(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20241001BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20241001BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241001BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20241001BHJP
B32B 37/14 20060101ALI20241001BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241001BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241001BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20241001BHJP
【FI】
B05D1/36 B
B05D3/06 Z
B05D7/24 301M
B05D7/24 301T
B05D7/24 303B
B32B27/16 101
B32B37/14 Z
B41J2/01 129
B41J2/01 501
B41M5/00 120
C09D11/30
(21)【出願番号】P 2020211105
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 大輔
(72)【発明者】
【氏名】有田 学
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊介
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-230501(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066388(WO,A1)
【文献】特表2013-514904(JP,A)
【文献】特開2017-61686(JP,A)
【文献】特開2019-162742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B32B 1/00-43/00
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを吐出して第1のインク層を形成する工程と、
前記第1のインク層上に第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを吐出して第2のインク層を形成する工程と、
前記第1のインク層及び前記第2のインク層に活性エネルギー線を照射して、前記第1のインク層を硬化して第1の硬化層を形成すると共に前記第2のインク層を硬化して第2の硬化層を形成する工程と、
を含む、前記第1の硬化層と前記第2の硬化層とを有する積層体の製造方法であって、
前記第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの静的表面張力をγ1(mN/m)とし、前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの静的表面張力をγ2(mN/m)としたときに、γ1とγ2とが下記式(1)の関係を満たし、
γ1>γ2 (1)
前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、重量平均分子量(Mw)が500以上である多官能重合性化合物を10質量%以上40質量%以下含有し、無機粒子を1質量%以上30質量%以下含有する、
ことを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクが、無機粒子を5質量%以上20質量%以下含有する、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに含まれる無機粒子の一次粒子径が100nm以上1μm以下である、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに含まれる無機粒子がシリカ粒子である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに含まれる多官能モノマーの含有量が15質量%以上30質量%以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに含まれる単官能モノマーの含有量が50質量%以上である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクがクリアインクであり、前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクがカラーインクであるか、又は、前記第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクがホワイトインクであり、前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクがクリアインクである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紫外線(UV)や電子線(EB)などの活性エネルギー線を用いて硬化させる活性エネルギー線硬化型インクは、オフセット、シルクスクリーン、トップコート剤などに供給、使用されてきたが、乾燥工程の簡略化によるコストダウンや、環境対応として溶剤の揮発量低減などのメリットから近年使用量が増加している。最近では、産業用途として、そのオンデマンド性などから、特にインクジェットを用いた加飾印刷やコーティングを施す用途が増加している。しかし、インクジェット適性として、一般的に塗膜堅牢性と密着性とはトレードオフの関係にあり、インクジェットインク塗膜単体では市場要求を満たせないことが多い。そのため、別途コーティングやラミネートなどを施す必要が出てくるが、別工程を設けると生産性が低下する。
