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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】フレキシブル基板付き導波管
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/107 20060101AFI20241001BHJP
   H01P 5/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01P5/107 J
H01P5/02 601Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022510649
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012481
(87)【国際公開番号】W WO2021193805
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2020058876
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 翔
(72)【発明者】
【氏名】森本 康夫
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 修
(72)【発明者】
【氏名】岸 政洋
(72)【発明者】
【氏名】長江 眞平
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/098393(WO,A1)
【文献】特開平09-172319(JP,A)
【文献】特開2000-244212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/107
H01P 5/02
H01P 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットが設けられた導波管と、
フレキシブル基板と、を備え、
前記フレキシブル基板は、一部が前記スリットに重なるように、前記導波管の外面に沿って設けられ、前記スリットから前記導波管を伝搬した高周波信号が入力され、
前記フレキシブル基板は、基板集積導波管を構成している、
フレキシブル基板付き導波管。
【請求項2】
前記基板集積導波管は、スロットを備え、
前記スリットと前記スロットとが重ね合わされて取り付けられる、
請求項1に記載のフレキシブル基板付き導波管。
【請求項3】
スリットが設けられた導波管と、
フレキシブル基板と、を備え、
前記フレキシブル基板は、一部が前記スリットに重なるように、前記導波管の外面に沿って設けられ、前記スリットから前記導波管を伝搬した高周波信号が入力され、
前記フレキシブル基板は、マイクロストリップラインを備え、
前記フレキシブル基板は、前記スリットにおいて、複数回積層される、
レキシブル基板付き導波管。
【請求項4】
前記フレキシブル基板は、前記スリットに対応する部分に、前記マイクロストリップラインと、誘電体層が複数層積層された層と、反射面と、を備える共振器が形成される、
請求項に記載のフレキシブル基板付き導波管。
【請求項5】
前記スリットは、前記導波管の短絡面から前記導波管を伝搬する電波の波長の四分の一の位置に設けられる、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフレキシブル基板付き導波管。
【請求項6】
前記スリットは、複数設けられる、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のフレキシブル基板付き導波管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブル基板付き導波管に関する。
【背景技術】
【0002】
無線広帯域通信である次世代5G(5th Generation)システムでは、ミリ波帯の帯域の電波を使用する。
【0003】
ミリ波帯の帯域の電波を伝送する手段として、例えば、導波管が用いられている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-195605号公報
【文献】特開2017-228839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基地局から導波管を通じて伝送された高周波信号は、例えば、回路基板等に入力され、アンテナを通して外部に放射される。導波管から回路基板への高周波信号の入力する際には、効率よく伝送することが望まれる。また、回路基板として、フレキシブル基板を使用することが検討されている。
