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特許7563043記録媒体搬送装置、画像形成装置、制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】記録媒体搬送装置、画像形成装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20241001BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20241001BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20241001BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B65H5/06 J
B65H7/14
B41J11/42
B41J2/01 305
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020138570
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034732
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健太
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-219466(JP,A)
【文献】特開2019-077558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
B65H 7/14
B41J 11/42
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送路に沿って搬送する複数の搬送手段と、
前記複数の搬送手段の動作を制御する複数の制御手段と、
前記搬送路におけるジャムの発生を検出するジャム検出手段と
を備え、
前記搬送手段は、
前記記録媒体のうち一の記録媒体を第一のタイミングで同時に保持可能な第1搬送手段と第2搬送手段とを有し、
前記第2搬送手段は、
前記第1搬送手段よりも前記搬送路における下流側に配置され、
前記複数の制御手段は、
前記ジャム検出手段によって前記ジャムの発生が検出された際に、前記搬送路において前記ジャムの発生個所よりも上流で搬送されていた前記記録媒体を、前記搬送路における所定の待機位置で待機させた後、当該記録媒体のたるみの発生を防止するための所定のたるみ発生防止制御として、前記複数の搬送手段のうち、前記第1搬送手段よりも前記第2搬送手段から順次動作させることにより、当該記録媒体の搬送を再開する
ことを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項2】
記録媒体を搬送路に沿って搬送する複数の搬送手段と、
前記複数の搬送手段の動作を制御する複数の制御手段と、
前記搬送路におけるジャムの発生を検出するジャム検出手段と
を備え、
前記複数の制御手段は、
前記ジャム検出手段によって前記ジャムの発生が検出された際に、前記搬送路において前記ジャムの発生個所よりも上流で搬送されていた前記記録媒体を、前記搬送路における所定の待機位置で待機させた後、当該記録媒体のたるみの発生を防止するための所定のたるみ発生防止制御によって前記複数の搬送手段を動作させることにより、当該記録媒体の搬送を再開し、
前記複数の搬送手段は、
前記記録媒体の搬送速度に追従して搬送動作可能な追従機構を有する
ことを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項3】
前記複数の制御手段は、
前記所定のたるみ発生防止制御として、前記複数の搬送手段を、所定の制御ブロック単位で、前記搬送路における下流側から順次動作させることにより、前記記録媒体の搬送を再開する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項4】
前記複数の制御手段は、
前記所定のたるみ発生防止制御として、前記記録媒体を前記所定の待機位置で待機させた後、当該記録媒体を保持している複数の前記搬送手段のうち、上流側の前記搬送手段の立ち上げ時間が、下流側の前記搬送手段の立ち上げ時間よりも長くなるように、前記複数の搬送手段を動作させることにより、当該記録媒体の搬送を再開する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項5】
前記複数の制御手段は、
前記所定のたるみ発生防止制御として、前記記録媒体を前記所定の待機位置で待機させた後、当該記録媒体を保持している複数の前記搬送手段のうち、上流側の前記搬送手段の線速が、下流側の前記搬送手段の線速よりも小さくなるように、前記複数の搬送手段を動作させることにより、当該記録媒体の搬送を再開する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項6】
前記複数の制御手段は、
前記所定のたるみ発生防止制御として、前記記録媒体を前記所定の待機位置で待機させた後、ジャムの発生し難い程度に低いモータ速度で、前記複数の搬送手段の動作を同時に開始させることにより、当該記録媒体の搬送を再開する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項7】
前記複数の制御手段は、
前記所定のたるみ発生防止制御として、前記記録媒体を前記所定の待機位置で待機させた後、前記複数の搬送手段の各々を、予め求めておいた駆動指示から駆動開始までの遅延時間を考慮したタイミングで駆動指示を行って、動作させることにより、当該記録媒体の搬送を再開する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項8】
