(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの洗浄方法及び半導体ウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241001BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/66 L
(21)【出願番号】P 2021131785
(22)【出願日】2021-08-12
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】久保田 真美
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】牧瀬 さやか
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-165366(JP,A)
【文献】特開平9-321009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハの表面の接触角を、前記表面に滴下する液滴の量が互いに異なる複数の条件で測定する第1工程と、
前記複数の条件における前記液滴の量と前記接触角の測定値との関係から、前記液滴の量の変化に対する、前記接触角の測定値の変化の比率を計算する第2工程と、
前記比率に基づいて、前記半導体ウェーハの表面に対する前処理の要否を判定する第3工程と、
前記第3工程の判定に従って、前記半導体ウェーハの表面に対して前記前処理を行う第4工程と、
その後、前記半導体ウェーハの表面に対して枚葉スピン洗浄を行う第5工程と、
を有する半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項2】
前記第1工程の後、かつ、前記第2工程の前に、前記複数の条件における前記接触角の測定値の相対値を求め、
前記第2工程では、前記複数の条件における前記液滴の量と前記接触角の測定値の相対値との関係から、前記液滴の量の変化に対する、前記接触角の測定値の相対値の変化の比率を計算する、請求項1に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項3】
前記相対値は、前記複数の条件のいずれか一つの条件における前記接触角の測定値を基準として規格化された値である、請求項2に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項4】
前記いずれか一つの条件は、前記接触角の測定値が最大となる条件である、請求項3に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項5】
前記第2工程では、前記関係に最小二乗法を適用して得られた直線の傾きを前記比率とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項6】
前記複数の条件が3以上の条件である、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項7】
前記第1工程では、前記半導体ウェーハの表面に滴下した前記液滴の画像を取得し、前記画像から前記接触角に加えて前記液滴の量を測定する、請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項8】
前記液滴は、純水の表面張力よりも大きい表面張力を有する水溶液からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項9】
前記水溶液は、塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、及び塩化マグネシウム水溶液からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項8に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項10】
前記水溶液の濃度が10質量%以上である、請求項9に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項11】
前記液滴の量は0.3~3.0μLの範囲内に設定される、請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項12】
前記第3工程では、前記比率の絶対値が所定の閾値以下の場合、前記前処理は不要と判定し、前記比率の絶対値が前記閾値を超える場合、前記前処理が必要と判定する、請求項1~11のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項13】
前記所定の閾値が0.050である、請求項12に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項14】
前記所定の閾値が0.020である、請求項12に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項15】
