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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】受信装置、及び受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0413 20170101AFI20241001BHJP
【FI】
H04B7/0413 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022567731
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2020045482
(87)【国際公開番号】W WO2022123629
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 匡史
(72)【発明者】
【氏名】大宮 陸
(72)【発明者】
【氏名】小川 智明
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-215967(JP,A)
【文献】渡部一聖 他,仮想Massive アレーを用いた伝搬環境制御法の提案,信学技報, vol. 119, no. 61,一般社団法人 電子情報通信学会,2019年05月23日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0413
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ制御部と、
前記アンテナ制御部から出力される制御信号に基づいて、複数のアンテナから送信されたMIMO信号を、アンテナ特性を切り替えながら受信する特性可変アンテナと、
前記特性可変アンテナにより受信した受信信号に対して所定のサンプリング周期でサンプリングを行う変換部と、
前記変換部により得られた複数のアンテナ特性に対応する複数の信号から各信号を抽出する信号分割部と、
前記信号分割部から出力された信号に対してMIMO復調処理を実行するMIMO信号復調部と、を備え、
前記特性可変アンテナは、複数の円柱状の無給電素子を備え、前記アンテナ制御部は、制御信号を、時間差をつけて各無給電素子へ出力する
受信装置。
【請求項2】
前記アンテナ制御部は、前記所定のサンプリング周期に同期させた前記制御信号を、時間差をつけて各無給電素子へ出力する
請求項1に記載の受信装置
【請求項3】
前記特性可変アンテナにおける各無給電素子は、位相可変部を備え、前記制御信号は、前記位相可変部を制御する
請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
前記位相可変部は電圧制御型の位相可変部であり、前記制御信号はアナログ信号である
請求項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記特性可変アンテナにおける各無給電素子は、位相可変部を備え、前記制御信号は、前記位相可変部を制御する
請求項2に記載の受信装置。
【請求項6】
前記位相可変部は電圧制御型の位相可変部であり、前記制御信号はアナログ信号である
請求項5に記載の受信装置。
【請求項7】
アンテナ制御部と特性可変アンテナとを備える受信装置が実行する受信方法であって、
前記アンテナ制御部から出力される制御信号に基づいて、複数のアンテナから送信されたMIMO信号を、アンテナ特性を切り替えながら受信するステップと、
前記特性可変アンテナにより受信した受信信号に対して所定のサンプリング周期でサンプリングを行うステップと、
前記サンプリングにより得られた複数のアンテナ特性に対応する複数の信号から各信号を抽出するステップと、
前記抽出された信号に対してMIMO復調処理を実行するステップと、を備え、
前記特性可変アンテナは、複数の円柱状の無給電素子を備え、前記アンテナ制御部は、制御信号を、時間差をつけて各無給電素子へ出力する
受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信を行う無線通信システムに関連するものである。
【背景技術】
【0002】