前記搬送路において互いに隣接して設けられ、且つ、互いに異なる前記制御手段によって制御される、2つの搬送手段の少なくともいずれか一方に、前記記録媒体に対する接離機構を有する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項9】
前記所定の待機位置は、
前記記録媒体を湾曲させない位置である
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項10】
前記複数の制御手段は、
前記所定のたるみ発生防止制御によって前記記録媒体の搬送を再開した後、当該記録媒体を、正常に印刷が完了した記録媒体の排出場所と同じ場所に排出する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の記録媒体搬送装置。
【請求項11】
記録媒体を搬送路に沿って搬送する複数の搬送手段と、
前記複数の搬送手段の動作を制御する複数の制御手段と、
前記搬送路におけるジャムの発生を検出するジャム検出手段と
を備え、
前記搬送手段は、
前記記録媒体のうち一の記録媒体を第一のタイミングで同時に保持可能な第1搬送手段と第2搬送手段とを有し、
前記第2搬送手段は、
前記第1搬送手段よりも前記搬送路における下流側に配置され、
前記複数の制御手段は、
前記ジャム検出手段によって前記ジャムの発生が検出された際に、前記搬送路において前記ジャムの発生個所よりも上流で搬送されていた前記記録媒体を、前記搬送路における所定の待機位置で待機させた後、当該記録媒体のたるみの発生を防止するための所定のたるみ発生防止制御として、前記複数の搬送手段のうち、前記第1搬送手段よりも前記第2搬送手段から順次動作させることにより、当該記録媒体の搬送を再開する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
記録媒体を搬送路に沿って搬送する複数の搬送手段と、
前記複数の搬送手段の動作を制御する複数の制御手段と、
前記搬送路におけるジャムの発生を検出するジャム検出手段と
を備え、
前記複数の制御手段は、
前記ジャム検出手段によって前記ジャムの発生が検出された際に、前記搬送路において前記ジャムの発生個所よりも上流で搬送されていた前記記録媒体を、前記搬送路における所定の待機位置で待機させた後、当該記録媒体のたるみの発生を防止するための所定のたるみ発生防止制御によって前記複数の搬送手段を動作させることにより、当該記録媒体の搬送を再開し、
前記複数の搬送手段は、
前記記録媒体の搬送速度に追従して搬送動作可能な追従機構を有する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
記録媒体を搬送路に沿って搬送する複数の搬送手段と、
前記複数の搬送手段の動作を制御する複数の制御手段と、
前記搬送路におけるジャムの発生を検出するジャム検出手段と
を備えた記録媒体搬送装置の制御方法であって、
前記搬送手段は、
前記記録媒体のうち一の記録媒体を第一のタイミングで同時に保持可能な第1搬送手段と第2搬送手段とを有し、
前記第2搬送手段は、
前記第1搬送手段よりも前記搬送路における下流側に配置され、
前記複数の制御手段が、
前記ジャム検出手段によって前記ジャムの発生が検出された際に、前記搬送路において前記ジャムの発生個所よりも上流で搬送されていた前記記録媒体を、前記搬送路における所定の待機位置で待機させた後、当該記録媒体のたるみの発生を防止するための所定のたるみ発生防止制御として、前記複数の搬送手段のうち、前記第1搬送手段よりも前記第2搬送手段から順次動作させることにより、当該記録媒体の搬送を再開する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
記録媒体を搬送路に沿って搬送する複数の搬送手段と、
前記複数の搬送手段の動作を制御する複数の制御手段と、
前記搬送路におけるジャムの発生を検出するジャム検出手段と
を備えた記録媒体搬送装置の制御方法であって、
前記複数の制御手段が、
前記ジャム検出手段によって前記ジャムの発生が検出された際に、前記搬送路において前記ジャムの発生個所よりも上流で搬送されていた前記記録媒体を、前記搬送路における所定の待機位置で待機させた後、当該記録媒体のたるみの発生を防止するための所定のたるみ発生防止制御によって前記複数の搬送手段を動作させることにより、当該記録媒体の搬送を再開し、
前記複数の搬送手段は、
前記記録媒体の搬送速度に追従して搬送動作可能な追従機構を有する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項15】
記録媒体を搬送路に沿って搬送する複数の搬送手段と、
前記複数の搬送手段の動作を制御する複数の制御手段と、
前記搬送路におけるジャムの発生を検出するジャム検出手段と
を備え、
前記搬送手段は、
前記記録媒体のうち一の記録媒体を第一のタイミングで同時に保持可能な第1搬送手段と第2搬送手段とを有し、
前記第2搬送手段は、
前記第1搬送手段よりも前記搬送路における下流側に配置される、記録媒体搬送装置用のプログラムであって、
コンピュータを、
前記ジャム検出手段によって前記ジャムの発生が検出された際に、前記搬送路において前記ジャムの発生個所よりも上流で搬送されていた前記記録媒体を、前記搬送路における所定の待機位置で待機させた後、当該記録媒体のたるみの発生を防止するための所定のたるみ発生防止制御として、前記複数の搬送手段のうち、前記第1搬送手段よりも前記第2搬送手段から順次動作させることにより、当該記録媒体の搬送を再開する前記複数の制御手段
