(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】撮影装置、撮影方法、撮影システム及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20241001BHJP
G03B 7/093 20210101ALI20241001BHJP
H04N 23/58 20230101ALI20241001BHJP
【FI】
H04N23/60
G03B7/093
H04N23/58
(21)【出願番号】P 2020138437
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2020042788
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(72)【発明者】
【氏名】寺内 正和
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-005112(JP,A)
【文献】特開2013-088571(JP,A)
【文献】特開2018-197825(JP,A)
【文献】特開2013-005214(JP,A)
【文献】特開2014-209795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
H04N 23/58
G03B 7/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
追尾対象が含まれる予備画像を撮影する予備撮影部と、
前記予備画像を解析する解析部と、
前記解析部による解析結果に基づいて追尾駆動制御情報を演算する演算部と、
前記追尾駆動制御情報に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影部と、
を有
し、
前記解析部は、前記予備画像に基づいて、緯度情報を求め、
前記演算部は、前記緯度情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
追尾対象が含まれる予備画像を撮影する予備撮影部と、
前記予備画像を解析する解析部と、
前記解析部による解析結果に基づいて追尾駆動制御情報を演算する演算部と、
前記追尾駆動制御情報に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影部と、
を有
し、
前記解析部は、前記予備画像に基づいて、緯度情報と傾き情報を求め、
前記演算部は、前記緯度情報と前記傾き情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、
ことを特徴とする撮影装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記撮影光学系の焦点距離情報と、前記予備画像の撮影時間間隔もしくは露光時間と、前記緯度情報と、前記傾き情報とに基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記解析部は、前記予備画像における前記追尾対象の移動量を解析する、
ことを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項5】
前記追尾撮影部は、前記追尾撮影において、前記追尾対象の像を前記撮像素子の撮像面に対して固定させる、
ことを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項6】
前記予備撮影部は、前記複数の予備画像を撮影する際の各露光時間を同一とする、
ことを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項7】
前記追尾撮影部により前記追尾撮影を行う際の露光時間は、前記予備撮影部により前記複数の予備画像を撮影する際の各露光時間よりも長い、
ことを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項8】
前記追尾撮影部により前記追尾撮影を行う際の露光時間は、前記予備撮影部により前記予備画像を撮影する際の露光時間及び複数予備画像を撮影する際の各露光間隔よりも長い、
ことを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項9】
前記追尾対象は、日周運動によって前記撮影装置に対して相対移動する天体である、
ことを特徴とする請求項1から請求項
8のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項10】
前記追尾撮影の設定の有無を切り替える切替部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項
9のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項11】
前記追尾撮影の設定の有無を表示する表示部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項
10のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項12】
追尾対象が含まれる予備画像を撮影する予備撮影ステップと、
前記予備画像を解析する解析ステップと、
前記解析ステップによる解析結果に基づいて追尾駆動制御情報を演算する演算ステップと、
前記追尾駆動制御情報に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影ステップと、
を有
し、
前記解析ステップでは、前記予備画像に基づいて、緯度情報を求め、
前記演算ステップでは、前記緯度情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、
ことを特徴とする撮影方法。
【請求項13】
追尾対象が含まれる予備画像を撮影する予備撮影ステップと、
前記予備画像を解析する解析ステップと、
