(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】血球計数器校正用標準液
(51)【国際特許分類】
G01N 33/96 20060101AFI20241001BHJP
G01N 33/49 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G01N33/96
G01N33/49 A
(21)【出願番号】P 2020172795
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕士
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-301166(JP,A)
【文献】特開2007-114026(JP,A)
【文献】特開昭64-006865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子を含有する血球計数器校正用標準液であって、
前記樹脂粒子の平均円形度が0.99以下であり、
前記樹脂粒子の体積平均粒径が2μm以上10μm以下であ
り、
前記樹脂粒子がポリエステル粒子を含む、
血球計数器校正用標準液。
【請求項2】
前記樹脂粒子の粒径の変動係数が
5.3%以上15%以下である、
請求項1に記載の血球計数器校正用標準液。
【請求項3】
前記樹脂粒子の平均円形度が0.95以上0.985以下である、
請求項1または2に記載の血球計数器校正用標準液。
【請求項4】
前記樹脂粒子のアスペクト比が1.3以上5.0以下の形状である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の血球計数器校正用標準液。
【請求項5】
前記樹脂粒子の表面にカルボキシル基を有する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の血球計数器校正用標準液。
【請求項6】
前記カルボキシル基の密度が0.001個/Å
2以上である、
請求項5に記載の血球計数器校正用標準液。
【請求項7】
樹脂粒子を含有する血球計数器校正用標準液であって、
前記樹脂粒子の平均円形度が0.99以下であ
り、
前記樹脂粒子がポリエステル粒子を含む、
血球計数器校正用標準液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血球計数器校正用標準液に関する。
【背景技術】
【0002】
血液中のヘモグロビン濃度を知ることは、疾病の予知、疾病の程度を知るうえで重要であり、血液検査の主要な項目となっている。ヘモグロビン濃度は、コールター法又は電気的検知帯法等の粒径測定法を用いた血球計数器により測定される。この血球計測器は、ヘモグロビン濃度を正確に測定するために、高精度に校正されていなければならない。
【0003】
この血球計測器を校正するため、樹脂粒子が活性剤溶液中に分散された校正用標準液が使用される。しかしながら、これらの血球計数器校正用標準液に分散される樹脂粒子の形状は真球であり、ヒトの赤血球の形状である扁平形状とは異なる形状である。そのため、従来の血球計数器によるヘモグロビン濃度の測定では、校正精度が十分に得られない(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、校正精度と保存安定性に優れた血球計数器校正用標準液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、血樹脂粒子を含有する血球計数器校正用標準液であって、前記樹脂粒子の平均円形度が0.99以下であり、前記樹脂粒子の体積平均粒径が2μm以上10μm以下であり、前記樹脂粒子がポリエステル粒子を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、校正精度と保存安定性に優れた血球計数器校正用標準液を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0008】
<血球計数器校正用標準液>
本実施形態に係る血球計数器校正用標準液は、樹脂粒子を含有する。本明細書において、血球計数器は、ヒトの血液のヘマトクリット値を測定する装置を示す。また、ヘマトクリット値は、赤血球の全容積が血液の全容積に占める割合を示し、貧血の診断等に用いられる検査項目である。なお、ヘマトクリット値の測定法としては、例えば、遠心法、コールター法等が挙げられる。
【0009】
遠心法は、抗凝固剤を添加した血液約1mlを毛細管ピペットにとり、その先端をウィントローブ(Wintrobe)管の底まで挿入し、徐々に血液を出しながら、管の「0」の目盛まで入れ、遠心分離により遠沈し、赤血球容積の占める割合からヘマトクリット値を算出する。この遠心法では、遠心分離処理をしてから直接、赤血球の体積を読み取るため、ヘマトクリット値に赤血球の形状の違いを正確に反映させることができる。
【0010】
コールター法は、ヘマトクリット値が自動測定できるため、このコールター技術が導入されている血球計数器が広く普及されている。コールター技術は、測定セルにおける、一つ以上の粒子が流動中それを通して導かれるときのインピーダンスの変動の測定に依拠する計数技術である。インピーダンスの変化の数は、流体中の粒子数を示す一方で、測定されるインピーダンスの値は、流体中の粒子の体積に比例する。
【0011】
具体的には、コールター法では、粒子の分散されている電解液中に一つの貫通した細孔を有する壁を設け、両側に電極を置き、細孔を通して定電流を流した状態で、細孔の内側から一定の吸引力で電解液を吸引することで、粒子が電解液と共に細孔を通過する。このとき、細孔中の電解液は粒子の体積に相当する量だけ減少し、細孔の電気抵抗はこの排除された電解液量に比例してより大きくなる。
【0012】
なお、細孔に流れている電流は、粒子の存在に関わらず一定であるため、電圧変化量が細孔の電気抵抗の変化量に比例する。この電圧の変化量から粒子の体積を計測し、この体積から粒子の球相当径を求め、粒子径分布を表示する。また、電圧変化を計数することによって、粒子が細孔を通過した数がカウントされる。すなわち、コールター法では、定量的に血液中の血球濃度やヘマトクリット値を測定することができる。
【0013】
しかしながら、従来の血球計数器校正用標準液は、分散され樹脂粒子(以下、分散粒子という)が球形であるため、コールター法等の電気的検知帯法による血球計数器では、ヒトの赤血球のように扁平状の非球形の分散粒子に対しては正確な粒子体積を求めることができない。
【0014】
そこで、本実施形態では、血球計数器校正用標準液に含有される樹脂粒子の平均円形度を0.99以下とし、好ましくは0.90以上0.987以下、より好ましくは0.95以上0.985以下とする。本明細書において、平均円形度は、光学的に粒子を検知して、投影面積の等しい相当円の周囲長で除した値である。
【0015】
血球計数器校正用標準液に含まれる樹脂粒子の平均円形度が0.99以下であると、樹脂粒子の形状がヘモグロビンの形状に近いものとなり、血球計数器校正用標準液の測定精度と保存性に優れた粒子形状とすることができる。
【0016】
なお、平均円形度が0.99を超えると、樹脂粒子が真球に近いため、血球計数器校正用標準液の測定精度が低下する可能性がある。また、平均円形度が0.90未満では、血球計数器校正用標準液中の分散粒子が球形からかけ離れた形状になり、測定精度が悪くなる可能性がある。このため、平均円形度は0.90以上が好ましい。
【0017】
本実施形態の血球計数器校正用標準液では、血球計数器校正用標準液に含有される樹脂粒子の体積平均粒径が2μm以上10μm以下であり、好ましくは1.5μm以上9μm以下、より好ましくは3μm以上8μm以下である。ここで、体積平均粒径とは、粒子の全体積を100%として、体積の積算粒度分布曲線を求めたとき、積算体積が50%となる点の粒子径を示す。