として機能させるプログラム。
【請求項16】
記録媒体を搬送路に沿って搬送する複数の搬送手段と、
前記複数の搬送手段の動作を制御する複数の制御手段と、
前記搬送路におけるジャムの発生を検出するジャム検出手段と
を備えた記録媒体搬送装置用のプログラムであって、
コンピュータを、
前記ジャム検出手段によって前記ジャムの発生が検出された際に、前記搬送路において前記ジャムの発生個所よりも上流で搬送されていた前記記録媒体を、前記搬送路における所定の待機位置で待機させた後、当該記録媒体のたるみの発生を防止するための所定のたるみ発生防止制御によって前記複数の搬送手段を動作させることにより、当該記録媒体の搬送を再開する前記複数の制御手段
として機能させ、
前記複数の搬送手段は、
前記記録媒体の搬送速度に追従して搬送動作可能な追従機構を有する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体搬送装置、画像形成装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ジャムが発生した際の残紙処理を簡易化する目的で、装置内に残留した用紙を全てその場で停止させるのではなく、該当の用紙が搬送可能かを判断し、用紙を正規の排出位置、またはジャム排出トレイに搬送して、ユーザが残紙処理する位置をなるべく集約化する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、画像形成装置等において、用紙の搬送路におけるジャムが発生した場合、ジャム発生個所の上流(例えば、両面搬送路)で搬送されていた用紙を、その下流でジャムが発生したことによって、排出できない場合がある。
【0004】
そこで、従来、ジャム発生個所の上流で搬送されていた用紙を、ジャム発生個所の上流の所定の待機位置で待機させておき、ジャム発生個所の用紙を取り除いた後に、残紙処理スイッチを押下することで、ジャム発生個所よりも上流の用紙を、所定の排出場所(例えば、パージトレイ)まで搬送するパージ制御を行う技術が知られている。
【0005】
しかしながら、従来技術では、ジャム発生個所よりも上流の用紙の搬送を再開させる際に、複数の制御手段によって複数の搬送モータを同時に駆動するため、各種要因(例えば、複数の制御手段の間の通信遅延、いずれかの制御手段における通信リトライ、搬送モータの立ち上がりの時間差等)によって、下流の搬送モータの動作が、上流の搬送モータの動作よりも遅れた場合、用紙のたるみやジャムが発生する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、一実施形態に係る記録媒体搬送装置は、記録媒体を搬送路に沿って搬送する複数の搬送手段と、複数の搬送手段の動作を制御する複数の制御手段と、搬送路におけるジャムの発生を検出するジャム検出手段とを備え、複数の制御手段は、ジャム検出手段によってジャムの発生が検出された際に、搬送路においてジャムの発生個所よりも上流で搬送されていた記録媒体を、搬送路における所定の待機位置で待機させた後、当該記録媒体のたるみの発生を防止するための所定のたるみ発生防止制御によって複数の搬送手段を動作させることにより、当該記録媒体の搬送を再開する。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態によれば、記録媒体のたるみやジャム等の不具合の発生を抑制できるように、ジャム発生後に再開される記録媒体の搬送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す図
図2】一実施形態に係る画像形成装置によるジャム発生時の用紙の排出動作を示す図
図3】一実施形態に係る画像形成装置のモータ駆動系の構成例を示すブロック図
図4】一実施形態に係る画像形成装置による用紙の無効紙および有効紙の判定条件を示す図
図5】一実施形態に係る画像形成装置によるたるみ発生防止制御の第1例を説明するための図
図6】一実施形態に係る画像形成装置によるたるみ発生防止制御の第2例を説明するための図
図7】一実施形態に係る画像形成装置における2つのモータの駆動速度の変化を示すグラフ
図8】一実施形態に係る画像形成装置において2つのモータによって用紙が搬送される様子を模式的に示す図
図9】一実施形態に係る画像形成装置における2つのモータの駆動速度の変化を示すグラフ
図10】一実施形態に係る画像形成装置において2つのモータによって用紙が搬送される様子を模式的に示す図
図11】一実施形態に係る画像形成装置において用紙のジャムが発生する条件を模式的に示す図
図12】一実施形態に係る画像形成装置における2つのモータの駆動速度の変化を示すグラフ
図13】一実施形態に係る画像形成装置が備える接離機構の動作を説明するための図
図14】一実施形態に係る画像形成装置が備える搬送ローラの構成例を示す図
図15】一実施形態に係る画像形成装置における所定の待機位置の変形例を示す図
図16】一実施形態に係る画像形成装置によるジャム発生時の用紙の排出動作の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
(画像形成装置100の全体構成)
図1は、一実施形態に係る画像形成装置100の全体構成を示す図である。図1に示す画像形成装置100は、「記録媒体搬送装置」および「画像形成装置」の一例であり、少なくとも、記録媒体を搬送する機能と、記録媒体に対して画像を形成する機能とを備える装置である。画像形成装置100としては、例えば、スキャン機能、プリンタ機能、FAX機能等を有する、MFP(Multifunction Peripheral/Product/Printer)等が挙げられる。