前記解析ステップによる解析結果に基づいて追尾駆動制御情報を演算する演算ステップと、
前記追尾駆動制御情報に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影ステップと、
を有
し、
前記解析ステップでは、前記予備画像に基づいて、緯度情報と傾き情報を求め、
前記演算ステップでは、前記緯度情報と前記傾き情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、
ことを特徴とする撮影方法。
【請求項14】
撮影装置と、
前記撮影装置を搭載する架台と、
を有する撮影システムであって、
追尾対象が含まれる予備画像を撮影する予備撮影部と、
前記予備画像を解析する解析部と、
前記解析部による解析結果に基づいて追尾駆動制御情報を演算する演算部と、
前記追尾駆動制御情報に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、前記架台を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影部と、
を有
し、
前記解析部は、前記予備画像に基づいて、緯度情報を求め、
前記演算部は、前記緯度情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項15】
撮影装置と、
前記撮影装置を搭載する架台と、
を有する撮影システムであって、
追尾対象が含まれる予備画像を撮影する予備撮影部と、
前記予備画像を解析する解析部と、
前記解析部による解析結果に基づいて追尾駆動制御情報を演算する演算部と、
前記追尾駆動制御情報に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、前記架台を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影部と、
を有
し、
前記解析部は、前記予備画像に基づいて、緯度情報と傾き情報を求め、
前記演算部は、前記緯度情報と前記傾き情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項16】
追尾対象が含まれる予備画像を解析する解析部と、
前記解析部による解析結果に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行うための追尾駆動制御情報を演算する演算部と、
を有
し、
前記解析部は、前記予備画像に基づいて、緯度情報を求め、
前記演算部は、前記緯度情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項17】
追尾対象が含まれる予備画像を解析する解析部と、
前記解析部による解析結果に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行うための追尾駆動制御情報を演算する演算部と、
を有
し、
前記解析部は、前記予備画像に基づいて、緯度情報と傾き情報を求め、
前記演算部は、前記緯度情報と前記傾き情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置、撮影方法、撮影システム及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、日周運動によって、撮影装置に対して相対運動する天体を撮影するために、撮影装置の撮影光学系によって撮像面に形成された天体像が、撮影中、撮像素子の所定の撮像領域に対して固定されるように、天体自動追尾撮影する天体自動追尾撮影方法が開示されている。
【0003】
特許文献1の天体自動追尾撮影方法は、予備撮影段階と、演算段階と、本撮影段階とを有している。予備撮影段階では、天体自動追尾撮影の前に、撮影装置を所定の天体に向け、天体追尾動作を停止した状態で予め設定された予備撮影時間の予備撮影を実行して予備画像を得る。演算段階では、予備撮影によって得た予備画像から天体像の移動方向及び移動速度を演算する。本撮影段階では、演算した天体像の移動方向及び移動速度に基づき、天体自動追尾撮影を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-5112号公報
【文献】特許第5779968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の天体自動追尾撮影方法は、天体の動きを把握するに当たり、現在のカメラの位置と情報を実測することが必須である。具体的には、現在のカメラの位置、方位、仰角、傾きを各種センサ(GPS、方位センサ、加速度センサ等)で測定する必要がある。
【0006】
このため、各種センサを搭載することによるカメラの大型化、複雑化、高コスト化等が避けられない。また、カメラの方位、仰角、傾きについては十分な精度で測定することができず、例えば、焦点距離の長いレンズでの追尾撮影に不具合が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、簡単な構成で、好適な自動追尾撮影を行うことができる撮影装置、撮影方法、撮影システム及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の撮影装置は、追尾対象が含まれる予備画像を撮影する予備撮影部と、前記予備画像を解析する解析部と、前記解析部による解析結果に基づいて追尾駆動制御情報を演算する演算部と、前記追尾駆動制御情報に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影部と、を有し、前記解析部は、前記予備画像に基づいて、緯度情報を求め、前記演算部は、前記緯度情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、ことを特徴とする。