【0003】
特許文献1では、基材に対して接触角の異なるインクを用いて多層塗膜を形成させることで非浸透系基材に対する密着性を向上させる方法が提案されている。この方法を用いることで、塗膜堅牢性と密着性を両立することが可能となる。
特許文献2では、紫外線硬化樹脂液体の液面上に紫外線硬化材料をインクジェット方式で吐出し、画像(層)形成させる方法が提案されている。
特許文献3では、ゲル化剤および白色顔料を含有する活性線硬化型インクジェットインクにおいて、ウェットオンウェットで多層塗膜を形成させる方法が提案されている。この方法を用いることで、ゲル化剤によって異なるインク同士の混色を防ぐことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法は他層塗膜の各層を1層ずつ印字していく工程を採用しているため生産性が低下する。特許文献2の方法は、層は形成されるものの、画像パターンを表面で薄く広げることを目的としており、上層の膜厚が薄いために堅牢性の機能を付与することは難しい。
本発明は、密着性と塗膜堅牢性とを両立し、良好な生産性を有する積層体の製造方法を提供することを目的としする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明は以下に記載する通りの積層体の製造方法に係るものである。
基材に第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを吐出して第1のインク層を形成する工程と、
前記第1のインク層上に第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを吐出して第2のインク層を形成する工程と、
前記第1のインク層及び前記第2のインク層に活性エネルギー線を照射して、前記第1のインク層を硬化して第1の硬化層を形成すると共に前記第2のインク層を硬化して第2の硬化層を形成する工程と、
を含む、前記第1の硬化層と前記第2の硬化層とを有する積層体の製造方法であって、
前記第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの静的表面張力をγ1(mN/m)とし、前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの静的表面張力をγ2(mN/m)としたときに、γ1とγ2とが下記式(1)の関係を満たし、
γ1>γ2 (1)
前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、重量平均分子量(Mw)が500以上である多官能重合性化合物を10質量%以上40質量%以下含有し、無機粒子を1質量%以上30質量%以下含有する、
ことを特徴とする積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、密着性と塗膜堅牢性を両立し、良好な生産性を有する積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の積層体の製造方法を実施する装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の積層体の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0009】
本発明の積層体の製造方法においては第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクと第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを用いる。
本発明の積層体の製造方法は次の工程を含む。
・基材に第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを吐出して第1のインク層を形成する工程
・前記第1のインク層上に第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを吐出して第2のインク層を形成する工程
・前記第1のインク層及び前記第2のインク層に活性エネルギー線を照射して、前記第1のインク層を硬化して第1の硬化層を形成すると共に前記第2のインク層を硬化して第2の硬化層とを形成する工程
そして、前記第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの静的表面張力をγ1(mN/m)とし、前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの静的表面張力をγ2(mN/m)としたときに、γ1とγ2とが下記式(1)の関係を満たす。
γ1>γ2 (1)
また、前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、重量平均分子量(Mw)が500以上である多官能重合性化合物を10質量%以上40質量%以下含有し、無機粒子を1質量%以上30質量%以下含有する、
【0010】
上記のように、本発明の積層体の製造方法は、第1のインクジェットインク及び第2のインクジェットインクによって積層体を第1のインク層と第2のインク層とからなる積層構造とし、この第1のインク層及び第2のインク層に活性エネルギー線を照射して第1のインク層と第2のインク層を同時に硬化することによって、生産性を向上させることができる。
【0011】
また、インクジェットインクの静的表面張力(γ1[mN/m])が第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの静的表面張力(γ2[mN/m]よりも大きくすることによって、第1のインクジェットインク層中に第2のインクジェットインクが入り込むことを防止することができる。
【0012】
また、第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクが、その全量中に、重量平均分子量(Mw)が500以上である多官能重合性化合物を10質量%以上40質量%以下含有することで、密着性を損なうことなく高い硬度を発現することができる。