【0011】
図1に示すように、画像形成装置100は、本体装置110、媒体供給装置130A、塗布装置130B、および反転装置130Cを備える。媒体供給装置130A、塗布装置130B、および反転装置130Cは、いずれも、本体装置110に対して付随的に設けられている、サブユニット130である。
【0012】
媒体供給装置130Aは、複数の記録媒体を保持する。また、媒体供給装置130Aは、印刷が行われる記録媒体を、当該記録媒体の主搬送路101Aへ送出する。本実施形態では、記録媒体の一例として、用紙Pを用いている。媒体供給装置130Aは、サイズ等が異なる複数種類の用紙Pを保持および送出することができる。主搬送路101Aは、媒体供給装置130Aから、塗布装置130B、本体装置110、および反転装置130Cへと通じる。主搬送路101Aは、各装置が備える複数の搬送ローラ102(「搬送手段」の一例)によって、用紙Pが搬送される。
【0013】
塗布装置130Bは、媒体供給装置130Aから主搬送路101Aへ送出された用紙Pの表面に対して、処理液を塗布する。そして、塗布装置130Bは、処理液が塗布された用紙Pを、主搬送路101Aを介して、本体装置110へ搬送する。
【0014】
本体装置110は、用紙Pの表面に画像を形成する。本体装置110は、画像形成手段111、ドラム112、およびパージトレイ113を有する。
【0015】
画像形成手段111は、複数のインク色毎に、インクジェット方式によってインクを吐出可能な液体吐出ヘッド(図示省略)を有する。画像形成手段111は、ドラム112によって当該画像形成手段111と対向する位置に搬送された用紙Pの表面に対して、複数の液体吐出ヘッドによって複数色のインクを吐出することにより、用紙Pの表面にカラー画像を形成する。
【0016】
ドラム112は、回転することによって、下流側の主搬送路101Aから搬送されてきた画像形成前の用紙Pを、画像形成手段111による画像形成装置に搬送し、画像が形成された用紙Pを、下流側の主搬送路101Aへ搬送する。本体装置110は、画像形成手段111によって画像が形成された用紙Pを、下流側の主搬送路101Aを介して、反転装置130Cへ搬送する。
【0017】
パージトレイ113は、ドラム112の下側に設けられている。パージトレイ113は、両面印刷の場合に主搬送路101A等において用紙Pのジャムが発生した際に、本体装置110の両面搬送路101Bに残存する後続の複数の用紙P'が排出される。両面搬送路101Bは、両面印刷の場合に、反転装置130Cから反転後の用紙Pが供給され、当該反転後の用紙Pを、上流側の主搬送路101Aへ搬送する。なお、両面印刷の場合に主搬送路101A等において用紙Pのジャムが発生した場合、両面搬送路101Bに残存する複数の用紙P'は、その先頭の用紙P'が所定の待機位置WPに位置するまで、両面搬送路101Bにて搬送される。
【0018】
また、本体装置110における主搬送路101Aおよび両面搬送路101Bの各々には、複数の用紙センサ115が設けられている。各用紙センサ115は、例えば光学センサであり、主搬送路101Aまたは両面搬送路101Bを搬送される用紙Pまたは用紙P'を検知する。
【0019】
反転装置130Cは、両面印刷の場合に、本体装置110から主搬送路101Aを介して搬送されてくる用紙P(すなわち、片面印刷が完了した用紙P)を反転させる。そして、反転装置130Cは、反転後の用紙Pを、本体装置110の両面搬送路101Bへ供給する。
【0020】
(用紙P'の排出動作)
図2は、一実施形態に係る画像形成装置100によるジャム発生時の用紙P'の排出動作を示す図である。図2に示すように、一実施形態に係る画像形成装置100では、両面印刷の場合において、主搬送路101A等において用紙Pのジャムが発生した場合、両面搬送路101Bに残存する複数の用紙P'が、その先頭の用紙P'が所定の待機位置WPに位置するまで、両面搬送路101Bを搬送される(図中矢印A)。そして、複数の用紙P'は、ジャムの発生した用紙Pが取り除かれるまで、その先頭の用紙Pが所定の待機位置WPに位置した状態で、両面搬送路101Bにて待機する。その後、一実施形態に係る画像形成装置100では、作業者によってジャムの発生した用紙Pが取り除かれた後、作業者によって残紙処理スイッチを押下されると、両面搬送路101Bにて待機していた複数の用紙P'が、複数の搬送ローラ102によって、パージトレイ113へ搬送される(図中矢印B)。この際、複数の搬送ローラ102は、所定のたるみ発生防止制御が行われることによって、複数の用紙P'のジャムの発生を抑制することができる。
【0021】
(モータ駆動系の構成例)
図3は、一実施形態に係る画像形成装置100のモータ駆動系の構成例を示すブロック図である。
【0022】
図3に示すように、本体装置110は、作像本体制御部121、複数の駆動制御部122、複数のドライバ123、複数のモータ124、ジャム検出部125、および判定部126を備える。作像本体制御部121は、シリアル通信を介して、サブユニット130のサブユニット制御部131と通信を行うことが可能である。また、作像本体制御部121は、シリアル通信を介して、複数の駆動制御部122の各々と通信を行うことが可能である。複数の駆動制御部122は、「複数の制御手段」の一例である。各駆動制御部122は、当該駆動制御部122に従属する複数のドライバ123へ制御信号を送信することにより、当該駆動制御部122に従属する複数のモータ124(すなわち、本体装置110が有する複数の搬送ローラ102)を駆動することができる。ジャム検出部125は、「ジャム検出手段」の一例である。ジャム検出部125は、本体装置110が備える複数の用紙センサ115の何れかで用紙Pまたは用紙P'が所定のタイミングで検知されなかった場合、主搬送路101Aまたは両面搬送路101Bにおいて用紙Pまたは用紙P'のジャムが発生したことを検出する。判定部126は、ジャム検出部125によってジャムが検出されたときに、所定の判定条件(図4参照)に基づいて、画像形成装置100内に残されている用紙Pを、無効紙または有効紙のいずれとするかを判断することができる。
