IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置 図1
  • 特許-画像形成装置 図2
  • 特許-画像形成装置 図3
  • 特許-画像形成装置 図4
  • 特許-画像形成装置 図5
  • 特許-画像形成装置 図6
  • 特許-画像形成装置 図7
  • 特許-画像形成装置 図8
  • 特許-画像形成装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
G03G15/20 525
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020182311
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072714
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】山村 宏樹
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-020443(JP,A)
【文献】特開2020-086349(JP,A)
【文献】特開2015-018034(JP,A)
【文献】特開2012-173383(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0018351(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02068199(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を加熱してシート上に定着する定着回転体と、前記定着回転体に圧接することでシートが搬送されるニップ部を形成する加圧回転体と、前記定着回転体の通紙領域全域の表面に当接して当該表面を研磨可能な当接部材と、前記定着回転体の表面に対して前記当接部材を接離させる接離機構と、を具備した定着装置を備え、
前記ニップ部を通過するシートの搬送方向の長さに、当該搬送方向の長さとは異なる当該シートに関するシート情報に応じて定められた係数を乗じた値を、前記ニップ部をシートが通過するたびに累積して加算したものを累積加重通紙距離として、前記ニップ部を通過するシートの幅方向のサイズごとに求めて、
前記幅方向のサイズごとに求めた複数の前記累積加重通紙距離のうち、1つの前記累積加重通紙距離が所定値を超えたら、その他の前記累積加重通紙距離が前記所定値を超えていなくても、前記接離機構によって前記定着回転体の表面に対して離間していた前記当接部材を当接させる制御モードを実行し、
前記制御モードが実行されたときに、前記シート情報に応じて定められた前記係数が記憶されるとともに前記累積加重通紙距離を記憶する記憶部に記憶された前記累積加重通紙距離をリセットすることを特徴とする画像形成装置
【請求項2】
前記記憶部と、
前記シートの搬送方向の長さに関する情報と、前記シート情報と、を取得する情報取得部と、
前記情報取得部で取得された前記シートの搬送方向の長さに関する情報と前記シート情報と、前記記憶部に記憶された前記係数と、に基づいて前記累積加重通紙距離を演算する演算部と、
を備え、
前記制御モードが実行されなかったときには、前記記憶部に記憶された前記累積加重通紙距離を、前記演算部で演算された前記累積加重通紙距離に更新することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記シート情報は、シートの厚さであって、
前記シートの厚さが厚いときに、前記シートの厚さが薄いときに比べて、前記係数が大きくなるように設定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置
【請求項4】
前記シート情報は、シートの坪量であって、
前記シートの坪量が大きいときに、前記シートの坪量が小さいときに比べて、前記係数が大きくなるように設定されたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の画像形成装置
【請求項5】
前記シート情報は、シートの剛度であって、
前記シートの剛度が高いときに、前記シートの剛度が低いときに比べて、前記係数が大きくなるように設定されたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の画像形成装置
【請求項6】
前記シート情報は、シートの種類であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の画像形成装置
【請求項7】
前記シート情報は、シートの銘柄であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の画像形成装置
【請求項8】
前記当接部材は、駆動機構による駆動によって回転可能に構成され、
前記制御モードは、前記駆動機構によって、回転状態の前記定着回転体の表面に当接した前記当接部材を前記定着回転体の回転方向と同じ方向に回転させることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の画像形成装置
【請求項9】
前記制御モードは、一連の印刷動作が終了した後に実行されることを特徴とする請求項1~請求項8のいずれかに記載の画像形成装置
【請求項10】
前記制御モードは、一連の印刷動作が開始される前に実行されることを特徴とする請求項1~請求項8のいずれかに記載の画像形成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置における定着装置において、経時で定着画像の画質が低下する不具合を軽減することを目的として、所定のタイミングで定着ローラや定着ベルトなどの定着回転体の表面に当接部材を当接させて、定着回転体の表面を研磨する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、特許文献1には、定着装置に搬送された記録材(シート)の枚数が所定枚数を超えるごとに、摺擦回転体(当接部材)を定着部材(定着回転体)の表面に当接させて、定着部材の表面を摺擦する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の定着装置は、経時において定着画像の画質が低下する不具合を効率的に軽減することができなかった。