前記前処理が、(i)前記半導体ウェーハをオゾン水に浸漬すること、(ii)クリーンルームのダウンフローに前記半導体ウェーハの表面を晒すこと、及び(iii)前記半導体ウェーハの表面に赤外線を照射すること、の一つ以上を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項16】
前記第4工程で前記前処理を行った場合、その後、前記第1乃至第3工程をくり返し行い、再度の前記前処理は不要との判定を得た後、前記第5工程を行う、請求項1~15のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項17】
前記第5工程では、最初にオゾン水によるスピン洗浄を行い、次いで、フッ酸によるスピン洗浄とその後のオゾン水によるスピン洗浄との組合せを1セット以上行う、請求項1~16のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項18】
前記半導体ウェーハがシリコンウェーハである、請求項1~17のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法を含む、半導体ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの表面に対して枚葉スピン洗浄を行う工程を含む、半導体ウェーハの洗浄方法及び半導体ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハ等の半導体ウェーハの製造工程には、ウェーハを回転させつつ、該ウェーハの表面上に洗浄液を供給して、該表面に付着しているパーティクルを除去する洗浄工程(以下、「枚葉スピン洗浄」とも称する。)がある。
【0003】
枚葉スピン洗浄として、例えば、オゾン水によるスピン洗浄とフッ酸によるスピン洗浄とをくり返し行う方法が挙げられる。この方法では、オゾン水によるスピン洗浄でウェーハ表面上に酸化膜を形成し、次いでフッ酸によるスピン洗浄で酸化膜とともにウェーハ表面のパーティクル等を除去する。特許文献1には、オゾン水を用いた洗浄工程と、フッ酸を用いた洗浄工程を含むウェーハの洗浄方法において、前記オゾン水を用いた洗浄工程と前記フッ酸を用いた洗浄工程の間に純水を用いたスピン洗浄工程を有するウェーハの洗浄方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
枚葉スピン洗浄では、その後のウェーハ検査工程でのLPD(輝点欠陥:Light point defect)を効果的に低減するために、洗浄液をウェーハ表面にくまなく広げて、ウェーハ表面の全体に洗浄液の膜を形成する必要がある。この点、枚葉スピン洗浄の直前の段階で、ウェーハ表面には自然酸化膜が形成されており、ウェーハ表面は基本的には親水性になっている。このため、枚葉スピン洗浄の最初の工程(例えば、オゾン水によるスピン洗浄)では、ウェーハ表面に洗浄液が広がりやすい状況になっているはずである。しかしながら、本発明者らの検討によると、枚葉スピン洗浄の条件が同一であっても、LPDが低減できるウェーハもあれば、LPDの低減が不十分となるウェーハも出てきてしまうことが判明した。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、ウェーハ表面のLPDを確実に低減することが可能な半導体ウェーハの洗浄方法及び半導体ウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を進め、以下の知見を得た。
まず、上記のように、枚葉スピン洗浄の直前の段階で、ウェーハ表面は基本的には親水性になっている。具体的には、枚葉スピン洗浄に供されるウェーハ表面の接触角は、純水を滴下して測定した場合、概ね5°前後となる。しかしながら、
-実際には、枚葉スピン洗浄に供されるまでのウェーハの保管状況によって、純水で測定したウェーハ表面の接触角の値には差が出ない程度でウェーハ表面の親水性のレベルが異なってしまい、
-親水性レベルが劣るウェーハでは、枚葉スピン洗浄の最初の工程(例えば、オゾン水によるスピン洗浄)で、ウェーハ表面に洗浄液がくまなく広がらずに、ウェーハ表面で洗浄液の膜の連続性が保てずに、ウェーハ表面の中で局所的に洗浄液が行き渡らない部位が生じてしまい、
-その結果、枚葉スピン洗浄後もパーティクルが残留したり、枚葉スピン洗浄後にエッチングムラが生じたりすることで、LPDが多くなる
のではないかと本発明者らは考えた。
【0008】
そこで、本発明者らは、
-枚葉スピン洗浄前の種々のウェーハ表面の接触角を、純水の表面張力よりも大きい表面張力を有する水溶液を滴下して、かつ、滴下する液滴の量が互いに異なる複数の条件で測定し、
-その後、各ウェーハに同一条件の枚葉スピン洗浄を行い、
-その後、ウェーハ表面のLPD個数を測定する
試験を実施した。
【0009】
これは、純水の表面張力よりも大きい表面張力を有する水溶液でウェーハ表面の接触角を測定すれば、純水で測定した接触角よりも大きな接触角の測定値が得られるため、純水による接触角測定では検出できないウェーハ表面のシビアな親水性レベルの差を検出できるのではないかと考えたためである。そして、上記の試験の結果、
-液滴量の変化に対する接触角の変化の比率が小さいウェーハでは、LPD個数が少なく、
-液滴量の変化に対する接触角の変化の比率が大きいウェーハでは、LPD個数が多い
ことを見出した。
【0010】