無線デバイスの急速な普及によって無線通信トラヒックが増加し続けている。この無線通信トラヒックを安定的に収容するために、無線通信システムの大容量化が求められている。無線通信システムの大容量化を実現するべく、複数のアンテナを用いて同一周波数かつ同一時刻に空間分割多重伝送を行うMIMOが実用化されている。更に、将来無線通信システムを対象として、MIMOが実現する容量の更なる拡大に向けて、超多数のアンテナを利用した大規模(Massive)MIMOの研究開発が進められている。
【0003】
しかしながら、Massive MIMOでは、無線基地局に超多数のアンテナ、各アンテナに接続される増幅やフィルタ等を行うRF部、及びアナログ信号とデジタル信号の変換を行う変換部等の装置が非常に多く必要となることから、無線基地局のサイズ及びコストが大きくなるという課題がある。
【0004】
上記課題に対して、非特許文献1には、Virtual Massive MIMO(VM-MIMO)の技術が開示されている。非特許文献1に開示されたVirtual Massive MIMO(VM-MIMO)では、上り回線のMassive MIMOにおいて、複数のアンテナから同一周波数かつ同一時刻に送信される信号に対して、無線基地局が特性可変アンテナにより周期的にアンテナ特性を高速に切り替えながら受信を行う。更に、通常よりも高速にサンプリングした受信信号からアンテナ特性が同等となるタイミングの信号を、サンプリングした受信信号から分割して抽出し、抽出した信号に対して、一般的なマルチユーザMIMOの受信処理を行うことで、少ないアンテナでMassive MIMOの受信を可能としている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】村上他、"将来無線システムにおける時空間信号処理技術"電子情報通信学会 ソサイエティ大会2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、VM-MIMOの技術により、少ないアンテナでMassive MIMOの受信を実現できるので、無線基地局のサイズ及びコストを低減できる。このVM-MIMOの伝送品質を決定する要素として、サンプリング周波数に同期した高速なアンテナ特性の切り替えが必要となる。
【0007】
アンテナ特性を可変にさせる手段の一つとして、ESPAR(Electronically Steerable Passive Array Radiator)アンテナのようにバラクタダイオードを用いて容量可変を行うことで、アンテナ素子長を変化させる構成が考えられるが、可変容量によるアンテナ特性可変は高速性に課題があるため、VM-MIMOを実現できない可能性がある。なお、このような課題は、VM-MIMOの受信処理を行う無線基地局のみならず、VM-MIMOの受信処理を行う無線端末局においても生じ得る課題である。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、送信装置の複数のアンテナから同一周波数かつ同一時刻に送信されるMIMO信号を特性可変アンテナで受信する受信装置において、アンテナ特性を高速に切り替えることを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の技術によれば、アンテナ制御部と、
前記アンテナ制御部から出力される制御信号に基づいて、複数のアンテナから送信されたMIMO信号を、アンテナ特性を切り替えながら受信する特性可変アンテナと、
前記特性可変アンテナにより受信した受信信号に対して所定のサンプリング周期でサンプリングを行う変換部と、
前記変換部により得られた複数のアンテナ特性に対応する複数の信号から各信号を抽出する信号分割部と、
前記信号分割部から出力された信号に対してMIMO復調処理を実行するMIMO信号復調部と、を備え、
前記特性可変アンテナは、複数の円柱状の無給電素子を備え、前記アンテナ制御部は、制御信号を、時間差をつけて各無給電素子へ出力する
受信装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば
開示の技術によれば、送信装置の複数のアンテナから同一周波数かつ同一時刻に送信されるMIMO信号を特性可変アンテナで受信する受信装置において、アンテナ特性を高速に切り替えることを可能とする技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態におけるシステム構成図である。
