(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】パターン形成装置
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20241001BHJP
G03F 7/24 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G03F9/00 Z
G03F7/24 Z
(21)【出願番号】P 2023191770
(22)【出願日】2023-11-09
(62)【分割の表示】P 2022524490の分割
【原出願日】2021-05-18
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2020087094
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】中山 修一
(72)【発明者】
【氏名】中野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】堀 正和
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-356193(JP,A)
【文献】特開平6-267822(JP,A)
【文献】特開平4-348018(JP,A)
【文献】特開2015-152649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 9/00
G03F 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に移動する基板上の所定領域にパターンを形成するパターン形成機構と、前記基板上に形成されたマークを検出するマーク検出機構とを備えたパターン形成装置であって、
前記マーク検出機構は、
前記基板上に設定される
第1の検出領域内に照明光を投射すると共に、前記
第1の検出領域内で発生する反射光
が入射する対物光学系と、前記対物光学系に入射した前記反射光によって生成される前記検出領域内の像を検出する像検出系と
、前記対物光学系と前記像検出系との間の光路中に配置される光分割器と、を有し、
前記光分割器に向けて前記照明光を投射して、前記対物光学系の瞳面に前記照明光の光源像を形成する照明系と、
前記対物光学系の前記瞳面内に形成される前記光源像の位置を変化させる調整機構と、
を備
え、
前記照明系は、前記対物光学系の前記瞳面に前記光源像をリレーする導光部材を有し、
前記導光部材は、光ファイバー束であり、
前記光ファイバー束の出射端に形成される前記光源像の強度分布の形状は、前記光ファイバー束の入射端に形成される前記光源像の強度分布の形状と合同または相似である、パターン形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成装置であって、
基準バー部材と、
前記対物光学系と前記基板との間に設けられた合成光学部材と、
を有し、
前記合成光学部材は、前記対物光学系からの前記照明光を分割して前記第1の検出領域と前記基準バー部材に設定される第2の検出領域のそれぞれに導くとともに、前記第1の検出領域からの前記反射光と前記第2の検出領域からの反射光を合成する、パターン形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパターン形成装置であって、
前記照明系は、
光源から発生する前記照明光を集光して前記光源像を形成する集光レンズ系を含む光源部を有し、
前記調整機構は、前記導光部材の前記入射端に形成される前記光源像の位置を前記入射端の面内で調整して、前記対物光学系の前記瞳面内に形成される前記光源像の位置を変化させる、パターン形成装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のパターン形成装置であって、
前記光ファイバー束の前記出射端の位置は、前記対物光学系の前記瞳面の位置とほぼ一致する、パターン形成装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のパターン形成装置であって、
前記導光部材は、
前記光源像を前記光ファイバー束の前記入射端に縮小して形成する縮小結像系と、前記光ファイバー束の前記出射端に伝送された前記光源像を前記対物光学系の前記瞳面内に拡大して形成する拡大結像系とを含む、パターン形成装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のパターン形成装置であって、
前記調整機構は、前記導光部材の前記入射端に向かう前記照明光を透過させると共に、前記照明光の進行方向を横シフトさせる傾斜可能な平行平板を有する、パターン形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載のパターン形成装置であって、
前記平行平板は、前記照明光の前記進行方向に沿って並んで配置される第1の平行平板と第2の平行平板とで構成され、前記第1の平行平板の傾斜方向と前記第2の平行平板の傾斜方向とは直交している、パターン形成装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のパターン形成装置であって、
前記調整機構は、前記導光部材の前記入射端と前記照明系とを相対的に微動させる微動機構で構成される、パターン形成装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のパターン形成装置であって、
前記基板を支持して前記第1の方向に移動させる基板支持機構を備える、パターン形成装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のパターン形成装置であって、
前記パターンは電子デバイス用のパターンである、パターン形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の形成領域内にパターンを形成する際に、形成位置を位置合わせするアライメント系を有するパターン形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺のフレキシブル基板上にパターンを形成する為に、基板の長尺方向と直交した短尺方向(幅方向)に複数の露光ヘッドが並べられた露光部が設けられ、基板を長尺方向に移動させながら複数の露光ヘッドの各々でパターンを描画(露光)する描画装置が、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の描画装置では、
図1~
図4に示されているように、フレキシブル基板100にパターンを露光する露光部30よりも、基板100の搬送方向の下流側に、例えば2台のカメラ部40を有するアライメント部22が設けられている。アライメント部22は、フレキシブル基板100に形成されたアライメントマーク102(
図10)をカメラ部40で検出している。そのカメラ部40は、
図4に示されているように、基板100上の撮像位置を基板100の幅方向に変えられるように、ガイドレール34に沿って移動可能に設けられている。また、カメラ部40の基板100側に設けられたレンズ44の突出先端部には、リング状のストロボ46が配置され、基板100のアライメントマーク102等を撮像する際に、基板100をストロボ発光により照明している。
【0004】
特許文献1の装置構成では、アライメント部22のカメラ部40が移動可能な構成となっている為、所望の位置に移動して静止したときのカメラ部40が僅かに傾く誤差、即ちレンズ44の光軸が基板100の表面と垂直な状態から僅かに傾いたテレセン誤差が発生し易い。一般に、この種のパターン描画装置では、描画可能な最小線幅値の1/10以下の精度で、アライメントマークを位置計測する必要があり、その為には、撮像したアライメントマークの両側のエッジ部の像コントラストが良好で揃っている必要がある。しかしながら、テレセン誤差が生じると、アライメントマークの両側のエッジ部の像コントラスト間の対称性が崩れ、アライメントマークの位置計測結果に誤差が生じる。特許文献1の場合、テレセン誤差を補正するには、カメラ部40全体の傾きを微調整する機構が必要となるが、それだけアライメント部22の構成が大掛かりになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本発明の態様は、第1の方向に移動する基板上の所定領域にパターンを形成するパターン形成機構と、前記基板上に形成されたマークを検出するマーク検出機構とを備えたパターン形成装置であって、前記マーク検出機構は、前記基板上に設定される第1の検出領域内に照明光を投射すると共に、前記第1の検出領域内で発生する反射光が入射する対物光学系と、前記対物光学系に入射した前記反射光によって生成される前記検出領域内の像を検出する像検出系と、前記対物光学系と前記像検出系との間の光路中に配置される光分割器と、を有し、前記光分割器に向けて前記照明光を投射して、前記対物光学系の瞳面に前記照明光の光源像を形成する照明系と、前記対物光学系の前記瞳面内に形成される前記光源像の位置を変化させる調整機構と、を備え、前記照明系は、前記対物光学系の前記瞳面に前記光源像をリレーする導光部材を有し、前記導光部材は、光ファイバー束であり、前記光ファイバー束の出射端に形成される前記光源像の強度分布の形状は、前記光ファイバー束の入射端に形成される前記光源像の強度分布の形状と合同または相似である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態によるパターン描画装置EXの概略的な全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1のパターン描画装置EXにおける描画ユニットU1~U6の配置とアライメント系ALGnの配置とを具体的に示した図である。
【
図3】
図1のパターン描画装置EXにおける描画ユニットU1~U6のうち、代表して描画ユニットU1内の詳細構成を示す斜視図である。
【
図4】
図2に示した回転ドラムDRと7つのアライメント系ALG1~ALG7と基準バー部材RBとの配置関係を概略的に示す斜視図である。
【
図5】
図4に示した描画ラインSL1~SL6とアライメント系ALG1~ALG7の各々の検出領域AD1~AD7との配置関係と、回転ドラムDRの回転角度の変化を計測するエンコーダ計測系の配置とを表した図である。
【
図6】
図6Aは基準バー部材RBの7ヶ所に形成される基準マークRM1~RM7の配置の一例を示す図であり、
図6Bは撮像領域DIS’と基準マークRM1との配置関係の一例を誇張して表した図であり、
図6Cは撮像領域DIS’と基準マークRM2との配置関係の一例を誇張して表した図である。
【
図7】アライメント系ALGn(ALG1~ALG7)の詳細な光学構成と、アライメント系ALGnに照明光を供給する照明系ILUの光学構成との一例を示す図である。
【
図8】テレセン誤差がある場合に、アライメント系ALGnの対物レンズ系OBLからの落射照明によって基板Pから発生する反射光LRfの検出状態を示す図である。
【
図9】テレセン誤差による影響を補正した場合に、アライメント系ALGnの対物レンズ系OBLからの落射照明によって基板Pから発生する反射光LRfの検出状態を説明する図である。
【
図10】アライメント系ALGnに照明光を供給する為の導光部材の第2の実施の形態による光学構成を示す図である。
【
図11】アライメント系ALGnに供給される照明光として、ハロゲン化錫を封入したメタルハライドランプの発光波長特性の一例を示すグラフである。
【
図12】
図10に示したアライメント系ALGnの為の照明系(照明ユニット)ILUの変形例1を示す概略図である。
【
