(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】車両用窓ガラス
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20241001BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20241001BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20241001BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/22 C
B60J1/00 B
B60S1/02 300
(21)【出願番号】P 2020200201
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 智洋
(72)【発明者】
【氏名】尾郷 優
(72)【発明者】
【氏名】岸本 祐輝
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/006970(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/185898(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03321115(EP,A1)
【文献】特開2019-016867(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03425722(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0090811(US,A1)
【文献】特開2019-080270(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03477766(EP,A1)
【文献】国際公開第2020/187872(WO,A1)
【文献】特表2022-528502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H01Q 1/22
B60J 1/00
B60S 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のガラス板と、
前記ガラス板に設けられた第1バスバーと、
前記ガラス板に設けられた第2バスバーと、
前記ガラス板に設けられ、前記第1バスバーに近接する給電部を含むアンテナ素子と、
前記ガラス板に設けられた接続エレメントと、を備え、
前記ガラス板は、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの間に拡がる加熱領域を有し、
前記加熱領域は、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの間に直流電圧が印加されることで直流電流が流れる導電部材が配置される領域であり、前記導電部材の発熱によって加熱され、
前記接続エレメントは、前記第1バスバー又は前記第2バスバーに電気的に接続される一端と、前記一端とは反対側の開放端とを有
し、
前記アンテナ素子が受信する所定の周波数帯の電波の空気中における波長をλとし、
前記所定の周波数帯の前記ガラス板の波長短縮率をkとし、
Nを1以上の整数とし、
前記給電部から、前記第1バスバー及び前記接続エレメントの順に経由して、又は、前記第1バスバー、前記第2バスバー及び前記接続エレメントの順に経由して、前記開放端に至るまでの経路の長さをDとし、
前記経路に沿って発生する定在波の腹の位置が前記給電部に一致し、
長さDは、
(λ/4-λ/9)×(2×N-1)×k≦D≦(λ/4+λ/9)×(2×N-1)×kを満足する、車両用窓ガラス。
【請求項2】
前記アンテナ素子は、前記給電部に電気的に接続される線条エレメントを有する、請求項1に記載の車両用窓ガラス。
【請求項3】
前記アンテナ素子が受信する所定の周波数帯の電波の空気中における波長をλとし、
前記所定の周波数帯の前記ガラス板の波長短縮率をkとし、
前記線条エレメントの長さをL
Aとするとき、長さL
Aは、
1/8×λ×k≦L
A≦1/4×λ×k
を満足する、請求項2に記載の車両用窓ガラス。
【請求項4】
前記給電部は、前記ガラス板の平面視において、前記加熱領域の外側に配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項5】
前記ガラス板の外形は、前記ガラス板の平面視において、第1長辺と、前記第1長辺に対向する第2長辺と、前記第1長辺よりも短い第1短辺と、前記第1短辺に対向する第2短辺とを有し、
前記第1バスバーは、前記第1長辺に沿って延伸し、
前記第2バスバーは、前記第2長辺に沿って延伸する、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項6】
前記加熱領域は、前記第1長辺に沿って延伸する第1辺と、前記第1辺よりも前記第1長辺から離れて前記第1辺に沿って延伸する第2辺と、を含み、
前記第1バスバーは、前記第1辺及び前記第2辺に沿って延伸する、請求項5に記載の車両用窓ガラス。
【請求項7】
前記加熱領域は、前記第1長辺の側から前記第2長辺の側に向かって延伸する隙間を介して並ぶ複数の加熱領域を含む、請求項5又は6に記載の車両用窓ガラス。
【請求項8】
前記ガラス板に設けられた電極を更に備え、
前記第1バスバーは、前記ガラス板の上縁に沿った方向に延伸する上部分と、前記上部分に接続される縦部分とを含み、
前記上部分は、前記加熱領域の上辺に接続され、
前記縦部分は、前記ガラス板の側縁に沿った方向に延伸し、
前記電極は、前記縦部分を介して前記上部分に電気的に接続され、
前記接続エレメントの前記一端は、前記電極に電気的に接続される、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項9】
前記アンテナ素子が受信する所定の周波数帯の電波の空気中における波長をλとし、
前記所定の周波数帯の前記ガラス板の波長短縮率をkとし、
