(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、樹脂付き金属箔、積層体、プリント配線板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241001BHJP
C08L 61/06 20060101ALI20241001BHJP
C08G 8/08 20060101ALI20241001BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241001BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20241001BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20241001BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L61/06
C08G8/08
B32B15/08 J
B32B27/42 101
C08J5/24 CER
C08J5/24 CEZ
H05K1/03 610L
H05K1/03 610H
H05K1/03 610K
(21)【出願番号】P 2020511118
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019014141
(87)【国際公開番号】W WO2019189811
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/013930
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 雄祥
(72)【発明者】
【氏名】串田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】富岡 健一
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119764(JP,A)
【文献】特開2017-119765(JP,A)
【文献】特開2000-026563(JP,A)
【文献】特開2017-110198(JP,A)
【文献】特開2015-089940(JP,A)
【文献】特表2017-515941(JP,A)
【文献】特開2014-208814(JP,A)
【文献】特表2011-516662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
C08K
B32B
C08J
H05K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フェノール系樹脂及び(B)熱硬化性樹脂、を含有してなる熱硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)成分が、(A-1)炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を有するフェノール系樹脂を含む、熱硬化性樹脂組成物であって、
前記(A-1)成分が、下記一般式(a1)で表される構造単位(a1)及び下記一般式(a2)で表される構造単位(a2
)を有し、前記構造単位(a2)に対する前記構造単位(a1)のモル比(構造単位(a1)/構造単位(a2))が0.25~5.0であり、
熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分総量100質量部に対して、前記(A-1)成分の含有量が0.1~40質量部であ
り、
前記(B)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド系化合物、ビスマレイミド系化合物とジアミンとの付加重合物、イソシアネート樹脂、トリアリルイソシアヌレート樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂及びビニル基含有ポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
(上記一般式中、R
1は、置換基を有していてもよい炭素数2~9の不飽和脂肪族炭化水素基を示し、R
2は、炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を示す。Xは、水素原子、ヒドロキシル基又はヒドロキシルメチル基である。m及びnは、それぞれ独立に、0又は1である。)
【請求項2】
前記一般式(a1)中、R
1が、置換基を有していてもよい炭素数2~6の不飽和脂肪族炭化水素基である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記構造単位(a2)に対する前記構造単位(a1)のモル比(構造単位(a1)/構造単位(a2))が1.0~3.0である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A-1)成分の重量平均分子量(Mw)が4,000以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A-1)成分の水酸基当量が90~350g/eqである、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記構造単位(a1)が下記一般式(a1-1)又は(a1-2)で表され、前記構造単位(a2)が下記一般式(a2-1)又は(a2-2)で表される、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化2】
(上記式中、R
1、R
2、X、m及びnは、前記定義の通りである。)
【請求項7】
前記(A)成分が、更に、(A-2)炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を有さないフェノール系樹脂を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(A-1)成分と前記(A-2)成分の総量に対する前記(A-1)成分の含有比率が30~95質量%である、請求項7に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を含有してなるプリプレグ。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物と金属箔とを積層してなる、樹脂付き金属箔。
【請求項11】
請求項
9に記載のプリプレグ又は請求項
10に記載の樹脂付き金属箔を含有してなる積層体。
【請求項12】
請求項
11に記載の積層体を含有してなる、プリント配線板。
【請求項13】
請求項
12に記載のプリント配線板を含有してなる、半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ、樹脂付き金属箔、積層体、プリント配線板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活において使用される身の周りの品々は、簡便化、効率化及び省力化の観点から電子化が進んでおり、電子機器に使用される電子部品は、使用上の利便性の観点等から、より一層の軽量化及び小型化が求められている。そのため、その中に搭載されるプリント配線板も、高密度化及び高機能化の要求が高まっている。
プリント配線板の高密度化は、基材となるガラスクロスの厚さをより薄く(例えば30μm以下の厚さ)にすることで更に好適に成し遂げられるため、そのような薄いガラスクロスを備えたプリプレグが、昨今、開発及び上市されている。これにより、プリント配線板の高密度化がますます進行しているものの、それに伴い、プリント配線板における耐熱性、電気絶縁信頼性、及び配線層と絶縁層との接着性等を十分に確保することが困難になってきている。
【0003】
高機能プリント配線板に使用される配線板材料には、耐熱性、電気絶縁信頼性、長期信頼性、及び配線層と絶縁層との接着性等が要求されている。また、高機能プリント配線板の中の1つに挙げられるフレキシブルな配線板材料には、上記の特性に加え、低弾性及び柔軟性等の特性も要求されている。
更に、セラミック部品を搭載した基板においては、セラミック部品と基板との熱膨張係数の差、及び外的な衝撃によって発生する部品接続信頼性の低下も大きな課題となっている。この問題の解決方法として、基材側からの応力緩和性も提唱されている。
これらの課題を解決すべく、熱硬化性樹脂と、アクリル系ポリマー及び末端変性ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂とを含有してなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-283535号公報
【文献】特開2002-134907号公報
【文献】特開2002-371190号公報
【文献】特開2014-193994号公報
【文献】特開2016-047921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱可塑性樹脂を含有してなる樹脂組成物では、低弾性、高耐熱性及び高伸び性を確保できるが、熱可塑性樹脂特有の機械的強度の低さから、十分に優れた金属箔との接着強度を確保することが困難という問題がある。
また、近年はプリント配線板を高温環境等の過酷環境下で適用することが多くなってきており、本発明者らによる更なる検討によると、従来のプリント配線板では、過酷環境下にてクラックの発生を抑制すること、及び過酷環境下にて金属箔との接着強度を確保することが困難であることが明らかとなった。
【0006】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、低弾性、高耐熱性、常温環境下及び高温環境下での高伸び性、高い電気絶縁信頼性及び金属箔との高い接着強度を有し、且つ耐クラック性に優れたプリプレグを形成可能な熱硬化性樹脂組成物、並びに、該熱硬化性樹脂組成物を含有してなるプリプレグ、該熱硬化性樹脂組成物と金属箔とを積層してなる樹脂付き金属箔、前記プリプレグ又は前記樹脂付き金属箔を含有してなる積層体、該積層体を含有してなるプリント配線板、及び該プリント配線板を含有してなる半導体パッケージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の炭素数の脂肪族炭化水素基を有するフェノール系樹脂を含有してなる熱硬化性樹脂組成物が、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
