(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】撮影システム及び移動体
(51)【国際特許分類】
H04N 23/71 20230101AFI20241001BHJP
H04N 23/74 20230101ALI20241001BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20241001BHJP
G03B 7/091 20210101ALI20241001BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20241001BHJP
【FI】
H04N23/71
H04N23/74
H04N23/60 100
G03B7/091
G03B15/00 T
G03B15/00 V
(21)【出願番号】P 2020128065
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】澤田 圭人
(72)【発明者】
【氏名】菊地 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】山中 祐治
(72)【発明者】
【氏名】高巣 修作
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-065239(JP,A)
【文献】特開2018-159642(JP,A)
【文献】特開2010-239479(JP,A)
【文献】特開2011-095222(JP,A)
【文献】特開2007-096510(JP,A)
【文献】特開2012-073927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 -23/76
H04N 23/90 -23/959
G03B 15/00
G03B 7/00 - 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられ、所定の方向を撮影可能な撮影装置と、
前記所定の方向に存在する対象物と前記撮影装置との距離を測定する距離測定装置と、
前記距離測定装置で得られた情報に基づいて、前記撮影装置の露出量を制御する制御装置と、
前記距離測定装置で得られた距離測定値が所定の第1距離閾値以上で且つ所定の第2距離閾値以下の場合に、前記対象物に関する情報を報知する報知手段と、を備え、
前記距離測定装置は、前記撮影装置よりも前記移動体の移動方向側に設けられている
撮影システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記撮影システムの操作者が前記報知手段による報知に基づいて行った所定の操作に応答して、前記撮影装置の露出条件を所定の第2の露出条件に決定する
請求項
1に記載の撮影システム。
【請求項3】
移動体に設けられ、所定の方向を撮影可能な撮影装置と、
前記所定の方向に存在する対象物と前記撮影装置との距離を測定する距離測定装置と、
前記距離測定装置で得られた情報に基づいて、前記撮影装置の露出量を制御する制御装置と、
前記移動体の移動速度に基づき、前記距離測定装置と前記撮影装置との連携が可能な前記移動速度への修正を要求する要求手段と、を備え、
前記距離測定装置は、前記撮影装置よりも前記移動体の移動方向側に設けられている
撮影システム。
【請求項4】
前記要求手段は、前記移動体の運転者に対して前記修正を要求する
請求項3に記載の撮影システム。
【請求項5】
前記移動速度を修正する修正手段を備え、
前記要求手段は、前記修正手段に対して修正を要求し、
前記修正手段は、前記要求手段による要求に応答して、前記移動速度を修正する
請求項3に記載の撮影システム。
【請求項6】
前記対象物を照明する照明装置を備え、
前記制御装置は前記照明装置を制御可能に構成されている
請求項1
乃至5の何れか1項に記載の撮影システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記距離測定装置で得られた距離測定値が所定の第1距離閾値以下の場合に、前記撮影装置の露出条件を所定の第1の露出条件に決定する
請求項1
乃至6の何れか1項に記載の撮影システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記撮影システムの操作者が行った所定の操作に応答して、前記撮影装置の露出条件を所定の第2の露出条件に決定する
請求項1乃至
7の何れか1項に記載の撮影システム。
【請求項9】
請求項1乃至
8の何れか1項に記載の撮影システムを備える
移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影システム及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル等の対象物の維持管理において、車両で移動しながら撮影装置により対象物を撮影し、対象物全体の展開図画像を作成する撮影システムが知られている。このような撮影システムでは、適正な明るさ(撮影光量)で対象物を撮影するために、照明装置で対象物が照明され、且つ露光時間、センサゲイン、絞り又は照明照度等により露出条件を制御する自動露出制御が行われる。
【0003】
また、車両前方の所定距離内に明るさが所定量以上変化する区間が存在する場合に、該区間内の各地点の明るさに対応する情報を取得し、各地点の明るさが該情報で示される明るさであると仮定した場合に、上記区間を走行する際に生じる明るさ変化に応じて車両が備える撮影装置の露出量を制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の技術では、撮影装置の対象物と撮像装置との関係や撮影環境が変化した際の撮影効率に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、撮影効率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る撮影システムは、移動体に設けられ、所定の方向を撮影可能な撮影装置と、前記所定の方向に存在する対象物と前記撮影装置との距離を測定する距離測定装置と、前記距離測定装置で得られた情報に基づいて、前記撮影装置の露出量を制御する制御装置と、前記距離測定装置で得られた距離測定値が所定の第1距離閾値以上で且つ所定の第2距離閾値以下の場合に、前記対象物に関する情報を報知する報知手段と、を備え、前記距離測定装置は、前記撮影装置よりも前記移動体の移動方向側に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撮影効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る撮影システムの構成例を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るカメラユニットの構成例を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る照明ユニットの構成例を示す斜視図である。
【
図4】実施形態に係る撮影システムのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図5】車両からトンネル壁面までの距離が短い場合での撮影を説明する図であり、(a)は走行方向から車両をみた図、(b)はトンネル内部の車両の走行を示す図である。
【
図6】車両からトンネル壁面までの距離が長い場合での撮影を説明する図であり、(a)は走行方向から車両をみた図、(b)はトンネル内部の車両の走行を示す図である。
【
図7】カメラユニットと照明ユニットの位置/姿勢変動の影響を示す図であり、(a)は位置/姿勢変動がない場合を示す図、(b)は位置/姿勢変動がある場合を示す図である。
【
図8】ガイドシャフト及びガイドシャフト保持部材の構成例を示す図である。
【
図9】トンネルの壁面に対して傾いた時の撮影領域と照明領域の関係を示す図である。
【
図10】インデックスプランジャの構成例を示す図である。
【
図11】撮影方向に対して照明方向を傾ける効果例を説明する図である。
【
図12A】照明光と撮影光の傾き、照明配光角、及び照明領域の関係を示す図であり、(a)はカメラユニットと照明ユニットとトンネルの壁面の関係を示す図、(b)は撮影領域と照明領域が重なっている状態で車両がトンネルの壁面から遠のいた場合を示す図である。
【
図12B】照明光と撮影光の傾き、照明配光角、及び照明領域の関係を示す図であり、(c)は撮影領域と照明領域が重なっている状態で車両がトンネルの壁面に近づいた場合を示す図、(d)は撮影光を照明光に対して傾けた例を示す図である。
【
図13】車両の蛇行と撮影領域と照明領域の関係例を説明する図である。
【
図14】実施形態に係る撮影システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図15】第1実施形態に係る制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図16】第1実施形態に係る撮影システムの動作例の図であり、(a)はトンネル進入前後での撮影の様子を示す図、(b)は走行距離と測定距離との関係を示す図である。
【
図17】第1実施形態に係る撮影システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図18】第2実施形態に係る制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図19】第2実施形態に係る撮影システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図20】第3実施形態に係る制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図21】第3実施形態に係る撮影システムの動作例の図であり、(a)はトンネル内走行時の撮影の様子を示す図、(b)は走行距離と測定距離との関係を示す図である。
【
図22】第3実施形態に係る撮影システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図23】第4実施形態に係る制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図24】第4実施形態に係る撮影システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための撮影システムを例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の形状、その相対的配置、パラメータの値等は特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0011】
<実施形態における用語の説明>
(移動体)
移動することができるものをいう。移動体には、例えば、自動車や鉄道等の車両、又はドローン等の飛行体等が挙げられる。
(非常駐車帯)
高速道路やバイパス等の道路に一定間隔で道路の左側、又は右側に設けられた非常停止用のスペースをいう。
(白飛び)
撮影画像の明るい部分で階調が失われて真っ白になる現象(露出オーバー)をいう。
(黒潰れ)
撮影画像の暗い部分で階調が失われて真っ黒になる現象(露出アンダー)をいう。
(露出条件)
撮影時の露出量(露光量)を決定する条件をいう。固定露出条件とは、撮影手段の周囲の明るさによらず固定された露出条件をいう。自動露出条件とは、検出された明るさに応じて変化する露出条件をいう。
【0012】
[実施形態]
以下では、車両に搭載される撮影装置を含み、トンネルの壁面を撮影する撮影システムを一例として実施形態を説明する。ここで、車両は移動体の一例であり、トンネルの壁面は対象物の一例である。また車両の走行方向は、移動体の移動方向の一例である。また、実施形態における撮影画像は、静止画、動画及び映像を含むものとする。