すなわち、定着画像の画質低下がまだ生じていないのに、当接部材によって定着回転体の表面を無駄に研磨してしまったり、定着画像の画質低下が既に生じているのに、当接部材による定着回転体の表面の研磨がおこなわれなかったりしていた。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、経時において定着画像の画質が低下する不具合を効率的に軽減することができる、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における画像形成装置は、トナー像を加熱してシート上に定着する定着回転体と、前記定着回転体に圧接することでシートが搬送されるニップ部を形成する加圧回転体と、前記定着回転体の通紙領域全域の表面に当接して当該表面を研磨可能な当接部材と、前記定着回転体の表面に対して前記当接部材を接離させる接離機構と、を具備した定着装置を備え、前記ニップ部を通過するシートの搬送方向の長さに、当該搬送方向の長さとは異なる当該シートに関するシート情報に応じて定められた係数を乗じた値を、前記ニップ部をシートが通過するたびに累積して加算したものを累積加重通紙距離として、前記ニップ部を通過するシートの幅方向のサイズごとに求めて、前記幅方向のサイズごとに求めた複数の前記累積加重通紙距離のうち、1つの前記累積加重通紙距離が所定値を超えたら、その他の前記累積加重通紙距離が前記所定値を超えていなくても、前記接離機構によって前記定着回転体の表面に対して離間していた前記当接部材を当接させる制御モードを実行し、前記制御モードが実行されたときに、前記シート情報に応じて定められた前記係数が記憶されるとともに前記累積加重通紙距離を記憶する記憶部に記憶された前記累積加重通紙距離をリセットするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、経時において定着画像の画質が低下する不具合を効率的に軽減することができる、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
図2】定着装置を示す構成図である。
図3】定着装置でおこなわれる制御を示すフローチャートである。
図4】シートの厚さと、累積加重通紙距離を算出するときに用いる重みづけ係数と、の関係を示す表図である。
図5】変形例1としての、シートの坪量と、累積加重通紙距離を算出するときに用いる重みづけ係数と、の関係を示す表図である。
図6】変形例2としての、シートの剛度と、累積加重通紙距離を算出するときに用いる重みづけ係数と、の関係を示す表図である。
図7】変形例3としての、シートの種類と、シートの坪量と、累積加重通紙距離を算出するときに用いる重みづけ係数と、の関係を示す表図である。
図8】変形例4としての、記憶部に記憶されたシートの銘柄ごとのデータを示す表図である。
図9】変形例5としての、定着装置でおこなわれる制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
まず、図1にて、画像形成装置1における全体の構成・動作について説明する。
図1において、1はコピー機能とプリンタ機能とを有する複合機としての画像形成装置、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部、3は原稿Dを原稿読込部4に搬送する原稿搬送部、4は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、7は用紙等のシートPが収容される給紙部、を示す。
また、9はシートPの搬送タイミングを調整するレジストローラ(タイミングローラ)、11Y、11M、11C、11BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナー像が形成される感光体ドラム、12は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上を帯電する帯電部、を示す。
また、13は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成される静電潜像を現像する現像部、14は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成されたトナー像をシートP上に重ねて転写する1次転写バイアスローラ、15は各感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の未転写トナーを回収するクリーニング部、を示す。
また、16は中間転写ベルト17を清掃する中間転写ベルトクリーニング部、17は複数色のトナー像が重ねて転写される中間転写ベルト、18は中間転写ベルト17上のカラートナー像をシートP上に転写するための2次転写バイアスローラ、20はシートP上のトナー像(未定着画像)を定着する定着装置、を示す。
また、65は印刷動作(画像形成動作)に関わる情報が表示されたり操作をおこなったりするための操作パネル、を示す。
【0011】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成動作(印刷動作)について説明する。
画像形成装置1が複写機として使用される場合、ユーザーによって、原稿台に原稿Dが載置されて、操作パネル65に印刷条件などの必要な情報が入力されてコピーボタンが押される。
これにより、原稿Dが、原稿搬送部3の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部4のコンタクトガラス5上に載置される。そして、原稿読込部4で、コンタクトガラス5上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
