(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】光偏向器、偏向装置、物体認識装置、画像投影装置、及び移動体
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20241001BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20241001BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241001BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20241001BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20241001BHJP
G02B 27/01 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
B60R11/02 C
B81B3/00
B60K35/23
G02B27/01
(21)【出願番号】P 2020167189
(22)【出願日】2020-10-01
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2019214515
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】赤沼 悟一
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-215534(JP,A)
【文献】特開2019-159257(JP,A)
【文献】特開2018-010276(JP,A)
【文献】特開2015-176052(JP,A)
【文献】特開2012-133242(JP,A)
【文献】特開2017-097304(JP,A)
【文献】特開2011-095331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0327946(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08,26/10
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射するミラー部と、
前記ミラー部と一端が接続されており前記ミラー部を支持する1対の支持部と、
各々の前記支持部の他端と接続されており、前記支持部を変形させて前記ミラー部を第1軸を中心に回動させる1対の駆動梁と、
前記支持部と前記駆動梁とを接続する接続部と、
を有し、
前記接続部には、前記1対の支持部の長手方向と交差する方向を長手とするリブが設けられており、
前記1対の駆動
梁を駆動していないときの前記ミラー部の反射面と平行な平面を、前記1対の支持部の長手方向と平行な直線で二分したとき、前記1対の駆動
梁は、前記二分された平面の何れか一方に配置されていることを特徴とする光偏向器。
【請求項2】
前記リブは前記第1軸と直交する方向に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光偏向器。
【請求項3】
前記リブは、前記接続部において、前記ミラー部と接続されている側とは反対側に寄って設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光偏向器。
【請求項4】
前記駆動梁を支持する枠部を有し、
前記駆動梁、前記接続部、前記支持部及び前記ミラー部からなる部材は、前記枠部に片持ち支持されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光偏向器。
【請求項5】
前記接続部は、前記第1軸よりも前記駆動梁側の第1の領域で前記駆動梁と接続されており、
前記接続部において、前記第1の領域とは反対の第2の領域には、前記駆動梁と前記枠部とが接続されている部分に対し反対側に出っ張った凸部を有しており、
前記凸部の前記支持部側には、フィレット形状を有する第1のフィレット部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の光偏向器。
【請求項6】
前記接続部の前記第1の領域の前記支持部側には、フィレット形状を有する第2のフィレット部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の光偏向器。
【請求項7】
前記リブは、前記第2のフィレット部の最も前記駆動梁側の端点から前記第1軸方向に沿った仮想線に対して跨るように設けられていることを特徴とする請求項6に記載の光偏向器。
【請求項8】
前記接続部の前記第1の領域の前記支持部側には、フィレット形状を有する第2のフィレット部が設けられており、
前記第1のフィレット部におけるフィレット形状の曲率と、前記第2のフィレット部におけるフィレット形状の曲率と、は異なることを特徴とする請求項5に記載の光偏向器。
【請求項9】
前記第1のフィレット部におけるフィレット形状は、楕円弧であることを特徴とする請求項5から8のいずれか1項に記載の光偏向器。
【請求項10】
前記第1のフィレット部におけるフィレット形状は、円弧であって、前記円弧の中心に対し90度以下の範囲に形成されていることを特徴とする請求項5から9のいずれか1項に記載の光偏向器。
【請求項11】
前記枠部は可動枠であって、
前記可動枠と一端が接続されており前記可動枠を前記第1軸と直交する第2軸を中心に回動可能に支持する1対の可動枠支持部と、
前記可動枠支持部の他端が接続された固定枠と、
を有することを特徴とする請求項4から10のいずれかに記載の光偏向器。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の光偏向器と、
光源と、
を備えた偏向装置。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか1項に記載の光偏向器を備える物体認識装置。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか1項に記載の光偏向器を備える画像投影装置。
【請求項15】