図2】本発明の実施の形態におけるシステム構成図である。
図3】VM-MIMOの動作を説明するための図である。
図4】無線端末局の構成図である。
図5】無線基地局の構成図である。
図6】無線基地局の構成図である。
図7】無線基地局の動作を示すフローチャートである。
図8】特性可変アンテナの構成図である。
図9】無給電素子の配置を説明するための図である。
図10】制御信号による制御例を説明するための図である。
図11】特性可変アンテナの構成図である。
図12】制御信号による制御例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0013】
なお、以下の説明では、送信装置として無線端末局1を使用し、受信装置として無線基地局2を使用する例を用いているが、送信装置として無線基地局2を使用し、受信装置として無線端末局1を使用する場合にも、受信装置において本発明に係る技術を適用することが可能である。
【0014】
(全体構成)
図1に、本実施の形態における無線通信システムの構成例を示す。図1に示すように、本実施の形態における無線通信システムは、無線端末局1と無線基地局2とを有する。無線端末局1は複数のアンテナを有しており、無線基地局2は1本の特性可変アンテナを有している。無線基地局2における特性可変アンテナの数は複数であってもよい。図示のとおり、本実施の形態では、無線端末局1から無線基地局2への上り方向の通信を対象としている。
【0015】
なお、本実施の形態では、図1に示すように、無線基地局2が、1台の無線端末局1から送信された信号を受信することを想定しているが、これは一例である。図2に示すように、無線基地局2が複数の無線端末局1から送信された信号を受信する場合(つまり、マルチユーザMIMOの場合)にも本実施の形態に係る技術を適用可能である。
【0016】
(無線通信システムの動作概要)
無線基地局2は、非特許文献1に開示されたVirtual Massive MIMO(VM-MIMO)の技術により、1本の特性可変アンテナでMassive MIMOの受信を行う。
【0017】
すなわち、図3に示すように、無線基地局2は、無線端末局1の複数のアンテナから同一周波数かつ同一時刻に送信される信号を、周期的にアンテナ特性を高速に変化させながら受信する。無線基地局2は、通常よりも高速に受信信号をサンプリングして、サンプリングした受信信号からアンテナ特性が同等となるタイミングの受信信号を分割して抽出し、抽出した受信信号に対して、一般的なMIMOの受信処理を行うことで、1本の特性可変アンテナでMassive MIMOの受信を可能としている。
【0018】
理論的には、抽出した各受信信号は、互いに異なる伝搬路から到来する信号とみなすことができるので、仮想的にアンテナを増加させることができ、Massive MIMOの受信が可能となる。
【0019】
図3の例では、無線基地局2は、4つのアンテナ特性1~4を周期的に変化させながら信号を受信している。図3の例において、アンテナ特性1のタイミングの信号を"1"ので示し、アンテナ特性2のタイミングの信号を"2"で示し、アンテナ特性3のタイミングの信号を"3"で示し、アンテナ特性4のタイミングの信号を"4"で示している。
【0020】
また、アンテナ特性1~4のアンテナをそれぞれ仮想アンテナ1~4と呼んでいる。図3において、"1"で示す信号の波形が仮想アンテナ1の波形として示されている。
【0021】
VM-MIMOの技術を用いることで、無線基地局2の1つの特性可変アンテナを用いて無線端末局1の複数のアンテナから送信されるMIMO信号の復調が可能となる。
【0022】
しかし、前述したとおり、アンテナ特性を変化させる手段の一つとして、ESPARアンテナのようにバラクタダイオードを用いた場合、高速性に課題が残るため、VM-MIMOを実現できない可能性がある。
【0023】
そこで、本実施の形態では、高速切替可能な可変移相器を用いた特性可変アンテナを用いることとしている。以下、各装置の構成と動作について説明する。
【0024】
(無線端末局1)
図4に、本実施の形態における無線端末局1の構成例を示す。図4に示すとおり、無線端末局1は、複数のアンテナ10、複数のRF部11、複数のD/A変換部12、及びMIMO信号生成部13を有する。なお、一般的に無線端末局1に搭載される機能ブロックについては省略している。
