆動機構は、ステップモータなどにより駆動量を制御できる。
【0057】
前記研磨ヘッド駆動機構30は、研磨ヘッド13、14、15及び16をステージ11の中心軸に向かう方向に同時に水平移動させることにより、第1研磨パッド21、22、23及び24又は、第2研磨パッド25、26、27及び28を、回転するステージ11に保持されたウェーハ31の外周部41に当接させ、ウェーハ31の外周部41に所定の研磨圧力を付与しながら、ウェーハ31の中心軸に対して傾斜した方向に、又は鉛直方向に、同時に摺動させてウェーハ31の外周部41を研磨する。
【0058】
[ウェーハ外周部の研磨方法]
次に、前記構成を有するウェーハ外周部の研磨装置1を用いたウェーハ外周部の研磨方法の一例について説明する。まず、ウェーハ31の下面31Bをステージ11に水平に保持させる。
【0059】
次に、ノズル29から研磨液をウェーハ31のほぼ中心に供給しつつ、回転駆動部12によりステージ11及びウェーハ31を所定の回転数(例えば、10rpm)で回転させ、研磨ヘッド駆動機構30により研磨ヘッド13、14、15及び16の第1研磨パッド21、22、23及び24を所定の加工荷重により、ウェーハ31の外周部41の対応する箇所にそれぞれ同時に当接させて、ウェーハ31の外周部41の第1研磨加工を行う。
【0060】
この際、研磨ヘッド駆動機構30は、第1研磨パッド21及び22の内周面の斜面に沿った長さ及び、第1研磨パッド23及び24の鉛直方向の長さの範囲内において、研磨ヘッド13、14、15及び16をそれぞれの長さ方向に摺動させる。言い換えれば、研磨ヘッド駆動機構30は、第1研磨において、物性値が同一の第1研磨パッド21、22、23及び24内で研磨ヘッド13、14、15及び16を摺動させる。このようにすれば、第1研磨パッド21、22、23及び24の寿命を長くすることができる。
【0061】
この第1研磨の加工時間は、例えば、40~50秒程度とする。また、研磨ヘッド13、14、15及び16の摺動回数は、例えば、2~3往復とする。
【0062】
これにより、ウェーハ31の外周部41の下斜面52が第1研磨パッド21により、外周部41の上斜面51が第1研磨パッド22により、外周部41の端面53が第1研磨パッド23及び24によりそれぞれ研磨される。
【0063】
次に、ノズル29から研磨液をウェーハ31のほぼ中心に供給しつつ、回転駆動部12によりステージ11及びウェーハ31を所定の回転数(例えば、10rpm)で回転させ、研磨ヘッド駆動機構30により研磨ヘッド13、14、15及び16の第2研磨パッド25、26、27及び28を所定の加工荷重により、ウェーハ31の外周部41の対応する箇所にそれぞれ同時に当接させて、ウェーハ31の外周部41の第2研磨加工を行う。
【0064】
この際、研磨ヘッド駆動機構30は、第2研磨パッド25及び26の内周面の斜面に沿った長さ及び、第2研磨パッド27及び28の鉛直方向の長さの範囲内において、研磨ヘッド13、14、15及び16をそれぞれの長さ方向に摺動させる。言い換えれば、研磨ヘッド駆動機構30は、第2研磨において、物性値が同一の第2研磨パッド25、26、27及び28内で研磨ヘッド13、14、15及び16を摺動させる。このようにすれば、第2研磨パッド25、26、27及び28の寿命を長くすることができる。
【0065】
この第2研磨の加工時間は、例えば、5~10秒程度とする。また、研磨ヘッド13、14、15及び16の摺動回数は、例えば、1~2往復とする。
【0066】
これにより、ウェーハ31の外周部41の下斜面52が第2研磨パッド25により、外周部41の上斜面51が第2研磨パッド26により、外周部41の端面53が第2研磨パッド27及び28によりそれぞれ研磨される。
【0067】
[本実施形態の作用効果]
以上説明したように、前記実施形態では、以下に示す効果を奏することができる。
1)第1研磨では、第1研磨パッド21、22、23及び24として、高い硬度又は小さい圧縮率を有する研磨パッドを使用しているので、第1研磨時におけるウェーハ31への第1研磨パッド21、22、23及び24の沈み込みが低減される。
【0068】
このため、第1研磨パッド21、22、23及び24がウェーハ31の上面31A側又は下面31B側にまで回り込むことを抑制できる。結果として、この第1研磨では、オーバーポリッシュの発生を低減することができ、前工程で生じた傷や圧痕も除去される。また、研磨速度が速いため、生産性に優れている。
