(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】3D点群の座標を変換する装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20241001BHJP
G01B 11/03 20060101ALI20241001BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20241001BHJP
【FI】
G01C15/00 103A
G01C15/00 104Z
G01B11/03 Z
G01S17/89
(21)【出願番号】P 2022579259
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2021004279
(87)【国際公開番号】W WO2022168260
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】櫻原 雄介
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅晶
(72)【発明者】
【氏名】清水 智弥
(72)【発明者】
【氏名】本田 奈月
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-101000(JP,A)
【文献】特開2007-004578(JP,A)
【文献】特開2016-206178(JP,A)
【文献】特開2020-020747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0132450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01B 11/00
G01B 21/00
G01S 17/89
G06T 7/521
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元空間に存在する被測定物が予め定められた第1の原点を中心とする相対座標の点群で表された第1の点群データ、及び前記第1の原点の絶対座標を取得し、前記第1の点群データの座標を、前記第1の原点の絶対座標を原点に有する相対座標に変換し、
前記被測定物と前記第1の原点とを結ぶ直線上に位置する第2の原点を中心とする相対座標の点群で表された第2の点群データ、及び前記第2の原点の絶対座標を取得し、前記第2の点群データの座標を、前記第2の原点の絶対座標を原点に有する相対座標に変換し、
前記第1の原点の絶対座標を原点に有する相対座標における前記被測定物の第1の基準点を、前記第1の点群データを用いて特定し、
前記第2の原点の絶対座標を原点に有する相対座標における前記被測定物の第2の基準点を、前記第2の点群データを用いて特定し、
前記第1の原点と前記第1の基準点との第1の距離、及び前記第2の原点と前記第2の基準点との第2の距離、を算出し、
前記第1の原点を中心とし前記第1の距離を半径とする第1の円と、前記第2の原点を中心とし前記第2の距離を半径とする第2の円と、の接点を、前記第1および第2の距離の少なくとも一方を変化させることにより特定し、
前記接点、前記第1の原点又は前記第2の原点、前記第1又は第2の基準点に基づいて、前記第1又は第2の点群データを絶対座標へと変換する回転角度を特定し、前記第1の点群データ又は前記第2の点群データを回転させ、前記第1の点群データ又は前記第2の点群データを絶対座標の点群に変換する、
3D点群の座標変換装置。
【請求項2】
前記第1の円及び前記第2の円の接点を特定する際に、前記第1の円と前記第2の円との2つの交点の距離が予め定めた閾値以内となるまで、前記第1および第2の距離の少なくとも一方を変化させる、
請求項1に記載の3D点群の座標変換装置。
【請求項3】
前記第1の円及び前記第2の円の接点を特定する際、前記第1の円と前記第2の円とが2つの交点を持つ場合、前記第1および第2の距離のうち大きい方を増加させる、または前記第1および第2の距離のうち小さい方を減少させる、またはその双方を実行する、
請求項1又は2に記載の3D点群の座標変換装置。
【請求項4】
前記第1の円及び前記第2の円の接点を特定する際、前記第1の円と前記第2の円とが接点を持たない場合、前記第1および第2の距離のうち大きい方を減少させる、または前記第1および第2の距離のうち小さい方を増加させる、またはその双方を実行する、
請求項1又は2に記載の3D点群の座標変換装置。
【請求項5】
前記被測定物は、通信システムに用いられる電柱であり、
点群データから作成した電柱の三次元モデルを用いて、前記被測定物の前記第1の基準点及び前記第2の基準点を特定する、
請求項1から4のいずれかに記載の3D点群の座標変換装置。
【請求項6】
3次元空間に存在する被測定物が予め定められた第1の原点を中心とする相対座標の点群で表された第1の点群データ、及び前記第1の原点の絶対座標を取得し、前記第1の点群データの座標を、前記第1の原点の絶対座標を原点に有する相対座標に変換し、
前記被測定物と前記第1の原点とを結ぶ直線上に位置する第2の原点を中心とする相対座標の点群で表された第2の点群データ、及び前記第2の原点の絶対座標を取得し、前記第2の点群データの座標を、前記第2の原点の絶対座標を原点に有する相対座標に変換し、