【0025】
MIMO信号生成部13は、送信データから複数のMIMO信号を生成し、それぞれのMIMO信号をD/A変換部12に入力する。D/A変換部12は、入力されたデジタルのMIMO信号をアナログ信号に変換し、当該アナログ信号をRF部11に出力する。
【0026】
RF部11は、アナログ信号に対して、増幅・周波数変換・フィルタリング等のアナログ処理を施し、処理を施した信号を各アンテナ10に出力する。ここでのRF部11として、一般的な無線装置のRFフロントエンドの機能が搭載されることを想定する。アンテナ10は、入力された信号を無線信号として空中に放射する。
【0027】
(無線基地局2)
図5に、本実施の形態における無線基地局2の構成例を示す。図5に示すように、本実施の形態における無線基地局2は、特性可変アンテナ20、RF部21、A/D変換部22、アンテナ制御部23、信号分割部24、MIMO信号復調部25を有する。なお、一般的に無線基地局に搭載される機能ブロックについては図示を省略している。無線基地局2の各部の機能は下記のとおりである。
【0028】
特性可変アンテナ20は、アンテナ制御部23から入力する制御信号に応じてアンテナ特性(指向性、出力電力、位相等)を周期的に切り替えるアンテナである。特性可変アンテナ20の詳細構成例については後述する。
【0029】
RF部21は、特性可変アンテナ20から入力した信号に対して、増幅・周波数変更・フィルタリング等の処理を行い、処理した信号をA/D変換部22に出力する。ここでのRF部21として、一般的な無線装置のRFフロントエンドの機能が搭載されることを想定する。
【0030】
A/D変換部22は、RF部21から入力するアナログ信号をサンプリングすることにより、デジタル信号に変換し、当該デジタル信号を信号分割部24に出力する。また、A/D変換部22は、サンプリング周期をアンテナ制御部23に通知する。
【0031】
アンテナ制御部23は、A/D変換部22のサンプリング周期に同期させた制御信号を特性可変アンテナ20に出力する。
【0032】
信号分割部24は、A/D変換部22から入力された特性の異なる複数の信号をサンプリング周期に同期して分割し、分割して得られた信号をMIMO信号復調部25に出力する。
【0033】
MIMO信号復調部25は、信号分割部24から受信した信号に対して、一般的な無線通信システムで規定されるMIMOの復調処理を行う。
【0034】
ここで、特性可変アンテナ20において、例えば4本の仮想アンテナの1つを周期的に選択することによりアンテナ特性を周期的に切り替える場合には、A/D変換部22は、一般的な無線基地局のA/D変換部22のサンプリング周期の4倍以上のサンプリング周期で、各アンテナ特性に対応する信号1~4をサンプリングして出力する。
【0035】
アンテナ制御部23は、A/D変換部22のサンプリング周期で4本の仮想アンテナのうちの1つを選択してアンテナ特性を切り替える。
【0036】
このとき、信号分割部24は、A/D変換部22のサンプリング周期と同じサンプリング周期で各アンテナ特性に対応する信号1~4を分割して抽出し、MIMO信号復調部25に出力する。その結果、信号分割部24の4つの出力ポートには、それぞれ同じアンテナ特性の信号1~4が周期的に出力される。
【0037】
(その他の構成例)
図5に示す無線基地局2における各機能ブロックの機能を専用のハードウェア(LSI等)で実現してもよいし、「特性可変アンテナ20、RF部21、A/D変換部22」以外の部分(つまり、デジタル信号の処理を行う部分)を、プロセッサ(CPU、DSP等)とメモリとを備える汎用的なコンピュータと、当該コンピュータ上で動作するソフトウェアで実現してもよい。
【0038】
コンピュータとソフトウェアを用いて無線基地局2を実現する場合における無線基地局2の構成例を図6に示す。
【0039】
図6に示すように、当該無線基地局2は、プロセッサ101、メモリ102、補助記憶装置103、入出力装置104、特性可変アンテナ20、RF部21、A/D変換部22を有し、これらがバスで接続された構成を有する。
【0040】
例えば、補助記憶装置103(記憶媒体)に、無線基地局2の動作を実現するプログラムが格納される。無線基地局2の動作時に、当該プログラムがメモリ102に読み込まれ、プロセッサ101がメモリ102からプログラムを読み出して実行する。例えば、プロセッサ101は、当該プログラムにより、アンテナ制御部23、信号分割部24、MIMO信号復調部25の処理を実行する。