Mを1以上の整数とし、
前記接続エレメントの長さをL
Sとするとき、長さL
Sは、
(λ/4-λ/
9)×(2×M-1)×k≦L
S≦(λ/4+λ/
9)×(2×M-1)×kを満足する、請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項10】
前記接続エレメントは、複数の開放端を有し、
前記接続エレメントにおいて前記一端から前記複数の開放端までの各経路長は、互いに異なる、請求項1から9のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項11】
前記ガラス板は、第1ガラス板と、第2ガラス板と、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に挟まれた中間膜と、を有する合わせガラスであり、
前記導電部材は、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の間に配置され、
前記第2ガラス板は、前記中間膜とは反対側の主面を有し、
前記アンテナ素子は、前記主面に配置される、請求項1から10のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項12】
前記ガラス板は、第1ガラス板と、第2ガラス板と、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に挟まれた中間膜と、を有する合わせガラスであり、
前記アンテナ素子の少なくとも一部及び前記導電部材は、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の間に配置される、請求項1から10のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項13】
前記ガラス板は、第1ガラス板と、第2ガラス板と、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に挟まれた中間膜と、を有する合わせガラスであり、
前記第1バスバー及び前記第2バスバーは、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の間に配置され、
前記第2ガラス板は、前記中間膜とは反対側の主面を有し、
前記接続エレメントは、前記主面に配置され、前記第1バスバー又は前記第2バスバーに容量結合を介して接続される、請求項1から12のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項14】
前記ガラス板は、第1ガラス板と、第2ガラス板と、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に挟まれた中間膜と、を有する合わせガラスであり、
前記第1バスバー及び前記第2バスバーは、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に配置され、
前記接続エレメントは、前記第1バスバー又は前記第2バスバーに直接接続される、請求項1から12のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項15】
前記アンテナ素子が受信する電波は、DAB Band IIIの放送波である、請求項1から14のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防曇や防氷のために一対のバスバーに電圧が印加されることでガラス板を加熱する導電部材と、導電部材が配置された加熱領域の近傍に設けられたアンテナとを備える車両用窓ガラスが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/185898号
【文献】国際公開第2016/096432号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、防曇等のための導電部材が配置された加熱領域を有する窓ガラスでは、加熱領域の大きさ等によっては、アンテナ素子が配置される領域が狭まり、アンテナ素子の配置位置や形状などの設計自由度が低下する場合がある。この場合、所定の周波数帯におけるアンテナ利得を確保可能なアンテナ素子を加熱領域と共存させることが難しかった。
【0005】
本開示は、所定の周波数帯におけるアンテナ利得を確保可能なアンテナ素子を加熱領域と共存させることが可能な車両用窓ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
車両用のガラス板と、
前記ガラス板に設けられた第1バスバーと、
前記ガラス板に設けられた第2バスバーと、
前記ガラス板に設けられ、前記第1バスバーに近接する給電部を含むアンテナ素子と、
前記ガラス板に設けられた接続エレメントと、を備え、
前記ガラス板は、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの間に拡がる加熱領域を有し、
前記加熱領域は、前記第1バスバーと前記第2バスバーとの間に直流電圧が印加されることで直流電流が流れる導電部材が配置される領域であり、前記導電部材の発熱によって加熱され、
前記接続エレメントは、前記第1バスバー又は前記第2バスバーに電気的に接続される一端と、前記一端とは反対側の開放端とを有し、
前記アンテナ素子が受信する所定の周波数帯の電波の空気中における波長をλとし、
前記所定の周波数帯の前記ガラス板の波長短縮率をkとし、
Nを1以上の整数とし、
前記給電部から、前記第1バスバー及び前記接続エレメントの順に経由して、又は、前記第1バスバー、前記第2バスバー及び前記接続エレメントの順に経由して、前記開放端に至るまでの経路の長さをDとし、
前記経路に沿って発生する定在波の腹の位置が前記給電部に一致し、
長さDは、
(λ/4-λ/9)×(2×N-1)×k≦D≦(λ/4+λ/9)×(2×N-1)×kを満足する、車両用窓ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、所定の周波数帯におけるアンテナ利得を確保可能なアンテナ素子を加熱領域と共存させることが可能な車両用窓ガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態における車両用窓ガラスの一構成例を窓ガラスの平面視で示す図である。
