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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】撮像素子及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20241001BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20241001BHJP
   H04N 25/61 20230101ALI20241001BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H04N25/70
H04N25/61
G02B3/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022557238
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2020038500
(87)【国際公開番号】W WO2022079766
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 将司
(72)【発明者】
【氏名】根本 成
(72)【発明者】
【氏名】中島 光雅
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊和
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-212625(JP,A)
【文献】特開2009-157390(JP,A)
【文献】特開2011-040441(JP,A)
【文献】特開2019-184986(JP,A)
【文献】特開2015-028960(JP,A)
【文献】特開2018-156999(JP,A)
【文献】特開2020-051868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0034500(US,A1)
【文献】国際公開第2005/101067(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/70
H04N 25/61
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子を含む画素が2次元アレイ状に複数配列された画素アレイと、
前記画素アレイと対向して配置され、入射光を、対応する前記光電変換素子に導く複数の柱状構造体からなる光学素子が2次元アレイ状に配列された光学素子アレイと、
を有し、
前記複数の柱状構造体は、平面視したときに、各柱状構造体の入射光の入射角度に応じて、直下の前記光電変換素子に導くための位相特性を有する幅にそれぞれ形成されるとともに、側面視したときに、同じ高さに形成され
前記複数の柱状構造体の各々は、前記入射光に対して、平面視したときに当該柱状構造体が有する幅に応じた光位相遅延量を与え、
前記光学素子は、前記複数の柱状構造体の各々の平面視したときの幅が、直下の前記光電変換素子の設計波長、及び、前記入射光の入射角(θ,φ)に応じて、前記入射光を、該光学素子の前記直下の前記光電変換素子に導くための光位相遅延量分布を与える幅に設定され、
前記θは、前記光学素子の平面をxy平面とし、入射光が光学素子のxy平面の原点に入射するとした場合、光学素子のxy平面の原点を通る鉛直軸であるz軸と入射光との角度であり、
前記φは、前記入射光を、前記光学素子のxy平面に投影した影とx軸との角度であることを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
光電変換素子を含む画素が2次元アレイ状に複数配列された画素アレイと、
前記画素アレイと対向して配置され、入射光を、対応する前記光電変換素子に導く複数の柱状構造体からなる光学素子が2次元アレイ状に配列された光学素子アレイと、
を有し、
前記複数の柱状構造体は、各柱状構造体の入射光の入射角度に応じて、直下の前記光電変換素子に導くための位相特性を有するような屈折率を有するとともに、側面視したときに、同じ高さに形成され
前記複数の柱状構造体の各々は、前記入射光に対して、平面視したときに当該柱状構造体が有する幅に応じた光位相遅延量を与え、
前記光学素子は、前記複数の柱状構造体の各々の平面視したときの幅が、直下の前記光電変換素子の設計波長、及び、前記入射光の入射角(θ,φ)に応じて、前記入射光を、該光学素子の前記直下の前記光電変換素子に導くための光位相遅延量分布を与える幅に設定され、
前記θは、前記光学素子の平面をxy平面とし、入射光が光学素子のxy平面の原点に入射するとした場合、光学素子のxy平面の原点を通る鉛直軸であるz軸と入射光との角度であり、
前記φは、前記入射光を、前記光学素子のxy平面に投影した影とx軸との角度であることを特徴とする撮像素子。
【請求項3】
前記複数の柱状構造体は、前記複数の柱状構造体の周囲材料の屈折率よりも高い屈折率を有する材料で形成されるとともに、前記入射光の波長よりも短い間隔で前記光学素子アレイに形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記複数の柱状構造体の各々は、平面視したときの幅が、対応する前記直下の光電変換素子ごとに、前記入射光の入射角度に応じて、前記入射光を、前記対応する直下の光電変換素子に導くための光位相遅延量分布を与えるように設定されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の撮像素子。