【0023】
一方、図3に示すように、サブユニット130(媒体供給装置130A、塗布装置130B、および反転装置130C)は、サブユニット制御部131、駆動制御部132、複数のドライバ133、および複数のモータ134を備える。サブユニット制御部131は、シリアル通信を介して、本体装置110の作像本体制御部121と通信を行うことが可能である。また、サブユニット制御部131は、シリアル通信を介して、駆動制御部132と通信を行うことが可能である。駆動制御部132は、当該駆動制御部132に従属する複数のドライバ133へ制御信号を送信することにより、当該駆動制御部132に従属する複数のモータ134(すなわち、サブユニット130が有する複数の搬送ローラ102)を駆動することができる。
【0024】
なお、上記した画像形成装置100の各制御部は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記した画像形成装置100の各制御部を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0025】
(用紙Pの無効紙および有効紙の判定条件)
図4は、一実施形態に係る画像形成装置100による用紙Pの無効紙および有効紙の判定条件を示す図である。図4に示すように、一実施形態に係る画像形成装置100では、本体装置110の判定部126が、塗布装置130Bによる先塗りの有無、印字状態、および印刷種類(片面印刷または両面印刷)に応じて、用紙Pを無効紙または有効紙のいずれとするかを判断することができる。
【0026】
例えば、図4に示す例では、判定部126は、塗布装置130Bによる先塗りを要する場合において、ジャム発生時に、先塗りがなされていない用紙Pについては、「有効紙」と判断する。
【0027】
また、例えば、図4に示す例では、判定部126は、塗布装置130Bによる先塗りを要する場合において、ジャム発生時に、既に先塗りがなされている用紙Pについては、「無効紙」と判断する。但し、既に印字が完了している用紙Pについては、「有効紙」と判断する。
【0028】
また、例えば、図4に示す例では、判定部126は、塗布装置130Bによる先塗りを要しない場合において、ジャム発生時に、印字が開始されていない用紙Pについては、「有効紙」と判断する。
【0029】
また、例えば、図4に示す例では、判定部126は、塗布装置130Bによる先塗りを要しない場合において、ジャム発生時に、印字中の用紙Pについては、「無効紙」と判断する。
【0030】
また、例えば、図4に示す例では、判定部126は、塗布装置130Bによる先塗りを要しない場合において、ジャム発生時に、既に印字が完了している用紙Pについては、「有効紙」と判断する。但し、両面印刷の場合において片面のみ印字が完了している用紙Pについては、「無効紙」と判断する。
【0031】
(たるみ発生防止制御の第1例)
図5は、一実施形態に係る画像形成装置100によるたるみ発生防止制御の第1例を説明するための図である。
【0032】
この第1例では、本体装置110が備える複数の駆動制御部122は、ジャム発生時に、両面搬送路101Bに残存する複数の用紙P'を所定の待機位置WPで待機させた後、複数の搬送ローラ102を、両面搬送路101Bにおける下流側から順次動作させることにより、当該複数の用紙P'の搬送を再開する。
【0033】
図5に示す例では、本体装置110は、複数のモータ124を有する。具体的には、本体装置110は、主搬送路101Aに、3つのモータ124A1~A3を有する。また、本体装置110は、両面搬送路101Bに、9つのモータ124B1~B9を有する。
【0034】
図5に示す複数のモータ124は、本体装置110が備える複数の駆動制御部122(図3参照)によって制御される。このため、複数の駆動制御部122によって複数のモータ124の駆動を同時に開始したとしても、通信遅延やモータ立ち上がり時間差により、いずれかのモータ124の駆動が遅延する虞がある。この場合、下流側のモータ124の駆動が遅延すると、用紙P'にたるみおよびジャムが発生する虞がある。
【0035】
そこで、この第1例では、一実施形態に係る画像形成装置100では、複数の駆動制御部122が、複数のモータ124を、下流側のモータ124から順次時間差をつけて駆動を開始することにより、複数の用紙P'のひっぱり方向の力で制御する。例えば、複数の駆動制御部122は、モータ124A3,モータ124A2,モータ124A1,モータ124B9,モータ124B8,モータ124B7,・・・の順に、駆動を開始する。これにより、一実施形態に係る画像形成装置100は、複数の用紙P'のたるみを抑制しつつ、複数の用紙P'をパージトレイ113へ搬送することができる。なお、両面搬送路101Bに待機している複数の用紙P'は、片面しか印刷されていない無効紙であるため(図4参照)、ひっぱり方向の力が加わって印刷面に擦過傷が生じても問題ない。
【0036】
なお、このたるみ発生防止制御の第1例は、用紙P'が「無効紙」である場合に、実行されることが好ましい。そこで、複数の駆動制御部122は、判定部126によって用紙P'が「無効紙」と判断された場合にのみ(図4参照)、このたるみ発生防止制御の第1例を実行するようにしてもよい。