<撮影システムの全体構成>
図1は、実施形態に係る撮影システムの構成の一例を説明する斜視図である。撮影システム100は、スライドユニット200と、カメラユニット300と、照明ユニット400とを有する。
【0013】
カメラユニット300は、トンネルの壁面を撮影し、照明ユニット400は、カメラユニット300による撮影のために、トンネルの壁面に向けて光を照明する。
【0014】
スライドユニット200は、カメラユニット300及び照明ユニット400を
図1の太矢印方向にスライドさせるための部材である。カメラユニット300及び照明ユニット400は、スライドユニット200により、
図1の太矢印方向にその位置を変化させることができる。
【0015】
またスライドユニット200は、レール210及び220と、ベース230と、ガイドシャフト240と、ガイドシャフト保持部材251及び252と、フレーム261及び262とを備えている。
【0016】
カメラユニット300は、フレーム261に固定されたレール210上をスライドすることで、
図1の太矢印方向における位置を可変とする。同様に、照明ユニット400は、フレーム262に固定されたレール220上をスライドすることで、
図1の太矢印方向における位置を可変とする。
【0017】
レール210及び220は、レール軸が略平行となるようにフレーム261及び262にそれぞれ固定されている。ベース230は、フレーム261及び262に固定され、両者を接続するとともに、撮影システム100のベースとなる。
【0018】
ガイドシャフト240は、カメラユニット300及び照明ユニット400を安定した精度でスライドさせるために用いられる部材であり、金属製の丸棒等である。丸棒の長手方向がカメラユニット300及び照明ユニット400のスライド方向に沿うように設置されている。
【0019】
ガイドシャフト240は、ガイドシャフト240を保持するガイドシャフト保持部材251及び252にそれぞれ設けられた貫通孔に通され、保持されている。なお、ガイドシャフト240とその周辺の部材の構成及び作用については別途詳述する。
【0020】
ここで、
図1では、スライドユニット200により、カメラユニット300及び照明ユニット400の両方をスライドさせる構成を示したが、これに限定されるものではない。カメラユニット300をスライドさせるユニットと、照明ユニット400をスライドさせるユニットを別々にした構成としてもよい。
【0021】
撮影システム100は、カメラユニット300及び照明ユニット400のスライド方向が車両の走行方向と交差するように、車両のルーフ等に取り付けられる。換言すると、
図1の太矢印方向は、撮影システム100が取り付けられた車両の走行方向に対して交差している。このように取り付けることで、車両の走行方向と交差する平面内において、カメラユニット300及び照明ユニット400の位置を変化させることができる。
【0022】
なお、撮影システム100が取り付けつけられる車両の部分は、ルーフに限定されるものではない。車両の前方、又は後方のボンネット等であってもよいし、車両がトラックであれば荷台等であってもよい。また、車両への撮影システム100の取り付けに関し、ルーフに取り付ける場合は、車両用のスキーキャリヤ等と同様に、フック部品等を用いて行えばよい。
【0023】
<カメラユニットの構成>
次に
図2は、実施形態に係るカメラユニット300の構成の一例を説明する斜視図である。
【0024】
カメラユニット300は、ベースプレート310と、レール接続部321及び322と、カメラ331~334と、シャフト連結部341及び342と、インデックスプランジャ350とを有する。
【0025】
レール接続部321及び322は、ベースプレート310とレール210を接続するための部材である。レール接続部321及び322は、レール軸と直交する方向の断面が「コ」の字形の形状をしている。レール210が双頭レールの場合、双頭レールの頭の一方に「コ」の字形状を被せるようにして、レール接続部321及び322は、レール210に接続される。
【0026】
レール接続部321及び322は同一形状であり、レールの軸方向の異なる2つの位置でレール210と接続する。レール接続部321及び322にベースプレート310を固定することにより、カメラユニット300はレール軸の方向(
図1の太矢印方向)にスライド可能となる。
【0027】
カメラ331~334は、ベースプレート310の平面部に固定されている。ここで、カメラ331は、レンズ331-1と、ラインCCD(Charge Coupled Device)331-2とを有する。レンズ331-1は、レンズ331-1の光軸方向にある被写体の像をラインCCD331-2の撮影面上に結像させる。ラインCCD331-2は、結像した被写体の像を撮影する。
【0028】
またレンズ331-1の内部には、絞り331-1a(
図4参照)が設けられている。絞り331-1aは、絞り羽根を有する虹彩絞りであり、直径が可変の開口である。絞り羽根にモータ等の駆動源を接続し、制御信号に基づいてモータを駆動させることで開口の直径を変化させることができる。これによりレンズ331-1を通過する光の光量を変化させ、レンズ331-1により結像される被写体の像の明るさを変化させることができる。
【0029】
ラインCCD331-2は、画素が一次元状(ライン状)に配列されているCCDであり、実施形態では、カメラ331は、ラインCCD331-2の画素の配列方向が車両の走行方向と交差するようにベースプレート310に固定されている。なお、カメラ332~334も、カメラ331と同様の構成を備えるが、上述したものと同様であるため、説明を省略する。
【0030】
トンネルは、車両の走行方向と交差する断面が半円状の形状をしている。これに合わせ、カメラ331~334は、
図2のように、それぞれが有するレンズの光軸がトンネルの壁面と交差するように放射状に配置されている。換言すると、それぞれがトンネルの壁面に対向するように、カメラ331~334はベースプレート310の平面部に放射状に配置されている。
【0031】
カメラ331~334がそれぞれ撮影するライン画像をカメラの配列方向に繋ぎ合せることで、トンネルの形状に沿って、トンネルの壁面のライン画像を撮影することができる。そして車両を走行させながら上記のライン画像を所定の時間間隔で連続的に撮影し、ライン画像の画素の配列方向と直交する方向に、撮影したライン画像を繋ぎ合せることで、トンネルの壁面のエリア画像(2次元画像)を取得することができる。なお、所定の時間間隔はラインCCDによるライン画像の取得周期等である。
【0032】
ここで、上述ではカメラの台数を4台とする例を示したが、これに限定されるものではない。トンネルの大きさ等の条件に応じてカメラの台数を増減させてもよい。また、レンズ331-1の結像倍率、視野及びFナンバ等は、撮影したい条件に合わせて決定してもよい。
【0033】
さらに、上述ではカメラ331がラインCCDを備える例を示したが、これに限定されるものではなく、カメラ331は、画素が二次元的に配列されているエリアCCDを備えてもよい。さらにCCDに代えてCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等を用いてもよい。
【0034】
一方、シャフト連結部341及び342は、ガイドシャフト240と連結するための部材である。またインデックスプランジャ350は、スライド方向における所望の位置でカメラユニット300を固定するための部材である。シャフト連結部341及び342と、インデックスプランジャ350の構成及び作用については、別途詳述する。
【0035】
<照明ユニットの構成>
次に
図3は、実施形態に係る照明ユニット400の構成の一例を説明する斜視図である。
【0036】
照明ユニット400は、ベースプレート410と、レール接続部と、照明光源部431~436と、シャフト連結部441及び442と、インデックスプランジャ450とを有する。レール接続部とレール220との関係は、上述したレール接続部321及び322とレール210との関係と同様である。
【0037】
照明光源部431~436は、ベースプレート410の平面部に固定されている。照明光源部431は、レンズ431-1と光源431-2とを有する。
【0038】
光源431-2は、レンズ431-1を介して、レンズ431-1の光軸方向にある被写体を照明する。またレンズ431-1の内部には、絞り431-1aが設けられている(
図4参照)。
【0039】
絞り431-1aは直径が可変の開口であり、開口の直径を変化させることで、レンズ431-1により照明される照明光の光量(明るさ)を変化させることができる。光源431-2として、メタルハライドライトやLED(Light Emitting Diode)等を用いることができる。なお、照明光源部432~436も照明光源部431と同様の構成を備えるが、上記と同様であるため説明を省略する。
【0040】
上述したようにトンネルは、車両の走行方向と交差する断面が半円状の形状をしている。これに合わせ、照明光源部431~436は、
図3に示すように、それぞれが備えるレンズの光軸がトンネルの壁面と交差するように放射状に配置されている。換言すると、照明光源部431~436は、トンネルの壁面に対向するように、ベースプレート410の平面部に放射状に配置されている。照明ユニット400は、車両の走行方向と交差する方向(ラインCCDの画素の配列方向)に沿ったライン状の光をトンネルの壁面に照明することができる。
【0041】
なお、上述では、照明光源部の台数を6台とした例を説明したが、これに限定されるものではなく増減させてもよい。また照明光源部の台数は、カメラの台数と必ずしも一致する必要はなく、明るさ等の条件に応じて台数を決めてよい。さらにレンズの画角やFナンバ等も撮影したい条件に応じて決定してもよい。
【0042】
また、上述では、照明光源部431~436のそれぞれの位置を、レンズの光軸方向に前後に少しずつずらした構成を示したが、これは照明光源部同士の物理的な干渉を防止するためである。
【0043】
一方、シャフト連結部441及び442は、ガイドシャフト240と連結するための部材である。またインデックスプランジャ450は、スライド方向における所望の位置で照明ユニット400を固定するための部材である。シャフト連結部441及び442と、インデックスプランジャ450の構成及び作用については別途詳述する。
【0044】
<撮影システムのハードウェア構成>
次に、
図4は、撮影システム100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。撮影システム100は、カメラユニット300と、照明ユニット400と、センサ制御ボード110と、TOF(Time of Flight)センサ141と、IMU(Inertial Measurement Unit)170と、車速計/移動距離計171と、操作部118とを有する。
【0045】
TOFセンサ141は、トンネル600の壁面からTOFセンサ141までの距離を検出し、トンネル600の壁面から撮影システム100までの距離を検出できる。
【0046】
より具体的には、トンネル600の壁面にTOFセンサ141から光を照射し、その反射光を受光するまでの時間に基づいてトンネル600の壁面までの距離を検出する。受光素子にエリアセンサを用いたTOFセンサ141を用いると、距離に応じて表示色が異なる2次元の等高線画像を得ることができる。
【0047】
IMU170は、車両500の運動を司る3軸の角度/角速度と加速度を計測し、また車速計/移動距離計171は、車両500の速度/移動距離を計測できる。
【0048】