そこで、本発明者らは、当該比率に基づいて、枚葉スピン洗浄に先立って、ウェーハ表面の親水性を高める前処理を行う必要があるか否かを判定し、前処理が要と判定された場合には、前処理を行ってから枚葉スピン洗浄を行うことで、ウェーハ表面のLPDを確実に低減することができるとの知見を得た。
【0011】
上記知見に基づき完成した本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]半導体ウェーハの表面の接触角を、前記表面に滴下する液滴の量が互いに異なる複数の条件で測定する第1工程と、
前記複数の条件における前記液滴の量と前記接触角の測定値との関係から、前記液滴の量の変化に対する、前記接触角の測定値の変化の比率を計算する第2工程と、
前記比率に基づいて、前記半導体ウェーハの表面に対する前処理の要否を判定する第3工程と、
前記第3工程の判定に従って、前記半導体ウェーハの表面に対して前記前処理を行う第4工程と、
その後、前記半導体ウェーハの表面に対して枚葉スピン洗浄を行う第5工程と、
を有する半導体ウェーハの洗浄方法。
【0012】
[2]前記第1工程の後、かつ、前記第2工程の前に、前記複数の条件における前記接触角の測定値の相対値を求め、
前記第2工程では、前記複数の条件における前記液滴の量と前記接触角の測定値の相対値との関係から、前記液滴の量の変化に対する、前記接触角の測定値の相対値の変化の比率を計算する、上記[1]に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0013】
[3]前記相対値は、前記複数の条件のいずれか一つの条件における前記接触角の測定値を基準として規格化された値である、上記[2]に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0014】
[4]前記いずれか一つの条件は、前記接触角の測定値が最大となる条件である、上記[3]に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0015】
[5]前記第2工程では、前記関係に最小二乗法を適用して得られた直線の傾きを前記比率とする、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0016】
[6]前記複数の条件が3以上の条件である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0017】
[7]前記第1工程では、前記半導体ウェーハの表面に滴下した前記液滴の画像を取得し、前記画像から前記接触角に加えて前記液滴の量を測定する、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0018】
[8]前記液滴は、純水の表面張力よりも大きい表面張力を有する水溶液からなる、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0019】
[9]前記水溶液は、塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、及び塩化マグネシウム水溶液からなる群から選択される少なくとも一つである、上記[8]に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0020】
[10]前記水溶液の濃度が10質量%以上である、上記[9]に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0021】
[11]前記液滴の量は0.3~3.0μLの範囲内に設定される、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0022】
[12]前記第3工程では、前記比率の絶対値が所定の閾値以下の場合、前記前処理は不要と判定し、前記比率の絶対値が前記閾値を超える場合、前記前処理が必要と判定する、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0023】
[13]前記所定の閾値が0.050である、上記[12]に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0024】
[14]前記所定の閾値が0.020である、上記[12]に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0025】
[15]前記前処理が、(i)前記半導体ウェーハをオゾン水に浸漬すること、(ii)クリーンルームのダウンフローに前記半導体ウェーハの表面を晒すこと、及び(iii)前記半導体ウェーハの表面に赤外線を照射すること、の一つ以上を含む、上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0026】
[16]前記第4工程で前記前処理を行った場合、その後、前記第1乃至第3工程をくり返し行い、再度の前記前処理は不要との判定を得た後、前記第5工程を行う、上記[1]~[15]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0027】