前記第1の原点の絶対座標を原点に有する相対座標における前記被測定物の第1の基準点を、前記第1の点群データを用いて特定し、
前記第2の原点の絶対座標を原点に有する相対座標における前記被測定物の第2の基準点を、前記第2の点群データを用いて特定し、
前記第1の原点と前記第1の基準点との第1の距離、及び前記第2の原点と前記第2の基準点との第2の距離、を算出し、
前記第1の原点を中心とし前記第1の距離を半径とする第1の円と、前記第2の原点を中心とし前記第2の距離を半径とする第2の円と、の接点を、前記第1および第2の距離の少なくとも一方を変化させることにより特定し、
前記接点、前記第1の原点又は前記第2の原点、前記第1又は第2の基準点の3点に基づいて、前記第1又は第2の点群データを絶対座標へと変換する回転角度を特定し、前記第1の点群データ又は前記第2の点群データを回転させ、前記第1の点群データ又は前記第2の点群データを絶対座標の点群に変換する、
3D点群の座標変換方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の3D点群の座標変換装置に備わる各演算部としてコンピュータを実現させるための、3D点群の座標変換プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3D点群の座標変換装置、座標変換方法および座標変換プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号、光信号による通信サービスは、通信局からビルやお客様宅まで物理的設備により繋がれサービス提供がなされている。安心、安全、安定したサービス提供の実現には設備の保守・維持管理が必要不可欠であり、これまでは現場作業者が実地に赴き目視にて設備状態を個々に確認し、点検を行ってきた。近年、MMS(Mobile Mapping System)を用いた電柱劣化判定技術が開発され、効率的な電柱設備診断が実現されてきている(非特許文献1)。当該技術は、検査車両に3次元レーザスキャナ(3次元レーザ測量機)、前方カメラ、全方位カメラ、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信機、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)、オドメータ(Odometer:走行距離計)を搭載し、走行中に3次元のレーザスキャンと画像撮影をすることで、構造物の3次元測量を面的に行い、反射強度と絶対座標を持つ3D点群データを取得する。MMSは道路沿いの複数の電柱を一括診断する際に、3D点群データを取得する有効な手段である。
【0003】
一方で、被測定物が電柱1本である場合などの、スポットで3D点群データを取得する手段として固定式の3次元レーザスキャナがある。地面に三脚等の固定台を固定し、固定台上に前記3次元レーザスキャナを設置して測定する。当該3次元レーザスキャナは0°~360°の間を地面に対して水平方向、垂直方向の両方向に回転しながらレーザを照射することで、構造物の3次元測量を行い、反射強度と相対座標を持つ3D点群データを取得する。当該3D点群データは原点を中心とした相対座標で構成されている。取得された3D点群データをMMS等絶対座標で取得されたデータへ重畳するには、相対座標で取得した3D点群データを絶対座標へ変換する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】M. Inoue, 3D modeling of communication cables from a laser point cloud using a rule-based approach and machine learning, IWCS 2019.10.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
相対座標の3D点群データから絶対座標の3D点群データへの変換は、2点の測定点において被測定物を含む3次元レーザスキャナの測定を行い、測定点から被測定物までの距離をそれぞれ半径とした円の接点を求め、当該接点の絶対座標に整合するよう相対座標を回転させることが考えられる。しかしながら、3次元レーザスキャナから被測定物である電柱までの距離測定に誤差が生じている場合、接点が1つに求まらず、相対座標の点群を絶対座標へ変換できない。
【0006】
そこで、本開示は、3次元レーザスキャナの距離測定に誤差が生じている場合であっても、3次元レーザスキャナで取得した相対座標の点群データを絶対座標の点群データに重畳可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、被測定物を通る直線上の2点の測定点において被測定物を含む3次元レーザスキャナの測定を行い、測定点から被測定物までの距離をそれぞれ半径とした円を求め、求められた2つの円が一点で接しない場合に、少なくとも一方の円の半径を補正することにより、当該2つの円の接点を特定する。
【0008】
本開示の座標変換装置及び座標変換方法は、
3次元空間に存在する被測定物が予め定められた第1の原点を中心とする相対座標の点群で表された第1の点群データ、及び前記第1の原点の絶対座標を取得し、前記第1の点群データの座標を、前記第1の原点の絶対座標を原点に有する相対座標に変換し、