【0041】
入出力装置104は、例えば、MIMO信号復調部25により得られた信号を出力する。また、入出力装置104から、事前に設定しておく情報を入力することとしてもよい。
【0042】
(動作例)
次に、無線基地局2の時系列の動作例を、図7のフローチャートを参照して説明する。アンテナ制御部23は、A/D変換部22のサンプリング周期に同期させた制御信号を特性可変アンテナ20に出力し、特性可変アンテナ20は、当該アンテナ制御信号に従って、アンテナ特性を周期的に切り替えている。この制御信号による制御の詳細は後述する。
【0043】
<S1>
S1(ステップ1)において、特性可変アンテナ20が無線端末局1の複数のアンテナから同時に送信された信号を受信する。受信した信号はRF部21に入力され、RF部21により処理された信号はA/D変換部22に出力される。
【0044】
<S2>
S2において、A/D変換部22は、入力された信号(アナログ信号)に対してサンプリングを行って、サンプリングされた信号(デジタル信号)を取得する。以降の説明の「信号」は、サンプリングにより取得された信号である。A/D変換部22により得られた信号は、信号分割部24に出力される。
【0045】
<S3>
S3において、信号分割部24は、A/D変換部22から入力された信号をA/D変換部22のサンプリング周期と同じサンプリング周期で分割して抽出し、抽出した信号をMIMO信号復調部25に出力する。
【0046】
<S4>
S4において、MIMO信号復調部25は、信号分割部24から受信した信号に対して、一般的な無線通信システムで規定されるMIMOの復調処理を行う。なお、MIMO復調処理において必要となる情報(無線端末局1のアンテナ数等)は、事前に与えられていることとしてもよいし、推定することとしてもよい。
【0047】
(特性可変アンテナの構成例)
図8に、本実施の形態における特性可変アンテナ20の構成例を示す。図8に示す特性可変アンテナ20は、中心に配置される給電素子と周りに配置される複数の無給電素子で構成され、アンテナ制御部23によって無給電素子の特性を変化させることで、アンテナの特性を変化させることができる。図8に示した特性可変アンテナ20は、無線端末局1から送信された電磁波を受信する。特性可変アンテナ20は、データを含む信号の電磁波を無線端末局1に送信することもできる。
【0048】
より具体的には、図8に示すように、特性可変アンテナ20は、アンテナ素子201、4つの無給電素子202、4つの可変移相器203、及び結合部204を有する。なお、本例では特性可変アンテナ20が4本の無給電素子を有する場合の例を示しているが、無給電素子は3本以下や5本以上であっても構わない。
【0049】
アンテナ素子201は、例えば、スリーブアンテナであり、Z軸方向(図8の高さ方向)に2分の1波長の素子長を有する。そして、アンテナ素子201は、水平面のXY平面に対して垂直のZ軸方向に延在するように配置される。
【0050】
アンテナ素子201は、結合部204を介して、無線基地局2からのデータを含む信号を無線端末局1に電磁波で送信することができる。また、特性可変アンテナ20は、無線端末局1から送信された電磁波を受信し、結合部204を介して受信した電磁波の信号を無線基地局2内に出力する。なお、特性可変アンテナ20は、ダイポールアンテナ等でもよい。
【0051】
無給電素子202は、アンテナ素子201が配置された位置を中心にして、半径Rの円周上に等間隔でXY平面に配置される。すなわち、図9に示すように、無給電素子202の各々の位置は、アンテナ素子201の位置をXY平面の原点とする場合、(R,0)、(0,R)、(-R,0)および(0,-R)である。なお、半径Rは、アンテナ素子201との相互結合の影響を低減可能な自由空間波長で8分の1波長以上の距離に設定される。また、4つ以外の複数の無給電素子202が配置されてもよい。アンテナ素子201と無給電素子202とは、アンテナ部として動作する。
【0052】
図8に示すように、無給電素子202は、例えば、円柱状の銅等の金属部材と可変移相器203とを有する。金属部材は、移相可変器203を介して接続されている。無給電素子202は、特性可変アンテナ20の電源、又は無線基地局2に含まれる電源から移相可変器203に印加される電圧に応じて位相が調整される。なお、位相以外の特性が調整されてもよい。