【請求項5】
前記複数の柱状構造体は、各々の平面視したときの幅が、前記直下の光電変換素子における波長範囲ごとに異なる値に設定されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の撮像素子。
【請求項6】
前記光位相遅延量分布は、光を集光するための光位相遅延量であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の撮像素子。
【請求項7】
前記複数の柱状構造体は、角柱であることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の撮像素子。
【請求項8】
前記画素アレイ上に形成された透明層をさらに有し、
前記複数の柱状構造体は、前記透明層の上部または内部に、前記透明層の屈折率よりも高い屈折率を有する材料で形成されることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の撮像素子。
【請求項9】
前記複数の柱状構造体は、平面視したときに、4回回転対称構造であることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の撮像素子。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一つに記載の撮像素子と、
前記撮像素子が出力する電気信号を処理し、画像を生成する信号処理部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な撮像装置は、レンズ光学系と、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの2次元の撮像素子とを用いて、撮像対象からの光の強度情報と色情報からなる2次元画像を取得する。
【0003】
ここで、レンズ光学系から撮像素子に入射する光の入射角度は、中央部と外周部とで異なる。しかしながら、センサ周辺部において必要とされる斜め入射光に最適化されたレンズを作製することが困難であるため、受光効率が制限されるという問題がある。
【0004】
この問題を解決するレンズとして、有効媒質近似を用いた微細構造レンズが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1では、微細構造レンズが波長に比べて非常に小さい場合、微細構造レンズの有効屈折率がレンズと周囲材料の屈折率とのほぼ平均値で表すことができるという近似が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Kazutoshi Onozawa, Kimiaki Toshikiyo, Takanori Yogo, Motonori Ishii, Kazuhiko Yamanaka, Toshinobu Matsuno, and Daisuke Ueda, "A MOS Image Sensor With a Digital-Microlens", IEEE transactions on electron devices, VOL. 55, NO. 4, 986-991 (2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、有効媒質近似を用いた微細構造レンズでは、レンズの屈折率と周囲の屈折率との差が大きくかつレンズの大きさがサブ波長程度の場合、光が構造内部に閉じ込められて光導波路モードや共振モードを励起してしまうため、この近似は適用できなくなる。このため、非特許文献1記載の微細構造レンズは、材料をSiOとし、周囲材料を空気などとする、屈折率差が小さい材料の組み合わせに限定されるため、微細構造レンズのアスペクト比が大きくなり、偏光依存性が存在するという課題がある。さらに、非特許文献1に記載の微細構造レンズは、曲線やステップをもつ構造のため、作製が困難であるという課題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アスペクト比が低く構成が簡易であって、画素ごとに主入射角度に対応したレンズ特性を実現できる撮像素子及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る撮像素子は、光電変換素子を含む画素が2次元アレイ状に複数配列された画素アレイと、画素アレイと対向して配置され、入射光を、対応する光電変換素子に導く複数の柱状構造体からなる光学素子が2次元アレイ状に配列された光学素子アレイと、を有し、複数の柱状構造体は、平面視したときに、各柱状構造体の入射光の入射角度に応じて、直下の光電変換素子に導くための位相特性を有する幅にそれぞれ形成されるとともに、側面視したときに、同じ高さに形成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る撮像素子は、光電変換素子を含む画素が2次元アレイ状に複数配列された画素アレイと、画素アレイと対向して配置され、入射光を、対応する光電変換素子に導く複数の柱状構造体からなる光学素子が2次元アレイ状に配列された光学素子アレイと、を有し、複数の柱状構造体は、各柱状構造体の入射光の入射角度に応じて、直下の光電変換素子に導くための位相特性を有するような屈折率を有するとともに、側面視したときに、同じ高さに形成されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る撮像装置は、上記記載の撮像素子と、像素子が出力する電気信号を処理し、画像を生成する信号処理部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来と比して、アスペクト比が低く構成が簡易であって、画素ごとに主入射角度に対応したレンズ特性を実現できる光学素子を有する撮像素子及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施の形態に係る撮像装置の概略構成を示した側面図である。