【0018】
血球計数器校正用標準液に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径が2μm以上10μm以下であると、血球計数器校正用標準液の保存性を安定化することができる。なお、体積平均粒径が2μm未満では、樹脂粒子が血球計数器校正用標準液中で凝集しやすくなり、分散性が低下する可能性がある。また、体積平均粒径が10μmを超えると、樹脂粒子が血球計数器校正用標準液中で沈降しやすくなり、分散性が低下する可能性がある。
【0019】
本実施形態の血球計数器校正用標準液では、樹脂粒子の粒径の変動係数が15%以下であることが好ましく、より好ましくは13%以下、さらに好ましくは11%以下である。本明細書において、粒径の変動係数は、粒子の標準偏差を粒子の平均粒子径で除算した値を百分率で表したものである。ここで、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積分布が50%となる粒子径である。
【0020】
血球計数器校正用標準液に含まれる樹脂粒子の粒径の変動係数が15%以下であると、樹脂粒子の形状がヘモグロビンの形状により近いものとなり、血球計数器校正用標準液の測定精度を向上させることができる。
【0021】
なお、粒径の変動係数が15%を超えると、樹脂粒子の形状がヘモグロビンの形状からかけ離れた形状になり、測定精度が悪くなる可能性がある。また、粒径の変動係数の下限は限定されないが、少なくとも1%以上の変動係数であればよい。
【0022】
本実施形態では、血球計数器校正用標準液に含有される樹脂粒子のアスペクト比が1.3以上5.0以下の形状であることが好ましく、より好ましくは1.4以上4.8以下の形状、さらに好ましくは、より好ましくは1.5以上4.5以下の形状である。本明細書において、アスペクト比とは、最長辺(長軸)の長さと最短辺(短軸)の長さの比を示し、この値が大きい程、樹脂粒子の異形度が高いことを意味する。
【0023】
血球計数器校正用標準液に含まれる樹脂粒子のアスペクト比が1.3を超え5.0以下の形状であると、樹脂粒子の形状がヘモグロビンの形状にさらに近いものとなり、血球計数器校正用標準液の測定精度をさらに向上させることができる。
【0024】
なお、アスペクト比が1.3未満では、樹脂粒子が真球に近いため、血球計数器校正用標準液の測定精度が低下する可能性がある。また、アスペクト比が5.0を超えると、樹脂粒子の形状がヘモグロビンの形状からかけ離れた形状になり、測定精度が悪くなる可能性がある。
【0025】
本実施形態の血球計数器校正用標準液では、樹脂粒子の表面にカルボキシル基を有する。表面にカルボキシル基を有する樹脂粒子は、特に限定されない。表面にカルボキシル基を有する樹脂粒子としては、例えば、低分子ポリエステルが好ましい。
【0026】
本実施形態では、血球計数器校正用標準液に含まれる樹脂粒子の表面にカルボキシル基を有することで、血球計数器校正用標準液の保存性を向上させることができる。また、血球計数器校正用標準液に対する樹脂粒子の分散安定性を向上させる。
【0027】
本実施形態の血球計数器校正用標準液では、樹脂粒子の表面に有するカルボキシル基の密度が0.001個/Å2以上であることが好ましい。本明細書において、樹脂粒子の表面に有するカルボキシル基の密度は、JIS K0070(1992)の規定に基づく樹脂の酸価から換算した樹脂中のカルボキシル基の含有量から算出する。
【0028】
本実施形態の血球計数器校正用標準液では、樹脂粒子の表面に有するカルボキシル基の密度が0.001個/Å2以上であると、血球計数器校正用標準液中の樹脂粒子の分散性が高くなり、血球計数器校正用標準液の校正精度及び保存性を向上させることができる。
【0029】
血球計数器校正用標準液中の樹脂粒子の含有量は、血球計数器校正用標準液100質量%に対して、好ましくは1.0~10質量%であり、より好ましくは1.5~7.5質量%であり、さらに好ましくは2.5~5.0質量%である。
【0030】
血球計数器校正用標準液中の樹脂粒子の含有量が1.0質量%以上であることにより、樹脂粒子の耐寒性が高くなり、血球計数器校正用標準液の保存性を向上させることができる。また、表面にカルボキシル基を有する樹脂粒子の含有量が10質量%以下であることにより、血球計数器校正用標準液に対する樹脂粒子の分散安定性を向上させることができる。
【0031】
<樹脂粒子およびその製造方法>
ここで、本実施形態の血球計数器校正用標準液に含まれる樹脂粒子(分散粒子)の一例について説明する。樹脂粒子は、以下の方法で製造することができる。まず、ポリオールとポリカルボン酸をテトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイド等の公知のエステル化触媒の存在下、150~280℃に加熱し、必要により減圧しながら生成する水を留去して、水酸基を有するポリエステルを得る。
【0032】
次いで、40~140℃にて、これにポリイソシアネートを反応させ、イソシアネート基を有する変性ポリエステル樹脂(A)を得る。さらに、この(A)にアミン類(B)を40~140°Cにて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。ポリイソシアネートを反応させる際、及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。
【0033】
使用可能な溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、及びテトラヒドロフラン等のエーテル類;等のポリイソシアネートに対して不活性なものが挙げられる。
【0034】
未変性ポリエステル(A')を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルの場合と同様な方法でこの(A')を製造し、これを前記ウレア変性ポリエステルの反応終了後の溶液に溶解し混合する。
【0035】
本実施形態で使用する樹脂は、低分子ポリエステル樹脂が好ましい。また、血球計数器校正用標準液の観点から樹脂表面のカルボキシル基密度が0.001個/Å2以上であることが好ましい。
【0036】
この場合、樹脂粒子を構成する樹脂において、樹脂の酸価が40mgKOH/g以上であることが好ましい。樹脂の酸価を40mgKOH/g以上にすると、血球計数器校正用標準液中の樹脂粒子の分散性が高くなり、血球計数器校正用標準液の校正精度及び保存性を向上させることができる。
【0037】
なお、樹脂の酸価は、ポリエステル系樹脂中におけるカルボキシル基の含有量を意味する。上述のポリエステル系樹脂の酸価は、JIS K0070(1992)に基づき中和滴定により求められる。
【0038】
血球計数器校正用標準液の分散粒子は、水系媒体中でイソシアネート変性ポリエステル(A)からなる分散体を、アミン類(B)と反応させて形成することができる。
【0039】
水系媒体中でウレア変性ポリエステルや、イソシアネート変性ポリエステル(A)からなる分散体を安定化して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステルやイソシアネート変性ポリエステル(A)からなる血球計数器校正用標準液の分散粒子原料の組成分を加えて、剪断力により分散させる方法等が挙げられる。
【0040】
変性ポリエステル(A)には、さらに他の血球計数器校正用標準液の分散粒子組成分(以下、分散粒子原料ともいう)を混合しても良い。
【0041】