図13】ダイクロイックミラーDCMの波長選択特性とLED光源LD1、LD2の各々の発光波長特性との一例を模式的に示したグラフである。
【
図14】
図7又は
図10に示したアライメント系ALGnに照明系ILUからの照明光ILbを伝送する導光部材の光学構成の変形を示す図である。
【
図15】
図14に示した光ファイバー束ILFの入射端ILFaの面内に形成される光源像SOaの様子を模式的に示す図である。
【
図16】
図7、
図10に示したアライメント系ALGnの変形例による光学構成を模式的に示す図である。
【
図17】
図14に示した照明系(照明ユニット)ILU内で光源像SOa’を形成する光源部ILSの変形例を示す図である。
【
図18】
図12、
図17に適用される光源部ILSのうち、ダイクロイックミラーDCM付近の変形例を示す図である。
【
図19】
図14に示した光源部ILSの変形例を示す図である。
【
図20】
図7、
図10、
図16のいずれかのアライメント系ALGnの各々に照明光ILbを供給する為に、
図14の構成による導光部材を用いた場合の照明系ILUの概略的な構成を示す図である。
【
図21】第3の実施の形態によるアライメント系ALGnと照明系(照明ユニット)ILUの概略構成を示す図である。
【
図22】
図21に示した楔プリズムDP1、DP2による機能を誇張して説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の態様に係る基板処理装置(パターン形成装置)について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0009】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態による基板処理装置として、基板(被照射体)Pにパターンを露光するパターン形成装置(パターン描画装置)EXの概略構成を示す斜視図であり、その構成は、国際公開第2017/191777号、国際公開第2018/061633号に開示されているものと同じである。なお、以下の説明においては、特に断わりのない限り、重力方向をZ方向とするXYZ直交座標系を設定し、図に示す矢印にしたがってX方向、Y方向、およびZ方向を設定する。
【0010】
パターン描画装置EXは、基板P上に塗布されたフォトレジスト等の感光性機能層に電子デバイス用の微細パターンを露光して、電子デバイスを製造するデバイス製造システムで使われる。デバイス製造では、例えば、フレキシブル・ディスプレイ、フィルム状のタッチパネル、液晶表示パネル用のフィルム状のカラーフィルター、フレキシブル配線、または、フレキシブル・センサ等の電子デバイスを製造する為に、パターン描画装置以外にも複数種の製造装置が使われる。デバイス製造システムは、フレキシブル(可撓性)のシート状の基板(シート基板)Pをロール状に巻いた図示しない供給ロールから基板Pが送出され、送出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、各種処理後の基板Pを図示しない回収ロールで巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll To Roll)方式の生産方式を有する。そのため、少なくとも製造処理中の基板P上には、最終製品となる単位デバイス(1つの表示パネル等)に対応したパターンが、基板Pの搬送方向に所定の隙間を空けて多数連なった状態で配列される。基板Pは、その長尺方向が基板Pの移動方向(搬送方向)となり、長尺方向と直交した短尺方向が基板Pの幅方向となる帯状である。
【0011】
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、若しくは、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、デバイス製造システムやパターン描画装置EXの搬送路を通る際に、基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。基板Pの母材として、厚みが25μm~200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド等のフィルムは、好適なシート基板の典型である。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ30~100μm程度の極薄ガラスの単層体、その極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、金属箔等を貼り合わせた積層体、或いは、ナノセルロースを含有して表面を平滑処理した紙片であってもよい。
【0012】
基板Pの表面に塗布される感光性機能層は、溶液として基板P上に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジスト(液状またはドライフィルム状)であるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈したり、紫外線の照射を受けた部分のメッキ還元基が除去されたりする感光性還元剤等がある。感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)または半導体材料を含有した液体等を選択塗布することで、薄膜トランジスタ(TFT)等を構成する電極、半導体、絶縁、或いは接続用の配線となるパターン層を形成することができる。
【0013】
感光性機能層として、感光性還元剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分、或いは非露光とされたパターン部分にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン又は銅イオン等を含むメッキ液中に一定時間浸漬する無電解メッキによって、パターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(加算式)のプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(減算式)のプロセスとしてのエッチング処理を前提にしてもよい。その場合、パターン描画装置EXへ送られる基板Pは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものとされる。
【0014】
図1に示したパターン描画装置EXは、マスクを用いない直描方式の露光装置、いわゆるスポット走査方式の露光装置であり、前工程のプロセス装置から搬送されてきた基板Pを後工程のプロセス装置(単一の処理部または複数の処理部を含む)に向けて所定の速度で長尺方向に搬送する。その搬送に同期して、パターン描画装置EXは、基板Pの感光性機能層に電子デバイスを構成する信号線や電源ラインの配線パターン、TFTを構成する電極、半導体領域、スルーホール等のいずれかのパターン形状に応じた光パターンを、描画データに応じて強度変調されるスポット光のY方向への高速走査(主走査)と基板Pの長尺方向への移動(副走査)とによって形成する。
【0015】
図1において、パターン描画装置EXは、副走査のために基板Pを支持して長尺方向に搬送する回転ドラムDRと、回転ドラムDRで円筒面状に支持された基板Pの部分ごとにパターン露光を行う複数(ここでは6個)の描画ユニットUn(U1~U6)とを備え、複数の描画ユニットUn(U1~U6)の各々は、露光用のパルス状のビームLB(パルスビーム)のスポット光を、基板Pの被照射面(感光面)上でY方向にポリゴンミラーPM(走査部材)で1次元に走査(主走査)しつつ、スポット光の強度を描画データに応じて高速に変調(オン/オフ)する。これにより、基板Pの被照射面に電子デバイス、回路または配線等の所定のパターンに応じた光パターンが描画露光される。また、基板Pが長尺方向に沿って連続して搬送されるので、パターン描画装置EXによってパターンが露光される基板P上の被露光領域(デバイス形成領域)は、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔(余白)をあけて複数個を設定可能である。本実施の形態では、6つの描画ユニットU1~U6の各々、又は全体によって、パターン形成機構が構成される。
【0016】
図1のように、回転ドラムDRは、Y方向に延びるとともに重力が働く方向と交差した方向に延びた中心軸AXoと、中心軸AXoから一定半径の円筒状の外周面とを有する。回転ドラムDRは、その外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に円筒面状に湾曲させて支持(密着保持)しつつ、中心軸AXoを中心に回転して基板Pを長尺方向に搬送する。回転ドラムDRは、複数の描画ユニットUn(U1~U6)の各々からのビームLB(スポット光)が投射される基板P上の領域(部分)をその外周面で支持する。なお、回転ドラムDRのY方向の両側には、回転ドラムDRを中心軸AXo回りに回転させるようにベアリングで支持される不図示のシャフトが設けられる。そのシャフトには、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)からの回転トルクが与えられ、回転ドラムDRは中心軸AXo回りに一定の回転速度で回転する。
【0017】
光源装置(パルス光源装置)LSは、パルス状のビーム(パルスビーム、パルス光、レーザ)LBを発生して射出する。このビームLBは、基板Pの感光性機能層に対する感度を有し、410~200nmの波長帯域にピーク波長(例えば、405nm、365nm、355nm、344nm、308nm、248nm等のいずれかの中心波長)を有する紫外線光である。光源装置LSは、ここでは不図示の描画制御装置の制御に従って、例えば、100MHz~400MHzの範囲のいずれかの周波数(発振周波数、所定周波数)FPLでパルス状のビームLBを射出する。本実施の形態では、光源装置LSを波長変換素子によって紫外線光を発生するレーザ光源装置とする。
【0018】
具体的には、赤外波長域のパルス光を発生する半導体レーザ素子、ファイバー増幅器、および、増幅された赤外波長域のパルス光を紫外波長域のパルス光に変換する波長変換素子(高調波発生素子)等で構成されるファイバーアンプレーザ光源とする。このように光源装置LSを構成することで、1パルス光の発光時間が十数ピコ秒~数十ピコ秒以下の高輝度な紫外線のパルス光が得られる。光源装置LSをファイバーアンプレーザ光源とし、描画データを構成する画素ビットの状態(論理値で「0」か「1」)に応じてビームLBのパルス発生を高速にオン/オフする(スポット光を強度変調する)構成については、国際公開第2015/166910号、国際公開第2017/057415号に開示されている。なお、光源装置LSから射出されるビームLBは、そのビーム径が約1mm、若しくはその半分程度の細い平行光束になっているものとする。
【0019】
光源装置LSから射出されるビームLBは、複数のスイッチング素子としての選択用光学素子OSn(OS1~OS6)と、複数の反射ミラーM1~M12と、複数の落射ミラー(選択ミラーとも呼ぶ)IMn(IM1~IM6)と、吸収体TR等で構成されるビーム切換部を介して、描画ユニットUn(U1~U6)の各々に選択的(択一的)に供給される。選択用光学素子OSn(OS1~OS6)は、ビームLBに対して透過性を有するものであり、超音波信号で駆動されて、入射したビームLBの±1次回折光の一方のみを効率的に発生するように、ブラック回折条件で配置される音響光学変調素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)で構成される。複数の選択用光学素子OSnおよび複数の落射ミラーIMnは、複数の描画ユニットUnの各々に対応して設けられている。例えば、選択用光学素子OS1と落射ミラーIM1は、描画ユニットU1に対応して設けられ、同様に、選択用光学素子OS2~OS6および落射ミラーIM2~IM6は、それぞれ描画ユニットU2~U6に対応して設けられている。