【0013】
更に、第2のインクジェットインクがその全量中に、無機粒子を1質量%以上30質量%以下含有すると、無機粒子が塗膜表面に高密度に配向することで、密着性と堅牢性を両立することができる。これは、第2のインクジェットインクの液滴が、第1のインクジェットインクの液層に着弾した際に、第2のインクジェットインクに含まれる分子量の少ない単官能モノマーが第1のインクジェットインクの液層内に拡散することで、第2のインクジェットインクの液滴内の無機粒子の密度が高まり、第2のインクジェットインクの層内の無機粒子の密度が高まることで、塗膜の硬度が向上し、また、表層剥離を抑制する効果によって密着性も向上するためである。
【0014】
〈インクジェットインク〉
本発明におけるインクジェットインクは、少なくとも第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクと第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクとを組み合わせて用いる。それぞれのインクジェットインクは異なる物性を有する。
【0015】
前記インクジェットインクの材料構成としては、特に制限はない。モノマーや界面活性剤は得られる硬化物の物性に大きな影響を与えるため、目的とする硬化物の物性に応じて適切なものを選択することが好ましい。インクジェットインクは、モノマーや界面活性剤のほかに、さらに必要に応じて、重合開始剤、色材、重合禁止剤、希釈溶剤、その他の公知成分等を含有する。
以下では、第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを「第1のインクジェットインク」といい、第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを「第2のインクジェットインク」ということがある。
【0016】
<積層体>
本発明の積層体は、少なくとも第1のインクジェットインクの硬化物からなる第1の硬化層と第2のインクジェットインクの硬化物からなる第2の硬化層とを含む。
第1の硬化層は、積層体の下層に位置するため、密着性の機能を有することが好ましい。第2の硬化層は、積層体の上層に位置するため、塗膜堅牢性の機能を有することが好ましい。
【0017】
<モノマー>
前記モノマーは、活性エネルギー線(紫外線、電子線等)、あるいは活性エネルギー線によって生成された活性種により重合反応を生起し、硬化する化合物であり、官能基数に応じて、多官能モノマーや単官能モノマーが挙げられる。モノマーは重合性を有していればよく、重合性オリゴマーや重合性ポリマー(マクロモノマー)を含んでいてもよい。
それぞれのインクジェットインクに対し、モノマー種などの制限はないが、第1のインクジェットインクとしては、積層体の下層に位置するため、密着性の機能を付与することが好ましく、単官能モノマーを多く含むことが好ましく、単官能モノマーを50質量%以上含むことが好ましい。
【0018】
第2のインクジェットインクは、積層体の上層に位置するため、塗膜堅牢性の機能を付与することが好ましく、単官能モノマーを45質量%以上とMwが500以上である多官能モノマーを10質量%以上40質量%以下含むことが好ましく、15質量%以上30質量%以下含むことがより好ましい。第1のインクジェットインク及び第2のインクジェットインクによって液体状態で層を形成させた際に、第2のインクジェットインクに含まれる成分が第1のインクジェットインクからなる層に拡散することで基材密着性を低下させることがある。第2のインクジェットインクが単官能モノマーを45質量%以上含み、Mwが500以上である多官能モノマーを10質量%以上40質量%以下含むことで、単官能モノマーが第1のインクジェットインクからなる層に拡散しても高い基材密着性を維持することができ、多官能モノマーは一定の分子量を有することで拡散しにくくなり、第2のインクジェットインクからなる層に留まることで、高い密着性と塗膜堅牢性を両立することができる。多官能モノマーを40質量%を超えて含ませると基材密着性を維持することができなくなってしまう。
インクジェットインク中の多官能モノマーの含有量は、[第1のインクジェットインク中の多官能モノマーの含有量<第2のインクジェットインク中の多官能モノマーの含有量]という関係を満たすことが好ましい。第1のインクジェットインク中に多官能モノマーを過剰に含まれると、硬化収縮の影響で密着性が低下し、第2のインクジェットインクに多官能モノマーの含有量が少ないと十分な硬度が発現しない。
【0019】
前記多官能モノマーとしては、2官能モノマーや3官能モノマー、あるいはそれ以上の官能基数の(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましい。
多官能モノマーとしては、重量平均分子量(Mw)が500以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、株式会社島津製作所社製ゲル浸透クロマトグラフィーを使用し測定することができる。
多官能モノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、PO変性テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー、シリコーンアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記単官能モノマーは、官能基数が1のモノマーである。
単官能モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、t-ブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
<界面活性剤>
前記界面活性剤は、第1のインクジェットインクおよび第2のインクジェットインクが液体で層形成する際に、お互いの組成物が混合することを抑制する効果がある。