請求項13に記載の物体認識装置、請求項14に記載の画像投影装置の少なくとも1つを有する移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向器、偏向装置、物体認識装置、画像投影装置、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造技術を応用したマイクロマシニング技術の発達に伴い、シリコンまたはガラスを微細加工して製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスの開発が進んでいる。
【0003】
MEMSデバイスは、例えば、圧電アクチュエータでミラー部を駆動(回動)させる光偏向器として利用できる。圧電アクチュエータは、例えば、反射面を設けたミラー部とトーションバーと梁部(弾性梁)とをウエハ上に一体に形成し、梁部上に薄膜化した圧電材料を積層した構造である。
【0004】
上記のような光偏向器の一例として、ミラー部の限界振れ角を大きくすることが可能な光偏向器が開示されている(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている光偏向器は、周回リブと突出リブとを有している。しかし、この光偏向器では、突出リブが可動部を形成する枠部の周回リブと連続しているため、トーションバーのねじれ変形が抑制され、ミラー部のねじり共振モードの阻害が生じる。このため、ミラー部の振幅(振幅感度)を大きくすることが困難であり、所望の高画角化を達成することはできない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、光偏向器の破壊限界角を拡大し、所望の高画角化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の一態様に係る光偏向器は、光を反射するミラー部と、前記ミラー部と一端が接続されており前記ミラー部を支持する1対の支持部と、各々の前記支持部の他端と接続されており、前記支持部を変形させて前記ミラー部を第1軸を中心に回動させる1対の駆動梁と、前記支持部と前記駆動梁とを接続する接続部と、を有し、前記接続部には、前記1対の支持部の長手方向と交差する方向を長手とするリブが設けられており、前記1対の駆動梁を駆動していないときの前記ミラー部の反射面と平行な平面を、前記1対の支持部の長手方向と平行な直線で二分したとき、前記1対の駆動梁は、前記二分された平面の何れか一方に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、光偏向器の破壊限界角を拡大し、所望の高画角化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態における光偏向器の上面図である。
【
図2】第1の実施形態における光偏向器の裏面図である。
【
図3】接続部リブ長と接続部における破壊振幅の相関図である。
【
図4】第1の実施形態における光偏向器の接続部リブの説明図(1)である。
【
図5】第1の実施形態における光偏向器の接続部リブの説明図(2)である。
【
図6】第2の実施形態における光偏向器の上面図である。
【
図7】第2の実施形態における光偏向器の裏面図である。
【
図8】第2の実施形態における光偏向器の変形例の裏面図である。
【
図9】第3の実施形態における光偏向器の上面図である。
【
図10】第3の実施形態における光偏向器の裏面図である。
【
図11】第3の実施形態における光偏向器の変形例の裏面図である。
【
図12】第4の実施形態における光偏向器の上面図である。
【
図14】光走査システムの一例のハードウェア構成図である。
【
図16】光走査システムに係る処理の一例のフローチャートである。
【
図17】ヘッドアップディスプレイ装置を搭載した自動車の一例の概略図である。
【
図18】ヘッドアップディスプレイ装置の一例の概略図である。
【
図19】光書込装置を搭載した画像形成装置の一例の概略図である。
【
図21】レーザレーダ装置を搭載した自動車の一例の概略図である。
【
図23】パッケージングされた光偏向器の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〔第1の実施形態〕
近年、画像形成装置等に用いられる光偏向器には、画像形成装置等を高画質化するために、ミラー部の大振幅化、及びミラー部の高解像度化が求められている。
【0012】
ミラー部を大振幅化すると、ミラー部の振幅に比例してミラー部の回転加速度が大きくなる。即ち、ミラー部の振幅が増加すると、それに伴ってミラー部を支持するトーションバー及び固定部にかかる応力が大きくなる。トーションバー及び固定部への応力が大きくなり、ミラー部の振幅がトーションバー及び固定部の破壊が生じるミラー振幅限界角に達すると、光偏向器は破壊に至る。
【0013】
また、ミラー部を高解像度化するためには走査線を多くする必要があり、そのためにはミラー部の駆動周波数(共振周波数)を高くする必要がある。ミラー部の共振周波数が高くなると、周波数の二乗に比例してミラー部の回転加速度が大きくなる。従って、ミラー部の振幅が同じであっても、ミラー部の周波数が高くなると、ミラー部を支持するトーションバー及び固定部への負荷は急激に増大する。そして、トーションバー及び固定部への負荷が、トーションバー及び固定部の破壊強度を超えると、光偏向器は破壊に至る。
【0014】
また、従来の片持ち構造の光偏向器では、トーションバーを片持ち支持する駆動梁(梁部)との接続部において駆動梁の先端側は開放されている。そのため、ミラー部の周波数が高くなると、トーションバーと駆動梁との接続部において変形が大きくなりやすい。このため、トーションバーと駆動梁との接続部がトーションバーのねじりによる負荷に耐え切れずに光偏向器が破壊されやすい傾向にある。
【0015】
本実施形態における光偏向器は、トーションバーと駆動梁(梁部)とを接続する接続部にリブ構造を有する。リブ構造は、ミラー部の大振幅化及び高周波数化に伴う負荷増大による接続部の変形を抑制して接続部の応力を緩和するため、光偏向器の破壊限界角を拡大できる。
【0016】
(光偏向器)
第1の実施形態における光偏向器について、
図1及び
図2に基づき説明する。尚、
図1は、本実施形態における光偏向器の上面図であり、
図2は、裏面図である。
【0017】
本実施形態における光偏向器は、光を反射する反射面14を有するミラー部110を備えており、このミラー部110の両側にはトーションバー120が接続されている。トーションバー120は、トーションバースプリングとも呼ばれるが、本願においては、トーションバー120と記載する。
【0018】