【0069】
2)第2研磨では、第1研磨終了後直ちに、研磨ヘッド13、14、15及び16の内周面下部に装着した第2研磨パッド25、26、27及び28によりウェーハ31の外周部41を研磨している。すなわち、本実施形態では、研磨ヘッド13、14、15及び16から第1研磨パッド21、22、23及び24を取り外して研磨ヘッド13、14、15及び16に第2研磨パッド25、26、27及び28を装着したり、ウェーハ搬送機構により第1研磨が終了したウェーハを第2研磨専用の研磨装置に搬送したりする必要はない。このため、製造コストを削減できるとともに、作業効率(サイクルタイム)が向上するため、生産性が向上する。
【0070】
3)本実施形態では、第1研磨の加工時間が40~50秒程度であり、第2研磨の加工時間が5~10秒程度であるので、ウェーハ31の外周部41の表面粗さRaを0.4以下にすることができるとともに、オーバーポリッシュの発生を可及的に低減することができ、生産性の低下も抑制できる。
【0071】
4)本実施形態では、第2研磨では、研磨液にポリマーが添加されているので、第2研磨時におけるウェーハ31の外周部41の濡れ性を向上できる。
【0072】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0073】
前記実施形態では、ウェーハ31の回転方向については特に説明してないが、第1研磨時及び第2研磨時の両方において、ウェーハ31を時計回り方向への回転と、反時計回り方向への回転と行っても良い。
【0074】
前記実施形態では、研磨パッドは2種類である例を示したが、これに限定されず、3種類以上としても良い。このように構成すれば、例えば、ウェーハ31の外周部41の表面粗さRaについて、ユーザが現在より厳しい条件を要求した場合、2種類以上の第2研磨パッドを用いて第2研磨を複数回行うことにより対応できる。
【0075】
前記実施形態では、ステージ11の略中央部上方に研磨液をウェーハ31の中心に供給するためのノズル29が設ける例を示したが、これに限定されない。例えば、前記ノズル29を各研磨ヘッド13、14、15及び16の上方にそれぞれ設け、外周部41の研磨前に第1研磨パッド21、22、23及び24並びに第2研磨パッド25、26、27及び28にのみ研磨液を供給して含浸させても良い。
【0076】
前記実施形態では、外周部41の下斜面52を研磨する研磨ヘッド13及び外周部41の上斜面51を研磨する研磨ヘッド14を1つずつ設けるとともに、外周部41の端面53を研磨する一対の研磨ヘッド15及び16を設ける例を示したが、これに限定されない。例えば、複数の研磨ヘッド13及び14を設けるとともに、複数対の研磨ヘッド15及び16を設けても良い。
【0077】
前記実施形態では、第2研磨時の研磨液にポリマーを添加する例を示したが、第2研磨時の研磨液にもポリマーを添加しても良い。
【0078】
前記実施形態では、本発明を
図1~
図3に示す研磨装置に適用する例を示したが、これに限定されない。本発明は、例えば、特開2003-257901号公報(特許文献2)に記載された研磨装置にも適用することができる。
【0079】
特許文献2に記載された研磨装置では、一対の上斜面研磨部材は、チャック手段に保持されたウェーハの直径方向両側の相対向する位置に配置されるとともに、それぞれの中心軸をウェーハの中心軸に対して傾斜させて、各上斜面研磨部材の作業面がウェーハの上斜面に全幅にわたり接触するように配設されている。前記研磨装置は、研磨時には上斜面研磨部材の作業面がウェーハの上斜面に線接触した状態で当該上斜面を研磨する。下斜面研磨部材は、一対の上斜面研磨部材の間に配設され、研磨時には下斜面研磨部材の作業面がウェーハの下斜面に線接触した状態で当該下斜面を研磨する。
【符号の説明】
【0080】
1…ウェーハ外周部の研磨装置、11…ステージ、12…回転駆動部、13,14,15,16…研磨ヘッド、21,22,23,24…第1研磨パッド、25,26,27,28…第2研磨パッド、29…ノズル、30…研磨ヘッド駆動機構、31…ウェーハ、31A…上面、31B…下面、41…外周部、51…上斜面,52…下斜面、53…端面。