前記被測定物と前記第1の原点とを結ぶ直線上に位置する第2の原点を中心とする相対座標の点群で表された第2の点群データ、及び前記第2の原点の絶対座標を取得し、前記第2の点群データの座標を、前記第2の原点の絶対座標を原点に有する相対座標に変換し、
前記第1の原点の絶対座標を原点に有する相対座標における前記被測定物の第1の基準点を、前記第1の点群データを用いて特定し、
前記第2の原点の絶対座標を原点に有する相対座標における前記被測定物の第2の基準点を、前記第2の点群データを用いて特定し、
前記第1の原点と前記第1の基準点との第1の距離、及び前記第2の原点と前記第2の基準点との第2の距離、を算出し、
前記第1の原点を中心とし前記第1の距離を半径とする第1の円と、前記第2の原点を中心とし前記第2の距離を半径とする第2の円と、の接点を、前記第1および第2の距離の少なくとも一方を変化させることにより特定し、
前記接点、前記第1の原点又は前記第2の原点、前記第1又は第2の基準点に基づいて、前記第1又は第2の点群データを絶対座標へと変換する回転角度を特定し、前記第1の点群データ又は前記第2の点群データを回転させ、前記第1の点群データ又は前記第2の点群データを絶対座標の点群に変換する。
【0009】
具体的には、本開示の座標変換プログラムは、本開示に係る装置に備わる各機能部としてコンピュータを実現させるためのプログラムであり、本開示に係る装置が実行する通信方法に備わる各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、3次元レーザスキャナの距離測定に誤差が生じている場合であっても、3次元レーザスキャナで取得した相対座標の点群データを絶対座標の点群データに重畳可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】一般的な2つの円が交点を持つ条件、接点を持つ条件及び交点がない条件、の3つの条件を示し、交点及び接点の座標の導出を説明する図である。
【
図4】理想的な直線上で距離の異なる2つの原点から取得した点群に含まれる被測定物の点群から被測定物との間の距離を抽出し、原点と被測定物との間の距離を半径とする2つの円から理論的な被測定物中心絶対座標の演算を説明する図である。
【
図5A】直線上で距離の異なる2つの原点から取得した点群に含まれる被測定物の点群から被測定物との間の距離を抽出し、原点と被測定物との間の距離を半径とする2つの円が交わり、交点を2つ持っている場合、測定により算出されたパラメータを調整し、接点を求め、被測定物中心絶対座標の演算も説明する図である。
【
図5B】直線上で距離の異なる2つの原点から取得した点群に含まれる被測定物の点群から被測定物との間の距離を抽出し、原点と被測定物との間の距離を半径とする2つの円が交わり、交点を2つ持っている場合、測定により算出されたパラメータを調整し、接点を求め、被測定物中心絶対座標の演算も説明する図である。
【
図6A】直線上で距離の異なる2つの原点から取得した点群に含まれる被測定物の点群から被測定物との間の距離を抽出し、原点と被測定物との間の距離を半径とする2つの円が交わらず、接点を持たない場合、測定により算出されたパラメータを調整し接点を求め、被測定物中心絶対座標の演算も説明する図である。
【
図6B】直線上で距離の異なる2つの原点から取得した点群に含まれる被測定物の点群から被測定物との間の距離を抽出し、原点と被測定物との間の距離を半径とする2つの円が交わらず、接点を持たない場合、測定により算出されたパラメータを調整し接点を求め、被測定物中心絶対座標の演算も説明する図である。
【
図7】直線上で距離の異なる2つの原点から取得した点群に含まれる被測定物の点群から測定物との間の距離を抽出し、原点と被測定物との間の距離及び2つの原点座標の間の距離を用いて、原点と被測定物との間の距離の値を調節して被測定物中心絶対座標の演算を説明する図である。
【
図8】直線上で距離の異なる2つの原点から取得した点群に含まれる被測定物の点群から測定物との間の距離を抽出し、原点と被測定物との間の距離を半径とする2つの円の交点のx座標、y座標の間の距離を用いて、原点と被測定物との間の距離の値を調節して被測定物中心絶対座標の演算を説明する図である。
【
図9】直線上で距離の異なる2つの原点から取得した点群に含まれる被測定物の点群から測定物との間の距離を抽出し、原点と被測定物との間の距離を半径とする2つの円の交点間の距離を用いて、原点と被測定物との間の距離の値を調節して被測定物中心絶対座標の演算を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0013】
本開示に関わる実施形態例を以下に説明する。第1図は、本開示のシステム構成例である。本開示のシステムは、固定式3次元レーザスキャナを用いて取得した相対座標の点群データを絶対座標へ変換する座標変換装置100を備える。ここで、11:三脚に固定した3次元レーザスキャナ、12:11の相対座標原点、13:GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)測量器、14:11の絶対座標原点、15:第1の測定位置、11’:三脚に固定した3次元レーザスキャナ、12’:11’の相対座標原点、13’:GNSS測量器、14’:11’の絶対座標原点、15’:第2の測定位置、16:被測定物、17:被測定物の相対中心座標、18:被測定物の絶対中心座標、111及び112:記憶部、である。