トーションバー120の一方の端部120aは、ミラー部110に接続されており、一方の端部120aとは反対の他方の端部120bは、接続部140を介して、駆動梁130と接続されている。駆動梁130は、トーションバー120の軸方向(即ち、X軸方向)の両側に配置されている。本願においては、対象物の一方の端部を一端と記載し、他方の端部を他端と記載する場合がある。
【0019】
駆動梁130は、シリコン基板等により形成された基体の梁部131の上に、圧電材料132が積層された構造である。駆動梁130は、例えば、平板短冊状のユニモルフ構造である。駆動梁130の一方の端部は、固定枠150に接続されており、他方の端部は、接続部140を介して、トーションバー120の他方の端部120bに接続されている。本願においては、固定枠150を枠部と記載する場合がある。
【0020】
このような構造の光偏向器において、ミラー部110の回動軸となる第1軸、即ち、1対のトーションバー120の中心軸に対して、片側に設けられた駆動梁130は、ミラー部110及びトーションバー120を支持している。駆動梁130は、例えば、第1軸に対し-Y側に位置している。本実施形態における光偏向器は、駆動梁130が固定枠150に片持ち支持された片持ち構造である。
【0021】
本実施形態においては、トーションバー120のねじれ中心軸方向、即ち、ミラー部110の第1軸方向をX軸方向、ミラー部110の反射面14の法線をZ軸方向、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向をY軸方向とする。また、シリコン基板等により形成された基体において、トーションバー120と駆動梁130とが接続されている接続部分を接続部140とする。
【0022】
本実施形態における光偏向器においては、ミラー部110の裏面にミラー部リブ111が設けられており、接続部140の裏面に接続部リブ141が設けられている。接続部リブ141は、回動軸である第1軸に対し交差する方向、好ましくは第1軸と直交するY軸方向に伸びるように形成されている。このように接続部140の裏面に形成された接続部リブ141により、接続部140における変形が抑制されるため、ミラー部110の回動時における接続部140の応力が低減され、光偏向器の破壊限界角を大きくすることができる。その結果、ミラー部110を大振幅で回動することが可能となる。
【0023】
ここで、駆動梁130と接続部140との接続部分の境界となる接続線を、フィレット形状の固定端側フィレット142の最も駆動梁130側の端点から第1軸方向に沿った仮想線Kとする。本実施形態においては、この仮想線K上に接続部リブ141を設けることにより破壊に対する接続部140の強度を高めることができる。接続部リブ141は、固定端側フィレット142の最も駆動梁130側の端からX軸方向となる第1軸方向に沿った仮想線Kを跨ぐように設けられている。
【0024】
接続部140及び駆動梁130に、第1軸に直交するY軸方向に伸びる接続部リブ141を設けることにより、大振幅化及び高周波数化に伴う負荷増大による接続部140の変形が抑制され、接続部140の応力が緩和される。これにより、光偏向器の破壊限界角を拡大することができる。
【0025】
本実施形態における光偏向器では、MEMSプロセスによってシリコン基板を加工することにより、ミラー部110、トーションバー120、及び駆動梁130を一体で形成している。ミラー部110の反射面14は、例えば、シリコン基板の表面にアルミニウムまたは銀などの金属の薄膜を成膜することで形成する。
【0026】
駆動梁130は、トーションバー120とミラー部110を片側から支持した片持ち構造であり、駆動梁130の+Y側の先端は自由端である。そのため、ミラー部110は、回動する際に余計な制約を受けることなく大きな振幅で回動することができる。これにより、駆動梁130の曲げにより発生する力を効率よくトーションバー120の捻り方向の変形に伝えることができる。
【0027】
図1及び
図2に示される片持ち構造の光偏向器は、駆動梁130の曲げ共振とトーションバー120のねじれ共振を適切に設計することにより、駆動感度(印加電圧に対する振幅角)を十分に大きくすることが可能である。従って、片持ち構造の光偏向器において、実現可能な振幅角は、シリコン構造体の強度に起因する破壊限界角が制約となる。
【0028】
従って、光偏向器の強度限界(破壊応力)は材料(Si)で決まってしまうため、回動時に発生する応力が破壊応力より低くなるように構造設計を最適化する必要がある。本実施形態における光偏向器では、前述のように接続部140の裏面に、接続部リブ141を設けた構造とすることにより、ミラー部110の回動時に接続部140に発生する応力を抑制し、光偏向器の破壊限界角を増大することが可能である。
【0029】
尚、接続部140の裏面に接続部リブ141が設けられていない構造の光偏向器では、接続部において、駆動梁が設けられている側に形成された固定端側フィレットや仮想線K上の所定の箇所に応力が集中する。これに対し、本実施形態における光偏向器では、接続部140の裏面に接続部リブ141が設けられているため、接続部140の駆動梁130が設けられている側に形成された固定端側フィレット142や仮想線K上の所定の箇所において生じる応力が緩和される。
【0030】
図3は、有限要素シミュレーションで得られた接続部140における発生応力から推定した破壊振幅と、接続部140の接続部リブ141の接続部リブ長との関係を示す。破壊振幅は、実験的に破壊応力を求め、シミュレーションで得られた応力から換算した。尚、
図3における『接続部リブ長0μm』は、接続部リブ141が設けられていない状態を意味している。
図3に示されるように、接続部リブ長が350μmの接続部リブ141を設けることにより、破壊強度を高くすることができ、破壊振幅を約30°以上にすることができる。この場合、
図4に示されるように、接続部リブ141は、固定端側フィレット142の-Y側の端部よりも、更に、駆動梁130側となる-Y側に延びている。このように、接続部140において、X軸方向における幅が最も狭くなる固定端側フィレット142よりも駆動梁130側にまで、接続部リブ141を設けることにより、破壊振幅を大きくすることができる。尚、
図3に示される5水準のパラメータ85、95、105、115、125は、トーションバー120のミラー部110の中心に対するオフセット量に関する設計パラメータであって、片持ち構造のバランスを最適化するパラメータである。5水準のいずれのパラメータにおいても、同様の傾向にある。
