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特許7563508混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 49/09 20170101AFI20241001BHJP
   B01J 49/18 20170101ALI20241001BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20241001BHJP
   B01J 49/57 20170101ALI20241001BHJP
【FI】
B01J49/09
B01J49/18
B01J49/53
B01J49/57
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023020959
(22)【出願日】2023-02-14
(65)【公開番号】P2024115323
(43)【公開日】2024-08-26
【審査請求日】2024-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】宮地 みどり
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-028738(JP,A)
【文献】特開昭55-124548(JP,A)
【文献】特開平05-057201(JP,A)
【文献】特開昭55-094650(JP,A)
【文献】特表2018-513019(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0129993(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 49/00-49/90
B01J 39/00-39/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂からニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを分離する方法であって、
混合イオン交換樹脂の投入部と、上下方向の途中に設けられたアニオン交換樹脂抜出部と、該アニオン交換樹脂抜出部よりも下方に設けられたカチオン交換樹脂抜出部と、底部に設けられたエア及び分離用水の注入部とを有する略筒状の混合イオン交換樹脂の分離塔に混合イオン交換樹脂投入し、前記分離塔内にエア及び分離用水の注入部から分離用水を上向流で通水して前記混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離する分離工程と、
前記アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離界面より上側のアニオン交換樹脂を前記アニオン交換樹脂抜出部から抜き出して高度分離塔に移送するアニオン交換樹脂移送工程及びアニオン交換樹脂の高度分離工程と、
残余のカチオン交換樹脂をカチオン交換樹脂抜出部から抜き出して移送するカチオン交換樹脂移送工程と、
前記高度分離工程後のアニオン交換樹脂の再生工程及び前記カチオン交換樹脂移送工程後のカチオン交換樹脂の再生工程とを有し、
前記アニオン交換樹脂移送工程において、移送するアニオン交換樹脂を該アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との中間比重の溶液に浸漬した状態で高度分離塔に移送する、混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法。
【請求項2】
前記アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との中間比重の溶液が、NaOH溶液である、請求項1に記載の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法。
【請求項3】
前記アニオン交換樹脂移送工程において、移送するアニオン交換樹脂を該アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との中間比重の溶液に浸漬した状態で高度分離塔に移送する際に、アニオン交換樹脂とNaOH溶液を混合槽に入れて混合した後、高度分離塔に移送する、請求項2に記載の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法。
【請求項4】
前記アニオン交換樹脂及び/又はカチオン交換樹脂が、ポーラス型イオン交換樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造装置などに用いられる非再生式イオン交換装置や混床式イオン交換装置などで使用したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を分離して再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純水製造装置では原水中の不純物を除去して水の清浄度を高めているが、イオン性の不純物、すなわちアニオン性の不純物とカチオン性の不純物を除去するためにアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを混合した混合イオン交換樹脂を充填した混床式イオン交換装置が汎用的に用いられている。この混床式イオン交換装置では、イオン交換樹脂はイオン交換容量に相当する量のイオンを交換すると、それ以上のイオン性不純物は除去できずに破過する。そこで、ある程度の処理水を処理したら、この混床式イオン交換装置からイオン交換樹脂をそれぞれ回収して、カチオン交換樹脂再生塔、アニオン交換樹脂再生塔でそれぞれ塩酸や苛性ソーダなどにより再生して再利用している。この際、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とは、上向流で通水してアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の比重差による沈降速度の違いを利用して分離するのが一般的である。