いずれのインクジェットインクも界面活性剤を必要に応じて微量含有することが好ましく、少なくとも第2のインクジェットインクが界面活性剤を含むことが好ましく、界面活性剤を0.01質量%以上1質量%以下含有することが好ましい。これは、過度に界面活性剤を配合すると、防汚性やインクジェットでの吐出安定性が損なわれるためである。また、界面活性剤の配合量が少ないか、または、含まない場合、第1のインクジェットインクおよび第2のインクジェットインクが液体で層形成する際に、お互いのインクが混合し、密着性と塗膜堅牢性の両立ができなくなる原因となる。界面活性剤としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
<無機粒子>
前記無機粒子は、第2のインクジェットインクに添加することで、塗膜表面に高密度に配向し、堅牢性と密着性を両立することができる。これは、第2のインクジェットインクの液滴が、第1のインクジェットインクの液層に着弾した際に、分子量の少ない単官能モノマーが第1のインクジェットインクの液層内に拡散することで、第2のインクジェットインクの液滴内の無機粒子の密度が高まることに起因する。第2のインクジェットインクの層内の無機粒子密度が高まることで、塗膜の硬度が向上し、また、表層剥離を抑制する効果によって密着性も向上する。
【0023】
無機粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。無機粒子としては、シリカであることが好ましい。これは、特にシリカが塗膜表面に配向しやすく、硬度が発現しやすいためである。
無機粒子の平均一次粒子径は、30nm以上1μm以下であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。これは、無機粒子の平均一次粒子径が大きいほど塗膜の硬度が向上するためである。無機粒子の平均一次粒子径を1μm以下にすることで、吐出安定性の低下を抑制することができる。
【0024】
無機粒子の配合割合は、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。これは、無機粒子の配合量が少ないと、上記した無機粒子の効果が十分に得られなくなり、過度に無機粒子を配合すると、インクジェットヘッド内で無機粒子の沈降が起きやすくなり、吐出安定性が損なわれるためである。無機粒子としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
<硬化手段>
本発明の硬化型インクジェットインクを硬化させる手段としては、加熱硬化または活性エネルギー線による硬化が挙げられ、これらの中でも活性エネルギー線による硬化が好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0026】
<重合開始剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合開始剤は、十分な硬化速度を得るために、インクジェットインクの総質量(100質量%)に対し、5~20質量%含まれることが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
また、上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミンおよび4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0027】
<色材>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、色材を含有していてもよい。色材としては、本発明におけるインクジェットインクの目的や要求特性に応じて、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色、などを付与する種々の顔料や染料を用いることができる。色材の含有量は、所望の色濃度やインクジェットインク中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。なお、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、色材を含まず無色透明であってもよく、その場合には、例えば、画像を保護するためのオーバーコート層として好適である。
本発明のインクジェットインクの組み合わせに対し色材の添加は任意であるが、特に最後に着弾される第2のインクジェットインクが、液滴のドットを高精細に配列させやすく、色材を含有する描画用のカラーインクまたは色材を含まないクリアインクであることが好ましい。下地となる第1のインクジェットインクとしてはホワイトインクやクリアインクであることが好ましい。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
<有機溶媒>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0029】
<その他の成分>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、必要に応じてその他の公知の成分を含んでもよい。その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、重合禁止剤、レべリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
【0030】
<活性エネルギー線硬化型組成物の調製>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、重合性モノマー、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液にさらに重合性モノマー、開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0031】