【0006】
本開示は、導波管を伝搬する高周波信号をフレキシブル基板に入力する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、スリットが設けられた導波管と、フレキシブル基板と、を備え、前記フレキシブル基板は、一部が前記スリットに重なるように、前記導波管の外面に沿って設けられ、前記スリットから前記導波管を伝搬した高周波信号が入力されるフレキシブル基板付き導波管である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、導波管を伝搬する高周波信号をフレキシブル基板に入力する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管の斜視図である。
図2】第1実施形態のフレキシブル基板を取り付ける導波管の斜視図である。
図3】第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管の断面図である。
図4】第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管の接続部分を拡大した断面図である。
図5】第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管の伝搬特性を解析するための解析モデルを示す図である。
図6】第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管の伝搬特性を解析した結果を示す図である。
図7】第2実施形態のフレキシブル基板付き導波管の断面図である。
図8】第2実施形態のフレキシブル基板付き導波管の接続部分を拡大した断面図である。
図9】第2実施形態の展開したフレキシブル基板の上面図である。
図10】第2実施形態の展開したフレキシブル基板の下面図である。
図11】第2実施形態のフレキシブル基板付き導波管の伝搬特性を解析した結果を示す図である。
図12】第3実施形態のフレキシブル基板付き導波管の断面図である。
図13】第4実施形態のフレキシブル基板付き導波管の断面図である。
図14】第5実施形態のフレキシブル基板付き導波管の断面図である。
図15】第5実施形態のフレキシブル基板付き導波管の導波管の側面図である。
図16】第6実施形態のフレキシブル基板付き導波管の断面図である。
図17】第6実施形態のフレキシブル基板付き導波管のフレキシブル基板の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。下記、各図面において、同一又は対応する構成部分には同一又は対応する符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0011】
《第1実施形態》
<フレキシブル基板付き導波管1>
第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管1は、導波管20にフレキシブル基板30が巻き付けられることにより、導波管20を伝播する高周波信号と接続する。導波管20にフレキシブル基板30が巻き付けられることにより、導波管20の外面20s1に沿って設けられる。図1は、第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管1の斜視図である。図2は、第1実施形態のフレキシブル基板30を取り付ける導波管20の斜視図である。図3は、第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管1の断面図である。
【0012】
なお、図には、説明の便宜のためXYZ直交座標系が設定されている。図面の紙面に対して垂直な座標軸については、座標軸の丸の中にバツ印は紙面に対して奥側が正、丸の中に黒丸印は紙面に対して手前側が正であることを表している。ただし、当該座標系は、説明のために定めるものであって、フレキシブル基板や導波管の姿勢について限定するものではない。なお、本開示では、特に説明しない限り、Z軸は導波管20の延在方向、X軸とY軸は導波管20の延在方向に垂直な方向となっている。
【0013】
第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管1は、次世代5Gシステムに用いられるミリ波帯の帯域の電波を伝送する際に用いられる。例えば、導波管20は、基地局からユーザのいる空間に設置されたアンテナまで接続する。
【0014】
アンテナは、例えば、フレキシブル基板で形成されたパッチアンテナやダイポールアンテナでもよい。また、アンテナは導波管にスロットを開けてスロットアンテナでもよい。さらに、導波管20の先には、別の導波管がつながっていてもよい。例えば、フレキシブル基板を介して別の導波管がつながっていてもよい。