【0031】
次に、
図5に基づき、接続部リブ141が形成される位置について説明する。接続部リブ141は、X軸方向における接続部140の中央140aにおいて、Y軸方向に沿って接続部140を2つの領域に2分した場合に、トーションバー120とは反対側の領域に設けられている。このように、接続部リブ141をトーションバー120から離れた位置に設けることにより、トーションバー120のねじれ変形が、接続部リブ141によって急激に拘束されることで発生する応力集中を抑制することができる。その結果、光偏向器の破壊限界角を増大できる。
【0032】
更に、接続部リブ141は、接続部140の+Y側の端部140b及び-X側の端部140cよりも所定の長さだけ内側に設けられている。具体的には、接続部リブ141は、接続部140の+Y側の端部140bよりも内側となる-Y側にYa離れた位置に設けられ、かつ-X側の端部140cよりも内側となる+X側にXa離れた位置に設けられている。接続部の端部に接続部リブを設けた場合には、応力集中が生じる場合があるが、接続部リブ141を接続部140の端部よりも内側に設けることにより、応力集中が生じることを抑制できる。
【0033】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態における光偏向器について、
図6及び
図7に基づき説明する。尚、
図6は、本実施形態における光偏向器の上面図であり、
図7は、裏面図である。
【0034】
本実施形態における光偏向器は、接続部140において、駆動梁130と接続されている側とは反対側となる+Y側の端に凸部143が形成されており、凸部143のトーションバー120側には、自由端側フィレット144が形成されている。尚、接続部140において、駆動梁130側となる-Y側には、固定端側フィレット142が設けられている。よって、接続部140において、トーションバー120の両側には、自由端側フィレット144と、固定端側フィレット142が設けられている。自由端側フィレット144は、トーションバー120のねじれによる応力抑制のために設けられている。本願においては、自由端側フィレット144を第1のフィレット部と記載し、固定端側フィレット142を第2のフィレット部と記載する場合がある。
【0035】
更に、本実施形態における光偏向器では、接続部リブ141は、凸部143にも設けられている。即ち、本実施形態においては、接続部リブ141は、トーションバー120の+Y側の端部よりも、更に+Y側に延びて形成されている。尚、接続部リブ141は、ミラー部110の回動軸となる第1軸、即ち、トーションバー120の中心軸と交差する方向、好ましくは第1軸と直交するY軸方向に伸びるように形成されている。これにより、接続部140における変形が抑制されるため、ミラー部110の回動時における接続部140の応力が低減され、光偏向器の破壊限界角を大きくすることができ、ミラー部110を大振幅で回動することが可能となる。
【0036】
本実施形態における光偏向器は、自由端側フィレット144の形状は円弧により形成されていてもよい。また、固定端側フィレット142におけるフィレット形状の曲率と、自由端側フィレット144におけるフィレット形状の曲率とが異なっていてもよい。具体的には、自由端側フィレット144におけるフィレット形状の曲率が、固定端側フィレット142におけるフィレット形状の曲率よりも小さくなるように形成されていてもよい。
【0037】
固定端側フィレット142におけるフィレット形状を形成する円弧の曲率と、自由端側フィレット144におけるフィレット形状を形成する円弧の曲率が同じである場合には、固定端側フィレット142の近傍における応力が大きくなる。固定端側フィレット142のフィレット形状の曲率よりも、自由端側フィレット144のフィレット形状の曲率を小さくすることにより、固定端側フィレット142の近傍の応力と、自由端側フィレット144の近傍の応力とを等しくすることができる。
【0038】
また、自由端側フィレット144のフィレット形状が、楕円弧により形成されていてもよい。この場合、楕円形の長径がX軸方向、即ち、トーションバー120の長手方向となるように形成されていてもよい。
【0039】
また、自由端側フィレット144のフィレット形状が所定の曲率半径の円弧により形成されており、自由端側フィレット144のフィレット形状が形成されている部分のなす角が、90度以下であってもよい。
【0040】
このような形状にすることにより、凸部143の+Y側における長さを短くして、駆動梁130を軽量化して共振周波数を高くしたり、駆動梁130の曲げによる破壊を抑制したりすることができる。
【0041】
図6及び
図7に示される光偏向器は、自由端側フィレット144が設けられている構造の光偏向器であるが、本実施形態における光偏向器は、
図8に示されるように、自由端側フィレット144が設けられていない光偏向器であってもよい。
図8に示される構造の光偏向器であっても、接続部リブ141を凸部143にまで設けた効果は得られる。
【0042】
尚、上記以外の内容については、第1の実施形態と同様である。
【0043】
〔第3の実施形態〕
次に、第3の実施形態における光偏向器について、
図9及び
図10に基づき説明する。尚、
図9は、本実施形態における光偏向器の上面図であり、
図10は、裏面図である。
【0044】
本実施形態における光偏向器は、光を反射する反射面14を有するミラー部110を有しており、このミラー部110の両側にはトーションバー120が接続されている。
【0045】
トーションバー120の一方の端部120aは、ミラー部110に接続されており、一方の端部120aとは反対の他方の端部120bは、接続部240を介して、駆動梁230と接続されている。駆動梁230は、トーションバー120の軸方向(即ち、X軸方向)の両側に配置されている。
【0046】
本実施形態における光偏向器においては、トーションバー120の中心軸である第1軸を挟んで、両側から駆動梁230が一対のトーションバー120を支持している。即ち、
図10に示されるように、2つの駆動梁230が一対のトーションバー120のそれぞれを支持した構造であり、合計で4つの駆動梁230が設けられている。
【0047】
駆動梁230は、シリコン基板等により形成された基体の梁部231の上に、圧電材料232が積層された構造である。駆動梁230は、例えば、平板短冊状のユニモルフ構造である。駆動梁230の一方の端部は、固定枠250に接続されており、他方の端部は、接続部240を介して、トーションバー120の他方の端部120bに接続されている。本願においては、固定枠250を枠部と記載する場合がある。