本発明の撮影装置は、追尾対象が含まれる予備画像を撮影する予備撮影部と、前記予備画像を解析する解析部と、前記解析部による解析結果に基づいて追尾駆動制御情報を演算する演算部と、前記追尾駆動制御情報に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影部と、を有し、前記解析部は、前記予備画像に基づいて、緯度情報と傾き情報を求め、前記演算部は、前記緯度情報と前記傾き情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の撮影方法は、追尾対象が含まれる予備画像を撮影する予備撮影ステップと、前記予備画像を解析する解析ステップと、前記解析ステップによる解析結果に基づいて追尾駆動制御情報を演算する演算ステップと、前記追尾駆動制御情報に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影ステップと、を有し、前記解析ステップでは、前記予備画像に基づいて、緯度情報を求め、前記演算ステップでは、前記緯度情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、ことを特徴とする。
本発明の撮影方法は、追尾対象が含まれる予備画像を撮影する予備撮影ステップと、前記予備画像を解析する解析ステップと、前記解析ステップによる解析結果に基づいて追尾駆動制御情報を演算する演算ステップと、前記追尾駆動制御情報に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影ステップと、を有し、前記解析ステップでは、前記予備画像に基づいて、緯度情報と傾き情報を求め、前記演算ステップでは、前記緯度情報と前記傾き情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の撮影システムは、撮影装置と、前記撮影装置を搭載する架台と、を有する撮影システムであって、追尾対象が含まれる予備画像を撮影する予備撮影部と、前記予備画像を解析する解析部と、前記解析部による解析結果に基づいて追尾駆動制御情報を演算する演算部と、前記追尾駆動制御情報に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、前記架台を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影部と、を有し、前記解析部は、前記予備画像に基づいて、緯度情報を求め、前記演算部は、前記緯度情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、ことを特徴とする。
本発明の撮影システムは、撮影装置と、前記撮影装置を搭載する架台と、を有する撮影システムであって、追尾対象が含まれる予備画像を撮影する予備撮影部と、前記予備画像を解析する解析部と、前記解析部による解析結果に基づいて追尾駆動制御情報を演算する演算部と、前記追尾駆動制御情報に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、前記架台を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影部と、を有し、前記解析部は、前記予備画像に基づいて、緯度情報と傾き情報を求め、前記演算部は、前記緯度情報と前記傾き情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の電子機器は、追尾対象が含まれる予備画像を解析する解析部と、前記解析部による解析結果に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行うための追尾駆動制御情報を演算する演算部と、を有し、前記解析部は、前記予備画像に基づいて、緯度情報を求め、前記演算部は、前記緯度情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、ことを特徴とする。
本発明の電子機器は、追尾対象が含まれる予備画像を解析する解析部と、前記解析部による解析結果に基づいて、前記追尾対象の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行うための追尾駆動制御情報を演算する演算部と、を有し、前記解析部は、前記予備画像に基づいて、緯度情報と傾き情報を求め、前記演算部は、前記緯度情報と前記傾き情報に基づいて、前記追尾駆動制御情報を演算する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な構成で、好適な自動追尾撮影を行うことができる撮影装置、撮影方法、撮影システム及び電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態のデジタルカメラの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】CPUの内部構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】予備画像を撮影する様子の一例を示す図である。
【
図4】予備画像における天体の移動量の解析の一例を示す図である。
【
図5】SADを用いた複数の予備画像の天体の移動量の算出の一例を示す図である。
【
図6】複数の予備画像の天体の移動量の算出結果の一例を示す図である。
【
図13】本実施形態のデジタルカメラの撮影処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】本実施形態の撮影システムの外観構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態のデジタルカメラ(撮影装置)10の構成の一例を示すブロック図である。なお、デジタルカメラ(撮影装置)10による撮影方法は、デジタルカメラ10の各構成要素によって所定の処理ステップを実行することにより実現される。
【0015】
デジタルカメラ10は、カメラボディ11と、撮影レンズ101(撮影光学系L)とを備えている。カメラボディ11には、撮影光学系Lの後方に位置する撮像素子13が配設されている。撮影光学系Lの光軸LOと撮像素子13の撮像面14とは直交している。
【0016】