【0020】
光源装置LSからのビームLBは、反射ミラーM1~M12によってその光路がXY面と平行な面内でつづらおり状に曲げられて、吸収体TRまで導かれる。以下、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)がいずれもオフ状態(超音波信号が印加されずに、1次回折光が発生していない状態)の場合で詳述する。なお、
図1では図示を省略したが、反射ミラーM1から吸収体TRまでのビーム光路中には複数のレンズによるリレー系が設けられる。リレー系は、詳しくは、国際公開第2017/057415号に開示されているように、光源装置LSからビームLBの光路に沿って直列に並ぶ選択用光学素子OS1~OS6の各々の間に配置され、6つの選択用光学素子OS1~OS6の各々を光学的に互いに共役関係(結像関係)にする。さらに各リレー系は、6つの選択用光学素子OS1~OS6の各々の位置ではビームLBの直径を1mm~0.5mmの細い平行光束に維持しつつ、各リレー系内の中間位置では直径が0.2mm以下のビームウェストとなるように収斂する。落射ミラーIM1~IM6の各々は、各リレー系の光路中のビームウェストの位置に配置される。
【0021】
図1において、光源装置LSからのビームLBは-X方向に進んで反射ミラーM1で-Y方向に反射され、反射ミラーM2に入射する。反射ミラーM2で+X方向に反射されたビームLBは、選択用光学素子OS5をストレートに透過して反射ミラーM3に至る。反射ミラーM3で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM4で-X方向に反射されて、選択用光学素子OS6をストレートに透過して反射ミラーM5に至る。反射ミラーM5で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM6に至る。反射ミラーM6で+X方向に反射されたビームLBは、選択用光学素子OS3をストレートに透過して反射ミラーM7に至る。反射ミラーM7で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM8で-X方向に反射された後、選択用光学素子OS4をストレートに透過して反射ミラーM9に至る。反射ミラーM9で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM10で+X方向に反射された後、選択用光学素子OS1をストレートに透過して反射ミラーM11に至る。反射ミラーM11で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM12で-X方向に反射された後、選択用光学素子OS2をストレートに透過して吸収体TRに導かれる。この吸収体TRは、ビームLBの外部への漏れを抑制するためにビームLBを吸収する光トラップであり、光エネルギーの吸収による発熱が低減されるように温調(空冷又は水冷)機構を備えている。
【0022】
各選択用光学素子OSnは、超音波信号(高周波信号)が印加されると、入射したビームLB(0次光)を、高周波の周波数に応じた回折角で回折させた1次回折光を射出ビーム(ビームLBn)として発生する。従って、選択用光学素子OS1から1次回折光として射出されるビームがLB1となり、同様に選択用光学素子OS2~OS6の各々から1次回折光として射出されるビームがLB2~LB6となる。このように、各選択用光学素子OSn(OS1~OS6)は、光源装置LSからのビームLBの光路を偏向する機能を奏する。また、本実施の形態では、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)のうちの選択された1つだけが一定時間だけオン状態(高周波信号が印加された状態)となるように、不図示の描画制御装置によって制御される。選択された1つの選択用光学素子OSnがオン状態のとき、その選択用光学素子OSnで回折されずに直進する0次光が10~20%程度残存するが、それは最終的に吸収体TRによって吸収される。
【0023】
選択用光学素子OSnの各々は、偏向された1次回折光であるビームLBn(LB1~LB6)を、入射するビームLBの進行方向に対して-Z方向に偏向するように設置される。選択用光学素子OSnの各々で偏向されて射出するビームLBn(LB1~LB6)は、選択用光学素子OSnの各々から所定距離だけ離れた位置(ビームウェストの位置)に設けられた落射ミラーIMn(IM1~IM6)に投射される。各落射ミラーIMnは、入射したビームLBn(LB1~LB6)を-Z方向に反射することで、ビームLBn(LB1~LB6)をそれぞれ対応する描画ユニットUn(U1~U6)に導く。
【0024】
各選択用光学素子OSnの構成、機能、作用等は互いに同一のものであり、複数の選択用光学素子OSnの各々は、描画制御装置からの駆動信号(高周波信号)のオン/オフによって、入射したビームLBを回折させた回折光(ビームLB1~LB6)の発生をオン/オフさせるスイッチング(ビーム選択)動作を行う。このような各選択用光学素子OSnのスイッチング動作により、光源装置LSからのビームLBをいずれか1つの描画ユニットUnに導くことができ、且つ、ビームLBnが入射する描画ユニットUnを切り換えることができる。このように、複数の選択用光学素子OSnをビームLBの光路に直列(シリアル)に配置して、対応する描画ユニットUnに時分割でビームLBnを供給する構成は、国際公開第2015/166910号に開示されている。
【0025】
ビーム切換部を構成する選択用光学素子OSn(OS1~OS6)の各々が一定時間だけオン状態となる順番は、描画ユニットUn(U1~U6)の各々に設定されるスポット光による走査開始タイミングの順番によって定められる。本実施の形態では、6つの描画ユニットU1~U6の各々に設けられるポリゴンミラーPMの回転速度の同期とともに、回転角度の位相も同期させることで、描画ユニットU1~U6のうちのいずれか1つにおけるポリゴンミラーの1つの反射面が、基板P上で1回のスポット走査を行うように、時分割に切り替えることができる。そのため、描画ユニットUnの各々のポリゴンミラーの回転角度の位相が所定の関係で同期した状態であれば、描画ユニットUnのスポット走査の順番はどの様なものであってもよい。
図1の構成では、基板Pの搬送方向(回転ドラムDRの外周面が周方向に移動する方向)の上流側に3つの描画ユニットU1、U3、U5がY方向に並べて配置され、基板Pの搬送方向の下流側に3つの描画ユニットU2、U4、U6がY方向に並べて配置される。
【0026】
この場合、基板P上の1つの被露光領域に対するパターン描画は、上流側の奇数番の描画ユニットU1、U3、U5から開始され、基板Pが一定長送られたら、下流側の偶数番の描画ユニットU2、U4、U6もパターン描画を開始することになるので、描画ユニットUnのスポット走査の順番を、U1→U3→U5→U2→U4→U6→U1→・・・に設定することができる。従って、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)の各々が一定時間だけオン状態となる順番も、OS1→OS3→OS5→OS2→OS4→OS6→OS1→・・・の順に定められる。
【0027】
図1に示すように、描画ユニットU1~U6の各々には、入射してきたビームLB1~LB6を主走査するためのポリゴンミラーPMが設けられる。本実施の形態では、各描画ユニットUnのポリゴンミラーPMの各々が、同一の回転速度で精密に回転しつつ、互いに一定の回転角度位相を保つように同期制御される。これによって、描画ユニットU1~U6の各々から基板Pに投射されるビームLB1~LB6の各々の主走査のタイミング(スポット光の主走査期間)を、互いに重複しないように設定することができる。したがって、ビーム切換部に設けられた選択用光学素子OSn(OS1~OS6)の各々のオン/オフ切り替えを、6つのポリゴンミラーPMの各々の回転角度位置に同期して制御することで、光源装置LSからのビームLBを複数の描画ユニットUnの各々に時分割で振り分けた効率的な露光処理ができる。6つのポリゴンミラーPMの各々の回転角度の位相合わせと、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)の各々のオン/オフ切り替えタイミングとの同期制御についても、国際公開第2015/166910号に開示されている。
【0028】
図1のように、パターン描画装置EXは、同一構成の複数の描画ユニットUn(U1~U6)を配列した、いわゆるマルチヘッド型の直描露光方式である。描画ユニットUnの各々は、回転ドラムDRの外周面(円周面)で支持されている基板PのY方向(主走査方向)に区画された部分領域ごとにパターンを描画する。各描画ユニットUn(U1~U6)は、ビーム切換部からのビームLBnを基板P上(基板Pの被照射面上)に投射しつつ、基板P上でビームLBnを集光(収斂)する。これにより、基板P上に投射されるビームLBn(LB1~LB6)は直径が2~4μmのスポット光となる。さらに各描画ユニットUnのポリゴンミラーPMの回転によって、基板P上に投射されるビームLBn(LB1~LB6)の各々のスポット光が主走査方向(Y方向)に走査される。このスポット光の走査によって、基板P上に、1ライン分のパターンの描画のための直線的な描画ライン(走査ライン)SLn(なお、n=1、2、・・・、6)が規定される。描画ラインSLnは、ビームLBnのスポット光の基板P上における走査軌跡である。
【0029】
複数の描画ユニットUn(U1~U6)の各描画ラインSLn(SL1~SL6)は、回転ドラムDRの中心軸AXoを含むYZ面と平行な中心面を挟んで、回転ドラムDRの周方向に2列に千鳥配列で配置され、奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5は、中心面に対して基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)の基板Pの被照射面上に位置し、且つ、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して1列に配置されている。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6は、中心面に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)の基板Pの被照射面上に位置し、且つ、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して1列に配置されている。そのため、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5と、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6とは、XZ平面内で見る(Y方向から見る)と、中心面に対して対称に設けられている。
【0030】
X方向(基板Pの搬送方向)に関しては、奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5と偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6とが互いに離間しているが、Y方向(基板Pの幅方向、主走査方向)に関しては、基板P上に描画されたパターン同士が互いに分離することなく継ぎ合わされるように設定されている。描画ラインSL1~SL6は、基板Pの幅方向、つまり、回転ドラムDRの中心軸AXoとほぼ平行になるように設定されている。なお、描画ラインSLnをY方向に継ぎ合わせるとは、描画ラインSLnの端部同士のY方向の位置を隣接または一部重複させるような関係にすることを意味する。描画ラインSLnの端部同士をY方向に重複させる場合は、例えば、各描画ラインSLnの長さに対して、描画開始点、または描画終了点を含んでY方向に1~5%の範囲で重複させるとよい。