【0003】
この混合イオン交換樹脂の分離塔の一例を図5に示す。図5において、混合イオン交換樹脂の分離塔21は、円筒形の分離塔本体21Aの底部に注排水口22が設けられているとともに、複数の吐出ノズル23Aを備えた吐水部としての給水管23が設けられていて、頂部には排水口24が形成されている。この分離塔本体21Aの吐出ノズル23Aの下側には集水板25が配置されている。そして、分離塔21内の上下方向の中間付近にはアニオン交換樹脂抜出部としてのアニオン交換樹脂抜出配管26が設けられているとともに、このアニオン交換樹脂抜出配管26の下側で給水管23よりわずかに上側にカチオン交換樹脂抜出配管27が設けられている。また、分離塔21の側面にはのぞき窓28が形成されている。なお、29は分離塔21の側面上側に設けられた使用済の混合イオン交換樹脂の投入口である。
【0004】
このような混合イオン交換樹脂の分離塔21において、分離塔21内に使用済の混合イオン交換樹脂を投入し、続いて4重量%程度のNaOH溶液(以下、単にNaOH溶液とする)を通液し、所定時間放置したら、注排水口22から純水を注入して排水口24から分離塔内のNaOH溶液を押し出し、洗浄を行う。そして、分離塔21内に所定量の分離用水(純水)が充填された状態とする。この際、分離用水の水面が混合イオン交換樹脂の上面より上位、特に500mm以下程度上位となるようにする。
【0005】
次に注排水口24からエアを分離塔内に注入し、混合イオン交換樹脂をバブリングし、コロイド状に絡みついた樹脂粒子をほぐした後バブリングングを停止し、混合イオン交換樹脂を集水板25上に沈降させる。この際、比重の大きいカチオン交換樹脂が先に沈降し、比重の小さいアニオン交換樹脂が遅れて沈降する。続いて、逆洗に備えて、分離塔21内が満水となるように注排水口22から純水(分離用水)を導入する。
【0006】
この満水の状態で吐出ノズル23Aから純水を吐出して上向流にて通水して、分離界面がアニオン交換樹脂抜出配管26の吸込口の下端となるようにのぞき窓28から目視により確認しながら調整する。そして、アニオン交換樹脂抜出配管26から吸引してアニオン交換樹脂をアニオン交換樹脂・水混相流として流出させて取り出す。このアニオン交換樹脂・水混相流は、水切りをした後、アニオン交換樹脂再生塔に移送してアニオン交換樹脂の再生処理を行う。
【0007】
このようにしてアニオン交換樹脂を抜き出した後は、吐出ノズル23Aから純水の吐出を継続しながらカチオン交換樹脂抜出配管27から吸引し、カチオン交換樹脂・水混相流として流出させて取り出す。このカチオン交換樹脂・水混相流は、水切りをした後カオン交換樹脂再生塔に移送してカチオン交換樹脂の再生処理を行う。このときカチオン交換樹脂は全部取り出さず、ある程度残存させることでアニオン交換樹脂の混入を防止する。
【0008】
しかしながら、上述したようなアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離再生方法では、両者の分離が不十分である、という問題点があった。特にカチオン交換樹脂は界面部を分離塔21内に残存させることで良好に分離することができるが、最初に抜き出すアニオン交換樹脂にカチオン交換樹脂が混入しやすい、という問題点があった。
【0009】
そこで、セプレックス法という高濃度のNaOH溶液を用いてアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を分離する方法が適用されている。このセプレックス法は、図6に示すようなプロセスで処理を行う。
【0010】
すなわち、前述した図5に示す分離塔21を用い、図6における分離工程でアニオン交換樹脂を抜き出したら、分離に用いた超純水とともにアニオン交換樹脂を微量に混入したカチオン交換樹脂の分離専用の高度分離塔(セプレックス塔)に移送する。このセプレックス塔に湿潤状態のアニオン交換樹脂の比重と湿潤状態のカチオン交換樹脂の比重の中間の比重のNaOH溶液を注液する。例えば、図7に示すようにポーラス型アニオン交換樹脂の湿潤時の比重が1.05g/mL、ポーラス型カチオン交換樹脂の湿潤時の比重が1.28g/mLの場合には、両者の中間の比重の16%NaOH溶液(比重1.18g/mL)を注入する。これにより、アニオン交換樹脂は浮遊しカチオン交換樹脂は沈殿するので、カチオン交換樹脂をセプレックス塔の下部より抜き出して除去する。そして、塔内に純水を供給して、NaOH溶液を押出洗浄した後、残ったアニオン交換樹脂を抜き出す(高度分離工程)。この抜き出したアニオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂再生塔に移送して定法によりアニオン交換樹脂の再生洗浄を行う。一方、分離塔における分離工程で分離したカチオン交換樹脂はカチオン交換樹脂再生塔に移送して定法によりカチオン交換樹脂の再生洗浄を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したようなセプレックス法により、アニオン交換樹脂に微量に混入したカチオン交換樹脂を分離することができる。