【0012】
詳しくは、原稿読込部4は、コンタクトガラス5上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0013】
なお、画像形成装置1がプリンタとして使用される場合には、ユーザーによって、画像形成装置1に通信可能に接続されたパソコン100(図2(A)参照)などの外部入力装置から画像情報や印刷条件などの必要な情報が入力されて、それらの情報が画像形成装置1の制御部60(情報取得部)で取得される。
【0014】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応する感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に向けて発せられる。
【0015】
一方、4つの感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKは、それぞれ、図1の反時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、帯電部12との対向部で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
書込み部2において、4つの光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応してそれぞれ射出される。各レーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0016】
イエロー成分に対応したレーザ光は、紙面左側から1番目の感光体ドラム11Yの表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラーにより、感光体ドラム11Yの回転軸方向(主走査方向、幅方向)に走査される。こうして、帯電部12にて帯電された後の感光体ドラム11Y上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0017】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、紙面左から2番目の感光体ドラム11Mの表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、紙面左から3番目の感光体ドラム11Cの表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、紙面左から4番目の感光体ドラム11BKの表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0018】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、現像部13との対向位置に達する。そして、各現像部13から感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の潜像が現像される(現像工程である。)。
その後、現像工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、中間転写ベルト17との対向部に達する。ここで、それぞれの対向部には、中間転写ベルト17の内周面に当接するように1次転写バイアスローラ14が設置されている。そして、1次転写バイアスローラ14の位置で、中間転写ベルト17上に、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程である。)。
【0019】
そして、転写工程後の感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、それぞれ、クリーニング部15との対向位置に達する。そして、クリーニング部15で、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。
その後、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKの表面は、除電部を通過して、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BKにおける一連の作像プロセスが終了する。
【0020】
他方、感光体ドラム11Y、11M、11C、11BK上の各色のトナーが重ねて転写(担持)された中間転写ベルト17は、図中の時計方向に走行して、2次転写バイアスローラ18との対向位置に達する。そして、2次転写バイアスローラ18との対向位置で、シートP上に中間転写ベルト17上に担持されたカラーのトナー像が転写される(2次転写工程である。)。
その後、中間転写ベルト17表面は、中間転写ベルトクリーニング部16の位置に達する。そして、中間転写ベルト17上に付着した未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング部16に回収されて、中間転写ベルト17における一連の転写プロセスが終了する。
【0021】
ここで、中間転写ベルト17と2次転写バイアスローラ18との間(2次転写ニップである。)に搬送されるシートPは、給紙部7からレジストローラ9等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、シートPを収納する給紙部7から、給紙ローラ8により給送されたシートPが、搬送ガイドを通過した後に、レジストローラ9に導かれる。レジストローラ9に達したシートPは、タイミングを合わせて、2次転写ニップに向けて搬送される。
【0022】
そして、フルカラー画像が転写されたシートPは、搬送ベルトによって定着装置20に導かれる。定着装置20では、定着ベルトと加圧ローラとのニップ部(定着ニップ)にて、カラー画像(トナー像)がシートP上に定着される(定着工程である。)。
そして、定着工程後のシートPは、排紙ローラによって、装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0023】