【0031】
複数の描画ユニットUn(U1~U6)は、全部で基板P上の露光領域(パターン形成領域)の幅方向の寸法をカバーするように、Y方向の走査領域(主走査範囲の区画)を分担している。例えば、1つの描画ユニットUnによるY方向の主走査範囲(描画ラインSLnの長さ)を30~60mm程度とすると、6個の描画ユニットU1~U6をY方向に配置することによって、描画可能な露光領域のY方向の幅を180~360mm程度まで広げている。なお、各描画ラインSLn(SL1~SL6)の長さ(描画範囲の長さ)は、原則として同一とする。つまり、描画ラインSL1~SL6の各々に沿って走査されるビームLBnのスポット光SPの走査距離は、原則として同一とする。
【0032】
各描画ユニットUn(U1~U6)は、ポリゴンミラーPMの各反射面RPで反射されて主走査方向に偏向されるビームLBnを入射するテレセントリックなfθレンズ系(描画用走査光学系)FTを備え、fθレンズ系FTから射出して基板Pに投射される各ビームLBnは、XZ面内でみたとき、回転ドラムDRの中心軸AXoに向かって進むように設定される。これにより、各描画ユニットUn(U1~U6)から基板Pに向かって進むビームLBnの主光線は、XZ平面において、基板Pの湾曲した表面上の描画ラインSLnの位置での接平面に対して常に垂直となるように基板Pに向けて投射される。すなわち、スポット光SPの主走査方向、並びに副走査方向(回転ドラムDRの外周面に沿った周方向)に関して、基板Pに投射されるビームLBn(LB1~LB6)はテレセントリックな状態で走査される。
【0033】
図2は、
図1に示したパターン描画装置EXの回転ドラムDRと6つの描画ユニットU1~U6の配置と、基板Pに形成されたアライメントマークや回転ドラムDRの表面に形成された基準パターン等を検出する複数のアライメント系ALGn(nは2以上の整数)の配置とを具体的に示した図であり、
図2中の直交座標系XYZの設定は
図1と同じである。
図2に示した回転ドラムDR、描画ユニットU1~U6、アライメント系ALGnの基本的な配置は、例えば、国際公開第2016/152758号、国際公開第2017/199658号に開示されている。
【0034】
基板Pを約180度の角度範囲で支持する回転ドラムDRのY方向の両側には、中心軸AXo回りを回転するように環状のベアリングで支持されるシャフトSftが設けられ、シャフトSftは不図示の回転駆動源(ダイレクトドライブモータ等)の回転軸と接合されている。また、中心軸AXoを含んでYZ面と平行な面を中心面CPoとする。Y方向(基板Pの幅方向)から見たとき、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5と偶数番の描画ユニットU2、U4、U6とは中心面CPoを挟んで対称的に配置される。
図2のように、直交座標系XYZのXZ面と平行な面内では、描画ユニットU1(及びU3、U5)は中心面CPoから反時計回りに一定の角度θcだけ傾けられ、描画ユニットU2(及びU4、U6)は中心面CPoから時計回りに一定の角度θcだけ傾けられる。描画ユニットU1~U6の各々の構成は同一であるので、代表して描画ユニットU1の構成を
図3に示す。
【0035】
図3は、
図1に示した落射ミラーIM1から供給されるビームLB1(描画データに応じて強度変調された直径0.5mm程度の平行光束)を、最終的に基板P上にスポット光SPとして集光するfθレンズ系FTと、スポット光SPをY方向に主走査して描画ラインSL1を形成するポリゴンミラーPM等を含む描画ユニットU1の詳細構成を示す斜視図である。描画ユニットU1(並びにU2~U6)のポリゴンミラーPMからfθレンズ系FTを通る光軸AXf1は、
図2のように直交座標系XYZ内では傾くので、描画ユニットU1(並びにU2~U6)内では、直交座標系XYZに対して傾いた直交座標系XtYtZtを設定する。その直交座標系XtYtZtにおいて、Yt方向はY方向と同じであり、Zt方向は、落射ミラーIM1から描画ユニットU1に入射するビームLB1の主光線(中心光線)の進行方向、若しくは描画ラインSL1の位置で基板Pの法線方向とし、Xt方向はfθレンズ系FTを通る光軸AXf1の方向とする。なお、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6の各々のfθレンズ系FTの光軸は光軸AXf2とする。
【0036】
図3において、描画ユニットU1(並びにU2~U6)内には、ミラーM30、レンズL6、レンズL7、石英製の傾斜可能な平行平板HVP、レンズL8、L9、ミラーM31、偏光ビームスプリッタPBS、開口絞りAP、1/4波長板QW、ミラーM32、第1シリンドリカルレンズCYa、レンズL10、ミラーM33、レンズL11、ミラーM34、M35、M36、8面のポリゴンミラーPM、fθレンズ系FT、ミラーM37、第2シリンドリカルレンズCYbが、その順に配置される。ミラーM30は、入射するビームLB1の進行方向が-Xt方向になるようにビームLB1を90度に反射させる。ミラーM30で反射されたビームLB1の光路に沿って配置されるレンズL6、L7、L8、L9は、ミラーM30で反射された細いビームLB1(直径が約0.5mm)を、数mm以上(5~10mmの範囲)の直径の平行光束に拡大するビームエキスパンダー系を構成する。
【0037】
平行平板HVPは、ビームエキスパンダー系のレンズL6~L9の間の光路中に設けられ、Zt軸と平行な回転軸AXh回りに回転(傾斜)可能に構成される。平行平板HVPの傾斜量を変えることにより、基板P上に投射されるスポット光SPの位置を副走査方向(Xt方向、基板Pの移動方向である副走査方向)に、スポット光SPの実効的な直径φpの数倍~十数倍の距離範囲でシフトさせることができる。偏光ビームスプリッタPBSは、レンズL9を通って拡大されてミラーM31で-Yt方向に反射されるビームLB1(平行光束)を入射する。ビームLB1を直線S偏光とすると、偏光ビームスプリッタPBSは、ビームLB1を偏光分離面で90%以上の強度で反射させて、後段の開口絞りAPに向かわせる。開口絞りAPの円形開口を透過したビームLBは、1/4波長板QWを透過する際に直線偏光から円偏光に変換される。
【0038】
1/4波長板QWを透過したビームLB1(平行光束)は、ミラーM32によって-Zt方向に反射され、第1シリンドリカルレンズCYa(母線がYt軸と平行)に入射し、空間中の面PvにおいてXt方向の幅が極めて小さく、Yt方向に数mm(開口絞りAPの開口径と同じ)の長さで延びたスリット状の強度分布に集光される。面Pvで一次元方向のみ収斂されたビームLB1は、2枚組の球面レンズ系の初群の球面レンズL10を通って、ミラーM33で+Xt方向に反射された後、2枚組の球面レンズ系の後群の球面レンズL11を通って+Xt方向に進む。球面レンズL11から射出した後のビームLB1は、ミラーM34によって+Zt方向に反射された後、ミラーM35によって+Yt方向に反射される。ミラーM34とミラーM35は、ミラーM35から+Yt方向に進むビームLB1の主光線(中心光線)とfθレンズ系FTの光軸AXf1とがXtYt面と平行な面内で互いに直交するように配置されている。ミラーM35から+Yt方向に進むビームLB1は、fθレンズ系FTの光軸AXf1を挟んでミラーM35の反対側に配置されるミラーM36によって反射され、ポリゴンミラーPMの反射面RPaに投射される。
【0039】
第1シリンドリカルレンズCYaと2枚組の球面レンズ系の作用によって、球面レンズL11を通った直後でミラーM34に入射するビームLB1は、Zt方向に関してはほぼ平行光束の状態となり、Yt方向に関しては収斂光束の状態となる。なお、
図3では球面レンズ系を主点間距離の調整の為に球面レンズL10、L11の2枚で構成したが、1枚の球面レンズだけで構成しても良い。
【0040】
ミラーM36の反射面は、Zt軸と平行であると共にXtZt面と平行で光軸AXf1を含む面に対して22.5°の狭角で配置される。これにより、ミラーM36からポリゴンミラーPMの反射面RPaに向かうビームLB1の主光線(中心光線)、即ち第1シリンドリカルレンズCYaや球面レンズ系(レンズL10、L11)の光軸の延長で、ミラーM36からポリゴンミラーPMまでの光軸は、XtYt面と平行な面内で、fθレンズ系FTの光軸AXf1に対して45°の角度に設定される。また、
図3において、ミラーM36で反射してポリゴンミラーPMの反射面RPaに向かうビームLB1は、Zt方向に関してはポリゴンミラーPMの反射面RPa上で集光するように収斂光束の状態となり、XtYt面と平行な面内ではほぼ平行光束の状態となり、反射面RPa上では主走査方向、即ちポリゴンミラーPMの回転中心軸AXpを中心とする内接円の接線方向にスリット状に延びた強度分布となるように集光される。
【0041】
ポリゴンミラーPMの反射面RPaで反射されたビームLB1は、テレセントリックなfθレンズ系FTを通った後、ミラーM37で-Zt方向に直角に反射されて、第2シリンドリカルレンズCYb(母線の方向はYt方向)に入射し、基板P上にスポット光SPとして集光される。本実施の形態では、ミラーM37で-Zt方向に直角に折り曲げられて、基板Pの表面(回転ドラムDRの外周面)と垂直になるfθレンズ系FTの光軸AXf1と、ミラーM30に向けて-Zt方向に入射するビームLB1の中心光線とが、Zt軸と平行な線分LE1(他の描画ユニットU2~U6の各々については線分LE2~LE6とする)と同軸となるように設定されている。そのような設定によって、描画ラインSL1を基板P(XtYt面と平行な面)内で微少量傾ける際に、
図3に示したミラーM30~第2シリンドリカルレンズCYbまでの各光学部材を一体的に支持する筐体(ユニット支持フレーム)の全体を、線分LE1を中心に微少回転させることが可能となる。このように、描画ユニットU1(他のユニットU2~U6も同様)の支持フレーム全体を線分LE1(LE2~LE6)回りに微少回転可能とする機構については、例えば国際公開第2016/152758号に開示されている。
【0042】
また、本実施の形態では、被走査面に設置される被照射体(基板P、又は回転ドラムDRの外周面)の表面にスポット光SPを投射した際に発生する反射光の強度を検出する為に、光電センサDTRとレンズ系GFとが設けられる。被照射体の表面からの反射光(特に正規反射光)は、第2シリンドリカルレンズCYb、fθレンズ系FT、ポリゴンミラーPMの反射面RPa、ミラーM36、M35、M34、球面レンズL11、ミラーM33、球面レンズL10、第1シリンドリカルレンズCYa、ミラーM32、1/4波長板QW、開口絞りAPを介して、偏光ビームスプリッタPBSまで戻ってくる。被照射体の表面に投射されるスポット光SPは円偏光であり、その反射光も円偏光成分を多く含んでいる為、反射光が1/4波長板QWを透過して偏光ビームスプリッタPBSに向かうとき、その偏光特性は直線P偏光に変換される。その為、被照射体の表面からの反射光は偏光ビームスプリッタPBSの偏光分離面を透過してレンズ系GFに入射する。レンズ系GFによって被照射体からの反射光が光電センサDTRの受光面に集光されるように、光電センサDTRの受光面は被走査面上のスポット光SPと光学的に共役な関係に設定される。
【0043】
なお、
図3では図示を省略したが、国際公開第2015/166910号、又は国際公開第2016/152758号に開示されているように、描画用のビームLB1が投射されるポリゴンミラーPMの反射面RPaの回転方向の1つ手前の反射面RPbには、ポリゴンミラーPMの各反射面が描画開始直前の角度位置になったことを表すパルス状の原点信号を出力する為の原点センサ用の送光ビームが投射される。また、