[17]前記第5工程では、最初にオゾン水によるスピン洗浄を行い、次いで、フッ酸によるスピン洗浄とその後のオゾン水によるスピン洗浄との組合せを1セット以上行う、上記[1]~[16]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0028】
[18]前記半導体ウェーハがシリコンウェーハである、上記[1]~[17]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0029】
[19]上記[1]~[18]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法を含む、半導体ウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明の半導体ウェーハの洗浄方法及び半導体ウェーハの製造方法によれば、ウェーハ表面のLPDを確実に低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態による半導体ウェーハの洗浄方法を示すフローチャートである。
【
図2】実験例1における、枚葉スピン洗浄後のLPD個数と、枚葉スピン洗浄前に純水により測定したウェーハ表面の接触角との関係を示すグラフである。
【
図3】実験例2における、NaCl水溶液により測定した接触角測定の結果を示すグラフである。
【
図4】
図3の直線の傾きの絶対値と、枚葉スピン洗浄後のLPD個数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(半導体ウェーハの洗浄方法)
本発明の半導体ウェーハの洗浄方法は、半導体ウェーハの表面の接触角を、前記表面に滴下する液滴の量が互いに異なる複数の条件で測定する第1工程と、前記複数の条件における前記液滴の量と前記接触角の測定値との関係から、前記液滴の量の変化に対する、前記接触角の測定値の変化の比率を計算する第2工程と、前記比率に基づいて、前記半導体ウェーハの表面に対する前処理の要否を判定する第3工程と、前記第3工程の判定に従って、前記半導体ウェーハの表面に対して前記前処理を行う第4工程と、その後、前記半導体ウェーハの表面に対して枚葉スピン洗浄を行う第5工程と、を有する。
【0033】
好ましくは、前記第1工程の後、かつ、前記第2工程の前に、前記複数の条件における前記接触角の測定値の相対値を求め、前記第2工程では、前記複数の条件における前記液滴の量と前記接触角の測定値の相対値との関係から、前記液滴の量の変化に対する、前記接触角の測定値の相対値の変化の比率を計算する。好ましくは、前記相対値は、前記複数の条件のいずれか一つの条件における前記接触角の測定値を基準として規格化された値である。
【0034】
本発明の一実施形態による半導体ウェーハの洗浄方法は、
図1を参照して、
-半導体ウェーハの表面の接触角を、前記表面に滴下する液滴の量が互いに異なる複数の条件で測定する第1工程(ステップS1)と、
-前記複数の条件における前記接触角の測定値を、前記複数の条件のいずれか一つの条件における前記接触角の測定値を基準として規格化することで、前記複数の条件における前記接触角の測定値の相対値を求める工程(ステップS2A)と、
-横軸を液滴量、縦軸を規格化した接触角とした平面に測定データをプロットし、直線近似して傾きを求めることで、前記液滴の量の変化に対する、前記接触角の測定値の相対値の変化の比率を計算する第2工程(ステップS2B)と、
-前記比率に基づいて、前記半導体ウェーハの表面に対する前処理の要否を判定する第3工程(ステップS3)と、
-ステップS3にて前処理が要であると判定された場合に、前記半導体ウェーハの表面に対して前記前処理を行う第4工程(ステップS4)と、
-ステップS4の後、再度ステップS1に戻る工程と、
-ステップS3にて前処理が不要と判定された場合に、前記半導体ウェーハの表面に対して枚葉スピン洗浄を行う第5工程(ステップS5)と、
を有する。
【0035】
上記本発明及び本発明の一実施形態による半導体ウェーハの洗浄方法は、枚葉スピン洗浄の前処理の要否判定により特徴づけられ、これにより、ウェーハ表面のLPDを確実に低減することが可能である。以下、各工程について詳細に説明する。
【0036】
[半導体ウェーハ]
上記本発明及び本発明の一実施形態による半導体ウェーハの洗浄方法に供される半導体ウェーハは、特に限定されないが、好適にはシリコンウェーハ、特に好適には単結晶シリコンウェーハである。
【0037】
一般的に、枚葉スピン洗浄の直前工程は、前洗浄工程、又は、当該前洗浄工程に次いで行う検査工程であり、前洗浄工程の最後は、ウェーハ表面に自然酸化膜が形成された状態となる。具体的には、前洗浄工程では、SC1洗浄槽、HF槽、オゾン槽などを組み合わせてウェーハを洗浄した後に、ウェーハを純水でリンスし、その後乾燥する。検査工程を行う場合には、ウェーハ表面のパーティクルや傷などの検査、ウェーハ形状(平坦度)の検査などを行う。すなわち、上記本発明及び本発明の一実施形態による半導体ウェーハの洗浄方法に供される半導体ウェーハの表面には自然酸化膜が形成されており、ウェーハ表面は基本的には親水性になっており、具体的には、ウェーハ表面の接触角は、純水を滴下して測定した場合、概ね5°前後となる。
【0038】