次に、図2(A)を用いて、画像形成装置本体1に設置される定着装置20の構成・動作について詳述する。
図2(A)に示すように、定着装置20は、定着回転体としての定着ベルト21、定着補助ローラ22、加熱ローラ23、テンションローラ24、加熱手段としてのヒータ25、温度センサ40、加圧回転体としての加圧ローラ31、当接部材としての研磨ローラ26、等で構成されている。
【0024】
ここで、定着回転体としての定着ベルト21(定着部材)は、ポリイミド等の樹脂材料からなるベース層上に、弾性層、離型層(表面層)が順次積層された多層構造の無端状ベルトである。定着ベルト21の弾性層は、層厚が90μm程度のフッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性材料で形成されている。定着ベルト21の離型層は、層厚が20μm程度のPFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)等で形成されている。定着ベルト21の表層に離型層を設けることにより、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保されることになる。定着ベルト21は、2つのローラ部材(定着補助ローラ22と加熱ローラ23とである。)に張架・支持されて、図2中の矢印方向に走行する。定着部材として熱容量の低い定着ベルト21を用いることで、装置の昇温特性が向上する。
なお、本実施の形態では、定着補助ローラ22と加熱ローラ23とに張架・支持された定着ベルト21に所定の張力を付与するために、定着ベルト21の外周面にテンションローラ24が圧接するように構成している。
【0025】
定着補助ローラ22は、SUS304等の芯金22a上に、発泡性シリコーンゴム等の発泡材料からなる弾性層22bが形成されたローラ部材であって、加圧回転体としての加圧ローラ31に定着ベルト21を介して圧接してニップ部(定着ニップ)を形成する。弾性層22bを発泡材料で形成することで、定着ニップにおけるニップ幅(ニップ量)を比較的大きく設定できるとともに、定着ベルト21の熱が定着補助ローラ22に移行しにくくなる。定着補助ローラ22は、図2中の時計方向に回転する。
【0026】
加熱ローラ23は、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料からなる中空構造のローラ部材であって、その円筒体の内部には加熱手段としてのヒータ25(熱源)が固設されている。加熱ローラ23の肉厚を比較的薄く設定することで、加熱体の熱容量が低下して装置の昇温特性が向上する(立ち上がり時間が短縮化される。)。
【0027】
加熱ローラ23に内設されたヒータ25(加熱手段)は、ハロゲンヒータであって、その両端部が定着装置20の側板に固定されている。そして、画像形成装置本体1のメインスイッチがオンされた状態で、電源部からヒータ25に電力が供給される。そして、制御部60により出力制御されたヒータ25からの輻射熱によって加熱ローラ23が加熱されて、さらに加熱ローラ23によって加熱された定着ベルト21の表面からシートP上のトナー像Tに熱が加えられる。
ヒータ25の出力制御は、定着ベルト21表面に非接触で対向する温度センサ40によるベルト表面温度の検知結果に基づいておこなわれる。詳しくは、温度センサ40(サーモパイル)の検知結果に基づいて定められる通電時間だけ、ヒータ25に交流電圧が印加される。このようなヒータ25の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度(目標制御温度)に調整制御することができる。
なお、本実施の形態では、加熱ローラ23の内部に1本のヒータ25を設置したが、複数本のヒータを設置することもできる。
【0028】
また、加圧回転体としての加圧ローラ31(加圧部材)は、主として、金属材料からなる芯金32と、芯金32の外周面に接着層を介して形成された弾性層33と、弾性層33の外周面に形成された表面層34(離型層)と、からなる。加圧ローラ31の弾性層33は、層厚が数mm程度であって、絶縁性を有する発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の弾性材料で形成されている。加圧ローラ31の表面層34は、層厚が数十μm~数百μm程度であって、導電性を有するPFA(PFAチューブ)等の低摩擦材料で形成されている。加圧ローラ31の表面層34として導電性を有する離型層を設けることにより、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保されるとともに、シートPが加圧ローラ31に静電気的に吸着して分離性が低下する不具合を軽減することができる。
なお、定着ベルト21と加圧ローラ31との温度差を軽減するために、加圧ローラ31の内部にヒータを設置することもできる。
【0029】
そして、加圧ローラ31は、加圧機構によって定着ベルト21を介して定着補助ローラ22に圧接する。こうして、加圧ローラ31と定着ベルト21との間に、所望のニップ部が形成される。なお、加圧ローラ31を定着ベルト21(定着補助ローラ22)に対して所定の圧接力で加圧する加圧機構を、その圧接力を解除(又は減圧)ができるように構成することもできる。
なお、本実施の形態では、加圧ローラ31の弾性層33は、定着補助ローラ22の弾性層22bに比べて、層厚が薄くて低硬度に形成されている。これにより、加圧ローラ31と定着ベルト21(定着補助ローラ22)とのニップ部は、図2に示すように、定着補助ローラ22が凹んで加圧ローラ31のローラ形状に沿うように形成されることになる。そのため、ニップ部から送出されるシートPは、加圧ローラ31のローラ形状に沿うような軌跡を描きやすくなる。
なお、本実施の形態における定着装置20には、定着ベルト21(定着回転体)の表面に当接して、定着ベルト21の表面を研磨する研磨ローラ26が設置されているが、これらについても後で詳しく説明する。
【0030】
上述のように構成された定着装置20は、次のように動作する。