図3に示した描画ユニットU1の内部の詳細構成は、他の描画ユニットU2~U6でも同一であるが、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6の各々は、
図3の描画ユニットU1の全体を、線分LE1を中心に180度回転させた向きに設置される。
【0044】
ここで、再び
図2を参照して、パターン描画装置EXの構成を更に説明する。
図3に示した描画ユニットU1を含む奇数番の描画ユニットU3、U5は、線分LE1、LE3、LE5の各々の延長線(即ち、fθレンズ系FTの光軸AXf1の延長線)が、
図2のY方向から見て回転ドラムDRの回転中心軸AXoに向かうと共に、線分LE1、LE3、LE5が中心面CPoに対して角度-θcだけ反時計方向に傾くように設置される。一方、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6は、線分LE2、LE4、LE6の各々の延長線(即ち、fθレンズ系FTの光軸AXf2の延長線)が、
図2のY方向から見て回転ドラムDRの回転中心軸AXoに向かうと共に、線分LE2、LE4、LE6が中心面CPoに対して角度+θcだけ時計方向に傾くように設置される。角度±θcは、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5と偶数番の描画ユニットU2、U4、U6とが空間的に干渉しない(ぶつからない)範囲で、なるべく小さくなるように設定される。
【0045】
本実施の形態において、複数のアライメント系ALGnはY方向に所定間隔で並べられて、それぞれ基板P上のマーク等を検出する対物レンズ系(対物光学系)を備える。それらの対物レンズ系を介して基板P上に設定される検出領域(観察視野)は、基板Pの移動方向(回転ドラムDRの外周面の周回方向)に関して、描画ユニットU1~U6の各々による描画ラインSL1~SL6の位置よりも上流側に配置される。その検出領域(観察視野)の中心を通る対物レンズ系の各々の光軸AXsの延長線は、回転ドラムDRの回転中心軸AXoに向かうと共に、検出領域(観察視野)の位置で基板Pの表面又は回転ドラムDRの外周面と垂直になるように設定される。アライメント系ALGnの先端付近には基準マーク(基準指標マーク)を形成した基準指標部材としての基準バー部材RBが付設されている。
【0046】
基準バー部材RBの基準マークは、対物レンズ系の各々による検出領域(観察視野)の相互の位置関係、又は描画ユニットU1~U6の各々による描画ラインSL1~SL6の相互の位置関係をキャリブレーションする際、或いは描画ラインSL1~SL6の位置と複数の検出領域の各位置との周方向(基板Pの移動方向)の間隔(ベースライン長)や位置関係を計測する際に使われる。アライメント系ALGnの各々の光軸AXsは、XZ面と平行な面内で見ると、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の各々による描画ラインSL1、SL3、SL5の角度θcよりも大きい角度θaだけ中心面CPoから反時計方向に傾くように設定される。
【0047】
図4は、
図2に示した回転ドラムDRとアライメント系ALGnと基準バー部材RBとの配置関係を示す斜視図であり、直交座標系XYZは先の
図1又は
図2の直交座標系XYZと同じに設定される。本実施の形態では、同一構成の7つのアライメント系ALG1~ALG7(総称してALGnとする)がY方向に所定の間隔で直線的に配置される。アライメント系ALGnの対物レンズ系(対物光学系)OBLの光軸AXsは、対物レンズ系OBLと基板P(回転ドラムDRの外周面DRs)との間に配置された平面ミラーMbによって折り曲げられ、基板P上の検出領域(観察視野)ADn(AD1~AD7)の中心点を通るように設定される。対物レンズ系OBLと平面ミラーMbとの間の光路中には、光軸AXsと垂直な面に対して傾いたプレート型のビームスプリッタBS1(合成光学部材)が設けられる。
【0048】
アライメント系ALGnは、さらに、光ファイバー束ILFから供給される照明光ILbを対物レンズ系OBLに入射させて、検出領域ADnを落射照明する為の光分割器(ビームスプリッタ)BS2と、対物レンズ系OBLと光分割器BS2を介して入射する検出領域ADnからの反射光を、結像用レンズ系Gbを介して受光し、検出領域ADn内に現れる基板P上のアライメントマーク(基板マーク)の拡大像を撮像する撮像部(撮像素子)DISとを有する。
図4では、アライメント系ALG1、ALG2についてのみ、平面ミラーMb、ビームスプリッタBS1、対物レンズ系OBL、光分割器BS2、結像用レンズ系Gb、撮像部(撮像素子)DISによる構成を図示したが、他のアライメント系ALG3~ALG7の各々についても同様の構成を有し、アライメント系ALG3~ALG7の各々の光軸AXsも、それぞれ基板P上に設定される検出領域AD3~AD7(
図4では図示省略)の中心点を通るように設定される。
【0049】
また、先の
図1、
図2に示した構成と同様に、
図4でも基板P上には6つの描画ラインSL1~SL6が設定される。奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5は、回転ドラムDRの回転による基板Pの搬送方向(副走査方向)に関して、アライメント系ALGnの検出領域ADnの下流側に配置され、偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6は、奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5の下流側に配置される。描画ラインSL1は、基板P上の周方向に延びた線OL01と線OL12とのY方向の間の領域でパターンを描画し、描画ラインSL2は、基板P上の周方向に延びた線OL12と線OL23とのY方向の間の領域でパターンを描画する。線OL12は、描画ラインSL1で露光されるパターンと描画ラインSL2で露光されるパターンとがY方向に継がれる継ぎ部(又は一部オーバーラップして露光される部分)を表す。
【0050】
他の線OL23、OL34、OL45、OL56についても同様であり、線OL23は、描画ラインSL2と描画ラインSL3によって露光されるパターンの継ぎ部を表し、線OL34は、描画ラインSL3と描画ラインSL4によって露光されるパターンの継ぎ部を表し、線OL45は、描画ラインSL4と描画ラインSL5によって露光されるパターンの継ぎ部を表し、線OL56は、描画ラインSL5と描画ラインSL6によって露光されるパターンの継ぎ部を表す。なお、本実施の形態において、アライメント系ALG1の検出領域AD1は、線OL01よりも+Y方向にシフトした描画ラインSL1による描画領域内の周囲に配置され、アライメント系ALG7の検出領域AD7も、同様に描画ラインSL6による描画領域内の周囲に配置される。他のアライメント系ALG2~ALG6の各検出領域AD2~AD6は、それぞれ、線OL12、OL23、OL34、OL45、OL56上に配置される。
【0051】
基準バー部材RBは、低熱膨張係数の材料(インバー、セラミックス、石英等)でY方向に細長く成型され、7つのアライメント系ALG1~ALG7の各々のビームスプリッタBS1の近傍に付設される。基準バー部材RBの材料としては、軽量化も可能なセラミックスにすることが望ましく、特に、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)の3成分で構成されるコージライト系セラミックスにすると良い。基準バー部材RBのビームスプリッタBS1と対向する参照面RBa上には、アライメント系ALG1(ALG2~ALG7も同様)の基板P上の検出領域AD1(AD2~AD7)と対応した位置に検出領域AR1が設定される。参照面RBaの検出領域AR1内には、ビームスプリッタBS1を介して対物レンズ系OBLで観察可能な基準マーク(基準パターン)RM1が形成されている。基準バー部材RBの参照面RBa上には、他のアライメント系ALG2~ALG7の各々のビームスプリッタBS1を介して対物レンズ系OBLで観察可能な検出領域AR2~AR7(AR3~AR7は図示省略)が設定され、各検出領域AR2~AR7内には、同様の基準マーク(基準パターン)RM2~RM7が形成されている。
【0052】
従って、本実施の形態におけるアライメント系ALGn(n=1~7)は、対物レンズ系OBLの先端側に配置されたビームスプリッタBS1を介して、検出領域ADn(n=1~7)内に現れる基板P上のアライメントマーク(又は回転ドラムDRの外周面DRs上に形成された基準パターン)と、検出領域ARn(n=1~7)内に設定される基準バー部材RBの基準マークとを、撮像部DISによって、同時に又は択一的に観察することが可能となる。基準バー部材(基準指標部材)RBの参照面RBa上に形成される基準マーク(基準指標マーク)RM1~RM7は、設計上で設定される検出領域AD1~AD7のY方向の間隔距離に対応した位置の各々に形成されている。
【0053】
図5は、
図4に示した描画ユニットU1~U6の各々による描画ラインSL1~SL6とアライメント系ALG1~ALG7の各々の検出領域AD1~AD7との配置関係と、回転ドラムDRの回転角度の変化(基板Pの周方向の位置変化)を計測するエンコーダ計測系の配置とを、直交座標系XYZのXY面と平行な面内で見た図である。回転ドラムDRのY方向の両端のシャフトSftの各々には、中心軸AXoと同軸にスケール円盤SDa、SDbが回転ドラムDRと一緒に回転するように固定されている。スケール円盤SDa、SDbの直径は回転ドラムDRの直径と同じことが望ましいが、直径の相対差が±20%以内であれば良い。スケール円盤SDa、SDbの円筒面状の外周面には、周方向に一定のピッチで刻線された回折格子状の目盛Gmが形成されている。なお、目盛Gmは回転ドラムDRのY方向の両端側の各々の外周面に直接形成しても良い。
【0054】
スケール円盤SDaの周囲には、目盛Gmの周方向の移動量を計測する光学式の3つのエンコーダヘッドEHa1、EHa2、EHa3がスケール円盤SDaの外周面の周方向に並んで設けられ、スケール円盤SDbの周囲には、目盛Gmの周方向の移動量を計測する光学式の3つのエンコーダヘッドEHb1、EHb2、EHb3がスケール円盤SDbの外周面の周方向に並んで設けられる。一対のエンコーダヘッドEHa1、EHb1による目盛Gmの周方向の読取り位置は、Y方向に一列に並ぶアライメント系ALG1~ALG7の各検出領域AD1~AD7の周方向の角度位置と同じになるように設定される。同様に、一対のエンコーダヘッドEHa2、EHb2による目盛Gmの周方向の読取り位置は、Y方向に一列に並ぶ奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5の周方向の角度位置と同じになるように設定され、一対のエンコーダヘッドEHa3、EHb3による目盛Gmの周方向の読取り位置は、Y方向に一列に並ぶ偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6の周方向の角度位置と同じになるように設定される。このようなエンコーダヘッドの配置を持つエンコーダ計測システムは、例えば国際公開第2013/146184号に開示されているように、計測のアッベ誤差を最小にすることができる。
【0055】
また、