【
図2】一実施形態における車両用窓ガラスの一構成例(変形例)を窓ガラスの平面視で示す図である。
【
図3】一実施形態における車両用窓ガラスの第1の構造例の上側部分を示す断面図である。
【
図4】一実施形態における車両用窓ガラスの第1の構造例(第1変形例)の上側部分を示す断面図である。
【
図5】一実施形態における車両用窓ガラスの第1の構造例(第2変形例)の上側部分を示す断面図である。
【
図6】一実施形態における車両用窓ガラスの第2の構造例の上側部分を示す断面図である。
【
図7】一実施形態における車両用窓ガラスに関して、接続エレメントの有無によるアンテナ素子のアンテナ利得の変化を実測した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示に係る実施形態について説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部材の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。"対向する"とは、全部が対向する形態に限られず、一部が対向する形態を含んでよい。
【0010】
本実施形態では、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、ガラス板の左右方向(横方向)、ガラス板の上下方向(縦方向)、ガラス板の表面に直角な方向(法線方向とも称する)を表す。
【0011】
本実施形態における車両用窓ガラスの例として、車両の前部に取り付けられるフロントガラスが好適である。
【0012】
図1は、一実施形態における車両用窓ガラスの一構成例を窓ガラスの平面視で示す図である。
図1に示す車両用窓ガラス装置300は、車体に形成される窓枠66と、窓枠66に取り付けられる窓ガラス100とを備える。
図1は、窓枠66に取り付けた窓ガラス100を車内側からの視点で示す平面図である。
図1に例示する窓ガラス100は、車体の前部に形成される窓枠66に取り付けられるフロントガラスである。
【0013】
窓枠66は、窓ガラス100によって覆われる開口部を形成するように、上枠66a、下枠66b、左枠66c及び右枠66dを有する。上枠66aは、開口部に対してY軸方向の正側においてX軸方向に延伸する窓枠部であり、例えば、車体の天井側のフランジである。下枠66bは、開口部に対してY軸方向の負側においてX軸方向に延伸する窓枠部であり、例えば、車体のダッシュパネル側のフランジである。左枠66cは、開口部に対してX軸方向の負側においてY軸方向に延伸する窓枠部であり、例えば、車体の前方左側のAピラーのフランジである。右枠66dは、開口部に対してX軸方向の正側においてY軸方向に延伸する窓枠部であり、例えば、車体の前方右側のAピラーのフランジである。
【0014】
窓ガラス100は、車両用窓ガラスの一例である。窓ガラス100は、ガラス板1、第1バスバー3、第2バスバー4、アンテナ素子30及び接続エレメント44を備える。
【0015】
ガラス板1は、車両用のガラス板の一例である。ガラス板1は、窓枠66に取り付けられる、透明又は半透明な板状の誘電体である。ガラス板1は、上縁1a、下縁1b、左縁1c及び右縁1dを含む外周縁を有する。上縁1aは、Y軸方向の正側においてX軸方向に延伸するガラス縁であり、上枠66aに取り付けられる。下縁1bは、Y軸方向の負側においてX軸方向に延伸するガラス縁であり、下枠66bに取り付けられる。左縁1cは、X軸方向の負側においてY軸方向に延伸するガラス縁であり、左枠66cに取り付けられる。右縁1dは、X軸方向の正側においてY軸方向に延伸するガラス縁であり、右枠66dに取り付けられる。
【0016】
ガラス板1の外形は、例えば、ガラス板1の平面視において、第1長辺と、第1長辺に対向する第2長辺と、第1長辺よりも短い第1短辺と、第1短辺に対向する第2短辺とを有する。
図1に示す例では、上縁1a、下縁1b、左縁1c及び右縁1dは、それぞれ、第1長辺、第2長辺、第1短辺及び第2短辺に対応する。なお、ガラス板1の外形は、ガラス板1の平面視において、X軸方向を長手方向とする横長の略長方形に限られず、Y軸方向を長手方向とする縦長の略長方形でもよい。また、ガラス板1の外形は、ガラス板1の平面視において、略長方形に限られず、他の種類の多角形でもよい。
【0017】
ガラス板1は、主面22と、Z軸方向において主面22とは反対側の主面12とを有する。主面22は、Z軸方向の正側(この例では、車内側)の表面であり、主面12は、Z軸方向の負側(この例では、車外側)の表面である。
【0018】
第1バスバー3は、ガラス板1に設けられる帯状電極である。第1バスバー3は、ガラス板1の上縁1aに沿った方向(例えば、略水平方向)に延伸する上部分71,79を含む。第1バスバー3は、車両に搭載された電源400の一方の電極端子(例えば、負極端子402)に導電的に接続される。
【0019】
第2バスバー4は、ガラス板1に設けられる帯状電極である。第2バスバー4は、ガラス板1の下縁1bに沿った方向(例えば、略水平方向)に延伸する下部分72,70を含む。第2バスバー4は、車両に搭載された電源400の他方の電極端子(例えば、正極端子401)に導電的に接続される。
【0020】
なお、第1バスバー3が電源400の正極端子401に導電的に接続され、第2バスバー4が電源400の負極端子402に導電的に接続されてもよい。
【0021】
ガラス板1は、上部分71,79と下部分72,70との間に拡がる加熱領域2を有する。加熱領域2は、導電部材26が配置される領域であり、導電部材26の発熱によって加熱される。加熱領域2は、X軸方向に対向する一対の側辺である縦辺6a,6bを有する。
【0022】