【0053】
例えば、可変移相器203に電圧が印加されない場合、特性可変アンテナ20は、ある位相で信号を受信(無線基地局2へ出力)し、一方、可変移相部203に電圧が印加される場合、特性可変アンテナ20は、上記とは異なる位相で信号を受信する。また、例えば、可変移相器203に電圧が印加されない場合、ある位相で信号が放射され、一方、可変移相部203に電圧が印加される場合、上記とは異なる位相で信号が放射される。
【0054】
結合部204は、アンテナコネクタ等であり、特性可変アンテナ20と無線基地局2とを同軸ケーブル等で接続する。そして、結合部204は、特性可変アンテナ20が受信した電磁波の信号を無線基地局2に出力するとともに、無線基地局2からのデータを含む信号を特性可変アンテナ20に出力する。
【0055】
(アンテナ制御例)
図10に、アンテナ制御部23から特性可変アンテナ20へ入力される制御信号の一例を示す。図10に示す「ON」のときに、該当無給電素子202の可変移相器203に電圧が供給され、「OFF」のときに電圧が供給されない。図10(a)、(b)において、縦軸はON/OFFを表し、横軸は時間を表す。なお、縦軸は電圧を表すとしてもよい。
【0056】
図10(a)は、比較のために示した従来の制御信号の例であり、無給電素子2本分の制御信号を示している。この図10(a)に示すように、各制御信号のONとOFFを同期して制御することによって、4つの状態を周期的に変化させている。各状態が、特性可変アンテナ20の1つのアンテナ特性に対応する。つまり、図10(a)の例では、各制御信号の立ち上がりと立ち下がりとの間のタイミングが同一であり、同期している。
【0057】
図10に示す周期(T)は、例えば、個々の無給電素子の特性を変化させる周期として最短の周期である。図10(a)の例では、この周期でしか、特性可変アンテナ20のアンテナ特性を変化させることができず、VM-MIMOを実現するには十分でない可能性がある。
【0058】
一方で、図10(b)は本実施の形態における制御信号の例である。この図10(b)に示すように、アンテナ制御部23は、複数の制御信号のうちの一部の制御信号の出力タイミングを、他の制御信号に対してずらすことで、図10(a)に示す例の場合よりも高速に特性可変アンテナ20のアンテナ特性を変化させることができる。つまり、複数の無給電素子に対する制御信号間に時間差を設けることで、高速な特性可変を実現している。
【0059】
より具体的には、図10(b)の場合、無給電素子#2に対する制御信号の出力タイミング(可変移相器203への入力タイミング)を、個々の無給電素子の特性を変化させる周期Tの半分(T/2)だけ、無給電素子#1に対する制御信号の出力タイミングに対してずらしている。これにより、出力タイミングをずらさない場合に比べて、2倍の速さで特性可変アンテナ20のアンテナ特性を変化させることができる。
【0060】
図10は、2本の無給電素子を使用する場合の例であるが、3本以上の無給電素子を使用する場合にも同様にして、制御信号の出力タイミングを、無給電素子間でずらすことで、高速な特性可変アンテナ20のアンテナ特性の変化を実現できる。例えば、4本の無給電素子#1~#4を使用する場合、無給電素子#2への制御信号の出力タイミングを無給電素子#1への出力タイミングからT/4だけずらし、無給電素子#3への制御信号の出力タイミングを無給電素子#2への出力タイミングからT/4だけずらし、無給電素子#4への制御信号の出力タイミングを無給電素子#3への出力タイミングからT/4だけずらすことで、従来技術に比べて4倍の速さで特性可変アンテナ20のアンテナ特性を変化させることができる。
【0061】
(変形例)
以上、基本的な構成を基本例として説明したが、更なる特性改善のために、下記の変形例に説明するような構成及び動作を採用することとしてもよい。変形例のうちの一部又は全部を組み合わせてもよい。また、変形例において説明していない部分は、これまでに説明した基本例が適用される。
【0062】
<変形例1>