IMU170及び車速計/移動距離計171で計測されたデータは、センサ制御ボード110を介してHDD114に出力されて記憶され、後に壁面の画像のサイズや傾き等を、画像処理で幾何補正するために使用される。
【0049】
カメラユニット300は、レンズ331-1、332-1、333-1及び334-1と、ラインCCD331-2、332-2、333-2及び334-2とを備えている。またレンズ331-1は絞り331-1aを、レンズ332-1は絞り332-1aを、レンズ333-1は絞り333-1aを、レンズ334-1は絞り334-1aを、それぞれ内部に備えている。但し、
図4では、図を簡略化するため、レンズ331-1、絞り331-1a及びラインCCD331-2のみを図示し、他のレンズ、絞り及びラインCCDの図示を省略している。
【0050】
照明ユニット400は、レンズ431-1、432-1、433-1、434-1、435-1及び436-1と、光源431-2、432-2、433-2、434-2、435-2及び436-2とを備えている。またレンズ431-1は絞り431-1aを、レンズ432-1は絞り432-1aを、レンズ433-1は絞り433-1aを、レンズ434-1は絞り434-1aを、レンズ435-1は絞り435-1aを、レンズ436-1は絞り436-1aを、それぞれ内部に備えている。但し、
図4では、図を簡略化するため、レンズ431-1、絞り431-1a及び光源431-2のみを図示し、他のレンズ、絞り及び光源の図示を省略している。
【0051】
センサ制御ボード110は、CPU(Central Processing Unit)111と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)113と、HDD(Hard Disk Drive)114と、外部I/F(Inter/Face)115と、ブザー116とを有し、それぞれがシステムバス117で相互に電気的に接続されている。ここで、センサ制御ボード110はコンピュータの一例である。
【0052】
ROM112は各種プログラムやデータ、各種の設定情報等を格納し、RAM113はプログラムやデータを一時保持する。CPU111はROM112等からプログラムやデータ、設定情報等をRAM113上に読み出し、処理を実行することで、撮影システム100全体の制御や画像データの処理を実現する。ここで、画像データの処理とは、カメラ331~334がそれぞれ撮影したライン画像を繋ぎ合せる処理や、車両を走行させながらカメラ331~334が所定の時間間隔で連続的に撮影したライン画像を、車両の走行方向で繋ぎ合せる処理等をいう。またCPU111は、別途、
図15及び
図18を用いて詳述する各種機能を実現できる。
【0053】
なお、CPU111の実現する制御、画像データの処理、及び各種機能の一部又は全部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)で実現されてもよい。
【0054】
HDD114は、カメラユニット300から入力した画像データや、TOFセンサ141、IMU170及び車速計/移動距離計171から入力したセンサデータ等を記憶する。なお、HDD114はセンサ制御ボードの外部に設けられてもよい。
【0055】
外部I/F115はユーザが撮影システム100を操作するためのユーザインターフェースの機能や、撮影システム100がPC(Personal Computer)等の外部装置とデータや信号のやりとりを行うためのインターフェースの機能を実現する。
【0056】
ブザー116は、ユーザに警告を報知するためのビープ音を発生させるものである。
【0057】
外部I/F115を介してPC(Personal Computer)等の外部装置にセンサ制御ボード110を接続し、センサ制御ボード110と外部装置との間で、画像データ等のデータの送受を行えるように構成してもよい。
【0058】
操作部118は、撮影システム100を操作するためのユーザインターフェースである。操作部118は、マウスやキーボード等の入力部と、ディスプレイ等の表示部とを含んで構成される。操作部118としてノートPC等を利用できる。
【0059】
撮影の際には、例えば、カメラユニット300、照明ユニット400、TOFセンサ141、IMU170、車速計/移動距離計171及びセンサ制御ボード110は車両のルーフ部に設置される。操作部118は車両の内部に設けられ、オペレータ等により操作される。なお、オペレータは、撮影システム100を操作して撮影作業を行う者である。オペレータは、車両の運転者でもよいし、車両の運転者以外の者でもよい。また自動運転車等で撮影を行う場合は、人に代えて装置又は機器等がオペレータの役割を担ってもよい。
【0060】
オペレータは、車両の走行中に、操作部118における録画開始ボタンと停止ボタンを操作することで撮影の開始と停止を指示し、撮影を行うことができる。
【0061】
<撮影方法、作用効果等>
次に、実施形態に係る撮影システム100による撮影方法、及び作用効果等を説明する。
【0062】
撮影システム100では、スライドユニット200によりカメラユニット300及び照明ユニット400がスライドし、車両の走行方向と交差する方向において、所定の道路構造の長さに基づき定めた2つの位置で固定される。
【0063】
所定の道路構造の長さとは、車両の走行方向と交差する方向における歩道の幅である。
【0064】
ここで、歩道とは、歩行者が通行するための道路であり、車道等に併設され、歩行者の通行のために構造的に区画された道路の部分をいう。歩道の幅は、歩行者の通行量に応じて様々であるが、一般には1.5~3m程度である。
【0065】
歩道の幅が1.5mの場合、歩道の幅に基づき定めた2つの位置の間隔を1.5mに定めてもよい。或いは歩道の幅が3m等で車両の幅を超える場合は、歩道の幅に基づき定めた2つの位置の間隔を、車両の最大幅として定めてもよい。
【0066】
また、歩道の他に、監査路や路側帯がある場合は、歩道の幅に基づき定めた2つの位置の間隔を、歩道の幅と監査路、または路側帯の幅との差分の長さとして定めてもよい。
【0067】
2つの位置で画像を取得する場合、まず、車両の走行方向と交差する方向において、歩道の幅に基づき定めた2つの位置のうちの一方の位置に、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定し、所望の領域のトンネルの壁面のエリア画像を取得する。次に、2つの位置のうちの他方の位置に、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定し、所望の領域のトンネルの壁面のエリア画像を取得する。
【0068】
以下、
図5及び
図6を参照して、2つの位置でトンネル600の壁面を撮影する方法の詳細を説明する。
図5は、撮影システム100からトンネル600の壁面までの距離が短い場合の撮影の様子の一例を説明する図であり、(a)は走行方向から車両500をみた図であり、(b)はトンネル600の内部を車両500が走行する様子を示す図である。
【0069】
図5(a)では、撮影システム100は、車両500のルーフの上に固定されている。カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の右端にスライドされ、インデックスプランジャ350及び450によりそれぞれスライドユニット200に固定されている。
【0070】
一方、
図5(b)では、道路700のセンターに対し、左側に車線710があり、右側に車線720がある。車両500は車線720において、紙面に対し、手前の方向に走行している。
【0071】
この例では、車線710(車両500の対向車線)側に歩道730がある。車線720側には歩道はないため、歩道がある場合と比較して、車両500はトンネル600の車両500側の壁面に近い位置を走行している。
【0072】
カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の右端、すなわちトンネル600の車両500側の壁面から遠ざかる位置にある。この場合のカメラユニット300及び照明ユニット400の位置を、以降ではポジションAと呼ぶ。
【0073】
図5(b)の破線100Aは、撮影システム100による撮影範囲を表す。つまり、撮影システム100は、トンネル600の壁面のうち、破線100Aで示されている撮影範囲内の領域600A(太線で示されている領域)を撮影している。太線で示されているように、実施形態ではトンネルの壁面(覆工部)と地面との境目までを撮影する。
【0074】
車両500を走行させながら撮影システム100による撮影を行うことで、トンネル600の入口から出口までにおいて、紙面に対して
図5(b)の右側半分の壁面が撮影される。
【0075】
一方、
図6は、撮影システムからトンネルの壁面までの距離が長い時の撮影の様子の一例を説明する図であり、(a)は走行方向から車両500をみた図であり、(b)はトンネル600の内部を車両500が走行する様子を示す図である。なお、
図5と重複する部分は説明を省略し、相違点を説明する。
【0076】
図6では、カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の左端にスライドされ、インデックスプランジャ350及び450によりそれぞれスライドユニット200に固定されている。
【0077】
一方、
図6(b)では、車両500は車線710において、紙面に対し、手前の方向に走行している。
【0078】
この例では、車線710(車両500が走行する車線)側に歩道730がある。つまり車両500は、
図5(b)の場合とは反対側の車線を逆方向に走行している。この場合は、走行車線側に歩道がない場合と比較して、車両500は、トンネル600の車両500側の壁面から遠い位置を走行することになる。
【0079】
カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の左端、すなわちトンネル600の車両500側の壁面に近づく位置にある。この場合のカメラユニット300及び照明ユニット400の位置を、以降ではポジションBと呼ぶ。
【0080】
図6(b)の破線100Bは、撮影システム100による撮影範囲を表す。つまり、撮影システム100は、トンネル600の壁面のうち、破線100Bで示されている撮影範囲内の領域600B(太線で示されている領域)を撮影している。太線で示されているように、実施形態ではトンネルの壁面(覆工部)と地面との境目までを撮影する。
【0081】
車両500を走行させながら撮影システム100による撮影を行うことで、トンネル600の入口から出口までにおいて、紙面に対して
図6(b)の右側半分の壁面が撮影される。
【0082】
図5の状態で撮影された壁面の画像と、
図6の状態で撮影された壁面の画像を繋ぎ合せることで、トンネル600の入口から出口までの全壁面の撮影画像を取得することができる。
【0083】
ここで、カメラユニット300の各カメラで撮影する画像は、それぞれ撮影領域がオーバーラップしていることが望ましい。また画像を繋ぎ合せて一枚の展開図画像を作成するため、
図5の歩道無し側の画像と
図6の歩道有り側の画像は、天井部分がオーバーラップするように撮影することが望ましい。換言すると、往きと帰りでトンネル600の壁面を撮影する場合、トンネル600の壁面で撮影されていない領域が生じないように、往きの撮影領域と帰りの撮影領域を、車両500の走行方向と交差する方向にオーバーラップさせて撮影することが望ましい。
【0084】
実施形態によれば、歩道の有無に応じて、カメラユニット300及び照明ユニット400をポジションA及びBに切替えて固定するだけで、簡単に、車両500側の壁面から撮影システム100までの距離、すなわち被写体距離を略一定にすることができる。その結果、歩道の有無によらず、フォーカス状態、撮影倍率及び照明の明るさ等の撮影条件を共通にした撮影が可能となる。また、共通の撮影条件で右側半分と左側半分のトンネルの壁面を撮影できるため、両者を繋ぎ合せる画像処理も容易に行うことができる。