図2図2は、実施の形態に係る撮像素子の画素アレイ及び偏光波長分離レンズアレイの断面の一部を模式的に示す図である。
図3図3は、実施の形態に係る撮像素子の中央部における画素アレイ及び光学素子アレイの断面の一部を模式的に示す図である。
図4図4は、実施の形態に係る撮像素子の外周部における画素アレイ及び光学素子アレイの断面の一部を模式的に示す図である。
図5図5は、実施の形態に係る撮像素子の中央部における光学素子アレイの上面図である。
図6図6は、従来技術における有媒質近似構造体と実施の形態における柱状構造体との最小構造高さ及び最大アスペクト比を示す図である。
図7図7は、柱状構造体の側面図である。
図8図8は、柱状構造体の平面図である。
図9図9は、柱状構造体の幅と光の透過率との関係を示す図である。
図10図10は、柱状構造体の幅と、柱状構造体の光の位相特性との関係を示す図である。
図11図11は、入射角の定義を説明する図である。
図12図12は、θ=0°,φ=0°の入射角で光が入射した場合のレンズの設計目標の位相分布と、該位相分布を実現するレンズパターンを示す図である。
図13図13は、θ=45°,φ=0°の入射角で光が入射した場合のレンズの設計目標の位相分布と、該位相分布を実現するレンズパターンを示す図である。
図14図14は、θ=45°,φ=45°の入射角で光が入射した場合のレンズの設計目標の位相分布と、該位相分布を実現するレンズパターンを示す図である。
図15図15は、光学素子ユニットによる集光強度とその波長依存性を示す図である。
図16図16は、光学素子ユニットによる集光強度とその波長依存性を示す図である。
図17図17は、光学素子ユニットによる集光強度とその波長依存性を示す図である。
図18図18は、φ=0°の平行光(λ=520nm)入射時の光学素子ユニットによる集光強度と入射光の入射角度依存性を示す図である。
図19図19は、φ=0°の平行光(λ=520nm)入射時の光学素子ユニットによる集光強度と入射光の入射角度依存性を示す図である。
図20図20は、φ=0°の平行光(λ=520nm)入射時の光学素子ユニットによる集光強度と入射光の入射角度依存性を示す図である。
図21図21は、φ=45°の平行光(λ=520nm)入射時の光学素子ユニットによる集光強度と入射光の入射角度依存性を示す図である。
図22図22は、φ=45°の平行光(λ=520nm)入射時の光学素子ユニットによる集光強度と入射光の入射角度依存性を示す図である。
図23図23は、φ=45°の平行光(λ=520nm)入射時の光学素子ユニットによる集光強度と入射光の入射角度依存性を示す図である。
図24図24は、実施の形態に係る撮像素子における画素アレイ及び光学素子アレイの断面の一部の他の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面とともに詳細に説明する。なお、以下の説明において、各図は本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示してあるに過ぎず、したがって、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0014】
[実施の形態]
[撮像装置]
まず、本発明の実施の形態に係る撮像装置について説明する。図1は、実施の形態に係る撮像装置の概略構成を示した側面図である。
【0015】
図1に示すように、実施の形態に係る撮像装置10は、レンズ光学系11、撮像素子12及び信号処理部13を有する。撮像素子12は、CCDやCMOS等の光電変換素子を有する。信号処理部13は、撮像素子12から出力される光電変換信号を処理して画像信号を生成する。
【0016】
自然光や照明光等の光が物体1に照射され、物体1により透過/反射/散乱した光、または、物体1から発する光は、レンズ光学系11により撮像素子12上に光学像を形成する。一般に、レンズ光学系11は、様々な光学収差を補正するため、光軸に沿って並んだ複数のレンズからなるレンズ群により構成されるが、図1では図面を簡略化して単一のレンズとして示している。信号処理部13は、生成した画像信号を外部に送出する画像信号出力を有する。
【0017】
なお、撮像装置10は、赤外光カットの光学フィルタ、電子シャッタ、ビューファインダ、電源(電池)、フラッシュライトなどの公知の構成要素を備え得るが、それらの説明は、本発明の理解に特に必要でないため省略する。また、以上の構成はあくまでも一例であり、実施の形態では、レンズ光学系11、撮像素子12、信号処理部13を除く構成要素として、公知の要素を適切に組み合わせて用いることができる。
【0018】
[撮像素子]
続いて、実施の形態に係る撮像素子12の概略を説明する。図2は、実施の形態に係るレンズ光学系11と、撮像素子12の要部の断面を模式的に示す図である。図2以降では、撮像素子12の一部を、撮像素子100として説明する。撮像素子100は、カラーフィルタ上に、画素アレイの光電変換素子に入射光を導く複数の柱状構造体からなる光学素子を全面に形成した光学素子アレイを有する。また、撮像素子100では、図2に示すように、レンズ光学系11から撮像素子100に入射する光の入射角度θが、中央部と外周部とで異なるため、光学素子アレイに形成した複数の柱状構造体を、入射光の入射角度に応じて、直下の光電変換素子に導くための位相特性を与える大きさに設定している。以降、図3図5を用いて、撮像素子100の構造について説明する。