撮像素子13は、撮像素子駆動ユニット15に搭載されている。撮像素子駆動ユニット15は、固定ステージと、固定ステージに対して可動な可動ステージと、固定ステージに対して可動ステージを移動させる電磁回路とを有しており、可動ステージに撮像素子13が保持されている。撮像素子13(可動ステージ)は、光軸LOと直交する所望の方向に所望の移動速度で平行移動制御され、さらに光軸LOと平行な軸(光軸LOと直交する面内の何処かに位置する瞬間中心)を中心として所望の回転速度で回転制御される。このような撮像素子駆動ユニット15は、例えば、特開2007-25616号公報に記載されているカメラの像ブレ補正装置の撮像素子駆動ユニットとして公知である。
【0017】
撮影レンズ101の撮影光学系Lは複数のレンズから構成されており、その内部に絞り103が設けられている。この絞り103の絞り値(開閉度合い)は、カメラボディ11に備えられた絞り駆動制御機構17によって制御される。撮影レンズ101は、撮影光学系Lの焦点距離情報fを検出する焦点距離検出装置105を備えている。焦点距離検出装置105が検出した撮影光学系Lの焦点距離情報fは、カメラボディ11に搭載されたCPU(Central Processing Unit)21に入力される。もしくは他の構成として、焦点距離情報を設定スイッチ30等から入力して焦点距離情報fとすることもできる。この時、焦点距離情報fの設定をLCDモニタ23に示すこともできる。
【0018】
カメラボディ11に搭載されたCPU21は、デジタルカメラ10の全体の機能を制御する。CPU21は、撮像素子駆動ユニット15を介して撮像素子13を駆動制御し、撮像素子13が撮影した画像信号を処理してLCDモニタ23に表示するとともに、メモリーカード25に書き込む。CPU21には、撮像素子駆動ユニット15を防振ユニットとして用いる際にカメラに加わる振れを検出するために、X方向ジャイロセンサGSX、Y方向ジャイロセンサGSY、回転検出ジャイロセンサGSRが検出した信号が入力される。
【0019】
カメラボディ11は、スイッチ類として、電源スイッチ27、レリーズスイッチ28、設定スイッチ30を備えている。CPU21は、これらのスイッチ27、28、30のオン/オフ状態に応じた制御を実行する。例えば、電源スイッチ27の操作を受けて、図示しないバッテリからの電力供給をオン/オフし、レリーズスイッチ28の操作を受けて焦点調節処理、測光処理及び撮影処理を実行する。
【0020】
ここで、設定スイッチ30は、後述する天体自動追尾撮影(追尾撮影)の設定の有無を切り替える「切替部」として機能することができる。また、LCDモニタ25は、後述する天体自動追尾撮影(追尾撮影)の設定の有無を表示する「表示部」として機能することができる。
【0021】
本実施形態のデジタルカメラ10は、日周運動によってデジタルカメラ10に対して相対運動する天体(追尾対象)を撮影するために、デジタルカメラ10の撮影光学系Lによって撮像素子13の撮像面14に形成された天体像が、撮影中、撮像素子13の撮像面14の所定の撮像領域に対して固定されるように、撮像素子13の撮像面14の所定の撮像領域と天体像の少なくとも一方をデジタルカメラ10に対して相対移動させながら撮影する天体自動追尾撮影(追尾撮影)を実行することができる。
【0022】
従来の予備撮影による天体の動きを予測する手法は、予備撮影された画像の軌跡を円弧としてとらえその円弧の中心位置を算出して、その円弧を含む円に基づいて撮像素子を駆動することで天体の追尾を再現することが示されている。しかし、簡便な手法としては良いが、より精度の高い追尾撮影を行おうとする場合には円として算出する方法では限界がある。例えば、円弧として求めようとすると画面の位置によってその円弧は楕円であったり曲率が異なったり直線(曲率無限)であったりと天体の動きはより複雑であり、単純な円として推測するだけでは限界がある。
【0023】
すなわち、通常のレンズであるとy=f・tanθという射影方式(いわゆる中心射影)のため、日周運動を撮影した場合に、撮像素子上の軌道は画面上の位置によってそれぞれ異なる楕円運動をしているように見える。これらは、焦点距離fや撮影する赤緯でも異なり、おおよそ円運動による近似で求めるには限界があり従来の手法では高精度な追尾を行うことが難しい。
【0024】
さらに、撮像素子を駆動するための追尾駆動制御情報を取得(演算)するに当たっては、「緯度情報」が必須となり、当該「緯度情報」に加えて「傾き情報」を用いることがより好ましい。「緯度情報」は、例えば、赤緯に関する情報を含んでおり、「傾き情報」は、例えば、カメラ回転(赤緯に対する回転)に関する情報を含んでいる。
【0025】
上述した特許文献1では、「緯度情報」と「傾き情報」を取得するためのセンサ類として、GPSユニット、方位角センサ、加速度センサが設けられている。しかし、特許文献1は、これらのセンサ類を搭載することで、カメラが大型化、複雑化、高コスト化してしまう。また、これらのセンサ類をもってしても、「緯度情報」と「傾き情報」を十分な精度で測定することができず、例えば、焦点距離の長いレンズでの追尾撮影に不具合が生じるおそれがある。
【0026】
本実施形態では、上記の問題点を重要な技術課題として捉えて、簡単な構成で、好適な自動追尾撮影を行うことができるデジタルカメラ10を実現している。本実施形態では、予備撮影した画像をもとに、円運動や直線運動として予測した追尾を行う従来に比べて、予備撮影した画像から天体の動きをもとにカメラ状態情報を求めて、そのカメラ状態情報をもとに天体の動きを求めて撮像素子を動かすことで、焦点距離の長いレンズでの追尾を十分な精度をもって駆動することが可能となっている。
【0027】
上記の機能を実現するための手段として、
図2に示すように、CPU21は、予備撮影部21Aと、解析部21Bと、演算部21Cと、追尾撮影部21Dとを有している。
【0028】
予備撮影部21Aは、撮像素子駆動ユニット15による撮像素子13の駆動を停止した状態で、天体(追尾対象)が含まれる予備画像を撮影する。予備撮影部21Aは、撮影光学系L及び撮像素子13と協働して、予備画像を撮影する(撮影光学系Lと撮像素子13を予備撮影部の一部と捉えることもできる)。予備撮影部21Aは、複数の予備画像を撮影する際には各露光時間を同一とすることができる。