【0015】
第1実施形態の導波管20で伝送される電波の帯域は、例えば、27.5GHz~29GHzである。例えば、中心周波数は、28GHzである。当該帯域は、事業者ごとに400MHz毎に分割されて使用される。なお、周波数帯域は、27.5GHz~29GHzに限らず、例えば、26GHzや39GHzを中心とする周波数帯域でもよい。また、周波数帯域は、ミリ波帯に限らず他の周波数帯でもよい。
【0016】
第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管1は、閉止部材10で端部を短絡された導波管20と、フレキシブル基板30と、を備える。フレキシブル基板付き導波管1の各要素について説明する。
【0017】
[導波管20]
導波管20は、ミリ波帯の帯域の電波が伝搬する導波路となる導波管である。導波管20は、電波が伝搬する方向に延在する円柱状の管である。なお、図3では、電波が伝搬する方向は、Z方向である。
【0018】
導波管20は、誘電体チューブ21と、誘電体チューブ21の外側を覆う金属被覆22と、を備える。
【0019】
誘電体チューブ21は、電波が伝搬する伝送路として機能する部材である。導波管20において、誘電体チューブ21で電波が伝搬する。
【0020】
誘電体チューブ21は、誘電体、例えば、フッ素系樹脂で形成される。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE(Polytetrafluoroethylene))やペルフルオロアルコキシアルカン(PFA(Perfluoroalkoxy alkane))を用いることができる。
【0021】
なお、例えば、周波数帯域が28GHzの場合では、導波管20の外径は、5mm~9mmであることが好ましい。誘電体チューブ21の外径は、導波管20の外径より1mm~2mm細い。
【0022】
金属被覆22は、伝送路を画定する部材である。金属被覆22は、導電性部材、例えば、銅、により形成される。金属被覆22は、例えば、メッキにより形成される。なお、メッキにより金属被覆22を形成するのに限らず、例えば、金属被覆22を形成するのに、銅箔又は金属網を巻き付けて形成してもよい。なお、導波管20の金属被覆22の外側に、更に、絶縁物による被覆を設けてもよい。
【0023】
導波管20の+Z側の端部は、閉止部材10で閉止される。閉止部材10は導電部材、例えば、銅等により形成される。閉止部材10は、例えば、はんだ付け、ロウ付け、導電性ペーストの塗布等により、導波管20の金属被覆22に機械的、電気的に接続される。導波管20は、閉止部材10により閉止されることにより、導波管20の端部が短絡される。
【0024】
導波管20は、導波管20の外面20s1にスリット20pを有する。スリット20pは、導波管20の内部を伝搬する電波を外部に導出するための通過経路となる。スリット20pは、導波管20の短絡面から波長の四分の一離れた位置に設けられる。具体的は、閉止部材10の内面の短絡面から、導波管20の長手方向(-Z方向)に波長の四分の一離れた位置に、スリット20pの中心が設けられる。
【0025】
[フレキシブル基板30]
フレキシブル基板30は、例えば、基地局から導波管20を介して伝送された高周波信号を処理する回路基板である。フレキシブル基板30には、高周波信号を伝搬するための線路や導波路が形成されている。例えば、線路としては、マイクロストリップラインやコプレーナーラインを用いてよいし、導波路としては基板集積導波管(SIW(substrate integrated waveguide))を用いてもよい。
【0026】
フレキシブル基板30は、円筒形の導波管に対して抵抗なく巻きつけられる程度の柔軟性を保持すればよく、フレキシブル基板30の厚さは0.012mm以上、0.8mm以下であることが好ましい。フレキシブル基板30を薄くすることにより、フレキシブル基板30の可撓性をあげることができる。また、フレキシブル基板30の誘電体は、フッ素系樹脂や液晶、ポリイミド等により形成される。フッ素系樹脂としては、例えば、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)を用いることができる。
【0027】
フレキシブル基板30は、基板上にアンプを備えてもよい。また、フレキシブル基板30は、パッチアンテナやダイポールアンテナ等のアンテナを備えてもよい。
【0028】
(導波管20とフレキシブル基板30との接続)
図4は、第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管1の導波管20とフレキシブル基板30との接続部分を拡大した断面図である。なお、図4は、導波管20にフレキシブル基板30を巻き付けて取り付ける前の状態を示している。