【0019】
図3は、実施の形態に係る撮像素子の中央部における画素アレイ及び光学素子アレイの断面の一部を模式的に示す図である。図4は、実施の形態に係る撮像素子の外周部における画素アレイ及び光学素子アレイの断面の一部を模式的に示す図である。図5は、実施の形態に係る撮像素子の中央部における光学素子アレイの上面図である。
【0020】
図3及び図4に示すように、撮像素子100は、画素アレイ110と、画素アレイ110と対向して配置された光学素子アレイ120とを有する。光学素子アレイ120は、レンズ光学系11からの光が入射する側に配置されている。光学素子アレイ120は、画素アレイ110上に形成された透明層150の上面に形成される。画素アレイ110上には、各画素に対応したカラーフィルタ170が設けられる。なお、透明層150は、SiO(屈折率n=1.45)等の材料からなる低屈折率の透明層である。
【0021】
画素アレイ110は、配線層180と、2次元アレイ状に配列された光電変換素子を含む画素130とを有する。画素ユニット140Lの画素130は、例えば、G光を受光し、画素ユニット140Rの画素130は、R光を受光する。
【0022】
光学素子アレイ120は、入射光を、対応する直下の画素130の光電変換素子に導く複数の柱状構造体160からなる光学素子が2次元アレイ状に配列される。例えば、図5では、カラーフィルタ170が分離する波長領域が赤(R)、緑(G)、青(B)である場合について示す。図5の光学素子アレイ120では、画素アレイ110上の、R光を受光するR画素ユニット、G光を受光する2つのG画素ユニット及びB光を受光するB画素ユニットがそれぞれ直下に位置するように配置された、R画素ユニットに対応する光学素子ユニット120R(光学素子)、G画素ユニットに対応する2つの光学素子ユニット120G(光学素子)、B画素ユニットに対応する光学素子ユニット120B(光学素子)を1組とした光学素子ユニットが2次元アレイ上に形成される。
【0023】
複数の柱状構造体160は、周囲材料(透明層150、空気)の屈折率よりも高い屈折率を有する材料を用いて形成される。これによって、柱状構造体160は、柱状構造体内部に光を強く閉じ込めて隣接する柱状構造体との光結合を防ぐ。柱状構造体160は、例えば、SiN(屈折率n=2.05)、TiO(屈折率n=2.4)を用いて形成される。
【0024】
複数の柱状構造体160は、図3及び図4に示すように、側面視したときに、同じ高さに形成される。複数の柱状構造体160は、入射光の波長よりも短い間隔で、光学素子アレイ120全面に形成される。図5に示すように、光学素子ユニット120R,120G,120Bは、平面視したときに、複数の柱状構造体160が格子状に形成される。複数の柱状構造体160は、角柱である。なお、図5の例は一例であり、柱状構造体は、平面視したときに、中空正方形、円形、中空円形または十字形上のような4回回転対象となる構造体を採用してもよい。
【0025】
複数の柱状構造体160は、平面視したときに、各柱状構造体の入射光の入射角度に応じて、入射光を、対応する直下の画素130の光電変換素子に導くための位相特性を有する幅wにそれぞれ形成される。複数の柱状構造体160の各々は、入射光に対して、平面視したときに当該柱状構造体160が有する幅に応じた光位相遅延量を与える。
【0026】
光学素子ユニット120R,120G,120Bでは、該光学素子ユニット120R,120G,120Bを構成する複数の柱状構造体160の各々が、入射光を、対応するR画素ユニット、G画素ユニット、B画素ユニットの各光電変換素子に導くための光位相遅延量分布を与える幅を有する。光学素子ユニット120R,120G,120Bでは、該光学素子ユニット120R,120G,120Bを形成する複数の柱状構造体160の各々の平面視したときの幅が、入射光の入射角度に応じて、入射光を該光学素子ユニット120R,120G,120Bの直下の光電変換素子に導くための光位相遅延量分布を与える幅に設定されている。なお、光位相遅延量分布は、光を集光するための光位相遅延量である。
【0027】
撮像素子100は、高さが同一で、幅が徐々に変換する柱状構造体160を、光学素子アレイ120全面に形成することで、レンズ機能を実現する。各柱状構造体160は、柱状の光導波路のように振る舞うため、撮像素子100では、柱状構造体160の幅を変化させることで、柱状構造体160の有効屈折率を変化させて、透過する光の位相を自由に制御することができる。
【0028】
言い換えると、各柱状構造体160は、サブ波長サイズの光導波路として振る舞い、かつ、光閉じ込めにより隣接する柱状構造体160との光結合がほとんどないため、柱状構造体160の平面視した際の幅wをそれぞれ柱状構造体160ごとに設計することで、複数の柱状構造体160毎に異なる光学特性(例えば位相遅延特性)を与えることが可能である。この位相遅延量の空間分布を(フレネル)レンズと同等のものにすることで、柱状構造体160にレンズ機能を付与することができる。
【0029】
ここで、非特許文献1には、SiO等の低屈折材料からなる構造体をレンズとして機能させることが記載されている。
【0030】