【0085】
以上によりカメラのフォーカス調整や対象物の断面形状の測定といった手間をかけることなく、適切にトンネルの壁面を撮影することができる。
【0086】
また、上記の他に以下の効果も得られる。例えば、車両の走行中にカメラのフォーカス調整等を行うと、走行に伴う振動や、急ブレーキ、急加速等の不規則な動きにより、調整機構が故障する可能性がある。
【0087】
また、調整機構にカム溝とカムフォロアを採用するカム機構を用いた場合、車両の走行による振動によって、徐々にカムフォロアがカム溝を移動し、フォーカス状態が変わってしまう場合もある。さらにトンネル内の粉塵が機構内部に入り込むと、動作不良を招く虞もある。
【0088】
実施形態によれば、車両の走行中にカメラのフォーカス調整等を行わないため、これらの故障の可能性を低減させることができる。またスライド機構が簡単であるため、装置コストを低減できるという効果もある。さらにフォーカス調整のために、被写体のテクスチャのコントラストを検知する等の複雑な画像処理を行わなくてよいため、演算コストを低減することができる。
【0089】
さらに、そもそも暗くて特徴量の少ないトンネルを走行する場合、コントラストを検出すること自体が難しく、十分な精度でコントラスト検出を行おうとすると、感度の高い高価な撮像素子が必要となる。実施形態によれば、このような技術的難易度や撮像素子のコストをも低減することができる。
【0090】
また、カメラユニットでライン撮像素子を用いる場合、1ライン分の画像しか得られないため、撮影画像を利用したフォーカス調整が難しくなる。実施形態でよれば、フォーカス調整に撮影した画像を利用しないため、カメラユニットにライン撮像素子を使用することもできる。これにより後述するような照明効率のよい撮影が可能となる。
【0091】
加えて、上記の他に以下の効果も得られる。例えば、トンネル600の中心から比較的ずれた位置にカメラユニット300及び照明ユニット400を置いて撮影したとする。ここでトンネル600の中心とは、トンネル600の半円状の断面形状における半円の略中心を指す。
【0092】
この場合、トンネル600の天井付近の壁面の画像(
図2のカメラ331で取得した画像)と、トンネル600の地面付近の壁面の画像(
図2のカメラ334で取得した画像)とで、撮影倍率等の条件の差が大きくなる。その結果、トンネル600の天井付近と地面付近とで、画像の解像度が大きく異なる等の不具合が生じる。
【0093】
また、このような不具合をなくすため、トンネルの壁面までの距離が略一定になるように、車線を無視して道路の中央を車両で走行しながら、トンネルの壁面の撮影を行う方法もある(例えば、特開2011-095222参照)。
【0094】
しかし、この方法では撮影時に対向車と衝突する虞があるため、車両の通行が少ない夜間に行ったり、道路を封鎖して行ったりする必要があって不便である。またトンネル内の道路に中央分離帯が設けられていると、そもそも上記の方法による撮影は不可能である。
【0095】
これに対し、実施形態によれば、車両500がトンネル600の壁面に近いときも遠いときも、カメラユニット300及び照明ユニット400をトンネル600の中心に近づけることができるため、トンネルの領域ごとでの撮影条件の差を抑制できる。従って、車両の通行止め等をすることなく、本来の車線を走行しながら、トンネル600の天井付近と地面付近とで、画像の解像度が異なる等の不具合を抑制した撮影を行うことができる。
【0096】
なお、実施形態では、スライドユニット200を
図1の太矢印方向に位置を変化させる例を示したが、これに限定されないものではない。車両の走行方向と交差する平面内における任意の方向に、スライドユニット200の位置を変化させる構成としてもよい。
【0097】
また実施形態では、スライドユニット200により、
図1の太矢印方向における異なる2つの位置でカメラユニット300及び照明ユニット400を固定する例を示したが、これに限定されるものではない。車両の走行方向と交差する平面内であって、トンネルの壁面に対向する方向における異なる2つの位置で、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定してもよい。
【0098】
ここで、「トンネルの壁面に対向する方向」について補足する。上述したように、トンネルは、車両の走行方向と直交する断面が半円状の形状をしている。従って、トンネルの壁面のうち、地面付近では壁面は水平方向を向いており、天井付近では壁面は鉛直下方向を向いている。「トンネルの壁面に対向する方向」とは、場所により向きが異なる壁面に対し、対向する方向をいう。地面付近における「トンネルの壁面に対向する方向」は、略水平方向等である。一方、天井付近における「トンネルの壁面に対向する方向」は、略鉛直上方向である。
【0099】
次に、実施形態に係るガイドシャフト240の構成及び作用の詳細について説明する。
【0100】
カメラユニット300と照明ユニット400は別体の構成要素であり、それぞれ独立してスライドする。そのため、ガイドシャフト240を適用しない構成とした場合、スライドする際にそれぞれが独立して、ピッチング、ヨーイング、ローリング等の動きを不規則に起こす可能性がある。
【0101】
また撮影システム100を車両から着脱する場合に、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置、又は姿勢(以降、位置/姿勢と示す)が変動する可能性がある。さらに走行中の振動でそれぞれの位置/姿勢が変動したり、温度等の影響によるフレーム261及び262やベースプレート310及び410等の部材の変形で、それぞれの位置/姿勢が変動したりする可能性もある。
【0102】
このような変動があると、カメラユニット300による撮影領域に照明光が適切に当たらず、明るさ不足で撮影ができないという不具合が生じる場合がある。
【0103】
一例として、
図7は、カメラユニット300と照明ユニット400の相互の位置/姿勢が変動し、カメラユニット300による撮影領域に照明光が適切に当たらなくなった状態を説明する図である。
図7(a)は、カメラユニット300と照明ユニット400の相互の位置/姿勢の変動がない場合を示す図であり、
図7(b)は、カメラユニット300と照明ユニット400の相互の位置/姿勢の変動がある場合を示す図である。
【0104】
図7(a)は、図の太矢印の方向に走行する車両500を上方からみた図である。600はトンネルの壁面である。撮影範囲361は、カメラユニット300による撮影範囲を表し、トンネル600の壁面と撮影範囲361の交差する部分がカメラユニット300による壁面の撮影領域に該当する。照明範囲461は、照明ユニット400による照明範囲を表し、トンネル600の壁面と照明範囲461の交差する部分が照明ユニット400による壁面の照明領域に該当する。
【0105】
図7(a)では、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置/姿勢の変動がないため、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている。つまり、照明光は撮影領域を適切に照明している。
【0106】
一方、
図7(b)では、カメラユニット300及び照明ユニット400の姿勢がそれぞれ独立に変動することにより、撮影範囲362と照明範囲462が
図7(a)の状態から変化し、トンネル600の壁面における撮影領域と照明領域が重ならなくなっている。つまり、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置/姿勢の変動により、照明光は撮影領域を適切に照明していない。
【0107】
特に実施形態では、撮像素子にラインCCDを用い、車両500の走行方向における撮影範囲(領域)を狭くしている。この場合、狭い領域に照明光を集中すればよいため、照明効率がよいという効果があり、暗いトンネルの内部では十分な照明光量が必要となるため、より好適である。しかしその反面で、車両500の走行方向における撮影領域が狭いため、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置/姿勢が変動すると、カメラユニット300の撮影領域に照明光が適切に当たらない不具合が生じやすくなる。
【0108】
そこで、撮影領域を照明光が適切に照明しない不具合を抑制するため、実施形態の撮影システム100は、ガイドシャフト240を備えている。以下、
図8を用いて具体的に説明する。
図8は、実施形態に係るガイドシャフト及びガイドシャフト保持部材の構成の一例を説明する図である。
【0109】
図8において、ガイドシャフト240は、ガイドシャフト保持部材251及び252により保持されている。シャフト連結部341及び342は、カメラユニット300のベースプレート310に固定されている。
【0110】
またシャフト連結部341及び342は、それぞれ貫通孔341-1及び342-1を備えている。貫通孔341-1及び342-1にガイドシャフト240を通すことで、ガイドシャフト240とカメラユニット300は連結される。同様に、シャフト連結部441及び442がそれぞれ備える貫通孔に、ガイドシャフト240を通すことで、ガイドシャフト240と照明ユニット400は連結される。
【0111】
カメラユニット300及び照明ユニット400は、それぞれガイドシャフト240と連結しながらスライドする。つまり、共通の部材をガイド(案内)にしてスライドすることができる。
【0112】
そのため、カメラユニット300及び照明ユニット400の何れか一方の位置/姿勢が変動したときは、他方もそれに連動して変動する。つまり、両者の相対的な位置/姿勢の関係を維持したまま、カメラユニット300と照明ユニット400をスライドさせたり静止させたりすることが可能となる。これにより、カメラユニット300と照明ユニット400との相対的な位置/姿勢の変動を抑制し、撮影領域を照明光が適切に照明しない不具合を抑制することができる。
【0113】
次に
図9は、トンネルの壁面に対してカメラユニット300が傾いた場合のカメラユニット300の撮影領域の一例と、トンネルの壁面に対して照明ユニット400が傾いた場合の照明ユニット400の照明領域の一例を説明する図である。
【0114】
図9において、照明ユニット400は、光軸465を光軸とする発散光である照明光466を、トンネル600の壁面に照射している。照明光466の配光角(発散角)αは、1.65度等である。カメラユニット300は、トンネル600の壁面を撮影している。光軸365は、カメラユニット300の光軸である。
【0115】
車両500の蛇行運転等によりカメラユニット300と照明ユニット400の位置が変動すると、
図9に示されているように、カメラユニット300と照明ユニット400がトンネルに壁面に対してそれぞれ傾く場合がある。この場合にも、カメラユニット300と照明ユニット400の相対的な位置/姿勢の関係は維持されるため、図示されているように、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている状態を維持することができる。
【0116】
このように、車両500の蛇行運転等でカメラユニット300と照明ユニット400の位置が変動した場合にも、照明ユニット400によりカメラユニット300の撮影領域を適切に照明することができる。なお、本実施形態では特にラインCCDを用いる場合を示したが、エリアCCD等を用いる場合であっても、同様の効果が得られる。
【0117】
次に、実施形態に係るインデックスプランジャ350及び450の構成及び作用の詳細を、
図10を参照して説明する。
図10は、インデックスプランジャ350及び450の構成の一例を説明する図である。
【0118】