【0048】
従って、駆動梁230は、トーションバー120の他方の端部120bにおいて、トーションバー120の中心軸に対して両側に配置されており、梁状部材でミラー部110とトーションバー120を固定枠250に対して両持ち支持した構造である。即ち、ミラー部110及びトーションバー120は、第1軸に対し+Y側の駆動梁230及び-Y側の駆動梁230により支持された両持ち構造である。
【0049】
図9及び
図10に示されるように、トーションバー120と駆動梁230とを接続する接続部240の裏面には、回動軸である第1軸に対し直交するY軸方向に伸びる接続部リブ241が設けられている。これにより、接続部240の変形が抑制されるため、ミラー部110の回動時における接続部240の応力が低減され、光偏向器の破壊限界角を大きくすることができ、ミラー部110を大振幅で回動することが可能となる。
【0050】
接続部リブ241は、
図10に示されるように連続した1本のリブでもよいが、
図11に示されるように、トーションバー120の中心軸を挟んで2分割した構造のものであってもよい。
図11に示されるように、接続部リブ241を2分割することにより、接続部240における剛性が若干低くなるため、破壊への耐性は低くなるが、駆動梁230による力による変形がトーションバー120に伝わりやすくなるため、大きな振幅が得られやすい。
【0051】
尚、上記以外の内容については、第1の実施形態と同様である。
【0052】
〔第4の実施形態〕
次に、第4の実施形態における光偏向器について説明する。本実施形態における光偏向器は、回動軸である第1軸と、第1軸と直交する第2軸とを中心に回動可能である。具体的には、
図12に示されるように、副走査の可動枠350の内側に、第2の実施形態におけるミラー部110、トーションバー120、駆動梁130、固定端側フィレット142、及び自由端側フィレット144が設けられている。駆動梁130は可動枠350に支持されており、ミラー部110は、第1軸を中心に回動可能である。本実施形態における光偏向器では、駆動梁130が主走査駆動梁となる。
【0053】
また、可動枠350の両側には、ミアンダ構造の可動枠支持部360が設けられている。可動枠支持部360は、X軸方向が長手方向となる複数の梁部361と、隣り合う梁部361を接続する梁部接続部362と、各々の梁部361の上に設けられた圧電部材363とを有している。各々の可動枠支持部360の一方の端部は可動枠350に接続されており、他方の端部は固定枠370に接続されている。
【0054】
本実施形態における光偏向器では、各々の梁部361の上に設けられた圧電部材363に電圧を印加することにより、ミラー部110を含む可動枠350全体を、第2軸を中心に回動させることができる。
【0055】
上記における説明では、可動枠350の内側に第2の実施形態における光偏向器を配置する例について説明したが、可動枠350の内側に第1または第3の実施形態における光偏向器を配置することも可能である。
【0056】
以上に説明した第1から第4の実施形態に係る光偏向器は、光走査システム、画像投影装置、光書込装置、物体認識装置に使用することができる。
【0057】
[光走査システム]
まず、
図13~
図16を参照して、第1から第4の実施形態に係る光偏向器の何れかを搭載した光走査システムについて詳細に説明する。
【0058】
【0059】
図13に示すように、光走査システム10は、駆動装置11の制御に従って光源装置12から照射された光を光偏向器13の有する反射面14により偏向して被走査面15を光走査するシステムである。光偏向器13は、第1から第4の実施形態に係る光偏向器の何れか1つである。
【0060】
光走査システム10は、駆動装置11、光源装置12、及び反射面14を有する光偏向器13を含む。光走査システム10は、本発明に係る偏向装置の代表的な一例である。
【0061】
駆動装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を備えた電子回路ユニットである。光偏向器13は、例えば反射面14を有し、反射面14を可動可能なMEMS(Micro Electromechanical Systems)デバイスである。光源装置12は、例えばレーザを照射するレーザ装置である。なお、被走査面15は、例えばスクリーンである。
【0062】
駆動装置11は、取得した光走査情報に基づいて光源装置12および光偏向器13の制御命令を生成し、制御命令に基づいて光源装置12および光偏向器13に駆動信号を出力する。
【0063】
光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光源の照射を行う。光偏向器13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14を1軸方向または2軸方向の少なくともいずれかに可動させる。
【0064】
これにより、駆動装置11は、例えば、光走査情報の一例である画像情報に基づいた制御によって、光偏向器13の反射面14を所定の範囲で2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する光源装置12からの照射光を偏向して光走査する。その結果、駆動装置11は、被走査面15に任意の画像を投影することができる。
【0065】
なお、駆動装置11による制御の詳細については後述する。
【0066】
次に、
図14を参照して、光走査システム10の一例のハードウェア構成について説明する。
【0067】
図14は、光走査システム10の一例のハードウェア構成図である。
【0068】
図14に示すように、光走査システム10は、駆動装置11、光源装置12および光偏向器13を備え、それぞれが電気的に接続されている。
【0069】
[駆動装置]
駆動装置11は、CPU20、RAM21(Random Access Memory)、ROM22(Read Only Memory)、FPGA23、外部I/F24、光源装置ドライバ25、及び光偏向器ドライバ26を備えている。
【0070】
CPU20は、ROM22等の記憶装置からプログラムやデータをRAM21上に読み出し、処理を実行して、駆動装置11の全体の制御や機能を実現する演算装置である。RAM21は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の記憶装置である。