分散粒子原料としては、着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、帯電制御剤、未変性ポリエステル(A')が挙げられる。これらの分散粒子原料は、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合しても良いが、予め、血球計数器校正用標準液の分散粒子原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させることが好ましい。
【0042】
分散装置には、一般に攪拌機又は分散機として市販されているものであれば、特に限定されずに使用することができる。
【0043】
このような分散装置としては、例えば、市販の商品名を示すと、ホモジナイザー(IKA社製)及びTKオートホモミキサー(特殊機化工業社製)等のバッチ式分散機;エバラマイルダー(在原製作所社製)、TKパイプラインホモミキサー(特殊機化工業社製)等の連続式分散機;マイクロフルイダイザー(みずほ工業社製)、ナノマイザー(ナノマイザー社製)及びAPVガウリン(ガウリン社製)等の高圧分散機等が挙げられる。
【0044】
これらのうち、均一な剪断力を付与する観点で、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー及びTKパイプラインホモミキサーが好ましく、より好ましくはTKオートホモミキサー及びTKパイプラインホモミキサーである。
【0045】
分散時の温度としては、0~150°Cが好ましく、更に好ましくは5~98°C、特に好ましくは10~60°Cである。尚、100°Cを超える場合は加圧下での温度を示す。
【0046】
なお、本実施形態の血球計数器校正用標準液は、本発明の目的を損なわない限り、その他の任意の成分として、分散剤、増粘剤、減粘剤などが含まれていてもよい。
【0047】
分散剤は、血球計数器校正用標準液の分散粒子組成分が分散された油層を水系媒体中に乳化分散するために、好ましく使用される。分散剤としては、公知の界面活性剤(S)を使用することができる。界面活性剤(S)を使用する場合、この使用量は、(A)、(B)及び(A')の合計重量に基づいて、0.0001~50重量%が好ましく、より好ましくは0.0005~0.4重量%、さらに好ましくは0.001~0.3重量%である。
【0048】
界面活性剤(S)としては、アニオン界面活性剤(S-1)、カチオン界面活性剤(S-2)等が用いられる。
【0049】
アニオン界面活性剤(S-1)としては、カルボン酸又はその塩、硫酸エステル塩、カルボキシメチル化物の塩、スルホン酸塩、又はリン酸エステル塩などが用いられる。
【0050】
カルボン酸又はその塩としては、炭素数8~22の飽和若しくは不飽和脂肪酸又はこれらの塩を使用することができる。炭素数8~22の飽和又は不飽和脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、及びリシノール酸、並びにヤシ油、パーム核油、米ぬか油及び牛脂等をケン化して得られる高級脂肪酸の混合物が挙げられる。
【0051】
カルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、アンモニウム塩、4級アンモニウム塩、及びアルカノールアミン塩(例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩など)などが挙げられる。
【0052】
硫酸エステル塩としては、高級アルコール硫酸エステル塩(炭素数8~18の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩)、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩(炭素数8~18の脂肪族アルコールのエチレンオキサイド、又はプロピレンオキサイド1~10モル付加物の硫酸エステル塩などが使用できる。
【0053】
硫酸エステルの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、アンモニウム塩、4級アンモニウム塩、及びアルカノールアミン塩(例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩など)などが挙げられる。
【0054】
高級アルコール硫酸エステル塩としては、例えば、オクチルアルコール硫酸エステル塩、デシルアルコール硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、ステアリルアルコール硫酸エステル塩などが挙げられる。
【0055】
カルボキシメチル化物の塩としては、炭素数8~16の脂肪族アルコールカルボキシメチル化物の塩、又は炭素数8~16の脂肪族アルコールのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド1~10モル付加物のカルボキシメチル化物の塩などが使用できる。
【0056】
脂肪族アルコールカルボキシメチル化物の塩としては、例えば、オクチルアルコールカルボキシメチル化ナトリウム塩、デシルアルコールカルボキシメチル化ナトリウム塩、ラウリルアルコールカルボキシメチル化ナトリウム塩、ドバノール23のカルボキシメチル化ナトリウム塩、トリデカノールカルボキシメチル化ナトリウム塩などが挙げられる。
【0057】
脂肪族アルコールのエチレンオキサイド1~10モル付加物のカルボキシメチル化物の塩としては、例えば、オクチルアルコールエチレンオキサイド3モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩、ラウリルアルコールエチレンオキサイド4モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩、ドバノール23エチレンオキサイド3モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩、及びトリデカノールエチレンオキサイド5モル付加物カルボキシメチル化ナトリウム塩などが挙げられる。
【0058】
スルホン酸塩としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、イゲポンT型及びその他芳香環含有化合物のスルホン酸塩などが使用できる。
【0059】
アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩などが挙げられる。
【0060】
アルキルナフタレンスルホン酸塩としては、例えば、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩などが挙げられる。
【0061】
スルホコハク酸ジエステル塩としては、例えば、スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルエステルナトリウム塩などが挙げられる。
【0062】
芳香環含有化合物のスルホン酸塩としては、アルキル化ジフェニルエーテルのモノ又はジスルホン酸塩、及びスチレン化フェノールスルホン酸塩などが挙げられる。
【0063】
リン酸エステル塩としては、高級アルコールリン酸エステル塩及び高級アルコールエチレンオキサイド付加物リン酸エステル塩などが使用できる。
【0064】
高級アルコールリン酸エステル塩としては、例えば、ラウリルアルコールリン酸モノエステルジナトリウム塩、及びラウリルアルコールリン酸ジエステルナトリウム塩などが挙げられる。
【0065】
高級アルコールエチレンオキサイド付加物リン酸エステル塩としては、例えば、オレイルアルコールエチレンオキサイド5モル付加物リン酸モノエステルジナトリウム塩などが挙げられる。
【0066】