導電部材26は、ガラス板1に設けられ、上部分71,79と下部分72,70との間に位置する。導電部材26は、第1バスバー3と第2バスバー4との間に直流電圧が電源400により印加されることで、直流電流が上部分71,79と下部分72,70との間で上下方向に流れる部材であり、直流電流が上下方向に流れることで発熱する。加熱領域2は、上部分71,79と下部分72,70との間を導電的に接続する導電部材26の発熱によって加熱される。加熱領域2が加熱されることで、ガラス板1における加熱領域2及びその近傍領域の融雪、融氷、防曇などを行うことができる。
【0023】
導電部材26は、例えば
図1に拡大視するように、Y軸方向に延伸し且つX軸方向に間隔を空けて配置された複数の電熱線である。複数の電熱線は、例えば、第1バスバー3から第2バスバー4に向かって延伸する波状の線条導体である。電熱線は、例えば、銅、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン、金、白金、銀、又はこれらのいずれかを複数含む合金から形成される。
【0024】
なお、導電部材26は、ガラス板1の内層又は表面に設置された透明又は半透明な導電膜でも、ガラス板1の内層又は表面に設置された発熱用ワイヤでも、ガラス板1の表面に形成された銀系プリントでもよい。
【0025】
導電部材26が導電膜の場合、導電膜の材料として、アンチモンドープされた酸化スズ、ビスマスドープされた酸化スズ、又はフッ素ドープされた酸化スズなどが使用できる。
【0026】
導電部材26は、ガラス板1の内層又は外表面に設置されてもよい。導電部材26は、第1バスバー3及び第2バスバー4と、同じ層(内層又は外表面)に配置される。しかしながら、導電部材26は、補助部材を介して第1バスバー3及び第2バスバー4と電気的接続が確保されるのであれば、第1バスバー3及び第2バスバー4の少なくとも一方と異なる層に配置されてもよい。
【0027】
導電部材26が配置された加熱領域2は、X軸方向に並ぶ複数の加熱領域に分離されてもよい。
図1に示す例では、加熱領域2は、Y軸方向を長手方向とする隙間9を介してX軸方向に並ぶ第1加熱領域2a及び第2加熱領域2bを含む。第1加熱領域2aは、上部分71に導電的に接続される上辺6e,6fと、下部分72に導電的に接続される下辺6gと、X軸方向に対向する一対の縦辺6a,6cと、を有する。第2加熱領域2bは、上部分79に導電的に接続される上辺6hと、下部分70に導電的に接続される下辺6iと、X軸方向に対向する一対の縦辺6b,6dと、を有する。
【0028】
図1に示す例では、加熱領域2は、複数の加熱領域に分割されているので、第1バスバー3及び第2バスバー4も、それぞれ、分割されている。第1バスバー3は、第1上バスバー3a及び第2上バスバー3bを含み、第2バスバー4は、第1下バスバー4a及び第2下バスバー4bを含む。
【0029】
第1バスバー3は、上部分71,79に接続される縦部分を更に含んでもよい。
図1に示す第1バスバー3では、第1上バスバー3aは、上部分71に接続される縦部分73を含み、第2上バスバー3bは、上部分79に接続される縦部分76を含む。上部分71は、第1加熱領域2aの上辺6e,6fに接続される導体部分であり、縦部分73は、第1加熱領域2aの一方の側辺である縦辺6aから離れてガラス板1の一方の側縁である左縁1cに沿った方向に延伸する導体部分である。上部分79は、第2加熱領域2bの上辺に接続される導体部分であり、縦部分76は、第2加熱領域2bの一方の側辺である縦辺6bから離れてガラス板1の他方の側縁である右縁1dに沿った方向に延伸する導体部分である。
【0030】
第1バスバー3は、上部分71,79にそれぞれ接続される縦部分73,76を含むので、第1バスバー3の上部分71,79を電源400に電気的に接続する配線ラインの一部を、車体側ではなく、ガラス板1側に設けることができる。これにより、車体側に配線されるハーネスを削減できる。
【0031】
図1に示すように、第1バスバー3は、縦部分73に接続される横部分74を更に含んでもよく、縦部分76に接続される横部分77を更に含んでもよい。横部分74は、第1加熱領域2aから離れた領域でガラス板1の下縁1bに沿った方向に延伸する導体部分である。横部分77は、第2加熱領域2bから離れた領域でガラス板1の下縁1bに沿った方向に延伸する導体部分である。横部分74又は横部分77があることにより、車体側に配線するハーネスの端子の位置によっては、当該ハーネスを更に削減できる。
【0032】
図1に示す例では、ガラス板1は、電源400に電気的に接続される複数のハーネスの端子が電気的に接続される複数の電極51,52,55,56を有する。
【0033】
電極51は、負極端子402に電気的に接続されるグランドハーネス53の端子を、第1上バスバー3aに電気的に接続するための負極である。電極51は、横部分74及び縦部分73を介して、上部分71に電気的に接続される。
【0034】
電極52は、負極端子402に電気的に接続されるグランドハーネス54の端子を、第2上バスバー3bに電気的に接続するための負極である。電極52は、横部分77及び縦部分76を介して、上部分79に電気的に接続される。
【0035】
電極55は、正極端子401に電気的に接続される電源ハーネス57の端子を、第1下バスバー4aに電気的に接続するための正極である。第1下バスバー4aは、下部分72に接続される接続バスバー75を有する。電極55は、接続バスバー75を介して、下部分72に電気的に接続される。
【0036】
電極56は、正極端子401に電気的に接続される電源ハーネス58の端子を、第2下バスバー4bに電気的に接続するための正極である。第2下バスバー4bは、下部分70に接続される接続バスバー78を有する。電極56は、接続バスバー78を介して、下部分70に電気的に接続される。
【0037】
アンテナ素子30は、ガラス板1に設けられ、第1バスバー3に近接する給電部35を含む。アンテナ素子30は、第1バスバー3に沿って流れる電流を給電部35でピックアップすることで、そのアンテナ利得を確保するアンテナである。