【0037】
(たるみ発生防止制御の第2例)
図6は、一実施形態に係る画像形成装置100によるたるみ発生防止制御の第2例を説明するための図である。
【0038】
この第2例では、本体装置110が備える複数の駆動制御部122は、ジャム発生時に、両面搬送路101Bに残存する複数の用紙P'を所定の待機位置WPで待機させた後、複数の搬送ローラ102を、所定の制御ブロック毎に、両面搬送路101Bにおける下流側から順次動作させることにより、当該複数の用紙P'の搬送を再開する。
【0039】
図6に示す例では、本体装置110は、複数のモータ124を有する。具体的には、本体装置110は、主搬送路101Aに、3つのモータ124A1~A3を有する。また、本体装置110は、両面搬送路101Bに、9つのモータ124B1~B9を有する。複数のモータ124は、5つの制御ブロックB1~B5に分類されている。制御部ブロックB1は、モータ124A1,A2を含む。制御部ブロックB2は、モータ124A3を含む。制御部ブロックB3は、モータ124B1,B2を含む。制御部ブロックB4は、モータ124B3,B4を含む。制御部ブロックB5は、モータ124B5~B9を含む。
【0040】
この第2例では、一実施形態に係る画像形成装置100では、複数の駆動制御部122が、複数のモータ124を、下流側のモータ124から制御ブロック毎に順次時間差をつけて駆動を開始することにより、複数の用紙P'のひっぱり方向の力で制御する。例えば、複数の駆動制御部122は、制御ブロックBK2,制御ブロックBK1,制御ブロックBK5,制御ブロックBK4,制御ブロックBK3の順に、駆動を開始する。これにより、一実施形態に係る画像形成装置100は、複数の用紙P'のたるみを抑制しつつ、複数の用紙P'をパージトレイ113へ搬送することができる。
【0041】
なお、このたるみ発生防止制御の第2例は、用紙P'が「無効紙」である場合に、実行されることが好ましい。そこで、複数の駆動制御部122は、判定部126によって用紙P'が「無効紙」と判断された場合にのみ(図4参照)、このたるみ発生防止制御の第2例を実行するようにしてもよい。
【0042】
(たるみ発生防止制御の第3例)
次に、図7および図8を参照して、一実施形態に係る画像形成装置100によるたるみ発生防止制御の第3例を説明する。図7は、一実施形態に係る画像形成装置100における2つのモータ124の駆動速度の変化を示すグラフである。図8は、一実施形態に係る画像形成装置100において2つのモータ124によって用紙P'が搬送される様子を模式的に示す図である。
【0043】
この第3例では、本体装置110が備える複数の駆動制御部122は、複数の用紙P'を所定の待機位置WPで待機させた後、一の用紙P'を保持している複数のモータ124(搬送ローラ102)のうち、上流側のモータ124の立ち上げ時間が、下流側のモータ124の立ち上げ時間よりも長くなるように、複数のモータ124を動作させることにより、当該一の用紙P'の搬送を再開する。具体的には、複数の駆動制御部122は、図7および図8に示すように、上流側のモータ124の立ち上がり時の加速度を、下流側のモータ124の立ち上がり時の加速度よりも小さくする。
【0044】
これにより、一実施形態に係る画像形成装置100は、一の用紙P'をひっぱり方向の力で制御することができる。したがって、一実施形態に係る画像形成装置100は、複数の用紙P'に対して同様の制御を行うことにより、複数の用紙P'のたるみを抑制しつつ、複数の用紙P'をパージトレイ113へ搬送することができる。
【0045】
なお、このたるみ発生防止制御の第3例は、用紙P'が「無効紙」である場合に、実行されることが好ましい。そこで、複数の駆動制御部122は、判定部126によって用紙P'が「無効紙」と判断された場合にのみ(図4参照)、このたるみ発生防止制御の第3例を実行するようにしてもよい。
【0046】
(たるみ発生防止制御の第4例)
次に、図9および図10を参照して、一実施形態に係る画像形成装置100によるたるみ発生防止制御の第4例を説明する。図9は、一実施形態に係る画像形成装置100における2つのモータ124の駆動速度の変化を示すグラフである。図10は、一実施形態に係る画像形成装置100において2つのモータ124によって用紙P'が搬送される様子を模式的に示す図である。
【0047】
この第4例では、本体装置110が備える複数の駆動制御部122は、複数の用紙P'を所定の待機位置WPで待機させた後、一の用紙P'を保持している複数のモータ124(搬送ローラ102)のうち、上流側のモータ124の線速が、下流側のモータ124の線速よりも小さくなるように、複数のモータ124を動作させることにより、当該一の用紙P'の搬送を再開する。これにより、一実施形態に係る画像形成装置100は、一の用紙P'をひっぱり方向の力で制御することができる。
【0048】
その後、一の用紙P'が搬送されることによって、一の用紙P'を保持する2つのモータ124が変更された場合、複数の駆動制御部122は、新たに一の用紙P'を保持する2つのモータ124に対して、同様の制御(線速を異ならせる制御)を行う。これにより、一実施形態に係る画像形成装置100は、一の用紙P'を常にひっぱり方向の力で制御することができる。
【0049】
一実施形態に係る画像形成装置100は、複数の用紙P'に対して同様の制御を行うことにより、複数の用紙P'のたるみを抑制しつつ、複数の用紙P'をパージトレイ113へ搬送することができる。
【0050】