【0029】
フレキシブル基板30が基板集積導波管(SIW)を構成している例について説明する。フレキシブル基板30は、上面導電層31と、下面導電層32と、上面導電層31と下面導電層32に挟まれた誘電体層33と、を備える。上面導電層31には、スロット30pを有する。スロット30pは、導波管20のスリット20pと略同形状となっている。また、フレキシブル基板30は、上面導電層31と下面導電層32を接続するビア35を備える。したがって、フレキシブル基板30の上面導電層31と下面導電層32は同電位になっている。
【0030】
図4に示すように、導波管20とフレキシブル基板30を接続する際には、導波管20のスリット20pとフレキシブル基板30のスロット30pの位置をあわせる。そして、フレキシブル基板30のスロット30pの両側を導波管20に巻き付けることにより取り付ける。巻き付ける際には、例えば、導電性ペーストを塗布したり、導電性接着剤で接着したりしてもよい。フレキシブル基板30を導波管20に巻き付けることにより、フレキシブル基板30の一部が導波管20のスリット20pと重なる。また、フレキシブル基板30を導波管20に巻き付けることにより、導波管20の外面に沿うようにフレキシブル基板30が設けられる。また、導波管20の金属被覆22と、フレキシブル基板30の上面導電層31が接触することにより、スリット20pからの電波が漏洩することを防止できる。
【0031】
(導波管20からフレキシブル基板30への電波の伝搬特性)
導波管20を伝搬する電波が、フレキシブル基板30に伝搬するときの伝搬特性について説明する。
【0032】
図5は、第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管1の伝搬特性を解析するための解析モデルを示す図である。
【0033】
導波路MPは、導波管20の電波が伝搬する部分に相当する導波路である。なお、図5では、導波路MPの延在方向をY軸としている。そして、導波路MPの延在方向に垂直な方向をX軸、Z軸としている。導波路MPは、内径が直径6mm、外径が直径7mm、材質はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のチューブに0.01mmの銅を巻き付けた導波路をモデル化した。導波路MPは、入射面SIから電波が入射される。本解析では、Z方向の偏波(準TE11モード)が入射面SIから入射する。また、導波路MPには、反射面SRが形成されている。入射面SIから入射した電波は、導波路MP内を+Y方向に伝搬しながら、反射面SRで反射される。なお、反射面SRは短絡面であるとする。導波路MPの+X方向には、スリットSLが設けられている。スリットSLから、導波路MP内の電波が導波路MPの外に出力される。なお、スリットSLの中心は、反射面SRから-Y方向に電波の波長の四分の一の位置に設けられている。本解析では、電波の波長は電波の周波数を28GHzとして、スリットSLの中心から当該反射面までのY軸方向の距離は5mmとした。スリットSLのY軸方向の長さは4.35mm、幅(Y軸に垂直な平面上で導波路MFの外周に沿う長さ)は0.9mmである。
【0034】
導波路MFは、フレキシブル基板30の電波が伝搬する部分に相当する導波路である。導波路MFは、幅4.5mm、厚さ0.2mmのフレキシブル基板内に作られた基板集積導波管(SIW)をモデル化した。導波路MFは、スリットSLから電波が入射されるとともに、導波路MFの内部を電波が伝搬する。また、スリットSLを基板集積導波管(SIW)のスロットとした。また、フレキシブル基板の導波路の途中には、アイリスポストIPを設けた。アイリスポストIPそれぞれのY軸方向の長さは0.9mm、幅(Y軸に垂直な平面上で導波路MFの外周に沿う長さ)0.25mmである。導波路MFは、スリットSL(スロット)から電波が入射される。スリットSL(スロット)から入射された電波は、導波路MF内を伝搬して、出射面SOから出力される。本解析では、出射面SOのTE10モードの電波を解析した。
【0035】
図6は、第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管の伝搬特性を解析した結果を示す図である。横軸は周波数を示す。縦軸は、透過係数と反射係数をデジベルで表している。透過係数T1は、入射面SIから入射する電波強度に対する出射面SOから出射する電波強度の比率を表す。反射係数R1は、入射面SIから入射する電波強度に対する出射面SOから出射せずに入射面SIに反射される電波強度の比率を表す。
【0036】