なお、これらのアニオン界面活性剤(S-1)は、1種を用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0067】
カチオン界面活性剤(S-2)としては、第4級アンモニウム塩型界面活性剤等が使用できる。第4級アンモニウム塩型界面活性剤は、炭素数3~40の3級アミンと4級化剤(例えば、メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、及びジメチル硫酸等のアルキル化剤、又はエチレンオキサイド等)との反応等で得られる。
【0068】
第4級アンモニウム塩型界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロライド、及びステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウムメトサルフェート等が挙げられる。
【0069】
なお、これらのアニオン界面活性剤(S-1)は、1種を用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0070】
また、分散剤としては、水系媒体中で゛形成される血球計数器校正用標準液の分散粒子母体粒子を安定化させるために、樹脂粒子以外の微粒子が好ましく使用される。このような微粒子は、血球計数器校正用標準液の分散粒子母体粒子の表面上に存在する被覆率が10~90%の範囲になるように加えられることが好ましい。
【0071】
微粒子としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル微粒子1μm及び3μm、ポリスチレン微粒子0.5μm及び2μm、ポリ(スチレン―アクリロニトリル)微粒子1μm、または、商品名でPB-200H(花王社製)、SGP(総研社製)、テクノポリマーSB(積水化成品工業社製)、SGP-3G(総研社製)、ミクロパール(積水ファインケミカル社製)等の有機系微粒子がある。
【0072】
また、微粒子としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機系微粒子も用いることができる。
【0073】
これらの微粒子と併用して、使用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液を安定化させても良い。
【0074】
高分子系保護コロイドとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-シアノアクリル酸、α-シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸又は無水マレイン酸等の酸類あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体;アクリル酸-β-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-β-ヒドロキシエチル、アクリル酸-β-ヒドロキシプロビル、メタクリル酸-β-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-γ-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-γヒドロキシプロピル、アクリル酸-3-クロロ2-ヒドロキシプロビル、メタクリル酸-3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等、又はビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等;、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物等;アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等の酸クロライド類;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等の含窒素化合物、又はその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体;ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等のポリオキシエチレン系;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類;等が挙げられる。
【0075】
本実施形態の血球計数器校正用標準液の分散粒子は、上述のようにして得られた血球計数器校正用標準液の分散粒子を含有する乳化分散液中の有機溶媒を除去しながらさらに剪断力をかけ、血球計数器校正用標準液の分散粒子を異形化する工程を含む製造法で製造される。血球計数器校正用標準液の分散粒子を異形化する工程では、血球計数器校正用標準液中の分散粒子の平均円形度の値が0.99以下、好ましくは0.92~0.96になるように調整される。
【0076】
血球計数器校正用標準液中の分散粒子の平均円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置を用いて測定を行う。
【0077】
具体的には、所定の容器に、予め不純固形物を除去した水100~150mLを入れ、分散剤として界面活性剤0.1~0.5mLを加え、さらに、測定試料0.1~9.5g程度を加える。試料を分散した懸濁液を超音波分散器で約1~3分間分散処理を行い、分散液濃度を3、000~10000個/μLにして血球計数器校正用標準液の分散粒子の形状及び分布を測定する。
【0078】
増粘剤は、乳化分散液の粘度を増加させ、血球計数器校正用標準液に含まれる樹脂粒子(分散粒子)の異形化を行うために、好ましく用いられる。
【0079】
増粘剤としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸塩(アルカリ金属塩、有機アミン塩、第四級アンモニウム塩など)(重量平均分子量3000~3000000)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール(重量平均分子量2000~200000)、及びグアーガム等の水溶性の増粘剤が挙げられる。
【0080】
これらの増粘剤は、1種で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0081】
本実施形態の血球計数器校正用標準液では、このような増粘剤により増粘された乳化分散液に剪断力を加える際の装置として、一般に攪拌機又は分散機として市販されているものであれば特に限定されず使用できる。
【0082】
好ましい具体例としては、1~10段のパドル式攪拌翼を有する攪拌機、ヘリカルリボン式攪拌機、マックスブレンド式攪拌機等が挙げられる。これらのうち、均一な剪断力を付与する観点で、ヘリカルリボン式攪拌機、マックスブレンド式攪拌機が好ましい。
【0083】
剪断力は、乳化分散液の粘度、剪断力を加える時間及びその際の温度により異なり、適宜選択することができる。なお、樹脂粒子の変形の容易性及び粒径制御の容易性の観点から、例えば、既述で例示した剪断力を加える装置において、回転数70~50,000rpmで剪断力を加えることが好ましく、より好ましくは、100~20,000rpm、さらに好ましくは500~10,000rpmである。
【0084】
また、異形化工程の条件は、以下のようにすることが好ましい。異形化工程において、乳化分散液中の有機溶媒の濃度は、2~10重量%であることが好ましく、より好ましくは2.5~9重量%、さらに好ましくは3~8重量%である。
【0085】