なお、このたるみ発生防止制御の第4例は、用紙P'が「無効紙」である場合に、実行されることが好ましい。そこで、複数の駆動制御部122は、判定部126によって用紙P'が「無効紙」と判断された場合にのみ(図4参照)、このたるみ発生防止制御の第4例を実行するようにしてもよい。
【0051】
(たるみ発生防止制御の第5例)
次に、図11を参照して、一実施形態に係る画像形成装置100によるたるみ発生防止制御の第5例を説明する。図11は、一実施形態に係る画像形成装置100において用紙P'のジャムが発生する条件を模式的に示す図である。
【0052】
この第5例では、本体装置110が備える複数の駆動制御部122は、複数の用紙P'を所定の待機位置WPで待機させた後、ジャムの発生し難い程度に低い搬送速度となるように、複数のモータ124の動作を同時に開始させることにより、当該複数の用紙P'の搬送を再開する。
【0053】
例えば、図11に示すように、下流側の搬送ローラ102が停止している状態で、上流側の搬送ローラ102が駆動した場合、上流側の搬送ローラ102による用紙P'の搬送量(ジャム発生搬送量)が搬送路ギャップ[mm]*2を超えたとき、ジャムが発生する。これに鑑みれば、例えば、「ジャムの発生し難い程度に低い搬送速度」は、下記条件1を満たす搬送速度である。
【0054】
搬送速度<(搬送路ギャップ[mm]*2)/最大同時駆動遅延時間[s]・・・(条件1)
【0055】
例えば、図11に示すように、搬送路ギャップが4[mm]であり、且つ、最大同時駆動遅延時間が0.3[s]である場合、ジャム発生搬送量が8[mm]であり、「ジャムの発生し難い程度に低い搬送速度」は、26[mm/s]未満の搬送速度である。
【0056】
一実施形態に係る画像形成装置100は、このように算出された搬送速度となるように、複数のモータ124の動作を同時に開始させることにより、万が一、いずれかのモータ124の立ち上がりに遅延が生じた場合であっても、複数の用紙P'のジャムの発生を抑制しつつ、複数の用紙P'をパージトレイ113へ搬送することができる。
【0057】
なお、このたるみ発生防止制御の第5例は、用紙P'が「無効紙」または「有効紙」のいずれであっても、実行されることが好ましい。そこで、複数の駆動制御部122は、判定部126によって用紙P'が「無効紙」および「有効紙」のいずれと判断された場合であっても(図4参照)、このたるみ発生防止制御の第5例を実行するようにしてもよい。
【0058】
(たるみ発生防止制御の第6例)
次に、図12を参照して、一実施形態に係る画像形成装置100によるたるみ発生防止制御の第6例を説明する。図12は、一実施形態に係る画像形成装置100における2つのモータ124の駆動速度の変化を示すグラフである。
【0059】
この第6例では、本体装置110が備える複数の駆動制御部122は、複数の用紙P'を所定の待機位置WPで待機させた後、複数の搬送ローラ102の各々を、予め求めておいた駆動指示から駆動開始までの遅延時間を考慮したタイミングで駆動指示を行い、動作させることにより、複数の用紙P'の搬送を再開する。
【0060】
例えば、図12に示す例では、予め学習しておいた、上流側の搬送ローラ102の駆動指示から駆動開始までの遅延時間が、6[s]である。一方、下流側の搬送ローラ102の駆動指示から駆動開始までの遅延時間が、略0[s]である。このため、複数の駆動制御部122は、上流側の搬送ローラ102の駆動指示タイミングt1を、下流側の搬送ローラ102の駆動指示タイミングt2よりも、6[s]早める。これにより、図12に示すように、上流側の搬送ローラ102および下流側の搬送ローラ102が、略同時に駆動が開始される。これにより、一実施形態に係る画像形成装置100は、複数の用紙P'のたるみの発生を抑制しつつ、複数の用紙P'をパージトレイ113へ搬送することができる。
【0061】
なお、このたるみ発生防止制御の第6例は、用紙P'が「無効紙」または「有効紙」のいずれであっても、実行されることが好ましい。そこで、複数の駆動制御部122は、判定部126によって用紙P'が「無効紙」および「有効紙」のいずれと判断された場合であっても(図4参照)、このたるみ発生防止制御の第6例を実行するようにしてもよい。
【0062】
(接離機構102B)
図13は、一実施形態に係る画像形成装置100が備える接離機構102Bの動作を説明するための図である。図13に示す例では、本体装置110が備える2つの搬送ローラ102のうち、下流側の搬送ローラ102は、接離機構102Bを有する。これにより、下流側の搬送ローラ102は、用紙P'に接触した状態と、用紙P'から離間した状態との間で切り替わることができる。
【0063】
例えば、図13では、上流側の搬送ローラ102の立ち上がりが、下流側の搬送ローラ102の立ち上がりよりも遅延する場合の、接離機構102Bの動作を表している。
【0064】
この場合、一実施形態に係る画像形成装置100は、上流側の搬送ローラ102と下流側の搬送ローラ102との双方の立ち上がりが完了するまでの間は、下流側の搬送ローラ102を接離機構102Bによって離間状態にしておく。
【0065】
そして、一実施形態に係る画像形成装置100は、上流側の搬送ローラ102と下流側の搬送ローラ102との双方の立ち上がりが完了した状態で、下流側の搬送ローラ102を接離機構102Bによって接触状態にする。
【0066】
これにより、一実施形態に係る画像形成装置100は、回転速度の異なる2つの搬送ローラ102が同時に用紙P'に接触することを回避することができる。このため、一実施形態に係る画像形成装置100は、用紙P'にたるみや引っ張り方向の負荷を生じさせることなく、用紙P'を搬送することができる。
【0067】