図6の結果から、スリットSLの位置を、反射面SRから四分の一の位置に設けることにより、導波路MPからの電波を導波路MFに電波を伝送できる。以上の結果のように、導波管20のスリット20pに重なるように、導波管20の外面20s1に沿って設けることにより、導波管20からフレキシブル基板30に電波を伝送できる。
【0037】
(作用・効果)
第1実施形態のフレキシブル基板付き導波管1において、フレキシブル基板30を、導波管20のスリット20pに重なるように、導波管20の外面20s1に沿って設けることによって、導波管20を伝搬した高周波信号をフレキシブル基板30に入力できる。
【0038】
《第2実施形態》
<フレキシブル基板付き導波管2>
第2実施形態のフレキシブル基板付き導波管2は、導波管20にフレキシブル基板130が複数回巻き付けられることにより、導波管20を伝播する高周波信号と接続する。導波管20にフレキシブル基板130が巻き付けられることにより、導波管20の外面20s1に沿って設けられる。図7は、第2実施形態のフレキシブル基板付き導波管2の断面図である。図8は、第2実施形態のフレキシブル基板付き導波管2の接続部分を拡大した断面図である。なお、図8は、導波管20に巻き付けたフレキシブル基板130を展開して示している。また、図8では、フレキシブル基板130が複数回巻き付けられている状態を説明するために、フレキシブル基板130を導波管20に対して拡大して図示している。
【0039】
第2実施形態のフレキシブル基板付き導波管2は、導波管20にフレキシブル基板130が複数回巻き付けられる。具体的には、導波管20のスリット20pのところで、5回積層されている。なお、巻き付ける回数については、5回に限らず、2回以上であればよい。
【0040】
[フレキシブル基板130]
フレキシブル基板130は、線路として、マイクロストリップライン130dが形成されている。フレキシブル基板130は、上面導電層131と、下面導電層132と、上面導電層131と下面導電層132に挟まれた誘電体層133と、を備える。また、上面導電層131と下面導電層132とを接続するために、ビア135を備える。なお、図8では、導波管20のスリット20pの位置で積層した層の番号を括弧内の数字で表している。例えば、導波管20に接触するフレキシブル基板130の第1層の上面導電層131を上面導電層131(1)として表している。同様に、第n層の上面導電層131、下面導電層132、誘電体層133をそれぞれ上面導電層131(n)、下面導電層132(n)、誘電体層133(n)と表す。
【0041】
フレキシブル基板130は、スリット20pにおいて複数回積層される。フレキシブル基板130は、第1層の上面導電層131(1)の一部が除去され、第1層の誘電体層133(1)が露出する接続部130aを有する。接続部130aには、導波管20のスリット20pが接触する。また、導波管20のスリット20pが接触する部分の誘電体層133(1)を介した反対側には、第1層の下面導電層132(1)に、マイクロストリップライン130dが形成されている。そして、第2層から第4層の接続部130aに対応する部分では、上面導電層131と下面導電層132は、除去されて誘電体層133が露出する。すなわち、第2層から第4層の接続部130aに対応する部分では、上面導電層131(2)、上面導電層131(3)、上面導電層131(4)、下面導電層132(2)、下面導電層132(3)、下面導電層132(4)は、除去されている。第5層の接続部130aに対応する部分では、上面導電層131(5)、下面導電層132(5)は形成される。上面導電層131(5)は、接続部130aから入射された電波を反射する反射面130bとなる。
【0042】
フレキシブル基板130を導波管20に巻き付けることにより、導波管20の外面に沿うようにフレキシブル基板130が設けられる。巻き付ける際には、例えば、導電性ペーストを塗布したり、導電性接着剤で接着したりしてもよい。また、導波管20の金属被覆22と、フレキシブル基板130の第1層の上面導電層131(1)が接触することにより、スリット20pからの電波が漏洩することを防止できる。
【0043】
図8に示す積層構造を形成するフレキシブル基板130を図9図10に示す。図9は、第2実施形態の展開したフレキシブル基板130の上面図である。図10は、第2実施形態の展開したフレキシブル基板130の下面図である。
【0044】
領域RT1、領域RT2、領域RT3、領域RT4は、フレキシブル基板130の上面導電層131が除去された領域を示している。領域RT1は、接続部130aに相当する領域である。領域RT2、領域RT3、領域RT4は、フレキシブル基板130を導波管20に巻き付けたときに、接続部130aに対応する領域である。なお、領域RT2は、マイクロストリップライン130dの配線部分と重なる領域についても、上面導電層131が除去されている。領域RT5は、第5層の上面導電層131が設けられ、反射面130bとなる部分を表す。なお、領域RT1、領域RT2、領域RT3、領域RT4、領域RT5は、導波管20の円周に相当する間隔離れて設けられている。