装置本体1のメインスイッチが投入されると、ヒータ25に交流電圧が印加(給電)される。
そして、印刷指令(ジョブ指令)が入力されると、駆動モータ70によって加圧ローラ31が図2中の矢印方向(反時計方向)に回転駆動されて、それにともない定着ベルト21(定着補助ローラ22、加熱ローラ23)が図2中の矢印方向(時計方向)に従動回転することになる。その後、給紙部7からシートPが給送されて、2次転写バイアスローラ18の位置で、中間転写ベルト17上のトナー像がシートP上に未定着画像として担持される。未定着画像T(トナー像)が担持されたシートPは、図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。そして、定着ベルト21による加熱と、定着ベルト21(定着補助ローラ22)及び加圧ローラ31の押圧力とによって、シートPの表面にトナー像Tが定着される。その後、回転する定着ベルト21及び加圧ローラ31によってそのニップ部から送出されたシートPは、矢印Y11方向に搬送される。
【0031】
以下、本実施の形態における定着装置20(画像形成装置1)の、特徴的な構成・動作について、詳しく説明する。
先に図2(A)を用いて説明したように、本実施の形態における定着装置20には、トナー像を加熱してシートP上に定着する定着ベルト21(定着回転体)や、定着ベルト21に圧接することでシートPが搬送されるニップ部(定着ニップ)を形成する加圧ローラ31(加圧回転体)が設置されている。
【0032】
ここで、図2(A)、(B)を参照して、本実施の形態における定着装置20には、定着ベルト21(定着回転体)の表面に当接して、その表面を研磨可能な当接部材としての研磨ローラ26や、定着ベルト21(定着回転体)の表面に対して研磨ローラ26(当接部材)を接離させる接離機構75、が設置されている。
研磨ローラ26は、通紙が繰り返されることによってダメージを受けた定着ベルト21の表面を研磨して、定着ベルト21の表面を回復(リフレッシュ)させるための部材である。
研磨ローラ26は、少なくとも定着ベルト21の通紙領域の全域に当接可能に形成されることが好ましい。なお、本実施の形態において、研磨ローラ26は、定着ベルト21の幅方向(図2の紙面垂直方向である。)の全域に当接可能に形成されている。
【0033】
詳しくは、当接部材としての研磨ローラ26は、駆動機構としてのモータ76による駆動によって回転可能に構成されたローラ部材である。
研磨ローラ26(当接部材)は、芯金上に、シリコーンゴム、フッ素系樹脂などからなるバインダー層が形成されたものであって、そのバインダー層には微細な砥粒が多数分散されている。砥粒としては、粒度が♯1500番程度の白色アルミナ、褐色アルミナ解砕型アルミナ、淡紅色アルミナ、黒色炭化ケイ素、ダイヤモンド、CBNなどを用いることができる。砥粒は、ベルト表面を荒らしすぎて筋状の異常画像を発生させることなく、定着画像の光沢度が低下するなどの不具合が生じさせないものを選択することが望ましい。また、砥粒は、ベルト表面をある程度荒らすものでないと、定着ベルト21の表面に付着した付着物を除去しにくくなったり、局所的な塑性変形において均一性を得ることが難しくなったりしてしまう。これらのことから、砥粒の粒度は♯600~3000番手の範囲から選択することが望ましい。
なお、本実施の形態では、研磨ローラ26として、バインダー層に微細な砥粒が多数分散されたものを用いたが、サンドブラスト処理などによってローラ表面が所定の表面粗さで形成されたものを用いることもできる。
【0034】
また、接離機構75は、例えば、カム機構などであって、制御部60による制御によって、研磨ローラ26を、定着ベルト21から離間する離間位置(図2(A)に示す位置である。)と、定着ベルト21に当接する当接位置(図2(B)に示す位置である。)と、の間で移動させることができるように構成されている。
そして、通常時(印刷時など、後述する「回復モード(制御モード)」が実行されていないときである。)には、図2(A)に示すように、接離機構75によって研磨ローラ26は離間位置に位置している。そして、「回復モード(制御モード)」が実行されるときに、図2(B)に示すように、接離機構75によって研磨ローラ26は当接位置に移動することになる。
なお、本実施の形態では、研磨ローラ26が定着ベルト21に当接するとき、定着ベルト21が定着補助ローラ22と研磨ローラ26との間に挟まれるため、定着ベルト21に対する研磨ローラ26の当接圧が安定する。そのため、研磨ローラ26によるベルト表面の研磨性も安定することになる。
【0035】
また、駆動機構としてのモータ76は、図2(B)に示すように、後述する「回復モード(制御モード)」が実行されるときに、定着ベルト21に当接した状態の研磨ローラ26を回転駆動するものである。
このように研磨ローラ26を回転させることで、研磨ローラ26によるベルト表面の研磨性が向上するとともに、研磨ローラ26のローラ表面が局所的に摩耗する不具合を防止することができる。
なお、本実施の形態では、研磨ローラ26による研磨性を向上させるため、定着ベルト21との当接位置において、定着ベルト21の回転方向(走行方向)に対してカウンタ方向に摺接するように、研磨ローラ26を回転させている。具体的に、研磨ローラ26は、モータ76による回転駆動によって、図2(B)の時計方向に回転することになる。
【0036】
ここで、本実施の形態では、ニップ部(定着ニップ)を通過するシートPの搬送方向の長さM(搬送方向サイズ)に、その搬送方向の長さとは異なる当該シートPに関するシート情報(本実施の形態では、シートPの厚さである。)に応じて定められた係数X(重みづけ係数)を乗じた値(M×X)を、ニップ部をシートPが通過するたびに累積して加算したものを「累積加重通紙距離H(=Σ(M×X)」として求めている。
そして、そのようにして求めた「累積加重通紙距離H」に基づいて、接離機構75によって、定着ベルト21(定着回転体)の表面に対して離間していた研磨ローラ26(当接部材)を当接させる「制御モード」が実行されることになる。すなわち、「累積加重通紙距離H」に基づいて、先に図2(B)を用いて説明したように、研磨ローラ26による定着ベルト21の表面の研磨がおこなわれる。