ただし、実際には、枚葉スピン洗浄に供されるまでのウェーハの保管状況によって、純水で測定したウェーハ表面の接触角の値には差が出ない程度でウェーハ表面の親水性のレベルが異なる。例えば、上記の前洗浄工程及び任意の検査工程の後、ウェーハはFOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれる容器に収容され、保管されるが、その保管期間が長くなるにつれて、ウェーハ表面に有機物の軽微な堆積が生じることがある。また、上記の前洗浄工程後の乾燥が不十分だった場合には、FOUP内で水蒸気が発生してウェーハ表面に吸着し、ウェーハ表面において水分子の分極が生じることがある。このようにシビアな親水性レベルが劣るウェーハでは、枚葉スピン洗浄の最初の工程(例えば、オゾン水によるスピン洗浄)で、ウェーハ表面に洗浄液がくまなく広がらずに、ウェーハ表面で洗浄液の膜の連続性が保てずに、ウェーハ表面の中で局所的に洗浄液が行き渡らない部位が生じてしまい、その結果、枚葉スピン洗浄後もパーティクルが残留したり、枚葉スピン洗浄後にエッチングムラが生じたりすることで、LPDが多くなる。そのため、このようにシビアな親水性レベルが劣るウェーハでは、枚葉スピン洗浄に先立って、ウェーハ表面の親水性を高める前処理を行う。上記本発明及び本発明の一実施形態による半導体ウェーハの洗浄方法は、この前処理の要否の判定により特徴づけられる。
【0039】
[第1工程(ステップS1)]
まず、第1工程(ステップS1)において、半導体ウェーハの表面の接触角を、前記表面に滴下する液滴の量が互いに異なる複数の条件で測定する。
【0040】
本実施形態では、純水の表面張力よりも大きい表面張力を有する水溶液からなる液滴をウェーハ表面に滴下して、接触角を測定することが好ましい。これにより、純水による接触角測定では検出できないウェーハ表面のシビアな親水性レベルの差を検出することができる。このような水溶液は、塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、及び塩化マグネシウム水溶液からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。これらの水溶液は、調製が容易であり、かつ、適度な表面張力を有するからである。これらの水溶液中の濃度は、特に限定されないが、適度な表面張力を発揮する観点から、10質量%以上であることが好ましく、上限は溶解度まで許容される。
【0041】
接触角測定の際の液滴の量は、0.3~3.0μLの範囲内に設定されることが好ましい。液滴量が0.3μL以上であれば、液滴の蒸発及び揮発の影響が小さく、接触角測定の誤差が大きくなることがなく、液滴量が3.0μm以下であれば、液滴が自重でつぶれにくく、やはり接触角測定の誤差が大きくなることがないからである。
【0042】
精度の高い前処理の要否判定を行う観点から、好ましくは、液滴の量が互いに異なる3以上の条件で接触角を測定し、より好ましくは、5以上の条件で接触角を測定する。条件の数の上限は特に限定されないが、判定精度が飽和するため、条件の数は8以下とすることができる。
【0043】
第1工程では、半導体ウェーハの表面に滴下した液滴の画像を取得し、この画像から接触角を測定する。接触角の測定は、定法により行うことができ、例えば、θ/2法、接線法、又はカーブフィッティング法を用いることができる。
【0044】
第1工程では、前記画像から、実際に滴下された液滴の量(体積)を測定(算出)することが好ましい。液滴量は、使用する接触角計にて設定することができるが、液滴量の装置設定値と実際に滴下された液滴の量との間には、ある程度の誤差が生じることがある。例えば、
図3のプロットのばらつきを参照のこと。そこで、装置設定値ではなく、実測の液滴量を次工程以降に適用することで、より高精度の判定が可能となる。
【0045】
[規格化工程(ステップS2A)]
次に、複数の条件における接触角の測定値の相対値を求める。相対値の求め方は、特に限定されないが、例えば、ステップS2Aのように、複数の条件における接触角の測定値を、前記複数の条件のいずれか一つの条件における接触角の測定値を基準として規格化する方法を好適に採用できる。このとき、基準とする条件は特に限定されないが、例えば、接触角の測定値が最大となる条件を基準とすることができる。
【0046】
[第2工程(ステップS2B)]
次に、第2工程において、前記複数の条件における前記液滴の量と前記接触角の測定値の相対値との関係から、前記液滴の量の変化に対する、前記接触角の測定値の相対値の変化の比率を計算する。当該比率の算出方法は、特に限定されないが、前記関係に最小二乗法を適用して得られた直線の傾きを前記比率とすることができる。すなわち、本実施形態のステップS2Bでは、横軸を液滴量、縦軸を規格化した接触角とした平面に測定データをプロットし、直線近似して傾きを求める。直線近似の手法として、最小二乗法を採用することができる。例えば、
図3を参照のこと。
【0047】
[第3工程(ステップS3)]
次に、第3工程(ステップS3)において、前記比率に基づいて、半導体ウェーハの表面に対する前処理の要否を判定する。既述のとおり、本発明者らの検討の結果、液滴量の変化に対する接触角の変化の比率が小さいウェーハでは、LPD個数が少なく、液滴量の変化に対する接触角の変化の比率が大きいウェーハでは、LPD個数が多いことが分かった。そこで、第3工程では、前記比率の絶対値が所定の閾値以下の場合、前処理は不要と判定し、前記比率の絶対値が所定の閾値を超える場合、前処理が必要と判定する。