【0045】
領域RB1、領域RB2、領域RB3、領域RB4は、フレキシブル基板130の下面導電層132が除去された領域を示している。領域RB1は、マイクロストリップライン130dが形成される領域である。領域RB2、領域RB3、領域RB4は、フレキシブル基板130を導波管20に巻き付けたときに、接続部130aに対応する領域である。領域RT5は、反射面130bの外側の第5層の下面導電層132が設けられている部分を表す。なお、領域RB1、領域RB2、領域RB3、領域RB4、領域RB5は、導波管20の円周に相当する間隔離れて設けられている。
【0046】
接続部130aに対応する部分について説明する。上面導電層131と下面導電層132の実際の厚さは20μm程度であるのに対して、誘電体層133の実際の厚さは200μmである。更に、フレキシブル基板130を導波管20に巻き付けることにより、積層されたフレキシブル基板130は各層の間が密着される。すなわち、第1層の下面導電層132(1)と第5層の上面導電層131(5)の間の接続部130aに対応する部分は、誘電体層133(2)、誘電体層133(3)、誘電体層133(4)が密着して積層される。なお、図8では、層の関係を明確にするために、層間に隙間を空けて示している。したがって、マイクロストリップライン130dの外側は、誘電体層133が複数層積層された層、具体的には3層積層された層と見なすことができる。
【0047】
マイクロストリップライン130dと反射面130bとの距離L1は、誘電体層133を複数回積層することにより長くすることができる。
【0048】
第2実施形態のフレキシブル基板付き導波管2について電磁界解析を行った。解析は、導波管20のスリット20pの寸法を長さ5.4mm、幅0.5mm、フレキシブル基板130を厚さ0.2mmのフッ素樹脂基板、導電層は銅、線幅0.2mm、共振器130cの距離L1を2.5mmとして解析を行った。
【0049】
図11は、第2実施形態のフレキシブル基板付き導波管2の伝搬特性を解析した結果を示す図である。横軸は周波数を示す。縦軸は、透過係数と反射係数をデジベルで表している。透過係数T2は、導波管20に入射される図7中のY方向の偏波(準TE11モード)の電波強度に対するマイクロストリップライン130dに透過する電波強度の比率を表す。反射係数R2は、導波管20に入射される図7中のY方向の偏波(準TE11モード)の電波強度に対するマイクロストリップライン130dに入射せず反射される電波強度の比率を表す。
【0050】
図11の結果から、周波数28GHzにおいて、導波管20からマイクロストリップライン130dに効率よく信号を伝搬させることがわかる。
【0051】
《第3実施形態》
<フレキシブル基板付き導波管3>
第3実施形態のフレキシブル基板付き導波管3は、導波管220にフレキシブル基板230が巻き付けられることにより、導波管220を伝播する高周波信号と接続する。第3実施形態のフレキシブル基板付き導波管3では、導波管220の二カ所に設けられたスリット220p1とスリット220p2からフレキシブル基板230に電波が入射される。図12は、第3実施形態のフレキシブル基板付き導波管3の断面図である。
【0052】
導波管220は、誘電体チューブ221と、誘電体チューブ221の外側を覆う金属被覆222と、を備える。
【0053】
誘電体チューブ221は、電波が伝搬する伝送路として機能する部材である。導波管220において、誘電体チューブ221で電波が伝搬する。金属被覆222は、伝送路を画定する部材である。なお、誘電体チューブ221と金属被覆222の材質等については、導波管20の誘電体チューブ21と金属被覆22と同様である。
【0054】
導波管220は、スリットが複数設けられる。具体的には、導波管220は、2つのスリット220p1とスリット220p2を有する。スリット220p1とスリット220p2は、導波管220の内部を伝搬する電波を外部に導出するための通過経路となる。スリット220p1とスリット220p2は、導波管220の短絡面から波長の四分の一離れた位置に設けられる。
【0055】
フレキシブル基板230は、スリット220p1とスリット220p2の二カ所から電波が入力される。二カ所から入力される以外は、フレキシブル基板30、フレキシブル基板130と同様である。
【0056】
フレキシブル基板230は、スリット220p1からY方向の偏波(準TE11モード)が、スリット220p2からX方向の偏波(準TE11モード)の電波が入力されることにより、2方向の偏波を変換することができる。