【0071】
ROM22は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の記憶装置であり、CPU20が光走査システム10の各機能を制御するために実行する処理用プログラムやデータを記憶している。
【0072】
FPGA23は、CPU20の処理に従って、光源装置ドライバ25および光偏向器ドライバ26に適した制御信号を出力する回路である。
【0073】
外部I/F24は、例えば外部装置またはネットワーク等とのインタフェースである。外部装置には、例えば、PC(Personal Computer)等の上位装置、USBメモリ、SDカード、CD、DVD、HDD、またはSD等の記憶装置が含まれる。また、ネットワークは、例えば自動車のCAN(Controller Area Network)、LAN(Local Area Network)、またはンターネット等である。外部I/F24は、外部装置との接続または通信を可能にする構成であればよく、外部装置ごとに外部I/F24が用意されてもよい。
【0074】
光源装置ドライバ25は、入力された制御信号に従って光源装置12に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0075】
光偏向器ドライバ26は、入力された制御信号に従って光偏向器13に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0076】
駆動装置11において、CPU20は、外部I/F24を介して外部装置またはネットワーク等から光走査情報を取得する。なお、駆動装置11は、CPU20が光走査情報を取得することができる構成であればよく、駆動装置11内のROM22またはFPGA23に光走査情報を格納する構成としてもよい。また、駆動装置11は、内部に新たにSSD等の記憶装置を設けて、その記憶装置に光走査情報を格納する構成としてもよい。
【0077】
ここで、光走査情報とは、被走査面15にどのように光走査させるかを示した情報であり、例えば、光走査により画像を表示する場合は、光走査情報は画像データである。また、例えば、光走査により光書込みを行う場合は、光走査情報は書込み順または書込み箇所を示した書込みデータである。他にも、例えば、光走査により物体認識を行う場合は、光走査情報は物体認識用の光を照射するタイミングと照射範囲を示す照射データである。
【0078】
駆動装置11は、CPU20の命令および
図14に示したハードウェア構成によって、次に説明する機能構成を実現することができる。
【0079】
[駆動装置の機能構成]
次に、
図15を参照して、光走査システム10の駆動装置11の機能構成について説明する。
図15は、光走査システムの駆動装置の一例の機能ブロック図である。
【0080】
図15に示すように、駆動装置11は、機能として制御部30と駆動信号出力部31とを有する。
【0081】
制御部30は、例えばCPU20及びFPGA23等により実現され、外部装置から光走査情報を取得し、光走査情報を制御信号に変換して駆動信号出力部31に出力する。例えば、制御部30は、制御手段であり、外部装置等から画像データを光走査情報として取得し、所定の処理により画像データから制御信号を生成して駆動信号出力部31に出力する。
【0082】
駆動信号出力部31は、印加手段であり、光源装置ドライバ25及び光偏向器ドライバ26等により実現され、入力された制御信号に基づいて光源装置12または光偏向器13に駆動信号を出力する。駆動信号出力部31(印加手段)は、例えば、駆動信号を出力する対象ごとに設けられてもよい。
【0083】
駆動信号は、光源装置12または光偏向器13の駆動を制御するための信号である。例えば、光源装置12においては、駆動信号は、光源の照射タイミングおよび照射強度を制御する駆動電圧である。また、例えば、光偏向器13においては、駆動信号は、光偏向器13の有する反射面14を可動させるタイミングおよび可動範囲を制御する駆動電圧である。なお、駆動装置は、光源装置12や受光装置等の外部装置から光源の照射タイミング及び受光タイミングを取得し、これらを光偏向器13の駆動に同期するようにしてもよい。
【0084】
[光走査処理]
次に、
図16を参照して、光走査システム10が被走査面15を光走査する処理について説明する。
図16は、光走査システムに係る処理の一例のフローチャートである。
【0085】
ステップS11において、制御部30は、外部装置等から光走査情報を取得する。
【0086】
ステップS12において、制御部30は、取得した光走査情報から制御信号を生成し、制御信号を駆動信号出力部31に出力する。
【0087】
ステップS13において、駆動信号出力部31は、入力された制御信号に基づいて駆動信号を光源装置12および光偏向器13に出力する。
【0088】
ステップS14において、光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光照射を行う。また、光偏向器13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14の可動を行う。光源装置12および光偏向器13の駆動により、反射面14に入射した光は任意の方向に偏向され、光走査される。
【0089】
なお、上記光走査システム10では、1つの駆動装置11が光源装置12および光偏向器13を制御するが、光源装置12を制御する駆動装置と光偏向器13を制御する駆動装置とを別々に設けてもよい。
【0090】
また、上記光走査システム10では、一つの駆動装置11に制御部30の機能および駆動信号出力部31の機能を設けている。しかし、これらの機能は別体として存在していてもよく、例えば制御部30を有した駆動装置11とは別に駆動信号出力部31を有した駆動信号出力装置を設けてもよい。なお、上記光走査システム10のうち、反射面14を有した光偏向器13と駆動装置11により、光偏向を行う光偏向システムを構成してもよい。
【0091】
第1から第4の実施形態に係る光偏向器を光走査システムに用いることにより、可動部の高画角及び高解像での光走査が可能となる。
【0092】
[画像投影装置]
次に、
図17及び
図18を参照して、光偏向器13を適用した画像投影装置について詳細に説明する。
【0093】
図17は、画像投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイ装置500を搭載した自動車400の実施形態に係る概略図である。また、