<粘度>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの粘度は、用途や適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、当該組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃から65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が3~40mPa・sが好ましく、5~15mPa・sがより好ましく、6~12mPa・sが特に好ましい。また当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34'×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
【0032】
<用途>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの用途は、一般に活性エネルギー線硬化型材料が用いられている分野であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形用樹脂、塗料、接着剤、絶縁材、離型剤、コーティング材、シーリング材、各種レジスト、各種光学材料などが挙げられる。
また、本発明は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを硬化させて得られた硬化物や当該硬化物が基材上に形成された構造体を加工してなる成形加工品も含む。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された硬化物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形することが必要な用途に好適に使用される。
上記基材としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又はこれらの複合材料などが挙げられ、加工性の観点からはプラスチック基材が好ましい。
【0033】
<組成物収容容器>
本発明のインクジェットインク収容容器は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクが収容された状態の容器を意味し、上記のような用途に供する際に好適である。例えば、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物がインク用途である場合において、当該インクが収容された容器は、インクカートリッジやインクボトルとして使用することができ、これにより、インク搬送やインク交換等の作業において、インクに直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。また、インクへのごみ等の異物の混入を防止することができる。また、容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、または容器が遮光性シート等で覆われていることが望ましい。
【0034】
<像の形成方法、形成装置>
本発明の像の形成方法は、活性エネルギー線を用いてもよいし、加温なども挙げられる。
本発明の硬化型インクジェットインクを活性エネルギー線で硬化させるためには、活性エネルギー線を照射する照射工程を有し、本発明の像の形成装置は、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを収容するための収容部とを備え、該収容部には前記容器を収容してもよい。さらに、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを吐出する吐出工程、吐出手段を有していてもよい。吐出させる方法は特に限定されないが、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
図1は、本発明に係るインクジェット吐出手段を備えた像形成装置の一例を示す概略図である。インクジェットヘッドを配列したヘッドユニット(AB方向に可動)を用いて、ヘッドユニット25から第1のインクジェットインク22を、ヘッドユニット26から第1のインクジェットインクとは組成が異なる第2のインクジェットインク23を吐出し、隣接した活性エネルギー線照射装置27でこれら各インクジェットインクを硬化しながら積層するものである。ヘッドユニット25、26には、インク吐出部でインクが液状化するように、加温機構を設けてもよい。また必要に応じて、接触又は非接触により基材21を室温程度まで冷却する機構を設けてもよい。また、インクジェット記録方式としては、吐出ヘッド幅に応じて間欠的に移動する記録媒体に対し、ヘッドを移動させて記録媒体上にインクを吐出するシリアル方式や、連続的に記録媒体を移動させ、一定の位置に保持されたヘッドから記録媒体上にインクを吐出するライン方式のいずれであっても適用することができる。
基材21は、特に限定されないが、紙、フィルム、セラミックスやガラス、金属、これらの複合材料等が挙げられ、シート状であってもよい。また片面印刷のみを可能とする構成であっても、両面印刷も可能とする構成であってもよい。一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、ダンボール、壁紙や床材等の建材、コンクリート、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。
本発明のインクにより記録される記録物としては、通常の紙や樹脂フィルムなどの平滑面に印刷されたものだけでなく、凹凸を有する被印刷面に印刷されたものや、金属やセラミックなどの種々の材料からなる被印刷面に印刷されたものも含む。また、2次元の画像を積層することで、一部に立体感のある画像(2次元と3次元からなる像)や立体物を形成することもできる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に何ら制限されるものではない。
なお、以下実施例中にある「部」とは「質量部」を表し、「%」とは「質量%」を表す。