しかしながら、図8に示すように分離塔31内で逆洗分離により分離したアニオン交換樹脂32とカチオン交換樹脂33を分離して、アニオン交換樹脂32をセプレックス塔34に移送する際には、分離水としての超純水36とともにアニオン交換樹脂32を、ポンプ35Aを備えた移送管35からセプレックス塔34に投入することになる(図8(a))。そして、図8(b)に示すようにアニオン交換樹脂32をセプレックス塔34に投入した後、セプレックス塔34の底部から超純水36を抜く。その後、図8(c)に示すようにセプレックス塔34の上部のNaOH溶液供給管37から、アニオン交換樹脂32とカチオン交換樹脂33の中間の比重のNaOH溶液38を注入し、アニオン交換樹脂32を浮上させる一方、カチオン交換樹脂33を沈降させる。
【0012】
しかしながら、図8(b)の後工程として、分離水としての超純水を抜く際にアニオン交換樹脂32が密になってしまい、その後NaOH溶液38を注入してアニオン交換樹脂32を浮上させても、アニオン交換樹脂内部に包含されている少量のカチオン交換樹脂33が沈降しない。このため、アニオン交換樹脂32中のカチオン交換樹脂33の混入率を非常に低いレベルにまで低減でいない、という問題点がある。特に半導体用途など高度な超純水の製造には、アニオン交換樹脂32中へのカチオン交換樹脂の混入率を極限まで低くする必要がある。
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、セプレックス法を利用して極めて低い精度までアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離が可能な混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的に鑑み、本発明は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂からニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とを分離する方法であって、混合イオン交換樹脂の投入部と、上下方向の途中に設けられたアニオン交換樹脂抜出部と、該アニオン交換樹脂抜出部よりも下方に設けられたカチオン交換樹脂抜出部と、底部に設けられたエア及び分離用水の注入部とを有する略筒状の混合イオン交換樹脂の分離塔に混合イオン交換樹脂投入し、前記分離塔内にエア及び分離用水の注入部から分離用水を上向流で通水して前記混合イオン交換樹脂を比重差を利用して分離する分離工程と、前記アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の分離界面より上側のアニオン交換樹脂を前記アニオン交換樹脂抜出部から抜き出して高度分離塔に移送するアニオン交換樹脂移送工程及びアニオン交換樹脂の高度分離工程と、残余のカチオン交換樹脂をカチオン交換樹脂抜出部から抜き出して移送するカチオン交換樹脂移送工程と、前記高度分離工程後のアニオン交換樹脂の再生工程及び前記カチオン交換樹脂移送工程後のカチオン交換樹脂の再生工程を有し、前記アニオン交換樹脂移送工程において、移送するアニオン交換樹脂を該アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との中間比重の溶液に浸漬した状態で高度分離塔に移送する、混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法を提供する(発明1)。
【0015】
かかる発明(発明1)によれば、アニオン交換樹脂移送工程において、抜き出したアニオン交換樹脂をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間比重の溶液に浸漬しているので、移送時にすでにアニオン交換樹脂が浮遊しカチオン交換樹脂が沈降しやすい状態となっているので、アニオン交換樹脂の高度分離工程でアニオン交換樹脂を分離した際のカチオン交換樹脂の混入率を低減することができる。
【0016】
上記発明(発明1)においては、前記アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との中間比重の溶液が、NaOH溶液であることが好ましい(発明2)。
【0017】
かかる発明(発明2)によれば、NaOH溶液は、湿潤時のアニオン交換樹脂の比重と湿潤時のカチオン交換樹脂の比重との両者の間の比重にすることが可能であるので、アニオン交換樹脂を浮遊させてアニオン交換樹脂中に混入しているカチオン交換樹脂を好適に分離することができる。
【0018】
上記発明(発明2)においては、前記アニオン交換樹脂移送工程において、移送するアニオン交換樹脂を該アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との中間比重の溶液に浸漬した状態で高度分離塔に移送する際に、アニオン交換樹脂とNaOH溶液を混合槽に入れて混合した後、高度分離塔に移送することが好ましい(発明3)。
【0019】
かかる発明(発明3)によれば、アニオン交換樹脂移送工程において、抜き出したアニオン交換樹脂をNaOH溶液とともに混合槽に入れて混合することで、あらかじめ、アニオン交換樹脂を浮遊させた状態として、高度分離塔に移送することで、アニオン交換樹脂を分離した際のカチオン交換樹脂の混入率をより低減することができる。
【0020】