【0008】
本発明は下記[1]~[15]に関する。
[1](A)フェノール系樹脂、を含有してなる熱硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)成分が、(A-1)炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を有するフェノール系樹脂を含む、熱硬化性樹脂組成物。
[2]前記(A-1)成分が、下記一般式(a1)で表される構造単位(a1)及び下記一般式(a2)で表される構造単位(a2)からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を有する、上記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
(上記一般式中、R
1は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~9の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい環形成原子数5~15の芳香族炭化水素基、又は、前記脂肪族炭化水素基と前記芳香族炭化水素基との組み合わせを示し、R
2は、炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を示す。Xは、水素原子、ヒドロキシル基又はヒドロキシルメチル基である。m及びnは、それぞれ独立に、0又は1である。)
[3]前記構造単位(a2)に対する前記構造単位(a1)のモル比(構造単位(a1)/構造単位(a2))が0~5.0である、上記[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[4]前記(A-1)成分の重量平均分子量(Mw)が4,000以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[5]前記(A-1)成分の水酸基当量が90~350g/eqである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[6]熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分総量100質量部に対して、前記(A-1)成分の含有量が0.1~40質量部である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[7]前記(A)成分が、更に、(A-2)炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を有さないフェノール系樹脂を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[8]前記(A-1)成分と前記(A-2)成分の総量に対する前記(A-1)成分の含有比率が30~95質量%である、上記[7]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[9]更に、(B)熱硬化性樹脂を含有してなる、上記[1]~[8]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[10]前記(B)成分が、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド系化合物、ビスマレイミド系化合物とジアミンとの付加重合物、イソシアネート樹脂、トリアリルイソシアヌレート樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂及びビニル基含有ポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[9]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[11]上記[1]~[10]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含有してなるプリプレグ。
[12]上記[1]~[10]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物と金属箔とを積層してなる、樹脂付き金属箔。
[13]上記[11]に記載のプリプレグ又は上記[12]に記載の樹脂付き金属箔を含有してなる積層体。
[14]上記[13]に記載の積層体を含有してなる、プリント配線板。
[15]上記[14]に記載のプリント配線板を含有してなる、半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、低弾性、高耐熱性、常温環境下及び高温環境下での高伸び性、高い電気絶縁信頼性及び金属箔との高い接着強度を有し、且つ耐クラック性(特に過酷環境下での耐クラック性)に優れたプリプレグを形成可能な熱硬化性樹脂組成物、並びに、該熱硬化性樹脂組成物を含有してなるプリプレグ、該熱硬化性樹脂組成物と金属箔とを積層してなる樹脂付き金属箔、前記プリプレグ又は前記樹脂付き金属箔を含有してなる積層体、該積層体を含有してなるプリント配線板、及び該プリント配線板を含有してなる半導体パッケージを提供することができる。
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物であれば、低タック性のプリプレグを形成することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について詳述するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値及び上限値と任意に組み合わせられる。
また、本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
更に、例示したもの及び好ましいと説明する態様が選択肢の集合体であるとき、その集合体の中から任意の選択肢を任意の数だけ抽出することができ、且つ、抽出した選択肢を、他で説明する態様と任意に組み合わせることもできる。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本発明に含まれる。
【0011】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、
(A)フェノール系樹脂、を含有してなる熱硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)成分が、(A-1)炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を有するフェノール系樹脂を含む、熱硬化性樹脂組成物である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物により、低弾性、高耐熱性、常温環境下及び高温環境下での高伸び性(以下、単に高伸び性と称することがある。)、高い耐クラック性(特に過酷環境下での高い耐クラック性)、高い電気絶縁信頼性及び金属箔との高い接着強度を達成することができる。当該効果は、主に、(A)成分が熱硬化性樹脂でありながら低弾性である(A-1)成分を含むことにより得られたものである。高耐熱性、高伸び性を有しながら、特に、低弾性であることによって、過酷環境下にてプリント配線板に発生し易いクラックを抑制でき、それに加えて、高い電気絶縁信頼性及び金属箔との高い接着強度を達成することができる点で有利である。
特に、高温環境下での高伸び性に優れることで、高温環境下における応力緩和効果を発現させると共に、常温環境(15~45℃程度の温度範囲を指し、以下同様である。)と高温環境(80~160℃程度の温度範囲を指し、以下同様である。)との間の温度変化が起こる際の、熱膨張に対して十分な復元性を発現する。
【0012】
前記効果を有する本発明の熱硬化性樹脂組成物は、特にプリント配線板に利用されるプリプレグ、積層体及び樹脂付き金属箔等に有用な組成物である。そのため、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、層間絶縁層用熱硬化性樹脂組成物、より具体的には、プリント配線板の層間絶縁層用熱硬化性樹脂組成物又はフレキシブルプリント配線板の層間絶縁層用熱硬化性樹脂組成物としても有用である。
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物のモルホロジーを倍率2,000倍程度で走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察すると、相分離構造を形成しておらず、均一に見える。
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物の成分について説明する。
【0013】
〔(A):フェノール系樹脂〕
(A)成分であるフェノール系樹脂[以下、フェノール系樹脂(A)と称することがある。]は、(A-1)炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を有するフェノール系樹脂[以下、フェノール系樹脂(A-1)と称することがある。]を含む。フェノール系樹脂(A)が該フェノール系樹脂(A-1)を含有することにより、低弾性、高耐熱性及び高伸び性を有しながら、金属箔との高い接着強度を得ることができる。フェノール系樹脂(A-1)としては、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。該フェノール系樹脂(A)は、通常、後述する熱硬化性樹脂(B)の硬化剤、特にエポキシ樹脂の硬化剤としても機能し得る。
該フェノール系樹脂(A)が含有するフェノール系樹脂(A-1)について、以下に詳述する。
【0014】
((A-1):炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を有するフェノール系樹脂)