【0014】
本開示のシステムは、被測定物16を通る直線上の2点の測定点において、3D点群データとしてデジタル化をねらう被測定物16を計測範囲として含め、3次元レーザスキャナの測定を行う。ここで、被測定物16は、通信システムに用いられる任意の構造物であり、例えば電柱である。3次元レーザスキャナ11は、3次元レーザ測量機であり、3次元空間に存在する被測定物16が点群で表された点群データを取得する。ここで、3次元レーザスキャナ11が水平方向に回転する場合、3次元レーザスキャナ11の設置位置を原点とした相対座標の点群データが取得される。
【0015】
本実施形態では、三脚に固定した3次元レーザスキャナ11が、第1の測定位置15において、相対座標原点12を原点とした相対座標の点群データを取得し、記憶部111に格納する。三脚に固定した3次元レーザスキャナ11’が、第2の測定位置15’において、相対座標原点12’を原点とした相対座標の点群データを取得し、記憶部112に格納する。相対座標原点12及び12’は被測定物16を通る直線上に位置する。第1の測定位置15において取得した相対座標の点群データを第1の点群データと称する。第2の測定位置15’において取得した相対座標の点群データを第2の点群データと称する。
【0016】
また、本開示のシステムは、2点の測定点において取得する点群データの原点の絶対座標を測定する。例えば、第1の測定位置15において、GNSS測量器13が3次元レーザスキャナ11の原点絶対座標14を測定し、記憶部111に格納する。第2の測定位置15’において、GNSS測量器13’が3次元レーザスキャナ11’の原点絶対座標14’を測定し、記憶部112に格納する。第1の測定位置15において測定した原点絶対座標14を第1の原点と称する。第2の測定位置15’において測定した原点絶対座標14’を第2の原点と称する。
【0017】
座標変換装置100は、記憶部111、112及び演算処理部113を備える。記憶部111は、3次元レーザスキャナ11により取得された点群データ(相対座標)、及び原点絶対座標14を記憶する。記憶部112は、3次元レーザスキャナ11’により取得された点群データ(相対座標)、及び原点絶対座標14’を記憶する。
【0018】
第2図は、座標変換装置100のブロック構成図の一例を示す。演算処理部113は、3次元レーザスキャナ11を用いて測定された相対座標原点12とGNSS測量器13を用いて測定された原点絶対座標14から、原点座標変換処理部#1、被測定物中心座標演算部#1、円半径演算部#1での演算を行う。また、演算処理部113は、3次元レーザスキャナ11’を用いて測定された相対座標原点12’とGNSS測量器13’を用いて測定された原点絶対座標14’から、原点座標変換処理部#2、被測定物中心座標演算部#2、円半径演算部#2での演算を行う。その後、演算処理部113は、円接点(円交点)演算部及び座標回転演算部の演算により、3次元レーザスキャナにより取得された点群データとMMSにより取得された点群データを重ね合わせ、結果表示部で結果を出力する。
座標変換装置100は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0019】
原点座標変換処理部#1は、第1の点群データの座標を、前記第1の原点の絶対座標を原点に有する相対座標に変換する。具体的には、原点絶対座標14が中心となるように第1の点群データの点群全体を平行移動し、原点座標を変換する。ここで、原点座標変換後の第1の点群データは原点絶対座標14と同じ座標情報を示す。
被測定物中心座標演算部#1は、座標変換された第1の点群データを基に、第1の基準点である被測定物16の中心の絶対座標を特定する。ここで、本実施形態では、被測定物16の基準点が被測定物16の中心である例を示すが、被測定物16の基準点は被測定物16の中心に限らず、被測定物16の円周上の一点など、被測定物16の位置を特定しうる任意の基準点でありうる。
円半径演算部#1は、原点絶対座標14と被測定物16の中心の絶対座標との距離を算出する。この距離を第1の距離と称する。
【0020】
原点座標変換処理部#2、被測定物中心座標演算部#2、円半径演算部#2は、原点座標変換処理部#1、被測定物中心座標演算部#1、円半径演算部#1と同様の処理を実行する。これによって得られた被測定物16の中心の絶対座標を第2の基準点と称し、原点絶対座標14’と被測定物16’の中心の絶対座標との距離を第2の距離と称する。
【0021】
円接点(円交点)演算部は、原点絶対座標14を中心とし第1の距離を半径とする第1の円と、原点絶対座標14’を中心とし第2の距離を半径とする第2の円と、の接点を特定する。3次元レーザスキャナの距離測定に誤差が生じていない場合、これらの2つの円は接する。しかし、3次元レーザスキャナの距離測定に誤差が生じている場合、これらの2つの円が2つの交点を有する、又は2つの円は交点を持たない。そのような場合、円接点(円交点)演算部は、第1の距離及び第2の距離の少なくとも一方を補正し、2つの円の接点を特定する。
【0022】