図18はヘッドアップディスプレイ装置500の一例の概略図である。
【0094】
画像投影装置は、光走査により画像を投影する装置であり、例えばヘッドアップディスプレイ装置である。
【0095】
図17に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、例えば、自動車400のウインドシールド(フロントガラス401等)の付近に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置500から発せられる投射光Lがフロントガラス401で反射され、ユーザーである観察者(運転者402)に向かう。
【0096】
これにより、運転者402は、ヘッドアップディスプレイ装置500によって投影された画像等を虚像として視認することができる。なお、ウインドシールドの内壁面にコンバイナを設置し、コンバイナによって反射する投射光によってユーザーに虚像を視認させる構成にしてもよい。
【0097】
図18に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、赤色、緑色、及び青色のレーザ光源501R,501G,及び501Bからレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は、各レーザ光源に対して設けられるコリメートレンズ502,503,及び504と、2つのダイクロイックミラー505及び506と、光量調整部507とを含む入射光学系に入射する。そして、入射光学系を経たレーザ光は、反射面14を有する光偏向器13で偏向される。
【0098】
そして、偏向されたレーザ光は、自由曲面ミラー509と、中間スクリーン510と、投射ミラー511とを含む投射光学系を経て、スクリーンに投影される。
【0099】
ヘッドアップディスプレイ装置500では、レーザ光源501R,501G,及び501B、コリメートレンズ502,503,及び504、並びにダイクロイックミラー505及び506は、光源ユニット530として光学ハウジングでユニット化されている。
【0100】
上記ヘッドアップディスプレイ装置500は、中間スクリーン510に表示される中間像を自動車400のフロントガラス401に投射することで、その中間像を運転者402に虚像として視認させる。
【0101】
レーザ光源501R,501G,及び501Bから発せられる各色レーザ光は、それぞれ、コリメートレンズ502,503,及び504で略平行光とされ、2つのダイクロイックミラー505及び506により合成される。合成されたレーザ光は、光量調整部507で光量が調整された後、反射面14を有する光偏向器13によって二次元走査される。光偏向器13で二次元走査された投射光Lは、自由曲面ミラー509で反射されて歪みを補正された後、中間スクリーン510に集光され、中間像を表示する。中間スクリーン510は、例えば、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイであり、中間スクリーン510に入射する投射光Lをマイクロレンズ単位で拡大する。
【0102】
光偏向器13は、反射面14を2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する投射光Lを二次元走査する。この光偏向器13による反射面14の駆動制御は、レーザ光源501R,501G,及び501Bの発光タイミングに同期して行われる。
【0103】
以上、画像投影装置の一例としてのヘッドアップディスプレイ装置500の説明をしたが、画像投影装置は、反射面14を有した光偏向器13により光走査を行うことで画像を投影する装置であれば、ヘッドアップディスプレイ装置以外であってもよい。
【0104】
画像投影装置は、例えば、机等に置かれ、表示スクリーン上に画像を投影するプロジェクタにも、同様に適用することができる。また、画像投影装置は、観測者の頭部等に装着される装着部材に搭載され、装着部材が有する反射透過スクリーンに投影、または眼球をスクリーンとして画像を投影するヘッドマウントディスプレイ装置等にも、同様に適用することができる。
【0105】
また、画像投影装置は、車両や装着部材だけでなく、例えば、航空機、船舶、及び移動式ロボット等の移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボットなどの非移動体に搭載されてもよい。
【0106】
第1から第4の実施形態に係る光偏向器を画像投影装置に用いることにより、可動部の高画角及び高解像での画像投影が可能となる。
【0107】
[光書込装置]
次に、
図19及び
図20を参照して、光偏向器13を適用した光書込装置について詳細に説明する。
【0108】
図19は、光書込装置600を組み込んだ画像形成装置の一例である。また、
図20は、光書込装置の一例の概略図である。
【0109】
図19に示すように、上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有するレーザプリンタ650等に代表される画像形成装置の構成部材として使用される。画像形成装置において光書込装置600は、1本または複数本のレーザビームで被走査面15である感光体ドラムを光走査することにより、感光体ドラムに光書込を行う。
【0110】
図20に示すように、光書込装置600において、レーザ素子などの光源装置12からのレーザ光は、コリメートレンズなどの結像光学系601を経た後、反射面14を有する光偏向器13により1軸方向または2軸方向に偏向される。
【0111】
そして、光偏向器13で偏向されたレーザ光は、その後、第一レンズ602aと第二レンズ602b、及び反射ミラー部602cを含む走査光学系602を経て、被走査面15(例えば感光体ドラムや感光紙)に照射し、光書込みを行う。走査光学系602は、被走査面15にスポット状に光ビームを結像する。
【0112】
また、光源装置12および反射面14を有する光偏向器13は、駆動装置11の制御に基づき駆動する。
【0113】
このように上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有する画像形成装置の構成部材として使用することができる。
【0114】
また、光書込装置600は、走査光学系を異ならせて1軸方向だけでなく2軸方向に光走査することも可能である。光書込装置600は、例えば、レーザ光をサーマルメディアに偏向して2軸方向に光走査し、サーマルメディアを加熱することで印字するレーザラベル装置等の画像形成装置の構成部材として使用することができる。