フェノール系樹脂(A-1)が有する炭素数10~25の脂肪族炭化水素基は、鎖状(直鎖状、分岐鎖状)、環状、鎖状と環状との組み合わせ、のいずれであってもよいが、低弾性及び低吸湿性の観点から、鎖状、鎖状と環状との組み合わせが好ましく、環状を含有していることがより好ましく、鎖状と環状との組み合わせが更に好ましい。また、前記「鎖状」は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることがより好ましい。フェノール系樹脂(A-1)が有する前記脂肪族炭化水素基の炭素数が10以上であることにより、低弾性及び低吸湿性の硬化物が得られ、前記脂肪族炭化水素基の炭素数が25以下であることにより、高耐熱性を保持できる。
同様の観点から、フェノール系樹脂(A-1)が有する炭素数10~25の脂肪族炭化水素基としては、鎖状の脂肪族炭化水素基の場合、好ましくは炭素数10~20の脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素数12~20の脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素数12~18の脂肪族炭化水素基、更に好ましくは炭素数14~18の脂肪族炭化水素基、特に好ましくは炭素数14~16の脂肪族炭化水素基、最も好ましくは炭素数15である。一方、鎖状以外の脂肪族炭化水素基の場合、好ましくは炭素数10~18の脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素数10~15の脂肪族炭化水素基、更に好ましくは炭素数10~13の脂肪族炭化水素基、特に好ましくは炭素数10~12の脂肪族炭化水素基、最も好ましくは炭素数11の脂肪族炭化水素基である。
【0015】
前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数10~25の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数10~25の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。該飽和脂肪族炭化水素基及び該不飽和脂肪族炭化水素基は、鎖状(直鎖状、分岐鎖状)、環状、鎖状と環状との組み合わせ、のいずれであってもよいが、低弾性及び低吸湿性の観点から、鎖状、又は、鎖状と環状との組み合わせが好ましい。前記鎖状は直鎖状であることがより好ましい。また、不飽和脂肪族炭化水素基が有する不飽和結合の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよく、また、通常は5つ以下であってもよいし、3つ以下であってもよい。
【0016】
以上より、フェノール系樹脂(A-1)が有する炭素数10~25の脂肪族炭化水素基としては、低弾性及び低吸湿性の観点から、炭素数10~25の鎖状の脂肪族炭化水素基、鎖状と環状との組み合わせの脂肪族炭化水素基が好ましい。鎖状と環状との組み合わせの脂肪族炭化水素基の場合、鎖状の部位は、低弾性の観点から、炭素数4以上の直鎖状であることが好ましく、炭素数5以上の直鎖状であることがより好ましい。鎖状と環状との組み合わせ方に特に制限はなく、-鎖状-環状であってもよいし、-環状-鎖状であってもよいし、-鎖状-環状-鎖状であってもよいが、-環状-鎖状であることが好ましい。-環状-鎖状の具体例としては、4-ペンチルシクロヘキシル基(C11)、4-オクチルシクロヘキシル基(C14)、4-デシルシクロヘキシル基(C16)、4-ペンチルシクロオクチル基(C13)、4-オクチルシクロオクチル基(C16)等が挙げられる。これらの中でも、-環状-鎖状としては、4-ペンチルシクロヘキシル基(C11)が好ましい。
【0017】
また、フェノール系樹脂(A-1)としては、炭素数10~25の飽和脂肪族炭化水素基を有するフェノール系樹脂と、炭素数10~25の不飽和脂肪族炭化水素基を有するフェノール系樹脂とを併用することも好ましい。炭素数10~25の飽和脂肪族炭化水素基を有するフェノール系樹脂と、炭素数10~25の不飽和脂肪族炭化水素基を有するフェノール系樹脂とを併用する場合、両者の合計に対する炭素数10~25の不飽和脂肪族炭化水素基を有するフェノール系樹脂の質量比率は、60質量%以上であってもよいし、80質量%以上であってもよいし、90質量%以上であってもよい。また、前記質量比率の上限に特に制限はなく、98質量%以下であってもよい。このような態様のフェノール系樹脂(A-1)としては、カルダノールに由来する構造単位を有するフェノール系樹脂が挙げられる。
フェノール系樹脂(A-1)において、炭素数10~25の脂肪族炭化水素基は、フェノール部位のヒドロキシル基の結合した位置(1位)に対してメタ位(3位又は5位)に置換していることが好ましい。
【0018】
前記炭素数10~25の飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、各種デシル基(「各種」とは、直鎖状、分岐鎖状及び環状の全てを含むことを意味し、以下、同様である。)、各種ウンデシル基(例えば、4-ペンチルシクロヘキシル基等を含む。)、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種エイコシル基等が挙げられる。
前記炭素数10~25の不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、上記炭素数10~25の飽和脂肪族炭化水素基において、その少なくとも一部が炭素-炭素不飽和結合となったものが挙げられる。例えば、炭素数15であれば、8-ペンタデセン-1-イル基、8,11-ペンタデカジエン-1-イル基、8,11,14-ペンタデカトリエン-1-イル基等が挙げられる。
【0019】
フェノール系樹脂(A-1)としては、低弾性及び低吸湿性の観点から、下記一般式(a1)で表される構造単位(a1)及び下記一般式(a2)で表される構造単位(a2)からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。なお、フェノール系樹脂(A-1)は、構造単位(a2)を少なくとも1つは有するといえる。
【化2】
(上記一般式中、R
1は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~9の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい環形成原子数5~15の芳香族炭化水素基、又は、前記脂肪族炭化水素基と前記芳香族炭化水素基との組み合わせを示し、R
2は、炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を示す。Xは、水素原子、ヒドロキシル基又はヒドロキシルメチル基である。m及びnは、それぞれ独立に、0又は1である。)
【0020】
前記一般式(a1)及び(a2)中、「-*」は結合手を示す。一般式(a1)中の3つの結合手のうち少なくとも1つは他の構造単位と結合し、一般式(a2)中の3つの結合手のうち少なくとも1つは他の構造単位と結合する。各式中の結合手のうち、他の構造単位の結合手と結合しない結合手は、水素原子に結合する。
但し、構造単位(a1)中のベンゼン環と構造単位(a2)中のベンゼン環とはメチレン基を介して結合し、直接結合しない。また、同一分子中に2以上の構造単位(a1)を有し、構造単位(a1)同士が結合している場合、各構造単位(a1)中のベンゼン環はメチレン基を介して結合し、直接結合しない。同様に、同一分子中に2以上の構造単位(a2)を有し、構造単位(a2)同士が結合している場合、各構造単位(a2)中のベンゼン環はメチレン基を介して結合し、直接結合しない。
【0021】
つまり、一般式(a1)中のベンゼン環から伸びる結合手は、他の構造単位に結合するか、又は水素原子に結合する。他の構造単位に結合する場合、該結合手は、該他の構造単位(別の構造単位(a1)、又はm及びnの少なくとも一方が1である構造単位(a2))のメチレン基に結合する。
一般式(a1)中のメチレン基から伸びる結合手は、他の構造単位(構造単位(a2)又は別の構造単位(a1))のベンゼン環に結合する。
【0022】
一般式(a2)中のベンゼン環から伸びる結合手は、他の構造単位に結合するか、又は水素原子に結合する。他の構造単位に結合する場合、該結合手は、該他の構造単位(構造単位(a1)、又はm及びnの少なくとも一方が1である別の構造単位(a2))のメチレン基に結合する。
一般式(a2)中のmが0(又はnが0)である場合、-(CH2)m-*(又は-(CH2)n-*)は、前記ベンゼン環から伸びる結合手と同様の結合手(-*)を示す。すなわち、他の構造単位に結合するか、又は水素原子に結合する。他の構造単位に結合する場合、該結合手は、前記ベンゼン環から伸びる結合手と同様に、他の構造単位のメチレン基に結合する。
一般式(a2)中のmが1(又はnが1)である場合、-(CH2)m-*(又は-(CH2)n-*)はメチレン基であり、その結合手は、他の構造単位(構造単位(a1)、又は別の構造単位(a2))のベンゼン環に結合する。
【0023】
一般式(a1)において、ベンゼン環におけるR
1の結合位置は、安価であるという観点及び合成した樹脂が容易に液状化するという観点から、ヒドロキシル基の結合した位置(1位)に対してオルト位(2位又は6位)が好ましく、この場合、それぞれ、下記一般式(a1-1)又は(a1-2)で表される。
【化3】
(上記一般式(a1-1)及び(a1-2)中、R
1は前記一般式(a1)中のR
1と同じである。)
なお、一般式(a1-1)及び(a1-2)中の*は、一般式(a1)中の*の前記説明と同様に説明される。
本明細書において、構造単位(a1)に関する記載は、構造単位(a1-1)又は構造単位(a1-2)に読み替えることができる。
【0024】
一般式(a1)において、ベンゼン環における単結合及びメチレン基の結合位置は、それぞれ、特に限定されない。典型的には、ヒドロキシル基の結合した位置(1位)に対してオルト位(2位又は6位)及びパラ位(4位)のいずれかである。
【0025】
前記式中、R1が示す脂肪族炭化水素基は、鎖状(直鎖状、分岐鎖状)、環状、鎖状と環状との組み合わせのいずれであってもよいが、鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