【0057】
<作用・効果>
本開示の導波管と、フレキシブル基板と、を備えるフレキシブル基板付き導波管によれば、導波管を伝搬する高周波信号をフレキシブル基板に入力できる。本開示のフレキシブル基板付き導波管は、導波管にフレキシブル基板を巻き付けることにより作成できる。
【0058】
<変形例>
導波管の形状については、円筒状に限らない。例えば、導波管は角筒状でもよい。また、導波管の内部に空洞を備えてもよいし、金属被覆が自立できる場合には誘電体チューブは無くてもよい。
【0059】
《第4実施形態》
<フレキシブル基板付き導波管4>
第4実施形態のフレキシブル基板付き導波管4は、導波管320にフレキシブル基板330が巻き付けられることにより、導波管320を伝播する高周波信号と接続する。第4実施形態のフレキシブル基板付き導波管4では、フレキシブル基板330は、導電性接着剤350により導波管320に接着される。図13は、第4実施形態のフレキシブル基板付き導波管4の断面図である。
【0060】
導波管320は、金属被覆322を備える。金属被覆322は、伝送路を画定する部材である。金属被覆322は、自立して形状を保持できることから、内部は空洞321になっている。すなわち、導波管320においては、電波は、空洞321の空気を伝搬する。なお、空洞321の空気に換えて、空洞321に誘電体チューブを備えてもよい。なお、金属被覆322の材質等については、導波管20の金属被覆22と同様である。
【0061】
導波管320は、スリット320pを備える。スリット320pからフレキシブル基板330に、空洞321を伝搬した電波が入射される。
【0062】
フレキシブル基板330は、基板集積導波管(SIW)を構成する。フレキシブル基板330は、上面導電層331と、下面導電層332と、上面導電層331と下面導電層332に挟まれた誘電体層333と、を備える。なお、上面導電層331と下面導電層332とを接続するために、フレキシブル基板330は図示しないビアを備える。したがって、フレキシブル基板330の上面導電層331と下面導電層332は同電位になっている。
【0063】
上面導電層531は、スリット320pと略同形状のスロットを有する。当該スロットに、スリット320pからの電波が導入される。
【0064】
金属被覆322の外側の面には、導電性接着剤350が塗布される。導電性接着剤350は、例えば、樹脂に微細な金属粒子を混合した異方性導電膜シートである。導電性接着剤350は、スリット320pを塞がないように、スリット320pを回避して塗布される。また、スリット320pを囲むように、導電性接着剤350が塗布される。
【0065】
導電性接着剤350を塗布して、フレキシブル基板330を導波管320に巻き付けて、導電性接着剤350を硬化する。導電性接着剤350を硬化することにより、フレキシブル基板330を導波管320に固定する。導電性接着剤350を用いて、導波管320とフレキシブル基板330とを固定することにより、金属被覆322とフレキシブル基板330の上面導電層331との間を電気的に接続できる。
【0066】
また、スリット320pを囲むように、導電性接着剤350が塗布されることにより、スリット320p付近からの電磁波の漏れを抑制できる。
【0067】
《第5実施形態》
<フレキシブル基板付き導波管5>
第5実施形態のフレキシブル基板付き導波管5は、導波管320にフレキシブル基板330が巻き付けられることにより、導波管320を伝播する高周波信号と接続する。第5実施形態のフレキシブル基板付き導波管5では、フレキシブル基板330は、はんだ450により導波管320に接着される。図14は、第5実施形態のフレキシブル基板付き導波管5の断面図である。
【0068】
金属被覆322の外側のフレキシブル基板330と対向する面には、はんだ450が塗布される。はんだ450は、例えば、クリームはんだである。はんだ450がスリット320pを塞がないように、スリット320pの周りに保護シート460を貼付する。保護シート460は、例えば、ポリイミドテープである。
【0069】
図15は、第5実施形態のフレキシブル基板付き導波管5の導波管320の側面図である。保護シート460は、スリット320pにはんだ450が流れ込んで塞がないように、スリット320pの外周に貼付される。なお、保護シート460は、電波の伝搬特性の劣化を防止するために、できるだけ狭い方が望ましい。
【0070】
導波管320の金属被覆322のスリット320pの外周に、保護シート460を貼付する。そして、導波管320の金属被覆322の外面のフレキシブル基板330と対向する面にはんだ450を塗布する。次に、フレキシブル基板330を導波管320に巻き付ける。そして、フレキシブル基板330を巻き付けた導波管320を加熱してから冷却して、はんだ450を硬化させる。