有機溶媒の濃度が2重量%以上であると、血球計数器校正用標準液の分散粒子が変形しやすく異形化工程が短縮できる。また、有機溶媒の濃度が10重量%以下であると、異形化した後の復元が起こりにくく、最終的に有機溶媒を除去して血球計数器校正用標準液の分散粒子とした場合所望の形状を得やすい。
【0086】
また、異形化工程開始時の有機溶媒の濃度は、3~10重量%が好ましい。開始時の濃度が3重量%以上であると、異形化が容易に起こり、10重量%以下であると微粉発生が少なくなる。有機溶媒の濃度は、脱溶剤により所望の濃度に調整するようにする。有機溶媒の濃度の測定は、ガスクロマトグラフィーを用いて下記条件により測定することができる。
【0087】
[有機溶媒の濃度測定]
装置:ガスクロマトグラフ(SIMAZU GC-14A、島津製作所製)
カラム:PEG 20M 20% Chromasorb W MESH 60~80
カラム温度:100℃
インジェクション温度:180℃
窒素ガス流量:40ml/分
試料溶液:5%のジメチルホルムアミド溶液
溶液注入量:1μL
検出器:FID30
【0088】
標準物質としてn-ヘキサンを用いて検量線を作成し、有機溶媒濃度を求めた。異形化工程時の脱溶媒の方法としては、空気や窒素の液相吹き込みによる常圧脱溶媒、減圧脱溶媒等、溶媒が除去できる方法であれば特に限定されないが、比較的低温で行えることから、減圧脱溶媒が好ましい。
【0089】
減圧する場合の減圧度は、好ましくは1~90kPa、より好ましくは5~50kPaである。脱溶剤を行うに従い、乳化分散液の粘度は増加するが、特に、異形化を良好に行うために、上述の水溶性の増粘剤を乳化分散液に添加して粘度を調整することがよい。
【0090】
乳化分散液と増粘剤との混合液の粘度は、5000~50000mPa・sの範囲にあることが好ましく、より好ましくは5500~40000mPa・s、さらに好ましくは6000~35000mPa・sである。
【0091】
粘度がこの範囲にあることにより、剪断力を加えて血球計数器校正用標準液の分散粒子の形状を変形する際の時間を短縮することができ、また、変形後に球状に戻りにくく、変形後の形状が安定した分散体を得ることができる。なお、混合液の粘度の測定は、25℃の恒温槽で30分温調した後、B型粘度計を用いて測定する。
【0092】
異型化工程が終了した後に、必要により乳化分散液からさらに有機溶剤を除去してもよい。脱溶剤の方法は、特に限定されない。
【0093】
脱溶剤の方法としては、例えば、常圧で空気、窒素等の気体をキャリアとして吹き込んで有機溶剤を除去する方法がある。また、減圧ポンプ等で減圧下に有機溶剤を除去する方法がある。さらに、水、メタノール、エタノール等の低級アルコールおよびそれらの混合液等、血球計数器校正用標準液の分散粒子成分が不溶でかつ溶剤が可溶な液体に異形化工程の終了した乳化分散液を投入し、有機溶剤を抽出除去する方法がある。
【0094】
また、異形化工程後に、必要により減粘剤を用いて、乳化分散液を減粘してもよい。
【0095】
減粘剤としては、α-グリカナーゼ(アミラーゼ、デキストラーゼ及びプルラーゼ等)及びβ-グリカナーゼ(セルラーゼ、β-1,3-グルカナーゼ及びキチナーゼ)等の酵素が挙げられる。これらの減粘剤は、1種で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0096】
減粘剤の添加量は、増粘剤の種類にもよるが、乳化分散液の重量に対して、生産性(減粘時間)及び 生産コストの観点から、1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.000001~0.1重量%、さらに好ましくは0.00001~0.01%である。
【0097】
減粘した乳化分散液の粘度は、200mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは40mPa・s以下である。乳化分散液の粘度がこの範囲にあることにより、血球計数器校正用標準液の分散粒子を得るまでの工程における取り扱い性、及び必要により行われる後述の洗浄工程における洗浄性が良好である。
【0098】
本実施形態の血球計数器校正用標準液に含まれる樹脂粒子は、粒径の変動係数〔(粒径の標準偏差/平均粒径)×100(%)〕が10%以下であることが好ましく、水や電解質水溶液等の水性媒体に混合され単一分散状態になるよう、通常、分散安定性が付与される。この電解質水溶液に使用される電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。
【0099】
液相中における微粒子の分散安定性は、該微粒子の表面に存在する酸性極性基(例えばカルボキシル基)に依存し、微粒子表面に存在する酸性極性基が多い程良好な分散安定性を有する。
【0100】
この分散安定性が付与された重合体粒子は、特に限定されない。このような重合体粒子としては、親水性モノマーの共重合体、解離性基又は親水性基を表面に有するもの重合体粒子等が好ましく用いられる。
【0101】
親水性モノマーの共重合体を構成する親水性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基等の解離性基、あるいは水酸基、アミド基等の親水性基を有するアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド-N-プロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等のイオン性モノマー、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0102】
また、解離性基又は親水性基を表面に有する重合体粒子としては、例えば、乳化重合時において必要に応じて用いられる乳化剤によって導入される解離性基あるいは親水性基を表面に有する重合体粒子が好ましい。
【0103】
標準粒子の平均粒径は、血球用では7~8μmが好ましく、血球計数器の種類によって5.5×105~2.5×10~7個/mlの濃度に調整される。
【実施例】
【0104】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、質量基準である。また、各種の試験及び評価は、下記の方法に従う。
【0105】
<平均円形度>
フロー式粒子像分析装置(FPIA-2100、シスメックス社製)を用いて測定を行う。所定の容器に、予め不純固形物を除去した水100~150mLを入れ、分散剤として界面活性剤0.1~0.5mLを加え、さらに、測定試料0.1~9.5g程度を加える。試料を分散した懸濁液を超音波分散器で約1~3分間分散処理を行い、分散液濃度を3,000~10000個/μLにして血球計数器校正用標準液の分散粒子の形状及び分布を測定した。
【0106】
<体積平均粒径>
体積平均粒径は、ゼータ電位・粒径測定システム(ELSZ-1000、大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱法により測定した。まず、0.2gの樹脂粒子の分散液(血球計数器校正用標準液)を取り、次に、イオン交換水を加えて100倍に希釈し、得られた溶液の一部を石英セルに入れ、サンプルホルダーにセットした。そして、温度:25℃、ダストカット(回数:5、Upper:5、Lower:100)、積算回数:70の条件で測定し、血球計数器校正用標準液中の固形分の体積平均粒径を得た。
【0107】
<粒径の変動係数>
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-950、堀場製作所社製)を用いて、分散粒子(樹脂粒子)の粒度分布を測定して得られた平均粒子径と、粒子の標準偏差とから、〔(粒径の標準偏差/平均粒径)×100(%)〕の式により、粒径の変動係数を算出した。