図1に示す例では、給電部35は、第1バスバー3の上部分71に近接する。アンテナ素子30は、所定の周波数帯Wの電波を受信可能に形成されており、その所定の周波数帯Wにおける周波数で共振する。アンテナ素子30は、垂直偏波を受信する放射素子でもよいし、水平偏波を受信する放射素子でもよい。アンテナ素子30は、例えば、周波数が30MHz~300MHzのVHF(Very High Frequency)帯の電波の送受に適している。VHF帯の電波には、DAB(Digital Audio Broadcast) Band IIIの帯域(170MHz~240MHz)の電波、FM放送波などが含まれる。
【0038】
接続エレメント44は、ガラス板1に設けられ、第1バスバー3又は第2バスバー4に電気的に接続される一端と、当該一端とは反対側の開放端とを有する。
図1に示す接続エレメント44は、第1バスバー3の第1上バスバー3aに電気的に接続される一端44cと、一端44cとは反対側の開放端44aとを有するL字状エレメントであり、ガラス板1の平面視において加熱領域2と重ならない領域に配置される。
図1に示す例では、一端44cは、電極51に直接接続され、電極51を介して第1バスバー3の第1上バスバー3aに電気的に接続される。
【0039】
なお、接続エレメント44は、第1バスバー3又は第2バスバー4に直接接続されてもよい。例えば、接続エレメント44の一端44cは、上部分71、縦部分73又は横部分74に直接接続されることで、第1バスバー3に電気的に接続されてもよいし、下部分72、接続バスバー75又は電極55に直接接続されることで、第2バスバー4に電気的に接続されてもよい。
【0040】
上述のような接続エレメント44が設けられることで、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得の調整及びアンテナ利得の確保が可能となる。よって、本実施形態における車両用窓ガラスは、比較的広い面積を有する加熱領域2であっても、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ利得を確保可能なアンテナ素子30を加熱領域2と共存できる。また、本実施形態における車両用窓ガラスは、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得を、車体側の構成によらずに、ガラス板1側の構成(つまり、接続エレメント44)によって調整できるので、当該アンテナ利得のチューニング作業が容易になる。
【0041】
ここで、アンテナ素子30が受信する所定の周波数帯Wの電波の空気中における波長をλとし、所定の周波数帯Wのガラス板1の波長短縮率をkとし、N1を1以上の整数とし、N2を1以上の整数とする。また、接続エレメント44の一端44cが電気的に第1バスバー3に電気的に接続されている場合、給電部35から第1バスバー3の少なくとも一部及び接続エレメント44に沿って開放端44aに至るまでの経路を第1経路D1とする。又は、接続エレメント44の一端44cが電気的に第2バスバー4に電気的に接続されている場合、給電部35から、第1バスバー3の少なくとも一部、第2バスバー4の少なくとも一部及び接続エレメント44に沿って開放端44aに至るまでの経路を第2経路D2とする。このとき、第1経路D1と第2経路D2との少なくとも一方の経路長Dは、
(λ/4-λ/8)×(2×N1-1)×k≦D≦(λ/4+λ/8)×(2×N1-1)×k
・・・式1a
を満足すると、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得を向上できる。開放端44aから給電部35までの経路長Dが、λ/4の奇数倍("±λ/8×奇数倍"で定義されるマージンを含む)となると、第1経路D1と第2経路D2の一方又は両方に沿って発生する定在波の腹の位置が、給電部35にほぼ一致する。このように、経路長Dが、上記の条件式を満足すると、第1バスバー3に近接する給電部35又はその近傍に強い電流が流れるため、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得を向上できる。よって、本実施形態における車両用窓ガラス100は、比較的広い面積を有する加熱領域2であっても、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ利得を確保可能なアンテナ素子30を加熱領域2と共存できる。なお、式1aにおいて、λは、所定の周波数帯Wに含まれる一部の周波数の電波の空気中における波長でもよく、好ましくは、所定の周波数帯Wに含まれる全ての周波数の電波の空気中における波長でもよい。
【0042】
経路長Dは、より好ましくは、
(λ/4-λ/9)×(2×N1-1)×k≦D≦(λ/4+λ/9)×(2×N1-1)×k
・・・式1b
を満足すると、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得を向上できる。なお、式1bにおいて、λは、所定の周波数帯Wに含まれる一部の周波数の電波の空気中における波長でもよく、好ましくは、所定の周波数帯Wに含まれる全ての周波数の電波の空気中における波長でもよい。
【0043】
経路長Dは、さらに好ましくは、
(λ/4-λ/10)×(2×N1-1)×k≦D≦(λ/4+λ/10)×(2×N1-1)×k
・・・式1c
を満足すると、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得を向上できる。なお、式1cにおいて、λは、所定の周波数帯Wに含まれる一部の周波数の電波の空気中における波長でもよく、好ましくは、所定の周波数帯Wに含まれる全ての周波数の電波の空気中における波長でもよい。
【0044】
また、
図1に示す例では、給電部35は、第1バスバー3に近接しているが、第1バスバー3に接触していない。そのため、経路長Dのうちで給電部35から第1バスバー3までの長さは、給電部35と第1バスバー3との最短距離で定義される。
【0045】
また、
図1に示す例では、給電部35は、窓ガラス100の平面視において、後述する上部領域8に配置されるがこれに限らない。給電部35は、窓ガラス100の平面視において、第1バスバー3(例えば、第1上バスバー3a)の少なくとも一部と重なる配置でもよく、加熱領域2(第1加熱領域2a)の少なくとも一部と重なる配置でもよい。
【0046】
接続エレメント44の一端44cが電極51に直接接続される