また、該脂肪族炭化水素基は、炭素数1~9の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数2~9の不飽和脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。炭素数1~9の飽和脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1~6の飽和脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素数1~5の飽和脂肪族炭化水素基、更に好ましくは炭素数1~3の飽和脂肪族炭化水素基である。また、炭素数2~9の不飽和脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数2~6の不飽和脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素数2~4の不飽和脂肪族炭化水素基、更に好ましくは炭素数3の不飽和脂肪族炭化水素基、特に好ましくはアリル基である。
R1が示す脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、含酸素炭化水素基、含窒素環状基等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。前記含酸素炭化水素基としては、例えば、エーテル結合含有炭化水素基が挙げられる。前記含窒素環状基としては、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、キノリニル基、イミダゾリル基等が挙げられる。
【0026】
R1が示す芳香族炭化水素基は、複素原子を含有しない芳香族炭化水素基(アリール基)であってもよいし、複素原子を含有する複素芳香族炭化水素基(ヘテロアリール基)であってもよいが、複素原子を含有しない芳香族炭化水素基(アリール基)が好ましい。該芳香族炭化水素基は、環形成原子数5~15である。なお、本明細書において、「環形成原子数」とは、芳香環を形成している原子(例えば炭素原子、窒素原子、酸素原子等)の数を指し、芳香環に置換している原子(例えば水素原子等)の数は含まれない。
該芳香族炭化水素基としては、好ましくは環形成原子数5~12の芳香族炭化水素基であり、より好ましくは環形成原子数6~12の芳香族炭化水素基であり、更に好ましくは環形成原子数6~10の芳香族炭化水素基である。
該芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0027】
R1が示す前記脂肪族炭化水素基と前記芳香族炭化水素基との組み合わせとしては、-脂肪族炭化水素基-芳香族炭化水素基、-芳香族炭化水素基-脂肪族炭化水素基、-脂肪族炭化水素基-芳香族炭化水素基-脂肪族炭化水素基等が挙げられる。これらの中でも、-脂肪族炭化水素基-芳香族炭化水素基、いわゆるアラルキル基が好ましい。芳香族炭化水素基と脂肪族炭化水素基は、前述したR1が示す前記脂肪族炭化水素基と前記芳香族炭化水素基と同様に説明される。
【0028】
Xは、水素原子、ヒドロキシル基又はヒドロキシルメチル基であり、好ましくは、水素原子、ヒドロキシメチル基である。
【0029】
R
2が示す炭素数10~25の脂肪族炭化水素基は、前述したフェノール系樹脂(A-1)が有する炭素数10~25の脂肪族炭化水素基と同様に説明される。該R
2は、フェノール部位のヒドロキシル基の結合した位置(1位)に対してメタ位(3位又は5位)に置換していることが好ましく、この場合、それぞれ、下記一般式(a2-1)又は(a2-2)で表される。
【化4】
(上記一般式(a2-1)及び(a2-2)中、X及びR
2は、前記一般式(a2)中のX及びR
2と同じである。)
なお、一般式(a2-1)及び(a2-2)中の*は、一般式(a2)中の*の前記説明と同様に説明される。
本明細書において、構造単位(a2)に関する記載は、構造単位(a2-1)又は構造単位(a2-2)に読み替えることができる。
【0030】
フェノール系樹脂(A-1)が構造単位(a1)を有する場合、構造単位(a1)は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。また、フェノール系樹脂(A-1)が構造単位(a2)を有する場合、構造単位(a2)は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。つまり、フェノール系樹脂(A-1)は、数種類のR1を有していてもよいし、数種類のR2を有していてもよいが、それぞれ1種類であることが好ましい。
【0031】
フェノール系樹脂(A-1)において、前記構造単位(a2)に対する前記構造単位(a1)のモル比(構造単位(a1)/構造単位(a2))は、後述する(B)熱硬化性樹脂との反応性、並びに低弾性及び低吸湿性の観点から、好ましくは0~5.0、より好ましくは0.25~5.0、更に好ましくは1.0~3.0、特に好ましくは1.0~2.0である。
【0032】
(フェノール系樹脂(A-1)の物性)
フェノール系樹脂(A-1)の重量平均分子量(Mw)は、相溶性の観点から、好ましくは4,000以下、より好ましくは1,000~3,500、更に好ましくは2,000~3,000である。なお、フェノール系樹脂(A-1)の重量平均分子量を1,000以上とすることにより、後述する(B)熱硬化性樹脂との反応性に優れ、耐熱性を損なうことがなく、且つ溶融粘度を維持できる傾向にある。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって、テトラヒドロフラン(THF)を溶解液として用いて測定される値であって、標準ポリスチレン換算値である。重量平均分子量(Mw)は、より詳細には、実施例に記載の方法に従って測定される。
また、フェノール系樹脂(A-1)の水酸基当量は、ガラス転移温度の向上及び電気絶縁信頼性の向上の観点から、好ましくは90~350g/eq、より好ましくは95~300g/eq、更に好ましくは100~250g/eq、特に好ましくは100~160g/eqである。水酸基当量は、実施例に記載の方法に従って測定される。
【0033】
(フェノール系樹脂(A-1)の製造方法)
フェノール系樹脂(A-1)の製造方法に特に制限はなく、公知のフェノール系樹脂の製造方法を採用することができる。例えば、特開2015-89940号公報に記載されている多価ヒドロキシ樹脂の製造方法を参照及び応用することができる。
好ましい製造方法の一態様としては、例えば、下記一般式(2)で表されるフェノール系化合物とホルムアルデヒドとを塩基性触媒の存在下で反応させ、得られた生成物と下記一般式(1)で表されるフェノール系化合物とを好ましくは酸性触媒の存在下で反応させる方法が挙げられる。下記一般式(1)で表されるフェノール系化合物は、前記構造単位(a1)を形成し、下記一般式(2)で表されるフェノール系化合物は、前記構造単位(a2)を形成する。
【化5】
(上記一般式(1)中のR
1は、前記一般式(a1)中のR
1と同じであり、上記一般式(2)中のR
2及びXは、前記一般式(a2)中のR
2及びXと同じである。)
【0034】
(フェノール系樹脂(A-1)の含有量)
本発明の熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分総量100質量部に対して、フェノール系樹脂(A-1)の含有量は、好ましくは0.1~40質量部である。フェノール系樹脂(A-1)の含有量を熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分総量100質量部に対して0.1質量部以上とすることにより、フェノール系樹脂(A-1)の特徴である低弾性及び高伸び性を得易くなり、また、40質量部以下とすることにより、ガラス転移温度(Tg)の低下、難燃性の低下及びタック性の上昇を抑制できる傾向にある。
同様の観点から、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分総量100質量部に対して、フェノール系樹脂(A-1)の含有量は、より好ましくは5~40質量部、更に好ましくは5~25質量部、特に好ましくは5~15質量部である。
なお、本明細書において、「樹脂成分総量」とは、必要に応じて含有することができる後述のフィラー(D)と有機溶剤を含有しないその他の成分の総量であることを意味する。
【0035】
((A-2):炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を有さないフェノール系樹脂)
フェノール系樹脂(A)は、更に、(A-2)炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を有さないフェノール系樹脂[以下、フェノール系樹脂(A-2)と称することがある。]を含んでいてもよく、また、金属箔との密着強度確保の観点からは、フェノール系樹脂(A-2)を含んでいることが好ましい。炭素数10~25の脂肪族炭化水素基とは、前記フェノール系樹脂(A-1)における説明と同様に説明される。
フェノール系樹脂(A-2)としては、炭素数10~25の脂肪族炭化水素基を有さない公知のフェノール系樹脂を用いることができる。それらの中でも、低吸湿性の観点から、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルノボラック型フェノール樹脂等が好ましく、クレゾールノボラック型フェノール樹脂がより好ましい。
【0036】
(フェノール系樹脂(A-2)の物性)
フェノール系樹脂(A-2)の水酸基当量は、ガラス転移温度の向上及び電気絶縁信頼性の向上の観点から、好ましくは80~300g/eq、より好ましくは80~200g/eq、更に好ましくは80~150g/eqである。
【0037】
フェノール系樹脂(A-2)としては、市販品を使用してもよく、例えば、クレゾールノボラック型フェノール樹脂である「KA-1165」(DIC株式会社製、商品名)、ビフェニルノボラック型フェノール樹脂である「MEH-7851」(明和化成株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0038】
フェノール系樹脂(A-1)とフェノール系樹脂(A-2)の総量に対するフェノール系樹脂(A-1)の含有比率は、好ましくは30~95質量%である。当該範囲内とすることにより、低弾性、高耐熱性、及び高伸び性を有しながら、金属箔との高い接着強度が得られる傾向にある。同様の観点から、より好ましくは50~95質量%、更に好ましくは60~95質量%、特に好ましくは70~90質量%である。
【0039】
〔(B):熱硬化性樹脂〕