図10において、インデックスプランジャ350は、カメラユニット300のベースプレート310の平面部に固定され、インデックスプランジャ450は、照明ユニット400のベースプレート410の平面部に固定されている。
【0119】
上述したように、カメラユニット300はレール210上をスライドし、照明ユニット400はレール220上をスライドする。インデックスプランジャ350及び450は同様の構成及び作用を有するため、ここではインデックスプランジャ450を例に説明する。
【0120】
インデックスプランジャ450は、プランジャ451と、プランジャ保持部452とを有する。プランジャ451は、丸棒状で地面側に突出したピンと、ピンに地面側への付勢力を与えるスプリングと、ピンとスプリングを押さえるスプリング押さえ部とを有する。プランジャ保持部452は、プランジャ451を保持する。
【0121】
一方、スライドユニット200におけるベース230には、照明ユニット400のスライド方向において、照明ユニット400を固定したい位置に上記ピンと嵌合するための嵌合孔231が設けられている。従って、照明ユニット400がスライドする際、嵌合孔231がない位置では、ピンは、ベース230にぶつかった状態であり、照明ユニット400を固定するようには作用しない。
【0122】
照明ユニット400がスライドして嵌合孔231がある位置にくると、ピンはスプリングによる付勢力で嵌合孔231に向かって突出し、嵌合孔231と嵌合する。これにより照明ユニット400はスライドできなくなって、照明ユニット400は固定される。固定を解除して、照明ユニット400を再度スライドさせたいときは、手動で固定解除機構を操作し、固定を解除する。
【0123】
実施形態では、ベース230において、スライド方向におけるポジションAとポジションBに相当する位置に、それぞれ嵌合孔が設けられている。これにより、車両の走行方向と交差する平面内における異なる2つの位置に、照明ユニット400を固定することができる。同様にして、カメラユニット300も、インデックスプランジャ350により、車両の走行方向と交差する平面内における異なる2つの位置に固定することができる。
【0124】
なお、実施形態では、ベース230に設けた嵌合孔231にピンを嵌合させ、照明ユニット400等を固定する例を示したが、これに限定されるものではない。フレーム262やレール220等に設けた嵌合孔にピンを嵌合させて固定してもよいし、突き当てにより照明ユニット等を位置決めしたうえで、ボルト等でクランプすることで固定してもよい。
【0125】
次に、実施形態において、カメラユニット300による撮影方向(画像の取得方向)に対し、照明ユニット400による照明光の照明方向を傾けることの効果の一例を、
図11を参照して説明する。
【0126】
図11は、
図7と同様に、太矢印の方向に走行する車両500を上方からみた図である。撮影方向363は、カメラユニット300による撮影方向であり、カメラユニットが有するレンズの光軸方向と同義である。撮影範囲364は、カメラユニット300により撮影される範囲を表す。トンネル600の壁面と撮影範囲364とが交差する部分がカメラユニット300による壁面の撮影領域に該当する。
【0127】
照明方向463は、照明ユニット400による照明方向であり、照明ユニットが有するレンズの光軸方向と同義である。照明範囲464は、照明ユニット400により照明される範囲を表す。トンネル600の壁面と照明範囲464とが交差する部分が照明ユニット400による壁面の照明領域に該当する。
【0128】
上述したように、車両500の走行中の振動等により、カメラユニット300と照明ユニット400の位置/姿勢が変動すると、カメラユニット300による撮影領域に照明光が適切に当たらず、明るさ不足で撮影ができない不具合が生じる。
【0129】
そこで、実施形態では、トンネル600の壁面の撮影領域に向け、カメラユニット300の撮影方向に対して照明ユニット400の照明方向を傾けて照明する。
図11の例では、角度θの傾きで照明される様子が示されている。
【0130】
このように照明を傾け、車両の走行方向における照明領域の中央により近い付近を撮影領域とすることで、撮影領域に照明光が当たらないという不具合を抑制することができる。
【0131】
ここで、
図12A及び
図12Bは、それぞれカメラユニット300の光軸365と照明ユニット400の光軸465の傾き角度θと、照明光の配光角αと、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離Lと、照明領域Sとの関係の一例を説明する図である。
【0132】
図12A(a)は、カメラユニット300と、照明ユニット400と、トンネル600の壁面との関係の一例を説明する図である。
図12A(a)において、カメラユニット300の光軸365はトンネル600の壁面に対して垂直であり、照明ユニット400による照明光466の光軸465は、カメラユニット300の光軸365に対して傾き角度θで傾いている。なお、この「垂直」は厳密に90度をいうものではなく、トンネル600の壁面の傾斜や車両500の蛇行等に応じて90度から多少のずれがあってもよい。この点は以下においても同様である。
【0133】
照明光466は、配光角αでトンネル600の壁面を照明している。カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離Lは、車両500の蛇行運転等により、LminからLmaxまで変動するとする。照明領域Sは、照明光466によるトンネル600の照明領域である。照明光は円形領域を照明する光であり、照明領域Sはこの円形領域の直径を示している。但し、照明光は、円形領域を照明する光に限定されるものではなく、矩形領域を照明する光や楕円領域を照明する光であってもよい。
【0134】
一方、
図12A(b)は、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている状態で、車両500がトンネル600の壁面から最も遠ざかった場合を示す図である。
【0135】
一例として、傾き角度θが2.5度、配光角αが1.65度とすると、照明領域Sは330mmとなる。この場合、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離が5200mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(
図12A(b)では最右端)に位置する。従って、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離5200mmは、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な最大距離Lmaxの一例となる。
【0136】
図12B(c)は、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている状態で、車両500がトンネル600の壁面から最も近づいた場合を示す図である。
【0137】
一例として、上記と同様に、角度θが2.5度、配光角αが1.65度とすると、照明領域Sは330mmとなる。この場合、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離が2600mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(
図12B(c)では最左端)に位置する。従って、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離2600mmは、カメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な最小距離Lminの一例となる。
【0138】
なお、上述では、照明ユニット400により、トンネル600の壁面に配光角αの発散光を照明する例を示したが、発散光に限定されず、平行光により照明してもよい。
【0139】
発散光を照明する場合、照明ユニット400からトンネル600の壁面までの距離に応じて、トンネル600の壁面における照明領域を変化させることができる。照明ユニット400からトンネル600の壁面までの距離Lが長いほど、より広い領域を照明することができる。
【0140】
一方、平行光を照明する場合、照明ユニット400からトンネル600の壁面までの距離Lによらず、トンネル600の壁面において一定の領域を照明することができる。
【0141】
また上述では、カメラユニット300の光軸365の方向をトンネル600の壁面に対して垂直方向とし、照明ユニット400の光軸465をカメラユニット300の光軸365に対して傾ける例を示したが、これに限定されるものではない。
図12B(d)に示されているように、照明ユニット400の光軸465の方向をトンネル600の壁面に対して垂直方向とし、カメラユニット300の光軸365を照明ユニット400の光軸465に対して傾けてもよい。
図12B(d)は、カメラユニット300の光軸365を照明ユニット400の光軸465に対して傾き角度θだけ傾けた例を示している。換言すると、照明ユニット400の光軸465とカメラユニット300の光軸365は傾き角度θで相対的に傾いていればよい。
【0142】
このように照明ユニット400の光軸465とカメラユニット300の光軸365とを相対的に傾けることで、カメラユニット300の撮影領域に向けて、光を照明することができる。トンネル600の壁面における水平方向の撮影領域(水平方向の撮影視野)が狭い場合であっても、カメラユニット300による撮影領域を照明ユニット400からの光で適切に照明することができる。
【0143】
また、ガイドシャフト240を用いて、カメラユニット300と照明ユニット400との相対的な位置/姿勢の関係を維持する構成と、照明方向を傾けて照明する構成とを組み合わせることで、より効果が顕著となる。換言すると、撮像素子にラインCCDを用い、照明効率がよい状態で撮影を行った場合であっても、照明ユニット400による照明光がカメラユニット300による撮影領域を適切に照明しないという不具合を、より顕著に抑制することができる。
【0144】
また、車の蛇行でトンネルと壁面の距離が変動する場合やトンネルサイズが異なる場合においても、照明ユニット400による照明光がカメラユニット300による撮影領域を適切に照明しないという不具合を抑制することができる。
【0145】
図13は、車両500の蛇行と、カメラユニット300の撮影領域と、照明ユニット400の照明領域の関係の一例を説明する図である。車両500は、
図13に矢印で示されている方向に、蛇行しながら走行している。
【0146】
図13の右側に示されているように、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの最大距離Lmaxが5200mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(
図13では最左端)に位置する。つまりカメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な一方の限界である。
【0147】
一方、
図13の左側に示されているように、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの最小距離Lminが2600mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(
図13では最右端)に位置する。つまりカメラユニット300による撮影領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な他方の限界である。
【0148】
角度θが2.5度、配光角αが1.65度の条件下(