以下、このような制御モードを、適宜に「回復モード」と呼ぶことにする。
【0037】
すなわち、本実施の形態では、定着ニップを通過するシートPの搬送方向サイズMの総和(累計通紙距離:Σ(M))に基づいて回復モードの実行の要否を判断するのではなくて、定着ニップを通過するシートPの搬送方向サイズMに重みづけをした(係数Xを乗じた)値(M×X)の総和(累計通紙距離H)に基づいて回復モードの実行の要否を判断している。
【0038】
これは、通紙が繰り返されることによって定着ベルト21の表面が受けるダメージは、単純に定着ニップを通過するシートPの搬送方向サイズMの総和に比例するのではなくて、搬送方向サイズ以外のシートPの特性も大きく関与するためである。
すなわち、単純に定着ニップを通過するシートPの搬送方向サイズMの総和に基づいて回復モードの実行の要否を判断してしまうと、定着ベルト21のダメージがそれほど進んでいないのに定着ベルト21の表面を無駄に研磨してしまったり、定着ベルト21のダメージがかなり進んでいるのに定着ベルト21の表面を研磨しなかったりしてしまう。
これに対して、本実施の形態では、定着ベルト21のダメージの進行状態を反映できるように、シートPの搬送方向サイズMに重みづけをして、それらの総和(累積加重通紙距離H)に基づいて回復モードの実行の要否を判断しているため、そのような不具合が軽減される。したがって、経時において、定着ベルト21のダメージによって定着画像の画質が低下する不具合を効率的に軽減することができる。
【0039】
特に、本実施の形態において、「累積加重通紙距離」は、ニップ部(定着ニップ)を通過するシートPの幅方向のサイズ(搬送方向サイズに直交する「幅方向サイズ」である。)ごとに求められる。
そして、幅方向のサイズごとに求めた「累積加重通紙距離H」が所定値Aを超えるたびに、「回復モード(制御モード)」が実行されることになる。
例えば、A4縦サイズに対応する幅方向サイズの「累積加重通紙距離H」が所定値Aに達したとき、その他の幅方向サイズの「累積加重通紙距離H」が所定値Aに達していなくても、回復モードが実行される。その後、A5縦サイズに対応する幅方向サイズの「累積加重通紙距離H」が所定値Aに達したとき、その他の幅方向サイズの「累積加重通紙距離H」が所定値Aに達していなくても、回復モードが実行される。
【0040】
このように回復モードを実行する理由は、定着ベルト21が受けるダメージの多くが、シートPの幅方向両端のエッジ部によるものであるためである。
そのため、幅方向サイズごとに求めた「累積加重通紙距離H」が所定値Aを超えるたびに回復モードを実行することで、経時において、定着ベルト21のダメージによって定着画像の画質が低下する不具合をさらに効率的に軽減することができる。
【0041】
ここで、先に説明したように、本実施の形態では、シート情報としての「シートPの厚さ」に応じて係数X(重みづけ係数)を定めている。
そして、シートPの厚さが厚いときに、シートPの厚さが薄いときに比べて、係数Xが大きくなるように設定している。
これは、シートPの厚さが厚くなるほど、定着ベルト21が受けるダメージが大きくなるためである。
【0042】
具体例として、図4に示すように、シートPの厚さ(用紙厚さ)が薄い薄紙については係数X(重みづけ係数)が「0」に設定され、シートPの厚さが中程度の中厚紙については係数Xが「1」に設定され、シートPの厚さが厚い厚紙については係数Xが「1.5」に設定される。
このような場合、例えば、1枚目のシートPが縦M1×横Nの厚紙で、2~5枚目のシートPが縦M2×横Nの中厚紙であったときの、幅サイズNの「累積加重通紙距離H」は、H=1×M1×1.5+4×M2×1になる。
なお、図4の具体例は一例であって、当然に、定着ベルト21のダメージとの関係に基づいて最適な係数Xの設定をおこなうことが好ましい。このことは、後述する図5図8に示す具体例も同様である。
【0043】
ここで、本実施の形態において、「回復モード(制御モード)」は、先に説明したように、モータ76(駆動機構)によって、回転状態の定着ベルト21(定着回転体)の表面に当接した研磨ローラ26(当接部材)を回転させるものである。すなわち、回復モードが実行されると、図2(A)に示すように離間位置で回転停止した状態の研磨ローラ26が、図2(B)に示すように当接位置で回転することになる。
【0044】
また、本実施の形態において、「回復モード(制御モード)」は、一連の印刷動作(ジョブ)が終了した後に実行される。
具体的に、一連の印刷動作(ジョブ)が終了した後に、「累積加重通紙距離H」が算出されて、その値Hが所定値Aを超えているときに回復モードが実行されることになる。
このように制御することで、ジョブが中断されてダウンタイムが生じる不具合を防止することができる。
【0045】
ここで、図2(A)を参照して、本実施の形態における画像形成装置1には、シートPの搬送方向の長さ(搬送方向サイズ)に関する情報と、シート情報(本実施の形態では、シートPの厚さである。)と、を取得する情報取得部が設けられている。具体的に、画像形成装置1が複写機として用いられる場合には、ユーザーによって操作パネル65を介してシートPに関する種々の情報が入力されて、操作パネル65が情報取得部として機能することになる。これに対して、画像形成装置1がプリンタとして用いられる場合には、ユーザーによるパソコン100(外部入力装置)の操作によって、パソコン100から画像形成装置1の制御部60への通信によってシートPに関する種々の情報が送られて、制御部60が情報取得部として機能することになる。
このように、本実施の形態では、シートPの搬送方向サイズや厚さ(シート情報)を、検知装置によって直接的に検知するのではなくて、操作パネル65やパソコン100に入力される情報に基づいて取得するようにしているため、検知装置を設置する場合に比べて、画像形成装置1が低コスト化、小型化されることになる。
【0046】