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、更に、(B)成分として熱硬化性樹脂(熱硬化性樹脂(B)と称することがある。)を含有してなるものであってもよく、また、耐熱性、電気絶縁信頼性、高ガラス転移温度の観点から、熱硬化性樹脂(B)を含有してなるものであることが好ましい。但し、該(B)成分は前記(A)成分を含まない。
熱硬化性樹脂(B)としては、公知の熱硬化性樹脂を用いることができ、特に制限されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド系化合物、ビスマレイミド系化合物とジアミンとの付加重合物、イソシアネート樹脂、トリアリルイソシアヌレート樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂及びビニル基含有ポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、耐熱性及び電気絶縁信頼性等の性能のバランスの観点から、エポキシ樹脂、シアネート樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0040】
前記エポキシ樹脂としては、耐熱性及びガラス転移温度向上の観点から、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を用いることが好ましい。ここで、エポキシ樹脂は、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等に分類される。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、公知のものを用いることができる。その中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂、多官能脂環式エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200~1,000、より好ましくは300~900である。重量平均分子量が200以上であると、耐熱性が向上する傾向にあり、1,000以下であると、(A)成分との相溶性が良好となる傾向にある。
また、エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、相溶性の観点から、好ましくは150~500g/eq、より好ましくは150~450g/eq、更に好ましくは150~300g/eqである。
【0042】
エポキシ樹脂としては市販品を使用してもよく、市販品としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である「jER1001」(三菱ケミカル株式会社製、商品名)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂である「N770」(DIC株式会社製、商品名)、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂である「NC-3000H」(日本化薬株式会社製、商品名)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である「EPICLON N-660」(DIC株式会社製、商品名)、リン含有エポキシ樹脂である「ZX-1548」(東都化成株式会社製、商品名)、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂である「HP-9900」(DIC株式会社製、商品名)、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂である「EPICLON 153」(DIC株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0043】
前記シアネート樹脂としては、公知のものを用いることができる。シアネート樹脂としては、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、ビスフェノールF型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂等が挙げられる。シアネート樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂(B)として例示したその他の熱硬化性樹脂についても、公知のものを使用することができる。
【0044】
((B)成分の含有量)
本発明の熱硬化性樹脂組成物が(B)成分を含有してなるものである場合、該(B)成分の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分総量100質量部に対して、好ましくは40~90質量部、より好ましくは50~90質量部、更に好ましくは60~80質量部である。
また、特に制限されるものではないが、(B)成分の官能基(例えばエポキシ基)に対する(A)成分のフェノール性水酸基の数が0.5~1.5当量となるように調整することが好ましい。
(B)成分の含有量が上記範囲であることによって、金属箔との接着強度を保ち、且つガラス転移温度及び電気絶縁信頼性の低下が抑制される傾向にある。
【0045】
〔(C):硬化促進剤〕
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、(C)成分として硬化促進剤(硬化促進剤(C)と称することがある。)を含有させることができ、また含有させることが好ましい。硬化促進剤(C)は、(B)熱硬化性樹脂の種類によって適宜選択することができ、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
例えば、熱硬化性樹脂(B)としてエポキシ樹脂を用いる場合には、特に限定されるものではないが、アミン化合物及びイミダゾール化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、イミダゾール化合物を含むことがより好ましい。
アミン化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルエタン、グアニル尿素等が挙げられる。
イミダゾール化合物としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物が硬化促進剤(C)を含有してなるものである場合、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分総量100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.01~5質量部、更に好ましくは0.01~3質量部、特に好ましくは0.05~3質量部である。なお、(B)熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する場合、(D)硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中のオキシラン環の総量に応じて決定することもできる。
【0046】
〔(D):フィラー〕
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、(D)成分としてフィラー(フィラー(D)と称することがある。)を含有させることができ、また含有させることが好ましい。フィラーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フィラー(D)としては特に制限されるものではなく、公知のものを使用できる。フィラー(D)としては、有機フィラーであってもよいし、無機フィラーであってもよい。低熱膨張率及び難燃性の観点からは、フィラー(D)として、無機フィラーを含有することが好ましい。該無機フィラーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー(焼成クレー等)、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらの中でも、誘電率が低いこと及び線膨張率が低いこと等の観点から、シリカがより好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカ等が挙げられ、乾式法シリカとしては更に、製造法の違いにより破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)等が挙げられる。これらの中でも、シリカとしては溶融シリカ(溶融球状シリカ)、粉砕シリカがより好ましい。
【0047】
フィラー(D)の形状及び粒径についても特に制限はないが、例えば、平均粒子径は、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.1~4.0μmである。平均粒径が0.1μm以上であると、フィラー同士の分散性が良好となり、且つワニスの粘度低下により取り扱い性が良好となる傾向にある。また、平均粒径が10μm以下であると、ワニス化の際にフィラー(D)の沈降が起き難い傾向にある。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0048】
本発明の熱硬化性樹脂組成物がフィラー(D)を含有してなるものである場合、フィラー(D)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分総量100質量部に対して、好ましくは5~40質量部、より好ましくは10~40質量部、更に好ましくは15~35質量部である。フィラー(D)の前記含有量が5質量部以上であると線膨張率が低くなり、十分な耐熱性が得られ、且つ、低タック性になる傾向にある。また、フィラー(D)の前記含有量が40質量部以下であると、樹脂組成物の硬化物が脆くなることが少なく、フェノール系樹脂(A-1)の有する低弾性の効果が十分に得られる傾向にある。
【0049】
〔その他の成分〕
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、硬化剤(但し、前記(A)成分を除く。);イソシアネート、メラミン等の架橋剤;ゴム系エラストマ;リン系化合物等の難燃剤;導電性粒子;カップリング剤;流動調整剤;酸化防止剤;顔料;レベリング剤;消泡剤;イオントラップ剤などを含有してなるものであってもよい。これらはいずれも公知のものを使用できる。