図12A参照)では、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離Lが2600mm~5200mmの範囲で、車両500の蛇行が許容されることが分かる。
【0149】
<撮影システムの動作>
次に、実施形態に係る撮影システム100の動作を、
図14を用いて説明する。
図14は撮影システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0150】
まず、ステップS141で、撮影システム100は、車両500に取り付けられる。
【0151】
続いて、ステップ142において、スライドユニット200により、カメラユニット300及び照明ユニット400はポジションAに固定される。この場合、カメラユニット300及び照明ユニット400のスライドと、ポジションAでの固定は、ユーザが手動で実施する。
【0152】
続いて、ステップS143において、トンネル600の入口から出口まで車両500を走行させながら、トンネル600の歩道730がない側の壁面の領域600Aの撮影が行われる。この場合、車両500がトンネル600の入口に進入するときに、撮影が開始される。撮影開始の指示は、ユーザが行う。
【0153】
車両500がトンネル600の出口まで到達したら、撮影は停止される。撮影停止の指示は、ユーザが行う。ここまででトンネル600の全壁面のうち、半分の壁面の画像データがHDD114に記憶される。
【0154】
続いて、ステップS144において、スライドユニット200により、カメラユニット300及び照明ユニット400はポジションBに固定される。この場合、カメラユニット300及び照明ユニット400のスライドと、ポジションBでの固定は、ユーザが手動で実施する。
【0155】
続いて、ステップS145において、ステップS1103における走行方向とは逆の方向に、トンネル600の入口から出口まで車両500を走行させながら、トンネル600の歩道730がある側の壁面の領域600Bの撮影が行われる。上述と同様に、撮影開始/停止の指示は、ユーザが行う。これにより、トンネル600の全壁面のうち、残りの半分の壁面が撮影され、HDD114に記憶される。
【0156】
続いて、ステップS146において、撮影された画像は、ユーザにより問題がないかが確認され、問題ない場合は(ステップS146、No)、撮影は終了する。一方、問題がある場合は(ステップS146、Yes)、ステップS1102に戻り、再度撮影が行われる。
【0157】
以上により、カメラのフォーカス調整や対象物の断面形状の測定といった手間をかけずに、トンネルの壁面等の対象物を撮影することができる。
【0158】
なお、実施形態では、カメラユニット300及び照明ユニット400のポジションA及びBでの固定を、スライドユニット200に対して行う例を述べたが、このような固定を車両500に対して行ってもよい。以下にその構成を説明する。
【0159】
カメラユニット300及び照明ユニット400を車両固定用ベースプレートに取り付けておく。ポジションAの場合、走行方向に向かって車両のルーフの右端に、フック部品を用いて車両固定用ベースプレートを固定することで、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定する。
【0160】
ポジションBの場合、走行方向に向かって車両のルーフの左端に、フック部品を用いて上記車両固定用ベースプレートを固定することで、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定する。
【0161】
また、ガイドシャフト240と、ガイドシャフト保持部材251及び252と同様の部品を車両固定用ベースプレートに設け、シャフト連結部341及び342、並びに441及び442と、ガイドシャフト240とを連結させる。これによりカメラユニット300及び照明ユニット400の位置/姿勢の変動の影響を抑制できる。
【0162】
なお、この例の場合、撮影システム100は、スライドユニット200を有さなくてもよい。また、カメラユニット300及び照明ユニット400は、それぞれインデックスプランジャ350及び450を有さなくてもよい。
【0163】
以上により、車両500に固定した場合においても、カメラユニット300及び照明ユニット400のポジションA及びBでの固定を、スライドユニット200に対して行った場合と同様の効果を得ることができる。
【0164】
[第1実施形態]
次に、第1実施形態に係る撮影システム100aについて説明する。なお、上述した実施形態で説明したものと同様の構成部には、同一の部品番号を付し、重複する説明を適宜省略する。この点は第2実施形態以降においても同様である。
【0165】
撮影システム100aは、撮影システム100と同様に、トンネルの所定の範囲を撮影する撮影システムである。撮影システム100aは、移動体に設けられ、所定の方向を撮影可能な撮影装置と、所定の方向に存在する対象物と撮影装置との距離を測定する距離測定装置と、距離測定装置で得られた情報に基づいて、撮影装置の露出量を制御する制御装置とを備える。
【0166】
そして、撮影装置よりも移動体の移動方向側に距離測定装置を設けることで、撮影装置がトンネルに進入する前にトンネル内への車両の進入を判定し、トンネル内の撮影に適合するように撮影装置の露出量を制御する。これにより、トンネル内での露出量を適正化するためにトンネル内を何度も往復したり、トンネルに進入する手前で車両を停止させたりする動作を不要とし、撮影効率を向上させる。
【0167】
<制御装置160aの機能構成例>
まず、撮影システム100aが備える制御装置160aの機能構成について説明する。
図15は、制御装置160aの機能構成の一例を説明するブロック図である。なお、
図15は、説明を簡単にするために、主要な構成要素のみを示している。この点は、以下の機能構成図においても同様とする。
【0168】
制御装置160aは、TOFセンサ141で得られた情報に基づいて、カメラユニット300の露出量を制御する制御装置の一例である。ここで、TOFセンサ141は、所定の方向に存在する対象物とカメラユニット300との距離を測定する距離測定装置の一例である。但し、距離測定装置はTOFセンサ141に限定されるものではなく、レーザ測長器等の距離を測定可能なものであれば何でもよい。またカメラユニット300は、車両に設けられ、所定の方向を撮影可能な撮影装置の一例である。対象物は、例えばトンネルの壁面である。
【0169】
図15に示すように、制御装置160aは、第1判定部161と、露出制御部162と、露出条件記憶部163とを備える。これらのうち、第1判定部161及び露出制御部162の各機能は、
図4のCPU111が所定のプログラムを実行すること等により実現され、露出条件記憶部163の機能は、
図4のHDD114等により実現される。
【0170】
第1判定部161は、TOFセンサ141で得られた距離測定値が所定の第1距離閾値以下であるか否かを判定し、判定結果を露出制御部162に提供する。第1距離閾値は、トンネルの壁面とカメラユニット300との間の距離に関し、適正な露出量で撮影するために予め定められた距離の閾値である。
【0171】
露出制御部162は、カメラユニット300及び/又は照明ユニット400を制御することで、カメラユニット300による撮影の露出量を制御する。例えば、露出制御部162は、距離測定装置で得られた距離が所定の第1距離閾値以下であると判定された場合に、カメラユニット300の露出条件を所定の第1の露出条件に決定する。なお、照明ユニット400は照明装置の一例であり、露出制御部162により制御可能に構成されている。
【0172】
露出条件には、カメラユニット300の周囲の明るさに応じた自動露出条件と、カメラユニット300の周囲の明るさに依存しない固定露出条件等が挙げられる。また自動露出条件では、対象物(被写体)までの距離に応じて露出量目標値が異なる複数の自動露出条件が挙げられる。固定露出条件でも、対象物までの距離に応じて露出量固定値が異なる複数の固定露出条件を決定できる。これらの露出条件のうち、例えば第1距離閾値の距離において適正な露出量が得られる固定露出条件を第1の露出条件とすることができる。
【0173】
露出条件記憶部163は、例えば対象物までの距離に応じて露出量固定値が異なる複数の固定露出条件で露出するためのシャッター速度や絞り径等の各種パラメータを、対象物までの距離に対応したテーブルとして記憶する。また露出条件記憶部163は、対象物までの距離に応じて露出量目標値が異なる複数の自動露出条件のパラメータを、対象物までの距離に対応したテーブルとして記憶することもできる。また、露出条件記憶部163は、各種パラメータをテーブルとして記憶するのでなく、各種パラメータを算出するための数式を記憶し、この数式に距離測定装置により得られた対象物までの距離を代入することで算出してもよい。
【0174】
露出制御部162は、第1判定部161による判定結果に基づき露出条件記憶部163から読み出した第1の露出条件に従って、カメラユニット300による撮影の露出量を制御できる。
【0175】
<撮影システム100aの動作例>
次に、
図16及び
図17を参照して撮影システム100aの動作について説明する。まず
図16は、撮影システム100aの動作の一例を説明する図である。(a)は道路700を走行する車両500がトンネル600に進入する前後での撮影の様子を示す図、(b)は車両500の走行距離とTOFセンサ141による測定距離との関係を示す図である。
【0176】
図16(a)に示すように、車両500は、カメラユニット300と、照明ユニット400と、TOFセンサ141とを搭載し、道路700をY軸正方向に走行する。撮影システム100aでは、カメラユニット300はX軸正方向を撮影し、TOFセンサ141はX軸正方向に存在する対象物までの距離を測定する。ここで、Y軸正方向は車両500の走行方向に対応し、移動体の移動方向の一例である。X軸正方向は、道路の幅方向に沿う方向であり、所定の方向の一例である。TOFセンサ141は、カメラユニット300よりも車両500の走行方向側に設けられている。
【0177】
実線で示した撮影範囲364はカメラユニット300による撮影範囲を表し、破線で示した照明範囲464は照明ユニット400による照明範囲を表している。また一点鎖線で示したレーザ光142は、TOFセンサ141により照射され、X軸正方向に存在する対象物に反射されて戻るレーザ光を表している。
【0178】
図16(a)では、走行方向における車両500の3つの地点での車両を、車両500,500',500''で表している。車両500は、トンネル600に進入する前の状態の車両を示し、車両500'は車両に設けられたTOFセンサ141がトンネル600内に進入した状態の車両を示し、車両500'は、車両全体がトンネル600内に進入した状態の車両を示している。
【0179】
図16(b)に示すように、車両500の地点では、TOFセンサ141のX軸正方向側には近傍に対象物が存在しないため、TOFセンサ141による測定距離は大きくなる。車両500',500''の地点では、TOFセンサ141はトンネル600内に進入しており、TOFセンサ141のX軸正方向側には対象物としてトンネル600の壁面が存在する。そのため、トンネル進入前と比較してTOFセンサ141による測定距離が小さくなる。
【0180】
トンネル600の壁面の撮影において、例えば、トンネル600への進入前には自動露出条件で撮影し、トンネル600への進入後に、トンネル600の壁面の撮影に適合した固定露出条件である第1の露出条件で撮影するとする。この場合には、TOFセンサ141による測定距離が、
図16(b)に二点鎖線で示した所定の第1距離閾値Dfth以下になった際に、撮影システム100aは、車両500がトンネル600内に進入したと判定する。その後、カメラユニット300の露出条件を所定の第1の露出条件に決定して自動露出条件から切り替える。これによりトンネル600内において、第1の露出条件で撮影できるようになっている。