座標回転演算部は、特定した接点又は交点の絶対座標、原点絶対座標14又は14’、被測定物16又は16’の中心の絶対座標の3点に基づいて、前記第1又は第2の点群データを絶対座標へと変換する回転角度を特定し、前記第1の点群データ及び前記第2の点群データを回転させる。
【0023】
第3図は、一般的な、2つの円が交点を持つ条件、接点を持つ条件、交点を持たない条件、の3つの条件を示し、交点及び接点の座標の導出を説明する図である。円201は中心座標21(p
1、q
1)、半径22(s)の円であり、円202は中心座標23(p
2、q
2)で、半径24(t)の円である。この2つの円は以下の式で表される。
【数1】
【0024】
この2つの式を連立方程式とすると、以下の式が得られる。
【数3】
この式は、交点を通る直線の式を表している。
【0025】
ここで、
【数4】
とすると、式(3)は以下の式で表される。
【数7】
【0026】
この式(7)を式(1)に代入して、xに関する2次方程式、yに関する2次方程式を得る。
【数8】
となる。この2式の解が交点及び接点のx座標、y座標となる。
【0027】
式(8)より、判別式Dは、以下で表される。
【数10】
この判別式Dを用いて、2つの円が交点を持つ場合(解が2つある場合)、接点を持つ場合(解が1つの場合)、交点を持たない場合(解がない場合)に分けて、説明していく。
【0028】
(i)2つの円が交点を持つ場合(解が2つある場合)
このとき、判別式Dの条件は以下となる。
【数11】
式(8)、(9)から、2次方程式の解の公式を用いて、解を求めると以下の解が得られる。
【数12】
【0029】
(ii)2つの円が接点を持つ場合(解が1つの場合)
このとき、判別式Dの条件は以下となる。
【数14】
式(8)、(9)から、2次方程式の解の公式を用いて、解を求めると以下の解が得られる。
【数15】
【0030】
(iii)2つの円が交点を持たない場合(解がない場合)
このとき、判別式Dの条件は以下となる。
【数17】
この条件が成立しているとき、式(8)、(9)を満たす解は存在しない。
【0031】
第4図は、理想的な直線上で距離の異なる2つの原点から取得した点群に含まれる被測定物16の点群から被測定物との間の距離を抽出し、原点と被測定物との間の距離を半径とする2つの円から理論的な被測定物中心絶対座標の演算を説明する図である。ここでは原点座標が異なる2つの点群データを用いる。2つの円の接点座標が被測定物の中心絶対座標になるように、原点座標34は被測定物16と原点座標31の直線延長上となるように配置される。まず、原点座標31を原点として取得された点群データから被測定物中心相対座標33を求める。被測定物中心相対座標33は被測定物16の最下面の中心座標(xcp1,ycp1,zcp1)である。被測定物中心相対座標33は点群データから三次元モデルを作成し、中心軸を抽出することで求める。ここでは被測定物16を電柱とし、説明する。
【0032】
当該点群データの3次元座標から円情報を抽出し、円モデルを縦方向に連結することにより電柱の3次元モデルを作成する。電柱以外の柱状物体の誤検出を避けるために予め柱長及び口径を指定する。当該指定範囲に当てはまる3次元モデルを検出対象の電柱とする。前記電柱モデルを構成する円モデルの中心座標を縦方向に3次近似曲線にて連結することにより中心軸を抽出する。当該中心軸の最下点を中心座標(x
cp1,y
cp1,z
cp1)、すなわち被測定物中心相対座標33となる。同様に、原点座標34を原点として取得された点群データから被測定物中心相対座標36を求める。原点座標31及び被測定物中心相対座標33から原点座標31と被測定物の間の距離32を算出し、当該距離32の半径を有しかつ原点座標31を中心とした円301、また、原点座標34及び被測定物中心相対座標36から原点座標34と被測定物の間の距離35を算出し、当該距離35の半径を有しかつ原点座標34を中心とした円302、を演算し、当該2つの円の交点から一意に被測定物中心絶対座標310を抽出する。当該2つの円は半径が異なり、内接することで交点は一意となる。円301、円302は第3図説明同様、それぞれ以下の式で表される。
【数18】
【0033】
ここで、原点座標31を(x
1,y
1)とし、距離32をr
1としている。同様に、原点座標34を(x
2,y
2)とし、距離35をr
2としている。この2つの方程式を連立方程式とし、接点を持つ条件として考えると、第3図(ii)の説明同様、以下の式が得られる。
【数20】
【0034】
当該接点座標、原点座標31、被測定物中心相対座標33から座標回転角度38(θ)を導出し、当該回転角度で第1の点群データを座標回転することで、絶対座標化した第1の点群データとすることができる。例えば、円301の中心座標(x
1,y
1)を原点座標(0,0)とみて、被測定物中心相対座標(x
cp1,y
cp1)と被測定物中心絶対座標310(x,y)が第一象限に存在するとき、以下の式で座標回転角度38(θ)を導出することができる。
【数25】
【0035】
ここで、θ1は円301の中心座標(x1,y1)からみた被測定物中心相対座標(xcp1,ycp1)の角度であり、θ2は円301の中心座標(x1,y1)からみた被測定物中心絶対座標310(x,y)の角度である。導出された当該角度θを用いて、相対座標の第1の点群データを座標回転することで、第1の点群データを絶対座標化し、MMSにより取得される点群データに重畳することができる。第2の点群データについても同様である。