カップリング剤を含有すると、フィラー(D)の分散性の向上、並びにプリプレグの基材への密着性及び金属箔への密着性の向上効果があるため、好ましい。カップリング剤としては、シランカップリング剤が好ましく、該シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、アルケニルシラン系カップリング剤、アルキニルシラン系カップリング剤、ハロアルキルシラン系カップリング剤、シロキサン系カップリング剤、ヒドロシラン系カップリング剤、シラザン系カップリング剤、アルコキシシラン系カップリング剤、クロロシラン系カップリング剤、(メタ)アクリルシラン系カップリング剤、イソシアヌレートシラン系カップリング剤、ウレイドシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤、イソシアネートシラン系カップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、エポキシシランカップリング剤が好ましい。カップリング剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物がカップリング剤を含有してなるものである場合、その含有量は、熱硬化性樹脂の樹脂成分総量100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部、より好ましくは0.01~5質量部、更に好ましくは0.05~2質量部である。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物がカップリング剤以外の他の成分を含有する場合、その目的に応じて、適宜含有量を調整すればよい。
【0050】
〔有機溶剤〕
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、希釈することによって取り扱いを容易にするという観点及び後述するプリプレグを製造し易くする観点から、有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤を含有する熱硬化性樹脂組成物をワニスと称することがある。有機溶剤としては、前記(A)成分又は(B)成分を製造する際に用いた有機溶剤がそのまま本発明の熱硬化性樹脂組成物に含有されたものであってもよいし、新たに配合したものであってもよく、特に制限はない。
有機溶剤としては、特に制限されるものではないが、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤等が用いられる。具体的には、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。エステル系溶剤としては、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等が挙げられる。アミド系溶剤としては、N-メチルピロリドン、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、溶解性の観点から、ケトン系溶剤が好ましい。
ワニスとしては、取り扱い性、プリプレグの基材への含浸性及びプリプレグの外観の観点から、不揮発分濃度が25~65質量%であることが好ましい。なお、本明細書において、「不揮発分」とは、熱硬化性樹脂組成物に含まれる有機溶剤を除去したときに残存する成分を指し、前記フィラー(D)も含まれる。
【0051】
[プリプレグ]
本発明は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を含有してなるプリプレグも提供する。本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸し、乾燥してなるものである。前記基材は、金属張積層板又はプリント配線板を製造する際に用いられる基材であれば特に制限されないが、通常、織布及び不織布等の繊維基材が用いられる。繊維基材の材質としては、例えば、ガラス、アルミナ、アスベスト、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維、並びにこれらを混抄した繊維が挙げられる。繊維基材としては、厚みが160μm以下(好ましくは10~160μm、より好ましくは10~100μm、更に好ましくは20~50μm)のガラスクロスが好ましく用いられる。更に、任意に折り曲げ可能なプリント配線板を得ることができ、製造プロセス上での温度、吸湿等に伴う寸法変化を小さくすることが可能となることから、厚みが50μm以下のガラスクロスを用いることがより好ましい。
【0052】
プリプレグの製造条件に特に制限はないが、ワニスが含有する有機溶剤を80質量%以上揮発させてプリプレグを得ることが好ましい。乾燥温度としては、好ましくは80~180℃、より好ましくは110~160℃であり、乾燥時間は、ワニスのゲル化時間との兼ね合いで適宜設定される。こうして得られるプリプレグは、ワニスの不揮発分と基材の総量に対して、ワニスの不揮発分が30~80質量%であることが好ましい。
【0053】
[樹脂付き金属箔]
本発明は、本発明の熱硬化性樹脂組成物と金属箔とを積層してなる樹脂付き金属箔も提供する。樹脂付き金属箔は、例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物(ワニス)を金属箔に塗工し、乾燥させることによって製造することができる。乾燥条件は、特に限定されるものではないが、好ましくは80~180℃、より好ましくは110~160℃で乾燥させることができる。
塗工する方法に特に制限はなく、ダイコーター、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター等の公知の塗工機を用いることができる。
【0054】
[積層体]
本発明は、本発明のプリプレグ又は本発明の樹脂付き金属箔を含有してなる積層体も提供する。本発明の積層体は、本発明のプリプレグ複数枚を積層し、加熱加圧してなるものである。
また、本発明の積層体は、本発明とは異なるプリプレグ複数枚からなる積層体と、本発明のプリプレグ複数枚からなる積層体との積層物であってもよい。本発明とは異なるプリプレグ複数枚からなる積層体とは、例えば、本発明のプリプレグ複数枚からなる積層体よりも貯蔵弾性率が高い積層体が挙げられる。本発明のプリプレグ複数枚からなる積層体によって応力緩和効果が得られるため、当該態様とすることにより、本発明とは異なるプリプレグ複数枚からなる積層体のみを用いた場合に生じ得るプリント配線板のクラックの発生を抑制することができる。
【0055】
特に、金属張積層板は、例えば、前記積層体の両側の接着面と金属箔とを合わせるように重ね、真空プレス条件にて、好ましくは130~250℃、より好ましくは150~230℃、且つ、好ましくは0.5~10MPa、より好ましくは1~5MPaの条件で加熱加圧成形することによって製造することができる。
また、本発明の樹脂付き金属箔の樹脂面が向き合うように重ね、真空プレス条件にてプレスすることによっても金属張積層板を製造することができる。加熱加圧方法については、特に限定されるものではなく、例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用することができる。
【0056】
本発明の樹脂付き金属箔及び前記金属張積層板に用いられる金属箔としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅箔、アルミニウム箔が一般的に用いられる。金属箔の厚みも特に限定されるものではなく、通常、積層板に用いられる金属箔の厚みである1~200μmから選択でき、好ましくは10~100μm、より好ましくは10~50μmである。
その他にも、例えば、ニッケル、ニッケル-リン、ニッケル-スズ合金、ニッケル-鉄合金、鉛、鉛-スズ合金等を中間層とし、該中間層の両面に0.5~15μmの銅層と10~300μmの銅層とを設けた3層構造の複合箔を用いることもできるし、アルミニウムと銅箔を複合した2層構造複合箔を用いることもできる。
【0057】
(貯蔵弾性率)
本発明の樹脂組成物から得られる硬化物(積層板)の貯蔵弾性率は、応力緩和効果を発現させる観点から、4.0×109Pa以下が好ましく、2.0×109Pa以下がより好ましく、1.9×109Pa以下が更に好ましく、1.8×109Pa以下が特に好ましい。貯蔵弾性率の下限値に特に制限はなく、1.0×109Paであってもよく、1.1×109Paであってもよく、1.2×109Paであってもよい。
(引張伸び率)
本発明の樹脂組成物から得られる硬化物(積層板)の常温環境下(ここでは25℃)での引張り伸び率は、応力緩和効果を発現させる観点から、3.0%以上が好ましく、3.2%以上がより好ましく、3.5%以上が更に好ましい。上限値に特に制限はないが、通常、6.0%以下であり、5.0%以下であってもよい。
また、高温環境下(ここでは125℃)での引張り伸び率は、高温環境下における応力緩和効果を発現させ、且つ、常温環境と高温環境との間の温度変化が起こる際の熱膨張に対する復元性の観点から、5.0%以上が好ましく、5.4%以上がより好ましく、5.7%以上が更に好ましく、6.0%以上が特に好ましく、6.5%以上が最も好ましい。上限値に特に制限はないが、通常、12.0%以下であり,11.0%以下であってもよい。
上記貯蔵弾性率及び引張伸び率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0058】
(金属箔との接着性)
本発明の樹脂組成物から得られる硬化物(金属張り積層板)において、25℃での金属箔との接着性は、実施例に記載の方法に従って測定したとき、好ましくは0.80kN/m以上、より好ましくは1.0kN/m以上、更に好ましくは1.20kN/m以上、特に好ましくは1.30kN/m以上である。上限値に特に制限はないが、通常、2.0kN/m以下であり、1.80kN/m以下であってもよい。
また、125℃での金属箔との接着性は、好ましくは0.40kN/m以上、より好ましくは0.50kN/m以上、更に好ましくは0.60kN/m以上、特に好ましくは0.70kN/m以上である。上限値に特に制限はないが、通常、1.50kN/m以下であり,1.30kN/m以下であってもよく、1.0kN/m以下であってもよい。