【0048】
所定の閾値は、洗浄液の種類、洗浄液の流量、及びウェーハ回転数など、枚葉スピン洗浄の条件によって変わるため、枚葉スピン洗浄の条件ごとに適切な値を予め求めることが好ましいが、一例として、所定の閾値を0.050とすることができ、また、所定の閾値を0.020とすることもできる。
【0049】
[第4工程(ステップS4)]
ステップS3にて前処理が要であると判定された場合には、第4工程(ステップS4)において、半導体ウェーハの表面に対して前処理を行う。前処理は、ウェーハ表面の親水性を高めるための処理である。例えば、ウェーハ表面に有機物の軽微な堆積が生じていると思われる場合には、(i)半導体ウェーハをオゾン水に浸漬する前処理を行い、有機物を除去することができる。また、ウェーハ表面において水分子の分極が生じていると思われる場合には、(ii)クリーンルームのダウンフローに半導体ウェーハの表面を晒す前処理、及び(iii)半導体ウェーハの表面に赤外線を照射する前処理の少なくとも一方を行い、ウェーハ表面の水分子の配向を制御することができる。前処理としては、上記(i)~(iii)の一つ以上を適宜行うことができる。
【0050】
半導体ウェーハをオゾン水に浸漬する前処理の条件としては、オゾン水の濃度は、20~30mg/Lの範囲内とすることが好ましく、オゾン水への浸漬時間は、5~300秒の範囲内とすることが好ましく、60~300秒の範囲内とすることがより好ましい。また、オゾン槽に浸漬後すぐに枚葉スピン洗浄を実施することがより好ましい。
【0051】
クリーンルームのダウンフローに半導体ウェーハの表面を晒す前処理の条件としては、室温:20~25℃、湿度:30~50%の雰囲気下で、クリーンルームのファンの下方に半導体ウェーハを設置し、当該雰囲気が循環して形成されるダウンフローに半導体ウェーハの表面を晒すことが好ましい。ファン回転数は1000~2000rpmの範囲内とすることが好ましく、ダウンフロー下での待機時間は、60~1200秒の範囲内とすることが好ましく、180~1200秒の範囲内とすることがより好ましい。イオナイザーは用いないことが好ましい。
【0052】
半導体ウェーハの表面に赤外線を照射する前処理の条件としては、波長:0.5~35μm程度の赤外線を、200~1800秒の間、半導体ウェーハの表面に照射することが好ましい。照射時のウェーハ温度は50~80℃の範囲内とすることが好ましい。
【0053】
[第5工程(ステップS5)]
ステップS3にて前処理が不要であると判定された場合には、第5工程(ステップS5)において、半導体ウェーハの表面に対して枚葉スピン洗浄を行う。第5工程では、最初にオゾン水によるスピン洗浄を行い、次いで、フッ酸によるスピン洗浄とその後のオゾン水によるスピン洗浄との組合せを1セット以上行うことが好ましい。この方法では、オゾン水によるスピン洗浄でウェーハ表面上に酸化膜を形成し、次いでフッ酸によるスピン洗浄で酸化膜とともにウェーハ表面のパーティクル等を除去する。最後の洗浄工程がオゾン水によるスピン洗浄となるため、枚葉スピン洗浄後のウェーハ表面には酸化膜が形成された状態となる。オゾン水によるスピン洗浄との組合せは、1セット以上であればよいが、好適には1~5セットとすることができる。
【0054】
オゾン水によるスピン洗浄において、オゾン水の濃度は、ウェーハ表面に酸化膜が形成される限り特に限定されないが、20~30mg/Lとすることができる。また、オゾン水の流量は、ウェーハ表面に酸化膜が形成される限り特に限定されないが、0.5~1.5L/分とすることができる。また、オゾン水によるスピン洗浄の1回あたりの処理時間も、ウェーハ表面に酸化膜が形成される限り特に限定されないが、50~200秒とすることができる。
【0055】
フッ酸によるスピン洗浄において、フッ酸の濃度は、ウェーハの汚染レベルによって適宜設定すればよく、特に限定されないが、0.5~3.0質量%とすることができる。また、フッ酸の流量は、ウェーハの汚染レベルによって適宜設定すればよく、特に限定されないが、0.5~1.5L/分とすることができる。また、フッ酸によるスピン洗浄の1回あたりの処理時間も、ウェーハの汚染レベルによって適宜設定すればよく、特に限定されないが、50~200秒とすることができる。
【0056】
各洗浄工程でのウェーハの回転数は、特に限定されないが、50~800rpmとすることができる。
【0057】
枚葉スピン洗浄の後は、洗浄液を供給することなく引き続きウェーハを回転させるスピン乾燥を行い、ウェーハ表面から洗浄液を除去し、ウェーハ表面を乾燥させることが好ましい。このウェーハの回転数も特に限定されないが、1000~1500rpmとすることができる。
【0058】
図1に示すように、第4工程で前処理を行った場合、その後、ステップS1に戻って、ステップS1、ステップS2A、ステップS2B及びステップS3をくり返し行い、ステップS3において再度の前処理は不要との判定を得た後に、第5工程の枚葉スピン洗浄を行うことが好ましい。これにより、LPDを低減したウェーハをより確実に得ることができる。