上記発明(発明1~3)においては、前記アニオン交換樹脂及び/又はカチオン交換樹脂が、ポーラス型イオン交換樹脂であることが好ましい(発明4)。
【0021】
かかる発明(発明4)によれば、5重量%以上30重量%以下のNaOH溶液の比重は、湿潤時のポーラス型アニオン交換樹脂の比重と湿潤時のポーラス型カチオン交換樹脂の比重との両者の間にお比重とすることができるので、両者の比重差を利用してアニオン交換樹脂中に混入しているカチオン交換樹脂を好適に分離することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法によれば、分離工程で抜き出したアニオン交換樹脂を、アニオン交換樹脂移送工程において、湿潤時のアニオン交換樹脂の比重と湿潤時のカチオン交換樹脂の比重の中間の比重の溶液に浸漬しているので、移送時にすでにアニオン交換樹脂が浮遊し、カチオン交換樹脂が沈降しやすくなり、アニオン交換樹脂を高度分離工程で分離した際のカチオン交換樹脂の混入率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態による混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法を示す工程図である。
図2】同実施形態におけるアニオン交換樹脂の移送工程を示す概略図である。
図3】実施例1のアニオン交換樹脂の移送工程を示す概略図である。
図4】比較例1のアニオン交換樹脂の移送工程を示す概略図である。
図5】混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離塔の一例を示す概略図である。
図6】セプレックス法による従来の混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法を示す工程図である。
図7】セプレックス法の原理を示す概略図である。
図8】セプレックス法による従来の移送工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法について、添付図面を参照にして詳細に説明する。
【0025】
〔混合イオン交換樹脂の分離再生システムの構成〕
本実施形態の混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法は、例えば、前述した図5に示すような分離塔と、カチオン交換樹脂再生塔と、セプレックス塔(アニオン交換樹脂高度分離塔)と、アニオン交換樹脂及びNaOH溶液(アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との中間比重の溶液)を混合する混合槽とからなる構成により行うことができる。
【0026】
(混合イオン交換樹脂)
本実施形態において混合イオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の混合樹脂である。この混合イオン交換樹脂におけるアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の割合(容積比)は、特に制限はないがアニオン交樹脂:カチオン交換樹脂=30:70~70:30程度である。
【0027】
このアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂は、いずれもポーラス型イオン交換樹脂であることが好ましい。ポーラス型のアニオン交換樹脂は、例えば約1.03~1.09g/mL程度の比重(湿潤時)を有し、ポーラス型のアニオン交換樹脂は、例えば約1.22~1.30g/mL程度の比重(湿潤時)を有する。
【0028】
〔混合イオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との分離再生方法〕
次に前述したような装置構成による本実施形態の混合イオン交換樹脂の分離再生方法について図1のフロー図に基づいて説明する。
【0029】
(分離工程)
分離工程については、前述した図6に示すこのセプレックス法の分離工程と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0030】
(アニオン交換樹脂の高度分離工程及び再生工程)
分離工程において取り出されたアニオン交換樹脂には、わずかにカチオン交換樹脂が混入している。そこで、本実施形態においては、このアニオン交換樹脂を混合槽に投入し、水抜きをした後、NaOH溶液を注入して浸漬する。このNaOH溶液は、5~30重量%の濃度で湿潤状態のアニオン交換樹脂と湿潤状態のカチオン交換樹脂の中間の比重となるように設定する。例えば、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂がポーラス型の場合には、NaOH溶液は9~25重量%の濃度とする。このようなNaOH溶液は、約1.10~1.27g/mL程度の比重を有する。具体的には、ポーラス型アニオン交換樹脂の湿潤時の比重が1.05g/mL、ポーラス型カチオン交換樹脂の湿潤時の比重が1.28g/mLの場合には、両者の中間の比重の16%NaOH溶液(比重1.18g/mL)を注入すればよい。
【0031】