非特許文献1では、構造体が波長に比べて非常に小さい場合、構造体の有効屈折率が構造レンズと周囲材料の屈折率とのほぼ平均値で表すことができるという近似が記載されている。しかしながら、構造体の屈折率と周囲の屈折率の差が大きくかつ構造体の大きさがサブ波長程度の場合、光が構造内部に閉じ込められて光導波路モードや共振モードを励起してしまうため、この近似は適用できなくなる。このため、非特許文献1記載の構造体は、材料をSiOとし、周囲材料を空気などとする、屈折率差が小さい材料の組み合わせに限定されるため、構造体のアスペクト比が大きくなる。
【0031】
これに対し、撮像素子100では、各柱状構造体160を、SiNやTiOなどの高屈折率材料を用いて形成している。このため、位相変化量0~2πを実現するために必要な最小の柱状構造体160の高さが、SiO等の低屈折材料からなる構造体(非特許文献1参照)と比して、低い。したがって、撮像素子100は、0~2πの位相制御に必要な最小構造高さが比較的小さく、作製しやすい低アスペクト比の柱状構造体160でレンズ機能を実現できる。
【0032】
そして、複数の柱状構造体160は、底面が正方形の角柱である。このように、撮像素子100では、各柱状構造体160を、平面視したときに、正方形などの4回回転対称構造にすることで、偏光に対して無依存な特性とする。なお、非特許文献1記載の構造体は、理論式により有効屈折率に偏光依存性を有することが明らかである。
【0033】
また、非特許文献1には、曲面及びステップを有する構造体が記載されている。これに対し、本実施の形態における各柱状構造体160は、段差のない角柱状のバイナリパターンである。したがって、撮像素子100は、柱状構造体の断面から曲面及びステップを排除できるため、非特許文献1に記載の構造体と比して、柱状構造体160の作成が比較的容易である。
【0034】
また、撮像素子100は、複数の柱状構造体160を、光学素子アレイ120全面に形成することで、レンズ機能を実現するため、入射するすべての入射光を受光でき、レンズ開口を最大化することができる。
【0035】
また、各柱状構造体160は、平面視したときに、各柱状構造体160の入射光の入射角度に応じて、直下の画素130の光電変換素子に導く位相特性を有する幅wにそれぞれ形成される。すなわち、撮像素子100では、主入射角に応じて、画素毎に柱状構造体160の構造パターンを受光効率向上に向けて最適化することが可能である。言い換えると、撮像素子100では、柱状構造体160の平面視した際の形状パターンを、各柱状構造体160に入射する光の入射角度θに応じて最適化している。
【0036】
これによって、撮像素子100では、大きな入射角度θで光が入射する外周部(図4参照)と、垂直に光が入射する中央部(図3参照)とのいずれにおいても、柱状構造体160が直下の画素130の光電変換素子に集光できるようになる。したがって、撮像素子100は、多くの光を直下の光電変換素子に集光することができ、撮像素子100全体で均一な輝度をもつ画像信号を生成できる。
【0037】
[柱状構造体の高さ]
次に、柱状構造体160を側面視したときの高さについて説明する。以降、柱状構造体160を側面視したときの高さを、柱状構造体160の高さと記載する。そして、柱状構造体160の平面視したときの幅を、柱状構造体160の幅と記載する。ここでは、0~2πの位相制御に必要な柱状構造体160の最小高さについて説明する。
【0038】
柱状構造体160による位相遅延量φは、光の真空中での波長をλ、柱状構造体160の高さをh、柱状構造体160の有効屈折率neff、周囲材料の屈折率をnとすると、式(1)で表される。
【0039】
【数1】
【0040】
撮像素子100における柱状構造体160においても、非特許文献1に記載の構造体(以降、有効媒体近似構造体とする。)においても、式(1)が適用される。
【0041】
有効媒質近似構造体の場合、有効屈折率neffは、構造体と周囲材料との面積比で決まることが知られている。有効媒質近似構造体の場合には、偏光によってもneffの値が変動する。そして、柱状構造体160の場合は、光導波路モードが柱状構造体160の幅に大きく依存するため、有効屈折率neffは、柱状構造体160の幅wの関数で表されることが知られている。有効媒質近似構造体、柱状構造体160のいずれの場合でも、n<neff<nの値をとる。なお、nは、構造体を組成する材料の屈折率である。
【0042】
したがって、位相変化量を0~2πの間で制御するためには、構造体の高さは、式(2)とする必要がある。
【0043】
【数2】
【0044】
図6は、従来技術における有媒質近似構造体と実施の形態における柱状構造体160との最小構造高さ及び最大アスペクト比を示す図である。図6では、光の波長が635nmである際の最小構造幅を100nmとして、最大アスペクト比を求めている。
【0045】
有効媒質近似を適用するには、n-nを小さくする必要がある。このため、有効媒質近似構造体の場合、必要な構造体の高さは、図6のように1411nmと必然的に高くなり、数波長程度必要となる。
【0046】
これに対し、柱状構造体160の場合、nが大きい方が光閉じ込めの観点で望ましいため、有効媒質近似構造体よりもn-nの値が大きくなる。例えば、柱状構造体160を形成する材料は、SiN(n=2.05)、TiO(n=2.4)であり、n-n≧0.7となる。
【0047】
これによって、柱状構造体160では、必要な構造高さは、有効媒質近似構造体よりも比較的低くなり、図6に示すように、一般的に1波長以下である。このように、柱状構造体160のアスペクト比は、有効媒質近似構造体よりも、低くなる。
【0048】
[柱状構造体の構造]