【0029】
図3A、
図3Bは、予備画像を撮影する様子の一例を示す図である。この図では予備撮影を2枚としているが、予備撮影は1枚以上であればよく1枚でも3枚でもさらに複数の画像を撮影することもできる。例えば、短時間露光で複数の予備撮影を行って複数の予備画像を得てもよいし、長時間露光で1枚の予備撮影を行ってその始点と終点と中間点を含む複数の予備画像を得てもよい。あるいは、長時間露光で1枚の予備撮影を行ってその始点と終点と中間点を含む複数の予備画像を得る場合を「複数の予備撮影を行う場合」と読み替えても(解釈しても)よい。
【0030】
図3Aに示すように、デジタルカメラ10を天体(追尾対象)に向けた状態で、三脚等の架台10Xに固定する。天体自動追尾撮影は、赤道儀と呼ばれる天体の動き(地球の自転)に合わせてカメラを動かす装置を利用して実行することも可能であるが、赤道儀は高価であり、重く、扱いも容易ではない。本実施形態は、デジタルカメラ10を架台10Xに固定して天体(追尾対象)に向けるだけで、撮像素子13を駆動することによる天体自動追尾撮影を行うことができる。
【0031】
図3Bでは、複数の予備画像として、1枚目の予備画像と2枚目の予備画像を描いており、これらの1枚目の予備画像と2枚目の予備画像に基づく追尾駆動制御情報に基づいて、天体自動追尾撮影を実行することになる(詳細については後述する)。なお、追尾駆動制御情報の計算の開始タイミングや終了タイミング等の各種タイミング(複数の予備画像の役目がなくなったタイミング)で、複数の予備画像を破棄(ドロップ)してもよい。
【0032】
解析部21Bは、予備撮影部21Aによる予備画像における天体(追尾対象)の移動量を解析する。
【0033】
解析部21Bは、予備撮影部21Aによる予備画像に加えて(基づいて)、焦点距離検出装置105が検出し、もしくは設定スイッチ30等により入力された撮影光学系Lの焦点距離情報fと、予備撮影部21Aによる複数の予備画像の撮影時間間隔もしくは1枚の予備画像の場合には露光時間とから、デジタルカメラ10の状態情報を算出する。デジタルカメラ10の状態情報は、「緯度情報」及び「傾き情報」の少なくとも一方(両方又は一方)を含んでいる。「緯度情報」は、デジタルカメラ10の設置場所を示す情報であり、緯度又はデジタルカメラ10が向けられている天体の赤緯を含んだ情報である。「傾き情報」は、例えば、デジタルカメラ10の水平軸又は垂直軸と赤経とがなす角度を示す情報である。
【0034】
ここで、焦点距離情報fは、主面距離もしくは主点距離といったレンズの主点を示す情報でも焦点距離fと等価でありいずれかの情報かを含む情報があればよい。
【0035】
図4A、
図4B、
図4Cは、予備画像における天体の移動量の解析の一例を示す図である。時刻t1で予備画像1を撮影し(
図4A)、時刻t2で予備画像2を撮影し(
図4B)、時刻t1の予備画像1と時刻t2の予備画像2の天体の移動量を算出する(
図4C)。
図4A~
図4Cに示すように、時刻t1から時刻t2に進むに連れて、予備画像1から予備画像2の間で天体が左上方向に移動している(流れている)。
【0036】
天体自動追尾撮影に使用する追尾駆動制御情報は、次の4つの情報に基づいて得られる。
(1)撮影光学系Lの焦点距離情報fもしくはそれに準ずる情報
(2)複数の予備画像の撮影時間間隔もしくは1枚の画像であれば露光時間
(3)緯度情報(緯度又はデジタルカメラ10が向けられている天体の赤緯を含んだ情報)
(4)傾き情報(デジタルカメラ10の水平軸又は垂直軸と赤経とがなす角度を示す情報)
【0037】
上記の(1)、(2)については、デジタルカメラ10でレンズ通信やタイマー機能等を用いて得られる既知情報である。一方、上記の(3)、(4)については、予備画像における天体の移動量に基づいて求める。例えば、時間差をおいて2枚の予備画像を撮影して、その時間差のある2枚の予備画像間の天体の移動量及び軌跡から2点間の移動量を求め、もしくは、1枚の予備画像を撮影して、その露光時間中に天体が動いた軌跡を解析し露光時間中に天体が移動した移動量を求め、既知の焦点距離と上記時間差の天体の移動量を用いて上記の(3)、(4)を算出する。
【0038】
このように、解析部21Bは、予備画像に基づいて、「緯度情報」及び「傾き情報」の少なくとも一方(両方又は一方)を求める。
【0039】
複数の予備画像における天体の移動量の算出手法は種々存在し、そのうちのどれを採用するかには自由度があるが、ここでは、一例として、SAD(Sum of Absolute Difference)を使用する場合を挙げて説明する。SADは、「画素値の差分の絶対値の和」で類似度を評価する手法である。
【0040】
図5A、
図5Bは、SADを用いた複数の予備画像の天体の移動量の算出の一例を示す図である。
図5Aは、縦3個×横3個=合計9個のSADによる計算箇所を示しており、
図5Bは、
図5Aの各計算箇所を拡大して示している。各計算箇所は、相対的に大きめの矩形からなる探索範囲Rと、この探索範囲Rの内側に位置する相対的に小さめの矩形からなる探索画像Tとを有している。探索範囲Rと探索画像Tとの間隔の最大値をMmaxと規定している。fを焦点距離、θを露光間隔(複数の予備画像の撮影時間間隔)における自転角と定義したとき、Mmaxは下式で表すことができる。各計算箇所は、例えば、検出した天体やその周辺などとすることができる。
Mmax=f・tan(tan
-1y+θ)-y
y:像高(探索範囲Rの最外部と画面中央からの距離)
【0041】
SADでは、計算コストを省略するべく、画面全体で計算を行わず、画面内の代表(各計算箇所)について計算を行う。また、各計算箇所のサイズを比較的小さく設定して探索を行い、天体の移動量を算出する。
【0042】
天体の移動量は画面内の場所(中央側か周辺側か)によって異なる。また、天体の移動方向も異なるため、計算コストが小さかったとしても、画面内で分割してそれぞれの位置での移動ベクトルを算出する必要がある。