また、画像形成装置1の制御部60には、シート情報に応じて定められた係数X(図4に例示したような係数表である。)が記憶されるとともに、累積加重通紙距離Hを記憶する記憶部62(メモリ)が設けられている。
さらに、画像形成装置1の制御部60には、情報取得部で取得されたシートPの搬送方向の長さ(搬送方向サイズ)に関する情報とシート情報(シート厚さの情報)と、記憶部62に記憶された係数Xと、に基づいて累積加重通紙距離Hを演算する演算部61が設けられている。
【0047】
そして、回復モード(制御モード)が実行されなかったときには、記憶部62に記憶された累積加重通紙距離Hを、演算部61で演算された累積加重通紙距離Hに更新する。すなわち、回復モードが実行されなかったときには、前回の累積加重通紙距離H´に新たな加重通紙距離M×Xを加算した累積加重通紙距離Hに更新されるように、記憶部62のデータが書き換えられる。
これに対して、回復モード(制御モード)が実行されたときには、記憶部62に記憶された累積加重通紙距離Hをリセットする(ゼロにする)。
【0048】
図3を用いて、ここまで説明した回復モードに関わる制御フローについて説明する。
まず、印刷(ジョブ)が開始されて、その印刷が終了すると(ステップS1、S2)、演算部61で累積加重通紙距離Hが算出される(ステップS3)。
そして、ステップS3で算出した累積加重通紙距離Hが所定値A以上であるかが判別される(ステップS4)。その結果、累積加重通紙距離Hが所定値A以上でないものと判別された場合には、定着画像の画質低下が生じるほどの定着ベルト21のダメージがないものとして、回復モードを実行せずに、記憶部62においてステップS3で算出した累積加重通紙距離Hに更新して(ステップS5)、本フローを終了する。
これに対して、ステップS4で、累積加重通紙距離Hが所定値A以上であるものと判別された場合には、定着画像の画質低下が生じるほどの定着ベルト21のダメージがあるものとして、回復モードを実行開始する(ステップS6)。具体的に、研磨ローラ26を定着ベルト21に当接させて回転駆動する。
そして、所定時間が経過した後に、回復モードを終了する(ステップS7、S8)。具体的に、研磨ローラ26を離間位置に戻すとともに、回転停止する。
そして、記憶部62に記憶されていた累積加重通紙距離Hをリセットして(ステップS9)、本フローを終了する。
【0049】
<変形例1>
変形例1では、シート情報としての「シートPの坪量」に応じて係数X(重みづけ係数)を定めている。
そして、シートPの坪量が大きいときに、シートPの坪量が小さいときに比べて、係数Xが大きくなるように設定している。
これは、シートPの坪量とシートPの厚さとには相関関係があって、シートPの坪量が大きくなるほど、定着ベルト21が受けるダメージが大きくなるためである。
具体例として、図5に示すように、シートPの坪量が52.3~63.0gsm(紙厚1)のものについては係数X(重みづけ係数)が「0」に設定され、シートPの坪量が63.1~80.0gsm(紙厚2)のものについても係数Xが「0」に設定され、シートPの坪量が80.1~105.0gsm(紙厚3)のものについては係数Xが「0.5」に設定され、シートPの坪量が105.1~163.0gsm(紙厚4)のものについても係数Xが「0.5」に設定され、シートPの坪量が105.1~220.0gsm(紙厚5)のものについては係数Xが「1.0」に設定され、シートPの坪量が220.1~256.0gsm(紙厚6)のものについても係数Xが「1.0」に設定され、シートPの坪量が256.1~300.0gsm(紙厚7)のものについては係数Xが「1.5」に設定され、シートPの坪量が300.1~350.0gsm(紙厚8)のものについても係数Xが「1.5」に設定される。
そして、変形例1においても、経時において定着画像の画質が低下する不具合を効率的に軽減することができる。
【0050】
<変形例2>
変形例2では、シート情報としての「シートPの剛度(剛性)」に応じて係数X(重みづけ係数)を定めている。
そして、シートPの剛度が高いときに、シートPの剛度が低いときに比べて、係数Xが大きくなるように設定している。
これは、シートPの剛度が大きくなるほど、定着ベルト21が受けるダメージが大きくなるためである。
具体例として、図6に示すように、シートPの剛度が低いものについては係数X(重みづけ係数)が「0」に設定され、シートPの剛度が中程度のものについては係数Xが「1」に設定され、シートPの剛度が高いものについては係数Xが「1.5」に設定される。
そして、変形例2においても、経時において定着画像の画質が低下する不具合を効率的に軽減することができる。
【0051】
<変形例3>
変形例3では、シート情報としての「シートPの種類」に応じて係数X(重みづけ係数)を定めている。
これは、シートPの種類によって、定着ベルト21が受けるダメージが異なるためである。
具体例として、図7に示すように、シートPの坪量に応じた係数Xの設定に加えて、シートPの種類によって(普通紙であるか、合成紙であるかによって)係数Xを定めている。合成紙が通紙される場合には、普通紙が通紙される場合に比べて、定着ベルト21が受けるダメージが大きくなるため、同じ坪量(厚さ)のものであっても係数Xが大きくなるような設定になっている。
そして、変形例3においても、経時において定着画像の画質が低下する不具合を効率的に軽減することができる。
なお、変形例3では、簡単のため、シートPの種類を普通紙と合成紙との2種類としたが、それ以上の種類数で分類することができる。例えば、合成紙をさらに、合成パルプ紙と、合成フィルム紙と、合成プラスチック紙と、に細かく分類して重みづけ係数Xを設定することもできる。さらに、コート紙(塗工紙)に対する重みづけ係数Xを設定することもでき、その場合に、コート紙をグロスコート紙とマットコート紙とに細分類して重みづけ係数Xを設定することもできる。
【0052】
<変形例4>
変形例4では、シート情報としての「シートPの銘柄」に応じて係数X(重みづけ係数)を定めている。
これは、図8に示すように、シートPの銘柄によって、定着ベルト21が受けるダメージに関与する、シートPの坪量、厚さ、剛度、種類を細かく特定することができるためである