【0181】
次に
図17は、撮影システム100aの動作について説明するフローチャートである。
図15の機能構成図も適宜参照しながら説明する。
【0182】
図17において、撮影システム100aによる撮影動作が開始されると、まずステップS171において、車両500は走行を開始し、カメラユニット300は撮影を開始する。カメラユニット300は所定の撮影間隔(フレームレート)で繰り返し撮影を行う。
【0183】
続いて、ステップS172において、TOFセンサ141は、カメラユニット300とトンネル600の壁面との距離の測定を開始し、所定の測定間隔(サンプリング間隔)で繰り返し測定を行う。
【0184】
なお、ステップS171とステップ172は順序が逆であってもよい。
【0185】
続いて、ステップS173において、第1判定部161は、TOFセンサ141による測定距離が第1距離閾値Dfth以下であるか否かを判定する。
【0186】
ステップS173で第1距離閾値Dfth以下でないと判定された場合には(ステップS173、No)、ステップS173の動作が再度行われる。一方、第1距離閾値Dfth以下であると判定された場合には(ステップS173、Yes)、ステップS174において、露出制御部162は、露出条件記憶部163から読み出した第1の露出条件に露出条件を決定する。カメラユニット300は、第1の露出条件に従って制御される露出量で撮影を行う。
【0187】
続いて、ステップS175において、制御装置160aは撮影を終了するか否かを判定する。
【0188】
ステップS175で終了しないと判定された場合には(ステップS175、No)、ステップS175の動作が再度行われる。一方、ステップS175で終了すると判定された場合には(ステップS175、Yes)、動作は終了する。
【0189】
このようにして、撮影システム100aは、トンネル600の壁面を撮影することができる。
【0190】
<撮影システム100aの作用効果>
次に、撮影システム100aの作用効果について説明する。
トンネルの壁面を撮影する際に自動露出条件を用いると、トンネル外からトンネル内に車両が進入する際に明るさが大きく変化して自動露出制御に追従遅れが生じ、撮影画像に白飛びや黒潰れが発生する場合がある。
【0191】
本実施形態では、TOFセンサ141による測定距離に基づきトンネル600内への進入を判定して、露出条件を第1の露出条件に決定して切り替えることで、自動露出制御の追従遅れに起因する白飛びや黒潰れの発生を防止できる。
【0192】
また、白飛びや黒潰れの発生を防止するために、1回目にトンネル内を撮影した時に、自動露出制御における各種パラメータ変化の情報を予め取得して記憶しておき、2回目以降の撮影において、記憶した各種パラメータ変化に基づき露出制御することも考えられる。或いは、トンネルに進入する手前で車両を一旦停止し、低速でトンネル内に進入することで自動露出制御の追従遅れを防ぐことも考えられる。しかし、これらでは、トンネル壁面の撮影を何度も行ったり、車両を停止させたりするため、撮影効率が低下する場合がある。
【0193】
これに対し、本実施形態では、カメラユニット300よりも車両500の走行方向側にTOFセンサ141を設けている。カメラユニット300のトンネル600への進入に先立って、いち早く第1の露出条件に決定して露出条件を切り替えるため、各種パラメータ変化の情報を予め取得するために何度も撮影を行ったり、トンネルの手前で車両を停止させたりしなくても、自動露出制御の追従遅れに起因する白飛びや黒潰れの発生を防止できる。これにより撮影効率を向上させることができる。
【0194】
なお、本実施形態では、トンネル600の壁面までの距離に適合する固定露出条件を第1の露出条件とする構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、トンネル外からトンネル内に進入する時にのみ、急激な明るさの変化による自動露出制御の追従遅れを防ぐために所定の固定露出条件に切り替え、トンネル内に進入後、明るさが安定した時点で再び自動露出制御に切り替わるような露出条件を、第1の露出条件とすることもできる。
【0195】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る撮影システム100bについて説明する。
トンネル内の撮影では、トンネル内に非常駐車帯が設けられることで、撮影システムから対象物としてのトンネル壁面までの距離が大きく変化する。また車両が蛇行走行すると、トンネル壁面までの距離が大きく変化する。さらにトンネル内に設けられたジェットファンや手すり、避難抗等のトンネルの付属物を対象物に含める場合にも、撮影システムから対象物までの距離が大きく変化する。このような距離変化により照明光量等が大きく変化し、撮影画像に白飛びや黒潰れが発生する場合がある。
【0196】
本実施形態では、撮影システムのオペレータ(操作者の一例)が行った所定の操作に応答して、カメラユニット(撮影装置)の露出条件を所定の第2の露出条件に決定することで、白飛びや黒潰れの発生をより確実に防止する。
【0197】
<制御装置160bの機能構成例>
まず、撮影システム100bが備える制御装置160bの機能構成について説明する。
図18は、制御装置160bの機能構成の一例を説明するブロック図である。
図18に示すように、制御装置160bは操作受付部164と、露出制御部162bとを備える。この操作受付部164の機能は、
図4の操作部118等により実現される。
【0198】
操作受付部164は、オペレータが行った所定の操作を受け付け、所定の操作が行われたことを露出制御部162bに通知する。所定の操作は、対象物に対応付けて予め定められた操作である。例えば所定の操作は、操作部118の表示部の画面に表示され、非常駐車帯、蛇行走行、ジェットファン、手すり又は避難抗のそれぞれに対応付いたUI(User Interface)ボタンをタッチ又はクリックする操作である。
【0199】
露出制御部162bは、操作受付部164からの通知に応答して、カメラユニット300の露出条件を所定の第2の露出条件に決定する。この第2の露出条件は、車両が蛇行走行した場合のカメラユニット300とトンネル600の壁面との距離に適合する露出条件、或いは、トンネル内に設けられたジェットファン、手すり、又は避難抗等のトンネルの付属物とカメラユニット300との距離に適合する露出条件の何れか1つである。
【0200】
露出制御部162bは、操作受付部164からの通知に応答して露出条件記憶部163から読み出して決定した第2の露出条件に従って、カメラユニット300による撮影の露出量を制御できる。
【0201】
<撮影システム100bの動作例>
次に
図19を参照して、撮影システム100bの動作について説明する。
図19は、撮影システム100bの動作の一例を説明するフローチャートである。なお、
図19におけるステップS191乃至S194の動作は、
図17におけるステップS171乃至S174の動作と同じである。また、
図19におけるステップS197の動作は、
図17におけるステップS175の動作と同じである。そのため、ここでは重複する説明を省略し、相違点を中心に説明する。
図18の機能構成も適宜参照する。
【0202】
トンネル600内に車両500が進入後、オペレータは車両500の走行中にトンネル600内の非常駐車帯、ジェットファン、手すり又は避難抗等を目視で認知し、或いは車両500が蛇行走行しているか否かを目視又は体感で認知する。オペレータは、これらを認知した場合に、認知した対象に応じて操作部118のUIボタン等を操作する。
【0203】
ステップS195において、操作受付部164はオペレータからの操作を受け付ける。
【0204】
ステップS195で操作を受け付けた場合には(ステップS195、Yes)、ステップS196において、露出制御部162bは、操作受付部164からの通知に応答して、カメラユニット300の露出条件を所定の第2の露出条件に決定し、切り替える。
【0205】
一方、ステップS195において操作を受け付けていない場合には(ステップS195、No)、動作はステップS197に移行する。
【0206】
このようにして、撮影システム100bは、トンネル600内の対象物を撮影することができる。
【0207】
<撮影システム100bの作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、撮影システムのオペレータが行った所定の操作に応答して、撮影装置の露出条件を第2の露出条件に決定する。
【0208】
オペレータが認知した結果の操作に基づくため、距離測定装置による測定誤差等の影響を受けずに露出条件を決定でき、撮影画像における白飛びや黒潰れをより確実に防止できる。なお、これ以外の効果は第1実施形態で説明したものと同様である。
【0209】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る撮影システム100cについて説明する。
第2実施形態では、オペレータが認知した結果の操作に応答して、撮影装置の露出条件を所定の第2の露出条件に決定したが、オペレータが対象物を見落としたり、車両の蛇行走行を認知できなかったりする場合も考えられる。
【0210】
本実施形態では、距離測定装置で得られた距離測定値が所定の第1距離閾値以上で且つ所定の第2距離閾値以下の場合に、距離に関する情報を報知し、オペレータがこの報知に基づいて行った所定の操作に応答して、撮影装置の露出条件を所定の第2の露出条件に決定する。これにより、オペレータの見落とし等を防ぎ、撮影画像における白飛びや黒潰れの発生をより確実に防止する。
【0211】
<制御装置160cの機能構成例>
まず、撮影システム100cが備える制御装置160cの機能構成について説明する。
図20は、制御装置160cの機能構成の一例を説明するブロック図である。
図20に示すように、制御装置160cは第2判定部165と、報知部166と、露出制御部162cとを備える。第2判定部165の機能は、
図4のCPU111が所定のプログラムを実行すること等により実現され、報知部166の機能は、
図4のブザー116等により実現される。
【0212】
第2判定部165は、TOFセンサ141で得られた距離測定値が第1距離閾値Dfth以上で且つ第2距離閾値Dsth以下であるか否かを判定し、判定結果を報知部166に提供する。この第1距離閾値Dfthは、第1実施形態で説明したものと同様である。また第2距離閾値Dsthは、非常駐車帯、蛇行走行、ジェットファン、手すり又は避難抗の何れか1つに予め対応付けて定められた距離の閾値である。
【0213】
報知部166は、TOFセンサ141で得られた距離測定値が第1距離閾値Dfth以上で且つ第2距離閾値Dsth以下であると第2判定部165が判定した場合に、対象物に関する情報を報知する報知手段の一例である。対象物に関する情報は、トンネル600の壁面以外の対象物があることを示す情報や、車両500が蛇行走行していることを示す情報、対象物の種類を示す情報等である。報知は、ビープ音によるもの、音声によるものの他、操作部118の表示部にメッセージを表示するもの、或いは操作部118に設けられた圧電素子等を振動させて報知するもの等が挙げられる。
【0214】
露出制御部162cは、オペレータが報知部166による報知に基づいて行った所定の操作に応答して、カメラユニット300の露出条件を第2の露出条件に決定する。この第2の露出条件は、車両が蛇行走行した場合のカメラユニット300とトンネル600の壁面との距離に適合する露出条件、或いは、トンネル内に設けられたジェットファン、手すり、又は避難抗等のトンネルの付属物とカメラユニット300との距離に適合する露出条件の何れか1つである。
【0215】