図5において、6つの描画ラインSL1~SL6によって継ぎ露光可能なY方向の最大寸法をWAy、基板Pの幅方向(Y方向)の寸法(短尺長)をLPyとすると、基板Pの短尺長LPyは、回転ドラムDRの外周面のY方向の寸法よりも小さく、且つY方向の両端側に設定されるアライメント系ALG1、ALG7の各々の検出領域AD1、AD7のY方向の間隔寸法よりも大きくなるように設定される。基板P上の-Y方向の端部にはX方向(副走査方向)に一定間隔(例えば、5~20mm)でアライメントマーク(基板マーク)MK1が列状に配置され、基板P上の+Y方向の端部にはX方向(副走査方向)に一定間隔(例えば、5~20mm)でアライメントマークMK7が列状に配置される。アライメントマークMK1は、アライメント系ALG1の検出領域AD1内に現れるような位置に形成され、アライメントマークMK7は、アライメント系ALG7の検出領域AD7内に現れるような位置に形成される。
【0056】
基板P上には、さらに、アライメント系ALG2~ALG6の各検出領域AD2~AD6内に現れるように配置されるアライメントマーク(
図5では不図示であるが、MK2~MK6)も形成される。両端側のアライメントマークMK1、MK7は、基板P上の長尺方向に沿って連続して形成されるが、他のアライメントマークMK2~MK6は、長尺方向の適当な距離(寸法)毎に形成される。なお、本実施の形態では、描画ラインSL1~SL6の各々による線状の領域、又は描画ラインSL1~SL6の全体で囲まれる長方形の領域がパターン形成領域に相当する。
【0057】
図6Aは、基準バー部材RBの参照面RBa上のY方向の7ヶ所に形成される基準マークRM1~RM7(RM3~RM6は省略)の配置の一例を示す図である。
図6Aでは、参照面RBaと平行な平面を直交座標系X’Y’Z’のX’Y’面とし、参照面RBaの法線と平行な軸線をZ’軸とする。ここでも、直交座標系X’Y’Z’のY’軸は直交座標系XYZのY軸と平行である。基準バー部材RBの参照面RBa上には、Y’方向(Y方向)に延びた仮想的な直線CRyに沿って、基準マークRM1~RM7がY’方向に所定の間隔寸法で形成されている。即ち、基準マークRM1~RM7の各々の中心点CR1、CR2、・・・CR7は、仮想的な直線CRy上に精密に位置決めされている。
【0058】
ここで、基準マークRM1の中心点CR1と基準マークRM2の中心点CR2とのY’方向(Y方向)の間隔を寸法LBS12、基準マークRM3の中心点CR3と中心点CR2とのY’方向(Y方向)の間隔を寸法LBS23、基準マークRM4の中心点CR4と中心点CR3とのY’方向(Y方向)の間隔を寸法LBS34、基準マークRM5の中心点CR5と中心点CR4とのY’方向(Y方向)の間隔を寸法LBS45、基準マークRM6の中心点CR6と中心点CR5とのY’方向(Y方向)の間隔を寸法LBS56、そして基準マークRM7の中心点CR7と中心点CR6とのY’方向(Y方向)の間隔を寸法LBS67とする。本実施の形態では、寸法LBS12と寸法LBS67は同一の値に設定され、寸法LBS23、LBS34、LBS45、LBS56は同一の値に設定される。
【0059】
図6Bは、アライメント系ALG1の撮像素子DISによる撮像領域DIS’と、基準バー部材RB上の基準マークRM1とのX’Y’面内での配置関係の一例を誇張して表したものであり、
図6Cは、アライメント系ALG2の撮像素子DISによる撮像領域DIS’と基準バー部材RB上の基準マークRM2とのX’Y’面内での配置関係の一例を誇張して表したものである。
図6Bにおいて、2次元の撮像領域DIS’のX’方向とY’方向との中心点(基準点)をCC1とすると、基準バー部材RBとアライメント系ALG1との相対的な取付け誤差によって、基準マークRM1のX’、Y’方向の中心点CR1と撮像領域DIS’の中心点CC1とは、所定の設置誤差ΔC1だけずれたものとなっている。
図6Bでは、その設置誤差ΔC1は、基準マークRM1の中心点CR1を基準(原点)にして、X’方向に+ΔXC1(μm)、Y’方向に+ΔYC1(μm)となっている。
【0060】
同様に、
図6Cにおいて、2次元の撮像領域DIS’のX’方向とY’方向との中心点(基準点)をCC2とすると、基準バー部材RBとアライメント系ALG2との相対的な取付け誤差によって、基準マークRM2のX’、Y’方向の中心点CR2と撮像領域DIS’の中心点CC2とは、所定の設置誤差ΔC2だけずれたものとなっている。
図6Cでは、その設置誤差ΔC2は、基準マークRM2の中心点CR2を基準(原点)にして、X’方向に-ΔXC2(μm)、Y’方向に-ΔYC2(μm)となっている。なお、撮像領域DIS’の中心点CC1、CC2とは、撮像面に2次元のマトリックス状に分布する多数の撮像画素のうちの中央に位置する特定の1つの撮像画素に対応したものとするが、厳密に撮像領域DIS’の真の中心点である必要は無く、例えばX’方向又はY’方向に真の中心点から数個分~十数個分だけずれた特定の撮像画素の位置を中心点(基準点)CC1、CC2としても良い。
【0061】
また、他のアライメント系ALG3~ALG7の各々についても、同様に、各撮像領域DIS’の中心点CC3~CC7の各々と基準マークRM3~RM7の各中心点CR3~CR7との間に、設置誤差ΔC3~ΔC7があるものとする。それらの設置誤差ΔC1~ΔC7に関する情報は、装置の組み立て時、装置稼働中の適当なタイミングで実施される調整(キャリブレーション)作業時、或いは装置の保守点検(メンテナンス)の作業時に、アライメント系ALG1~ALG7の各々の撮像素子DISからの映像信号の画像解析によって求められ、適宜更新することができる。なお、
図6B、
図6Cにおいて、基準マークRM1、RM2(RM3~RM7も同様)は撮像領域DIS’内の四隅にL字状に現れるように設定されているが、十字状のマーク形状にして撮像領域DIS’内の中央部分、又は中心から左或いは右に寄った部分に現れるように設定しても良い。
【0062】
図7は、本実施の形態によるアライメント系ALGn(n=1~7)の光学構成を示す図であり、直交座標系XYZは、先の
図1~
図5と同様に設定されている。また、直交座標系XtYtZtは、先の
図3に示したものと同じである。さらに
図7において、先の
図4、
図5で説明した部材や構成と同じものには同じ符号を付してある。本実施の形態では、アライメント系ALGnとして、作動距離(ワーキングディスタンス)を10cm以上に設定した光学顕微鏡を用いる。このような顕微鏡は、例えば株式会社モリテックスからマシンビジョン用レンズとして販売されており、それを利用することもできる。
【0063】
本実施の形態では、
図7のように、アライメント系ALGnの全体は低熱膨張係数の金属又はセラミックスによる支持ブラケット(不図示)に固定されている。支持ブラケットはXZ面と平行な板状に形成され、描画ユニットU1~U6を支持する装置フレーム部に接続された構造部分(メトロロジーフレーム)に固定される。支持ブラケットには、平面ミラーMbと対物レンズ系OBL、平面ミラーMbと対物レンズ系OBLとの間の光路中に、光軸AXsと垂直な面に対してXZ面内で角度θe(θe>0)だけ傾けて配置される石英等の透過光学硝材によるプレート型(平行平板状)のビームスプリッタBS1(合成光学部材)、アライメント系ALGnの検出領域ADnを落射照明するように照明系(照明ユニット)ILUからの照明光ILbを導くビームスプリッタBS2、結像用レンズ系Gb、及び撮像素子DISが固定されている。
【0064】
図7に示すように、落射照明用の照明光ILbは、照明系ILUから光ファイバー束(マルチモードファイバー)ILFを介して、その光ファイバー束ILFの出射端ILFbからビームスプリッタBS2に向けて供給される。
図7において、ビームスプリッタBS2の結像用レンズ系Gb側には、対物レンズ系OBLの瞳面(開口絞り面)Epが形成され、ビームスプリッタBS2の光ファイバー束ILF側にも対物レンズ系OBLの瞳面(開口絞り面)Ep’が形成される。光ファイバー束ILFの出射端ILFbは、瞳面Ep’とほぼ一致するように配置され、出射端ILFbが各検出領域ADn又はARnに照射される照明光ILbの面光源像となる。光ファイバー束ILFは、多数本の光ファイバー素線を束ねた導光部材として構成され、出射端ILFbに形成される面光源像は、入射端ILFaに形成される照明光ILbの光強度分布の形状を保存したものとなる。
【0065】
光ファイバー束ILFの出射端ILFbからの照明光ILbは、ビームスプリッタBS2で反射されて対物レンズ系OBLに入射し、ビームスプリッタBS1を透過した後、平面ミラーMbで反射されて基板P上の検出領域ADn(アライメントマークMKn)に投射される。基板P上の検出領域ADnで反射した光は、ビームスプリッタBS1と対物レンズ系OBLとを介して結像光束(反射光)BmaとなってビームスプリッタBS2を透過し、結像用レンズ系Gbを介して撮像素子DISに至る。撮像素子DISの撮像面Pisは、基板P上の検出領域ADnの面と光学的に共役な関係(結像関係)に設定されると共に、ビームスプリッタBS1を介して基準バー部材RBの参照面RBa(検出領域ARn)とも光学的に共役な関係(結像関係)に設定される。
【0066】
本実施の形態では、対物レンズ系OBLから射出する照明光ILbの強度のうちの20~40%程度が、角度θeに依存して、プレート型のビームスプリッタBS1の表面(光分割面であって、光合成面)Bspで反射されて、基準バー部材RBに向かう。基準バー部材RBの参照面RBaは光学的に基板Pの表面と対応した位置に設定され、参照面RBa上に設定される検出領域ARnは照明光ILbの一部によって均一な照度分布で照明される。検出領域ARn内に配置される基準マークRMnで発生した反射光束Bmrは、光軸AXs’に沿ってビームスプリッタBS1に達し、表面Bspで反射されて、結像光束Bmaと合成されて対物レンズ系OBLに入射する。なお、
図7に示したプレート型のビームスプリッタBS1は無偏光タイプとされ、石英以外の硝材でも良い。
【0067】
従って、光ファイバー束ILFの出射端ILFbから照明光ILbが投射されると、基板P上に設定される検出領域ADnと基準バー部材RB上に設定される検出領域ARnとの両方が同時に照明光ILbによって落射照明される。その為、撮像素子DISの撮像領域DIS’内には、検出領域ADn内に現れる基板PのアライメントマークMKnの像(或いは回転ドラムDR上の基準パターンの像)と、検出領域ARn内の基準マークRMnの像とが合成されて同時に結像する。撮像素子DISは、撮像されるアライメントマークMKnと基準マークRMnとの各像に応じた映像信号を出力する。本実施の形態では、対物レンズ系OBLによる顕微鏡光学系の瞳面Ep’の位置に、光ファイバー束ILFの出射端ILFbが位置するように設定され、ほぼ円状の外形を成す出射端ILFbが瞳面Ep’内で2次光源像となって、テレセントリックな落射照明(ケーラー照明)が行われる。
【0068】
以上の
図7で示したプレート型のビームスプリッタBS1は、対物レンズ系OBLの光軸AXsと垂直な面に対して角度θeだけ傾けて、対物レンズ系OBLから射出される照明光ILbをアライメント系ALGnの下方空間に配置される基準バー部材RBに向かうように構成した。しかしながら、基準バー部材RBがアライメント系ALGnの上方空間に延設される場合は、光軸AXsと垂直な面に対するビームスプリッタBS1の傾きを逆向き(-θe)に設定すれば良い。また、プレート型のビームスプリッタBS1の厚みは、光学的な諸収差(アス等)の発生を少なくすると共に、面精度を悪化させる変形や歪みを生じない剛性を持つ範囲で、極力薄くするのが良い。
【0069】
なお、プレート型のビームスプリッタBS1の表面に反射防止膜(ARコート)を形成しない無垢の状態にすることで、角度θeに依存して光分割面(光合成面)Bspに適度な反射率を持たせることができる。また、角度θeは、光軸AXsと光軸AXs’との成す角度2θe(XZ面内での基準バー部材RBの配置)によって決まるが、角度θeが、例えば45°以上になると、基準バー部材RBに向かう照明光ILbの強度が増大し、基板Pに向かう照明光ILbの強度が極端に低下することになるので、角度θeは0°<θe<45°の範囲、更に好ましくは、5°≦θe≦30°の範囲にするのが良い。また、プレート型のビームスプリッタBS1の厚みは1mm以下、例えば0.1mmであっても良く、角度θeを調整可能とする構造を設けても良い。