【0108】
<アスペクト比>
電子顕微鏡写真からランダムに1,000個の粒子を選び、その長軸と短軸の比の平均値から求めた。
【0109】
<カルボキシル基の密度>
JIS K0070(1992)の規定に準拠して樹脂粒子の原料(低分子ポリエステル樹脂)の酸価を測定し、得られた酸価から低分子ポリエステル樹脂中のカルボキシル基の含有量を換算し、該カルボキシル基の含有量から樹脂粒子の表面のカルボキシル基の密度を算出した。
【0110】
<低分子ポリエステルの合成>
[低分子ポリエステル1]
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物562部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物75部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物87部、テレフタル酸143部、アジピン酸126部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃で8時間反応し、さらに10~15mmHgの減圧で5時間反応した後、反応容器に無水トリメリット酸69部を入れ、180℃、大気圧で2時間反応し、「低分子ポリエステル1」を得た。「低分子ポリエステル1」の酸価は40mgKOH/gであった。
【0111】
[低分子ポリエステル2]
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物362部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物75部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物83部、テレフタル酸143部、アジピン酸126部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃で8時間反応し、さらに10~15mmHgの減圧で5時間反応した後、反応容器に無水トリメリット酸69部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、「低分子ポリエステル2」を得た。「低分子ポリエステル2」の酸価は10mgKOH/gであった。
【0112】
[低分子ポリエステル3]
冷却管、攪拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物255部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物480部、テレフタル酸223部、アジピン酸49部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃で8時間反応し、さらに10~15mmHgの減圧で5時聞反応した後、反応容器に無水トリメリット酸1部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、「低分子ポリエステル3」を得た。「低分子ポリエステル3」の酸価は0.1mgKOH/gであった。
【0113】
<油性分散液の作製>
[油性分散液1]
ビーカー内に「低分子ポリエステル1」155部、酢酸エチル80部を入れ、攪拌溶解した。この分散液にイソフォロンジアミン1.2部添加し、ディスパーを用いて2,000rpmの回転数で3分攪拌して「油性分散液1」を得た。
【0114】
[油性分散液2]
ビーカー内に「低分子ポリエステル2」155部、酢酸エチル80部を入れ、攪拌溶解した。この分散液にイソフォロンジアミン1.2部添加し、ディスパーを用いて2,000rpmの回転数で3分攪拌して「油性分散液2」を得た。
【0115】
[油性分散液3]
ビーカー内に「低分子ポリエステル3」155部、酢酸エチル80部を入れ、攪拌溶解した。この分散液にイソフォロンジアミン1.2部添加し、ディスパーを用いて2,000rpmの回転数で3分攪拌して「油性分散液3」を得た。
【0116】
[油性分散液4]
ビーカー内に「低分子ポリエステル1」155部、酢酸エチル80部を入れ、攪拌溶解した。この分散液にイソフォロンジアミン1.7部添加し、ディスパーを用いて2,000rpmの回転数で3分攪拌して「油性分散液4」を得た。
【0117】
[油性分散液5]
ビーカー内に「低分子ポリエステル2」155部、酢酸エチル80部を入れ、攪拌溶解した。この分散液にイソフォロンジアミン1.7部添加し、ディスパーを用いて2,000rpmの回転数で3分攪拌して「油性分散液5」を得た。
【0118】
[油性分散液6]
ビーカー内に「低分子ポリエステル2」155部、酢酸エチル80部を入れ、攪拌溶解した。この分散液にイソフォロンジアミン1.5部添加し、ディスパーを用いて2,000rpmの回転数で3分攪拌して「油性分散液6」を得た。
【0119】
[油性分散液7]
ビーカー内に「低分子ポリエステル2」155部、酢酸エチル80部を入れ、攪拌溶解した。この分散液にイソフォロンジアミン1.7部添加し、ディスパーを用いて2,000rpmの回転数で3分攪拌して「油性分散液7」を得た。
【0120】
[油性分散液8]
ビーカー内に「低分子ポリエステル2」155部、酢酸エチル80部を入れ、攪拌溶解した。この分散液にイソフォロンジアミン2.0部添加し、ディスパーを用いて2,000rpmの回転数で3分攪拌して「油性分散液8」を得た。
【0121】
<水系分散媒液の作製>
[水系分散媒液1]
純水を945部、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸ブチル共重合体の20%水性分散液を40部、50%ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液(エレミノールMON-7、三洋化成工業製)を160部、酢酸エチルを90部、それぞれ容器内に入れて、ロボミクスを用いて1,000rpmで3分間混合し、「水系分散媒液1」を得た。
【0122】
<血球計数器校正用標準液の作製>
[実施例1]
ビーカー内に「油性分散液1」37部と「水系分散媒液1」63部を入れ、TK式ホモミキサーで12,000rpmで5分間混合した後、「分散スラリー1」を得た。続いて、「分散スラリー1」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が15%になるまで25℃で有機溶剤の除去を行い、「分散スラリー2」を得た。
【0123】
次に、「分散スラリー2」と樹脂固形分に対して3%となるように増粘剤をステンレス製容器に入れ、ヘリカルリボンを用いて200rpmで30分間混合した後、容器に純水を100部投入し「分散スラリー3」を得た。「分散スラリー3」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が1%以下になるまで25℃で有機溶剤の除去を行った後、洗浄し、「血球計数器校正用標準液1」を得た。
【0124】
「血球計数器校正用標準液1」に分散される粒子の体積平均粒径は7.5μm、粒径の変動係数は2.7%、円形度は0.970、アスペクト比は1.5であった。酸塩基滴定法による、粒子表面のカルボキシル基密度は12個/Å2以上であった。測定結果を表1に示す。
【0125】
[実施例2]
ビーカー内に「油性分散液2」37部と「水系分散媒液1」63部を入れ、TK式ホモミキサーで12,000rpmで5分間混合した後、「分散スラリー2」を得た。続いて、「分散スラリー2」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が10%になるまで25℃で有機溶剤の除去を行い、「分散スラリー3」を得た。
【0126】