【0036】
<無機粒子分散体の調製>
(無機粒子分散体Aの調製)
AEROSIL 50(日本アエロジル社製)56部、単官能モノマーTMCHA(大阪有機化学工業株式会社製)40部、SOLSPERSE32000(Lubrizol社製)4部を添加し、ビーズミルで24時間撹拌処理し、[無機粒子分散体A]を調製した。
【0037】
(無機粒子分散体Bの調製)
X-24-9600A(信越化学工業株式会社製)56部、単官能モノマーTMCHA(大阪有機化学工業株式会社製)40部、SOLSPERSE32000(Lubrizol社製)4部を添加し、ビーズミルで24時間撹拌処理し、[無機粒子分散体B]を調製した。
【0038】
(無機粒子分散体Cの調製)
Sicastar(コアフロント株式会社製)56部、単官能モノマーTMCHA(大阪有機化学工業株式会社製)40部、SOLSPERSE32000(Lubrizol社製)4部を添加し、ビーズミルで24時間撹拌処理し、[無機粒子分散体C]を調製した。
【0039】
(無機粒子分散体Dの調製)
酸化チタン(ホワイトインク用色材)(大日本印刷社製)56部、単官能モノマーTMCHA(大阪有機化学工業株式会社製)40部、SOLSPERSE32000(Lubrizol社製)4部を添加し、ビーズミルで24時間撹拌処理し、[無機粒子分散体D]を調製した。
【0040】
<活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの調製>
(第1のインクジェットインクの調製)
表1-1に示す材料と含有量(質量部)に基づき、常法により第1のインクジェットインクであるインク1~3の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを調製した。
【0041】
(第2のインクジェットインクの調製)
表1-1、表1-2に示す材料と含有量(質量部)に基づき、常法により第2のインクジェットインクであるインク4~19の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを調製した。
【0042】
インク1~19の組成及び物性を表1-1、表1-2に示す。
また、表1-1、表1-2では「無機粒子」を配合成分として示したが、「無機粒子分散体」を配合成分として示した場合のインク4~19の組成及び物性を表2に示す。表2では、無機粒子分散体には単官能モノマーTMCHAが含まれているので、表1-1、表1-2における単官能モノマーTMCHAの項に示されている数値と表2表中の単官能モノマーTMCHAの項に示されている数値とは異なっている。
【0043】
なお、表1-1、表1-2及び表2において示した化合物の商品名及び製造会社名は下記の通りの内容を示す。
【0044】
<モノマー>
(単官能モノマー)
・ACMO:アクリロイルモルフォリン-KJケミカルズ株式会社
・NVC:N-ビニルカプロラクタム-東京化成工業株式会社
・PEA:フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)
・TMCHA:3,5,5,トリメチルシクロヘキシルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)
(多官能モノマー)
・DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)分子量242
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製)分子量524
・CN963:脂肪族ウレタンアクリレート(サートマー社製)
・ビスコート#1000:トリペンタエリスリトールアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)分子量2000
【0045】
<重合開始剤>
・TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(BASF社製)
【0046】
<界面活性剤>
・TEGO GRIDE432(EVONIK社製)
・TEGO WET500(EVONIK社製)
・メガファックRS-76NS(DIC社製)
【0047】
<無機粒子>
・AEROSIL 50(日本アエロジル社製)
・X-24-9600A(信越化学工業株式会社製)
・Sicastar(コアフロント株式会社製)
・TiO2:酸化チタン(ホワイトインク用色材)(大日本印刷社製)
【0048】
<無機粒子分散剤>
・SOLSPERSE32000(Lubrizol社製)
【0049】
<色材>
・TiO2:酸化チタン(ホワイトインク用色材)(大日本印刷社製)
・マゼンタ顔料:PR122(マゼンタインク用色材)(大日本印刷社製)
【0050】
また、各インクの物性値等の測定方法を以下に示す。
<静的表面張力>
自動表面張力計(DY-300、協和界面化学株式会社製)を用い、プレート法により白金プレートを用い、25℃にて測定した。
【0051】
<25℃での粘度>
東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34’×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を25℃に設定して測定した。
【0052】
<無機粒子の平均一次粒子径>
無機粒子分散体中の無機粒子の一次粒子径は、日機装株式会社製マイクロトラックUPA150を用い、PEA(大阪有機化学工業株式会社製)で100倍に希釈することで測定した。
【0053】
[実施例1~12、比較例1~6]
図1に示すような複数のインクジェットヘッドとUV光源を一連のキャリッジに搭載するインクジェット吐出装置に対し、インクジェットヘッドとしてMH5421(リコー社製)を、活性エネルギー線照射装置として波長395nmのUV-LED光源を搭載し、表3に記載の組み合わせでインクジェットインクをセットした。