変形例1では、特性可変アンテナ20における可変移相器203の代わりに、図11に示すように、ダイオードスイッチ205を用いる。ダイオードスイッチ205を用いる場合でも、図10で説明した制御信号による動作は可変移相器203の場合の動作と同じである。また、ダイオードスイッチ205を用いる場合でも、特性可変アンテナ20の送受信信号の位相等の特性を変化させることができるという点で、可変移相器203を用いる場合と効果は同じである。
【0063】
ただし、ダイオードスイッチ205は図10に示すようなON/OFF制御に限定されるのに対し、可変移相器203の場合はダイオードスイッチ205よりも多様なパターンの制御が可能になる。なお、可変移相器203とダイオードスイッチ205とを総称して位相可変部と呼んでもよい。
【0064】
<変形例2>
変形例2では、位相可変部として、電圧制御型(アナログ制御)の減衰器や位相器を用いる。これにより、制御信号として、図10を参照して説明したようなON/OFFの制御信号(デジタル信号)に代えて、図12に示すようなアナログ信号を用いることができる。これにより、より多く、アンテナ特性の状態を変化させることができるとともに、制御信号の出力タイミングをずらすことでその変化の速度も高速化することができる。
【0065】
図12(a)、(b)は、図10と同様に2本の無給電素子を使用する場合の各無給電素子への制御信号を示しており、図12(a)、(b)それぞれの縦軸は電圧、横軸は時間である。図12(a)は、制御信号のタイミングをずらしていない状態を示し、図12(b)は、制御信号のタイミングをずらした状態を示している。
【0066】
(実施の形態の効果)
上記のとおり、本実施の形態では、送信装置の複数のアンテナから同一周波数かつ同一時刻に送信されるMIMO信号を特性可変アンテナで受信する受信装置において、各無給電素子の制御信号に時間差をつけることで、アンテナ特性を高速に変化させることが可能となる。
【0067】
(付記)
本明細書には、少なくとも下記の各項に記載した受信装置、受信方法が記載されている。
(第1項)
アンテナ制御部と、
前記アンテナ制御部から出力される制御信号に基づいて、複数のアンテナから送信されたMIMO信号を、アンテナ特性を切り替えながら受信する特性可変アンテナと、
前記特性可変アンテナにより受信した受信信号に対して所定のサンプリング周期でサンプリングを行う変換部と、
前記変換部により得られた複数のアンテナ特性に対応する複数の信号から各信号を抽出する信号分割部と、
前記信号分割部から出力された信号に対してMIMO復調処理を実行するMIMO信号復調部と、を備え、
前記特性可変アンテナは、複数の無給電素子を備え、前記アンテナ制御部は、制御信号を、時間差をつけて各無給電素子へ出力する
受信装置。
(第2項)
前記特性可変アンテナにおける各無給電素子は、位相可変部を備え、前記制御信号は、前記位相可変部を制御する
第1項に記載の受信装置。
(第3項)
前記位相可変部は電圧制御型の位相可変部であり、前記制御信号はアナログ信号である
第2項に記載の受信装置。
(第4項)
アンテナ制御部と特性可変アンテナとを備える受信装置が実行する受信方法であって、
前記アンテナ制御部から出力される制御信号に基づいて、複数のアンテナから送信されたMIMO信号を、アンテナ特性を切り替えながら受信するステップと、
前記特性可変アンテナにより受信した受信信号に対して所定のサンプリング周期でサンプリングを行うステップと、
前記サンプリングにより得られた複数のアンテナ特性に対応する複数の信号から各信号を抽出するステップと、
前記抽出された信号に対してMIMO復調処理を実行するステップと、を備え、
前記特性可変アンテナは、複数の無給電素子を備え、前記アンテナ制御部は、制御信号を、時間差をつけて各無給電素子へ出力する
受信方法。
【0068】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 無線端末局
2 無線基地局
10 アンテナ
11 RF部
12 D/A変換部
13 MIMO信号生成部
20 特性可変アンテナ
21 RF部
22 A/D変換部
23 アンテナ制御部
24 信号分割部
25 MIMO信号復調部
101 プロセッサ
102 メモリ
103 補助記憶装置
104 入出力装置
201 アンテナ素子
202 無給電素子
203 可変移相器
204 結合部
205 ダイオードスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12