【0036】
第5A図及び第5B図は、2つの円401及び402が内接しておらず、交点を2つ持っている場合、測定により算出されたパラメータを調整し接点を求め、被測定物中心絶対座標310’の演算も説明する図である。円401は、円半径演算部が原点座標31及び被測定物中心相対座標42から原点座標31と被測定物の間の距離41(r
3)を算出することで得られた、当該距離を半径とした原点座標31を中心とした円である。円402は、原点座標34及び被測定物中心相対座標44から原点座標34と被測定物の間の距離43(r
4)を算出することで得られた、当該距離を半径とした原点座標34を中心とした円である。以下、どのように調整するパラメータを特定し、調整することで被測定物中心絶対座標310’を算出できるかを数学的に説明していく。当該2つの円の交点をそれぞれ、交点座標411、交点座標412とする。円401、円402は第3図説明同様、それぞれ以下の式で表される。
【数28】
【0037】
ここで、原点座標31を(x
1,y
1)とし、距離41をr
3としている。同様に、原点座標34を(x
2,y
2)とし、距離43をr
4としている。この2つの方程式を連立方程式とし、交点を持つ条件として考えると、第3図(i)の説明同様、以下の式が得られる。
【数30】
【0038】
当該交点座標411、交点座標412は、第3図(i)の説明の通り、条件式(11)が成立しているとき存在する。精度よく被測定物の中心絶対座標を導出するためには、2つの円の接点から求めることが望ましい。すなわち、我々が解決したい課題は、判別式
【数31】
の条件のときに、
【数32】
の条件となる値を特定することである。
【0039】
第5B図を基に特定方法を述べる。式(30)、(31)に含まれるr
3,r
4の値を調整することでこの条件を実現する。例えば、2つの円401及び402が1つの接点を有するまでr
3及びr
4の少なくとも一方を変化させ、2つの円401及び402の接点を求める。x
1,x
2,y
1,y
2はGNSS測量器から取得される値であり、被測定物までの距離計測に比べ高精度なため調整は行わない。r
3<r
4の半径を有する2つの円に交点が2つあるとき、D>0が成立している。そのため、r
3を減少させ、r
4を増加させることで、式(14)の条件を実現することができる。r
3,r
4の値は任意の値で調節することが可能で、r
3のみ、r
4のみ、及びr
3,r
4の双方を同時に調整することが可能である。以降の説明ではr
3,r
4の値を同量変化させた場合で説明を行う。補正後のr
3をr
3’(図においては原点座標31と被測定物の間の補正後の距離を符号41’と表記する。)、r
4をr
4’(図においては原点座標34と被測定物の間の補正後の距離を43’と表記する。)とすると、補正後の接点絶対座標(被測定物中心絶対座標)310’(x’,y’)は第3図(ii)の説明同様以下の式で表される。
【数33】
【0040】
実計算においては、無段階でr3,r4の値を調整することは現実的ではないため、ある一定の幅を指定して調整する必要がある。例えば、原点座標31と被測定物の間の距離41及び原点座標34と被測定物の間の距離43の値の小数点以下の桁数が6桁であるとき、1.0×10-7を調節幅とすることで、有効数字を考慮した調節が可能である。
【0041】
また2つの円401及び402が1つの接点を有するまでr3及びr4の少なくとも一方を変化させることに代え、判別式Dを閾値以下に近づけた後、2つの交点を単純平均した中点を被測定物中心絶対座標310’としてもよい。このとき、原点座標31(x1,y1)及び原点座標34(x2,y2)が、被測定物16を通る直線上からずれないように調整する必要がある。
【0042】
第6A図及び第6B図は、2つの円501及び502が内接しておらず、測定により算出されたパラメータを調整し接点を求め、被測定物中心絶対座標310’の演算も説明する図である。円501は、円半径演算部が原点座標31及び被測定物中心相対座標52から原点座標31と被測定物の間の距離51(r
5)を算出することで得られた、当該距離を半径とした原点座標を中心とした円である。円502は、円半径演算部が原点座標34及び被測定物中心相対座標54から原点座標34と被測定物の間の距離53(r
6)を算出することで得られた、当該距離を半径とした原点座標34を中心とした円である。以下、第5A図及び第5B図同様、どのように調整するパラメータを特定し、調整することで被測定物中心絶対座標310’を算出できるかを数学的に説明していく。円501、円502は第3図説明同様、それぞれ以下の式で表される。
【数36】
【0043】
ここで、原点座標31を(x
1.y
1)とし、距離51をr
5としている。同様に、原点座標34を(x
2.y
2)とし、距離53をr
6としている。接点を持たない場合、第3図(iii)の説明同様、判別式Dの条件が以下の場合である。
【数38】
精度よく被測定物の中心絶対座標を導出するためには、2つの円の接点から求めることが望ましい。すなわち、我々が解決したい課題は、D<0(接点が存在しない)の場合に、
【数39】
の条件となる値を特定することである。
【0044】
第6B図を基に特定方法を述べる。式(38)に含まれるr
5,r