【0115】
上記光書込装置に適用される反射面14を有した光偏向器13は、ポリゴンミラー等を用いた回転多面鏡に比べ駆動のための消費電力が小さいため、光書込装置の省電力化に有利である。
【0116】
また、光偏向器13の振動時における風切り音は回転多面鏡に比べ小さいため、光書込装置の静粛性の改善に有利である。光書込装置は回転多面鏡に比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また光偏向器13の発熱量もわずかであるため、小型化が容易であり、よって画像形成装置の小型化に有利である。
【0117】
第1から第4の実施形態に係る光偏向器を光書込装置に用いることにより、可動部の高画角及び高解像での光書き込みが可能となる。
【0118】
[物体認識装置]
次に、
図21及び
図22を参照して、光偏向器13を適用した物体認識装置について詳細に説明する。
【0119】
図21は、物体認識装置の一例であるレーザレーダ装置を搭載した自動車の概略図である。また、
図22はレーザレーダ装置の一例の概略図である。
【0120】
物体認識装置は、対象方向の物体を認識する装置であり、例えばレーザレーダ装置である。
【0121】
図21に示すように、レーザレーダ装置700は、例えば自動車701に搭載され、対象方向を光走査して、対象方向に存在する被対象物702からの反射光を受光することで、被対象物702を認識する。
【0122】
図22に示すように、光源装置12から出射されたレーザ光は、発散光を略平行光とする光学系であるコリメートレンズ703と、平面ミラー704とを含む入射光学系を経て、反射面14を有する光偏向器13で1軸もしくは2軸方向に走査される。
【0123】
そして、2軸方向に走査されたレーザ光は、投光光学系である投光レンズ705等を経て装置前方の被対象物702に照射される。光源装置12および光偏向器13は、駆動装置11により駆動を制御される。被対象物702で反射された反射光は、光検出器709により光検出される。
【0124】
すなわち、被対象物702で反射された反射光は受光光学系である集光レンズ706等を経て撮像素子707により受光され、撮像素子707は検出信号を信号処理回路708に出力する。信号処理回路708は、入力された検出信号に2値化やノイズ処理等の所定の処理を行い、結果を測距回路710に出力する。
【0125】
測距回路710は、光源装置12がレーザ光を発光したタイミングと、光検出器709でレーザ光を受光したタイミングとの時間差、または受光した撮像素子707の画素ごとの位相差とによって、被対象物702の有無を認識する。測距回路710は、さらに被対象物702との距離情報を算出する。
【0126】
反射面14を有する光偏向器13は多面鏡に比べて破損しづらく、小型であるため、耐久性の高い小型のレーダ装置を提供することができる。
【0127】
このようなレーザレーダ装置は、例えば、車両、航空機、船舶及び移動式ロボット等の移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボットなどの非移動体に搭載できる。そして、レーザレーダ装置は、所定範囲を光走査して障害物の有無や障害物までの距離を認識することができる。
なお、上記では、物体認識装置の一例として、レーザレーダ装置700の説明をしたが、物体認識装置はレーザレーダ装置に限定されるものではない。物体認識装置は、反射面14を有した光偏向器13を駆動装置11で制御することにより光走査を行い、光検出器により反射光を受光することで被対象物702を認識する装置であれば、レーザレーダ装置以外であってもよい。
【0128】
物体認識装置は、例えば、手や顔を光走査して得た距離情報から形状等の物体情報を算出し、記録と参照することで対象物を認識する生体認証にも同様に適用することができる。また、物体認識装置は、対象範囲への光走査により侵入物を認識するセキュリティセンサ、及び光走査により得た距離情報から形状等の物体情報を算出して認識し、3次元データとして出力する3次元スキャナの構成部材などにも同様に適用することができる。
【0129】
第1から第4の実施形態に係る光偏向器を物体認識装置に用いることにより、可動部の高画角及び高解像での物体認識が可能となる。
【0130】
[パッケージング]
次に、
図23を参照して、光偏向器13のパッケージングについて説明する。
【0131】
図23は、パッケージングされた光偏向器の一例の概略図である。
【0132】
図23に示すように、光偏向器13は、凹状のパッケージ部材801の底面に配置される取付部材802に取り付けられている。パッケージ部材801には、光偏向器13が配置された領域を覆う透過部材803が設けられている。パッケージ部材801と透過部材803で密閉されることで、光偏向器13がパッケージングされる。
【0133】
さらに、パッケージ内は窒素等の不活性ガスが密封されている。これにより、光偏向器13の酸化による劣化が抑制され、さらに温度等の環境の変化に対する耐久性が向上する。
【0134】
以上、本発明の実施形態の例について記述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0135】
10 光走査システム
11 駆動装置
12、12b 光源装置
13 光偏向器
14 反射面
15 被走査面
25 光源装置ドライバ
26 光偏向器ドライバ
30 制御部
31 駆動信号出力部
50 レーザヘッドランプ
51 ミラー
52 透明板
110 ミラー部
120 トーションバー
120a 一方の端部
120b 他方の端部
130 駆動梁
131 梁部
132 圧電材料
140 接続部
141 接続部リブ
142 固定端側フィレット
143 凸部
144 自由端側フィレット
150 固定枠
350 可動枠
360 可動枠支持部
361 梁部
362 梁部接続部
363 圧電部材
370 固定枠
400 自動車(車両の一例)
500 ヘッドアップディスプレイ装置(画像投影装置の一例、ヘッドアップディスプレイの一例)
650 レーザプリンタ
700 レーザレーダ装置(物体認識装置の一例)
702 被対象物
801 パッケージ部材
802 取付部材
803 透過部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0136】