具体的に、変形例4では、操作パネル65やパソコン100に入力されるシートPの銘柄に基づいて、予め記憶部62に記憶された銘柄と係数Xとの関係を示すテーブルを参照して、通紙されるシートPの銘柄に対応した係数X(重みづけ係数)を求める。このとき、操作パネル65やパソコン100にシートPの銘柄を入力することで、シートPの搬送方向サイズMに関する情報も同時に入力されるようにすることで、その時点で(印刷開始前に)、累積加重通紙距離Hを求めることが可能になる。すなわち、回復モード(制御モード)を、一連の印刷動作が開始される前に実行することが可能になる。
そして、変形例4においても、経時において定着画像の画質が低下する不具合を効率的に軽減することができる。
【0053】
<変形例5>
変形例5では、回復モード(制御モード)が、一連の印刷動作(ジョブ)が開始される前に実行されるようにしている。
図9に示すように、まず、ユーザーによる操作パネル65やパソコン100の入力操作に基づいて、操作パネル65や制御部60で、その印刷(ジョブ)に係る情報(特に、シートの搬送方向サイズに関する情報やシート情報である。)が取得される(ステップS10)。
そして、ステップS10で取得した情報に基づいて、そのジョブについての累積加重通紙距離Hが演算部61で算出される(ステップS11)。さらに、演算部61で、そのジョブが終了したときの累積加重通紙距離Hが演算部61で前もって算出される(ステップS12)。
そして、ステップS12で算出した累積加重通紙距離Hが所定値A以上であるかが判別される(ステップS4)。その結果、累積加重通紙距離Hが所定値A以上でないものと判別された場合には、定着画像の画質低下が生じるほどの定着ベルト21のダメージがないものとして、回復モードを実行せずに、印刷(ジョブ)を開始する(ステップS14)。そして、その印刷が終了すると(ステップS15)、記憶部62においてステップS12で算出した累積加重通紙距離Hに更新して(ステップS16)、本フローを終了する。
これに対して、ステップS4で、累積加重通紙距離Hが所定値A以上であるものと判別された場合には、定着画像の画質低下が生じるほどの定着ベルト21のダメージがあるものとして、回復モードを実行開始する(ステップS6)。そして、所定時間が経過した後に回復モードを終了して(ステップS7、S8)、記憶部62に記憶されていた累積加重通紙距離Hをリセットする(ステップS9)。その後、印刷(ジョブ)を開始して(ステップS14)、その印刷が終了すると(ステップS15)、記憶部62において累積加重通紙距離H(ステップS9でリセットしたものである。)を更新して(ステップS16)、本フローを終了する。
そして、変形例5においても、経時において定着画像の画質が低下する不具合を効率的に軽減することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態における定着装置20は、トナー像を加熱してシートP上に定着する定着ベルト21(定着回転体)と、定着ベルト21に圧接することでシートPが搬送されるニップ部を形成する加圧ローラ31(加圧回転体)と、定着ベルト21の表面に当接して当該表面を研磨可能な研磨ローラ26(当接部材)と、定着ベルト21の表面に対して研磨ローラ26を接離させる接離機構75と、が設けられている。そして、ニップ部を通過するシートPの搬送方向の長さに、その搬送方向の長さとは異なるシートPに関するシート情報に応じて定められた係数を乗じた値を、ニップ部をシートPが通過するたびに累積して加算したものを累積加重通紙距離として求めている。そして、累積加重通紙距離に基づいて、接離機構75によって定着ベルト21の表面に対して離間していた研磨ローラ26を当接させる「回復モード(制御モード)」が実行される。
これにより、経時において定着画像の画質が低下する不具合を効率的に軽減することができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、定着回転体として定着ベルト21(ベルト部材)を用いたが、定着回転体として定着ローラ(ローラ部材)を用いることもできる。
また、本実施の形態では、加圧回転体として加圧ローラ31(ローラ部材)を用いたが、加圧回転体として加圧ベルト(ベルト部材)を用いることもできる。
また、本実施の形態では、加熱手段としてヒータ25を用いた熱ヒータ方式の定着装置20に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、例えば、加熱手段として電磁誘導コイルを用いた電磁誘導方式(IH方式)の定着装置や、加熱手段として抵抗発熱体を用いた抵抗発熱方式の定着装置に対しても、本発明を適用することができる。
そして、それらのような場合にも、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0056】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0057】
なお、本願明細書等において、「シート」とは、用紙に限定されることなく、シート状の記録媒体のすべて、例えば、コート紙、ラベル紙、OHPシート、等も含むものと定義する。
【符号の説明】
【0058】
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
20 定着装置、
21 定着ベルト(定着回転体)、
22 定着補助ローラ、
23 加熱ローラ、
25 ヒータ(加熱手段)、
26 研磨ローラ(当接部材)、
31 加圧ローラ(加圧回転体)、
60 制御部、
61 演算部、
61 記憶部、
65 操作パネル(情報取得部)、
75 接離機構、
76 モータ(駆動機構)、
P シート(記録媒体)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【文献】特開2017-32717号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9