【0070】
図7に示した照明系(照明ユニット)ILUは、LED等の固体光源又はハロゲンランプ光源を含む光源部ILSと、レンズ系GRと、透過硝材による2枚の平行平板SFy、SFzとを備える。レンズ系GRは、光源部ILSからの照明光ILbを、光ファイバー束ILFの円形の入射端ILFa上で所定の直径の円形分布となるように集光する。平行平板SFyは、
図7中の座標系XtYtZt内のZt軸と平行な軸回りに傾斜可能に設けられ、光ファイバー束ILFの入射端ILFa上に集光される照明光ILbのYt方向の位置をシフト調整する。平行平板SFzは、
図7中の座標系XtYtZt内のYt軸と平行な軸回りに傾斜可能に設けられ、光ファイバー束ILFの入射端ILFa上に集光される照明光ILbのZt方向の位置をシフト調整する。
【0071】
本実施の形態では、光ファイバー束ILFの入射端ILFaと出射端ILFbとが光学的に対応している為、入射端ILFa上に集光される照明光ILbの位置をシフト調整することで、出射端ILFbに光源像として形成される照明光ILb(円形)の分布を、瞳面Ep’内(光軸AXsと垂直な面内)で横シフトさせることができる。本実施の形態では、傾斜可能な平行平板SFy、SFzによって、光源像の位置を変化させてアライメント系ALGnのテレセン誤差(基板Pの表面の垂線に対する対物レンズ系OBLの光軸AXsの傾き誤差)による影響を補正する調整機構が構成される。なお、平行平板SFy、SFzの傾き調整は、手動でも良いし、小型アクチュエータ(ピエゾモータ等)を用いて電動化しても良い。
【0072】
ここで、アライメント系ALGnのテレセン誤差の発生とその影響について、
図8を参照して説明する。
図8は、
図7中の対物レンズ系OBLとビームスプリッタBS2と光ファイバー束ILFの出射端ILFbとの光学配置を模式的に示した図であり、平面ミラーMbとビームスプリッタBS1は図示を省略してある。また、
図8において、対物レンズ系OBLを通る光軸AXsは、ビームスプリッタBS2で90°に曲げられ、光ファイバー束ILFの円形の出射端ILFbの中心を通るものとする。さらに、テレセン誤差を説明する為、基板Pの表面(検出領域ADn)と光軸AXsとの成す角度が相対的に90°から僅かに傾いているものとする。
【0073】
ビームスプリッタBS2の照明系ILU側の瞳面Ep’に位置する光ファイバー束ILFの出射端ILFbの最大直径は、瞳面Ep’の直径φeと同等か、僅かに小さく設定される。そして、出射端ILFbに形成される照明光ILbによる光源像をSObとすると、その直径φsは出射端ILFbの最大直径の半分程度(40~60%)に設定されているものとする。基板P上の検出領域ADnに照射される照明光ILbの開口数(広がり角)NAiは、対物レンズ系OBLの焦点距離fobと瞳面Ep’の光源像SObの直径φsとに基づいて、NAi≒sin(φs/2/fob)で規定される。また、瞳面Ep’の直径φeと光源像SObの直径φsとの比(φs/φe)はσ値(≦1)と呼ばれ、光源像SObの直径φsを変えること、即ちσ値を変えることによって、照明光ILbの開口数NAiを調整することができる。
【0074】
図8に示すように、光軸AXsは光源像SObの中心点(Y軸とZ’軸の交点)と一致しているものとすると、対物レンズ系OBLから射出する照明光ILbの主光線(光源像SObの光軸AXs上の中心点から発生する光線)は、光軸AXsと平行になって基板P上に達する。しかながら、基板Pの表面の法線と光軸AXsとが相対的に僅かに傾いている為、検出領域ADnで正規反射した反射光LRfの主光線も、光軸AXsに対して傾いた状態で対物レンズ系OBLに入射する。対物レンズ系OBLを透過した反射光LRfの主光線は、ビームスプリッタBS2の結像用レンズ系Gb側の瞳面Ep内の光軸AXs上の位置から、例えばZ’軸に沿った方向に偏心した位置で交差(集光)する。従って、瞳面Ep内には、中心点(Y軸とZ’軸の交点)から+Z’方向に偏心して、光ファイバー束ILFの出射端像ILFb’と、反射光LRfによる直径φsの反射光源像SOb’とが形成される。
【0075】
図8において、瞳面Ep内には反射光源像SOb’の全体が位置しているが、反射光源像SOb’の周囲には、さらに基板Pの表面(検出領域ADn)から発生する散乱光や回折光が所定の広がりで分布する。テレセン誤差によって、それらの散乱光や回折光の一部が円形の瞳面Epからはみ出すことになり、結像用レンズ系Gbに入射する結像光束Bmaの対称性が崩れることになり、撮像素子DISで撮像されるアライメントマークMKnの像質、特にテレセン誤差が生じた方向に関するアライメントマークMKnのエッジ像が劣化する。その為、映像信号に基づいた画像解析によるアライメントマークMKnの位置計測に誤差が生じることになる。
【0076】
テレセン誤差が
図8の状態よりも大きくなると、反射光源像SOb’自体も円形の瞳面Epからはみ出す(けられる)ことになり、結像用レンズ系Gbに入射する反射光源像SOb’の光量(0次反射光量)が減少すると共に、散乱光や回折光の瞳面Ep内での対称性が大幅に崩れることになる。その為、撮像素子DISで撮像されるアライメントマークMKnのマーク像の明るさが大幅に減少すると共に、マーク像の像質も大幅に劣化する。
【0077】
そこで、本実施の形態では、先の
図7に示した平行平板SFy、SFzを用いて、光ファイバー束ILFの入射端ILFaに集光する照明光ILbの光源像を入射端ILFaの面内でシフトさせて、テレセン誤差による影響を補正する。
図9は、
図8と同様に
図7中の対物レンズ系OBLとビームスプリッタBS2と光ファイバー束ILFの出射端ILFbとの光学配置を模式的に示した図である。
図9に示すように、平行平板SFy、SFz(特に平行平板SFz)の調整により、光ファイバー束ILFの出射端ILFbに形成される光源像SObの中心点を、光軸AXsの位置から+Z’方向にシフトさせることができる。
【0078】
これによって、対物レンズ系OBLから基板P上の検出領域ADnに照射される照明光ILbの主光線は、光軸AXsと平行な状態から、アライメント系ALGnのテレセン誤差に対応した角度だけ傾き、基板Pの表面からの反射光LRfの主光線を光軸AXsと平行に設定することができる。その為、瞳面Ep内には、中心点(Y軸とZ’軸の交点)と同心状に光ファイバー束ILFの出射端像ILFb’と、反射光LRfによる直径φsの反射光源像SOb’とが形成される。従って、結像用レンズ系Gbに入射する結像光束Bmaの対称性が維持され、撮像素子DISで撮像されるアライメントマークMKnの像質(エッジ像)の劣化が防止できる。なお、2つの平行平板SFy、SFzの傾斜調整によって、光ファイバー束ILFの出射端ILFbに形成される光源像SObの位置を、瞳面Ep’内でY軸方向とZ’軸方向とに独立に調整できるので、2次元(Y軸方向とZ’軸方向)のテレセン誤差に対応できる。
【0079】
以上のように、本実施の形態では、平行平板SFy、SFzの傾斜調整によって、アライメント系ALGnのテレセン誤差による影響を補正するようにしたが、平行平板SFy、SFzが設けられない場合は、
図7中のレンズ系GRを傾斜可能にしても良く、また、照明系ILUと光ファイバー束ILFの入射端ILFaとの相対的な位置関係をY軸方向やZ’軸方向に物理的に調整する調整機構(微動機構)を設けても良い。さらに、光ファイバー束ILFの出射端ILFbを、ビームスプリッタBS2に対して、瞳面Ep’に沿って2次元に微動させる調整機構(微動機構)を設けても良い。要するに、本実施の形態では、落射照明型のアライメント系ALGnの対物レンズ系OBLの瞳面Ep’に形成される光源像の位置を横シフト(偏心)させることで、アライメント系ALGnを組付けた後に残留するテレセン誤差によるマーク像の像質劣化を補正できる。さらに、本実施の形態では、落射照明用の照明光ILbを伝送する光ファイバー束ILFの入射端ILFa側で光源像をシフトさせる構成とした。その為、複数のアライメント系ALGnが密に並んで、テレセン誤差を許容範囲まで追い込む手動調整(アライメント系ALGnを支持する支持ブラケットの姿勢調整等)が難しい場合でも、残留したテレセン誤差による悪影響を簡単に低減させることができる。
【0080】
〔第2の実施の形態〕
図10は、第2の実施形態によるアライメント系ALGnの概略的な光学構成を示す図であり、直交座標系XYZと直交座標系XtYtZtは、先の
図7と同様に設定される。また、
図10のアライメント系ALGnにおいて、
図7のアライメント系ALGnの光学部材や配置関係と同じものには同じ符号を付してある。本実施の形態では、対物レンズ系OBLと平面ミラーMbの間の光路中に配置されるプレート型のビームスプリッタBS1に波長選択特性を持たせ、基板P上に設定される検出領域ADn内に現れるアライメントマークMKnを照射する照明光ILbの波長成分と、基準バー部材RBの参照面RBa上に設定される検出領域ARn内の基準マークRMnを照射する照明光ILbの波長成分とを異ならせる構成とする。
【0081】
図10において、光ファイバー束ILFの出射端ILFbは、対物レンズ系OBLの瞳面Ep’の位置又はその近傍に配置され、出射端ILFbとキューブ型のビームスプリッタBS2との間で瞳面Ep’の位置には、薄い拡散板(すりガラス)Gdfが設けられる。光ファイバー束ILFの出射端ILFbと拡散板Gdfとは、
図10に示すような光軸方向の間隔を空けずに密接させても良い。その拡散板Gdfによって、瞳面Ep’に形成される光源像SObの強度分布が滑らかにされ、一様性が向上する。
【0082】
本実施の形態では、光ファイバー束ILFで伝送される照明光ILbは、例えば、400nm~700nmの波長帯域に強度分布を有するメタルハライドランプを含む照明系(照明ユニット)ILUから供給される。その照明光ILbのうちで、例えば、波長が480nmよりも短い成分を照明光ILb1とし、波長が480nmよりも長い成分を照明光ILb2とする。光ファイバー束ILFの出射端ILFbからの照明光ILbは、無偏光で波長選択特性の無いビームスプリッタBS2で反射されて対物レンズ系OBLに入射し、ビームスプリッタBS1に達する。
【0083】
図10のビームスプリッタBS1は、例えば、波長480nmをクロスオーバー波長としたダイクロイックミラーとして構成され、照明光ILbのうち、波長成分が480nmよりも短い照明光ILb1は、ビームスプリッタBS1の対物レンズ系OBL側の表面Bspで反射され、基準バー部材RBに向かう。同時に、照明光ILbのうち、波長成分が480nmよりも長い照明光ILb2は、ビームスプリッタBS1の対物レンズ系OBL側の表面Bspを透過して、平面ミラーMbを介して基板Pに向かう。ビームスプリッタBS1の表面Bspには、クロスオーバー波長が480nmのダイクロイックミラーとなるように設計された誘電体多層膜が形成され、ビームスプリッタBS1の裏側の裏面Bsp’には反射防止膜(ARコート層)が形成されている。
【0084】
ビームスプリッタBS1で反射した照明光ILb1によって照射された基準バー部材RBの基準マークRMn(検出領域ARn)からの反射光束Bmrは、再び、ビームスプリッタBS1の表面Bspで反射して対物レンズ系OBLに入射する。一方、ビームスプリッタBS1を透過した照明光ILb2によって照射された基板PのアライメントマークMKn(検出領域ADn)からの結像光束(反射光)Bmaは、再び、ビームスプリッタBS1を透過して対物レンズ系OBLに入射する。対物レンズ系OBLに入射した反射光束Bmrと結像光束(反射光)Bmaとは、ビームスプリッタBS2を透過して、結像用レンズ系Gbを介して結像光束となった撮像素子DISの撮像面Pisに達する。これによって、アライメントマークMKnの像と基準マークRMnの像とを、撮像素子DISによって同時に検出することができる。