【0071】
はんだ450が硬化することにより、フレキシブル基板330を導波管320に固定する。はんだ450を用いて、導波管320とフレキシブル基板330とを固定することにより、金属被覆322とフレキシブル基板330の上面導電層331との間を電気的に接続できる。
【0072】
また、保護シート460により、スリット320pにはんだ450が流れ込むことを防止できる。また、はんだ450がスリット320pを囲むように設けられることにより、スリット320p付近からの電磁波の漏れを抑制できる。
【0073】
《第6実施形態》
<フレキシブル基板付き導波管6>
第6実施形態のフレキシブル基板付き導波管6は、導波管320にフレキシブル基板530が巻き付けられることにより、導波管320を伝播する高周波信号と接続する。第6実施形態のフレキシブル基板付き導波管6では、フレキシブル基板530は、はんだ450により導波管320に接着される。図16は、第5実施形態のフレキシブル基板付き導波管6の断面図である。
【0074】
フレキシブル基板530は、基板集積導波管(SIW)を構成する。フレキシブル基板530は、上面導電層531と、下面導電層532と、上面導電層531と下面導電層532に挟まれた誘電体層533と、を備える。なお、上面導電層531と下面導電層532とを接続するために、フレキシブル基板530は後述するスルーホール530thを備える。したがって、フレキシブル基板530の上面導電層531と下面導電層532は同電位になっている。
【0075】
図17は、第6実施形態のフレキシブル基板付き導波管6のフレキシブル基板530の側面図である。図17は、フレキシブル基板530を上面導電層531の側からみた側面図である。
【0076】
上面導電層531は、スリット320pと略同形状のスロット530pを有する。当該スロット530pに、スリット320pからの電波が導入される。スロット530pを囲むように、複数のスルーホール530thを有する。複数のスルーホール530thは、フレキシブル基板530の導波路を形成する。複数のスルーホール530thのそれぞれは、上面導電層531と下面導電層532を電気的に接続し、誘電体層533を貫通する。
【0077】
複数のスルーホール530thのスロット530pに対して外側に、複数のはんだ用スルーホール530shを有する。複数のはんだ用スルーホール530shのそれぞれは、上面導電層531と下面導電層532を接続し、誘電体層533を貫通する。はんだ用スルーホール530shは、スルーホール530thより径が大きい。はんだ用スルーホール530shからはんだ450が注入される。
【0078】
フレキシブル基板530を導波管320に巻き付ける。そして、はんだ用スルーホール530shからはんだ450を注入する。次に、フレキシブル基板530を巻き付けた導波管320を加熱してから冷却して、はんだ450を硬化させる。このときに、はんだ用スルーホール530shから注入して加熱されたはんだ450は、スルーホール530thの内部に毛細管現象により流れ込んで、スリット320p及びスロット530pまで到達しない。したがって、はんだ450が、スリット320p及びスロット530pを塞ぐことを防止できる。
【0079】
はんだ450が硬化することにより、フレキシブル基板530を導波管320に固定する。はんだ450を用いて、導波管320とフレキシブル基板530とを固定することにより、金属被覆322とフレキシブル基板530の上面導電層531との間を電気的に接続できる。
【0080】
また、はんだ450がスリット320pを囲むように設けられることにより、スリット320p付近からの電磁波の漏れを抑制できる。
【0081】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0082】
本願は、日本特許庁に2020年3月27日に出願された基礎特許出願2020-058876号の優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。
【符号の説明】
【0083】
1、2、3、4、5、6 フレキシブル基板付き導波管
20、220、320 導波管
20p、220p1、220p2、320p スリット
30、130、230、330、530 フレキシブル基板
30p、530p スロット
130b 反射面
130c 共振器
130d マイクロストリップライン
133 誘電体層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図16
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