【0059】
[プリント配線板]
本発明は、本発明の積層板を含有してなるプリント配線板も提供する。本発明のプリント配線板は、本発明の積層板に回路加工してなるものである。本発明のプリント配線板の製造方法は、特に制限されるものではないが、例えば、片面又は両面に金属箔が設けられた本発明の積層体(金属張積層板)の金属箔に回路(配線)加工を施すことによって製造することができる。
本発明のプリント配線板は、フレキシブルプリント配線板であってもよい。
【0060】
[半導体パッケージ]
本発明の半導体パッケージは、本発明のプリント配線板を含有するものであり、より詳細には、本発明のプリント配線板に半導体を搭載してなるものである。本発明の半導体パッケージは、本発明のプリント配線板の所定の位置に、半導体チップ、メモリ等を搭載して製造することができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
[合成例1]フェノール系樹脂(A-1)の製造
(フェノール系樹脂(A-1-a)の合成)
温度計、攪拌機及び冷却管を備えた内容量2Lのガラス製フラスコに、カルダノール300g(1.0mol)、メタノール150g、50%ホルムアルデヒド水溶液120g(2.0mol)を仕込み、その混合液に30%水酸化ナトリウム水溶液を2時間かけて滴下した。その後、45℃まで昇温し、6時間反応させた。次いで、得られた反応液に35%塩酸を添加して水酸化ナトリウムを中和した後、o-アリルフェノールを1,342g(10mol)添加し、シュウ酸を1.34g(o-アリルフェノールに対して0.1質量%)添加して系内を酸性にし、100℃まで昇温してから5時間反応を行った。その後、反応液の水洗を行ってから、過剰のo-アリルフェノールを留去し、フェノール系樹脂(A-1-a)を得た。
得られたフェノール系樹脂(A-1-a)の重量平均分子量(Mw)は1,412、水酸基当量は214g/eqであった。
【0063】
ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40)[東ソー株式会社製、商品名]を用いて3次式で近似した。GPCの測定条件を、以下に示す。
装置:
ポンプ:L-6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
検出器:L-3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラムオーブン:L-655A-52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラム:ガードカラム;TSK Guardcolumn HHR-L+カラム;TSKgel G4000HHR+TSKgel G2000HHR(全て東ソー株式会社製、商品名)
カラムサイズ:6.0mm×40mm(ガードカラム)、7.8mm×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:30mg/5mL
注入量:20μL
流量:1.00mL/分
測定温度:40℃
【0064】
また、フェノール系樹脂の水酸基当量(g/eq)は、自動滴定装置「COM-1700S」(平沼産業株式会社製)を用い、無水酢酸によるアセチル化法で滴定して求めた。
【0065】
[合成例2]フェノール系樹脂(A-1)の製造
(フェノール系樹脂(A-1-b)の合成)
温度計、攪拌機及び冷却管を備えた内容量2Lのガラス製フラスコに、p-(4-ペンチルシクロヘキシル)フェノール248g(1.0mol)、メタノール150g、50%ホルムアルデヒド水溶液120g(2.0mol)を仕込み、その混合液に30%水酸化ナトリウム水溶液を2時間かけて滴下した。その後、45℃まで昇温し、6時間反応させた。次いで、得られた反応液に35%塩酸を添加して水酸化ナトリウムを中和した後、o-アリルフェノールを1,342g(10mol)添加し、シュウ酸を1.34g(o-アリルフェノールに対して0.1質量%)添加して系内を酸性にし、100℃まで昇温してから5時間反応を行った。その後、反応液の水洗を行ってから、過剰のo-アリルフェノールを留去し、フェノール系樹脂(A-1-b)を得た。
得られたフェノール系樹脂(A-1-b)の重量平均分子量(Mw)は1,738、水酸基当量は238g/eqであった。重量平均分子量(Mw)及び水酸基当量の測定方法は合成例1に記載の通りである。
【0066】
[実施例1]
(A-1)成分として合成例1で得たフェノール系樹脂(A-1-a)、(A-2)成分としてクレゾールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、水酸基当量119g/eq)、熱硬化性樹脂(B)としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、エポキシ当量254g/eq)、フィラー(D)として破砕シリカ(福島窯業株式会社製)、カップリング剤として「A-187」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ株式会社製、商品名)を表1に示す配合量で配合し、メチルイソブチルケトンに溶解後、硬化促進剤(C)として2-メチルイミダゾールを表1に従って配合し、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0067】
[実施例2]
実施例1において、前記(A-1)成分及び前記(A-2)成分の配合量を表1に記載の通りに変更したこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0068】
[実施例3]
実施例1において、熱硬化性樹脂(B)として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の代わりに、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、エポキシ当量400g/eq)を用いたこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0069】
[実施例4]
実施例3において、(A-1)成分及び(A-2)成分の配合量を表1に記載の通りに変更したこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0070】
[実施例5]
実施例1において、熱硬化性樹脂(B)として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の代わりに、ナフタレン骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製)を用いたこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0071】
[実施例6]
実施例5において、(A-1)成分及び(A-2)成分の配合量を表1に記載の通りに変更したこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0072】
[実施例7]
実施例1において、熱硬化性樹脂(B)として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の代わりに、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製)を用いたこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0073】
[実施例8]
実施例7において、(A-1)成分及び(A-2)成分の配合量を表1に記載の通りに変更したこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0074】
[実施例9]
実施例1において、熱硬化性樹脂(B)として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の代わりに、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製)を用いたこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0075】
[実施例10]
実施例9において、(A-1)成分及び(A-2)成分の配合量を表1に記載の通りに変更したこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0076】
[実施例11]
実施例2において、(A-1)成分として、「合成例1で得たフェノール系樹脂(A-1-a)」の代わりに「合成例2で得たフェノール系樹脂(A-1-b)」を用いたこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0077】
[実施例12]
実施例4において、(A-1)成分として、「合成例1で得たフェノール系樹脂(A-1-a)」の代わりに「合成例2で得たフェノール系樹脂(A-1-b)」を用いたこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0078】
[実施例13]
実施例6において、(A-1)成分として、「合成例1で得たフェノール系樹脂(A-1-a)」の代わりに「合成例2で得たフェノール系樹脂(A-1-b)」を用いたこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0079】
[実施例14]
実施例8において、(A-1)成分として、「合成例1で得たフェノール系樹脂(A-1-a)」の代わりに「合成例2で得たフェノール系樹脂(A-1-b)」を用いたこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0080】
[実施例15]
実施例10において、(A-1)成分として、「合成例1で得たフェノール系樹脂(A-1-a)」の代わりに「合成例2で得たフェノール系樹脂(A-1-b)」を用いたこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0081】
[実施例16]
実施例15において、(A-1)成分及び(A-2)成分の配合量を表2に記載の通りに変更したこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0082】