柱状構造体160の構造の一例について説明する。図7は、柱状構造体160の側面図である。図8は、柱状構造体160の平面図である。図7及び図8に示すように、例えば、柱状構造体160は、石英によって形成される透明層150uの上面に形成される。そして、柱状構造体160の高さ(z軸方向の長さ)は、h=1000nmとし、柱状構造体160の配置周期は、320nmとする。柱状構造体160の幅wは、0~2πの制御すべき位相に対応させて設定される。
【0049】
図9は、柱状構造体160の幅wと光の透過率との関係を示す図である。図10は、柱状構造体160の幅wと、柱状構造体160の光の位相特性との関係を示す図である。
【0050】
図9に示すように、柱状構造体160の幅wを100~240nmの間で変更した場合であっても、高い透過率を保持することができる。そして、柱状構造体160の幅wを100~240nmの間で調整することで、柱状構造体160を透過する光の位相を、0~2πの間の所望の位相に制御することができる。なお、図9及び図10では、柱状構造体160の幅を100nmまで小さくした場合であっても、柱状構造体160のアスペクト比の最大値を10に抑えることができる。
【0051】
[レンズの設計]
本実施の形態に係る撮像素子100では、入射角に対応して、光学素子アレイ120下方の画素130の中心に集光するように、レンズとして機能する柱状構造体160の位相分布を設計する。そして、撮像素子100では、設計した位相分布となるように、図10の位相特性を参照しながら柱状構造体160の幅wを柱状構造体160ごとに設定することで、設計目標の理想的な位相分布を実現する。
【0052】
例えば、以下に設計例のパラメータを示す。
1つの光電変換素子の大きさ=レンズの面積:3.2μm×3.2μm
焦点距離:3.2μm
設計波長:520nm
【0053】
図11は、入射角の定義を説明する図である。図11に示すように、(θ,φ)の入射角で光が入射する場合について説明する。ある入射角(θ,φ)の光に対してレンズ(柱状構造体160)中心の直下の点に焦点距離fで集光するレンズの位相分布φは、以下の式(3)で表される。
【0054】
【数3】
【0055】
式(3)において、λは、設計波長であり、fは、焦点距離であり、ninは、入射側の材料の屈折率であり、noutは出射側の材料の屈折率であり、Cは、任意定数である。
【0056】
例えば、f=3.2μm、nin=1.0(空気)、nout=1.445(石英ガラス)とする。φは、0~2πの範囲に収まるように変換する。例えば、φが-0.5πの場合には1.5πに変換し、2.5πの場合には0.5に変換する。この設定において、任意の入射角で光が入射した場合のレンズの設計目標の位相分布と、該位相分布を実現できるレンズ(柱状構造体160)パターンについて、図12図14を参照して説明する。レンズの設計目標の位相分布とは、ある入射角の光に対してレンズ中心の直下の点に焦点距離fで集光されるレンズの位相分布である。
【0057】
図12は、θ=0°,φ=0°の入射角で光が入射した場合のレンズの設計目標の位相分布と、該位相分布を実現するレンズ(柱状構造体160)パターンを示す図である。図13は、θ=45°,φ=0°の入射角で光が入射した場合のレンズの設計目標の位相分布と、該位相分布を実現するレンズパターンを示す図である。図14は、θ=45°,φ=45°の入射角で光が入射した場合のレンズの設計目標の位相分布と、該位相分布を実現するレンズパターンを示す図である。図12の(1)、図13の(1)、図14の(1)は、各条件の入射角で光が入射した場合のレンズの設計目標の位相分布である。図12の(2)、図13の(2)、図14の(2)は、図12の(1)、図13の(1)、図14の(1)のそれぞれ位相分布を実現できる柱状構造体160の平面図であり、1画素あたりに設計される柱状構造体160の形状パターンである。
【0058】
図12の(2)、図13の(2)、図14の(2)に示すように、柱状構造体160は、底面が正方形の角柱である。そして柱状構造体160の幅wは、図10に示す、柱状構造体160の幅wと柱状構造体160の光の位相特性との関係を基に、図12の(1)、図13の(1)、図14の(1)の位相分布のうち、それぞれ対応する位置の位相を実現できる幅に設定される。
【0059】
例えば、図12の(2)に示す光学素子ユニット120-1は、θ=0°,φ=0°の入射角で光が入射した場合のレンズの設計目標の位相分布を実現する柱状構造体160の形状パターンである。図13の(2)に示す光学素子ユニット120-2は、θ=45°,φ=0°の入射角で光が入射した場合のレンズの設計目標の位相分布を実現する柱状構造体160の形状パターンである。図14の(2)に示す光学素子ユニット120-3は、θ=45°,φ=45°の入射角で光が入射した場合のレンズの設計目標の位相分布を実現する柱状構造体160の形状パターンである。
【0060】
[集光強度の波長依存性]
実施の形態では、図5に示す光学素子ユニット120R,120G,120Bのように、対応する直下の画素ユニットの光電変換素子の設計波長に対応させて、光学素子ユニット120R,120G,120Bの各柱状構造体160のパターンを設計する。光学素子ユニットでは、該光学素子ユニットを形成する複数の柱状構造体160の各々の平面視したときの幅wが、該光学素子ユニットが対応する光電変換素子が受光する波長範囲の光を、該光学素子ユニットが対応する光電変換素子に導くための光位相遅延量分布を与える幅に設定されている。そこで、光学素子アレイ120による集光強度の波長依存性について説明する。
【0061】