このインクジェット吐出装置により、ポリカーボネート基材(三菱ガス化学社製、ユーピロンNF-2000、厚み0.5mm、縦幅100mm、横幅100mm)上に、第1および第2のインクジェットインクからなるインクセットの吐出とUV照射を行う工程より積層体を作製した。なお、波長395nmのUV-LED光源の出力は照度4.5W/cm
2とし、キャリッジの移動速度は840mm/秒とし、ヘッドからUV照射機までの距離は30cm、1滴あたりの滴量は12μg、ドット密度は600dpi×600dpiとなるように設定した。
【0054】
-評価方法-
各実施例及び比較例の積層体について、鉛筆硬度、密着性及び第2のインクジェットインクの吐出安定性を以下の評価方法で測定した。
測定結果を表3に示す。
<鉛筆硬度>
JIS K 5600 5-4に従い、コーテック社型式KT-VF2391を用い、荷重750gにて、引っかき硬度(鉛筆法)試験を実施した。
【0055】
<密着性>
得られた積層体に、カッターガイドを使用し1mm間隔で11本の切り傷を縦横につけ、100個の碁盤目をつくった。ニチバン製セロテープ(登録商標)No.405を碁盤目部分に強く圧着させ、一気に引き剥がした際の基材の露出頻度を確認した。
(評価基準)
〇:基材の露出が5%未満
△:基材の露出が5%以上35%未満
×:基材の露出が35%以上
【0056】
<吐出安定性>
第2のインクジェットインクをMH5421(リコー社製)搭載のインクジェット吐出装置により、1列320個のノズルから5分間連続で各インクを吐出し、ノズル抜けが生じたノズル数を求め、下記の評価基準に基づいて、吐出安定性を評価した。なお、前記インクジェット吐出装置は、駆動周波数10kHzとし、1回あたりのインクの吐出量を12μgとなるように設定した。
(評価基準)
〇:2ノズル以下
△:3ノズル以上5ノズル以下
×:6ノズル以上
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
本発明は下記(1)の積層体の製造方法に係るものであるが、下記(2)~(7)を実施形態として含む。
(1)基材に第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを吐出して第1のインク層を形成する工程と、
前記第1のインク層上に第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを吐出して第2のインク層を形成する工程と、
前記第1のインク層及び前記第2のインク層に活性エネルギー線を照射して、前記第1のインク層を硬化して第1の硬化層を形成すると共に前記第2のインク層を硬化して第2の硬化層を形成する工程と、
を含む、前記第1の硬化層と前記第2の硬化層とを有する積層体の製造方法であって、
前記第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの静的表面張力をγ1(mN/m)とし、前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの静的表面張力をγ2(mN/m)としたときに、γ1とγ2とが下記式(1)の関係を満たし、
γ1>γ2 (1)
前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、重量平均分子量(Mw)が500以上である多官能重合性化合物を10質量%以上40質量%以下含有し、無機粒子を1質量%以上30質量%以下含有する、
ことを特徴とする積層体の製造方法。
(2)前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクが、無機粒子を5質量%以上20質量%以下含有する、上記(1)に記載の積層体の製造方法。
(3)前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに含まれる無機粒子の一次粒子径が100nm以上1μm以下である、上記(1)又は(2)に記載の積層体の製造方法。
(4)前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに含まれる無機粒子がシリカ粒子である、上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
(5)前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに含まれる多官能モノマーの含有量が15質量%以上30質量%以下である、上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
(6)前記第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに含まれる単官能モノマーの含有量が50質量%以上である、上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
(7)前記第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクがクリアインクであり、前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクがカラーインクであるか、又は、前記第1の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクがホワイトインクであり、前記第2の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクがクリアインクである、上記(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【符号の説明】
【0063】
21 基材
22 第1のインクジェットインク
23 第2のインクジェットインク
25、26 ヘッドユニット
27 活性エネルギー線照射装置
30 活性エネルギー線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【文献】特許第5568857号公報
【文献】特許第5990868号公報
【文献】国際公開第2016/098678号