[実施例17及び18]
実施例3において、(A-1)成分、(A-2)成分及び(B)成分の配合量を表2に記載の通りに変更したこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0083】
[比較例1](A-1)成分なし
(A-2)成分としてクレゾールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、水酸基当量119g/eq)、熱硬化性樹脂(B)としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、エポキシ当量254g/eq)、フィラー(D)として破砕シリカ(福島窯業株式会社製)、カップリング剤として「A-187」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ株式会社製、商品名)を表2に示す配合量で配合し、メチルイソブチルケトンに溶解後、硬化促進剤(C)として2-メチルイミダゾールを表2に従って配合し、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0084】
[比較例2](A-1)成分なし
比較例1において、(B)成分として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の代わりに、ナフタレン骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製)を用いたこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0085】
[比較例3](A-1)成分なし
比較例1において、(B)成分として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の代わりに、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製)を用いたこと以外は同様の操作を行い、不揮発分40質量%のワニスを得た。
【0086】
各例で作製したワニスを用いて、以下の方法によってプリプレグ、樹脂付き銅箔及び銅張積層板を作製し、後述の方法によって各評価を行った。
【0087】
[プリプレグの作製]
各例で作製したワニスを、厚さ0.028mmのガラス布1037(旭シュエーベル株式会社製、商品名)に含浸後、140℃にて10分間加熱して乾燥させ、プリプレグを得た。
【0088】
[樹脂付き銅箔の作製]
各例で作製したワニスを、厚さ35μmの電解銅箔「YGP-35」(日本電解株式会社製、商品名)に塗工機により塗工成型し、140℃にて約6分熱風乾燥させ、塗布厚さ50μmの樹脂付き銅箔を作製した。
【0089】
[銅張積層板の作製]
4枚重ねたプリプレグの両側に厚さ35μmの電解銅箔「YGP-35」(日本電解株式会社製、商品名)を接着面がプリプレグと合わさるように重ね、200℃にて60分間、4MPaの真空プレス条件で両面銅張積層板を作製した。
また、樹脂付き銅箔は樹脂面が向き合うように重ね、200℃にて60分間、4MPaの真空プレス条件で両面銅張積層板を作製した。
【0090】
[コア基材を有する多層板の作製]
厚みが1.0mm、ガラスエポキシ銅張積層板「MCL-E-75G」(日立化成株式会社製、商品名)の銅箔について、エッチングにて回路形成を行い、こうして得られたコア基板と厚さ18μmの電解銅箔「YGP-18」(日本電解株式会社製、商品名)との間に2枚重ねのプリプレグを挟み込むように設置して、200℃にて60分間、4MPaの真空プレス条件で多層板を作製し、これを評価用多層板とした。
【0091】
[ワニス、プリプレグ及び銅張積層板の評価方法]
(1)ワニス性(各成分の相溶性)
作製したワニスを透明な容器に受け、24時間後の外観を目視により観察し、ワニスの分離、及び、沈降物の有無について観察し、下記評価基準に従って評価した。Aであるとワニス性に優れる。結果を表1及び2に示す。
A:ワニス色相が均一であって分離していないと判断でき、且つ、沈降物の堆積が目視で確認できない。
B:ワニス色相が不均一であって分離していると判断できるか、又は、沈降物の堆積が目視で確認できる。
【0092】
(2)ワニス性(粘度)
作製したワニスをカップに入れ、ウォーターバスを用いてワニス温度を30℃に調整し、その後、BL型粘度計(東機産業株式会社製)を用いてワニスの粘度を算出した。30℃の粘度が800mPa・s以下であれば、プリプレグの製造に問題なしと判断できる。結果を表1及び2に示す。
【0093】
(3)プリプレグの外観(凝集物の有無)
プリプレグの外観の評価は、20倍の拡大鏡を用いて凝集物の発生について観察し、下記評価基準に従って評価した。結果を表1及び2に示す。
A:凝集物を確認できない。
B:凝集物が確認される。
【0094】
(4)貯蔵弾性率
貯蔵弾性率の評価は、前記樹脂付き銅箔を樹脂面が向き合うように重ねて作製した両面銅張積層板を全面エッチングすることによって得た積層板を、幅5mm×長さ30mmに切断し、動的粘弾性測定装置(株式会社UBM製)を用いて貯蔵弾性率を測定した。25℃の貯蔵弾性率が4.0×109Pa以下であれば十分に低弾性であり、応力緩和効果を発現可能であり、プリント配線板のクラックの発生を抑制し得ると判断した。2.0×109Pa以下であると、前記同様の観点からより好ましい。結果を表1及び2に示す。
【0095】
(5)引張り伸び率(25℃及び125℃)
樹脂付き銅箔を樹脂面が向き合うように重ね作製した両面銅張積層板を全面エッチングすることによって得た積層板を、幅10mm×長さ100mmに切断し、恒温槽設置型オートグラフ(株式会社島津製作所製)を用いて25℃及び125℃における引張り伸び率を測定した。25℃の引張り伸び率が3.0%以上及び125℃での引張り伸び率が5.0%以上であれば応力緩和効果を発現可能であり、プリント配線板のクラックの発生を抑制し易い。結果を表1及び2に示す。
【0096】
(6)耐熱性
4枚重ねた前記プリプレグから作製した両面銅張積層板を50mm四方の正方形に切り出して試験片を得た。その試験片を260℃のはんだ浴中に浮かべて、その時点から試験片の膨れが目視で認められる時点までに経過した時間を測定し、耐熱性の指標とした。なお、経過時間の測定は300秒までとし、300秒以上経過した場合は耐熱性が十分であると判断した。結果を表1及び2に示す。
【0097】
(7)金属箔との接着性(25℃及び125℃)
4枚重ねた前記プリプレグから作製した両面銅張積層板の銅箔を部分的にエッチングして、3mm幅の銅箔ラインを形成した。次に、恒温槽設置型剥離試験機(株式会社島津製作所製)を用い、温度25℃又は125℃の環境下に設定し、銅箔ラインを、接着面に対して90°方向に50mm/分の速度で引き剥がした際の荷重を測定し、銅箔引き剥がし強さの指標とした。25℃での銅箔引き剥がし強さが0.80kN/m以上及び125℃での銅箔引き剥がし強さが0.40kN/m以上であれば、金属箔との接着性が十分であると判断した。結果を表1及び2に示す。
【0098】
(8)タック性
250mm四方の正方形に切り出したプリプレグを50枚重ねたものの上下を270mm四方の鏡板で挟んだ。更に、上部鏡板に同一鏡板を重ねて、上部鏡板の総重量を3kgにした構成物を作製した。更に、この構成物をアルミ防湿袋でシール梱包した後、30℃に設定した恒温槽へ投入し、プリプレグ同士が密着し始める経過日数を調査し、これをタック性の有無の指標とした。プリプレグ同士が密着し始める経過日数は2日以上であることが好ましく、7日以上(表中には>7と示す。)であれば、十分に低タック性であると判断した。低タック性であれば、取扱いが容易であり、且つ、プリプレグ同士を重ねた状態での保存が可能となるために好ましい。結果を表1及び2に示す。
【0099】
(9)耐クラック性(耐はんだクラック性)
前記評価用多層板について、エッチングにて回路形成を行い、チップ搭載用の電極を形成した。その後、ソルダーレジスト形成、仕上げ処理としてフラックスを塗布した。その後、この電極上にはんだペーストを塗布し、チップ抵抗器(3226サイズ)を電極上に搭載し、リフロー炉に投入することによって実装基板を作製した。
次に、作製した実装基板を温度サイクル試験機に投入し、大気中、-45℃と125℃をそれぞれ30分毎ずつ保持する一連の条件(但し、昇温速度10℃/分及び降温速度10℃/分)を1サイクルとしてヒートサイクル試験を行い、500サイクル毎に実装基板を取り出して目視で断面観察することにより、はんだクラックの有無を確認し、最大4,000サイクルまで評価を続け、はんだクラックが発生するまでのサイクル数を調査し、耐はんだクラック性の指標とした。
なお、はんだクラックの発生の判定基準として、クラックの大きさが、部品とはんだの接続長の50%以上であった場合に不合格(つまり、はんだクラックが発生した)と判定した。サイクル数は2,500サイクル以上であることが好ましい。
【0100】
(10)電気絶縁信頼性
4枚重ねた前記プリプレグから作製した両面銅張積層板をスルーホール穴壁間隔が350μmとなるように加工したテストパターンを用いて、各試料について400穴の絶縁抵抗を経時的に測定し、電気絶縁信頼性の指標とした。測定条件は、85℃/85%RH雰囲気中、100V印加して行い、導通破壊が発生するまでの時間を測定した。なお、測定時間は2,000時間までとし、2,000時間以上は電気絶縁信頼性が十分であると判断した。
【0101】
【0102】
【0103】
表1及び表2から明らかなように、実施例では、低弾性、高耐熱性、高伸び性、高い電気絶縁信頼性及び金属箔との高い接着強度を有すると共に、低タック性も有しており、更にはんだクラックも発生しておらず、全てにおいて優れた特性を発現している。加えて、実施例で調製した樹脂組成物(ワニス)はワニス性が良好であり、且つ、プリプレグの外観も良好であった。
なお、フェノール系樹脂(A-1)の含有量が、樹脂成分総量100質量部に対して0.1~40質量部の範囲にある実施例1~16では、低タック性がより一層優れていることがわかる。
一方、フェノール系樹脂(A-1)を含まない熱硬化性樹脂組成物を用いた比較例1~3では、低弾性、高耐熱性、高伸び性、高い電気絶縁信頼性、金属箔との高い接着強度、耐はんだクラック性の全てを満足するものがなく、特に、金属箔との高い接着強度を達成しているものの、低弾性、高伸び性及び耐はんだクラック性が大幅に不足している。