図1の形態では、第1経路に含まれる"第1バスバー3の少なくとも一部"は、上部分71の第1上部分71a、縦部分73及び横部分74である。
【0047】
なお、接続エレメント44の一端44cが電極52に直接接続され且つ加熱領域2が隙間9で分離されていない不図示の形態では、第1経路に含まれる"第1バスバー3の少なくとも一部"は、上部分71の第2上部分71b、上部分79、縦部分76及び横部分77でもよい。
【0048】
また、接続エレメント44の一端44cが電気的に第2バスバー4に電気的に接続された不図示の形態では、第2経路は、加熱領域2の上下方向及び第2バスバー4の少なくとも一部を経由する。接続エレメント44の一端44cが電極55に直接接続される不図示の形態では、第2経路に含まれる"第2バスバー4の少なくとも一部"は、下部分72の一部及び接続バスバー75である。
【0049】
なお、接続エレメント44の一端44cが電極56に直接接続され且つ加熱領域2が隙間9で分離されていない不図示の形態では、第2経路に含まれる"第2バスバー4の少なくとも一部"は、下部分70の右側部分の一部及び接続バスバー78でもよい。
【0050】
例えば、Mを1以上の整数とし、接続エレメント44の長さをLSとするとき、長さLSは、
(λ/4-λ/8)×(2×M-1)×k≦LS≦(λ/4+λ/8)×(2×M-1)×k
・・・式5a
を満足すると、接続エレメント44は、スタブとして機能するので、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得を向上できる。好ましくは、長さLSは、
(λ/4-λ/9)×(2×M-1)×k≦LS≦(λ/4+λ/9)×(2×M-1)×k
・・・式5b
を満足すると、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得をより向上できる。なお、式5a及び式5bにおいて、λは、所定の周波数帯Wに含まれる一部の周波数の電波の空気中における波長でもよく、好ましくは、所定の周波数帯Wに含まれる全ての周波数の電波の空気中における波長でもよい。
【0051】
接続エレメント44は、複数の開放端(
図1の場合、2つの開放端44a,44b)を有してもよい。接続エレメント44において一端44cから当該複数の開放端までの各経路長は、互いに異なることで、所定の周波数帯Wに含まれる複数の異なる帯域のそれぞれでアンテナ利得の調整が可能となる。
図1に示す例では、接続エレメント44は、一端44cから開放端44aまでの主エレメントと、当該主エレメントにおける分岐点から開放端44bまでの分岐エレメントとを有する。
【0052】
図1に示す例では、アンテナ素子30は、上部領域8の少なくとも一部に設けられる。上部領域8は、ガラス板1を平面視した全体領域のうち、窓枠66の上枠66a(開口部の上辺部)と第1バスバー3の上部分71,79との間の領域である。アンテナ素子30は、上部領域8内のアンテナ領域5に配置される。
【0053】
アンテナ素子30は、給電部35に電気的に接続される線条エレメント37を有してもよい。この場合、線条エレメント37の長さを、所定の周波数帯Wの電波の受信に適するように形成されることで、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得をより向上できる。
【0054】
例えば、線条エレメント37の長さをLAとするとき、長さLAは、
1/8×λ×k≦LA≦1/4×λ×k
・・・式3a
を満足すると、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得を向上できる。好ましくは、長さLAは、
5/32×λ×k≦LA≦7/32×λ×k
・・・式3b
を満足すると、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得をより向上できる。なお、式3a及び式3bにおいて、λは、所定の周波数帯Wに含まれる一部の周波数の電波の空気中における波長でもよく、好ましくは、所定の周波数帯Wに含まれる全ての周波数の電波の空気中における波長でもよい。
【0055】
アンテナ領域5は、ガラス板1を平面視したとき、横方向の長さが縦方向の長さよりも長い横長形状の領域でもよい。とくに線条エレメント37を有するアンテナ素子30の場合、アンテナ領域5は、アンテナ素子30を全て包含する最小面積の横長の略長方形の領域が好ましい。アンテナ領域5は、窓枠66の上枠66aと第1バスバー3との間に設けられている。アンテナ領域5は、給電部35と線条エレメント37とを含む横長の領域にすることで、アンテナ素子30のY軸方向の高さを低くできるので、アンテナ素子30のアンテナ利得を確保した上で、加熱領域2を拡張できる。
【0056】
図1に示す例では、給電部35は、ガラス板1の平面視において、加熱領域2の外側に配置されているが、加熱領域2に重なる配置でもよい。
図1に示す例では、線条エレメント37は、ガラス板1の平面視において、加熱領域2の外側に配置されているが、加熱領域2に重なる配置でもよい。
【0057】
第1加熱領域2aは、ガラス板1の上縁1aに沿った方向に延伸する第1上辺6fと、第1上辺6fよりも上縁1aから離れて上縁1aに沿った方向に延伸する第2上辺6eとを含む。第1上バスバー3aの上部分71は、第1上辺6fと第2上辺6eのそれぞれに沿って延伸する。これにより、
図1に示すように、第1上バスバー3aの上部分71には、クランク部7が形成されるので、上部領域8には、凹部領域81が形成される。
図1に示す例では、アンテナ素子30は、凹部領域81に設けられている。第1上辺6fは、第1辺の一例であり、第2上辺6eは、第2辺の一例である。
【0058】
なお、凹部領域81は、上部領域8において、クランク部7における第1上辺6f側の端部から、Y軸方向の正側に延伸し、窓枠66の上枠66a(開口部の上辺部)に至るまでの線分を境界とする領域でもよい。あるいは、凹部領域81は、上部領域8において、クランク部7のY軸方向の高さを縦の長さとし、クランク部7と第1上部分71aとのX軸方向の合計長さを横の長さとする四角形状の領域でもよい。
【0059】