【0059】
ただし、これは必須ではなく、第4工程で前処理を行った後、ステップS1に戻らずにステップS5に直接移行し、枚葉スピン洗浄を行ってもよい。例えば、ウェーハ表面が十分に親水化されることが見込まれる前処理条件を採用している場合には、工程全体の簡略化のため、第4工程で前処理を行った後、そのまま枚葉スピン洗浄を行うことが好ましい。
【0060】
[他の実施形態]
図1に示す本実施形態では、ステップS2Aにおいて、複数の条件における接触角の測定値を規格化して相対値を求めたが、この工程は必須ではない。ステップS2Aを行わず、ステップS2Bにおいて、複数の条件における液滴量と接触角の測定値との関係から、液滴の量の変化に対する接触角の測定値の変化の比率を計算することでもよい。ただし、規格化を行わない場合、測定環境(温度、湿度、液滴の濃度等)により、接触角の絶対値が変化する可能性があるが、規格化した接触角は、測定環境に依存しない定量的な指標となるため、ステップS2A(規格化工程)を行うことが好ましい。
【0061】
なお、製造工程に流す全ての半導体ウェーハに対して、本発明及び本発明の一実施形態による半導体ウェーハの洗浄方法(すなわち接触角測定及び前処理要否判定)を適用する必要はない。例えば、前洗浄工程後、枚葉スピン洗浄に供されるまでのウェーハの保管条件(温度、湿度、保管時間等)が同じ複数枚の半導体ウェーハについては、少なくとも1枚の半導体ウェーハに対して、本発明及び本発明の一実施形態による半導体ウェーハの洗浄方法を適用して、前処理の要否を判定し、残りの半導体ウェーハについては、その判定結果に従って前処理を行い又は行わず、枚葉スピン洗浄を行うことができる。
【0062】
(半導体ウェーハの製造方法)
本発明の一実施形態による半導体ウェーハの製造方法は、上記の半導体ウェーハの洗浄方法を含む。これにより、LPDを低減したウェーハを確実に製造することができる。本実施形態による半導体ウェーハの製造方法は、例えば、
-チョクラルスキー法により単結晶インゴットを得る工程と、
-この単結晶インゴットをスライスして、複数枚のウェーハを得る工程と、
-ウェーハにラッピング及び研削を行う平坦化工程と、
-ウェーハに対して両面研磨とこれに引き続く片面仕上げ研磨とを行う研磨工程と、
-SC1洗浄槽、HF槽、オゾン槽などを組み合わせてウェーハを洗浄した後に、ウェーハを純水でリンスし、その後乾燥する前洗浄工程と、
-その後、任意で行う検査工程と、
-接触角測定及び枚葉スピン洗浄を含む、本実施形態による半導体ウェーハの洗浄方法と、
-ウェーハの表面のLPD個数を測定することを含む最終検査工程と、
を有する。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を完成に導いた実験例を説明する。
【0064】
(実験例1)
鏡面研磨後に、SC1洗浄槽、HF槽、オゾン槽などを組み合わせてウェーハを洗浄した後に、ウェーハを純水でリンスし、その後乾燥する前洗浄工程を行い、その後、互いに異なる保管状況にて保管された3枚の単結晶シリコンウェーハ(直径300mm)を用意した。
【0065】
各シリコンウェーハの表面の接触角を、以下の条件でθ/2法により測定した。
装置 :協和界面科学株式会社製ポータブル接触角計PCA-11
滴下液種 :純水
設定液滴量:1μL
測定点 :ウェーハ面内25点
【0066】
各シリコンウェーハに対して、最初にオゾン水によるスピン洗浄を行い、次いで、フッ酸によるスピン洗浄とその後のオゾン水によるスピン洗浄との組合せを3セット行う枚葉スピン洗浄を行い、最後に、ウェーハ回転数1500rpmのスピン乾燥を行った。
-オゾン水によるスピン洗浄の条件
濃度 :25mg/L
流量 :1.0L/分
1回あたりの処理時間:200秒
ウェーハ回転数 :500rpm
-フッ酸による枚葉スピン洗浄の条件
濃度 :1質量%
流量 :1.0L/分
1回あたりの処理時間:50秒
ウェーハ回転数 :500rpm
【0067】
その後、各シリコンウェーハの表面をレーザーパーティクルカウンタ(KLA-Tencor社製、Surfscan SP7)を用いてHS(High Sensitivity)モードで測定し、15nm以上のサイズのLPDの数を求めた。3枚のシリコンウェーハのLPD個数は、それぞれ100個超え(200個)、10個超え100個以下(32個)、及び10個以下(5個)であった。
【0068】
図2に、各シリコンウェーハの表面25点の接触角の測定値を示した。
図2から明らかなように、LPD個数のレベルが互いに異なる3枚のシリコンウェーハのいずれも、純水を滴下して測定したウェーハ表面の接触角は5~6°であった。このため、純水による接触角測定では、LPD個数の異なるウェーハ間での枚葉スピン洗浄前の表面状態の違いを検出することができなかった。
【0069】
(実験例2)
鏡面研磨後に、SC1洗浄槽、HF槽、オゾン槽などを組み合わせてウェーハを洗浄した後に、ウェーハを純水でリンスし、その後乾燥する前洗浄工程を行った7枚の単結晶シリコンウェーハ(直径300mm)を用意した。7枚のシリコンウェーハは、前洗浄工程後の乾燥が不十分だったため、FOUP内で水蒸気が発生してウェーハ表面に吸着し、ウェーハ表面において水分子の分極が生じているものと思われるものである。
【0070】