次に、「分散スラリー3」と樹脂固形分に対して3%となるように増粘剤をステンレス製容器に入れ、ヘリカルリボンを用いて200rpmで30分間混合した後、容器に純水を100部投入し「分散スラリー4」を得た。「分散スラリー4」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が1%以下になるまで25℃で有機溶剤の除去を行った後、洗浄し、「血球計数器校正用標準液2」を得た。
【0127】
「血球計数器校正用標準液2」に分散される粒子の体積平均粒径は7.8μm、粒径の変動係数は5.3%、円形度は0.985、アスペクト比は1.7であった。酸塩基滴定法による、粒子表面のカルボキシル基密度は0.340個/Å2以上であった。測定結果を表1に示す。
【0128】
[実施例3]
ビーカー内に「油性分散液2」37部と「水系分散媒液1」63部を入れ、TK式ホモミキサーで12,000rpmで5分間混合した後、「分散スラリー5」を得た。続いて、「分散スラリー5」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が30%になるまで25℃で有機溶剤の除去を行い、「分散スラリー6」を得た。
【0129】
次に、「分散スラリー6」と樹脂固形分に対して5%となるように増粘剤をステンレス製容器に入れ、ヘリカルリボンを用いて200rpmで30分間混合した後、容器に純水を100部投入し「分散スラリー7」を得た。「分散スラリー7」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が1%以下になるまで25℃で有機溶剤の除去を行った後、洗浄し、「血球計数器校正用標準液3」を得た。
【0130】
「血球計数器校正用標準液3」に分散される粒子の体積平均粒径は7.2μm、粒径の変動係数は6.5%、円形度は0.950、アスペクト比は4.3であった。酸塩基滴定法による、粒子表面のカルボキシル基密度は0.160個/Å2以上であった。測定結果を表1に示す。
【0131】
[実施例4]
ビーカー内に「油性分散液2」37部と「水系分散媒液1」63部を入れ、TK式ホモミキサーで12,000rpmで5分間混合した後、「分散スラリー5」を得た。続いて、「分散スラリー5」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が15%になるまで25℃で有機溶剤の除去を行い、「分散スラリー6」を得た。
【0132】
次に、「分散スラリー6」と樹脂固形分に対して3%となるように増粘剤をステンレス製容器に入れ、ヘリカルリボンを用いて200rpmで30分間混合した後、容器に純水を100部投入し「分散スラリー8」を得た。「分散スラリー8」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が1%以下になるまで25℃で有機溶剤の除去を行った後、洗浄し、「血球計数器校正用標準液4」を得た。
【0133】
「血球計数器校正用標準液4」に分散される粒子の体積平均粒径は7.3μm、粒径の変動係数は10.3%、円形度は0.973、アスペクト比は4.3であった。酸塩基滴定法による、粒子表面のカルボキシル基密度は0.260個/Å2以上であった。測定結果を表1に示す。
【0134】
[実施例5]
ビーカー内に「油性分散液3」37部と「水系分散媒液1」63部を入れ、TK式ホモミキサーで12,000rpmで5分間混合した後、「分散スラリー9」を得た。続いて、「分散スラリー9」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が15%になるまで25℃で有機溶剤の除去を行い、「分散スラリー10」を得た。
【0135】
次に、「分散スラリー10」と樹脂固形分に対して3%となるように増粘剤をステンレス製容器に入れ、ヘリカルリボンを用いて200rpmで30分間混合した後、容器に純水を100部投入し「分散スラリー11」を得た。「分散スラリー11」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が1%以下になるまで25℃で有機溶剤の除去を行った後、洗浄し、「血球計数器校正用標準液5」を得た。
【0136】
「血球計数器校正用標準液5」に分散される粒子の体積平均粒径は7.4μm、粒径の変動係数は6.8%、円形度は0.965、アスペクト比は3.2であった。酸塩基滴定法による、粒子表面のカルボキシル基密度は0.001個/Å2以上であった。測定結果を表1に示す。
【0137】
[実施例6]
ビーカー内に「油性分散液4」37部と「水系分散媒液1」63部を入れ、TK式ホモミキサーで12,000rpmで5分間混合した後、「分散スラリー12」を得た。続いて、「分散スラリー12」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が15%になるまで25℃で有機溶剤の除去を行い、「分散スラリー13」を得た。
【0138】
次に、「分散スラリー13」と樹脂固形分に対して3%となるように増粘剤をステンレス製容器に入れ、ヘリカルリボンを用いて200rpmで30分間混合した後、容器に純水を100部投入し「分散スラリー14」を得た。「分散スラリー14」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が1%以下になるまで25℃で有機溶剤の除去を行った後、洗浄し、「血球計数器校正用標準液6」を得た。
【0139】
「血球計数器校正用標準液6」に分散される粒子の体積平均粒径は3.4μm、粒径の変動係数は2.7%、円形度は0.970、アスペクト比は1.5であった。酸塩基滴定法による、粒子表面のカルボキシル基密度は12.000個/Å2以上であった。測定結果を表1に示す。
【0140】
[実施例7]
ビーカー内に「油性分散液4」37部と「水系分散媒液1」63部を入れ、TK式ホモミキサーで12,000rpmで5分間混合した後、「分散スラリー15」を得た。続いて、「分散スラリー15」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が10%になるまで25℃で有機溶剤の除去を行い、「分散スラリー16」を得た。
【0141】
次に、「分散スラリー16」と樹脂固形分に対して3%となるように増粘剤をステンレス製容器に入れ、ヘリカルリボンを用いて200rpmで30分間混合した後、容器に純水を100部投入し「分散スラリー17」を得た。「分散スラリー17」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が1%以下になるまで25℃で有機溶剤の除去を行った後、洗浄し、「血球計数器校正用標準液7」を得た。
【0142】
「血球計数器校正用標準液7」に分散される粒子の体積平均粒径は3.1μm、粒径の変動係数は5.3%、円形度は0.985、アスペクト比は1.7であった。酸塩基滴定法による、粒子表面のカルボキシル基密度は0.340個/Å2以上であった。測定結果を表1に示す。
【0143】
[実施例8]
ビーカー内に「油性分散液6」37部と「水系分散媒液1」63部を入れ、TK式ホモミキサーで12,000rpmで5分間混合した後、「分散スラリー18」を得た。続いて、「分散スラリー18」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が30%になるまで25℃で有機溶剤の除去を行い、「分散スラリー19」を得た。
【0144】
次に、「分散スラリー19」と樹脂固形分に対して5%となるように増粘剤をステンレス製容器に入れ、ヘリカルリボンを用いて200rpmで30分間混合した後、容器に純水を100部投入し「分散スラリー20」を得た。「分散スラリー20」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が1%以下になるまで25℃で有機溶剤の除去を行った後、洗浄し、「血球計数器校正用標準液8」を得た。