このようにして混合槽でアニオン交換樹脂とNaOH溶液とを混合したら、アニオン交換樹脂をNaOH溶液とともにセプレックス塔(高度分離塔)に移送する。例えば、図2に示すように、分離塔から混合槽1に移送した後水抜きをしたアニオン交換樹脂と、NaOH溶液との混合物2をポンプ3Aを備えた移送管3によりセプレックス塔4の上部から移送する。この際、NaOH溶液7に対してアニオン交換樹脂5は浮遊し、カチオン交換樹脂6は沈殿しながら供給される(図2(a))。この結果、セプレックス塔4への移送が完了した時点で、あらかじめアニオン交換樹脂5が浮遊し、カチオン交換樹脂6が沈降した状態となる(図2(b))。その後、さらに必要に応じて、アニオン交換樹脂5とカチオン交換樹脂6の中間の比重のNaOH溶液を薬注してセプレックス塔4内の液量を調整し、エアーバブリングした後静置して、アニオン交換樹脂5とカチオン交換樹脂6を高度に分離する。そして、セプレックス塔4の底部に設けられたカチオン交換樹脂抜出配管(図示せず)から吸引してカチオン交換樹脂6を流出させて抜き出す。このカチオン交換樹脂は、水切りをした後、次回の混合イオン交換樹脂の分離再生時に一緒に投入すればよい。
【0032】
続いて、セプレックス塔4内に純水を供給して、塔内のNaOH溶液を押し出して排出するとともに、アニオン交換樹脂5を洗浄し、アニオン交換樹脂5をセプレックス塔4から抜き出す。その後、公知の再生方法を施すことにより、アニオン交換樹脂を再生することができる。具体的には、アニオン交換樹脂再生塔にアニオン交換樹脂を投入したら、NaOH溶液を注入してアニオン交換樹脂を再生すればよい。
【0033】
(カチオン交換樹脂の再生工程)
分離塔から分離したカチオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂再生塔で公知の方法により再生を行えばよい。具体的には、カチオン交換樹脂再生塔にカチオン交換樹脂を投入したら、無機酸としてのHCl溶液を注入してカチオン交換樹脂を再生する。
【0034】
続いて、カチオン交換樹脂再生塔内に純水を供給して、塔内のHCl溶液を押し出して排出するとともに、カチオン交換樹脂を洗浄する。このようにしてカチオン交換樹脂を再生することができる。この再生後のカチオン交換樹脂はカチオン交換樹脂再生塔から取り出して再利用すればよい。
【0035】
上述したような本実施形態においては、分離工程で分離したアニオン交換樹脂5をセプレックス塔4に投入する前に、一旦混合槽1に受けて、アニオン交換樹脂5とカチオン交換樹脂6の中間の比重のNaOH溶液と混合しているので、セプレックス塔4内でアニオン交換樹脂5が沈殿することがないので、カチオン交換樹脂6を精度よく分離することができる。
【0036】
以上、本発明について前記実施形態に基づき説明してきたが、本発明は、分離塔で分離したアニオン交換樹脂をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の中間の比重のNaOH溶液と混合した後、高度分離塔(セプレックス塔)に移送すれば種々の変形実施が可能である。例えば、高度分離塔(セプレックス塔)では、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の高度分離した後、残ったアニオン交換樹脂をセプレックス塔内で再生してもよい。
【0037】
以下の具体的実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0038】
[実施例1]
図3に示すようにポーラス型アニオン交換樹脂5(湿潤時の比重1.05g/mL)とポーラス型カチオン交換樹脂6(湿潤時の比重1.28g/mL)の混合樹脂を分離塔8で分離した後、アニオン交換樹脂5のみを分離水である超純水とともに混合槽1に移送し、水抜きを行った。その後、混合槽1に16重量%NaOH溶液(比重1.28g/mL)を注入し、両者を混合して、ポンプ3Aを備えた移送管3からセプレックス塔4に移送した。そして、図1に示すアニオン交換樹脂高度分離工程の後、セプレックス塔4の底部に沈降したカチオン交換樹脂6を抜き出し、その後アニオン交換樹脂5を抜き出した。抜き出したアニオン交換樹脂5中のカチオン交換樹脂6の混入率を測定した結果、0.002容積%であった。
【0039】
[比較例1]
図4に示すようにポーラス型アニオン交換樹脂12(湿潤時の比重1.05g/mL)とポーラス型カチオン交換樹脂13(湿潤時の比重1.28g/mL)の混合樹脂を分離塔11で分離した後、アニオン交換樹脂12のみを分離水である超純水15とともにポンプ16Aを備えた移送管16からセプレックス塔14に移送して、セプレックス塔14の塔底部から水抜きを行った(図4(a))。その後、セプレックス塔14の上部のNaOH溶液供給管17から、アニオン交換樹脂12とカチオン交換樹脂13の中間の比重のNaOH溶液18(比重1.28g/mL)を注入し、図6に示すアニオン交換樹脂高度分離工程の後、セプレックス塔14の底部に沈殿したカチオン交換樹脂13を抜き出し、その後アニオン交換樹脂を抜き出した。抜き出したアニオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂の混入率を測定した結果、0.01容積%であった。
【符号の説明】
【0040】
1 混合槽
2 アニオン交換樹脂とNaOH溶液の混合物
3 移送管
3A ポンプ
4 セプレックス塔
5 アニオン交換樹脂
6 カチオン交換樹脂
7 NaOH溶液
8 分離塔
21 混合イオン交換樹脂の分離塔
21A 分離塔本体
22 注排水口
23 給水管
23A 吐出ノズル
24 排水口
25 集水板
26 アニオン交換樹脂抜出配管
27 カチオン交換樹脂抜出配管
28 のぞき窓
29 使用済の混合イオン交換樹脂の投入口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8