露出制御部162cは、操作受付部164からの通知に応答して露出条件記憶部163から読み出して決定した第2の露出条件に従って、カメラユニット300による撮影の露出量を制御できる。
【0216】
<撮影システム100cの動作>
次に、
図21及び
図22を参照して撮影システム100cの動作について説明する。まず
図21は、撮影システム100cの動作の一例を説明する図であり、(a)は車両500がトンネル600内を走行する際の撮影の様子を示す図、(b)は車両500の走行距離とTOFセンサ141による測定距離との関係を示す図である。
図16との相違点を中心に説明する。
【0217】
図21(a)に示すように、トンネル600内には非常駐車帯701が設けられている。非常駐車帯701が設けられた道路区間(以下、非常駐車帯701の区間という)では、他の区間と比べ、トンネル600の壁面がX軸正方向にずれてカメラユニット300及び照明ユニット400からの距離が大きくなっている。そのため、
図21(b)に示すように、非常駐車帯701の区間に対応する区間154では、他の区間153,154に比べて測定距離が大きくなっている。測定距離が、第1距離閾値Dfth以上で且つ第2距離閾値Dsth以下である場合に、非常駐車帯701が検出される。
【0218】
次に
図22は、撮影システム100cの動作の一例を説明するフローチャートである。なお、
図22におけるステップS221乃至S224の動作は、
図19におけるステップS191乃至S194の動作と同じである。また、
図22におけるステップS227乃至S229の動作は、
図17におけるステップS195乃至S197の動作と同じである。そのため、ここでは重複する説明を省略し、相違点を中心に説明する。
図20の機能構成図も適宜参照する。
【0219】
トンネル600内に車両500が進入後、ステップS225において、第2判定部165は、TOFセンサ141で得られた距離測定値が第1距離閾値Dfth以上で且つ第2距離閾値Dsth以下であるか否かを判定する。
【0220】
ステップS225で、距離測定値が第1距離閾値Dfth以上で且つ第2距離閾値Dsth以下でないと判定された場合には(ステップS225、No)、動作はステップS229に移行する。
【0221】
一方、ステップS225で、距離測定値が第1距離閾値Dfth以上で且つ第2距離閾値Dsth以下であると判定された場合には(ステップS225、Yes)、報知部166は、対象物に関する情報を報知する。この報知に応答して、オペレータは対象物に応じた所定の操作を行う。
【0222】
このようにして、撮影システム100cは、トンネル600内の対象物を撮影することができる。
【0223】
<撮影システム100bの作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、距離測定装置で得られた距離測定値が第1距離閾値以上で且つ第2距離閾値以下の場合に、距離に関する情報を報知し、オペレータがこの報知に基づいて行った所定の操作に応答して、撮影装置の露出条件を第2の露出条件に決定する。これにより、オペレータの見落とし等を防ぎ、撮影画像における白飛びや黒潰れの発生をより確実に防止することができる。なお、これ以外の効果は第1及び第2実施形態で説明したものと同様である。
【0224】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る撮影システム100dについて説明する。
第1乃至第3の実施形態では、車両の走行速度が速すぎると、距離測定装置の測定結果に応答した第1の露出条件への切り替えが撮影開始までに完了せず、撮影画像に白飛びや黒潰れが発生する場合がある。
【0225】
本実施形態では、車両の走行速度、すなわち車速(移動速度)に基づき、距離測定装置と撮影装置との連携が可能な移動速度に修正する。これにより、撮影開始までに第1の露出条件への切り替えを完了可能とし、撮影画像における白飛びや黒潰れの発生を確実に防止する。
【0226】
<制御装置160dの機能構成例>
まず、撮影システム100dが備える制御装置160dの機能構成について説明する。
図23は、制御装置160dの機能構成の一例を説明するブロック図である。
図23に示すように、制御装置160dは、車速判定部167と、要求部168と、修正部169とを備える。これらの各機能は、
図4のCPU111が所定のプログラムを実行すること等により実現される。
【0227】
車速判定部167は、車速計/移動距離計171により検出される車速が所定の速度閾値以上であるか否かを判定し、判定結果を要求部168に提供する。速度閾値は、TOFセンサ141とカメラユニット300との連携が可能な車速の限界値を示す、予め定められた速度の閾値である。
【0228】
TOFセンサ141の測定結果に応答した第1の露出条件への切り替えが撮影開始までに完了可能な車速は、TOFセンサ141とカメラユニット300との連携が可能な車速に対応する。
【0229】
要求部168は、車速に基づき、TOFセンサ141とカメラユニット300との連携が可能な車速への修正を要求する要求手段の一例である。具体的には、要求部168は、車速が所定の速度閾値以上である場合に、修正部169に対して修正を要求する。
【0230】
修正部169は、車速を修正する修正手段の一例である。具体的には、修正部169は、要求部168による要求に応答して、車両が備えるエンジンECU(Engine Control Unit)510に修正信号を出力して車速を修正する。
【0231】
エンジンECU510は、修正部169からの修正信号に応答して、燃料噴射量の決定、点火時期の進角・遅角、動弁機構等の制御を行う。また、現在車速とアクセル開度の関係に対し変速段の切り替え線が定められたマップを参照する等して変速の必要性を判断する。エンジンECU510はこれらを組み合わせて車両の加速や減速制御を行い、修正信号に応じた車速を実現する。なお、エンジンと共に又はエンジンを動力とすることなく電気モータを動力としてもよい。
【0232】
<撮影システム100dの動作例>
次に
図24を参照して、撮影システム100dの動作について説明する。
図24は、撮影システム100dの動作の一例を説明するフローチャートである。なお、
図24におけるステップS241乃至S242の動作は、
図17におけるステップS171乃至S172の動作と同じである。また、
図24におけるステップS246乃至S247の動作は、
図17におけるステップS173乃至S174の動作と同じである。さらに
図24におけるステップS248の動作は、
図17におけるステップS175の動作と同じである。そのため、ここでは重複する説明を省略し、相違点を中心に説明する。
図23の機能構成図も適宜参照する。
【0233】
ステップS243において、車速判定部167は、車速計/移動距離計171により検出される車速が速度閾値以上であるか否かを判定する。
【0234】
ステップS243で車速が速度閾値以上でないと判定された場合には(ステップS243、No)、動作はステップS246に移行する。
【0235】
一方、ステップS243で車速が速度閾値以上であると判定された場合には(ステップS243、Yes)、ステップS244において、要求部168は車速の修正を修正部169に要求する。
【0236】
続いて、ステップS245において、修正部169は、エンジンECU510に修正信号を出力して車速を修正する。
【0237】
このようにして、撮影システム100bは、トンネル600内の対象物を撮影することができる。
【0238】
<撮影システム100dの作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、車両の移動速度に基づき、距離測定装置と撮影装置との連携が可能な移動速度に修正する。これにより、第1の露出条件への切り替えを撮影開始までに完了可能にし、撮影画像における白飛びや黒潰れの発生を確実に防止することができる。
【0239】
なお、本実施形態では、要求手段が修正手段に修正を要求し、修正手段がエンジンECUを介して車速を修正する構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、要求手段は、車両の運転者に対して修正を要求することもできる。運転者は要求に応答して運転操作により車速を修正できる。
【0240】
上記以外の効果は、第1乃至第3実施形態で説明したものと同様である。
【0241】
以上、本発明の実施形態の例について記述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0242】
具体的には、カメラを搭載する車両としては2輪車、一般車等の4輪車、建設・農業・産業車両、鉄道車両、特殊車両であってもよく、また、ドローン等の飛行体であってもよい。これらまとめて移動体と称する。
【0243】
また実施形態では、対象物の一例としてトンネルを説明したが、これに限るものではなく、対象物には、気体、液体、粉体、粒体物質の輸送に用いる配管も含まれる。また、対象物には、昇降機(エレベータ)が走行する縦穴状の鉄筋コンクリート構造等の昇降路(エレベータシャフト)も含まれる。
【0244】
また、実施形態では、撮影システムの構成部の全部が移動体に設けられる構成を例示したが、これに限定されるものではない。一部の構成部を移動体の外部に設けることもできる。例えば、撮影装置や照明装置等の撮影を行う構成部を移動体に設け、またクラウドサーバや外部PC等に制御装置を設けて、撮影を行う構成部と制御装置との間で情報、データ又は信号を、インターネット等のネットワークを介して送受することもできる。
【0245】
なお、実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0246】
また、機能ブロック図におけるブロックの分割は一例であり、複数のブロックを一つのブロックとして実現する、一つのブロックを複数に分割する、及び/又は、一部の機能を他のブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数のブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【符号の説明】
【0247】
100 撮影システム
110 センサ制御ボード
111 CPU
112 ROM
113 RAM
114 HDD
115 外部I/F
116 ブザー
117 システムバス
118 操作部
141 TOFセンサ
153~155 区間
160 制御装置(制御手段の一例)
161 第1判定部
162 露出制御部
163 露出条件記憶部
164 操作受付部
165 第2判定部
166 報知部(報知手段の一例)
167 車速判定部
168 要求部(要求手段の一例)
169 修正部(修正手段の一例)
170 IMU
171 車速計/移動距離計
200 スライドユニット
210、220 レール
230 ベース
231 嵌合孔
240 ガイドシャフト
251、252 ガイドシャフト保持部材
261、262 フレーム
300 カメラユニット
310、410 ベースプレート
321、322 レール接続部
331~334 カメラ
331-1、334-1 レンズ
331-1a 絞り
331-2、334-2 ラインCCD
341、342、441、442 シャフト連結部
341-1、342-1 貫通孔
350、450 インデックスプランジャ
361、362、364 撮影範囲
363 撮影方向
400 照明ユニット
431~436 照明光源部
431-1 レンズ
431-1a 絞り
431-2 光源
451 プランジャ
452 プランジャ保持部
461、462、464 照明範囲
463 照明方向
500 車両
510 エンジンECU
600 トンネル
700 道路
701 非常駐車帯
710、720 車線
730 歩道
Dfth 第1距離閾値
Dsth 第2距離閾値
【先行技術文献】
【特許文献】
【0248】