【0145】
「血球計数器校正用標準液8」に分散される粒子の体積平均粒径は4.3μm、粒径の変動係数は6.5%、円形度は0.950、アスペクト比は4.3であった。酸塩基滴定法による、粒子表面のカルボキシル基密度は0.160個/Å2以上であった。測定結果を表1に示す。
【0146】
[実施例9]
ビーカー内に「油性分散液6」37部と「水系分散媒液1」63部を入れ、TK式ホモミキサーで12,000rpmで5分間混合した後、「分散スラリー18」を得た。続いて、「分散スラリー18」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が15%になるまで25℃で有機溶剤の除去を行い、「分散スラリー19」を得た。
【0147】
次に、「分散スラリー19」と樹脂固形分に対して3%となるように増粘剤をステンレス製容器に入れ、ヘリカルリボンを用いて200rpmで30分間混合した後、容器に純水を100部投入し「分散スラリー20」を得た。「分散スラリー20」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が1%以下になるまで25℃で有機溶剤の除去を行った後、洗浄し、「血球計数器校正用標準液9」を得た。
【0148】
「血球計数器校正用標準液9」に分散される粒子の体積平均粒径は4.5μm、粒径の変動係数は10.3%、円形度は0.973、アスペクト比は4.3であった。酸塩基滴定法による、粒子表面のカルボキシル基密度は0.260個/Å2以上であった。測定結果を表1に示す。
【0149】
[実施例10]
ビーカー内に「油性分散液7」37部と「水系分散媒液1」63部を入れ、TK式ホモミキサーで12,000rpmで5分間混合した後、「分散スラリー21」を得た。続いて、「分散スラリー21」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が15%になるまで25℃で有機溶剤の除去を行い、「分散スラリー22」を得た。
【0150】
次に、「分散スラリー22」と樹脂固形分に対して3%となるように増粘剤をステンレス製容器に入れ、ヘリカルリボンを用いて200rpmで30分間混合した後、容器に純水を100部投入し「分散スラリー23」を得た。「分散スラリー23」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が1%以下になるまで25℃で有機溶剤の除去を行った後、洗浄し、「血球計数器校正用標準液10」を得た。
【0151】
「血球計数器校正用標準液10」に分散される粒子の体積平均粒径は3.8μm、粒径の変動係数は6.8%、円形度は0.965、アスペクト比は3.2であった。酸塩基滴定法による、粒子表面のカルボキシル基密度は0.001個/Å2以上であった。測定結果を表1に示す。
【0152】
[比較例1]
ビーカー内に「油性分散液8」33部と「水系分散媒液1」67部を入れ、TK式ホモミキサーで12,000rpmで5分間混合した後、「分散スラリー24」を得た。続いて、「分散スラリー24」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が10%になるまで25℃で有機溶剤の除去を行い、「分散スラリー25」を得た。
【0153】
次に、「分散スラリー25」と樹脂固形分に対して3%となるように増粘剤をステンレス製容器に入れ、ヘリカルリボンを用いて200rpmで30分間混合した後、容器に純水を100部投入し「分散スラリー26」を得た。「分散スラリー26」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が1%以下になるまで25℃で有機溶剤の除去を行った後、洗浄し、「血球計数器校正用標準液11」を得た。
【0154】
「血球計数器校正用標準液11」に分散される粒子の体積平均粒径は1.5μm、粒径の変動係数は5.2%、円形度は0.985、アスペクト比は1.5であった。酸塩基滴定法による、粒子表面のカルボキシル基密度は0.001個/Å2未満であった。測定結果を表1に示す。
【0155】
[比較例2]
ビーカー内に「油性分散液2」37部と「水系分散媒液1」63部を入れ、TK式ホモミキサーで12,000rpmで5分間混合した後、「分散スラリー27」を得た。続いて、「分散スラリー27」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が5%になるまで25℃で有機溶剤の除去を行い、「分散スラリー28」を得た。
【0156】
次に、「分散スラリー28」をステンレス製容器に入れ、ヘリカルリボンを用いて200rpmで30分間混合した後、容器に純水を100部投入し「分散スラリー29」を得た。「分散スラリー29」を樹脂固形分100部に対する残留溶剤濃度が1%以下になるまで25℃で有機溶剤の除去を行った後、洗浄し、「血球計数器校正用標準液12」を得た。
【0157】
「血球計数器校正用標準液12」に分散される粒子の体積平均粒径は7.4μm、粒径の変動係数は5.6%、円形度は0.995、アスペクト比は1.0であった。酸塩基滴定法による、粒子表面のカルボキシル基密度は0.13個/Å2以上であった。測定結果を表1に示す。
【0158】
【0159】
作製した血球計数器校正用標準液1~12(実施例1~10、及び比較例1、2)について、電気抵抗検出法による血球計数器を用いた、装置の校正精度の評価と血球計数器校正用標準液の経時の保存性を評価した。
【0160】
[血球計数器校正用標準液の保存性]
血球計数器校正用標準液の保存性は、エルマ製の血球カウンターPC602を用い、調整当日と室温保存180日後の分散液について、経時の粒子数の測定値の変化量から評価した。下記の基準で評価した結果を表2に示す。なお、評価が2以上の場合、血球計数器校正用標準液の保存性が良好と評価した。
3:10%未満
2:10%以上、20%未満
1:20%以上
【0161】
[血球カウンターの測定精度]
電気抵抗検出式における血球計数器校正用標準液の測定精度は、エルマ製の血球カウンターPC602を用いて測定した標準液に分散される粒子数の計測値から求まるヘマトクリット値と、遠心法から求まるヘマトクリット値との乖離量から評価した。下記の基準で評価した結果を表2に示す。なお、評価が2以上の場合、血球計数器校正用標準液の校正精度が良好であると評価した。
3:10%未満
2:10%以上、20%未満
1:20%以上
【0162】
【0163】
表1、2より、平均円形度が0.95以上0.985以下、体積平均粒径が2μm以上10μm以下、粒径の変動係数が2.7%以上10.3%以下で、アスペクト比が1.3以上5.0以下の形状を有し、表面に有するカルボキシル基の密度が0.001を有し、
前記カルボキシル基の密度が0.001個/Å2以上12個/Å2以下の樹脂粒子を含有する血球計数器校正用標準液は、校正精度、保存性がいずれも良好であった(実施例1~10)。
【0164】
これに対して、体積平均粒径が2μm未満の樹脂粒子を含有する血球計数器校正用標準液は保存性が不良であり(比較例1)、平均円形度が0.99を超える樹脂粒子を含有する血球計数器校正用標準液は、校正精度が不良であった(比較例2)。
【0165】
これらの結果から、平均円形度が0.99以下かつ体積平均粒径が2μm以上10μm以下の樹脂粒子の血球計数器校正用標準液は、校正精度と保存安定性に優れていることができることが判った。
【0166】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0167】