なお、画像形成装置100は、少なくとも、互いに隣接し、且つ、互いに異なる駆動制御部122によって制御される、2つの搬送ローラ102に対し、このような接離機構102Bの制御を行うことが好ましい。この場合、2つの搬送ローラ102のいずれか一方に接離機構102Bが設けられてもよく、2つの搬送ローラ102の双方に接離機構102Bが設けられてもよい。2つの搬送ローラ102の双方に接離機構102Bが設ける場合には、2つの搬送ローラ102の双方の立ち上がりが完了するまでの間、上流側の搬送ローラ102のみ離間させてもよく、下流側の搬送ローラ102のみ離間させてもよく、2つの搬送ローラ102の双方を離間させてもよい。
【0068】
また、一の駆動制御部122によって制御される一の搬送ローラ102にのみ接離機構102Bが設けられてもよく、一の駆動制御部122によって制御される複数の搬送ローラ102に対して接離機構102Bが設けられてもよい。
【0069】
(搬送ローラ102の構成例)
図14は、一実施形態に係る画像形成装置100が備える搬送ローラ102の構成例を示す図である。図14に示す例では、搬送ローラ102のローラ軸にラチェット機構102Aが設けられている。ラチェット機構102Aは、「記録媒体の搬送速度に追従して搬送動作可能な追従機構」の一例である。
【0070】
これにより、一実施形態に係る画像形成装置100は、図14に例示するように、下流側の搬送ローラ102が停止している状態で、上流側の搬送ローラ102が駆動した場合、上流側の搬送ローラ102によって下流側に押し出された用紙P'に追従して、下流側の搬送ローラ102を空転させることができる(図中矢印A)。これにより、一実施形態に係る画像形成装置100は、用紙P'にたるみを生じさせることなく、用紙P'を、下流側の搬送ローラ102よりも下流側に搬送することができる。
【0071】
反対に、一実施形態に係る画像形成装置100は、上流側の搬送ローラ102が停止している状態で、下流側の搬送ローラ102が駆動した場合、下流側の搬送ローラ102によって下流側に引き出された用紙P'に追従して、上流側の搬送ローラ102が空転させることができる。これにより、一実施形態に係る画像形成装置100は、用紙P'に引っ張り方向の負荷によるダメージを与えることなく、用紙P'を、下流側の搬送ローラ102よりも下流側に搬送することができる。
【0072】
(所定の待機位置の変形例)
図15は、一実施形態に係る画像形成装置100における所定の待機位置の変形例を示す図である。図15に示す例では、本体装置110は、所定の待機位置WP(図1参照)の代わりに、所定の待機位置WP2を有する。図15に示すように、待機位置WP2は、当該待機位置WP2にて待機している用紙P'を湾曲させない位置である。例えば、図1に例示する画像形成装置100では、待機位置WPが用紙P'を湾曲させる位置であるため、待機位置WPにおける用紙P'の待機中に、用紙P'にカールが発生する虞がある。このように用紙P'にカールが生じた場合、用紙P'を再利用できなくなる場合がある。そこで、図15に例示する画像形成装置100は、用紙P'を湾曲させない待機位置WP2で用紙P'を待機させる。これにより、一実施形態に係る画像形成装置100は、用紙P'がカールが生じやすいものであっても、当該用紙P'の待機中におけるカールの発生を抑制することができる。
【0073】
(排出動作の変形例)
図16は、一実施形態に係る画像形成装置100によるジャム発生時の用紙P'の排出動作の変形例を示す図である。図16に例示する画像形成装置100では、両面印刷の場合において、主搬送路101A等において用紙Pのジャムが発生した場合、両面搬送路101Bに残存する複数の用紙P'が、その先頭の用紙P'が所定の待機位置WPに位置するまで、両面搬送路101Bを搬送される(図中矢印A)。そして、複数の用紙P'は、ジャムの発生した用紙Pが取り除かれるまで、その先頭の用紙Pが所定の待機位置WPに位置した状態で、両面搬送路101Bにて待機する。その後、図16に例示する画像形成装置100では、作業者によってジャムの発生した用紙Pが取り除かれた後、作業者によって残紙処理スイッチを押下されると、両面搬送路101Bにて待機していた複数の用紙P'が、ドラム112の下側を通過して(すなわち、ドラム112によって画像形成位置への搬送されるのを回避して)、反転装置130Cへ搬送される(図中矢印B,C)。そして、反転装置130Cへ搬送された複数の用紙P'は、反転装置130Cにより、正常に印刷が完了した用紙Pの排出場所と同じ場所に排出される(図中矢印D,E)。これにより、作業者は、正常に印刷が完了した用紙Pの排出場所と同じ場所で、複数の用紙P'の処理を行うことができる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
100 画像形成装置
101A 主搬送路
101B 両面搬送路
102 搬送ローラ
102A ラチェット機構
102B 接離機構
110 本体装置
111 画像形成手段
112 ドラム
113 パージトレイ
115 用紙センサ
121 作像本体制御部
122 駆動制御部
123 ドライバ
124 モータ
125 ジャム検出部
126 判定部
130 サブユニット
130A 媒体供給装置
130B 塗布装置
130C 反転装置
131 サブユニット制御部
132 駆動制御部
133 ドライバ
134 モータ
P,P' 用紙
WP,WP2 待機位置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【文献】特開2019-101105号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16