6の値を調整することでこの条件を実現する。例えば、2つの円501及び502が1つの接点を有するまでr
5及びr
6の少なくとも一方を変化させ、2つの円501及び502の接点を求める。r
5<r
6の半径を有する2つの円に接点が存在しないとき、D<0が成立している。そのため、r
5を増加させ、r
6を減少させることで、式(14)の条件を実現することができる。r
5,r
6の値は任意の値で調節することが可能で、r
5のみ、r
6のみ、及びr
5,r
6の双方を同時に調整することが可能である。以降の説明ではr
5,r
6の値を同量変化させた場合で説明を行う。補正後のr
5をr
5’(原点座標31と被測定物の間の補正後距離51’)、r
6をr
6’(原点座標34と被測定物の間の補正後距離53’)とすると、補正後の接点絶対座標(被測定物中心絶対座標)310’(x’,y’)は以下の式で表される。
【数40】
【0045】
実計算においては、無段階でr5,r6の値を調整することは現実的ではないため、ある一定の幅を指定して調整する必要がある。例えば、原点座標31と被測定物の間の距離51及び原点座標34と被測定物の間の距離53の値の小数点以下の桁数が6桁であるとき、1.0×10-7を調節幅とすることで、有効数字を考慮した調節が可能である。
【0046】
第7図は、2つの円が内接しておらず、交点を持つ、もしくは接点を持たない場合に、原点座標31及び被測定物中心相対座標62から求めた原点座標31と被測定物の間の距離61(r
7)と原点座標31と原点座標34の間の距離65を合計した距離66と、原点座標34及び被測定物中心相対座標64から求めた原点座標34と被測定物の間の距離63(r
8)の値を比較し、2つの円の半径を調節して被測定物中心絶対座標310’を一意の点とする演算を説明する図である。2つの円とは、原点座標31を中心とし、原点座標31と被測定物の間の距離61(r
7)を半径とした円601と、原点座標34を中心座標とし、原点座標34と被測定物の間の距離63(r
8)を半径とする円602である。ここで、2つの円の方程式は第3図の説明同様、それぞれ以下の式で表される。
【数43】
【0047】
したがって、r
8>r
7の場合、距離66は以下の式で表される。
【数45】
【0048】
r
7<r
8の半径を有する2つの円が内接しているとき、距離66と距離63の間には以下の条件が成立する。
【数46】
【0049】
精度よく被測定物の中心絶対座標を導出するためには、2つの円の接点から求めることが望ましい。すなわち、条件式(46)が成立しているときである。交点を持つ場合、接点を持たない場合の2つの場合に分けて条件式(46)を満たす半径の導出方法を述べる。
【0050】
(i)交点を持つ場合
r
7<r
8の半径を有する2つの円が交点を持つ場合、以下の条件が成立している。
【数47】
したがって、原点座標31と被測定物の間の距離61であるr
7を減少させ、原点座標34と被測定物の間の距離63であるr
8を増加させることで、2つの円が内接する条件となる。r
7,r
8の値は任意の値で調節することが可能で、r
7のみ、r
8のみ、及びr
7,r
8を同時に調整することが可能である。
【0051】
(ii)接点を持たない場合
r
7<r
8の半径を有する2つの円が接点を持たない場合、以下の条件が成立している。
【数48】
したがって、原点座標31と被測定物の間の距離61であるr
7を増加させ、原点座標34と被測定物の間の距離63であるr
8を減少させることで、2つの円が内接する条件となる。r
7,r
8の値は任意の値で調節することが可能で、r
7のみ、r
8のみ、及びr
7,r
8を同時に調整することが可能である。
【0052】
実計算では条件式(46)を実現することは現実的ではないため、(i)の条件の場合、閾値を設け、距離66の値と距離63の値を閾値以下に近づけた後、交点を単純平均した中点を被測定物中心絶対座標310’とする。(ii)の条件の場合、交点を持つ条件までr7,r8を調節した後、(i)と同様の処理をする必要がある。
【0053】
第8図は、2つの円が内接しておらず、交点を持つ場合に、交点座標711(x
7’,y
7’)、交点座標712(x
7”,y
7”)のそれぞれのx座標の間の距離71、y座標の間の距離72から、2つの円の半径を調節して被測定物中心絶対座標310’を一意の点とする演算を説明する図である。2つの円とは、第7図で示した円601、円602である。2つの円が内接しているとき、距離71、距離72には以下の条件が成立する。
【数49】
【0054】
交点のx座標、y座標は第3図(i)の説明同様、以下の式で表される。
【数50】
【0055】
精度よく被測定物の中心絶対座標を導出するためには、2つの円の接点から求めることが望ましい。すなわち、条件式(49)が成立するときであるが、第3図の説明から、2つの円の連立方程式から導出できる判別式Dの条件で表すと、以下の条件が成立するときである。
【数53】
【0056】
第7図と同様、交点を持つ場合、接点を持たない場合の2つの場合に分けて条件式(49)を満たす半径の導出方法を述べる。
(i)交点を持つ場合
r
7<r
8の半径を有する2つの円が交点を持つ場合、第3図(i)の説明同様、式(53)で示した判別式Dの条件が以下の場合である。
【数54】
原点座標31と被測定物の間の距離61であるr