【0043】
焦点距離と複数の予備画像の撮影時間間隔とから天体の最大移動量が分かるため、探索範囲は、その最大移動量の範囲内に設定する。SADによる計算値は下記式で与えられる。SADの計算結果の一番小さい画素が結果位置であり、当該結果位置はサブピクセル単位で算出される。
【数1】
【0044】
図6A、
図6Bは、予備画像の天体の移動量の算出結果の一例を示す図であり、
図6Aは天の赤道付近を示しており、
図6Bは極の周辺を示している。天体の移動量を算出したものは、それぞれのエリアで、2点で1組の線分やベクトルで表される。2枚以上の予備画像を使う場合は、それぞれ2点の組み合わせとする。例えば、3枚の予備画像を使う場合に点P0、P1、P2があるときは、P0とP1、P0とP2、P1とP2といった2点の組み合わせをそれぞれ用いる。
【0045】
図7A、
図7Bは、レンズの結像(通常レンズの射影)の一例を示す図であり、y=f・tanθが成立するいわゆる中心射影方式を示したものである。fはレンズの焦点距離であり、yは被写体の結像像高であり、θは光軸と像高がなす角である。ここでは、被写体が天体でこれを点として捉えることができるので、像高yが天体の結像位置(光軸からの距離)に相当し、角θが光軸と天体のなす角に相当する。
【0046】
【0047】
図8A、
図8B、
図8Cは、天体の移動を示す第1の概念図であり、天体の動きを模式的に示し、地球から天体を観測したときの天体の動きを説明するものである。
図8Aは、地球の自転(自転軸を中心とする回転)により天体が動く様子を示したものである。
図8Bは、
図8Aの中の時間T1(時間T0~時間T1)の移動分(斜線部分)を切り出したものであり、ηはカメラの向いている赤緯の方向(光軸の方向)を示している。
図8Cは、
図8Bを下から(南極側)から見たものであり、βは時間T1(時間T0~時間T1)に動く自転の量(赤経の時角)を示している。
図8A~
図8Cに示すように、写真視野(FOV:Field Of View)において、時間T1(時間T0~時間T1)の天体の移動に伴い、赤経RA/αと赤緯DEC/δが変化していることが分かる。
【0048】
図9A、
図9Bは、天体の移動を示す第2の概念図であり、
図8B、
図8Cの詳細図に相当する。
図9A、
図9Bにおいて、S0は時間T0のときの天体の位置を示しており、S1は時間T1のときの天体の位置を示している。イメージプレーン(Image Plane)は、カメラで撮影された天体を画像の位置に投影したものを示している。
【0049】
図9Aは、時間T0においてηの方向にカメラを向け撮影したときの天体の位置S0と、時間T1経ったときの天体の位置S1を示している。カメラは地球とともに自転するため、天体の位置がS0からS1に移動しても、元のS0を向いたままとなる。
【0050】
ここで、
図9B(イメージプレーンを下から見た図(画像下部))を見ると、時間T0と時間T1の天体の位置関係はφ分だけ移動したことになる。これは、露光間隔Tの間に動いた角βが赤緯ηのイメージプレーンにおける見掛の角φになって、φ=β・cosηで表されるためである。
【0051】
さらに、時間T0と時間T1で撮影した2枚の予備画像における天体の移動量がx、yで分かっているとすると、
図9A、
図9Bに示されているεとφは、それぞれ、ε=atan(y/f)、φ=atan(x/f)で表される。また、εとφを含んだ式が、tan(ε+η)=tanη・cosβで表される。
【0052】
ここで、上記のf、x、y、βは既知の数値であり、ε、φはこの既知の数値から算出できるので、未知数はηのみとなる。上記の式にf、x、y、β、ε、φを代入して解くことで、ηを求めることができる。このとき、複数のηが算出されるが、画面内の正負を考慮すれば一意に決まり、カメラの向けられている赤緯を算出することができる。天体を追尾する場合に、カメラの向いている赤緯、焦点距離、回転が分かれば追尾できることは上述の特許文献1に示されている通りである。
【0053】
図10は、天体の移動を示す第3の概念図である。
図10に示すように、赤経RA/αと赤緯DEC/δを基準とした写真視野FOVにおいて、既知情報であるf、x、yを考慮したときに、上述したε=atan(y/f)とφ=atan(x/f)が成立することが分かる。
【0054】
図8~
図10では、y=f・tanθが成立する撮影レンズでの計算手法を示しているが、魚眼レンズなどの射影方式が異なる場合には、適宜、算出の方法を変更する必要がある。また、レンズには通常ディストーションと呼ばれる歪みが発生していてy=f・tanθを完全には満たしていないため、厳密には上記の計算には多少のズレが発生してしまう。従って、より高精度な計算を行う場合には、レンズのディストーションを補正するように計算のずれを補正するか、検出する画像をディストーションの補正が行われたもので実施する手法が考えられる。
【0055】
図11、
図12は、画面の傾きの第1、第2の例を示す図である。
図11は、通常画面における画面の傾きを示しており、
図12はSAD計算における画面の傾きを示している。デジタルカメラ10の画面が傾いている場合には、光軸を通る赤緯を挟んで線対称となるように天体が動く。またデジタルカメラ10の画面の傾きは、画面中心で算出した移動量のベクトルに垂直な向きを赤緯とする。
【0056】
図7~
図12を例示して説明したように、解析部21Bが、予備画像における天体の移動量に基づいて、緯度情報(緯度又はデジタルカメラ10が向けられている天体の赤緯を含んだ情報)と、傾き情報(デジタルカメラ10の水平軸又は垂直軸と赤経とがなす角度を示す情報)とを求める。
【0057】
演算部21Cは、解析部21Bによる解析結果に基づいて、天体(追尾対象)の動きに合わせて撮像素子13を駆動しながら追尾撮影を行うための追尾駆動制御情報を演算する。
【0058】
演算部21Cは、解析部21Bが求めた緯度情報(緯度又はデジタルカメラ10が向けられている天体の赤緯を含んだ情報)と、傾き情報(デジタルカメラ10の水平軸又は垂直軸と赤経とがなす角度を示す情報)との少なくとも一方(両方又は一方)に基づいて、追尾駆動制御情報を演算する。