第1バスバー3の上部分71は、クランク部7と、クランク部7から一方側に伸びる第1上部分71aと、クランク部7から他方側に伸びる第2上部分71bとを有する。
【0060】
クランク部7は、第3上部分71cと、第1上部分71aと第3上部分71cとの接続箇所に形成される第1屈曲部91と、第2上部分71bと第3上部分71cとの接続箇所に形成される第2屈曲部92とを有することで、クランク状に形成される。
【0061】
凹部領域81が上部領域8に形成されることにより、上部領域8には、凹部領域以外の領域82が形成されるので、凹部領域以外の領域82のY軸方向の長さを、凹部領域81のY軸方向の長さよりも短くできる。これにより、第2上部分71bに接続される第1加熱領域2aのY軸方向の長さを相対的に長くできるので、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得を確保した上で、ガラス板1の防曇や防氷の効果の低下をより一層抑制できる。
【0062】
なお、凹部領域81は、
図2に示す変形例のように、ガラス板1の上側中央部にあってもよい。
図2に示す例では、第1上辺6f及び第2上部分71bは、第2上辺6e及び第1上部分71aよりも上縁1aから離れて上縁1aに沿った方向に延伸する。
【0063】
図1に示す例では、縦部分73の少なくとも一部は、ガラス板1が取り付けられる窓枠66(より具体的には、左枠66cの金属部)と容量結合する。これにより、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得を向上できる。なお、"容量結合する"とは、縦部分73と窓枠66(より具体的には、左枠66cの金属部)との距離が、0超30mm以下となる部分を指す。
【0064】
例えば、第1バスバー3は、窓枠66(より具体的には、左枠66cの金属部)と容量結合する部分の長さをDCとし、Pを1以上の整数とする。このとき、長さDCは、
(λ/4-λ/8)×(2P-1)×k≦DC≦(λ/4+λ/8)×(2P-1)×k
・・・式4a
を満足すると、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得を向上できる。好ましくは、長さDCは、
(λ/4-λ/9)×(2P-1)×k≦DC≦(λ/4+λ/9)×(2P-1)×k
・・・式4b
を満足すると、所定の周波数帯Wにおけるアンテナ素子30のアンテナ利得をより向上できる。なお、式4a及び式4bにおいて、λは、所定の周波数帯Wに含まれる一部の周波数の電波の空気中における波長でもよく、好ましくは、所定の周波数帯Wに含まれる全ての周波数の電波の空気中における波長でもよい。
【0065】
図3は、一実施形態における車両用窓ガラスの第1の構造例の上側部分を示す断面図である。
図3に示す車両用窓ガラス装置300Aは、
図1に示す車両用窓ガラス装置300の一例である。
図3において、車体62に形成される窓枠66にガラス板1が取り付けられた状態において、Z軸方向の正側は、車内側を表し、Z軸方向の負側は、車外側を表す。
図3に示す例では、ガラス板1は、車外側に配置されるガラス板10と、車内側に配置されるガラス板20とが、中間膜40を介して貼り合わされる合わせガラスである。中間膜40は、ガラス板10とガラス板20との間に挟まれている。
【0066】
ガラス板1は、例えば、ガラス板20の主面22の周縁部とフランジ状の窓枠66とがウレタン樹脂等の接着剤65で接着することより、窓枠66に取り付けられる。窓枠66は、Z軸方向からのガラス板1の平面視で主面22の周縁部の少なくとも一部に対向する金属部63を有する。金属部63の内縁64は、Z軸方向からのガラス板1の平面視で、ガラス板1によって覆われる開口部を形成する。
【0067】
ガラス板10及びガラス板20は、透明な板状の誘電体である。ガラス板10及びガラス板20のいずれか一方又は両方は、半透明でもよい。ガラス板10は、第1ガラス板の一例であり、ガラス板20は、第2ガラス板の一例である。
【0068】
ガラス板10は、主面11と、Z軸方向において主面11とは反対側の主面12とを有する。主面11は、車内側の表面を表し、主面12は、車外側の表面を表す。特に、主面12は、合わせガラスの車外側の外面に相当する。
【0069】
ガラス板20は、ガラス板10の主面11に対向する側の主面21と、Z軸方向において主面21とは反対側の主面22とを有する。主面21は、車外側の表面を表し、主面22は、車内側の表面を表す。特に、主面22は、合わせガラスの車内側の外面に相当する。
【0070】
中間膜40は、誘電性を有し、ガラス板10とガラス板20との間に介在する透明又は半透明な誘電体である。ガラス板10とガラス板20とは、中間膜40によって接合される。中間膜40は、例えば、熱可塑性のポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
【0071】
給電部35は、例えば、主面22に接続される給電電極である。給電部35は、給電線32の一端が接続される給電点36を有し、給電線32を介して、アンプ61の入力部に接続される。アンプ61は、給電部35に実装されてもよい。アンテナ素子30で電波を受信して得られる信号は、給電部35の給電点36を介して、アンプ61の入力部に入力される。アンプ61の入力部に入力された信号は、バンドパスフィルタによるフィルタリング及び増幅回路による増幅がされて、アンプ61から出力される。
【0072】
導電部材26は、ガラス板10とガラス板20との間に配置される。
図3に示す例では、導電部材26は、ガラス板10と中間膜40との間に配置され、主面11に接する。ガラス板20は、中間膜40とは反対側の主面22を有する。アンテナ素子30は、主面22に配置される。
図3に示す例では、線条エレメント37及び給電部35の全てが、主面22に配置される。
【0073】
図3に示す例では、第1バスバー3及び第2バスバー4は、ガラス板10とガラス板20の間に配置される。接続エレメント44(