7を減少させ、原点座標34と被測定物の間の距離63であるr
8を増加させ、条件式(49)が成立するとき、2つの円が内接する条件となる。r
7,r
8の値は任意の値で調節することが可能で、r
7のみ、r
8のみ、及びr
7,r
8の双方を同時に調整することが可能である。
【0057】
(ii)接点を持たない場合
r
7<r
8の半径を有する2つの円が接点を持たない場合、第3図(iii)の説明同様、式(53)で示した判別式Dの条件が以下の場合である。
【数55】
原点座標31と被測定物の間の距離61であるr
7を増加させ、原点座標34と被測定物の間の距離63であるr
8を減少させ、条件式(49)が成立するとき、2つの円が内接する条件となる。r
7,r
8の値は任意の値で調節することが可能で、r
7のみ、r
8のみ、及びr
7,r
8の双方を同時に調整することが可能である。
【0058】
実計算では条件式(49)を実現することは現実的ではないため、(i)の条件の場合、閾値を設け、交点のx座標差である距離71、及びy座標差である距離72を閾値以下の0に近づけた後、交点座標711及び712を単純平均した中点を被測定物中心絶対座標310’とする。(ii)の条件の場合、交点を持つ条件までr7,r8を調節した後、(i)と同様の処理をする必要がある。
【0059】
第9図は、2つの円が内接しておらず、交点を持つ場合に、交点座標711(x
7’,y
7’)、交点座標712(x
7”,y
7”)の間の距離81から、2つの円の半径を調節して被測定物中心絶対座標310’を一意の点とする演算を説明する図である。2つの円とは、第7図で示した円601、円602である。2つの円が内接しているとき、距離81には以下の条件が成立する。
【数56】
【0060】
交点のx座標、y座標は第8図同様に第3図(i)の説明から、5つの式(22)、(23)、(50)、(51)、(52)で表される。精度よく被測定物の中心絶対座標を導出するためには、2つの円の接点から求めることが望ましい。すなわち条件式(56)が成立するときであるが、第8図同様に第3図の説明から、2つの円の連立方程式から導出できる判別式Dの条件式(53)が成立するときである。第8図と同様、交点を持つ場合、接点を持たない場合の2つの場合に分けて条件式(56)を満たす半径の導出方法を述べる。
【0061】
(i)交点を持つ場合
r
7<r
8の半径を有する2つの円が交点を持つ場合、第3図(i)の説明同様、式(50)で示した判別式Dの条件が以下の場合である。
【数57】
原点座標31と被測定物の間の距離61であるr
7を減少させ、原点座標34と被測定物の間の距離63であるr
8を増加させ、条件式(56)が成立するとき、2つの円が内接する条件となる。r
7,r
8の値は任意の値で調節することが可能で、r
7のみ、r
8のみ、及びr
7,r
8の双方を同時に調整することが可能である。
【0062】
(ii)接点を持たない場合
r
7<r
8の半径を有する2つの円が接点を持たない場合、第3図(iii)の説明同様、式(53)で示した判別式Dの条件が以下の場合である。
【数58】
原点座標31と被測定物の間の距離61であるr
7を増加させ、原点座標34と被測定物の間の距離63であるr
8を減少させ、条件式(56)が成立するとき、2つの円が内接する条件となる。r
7,r
8の値は任意の値で調節することが可能で、r
7のみ、r
8のみ、及びr
7,r
8の双方を同時に調整することが可能である。
【0063】
実計算では条件式(56)を実現することは現実的ではないため、(i)の条件の場合、2つの交点の距離81に閾値を設け、距離81を閾値以内の0に近づけた後、交点座標711及び712を単純平均した中点を被測定物中心絶対座標310’とする。(ii)の条件の場合、交点を持つ条件までr7,r8を調節した後、(i)と同様の処理をする必要がある。
【0064】
(開示の効果)
本開示による3D点群の座標変換装置、座標変換方法および座標変換プログラムは、先願に記載の発明に対して以下の優位性を持つと考えられる。
先願に記載の発明では、2点の固定式3次元レーザスキャナの原点絶対座標及び2点の原点座標からの被測定物の間の距離を半径とする2つの円は内接し、接点は理論的に1つとしているが、実際には距離測定に誤差が生じているため、2つの交点が存在、もしくは接点が存在しない条件となってしまい、固定式3次元レーザスキャナにより取得した相対座標の点群を絶対座標化した際の座標精度に影響を及ぼしている。これに対し、本開示は、2つの交点が存在する場合、もしくは接点が存在しない場合の2つに場合分けを行い、演算処理を行うことで自動的に、相対座標の点群を絶対座標に正確に変換することができる。また、絶対座標へ変換することによりMMS等で取得した絶対座標のデータへ正しく重畳し、位置情報を三次元空間上に表示することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
11、11’:3次元レーザスキャナ
12、12’:3次元レーザスキャナの相対座標原点
13、13’:GNSS測量器
14、14’:3次元レーザスキャナの絶対座標原点
15、:第1の測定位置
15’:第2の測定位置
16:被測定物
17:被測定物の相対中心座標
18:被測定物の絶対中心座標
100:座標変換装置
111、112:記憶部
113:演算処理部