【0059】
演算部21Cは、撮影光学系Lの焦点距離情報fと、予備画像の撮影時間間隔または露光時間と、緯度情報(緯度又はデジタルカメラ10が向けられている天体の赤緯を含んだ情報)と、傾き情報(デジタルカメラ10の水平軸又は垂直軸と赤経とがなす角度を示す情報)とに基づいて、追尾駆動制御情報を演算する。
【0060】
演算部21Cが演算する追尾駆動制御情報は、撮像素子13をX軸方向に移動させるデータであるX方向駆動速度dX/dtと、撮像素子13をY軸方向に移動させるデータであるY方向駆動速度dY/dtと、撮像素子13を回転方向に移動させるデータである回転方向駆動速度dθ/dtと、を含んでいる。
【0061】
追尾撮影部21Dは、演算部21Cが演算した追尾駆動制御情報(dX/dt、dY/dt、dθ/dt)に基づいて、天体(追尾対象)の動きに合わせて、撮像素子13を駆動しながら、長時間露光による追尾撮影(天体自動追尾撮影)を行う。すなわち、追尾撮影部21Dは、追尾撮影(天体自動追尾撮影)において、天体(追尾対象)の像を撮像素子13の撮像面14に対して固定させる。
【0062】
演算部21Cが演算した、X方向駆動速度dX/dtと、Y方向駆動速度dY/dtと、回転方向駆動速度dθ/dtとの組み合わせにより規定される追尾駆動制御情報(dX/dt、dY/dt、dθ/dt)を使用することで、高精度な追尾撮影(天体自動追尾撮影)が可能になる。
【0063】
追尾撮影部21Dは、撮影光学系L及び撮像素子13と協働して、追尾撮影(天体自動追尾撮影)を実行する(撮影光学系Lと撮像素子13を追尾撮影部の一部と捉えることもできる)。
【0064】
追尾撮影部21Dにより追尾撮影(天体自動追尾撮影)を行う際の露光時間は、予備撮影部21Aにより予備画像を撮影する際の各露光時間よりも長く設定されていてもよい(追尾撮影は長時間露光で行い、予備撮影は複数の短時間露光で行ってもよい)。
【0065】
追尾撮影部21Dにより追尾撮影(天体自動追尾撮影)を行う際の露光時間及び露光間隔は、予備撮影部21Aにより複数の予備画像を撮影する際の各露光時間及び各露光間隔もしくは1枚の予備画像を撮影する際の露光時間よりも長く設定されていてもよい(追尾撮影は長時間露光で行い、予備撮影は複数の短時間露光で行ってもよい)。
【0066】
なお、追尾駆動制御情報(dX/dt、dY/dt、dθ/dt)を演算する手法、及び、追尾駆動制御情報(dX/dt、dY/dt、dθ/dt)を使用して撮像素子13を駆動制御する手法については、上述した特許文献1等に記載されるように公知であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0067】
図13は、本実施形態のデジタルカメラ10の撮影処理の一例を示すフローチャートである。
【0068】
設定スイッチ(切替部)30により追尾撮影(天体自動追尾撮影)モードが設定された状態で、レリーズスイッチ28が押下されることで、処理がスタートする。
【0069】
ステップST1では、予備撮影の条件を算出する。予備撮影の条件は自動で計算される。予備撮影の条件は撮影光学系Lの焦点距離fに依存する。
【0070】
ステップST2では、予備撮影部21Aが、撮像素子駆動ユニット15による撮像素子13の駆動を停止した状態で、天体(追尾対象)が含まれる複数の予備画像を撮影する。予備画像は、短い露光時間で間隔を空けて少なくとも2枚を撮影する。
【0071】
ステップST3では、解析部21Bが、予備撮影部21Aが撮影した複数の予備画像における天体(追尾対象)の移動量(移動方向を含む概念)を算出する。
【0072】
ステップST4では、解析部21Bが、天体(追尾対象)の情報を検出できたか否かを判定する。すなわち、解析部21Bは、予備画像中に天体(追尾対象)を検出できたか否か、検出できた場合にこれらの移動量を算出できたか否かを判定する。天体(追尾対象)の情報を検出できた場合(ステップST4:Yes)は、ステップST5に進む。天体(追尾対象)の情報を検出できない場合(ステップST4:No)は、エラー発生と判定して、処理を終了する。
【0073】
ステップST5では、解析部21Bが、ステップST3で算出した複数の予備画像における天体の移動量に基づいて、緯度情報(緯度又はデジタルカメラ10が向けられている天体の赤緯を含んだ情報)と、傾き情報(デジタルカメラ10の水平軸又は垂直軸と赤経とがなす角度を示す情報)とを算出する。この算出に当たっては、撮影光学系Lの焦点距離情報fと、複数の予備画像の撮影時間間隔または1枚の予備画像の露光時間とが使用される。
【0074】
ステップST6では、演算部21Cが、ステップST5で解析部が算出した緯度情報(緯度又はデジタルカメラ10が向けられている天体の赤緯を含んだ情報)と傾き情報(デジタルカメラ10の水平軸又は垂直軸と赤経とがなす角度を示す情報)とに基づいて、天体(追尾対象)の動きに合わせて撮像素子13を駆動しながら追尾撮影を行うための追尾駆動制御情報(dX/dt、dY/dt、dθ/dt)を演算する。
【0075】
ステップST7では、追尾撮影部21Dが、ステップST6で演算部21Cが演算した追尾駆動制御情報(dX/dt、dY/dt、dθ/dt)に基づいて、天体(追尾対象)の動きに合わせて、撮像素子13を駆動しながら、長時間露光による追尾撮影(天体自動追尾撮影)を行う。すなわち、追尾撮影部21Dは、追尾撮影(天体自動追尾撮影)において、天体(追尾対象)の像を撮像素子13の撮像面14に対して固定させる。
【0076】
ステップST8では、追尾撮影部21Dが継続判定を行う。継続判定は、例えば、撮影光学系Lの焦点距離fが変更されることなく、デジタルカメラ10が動かされていない(向きが変更されていない)場合に「継続する」と判定され、それ以外の場合に「継続しない」と判定される。あるいは、予め定めた期間の追尾撮影(天体自動追尾撮影)が完了した場合に「継続する」と判定される。さらには撮影者が撮影を「継続する」と選択する。それ以外の場合に「継続しない」と判定される。「継続する」と判定された場合(ステップST8:Yes)は、ステップST7に戻って、追尾撮影(天体自動追尾撮影)を継続する。「継続しない」と判定された場合(ステップST8:No)は、処理を終了する。