7枚のシリコンウェーハに対して、クリーンルームのダウンフローにシリコンウェーハの表面を晒す前処理を行った。前処理条件(ファン回転数及び待機時間)は、表1のNo.1~7にそれぞれ示す。
【0071】
各シリコンウェーハの表面の接触角を、以下の条件でθ/2法により測定した。なお、設定液量は以下の3条件としたが、滴下した液滴の画像から、実際に滴下された液滴量を測定した。
装置 :協和界面科学株式会社製ポータブル接触角計PCA-11
滴下液種 :20質量%NaCl水溶液
設定液滴量:0.5μL、1.0μL、2.0μLの3条件
測定点 :ウェーハ面内5点(中心からエッジに向けて1~2cm間隔)
【0072】
設定液滴量ごとに接触角の測定値の平均値(5点の平均値)を求め、最大の平均値を1として、設定液滴量ごとの測定値の平均値を規格化した。横軸を液滴量の測定値(5点の平均値)、縦軸を規格化した接触角(5点の平均値)とした平面に、測定データをプロットし、最小二乗法により直線近似して、直線の傾きを求めた。
図3には、No.1~7のうち、代表してNo.1,2,4のプロット及び近似直線を示す。表1には、No.1~7における傾きの絶対値を示す。
【0073】
その後、各シリコンウェーハに対して、最初にオゾン水によるスピン洗浄を行い、次いで、フッ酸によるスピン洗浄とその後のオゾン水によるスピン洗浄との組合せを3セット行う枚葉スピン洗浄を行い、最後に、ウェーハ回転数1500rpmのスピン乾燥を行った。
-オゾン水によるスピン洗浄の条件
濃度 :25mg/L
流量 :1.0L/分
1回あたりの処理時間:200秒
ウェーハ回転数 :500rpm
-フッ酸による枚葉スピン洗浄の条件
濃度 :1質量%
流量 :1.0L/分
1回あたりの処理時間:50秒
ウェーハ回転数 :500rpm
【0074】
その後、各シリコンウェーハの表面をレーザーパーティクルカウンタ(KLA-Tencor社製、Surfscan SP7)を用いてHS(High Sensitivity)モードで測定し、15nm以上のサイズのLPDの数を求めた。結果を表1に示す。なお、LPD個数の判定基準は、以下のとおりとした。また、
図4には、
図3の直線の傾きの絶対値と、枚葉スピン洗浄後のLPD個数との関係を示す。
◎:10個以下
○:10個超え100個以下
×:100個超え
【0075】
【0076】
表1及び
図3,4から明らかなとおり、規格化接触角/液滴量の傾きの絶対値が0.050以下の場合、LPD個数が○の判定となり、規格化接触角/液滴量の傾きの絶対値が0.020以下の場合、LPD個数が◎の判定となった。このように、規格化接触角/液滴量の傾きの絶対値とLPD個数との間に相関があることから、任意のシリコンウェーハに対して、当該傾きの絶対値が、例えば0.050以下又は0.020以下の場合には、前処理を行うことなく枚葉スピン洗浄を行い、当該傾きの絶対値が、例えば0.050超え又は0.020超えの場合には、前処理を行った後枚葉スピン洗浄を行うというように、当該傾きの絶対値に基づいて前処理の要否を判定することが有効であることが分かる。
【0077】
(実験例3)
鏡面研磨後に、SC1洗浄槽、HF槽、オゾン槽などを組み合わせてウェーハを洗浄した後に、ウェーハを純水でリンスし、その後乾燥する前洗浄工程を行った2枚の単結晶シリコンウェーハ(直径300mm)を用意した。2枚のシリコンウェーハは、上記前洗浄工程から3週間以上経過しており、ウェーハ表面に有機物の軽微な堆積が生じていると思われるものである。
【0078】
表2に示すように、2枚のシリコンウェーハに対して、片方には前処理を行わず、他方には濃度:25mg/Lのオゾン水に5秒浸漬する前処理を行った。その後、実験例2と同じ方法で、各シリコンウェーハの表面の接触角を測定し、規格化接触角/液滴量の傾きの絶対値を求めた。その後、各シリコンウェーハに対して、実験例2と同じ条件で枚葉スピン洗浄及びスピン乾燥を行い、実験例2と同じ方法でLPD個数を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0079】
【0080】
(実験例4)
鏡面研磨後に、SC1洗浄槽、HF槽、オゾン槽などを組み合わせてウェーハを洗浄した後に、ウェーハを純水でリンスし、その後乾燥する前洗浄工程を行った2枚の単結晶シリコンウェーハ(直径300mm)を用意した。2枚のシリコンウェーハは、前洗浄工程後の乾燥が不十分だったため、FOUP内で水蒸気が発生してウェーハ表面に吸着し、ウェーハ表面において水分子の分極が生じているものと思われるものである。
【0081】
表3に示すように、2枚のシリコンウェーハに対して、片方には前処理を行わず、他方には300秒間赤外線を照射する前処理を行った。その後、実験例2と同じ方法で、各シリコンウェーハの表面の接触角を測定し、規格化接触角/液滴量の傾きの絶対値を求めた。その後、各シリコンウェーハに対して、実験例2と同じ条件で枚葉スピン洗浄及びスピン乾燥を行い、実験例2と同じ方法でLPD個数を測定した。これらの結果を表3に示す。
【0082】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の半導体ウェーハの洗浄方法及び半導体ウェーハの製造方法によれば、ウェーハ表面のLPDを確実に低減することが可能である。