図15図17は、光学素子ユニットによる集光強度とその波長依存性を示す図である。図15は、波長λ=450nmのB光に対応し、図16は、波長λ=520nmのG光に対応し、図17は、波長λ=635nmのR光に対応する。
【0062】
図15の(1)、図16の(1)、図17の(1)は、垂直入射光(θ=0°,φ=0°)に最適設計されたレンズ(柱状構造体160)のパターンであり、両偏光の平均をとる。図15の(2)、図16の(2)、図17の(2)は、図15の(1)、図16の(1)、図17の(1)の光学素子ユニット120-4,120-5,120-6による集光強度を示す図である。集光強度は、画素130の光電変換素子面上の集光スポット幅内(λ/NA、NAはレンズのnumerical apertureである。)の全強度である。図15の(3)、図16の(3)、図17の(3)は、光学素子ユニット120-4,120-5,120-6による集光強度の波長依存性を示す図である。
【0063】
図15の(3)、図16の(3)、図17の(3)に示すように、いずれの光学素子ユニット120-4,120-5,120-6においても、96%以上の光が構造を透過し画素130において受光可能であることがわかる。また、光学素子ユニット120-4,120-5,120-6の集光強度は、設計波長周辺で、最大の集光強度を示す。
【0064】
したがって、撮像素子100では、色バンド(R、G、Bのカラーフィルタの透過バンド)毎に対応させて、光学素子ユニット120-4,120-5,120-6のように柱状構造体160のパターンを変化させるのみで、それぞれ設計波長に合わせた集光を設計可能である。撮像素子100では、画素130上のカラーフィルタに合わせて、各画素130の設計波長を決め、光学素子ユニット120-4,120-5,120-6を、直下の画素130の設計波長に合わせて、それぞれ集積すればよい。
【0065】
[入射角に対応した光学素子ユニットの設計例]
本実施の形態では、入射光の入射角度に応じて、光学素子ユニットの各柱状構造体160のパターンを設計する。光学素子ユニットでは、該光学素子ユニットを形成する複数の柱状構造体160の各々の平面視したときの幅wが、入射光の入射角度に応じて、入射光を該光学素子ユニットの直下の光電変換素子に導くための光位相遅延量分布を与える幅に設定されている。そこで、光学素子アレイ120への入射光の入射角度に対応した光学素子ユニットの設計例について説明する。
【0066】
図18図20は、φ=0°の平行光(λ=520nm)入射時の光学素子ユニットによる集光強度と入射光の入射角度依存性を示す図である。図18の(1)は、θ=15°,φ=0°の入射光に最適設計された柱状構造体160のパターンであり、図19の(1)は、θ=30°,φ=0°の入射光に最適設計された柱状構造体160のパターンであり、図20の(1)は、θ=45°,φ=0°の入射光に最適設計された柱状構造体160のパターンであり、両偏光の平均をとる。図18の(2)、図19の(2)、図20の(2)は、図18の(1)、図19の(1)、図20の(1)の光学素子ユニット120-7,120-8,120-9による集光強度を示す図である。図18の(3)、図19の(3)、図20の(3)は、光学素子ユニット120-7,120-8,120-9による集光強度の入射角度依存性を示す図である。
【0067】
図18の(3)、図19の(3)、図20の(3)に示すように、いずれの光学素子ユニット120-7,120-8,120-9においても、設計入射角周辺で最大の集光強度を示す。
【0068】
図21図23は、φ=45°の平行光(λ=520nm)入射時の光学素子ユニットによる集光強度と入射光の入射角度依存性を示す図である。図21の(1)は、θ=15°,φ=45°の入射光に最適設計された柱状構造体160のパターンであり、図22の(1)は、θ=30°,φ=45°の入射光に最適設計された柱状構造体160のパターンであり、図23の(1)は、θ=45°,φ=45°の入射光に最適設計された柱状構造体160のパターンであり、両偏光の平均をとる。図21の(2)、図22の(2)、図23の(2)は、図21の(1)、図22の(1)、図23の(1)の光学素子ユニット120-10,120-11,120-12による集光強度を示す図である。図21の(3)、図22の(3)、図23の(3)は、光学素子ユニット120-10,120-11,120-12による集光強度の入射角度依存性を示す図である。
【0069】
図21の(3)、図22の(3)、図23の(3)に示すように、いずれの光学素子ユニット120-10,120-11,120-12においても、設計入射角周辺で最大の集光強度を示す。
【0070】
撮像素子100では、上述した光学素子ユニット120-7~120-12を、入射光の入射角(θ,φ)に合わせて配列することによって、直下の画素130の光電変換素子に高い強度で集光が可能となる。
【0071】
[実施の形態の効果]
このように、実施の形態に係る撮像素子100では、複数の柱状構造体160を、入射光の波長よりも短い間隔で、光学素子アレイ120全面に形成することでレンズ機能を実現するため、入射するすべての入射光を受光でき、受光効率の向上を図ることができる。
【0072】
また、撮像素子100では、複数の柱状構造体は、平面視したときに、各柱状構造体の入射光の入射角度に応じて、直下の光電変換素子に導くための位相特性を有する幅にそれぞれ形成されるとともに、側面視したときに、同じ高さに形成される。撮像素子100では、この複数の柱状構造体160によって、画素130ごとに入射角に対応したレンズ特性を実現できるため、撮像素子100全体で均一な輝度をもつ画像信号を生成できる。