【0077】
このように、本実施形態のデジタルカメラ10は、天体(追尾対象)が含まれる複数の予備画像を撮影する予備撮影部21Aと、複数の予備画像を解析する解析部21Bと、解析部21Bによる解析結果に基づいて追尾駆動制御情報(dX/dt、dY/dt、dθ/dt)を演算する演算部21Cと、追尾駆動制御情報(dX/dt、dY/dt、dθ/dt)に基づいて、天体(追尾対象)の動きに合わせて、撮影光学系Lと撮像素子13の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影部21Dとを有している。これにより、簡単な構成で、好適な自動追尾撮影を行うことが可能になる。
【0078】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記の実施形態において、添付図面に図示されている構成要素の大きさや形状、機能などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0079】
以上の実施形態では、日周運動によって撮影装置に対して相対移動する天体を追尾対象とする場合を例示して説明した。しかし、追尾対象は天体に限定されず、例えば、長時間露光した場合に撮影装置(撮像素子の撮像面)に対して相対移動するものであればよい。
【0080】
以上の実施形態では、天体自動追尾撮影を実行する撮影装置及び撮影方法について説明したが、本発明は、上記の撮影装置及び撮影方法による天体自動追尾撮影を補助する電子機器(例えば撮影補助PC)に適用することも可能である。当該電子機器は、撮影装置に接続されており、追尾対象が含まれる予備画像を解析する解析部と、解析部による解析結果に基づいて、追尾対象の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行うための追尾駆動制御情報を演算する演算部と、を有することができる。
【0081】
以上の実施形態では、天体自動追尾撮影を実行する撮影装置について説明したが、本発明は、撮影装置と、撮影装置を搭載する架台(例えば
図3Aに三脚として描いた架台10X)とを有する撮影システムに適用することも可能である。この撮影システムでは、例えば、撮影装置または架台が、追尾対象が含まれる予備画像を撮影する予備撮影部と、予備画像を解析する解析部と、解析部による解析結果に基づいて追尾駆動制御情報を演算する演算部と、追尾駆動制御情報に基づいて、追尾対象の動きに合わせて、架台を駆動しながら追尾撮影を行う追尾撮影部と、を有することができる。
【0082】
図14は、本実施形態の撮影システムISの外観構成の一例を示す図である。なお、撮影システムISによる撮影方法は、撮影システムISの各構成要素によって所定の処理ステップを実行することにより実現される。
【0083】
撮影システムISは、三脚(架台)10Xと、三脚10Xに搭載されるデジタルカメラ(撮影装置)10とを有している。デジタルカメラ10は、望遠鏡(主鏡)10Yに支持されている。三脚10Xは、望遠鏡10Yを支持する基部10Zを有している。そして、基部10Zには、デジタルカメラ10を支持する望遠鏡10Yを、デジタルカメラ10の撮影光学系Lの光軸LOと異なる方向に(例えば光軸LOと直交する平面内で)駆動する三脚側駆動部(架台側駆動部)10Z1が内蔵されている。これにより、デジタルカメラ10の撮像素子13が撮像素子駆動ユニット15によって駆動されない場合、あるいは、デジタルカメラ10に撮像素子駆動ユニット15が搭載されない場合でも、三脚側駆動部10Z1によって望遠鏡10Yひいてはデジタルカメラ10を駆動することで、天体自動追尾撮影(追尾撮影)を実行することが可能になる。すなわち、三脚側駆動部10Z1によって三脚10X(望遠鏡10Yひいてはデジタルカメラ10)を駆動することは、デジタルカメラ10の撮影光学系Lと撮像素子13の少なくとも一方を駆動することと等価である。なお、
図14に示すように、デジタルカメラ10と三脚10X(基部10Z)は、各種演算を実行可能な演算用PC50によって接続されていてもよい。
【0084】
撮影システムISでは、上述した
図2に示すように、デジタルカメラ10のCPU21が、予備撮影部21Aと、解析部21Bと、演算部21Cと、追尾撮影部21Dとを有していてもよい。あるいは、予備撮影部21Aと解析部21Bと演算部21Cと追尾撮影部21Dの一部又は全部を三脚10X(基部10Z)に設けてもよい。あるいは、演算用PC50を設ける場合には、予備撮影部21Aと解析部21Bと演算部21Cと追尾撮影部21Dの一部又は全部を演算用PC50に設けてもよい。
【0085】
以上の実施形態では、天体自動追尾撮影を実行するために、追尾駆動制御情報に基づいて、追尾対象である天体の動きに合わせて、撮像素子を光軸直交方向(光軸と異なる方向)に駆動する場合を例示して説明した。しかし、撮像素子に代えて(加えて)、撮影光学系を構成するレンズの全部又は一部、さらには撮影装置全体を光軸直交方向(光軸と異なる方向)に駆動してもよい。ここで、撮影装置全体を光軸直交方向(光軸と異なる方向)に駆動する態様は、
図14を参照して説明した、三脚側駆動部10Z1によって三脚10X(望遠鏡10Yひいてはデジタルカメラ10)を駆動する態様に相当する。すなわち、追尾駆動制御情報に基づいて、追尾対象である天体の動きに合わせて、撮影光学系と撮像素子の少なくとも一方を駆動しながら追尾撮影を行えばよい。
【符号の説明】
【0086】
10 デジタルカメラ(撮影装置)
10X 三脚(架台)
10Y 望遠鏡(主鏡)
10Z 基部
10Z1 三脚側駆動部(架台側駆動部)
13 撮像素子
21 CPU(Central Processing Unit)
21A 予備撮影部
21B 解析部
21C 演算部
21D 追尾撮影部
25 LCDモニタ(表示部)
30 設定スイッチ(切替部)
L 撮影光学系
IS 撮影システム