図1,2参照)は、主面22に配置されてもよく、第1バスバー3又は第2バスバー4に容量結合を介して接続されてもよい。接続エレメント44が主面22に配置される場合、接続エレメント44は、ガラス板20及び中間膜40を介して第1バスバー3又は第2バスバー4と容量結合してもよい。あるいは、接続エレメント44は、ガラス板10とガラス板20の間に配置されてもよく、第1バスバー3又は第2バスバー4に直接接続されてもよい。
【0074】
導電部材26は、
図4に例示するように、中間膜40とガラス板20との間に配置されてもよいし、主面21に接してもよい。導電部材26は、
図5に例示するように、第1中間膜40Aと第2中間膜40Bとの間に配置されてもよい。第1中間膜40Aは、ガラス板10と導電部材26との間に配置される誘電性の中間膜であり、第2中間膜40Bは、導電部材26とガラス板20との間に配置される誘電性の中間膜である。第1中間膜40Aと第2中間膜40Bの各々の材料は、同じでも異なってもよいが、これらの材料が同じであることは、熱膨張係数等の物性が同等となるので、好ましい。
【0075】
図6は、一実施形態における車両用窓ガラスの第2の構造例の上側部分を示す断面図である。
図6に示す車両用窓ガラス装置300Bは、
図1に示す車両用窓ガラス装置300の一例である。
図6の構成のうち
図3,4,5と同様の構成についての説明は、
図3,4,5についての上述の説明を援用することで、省略する。
【0076】
アンテナ素子30の少なくとも一部及び導電部材26は、ガラス板10とガラス板20との間に配置される。
図6に示す例では、導電部材26は、
図3と同様に、ガラス板10と中間膜40との間に配置され、主面11に接する。導電部材26は、
図4と同様に、ガラス板20と中間膜40との間に配置されてもよいし、
図5と同様に、中間膜40Aと中間膜40Bとの間に配置されてもよい。アンテナ素子30の一部である線条エレメント37は、ガラス板20と中間膜40との間に配置され、主面21に接する。線条エレメント37で電波を受信して得られる信号は、線条エレメント37と給電部35との間の容量結合を介して、アンプ61の入力部に入力される。線条エレメント37は、主面11に設けられてもよいし、
図5と同様に、中間膜40Aと中間膜40Bとの間に設けられてもよい。
【0077】
図7は、一実施形態における車両用窓ガラスに関して、接続エレメント44の有無によるアンテナ素子30のアンテナ利得の変化を実測した結果の一例を示す図である。
【0078】
図7の実測時の車両用窓ガラス100(
図1)の各部の寸法は、単位をmmとすると、
給電部35から第1バスバー3の縦部分73を経由し電極51までの長さ:1145
線条エレメント37の長さL
A:170
接続エレメント44の長さL
S:185
である。このとき、長さL
A(=170mm)は、Band IIIの帯域(170MHz~240MHz)の全ての周波数において、上記の式3aを満足する。kは、0.64であった。
【0079】
図7において、"初期(OPEN)"は、電源400が接続されず(グランドハーネス53,54及び電源ハーネス57,58が接続されず)、且つ、接続エレメント44がない場合を示す。"初期(車両電源接続)"は、電源400が接続され(グランドハーネス53,54及び電源ハーネス57,58が接続され)、且つ、接続エレメント44がない場合を示す。"接続エレメント追加"は、電源400が接続され(グランドハーネス53,54及び電源ハーネス57,58が接続され)、且つ、接続エレメント44がある場合を示す。なお、グランドハーネス53の長さは、600mm以上あり、接続エレメント44の長さ(185mm)とは異なる長さであった。
【0080】
図7の"初期(車両電源接続)"によれば、電源400がグランドハーネス53,54及び電源ハーネス57,58を介して電極51,52,55,56に接続されると、180MHz付近のアンテナ利得が低下していることがわかった。
【0081】
一方、
図7に示す"接続エレメント追加"は、"初期(車両電源接続)"に対して185mmの接続エレメント44を追加して、第1経路D
1の経路長Dを1330mm(180MHzのときの波長λで式1aを満足する長さ)に調整したときのアンテナ素子30のアンテナ利得である。
図7に示すように、式1aを満足する長さに第1経路D
1の経路長Dを調整することによって、180MHz付近のアンテナ利得が向上する結果が得られた。
【0082】
以上、実施形態を説明したが、本開示の技術は上記実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【0083】
車両用窓ガラスは、フロントガラスに限られず、車体の他の部位に取り付けられる窓ガラスでもよい。例えば、車両用窓ガラスは、車体後部の窓枠に取り付けられるリアガラス、車体サイド部の窓枠に取り付けられるサイドガラス、車体天井部の窓枠に取り付けられるルーフガラスなどでもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 ガラス板
1a 上縁
1b 下縁
1c 左縁
1d 右縁
2 加熱領域
2a 第1加熱領域
2b 第2加熱領域
3 第1バスバー
3a 第1上バスバー
3b 第2上バスバー
4 第2バスバー
4a 第1下バスバー
4b 第2下バスバー
5 アンテナ領域
6a,6b,6c,6d 縦辺
6e,6f 上辺
6g 下辺
7 クランク部
8 上部領域
9 隙間
10,20 ガラス板
11,12,21,22 主面
26 導電部材
30 アンテナ素子
32 給電線
35 給電部
36 給電点
37 線条エレメント
40 中間膜
40A 第1中間膜
40B 第2中間膜
44 接続エレメント
44a,44b 開放端
44c 一端
51,52,55,56 電極
53,54 グランドハーネス
57,58 電源ハーネス
61 アンプ
62 車体
63 金属部
64 内縁
65 接着剤
66 窓枠
66a 上枠
66b 下枠
66c 左枠
66d 右枠
70,72 下部分
71,79 上部分
71a 第1上部分
71b 第2上部分
71c 第3上部分
73,76 縦部分
74,77 横部分
75,78 接続バスバー
81 凹部領域
82 領域
91 第1屈曲部
92 第2屈曲部
100 窓ガラス
300,300A,300B 車両用窓ガラス装置
400 電源
401 正極端子
402 負極端子