【0073】
また、撮像素子100では、周囲材料の屈折率よりも高い屈折率を有する材料からなる四角柱状のバイナリパターンによる複数の柱状構造体160をレンズとして用いる。このため、撮像素子100がレンズとして用いる複数の柱状構造体160は、非特許文献1に記載された構造体と比して、低アスペクト比であるとともに簡易な構成であるため、作成が容易である。
【0074】
なお、光学素子ユニットは、上記の構成に制限されることはなく、数や間隔、構造形状、配列パターンにおいて様々な形態をとり得る。また、柱状構造体160は、それぞれが接続されていてもよく、また透明材料内に埋め込まれた形態でもよい。
【0075】
また、図3及び図4では、光学素子アレイ120が透明層150の上面に形成されているがこれに限らない。図24は、実施の形態に係る撮像素子における画素アレイ及び光学素子アレイの断面の一部の他の例を模式的に示す図である。図24の撮像素子100Aに示すように、光学素子アレイ120Aは、独立した透明基板190の底面に形成される。このように、複数の柱状構造体160は、透明層150A(例えば、空気)内部に形成されていてもよい。
【0076】
また、上記では、1つの光学素子ユニットの直下に4つの画素が位置する例について説明したが、これに限定されない。
【0077】
また、実施の形態では、柱状構造体160の材料としてSiN、TiOを用いた例を示したが、これに限定されない。例えば、撮像素子100,100Aを、光の波長が380nm~1000nmの範囲の可視光~近赤外光領域で用いる場合は、柱状構造体160の材料には、SiN、SiC、TiO、GaN等の材料が、屈折率が高く、吸収損失が少ないため適している。また、撮像素子100,100Aを、波長が800~1000nmの範囲の近赤外光領域で用いる場合は、これらの光に対し低損失な柱状構造体160の材料として、Si、SiC、SiN、TiO、GaAs、GaN等の材料が適している。さらに、長波長帯の近赤外領域(通信波長である1.3μmや1.55μm等)では、上述の材料に加えて、InP等を柱状構造体160の材料として用いることができる。
【0078】
そして、貼り付け、塗布して柱状構造体160の微小分光素子を形成する場合、フッ素化ポリイミド等のポリイミド、BCB(ベンゾシクロブテン)、光硬化性樹脂、UVエポキシ樹脂、PMMA等のアクリル樹脂、レジスト全般などのポリマー等が材料として挙げられる。
【0079】
同様に、実施の形態では、透明層150,150Aの材料としてSiO及び空気層を想定した例を示したが、これに限定されない。透明層150,150Aの材料は、一般的なガラス材料、SiO、空気層等、屈折率が柱状構造体160の材料の屈折率より低く、入射光の波長に対して低損失なものであれば足りる。また、透明層150,150Aは、複数の材料からなる積層構造を有する透明層であってもよい。
【0080】
実施の形態では、柱状構造体160が対応する波長域の光が、R、G、Bの3原色の光である場合を例に説明したが、3波長域のうちの少なくとも1つが3原色以外の波長の光(例えば、赤外光や紫外光)であってもよい。
【0081】
また、光学素子アレイ120,120Aでは、図10に例示する柱状構造体160の幅と光の位相特性との関係に基づいて、複数の柱状構造体160のうちの少なくとも一部の平面視した際の幅を、入射光を、対応する直下の光電変換素子に導くための光位相遅延量分布を与える幅に設定する。これによって、光学素子アレイ120,120Aでは、画素130ごとに入射角や光電変換素子における波長範囲に対応したレンズ特性を実現する。これに限らず、本実施の形態では、複数の柱状構造体160は、各柱状構造体の入射光の入射角度に応じて、直下の前記光電変換素子に導くための位相特性を有するような屈折率を有していてもよい。言い換えると、本実施の形態では、複数の柱状構造体160が、互いに異なる屈折率を有するように設定することで、画素130ごとに、入射角や光電変換素子における波長範囲に対応したレンズ特性を実現することもできる。また、本実施の形態では、柱状構造体160の平面視した際の幅と、柱状構造値160の屈折率とを、柱状構造体ごとに変えることで、画素130ごとに、入射角や光電変換素子における波長範囲に対応したレンズ特性を実現することもできる。
【0082】
また、本実施の形態における光学素子アレイ120,120Aは、例えば、メタサーフェスである。上述したように、メタサーフェスは光の波長以下の幅を持った複数の微細構造からなる素子であり、2次元構造でもよいし、3次元構造であってもいい。光学素子にメタサーフェスを用いることによって、微細構造のパラメータを変えるだけで、光の特性(波長・偏波・入射角)に応じて位相と光強度を制御することができる。また、メタサーフェスが3次元構造の場合には、上記の設計自由度が上がる。
【0083】
以上、本発明を具体的な実施の形態に基づいて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1 物体
10 撮像装置
11 レンズ光学系
12,100,100A 撮像素子
13 信号処理部
110 画素アレイ
120,120A 光学素子アレイ
120R,120G,120B,120-1~120-12 光学素子ユニット
130 画素
140L,140R 画素ユニット
150,150A 透明層
160 柱状構造体
170 カラーフィルタ
180 配線層
190 透明基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24