【0085】
本実施の形態でも、先の
図7と同様に、平行平板SFy、SFzによって、光ファイバー束ILFの入射端ILFaに入射される照明光ILbをY軸方向とZ’軸方向にシフトさせて、残存するテレセン誤差による悪影響を低減させることができる。本実施の形態では、光ファイバー束ILFに照明光ILb(ILb1、ILb2)を供給する照明系ILUの光源部ILSとして、例えば、
図11に示すような波長特性を有するメタルハライドランプが使われる。
図11は、ハロゲン化錫を封入したメタルハライドランプの発光波長特性の一例を示すグラフであり、横軸は波長(nm)を表し、縦軸は相対的な発光強度(%)を表す。
【0086】
図11に示した発光波長特性において、波長480nmよりも短い波長成分(紫外波長)の照明光ILb1は、基板Pの表面に形成された感光層(フォトレジスト等)を感光させるおそれがあるが、本実施の形態では、ビームスプリッタBS1の波長選択特性により、基板Pには感光性を持つ波長成分が照射されない構成になっている。また、基板Pに照射される照明光ILb2は、波長480nm~650nmの広い帯域を有するので、基板P上のアライメントマークMKnを光透過性の感光層や薄膜層を通して観察する際に生じ得る干渉現象を低減させることができる。なお、本実施の形態では、ビームスプリッタBS1のダイクロイックミラーとしてのクロスオーバー波長を480nmに設定したが、基板Pの表面に形成される感光層の感光波長特性に応じて任意の波長に設定される。
【0087】
また、ビームスプリッタBS1のダイクロイックミラーとしてのクロスオーバー波長よりも短い波長帯域の光を発生する第1の光源からの照明光ILb1と、クロスオーバー波長よりも長い波長帯域の光を発生する第2の光源からの照明光ILb2とを同軸に合成して、光ファイバー束ILFの入射端ILFaに入射させるようにしても良い。その場合、第1の光源と第2の光源の発光強度を個別に制御することで、撮像素子DISで観察されるアライメントマークMKnの像と基準マークRMnの像との照度のバランスを調整することができる。或いは、ビームスプリッタBS1と基準バー部材RBとの間の光路中に、透過率を電気的に変えられる液晶シャッターを設けてバランスを調整しても良い。液晶シャッターを設けた場合、その透過率を最小にすることにより、基準バー部材RBの基準マークRMnの撮像素子DISによる観察が阻止され、基板P上のアライメントマークMKnだけが観察される。
【0088】
以上、本実施の形態によれば、アライメント系ALGnのビームスプリッタBS1に波長選択特性を持たせ、基準バー部材RB上の検出領域ARnへの照明光ILb1と、基板P上の検出領域ADnへの照明光ILb2とを波長帯域で分離したので、先の
図7の構成と比べると、基板Pからの結像光束(反射光)Bmaと基準バー部材RBからの反射光束Bmrの各光量の低減を抑えることができる。また、撮像素子DISをカラー撮像素子にすると、基板P上のアライメントマークMKnの像と基準バー部材RB上の基準マークRMnの像とを、画像処理の際に色によって容易に分離することができるので、誤検出等が低減できるといった利点もある。
【0089】
〔変形例1〕
図12は、
図10のアライメント系ALGnの為の照明系(照明ユニット)ILUの変形例を示す概略図である。本変形例では、アライメント系ALGnのビームスプリッタBS1の波長選択特性を利用して、発光波長特性が異なる2種の高輝度LED(発光ダイオード)光源を用いる。
図12において、第1の光源としてのLED光源LD1は、ビームスプリッタBS1のクロスオーバー波長(例えば480nm)よりも短い波長域(例えば青色)に発光ピーク波長を有する照明光ILb1を出力し、第2の光源としてのLED光源LD2は、ビームスプリッタBS1のクロスオーバー波長(例えば480nm)よりも長い波長域(例えば緑色~赤色)に複数の発光ピーク波長を有する照明光ILb2を出力する。LED光源LD1からの照明光ILb1は、集光レンズ系GS1で集光されつつ、ダイクロイックミラーDCMで直角に反射された後、平行平板SFy、SFzを透過して光ファイバー束ILFの入射端ILFa上に光源像SOaとして結像される。
【0090】
同様に、LED光源LD2からの照明光ILb2は、集光レンズ系GS2で集光されつつ、ダイクロイックミラーDCMを透過して、照明光ILb1と同軸に合成された後、平行平板SFy、SFzを透過して光ファイバー束ILFの入射端ILFa上に光源像SOaとして結像される。
図12のダイクロイックミラーDCMの波長選択特性は、アライメント系ALGnのビームスプリッタBS1の波長選択特性と同様に設定され、クロスオーバー波長は、例えば480nmに設定される。
【0091】
図13は、ダイクロイックミラーDCMの波長選択特性とLED光源LD1、LD2の各々の発光波長特性とを模式的に示したグラフであり、横軸は波長(nm)を表し、縦軸はダイクロイックミラーDCMの透過率/反射率(%)を表す。ダイクロイックミラーDCMは、波長480nmよりも短い波長帯域の光に対しては、90~95%の反射率を有すると共に、5%以下の透過率を有し、波長480nmよりも長い波長帯域の光に対しては、90~95%の透過率を有すると共に、5%以下の反射率を有する。LED光源LD1は、一例として、波長440nm付近に発光ピーク波長を有する青色の照明光ILb1を出力するが、その発光ピーク波長は460nmよりも短ければ良い。LED光源LD2は、多色発光型の発光ダイオードで構成され、一例として、波長520nm付近に発光ピーク波長を有する緑色の光と、波長590nm付近に発光ピーク波長を有する黄色の光と、波長670nm付近に発光ピーク波長を有する赤色の光とが合成された照明光ILb2を出力する。
【0092】
また、
図12に示すように、LED光源LD1、LD2の各々の発光強度(駆動電流)は、照明制御部LCUによって個別に調整可能とされ、基板Pの表面の反射率の変化に応じて、照明光ILb1、ILb2の照度バランスを最適に調整することができる。なお、LED光源LD2は、多色発光型の発光ダイオードの代わりにハロゲンランプに変えて、520nmよりも短い波長帯域をカットする波長フィルターを通して、集光レンズ系GS2に照明光ILb2を入射させるようにしても良い。さらに、
図12中の集光レンズ系GS1、GS2の焦点距離(f値)や光軸方向の位置を変えられる構成にすることにより、光ファイバー束ILFの入射端ILFa上に形成される光源像SOaのサイズ(直径)を変更でき、結果的にアライメント系ALGnの対物レンズ系OBLを介した落射照明の開口数(NA値)を調整することができる。また、集光レンズ系GS1、GS2の焦点距離や光軸方向の位置をそれぞれ個別に可変にした場合、光ファイバー束ILFの入射端ILFa上に形成される照明光ILb1による光源像SOaの直径と、照明光ILb2による光源像SOaの直径とを異ならせることができる。
【0093】
〔変形例2〕
図14は、
図7又は
図10に示したアライメント系ALGnに照明系ILUからの照明光ILbを伝送する導光部材の光学構成の変形を示す図である。アライメント系ALGnの対物レンズ系OBLによる基板P上の検出領域ADnや基準バー部材RB上の検出領域ARnは、1mm角~0.6mm角位のサイズであり、対物レンズ系OBLの瞳面Ep、Ep’の最大径φeは5mm~10mm位となる。一方、光ファイバー束ILFとしては、価格や柔軟性の観点から、入射端ILFaや出射端ILFbの有効直径(バンドル径)が1mm~3mm位のものを使う場合がある。この場合、光ファイバー束ILFの出射端ILFbに形成される光源像SOb(
図8又は
図9参照)を、瞳面Ep’内の中心点からY軸方向やZ’軸方向に大きく位置調整(シフト移動)させることが困難になる。
【0094】
そこで、本変形例では、
図14に示すように、照明系ILU内の光源部ILSで作られる直径φcの光源像SOa’からの照明光ILbを、平行平板SFy、SFzを介して、正のレンズGw1と正のレンズGw2による倍率MJ1の縮小結像系LK1を通して、光ファイバー束ILFの入射端ILFaに集光する。縮小結像系LK1は、光源部ILSの光源像SOa’の位置と光ファイバー束ILFの入射端ILFaとを光学的に共役関係にすると共に、直径φcの光源像SOa’を倍率MJ1で縮小して入射端ILFaに結像する。例えば、光源像SOa’の直径φcが6mmであって、光ファイバー束ILFのバンドル径が1mmの場合、縮小結像系LK1の倍率MJ1は1/10倍程度に設定され、光ファイバー束ILFの入射端ILFaに形成される光源像SOaの直径φs’は0.6mmになる。また、光源像SOa’の直径φcが6mmであって、光ファイバー束ILFのバンドル径が2mmの場合、縮小結像系LK1の倍率MJ1は1/5倍程度に設定され、光ファイバー束ILFの入射端ILFaに形成される光源像SOaの直径φs’は1.2mmになる。
【0095】
図14に示すように、光ファイバー束ILFの入射端ILFa(出射端ILFbも同様)には、束ねられた多数本の光ファイバー素線FBuの端面が稠密状態で円形状に配列されている。光ファイバー束ILFは、先の
図7、
図10の光ファイバー束ILFと同様にマルチモードのものが使われ、入射端ILFaに形成される光源像SOaを、その形状、寸法、配置を保存した状態で出射端ILFbに光源像SObとして形成する。光ファイバー束ILFの出射端ILFbに形成される光源像SObからの照明光ILbは、正のレンズGw3と正のレンズGw4による倍率MJ2の拡大結像系LK2を通して、
図7又は
図10に示した瞳面Ep’に集光される。拡大結像系LK2は、光ファイバー束ILFの出射端ILFbの位置と瞳面Ep’とを光学的に共役関係にすると共に、出射端ILFbの光源像SObの直径を倍率MJ2で拡大して瞳面Ep’に直径φsの光源像SOc’として結像する。本変形例では、
図14に示すように、瞳面Ep’の位置に
図10と同様の拡散板Gdfが設けられているが、
図7のように省略しても良い。
【0096】
先の数値例のように、光ファイバー束ILFのバンドル径が1mmで、縮小結像系LK1の倍率MJ1が1/10倍の場合、拡大結像系LK2の倍率MJ2は約8倍に設定され、光ファイバー束ILFの出射端ILFbに形成される直径0.6mmの光源像SObは、瞳面Ep’で直径φsが約4.8mmの光源像SOc’に拡大される。また、光ファイバー束ILFのバンドル径が2mmで、縮小結像系LK1の倍率MJ1が1/5倍の場合、拡大結像系LK2の倍率MJ2は約4倍に設定され、光ファイバー束ILFの出射端ILFbに形成される直径1.2mmの光源像SObは、瞳面Ep’で直径φsが約4.8mmの光源像SOc’に拡大される。一例として、瞳面Ep’(Ep)の最大直径が8mmの場合、光源像SOc’の直径φsが4.8mmの場合のσ値は、約0.6(=4.8/8)となる。
【0097】
以上の
図14の構成において、縮小結像系LK1の倍率MJ1と拡大結像系LK2の倍率MJ2とは、光源部ILSで作られる光源像SOa’の寸法(直径)、瞳面Ep’に形成する光源像SOc’の寸法(直径)、及び光ファイバー束ILFのバンドル径とに応じて適宜設定される。但し、光ファイバー束ILFの入射端ILFaのバンドル径と、入射端ILFaに形成される光源像SOaの直径φs’と、
図14中の平行平板SFy、SFzによる光源像SOaのシフト範囲の間には所定の条件が存在する。そのことを、
図15を参照して説明する。
【0098】
図15は、
図14に示した光ファイバー束ILFの入射端ILFaの面内に形成される光源像SOaの様子を模式的に示す図であり、Y軸とZ’軸は
図14と同様に設定される。
図15において、光ファイバー素線が束ねられた光ファイバー束ILFの周囲は、斜線で示した遮光性の被覆材(チューブ)で覆われている。円形状の入射端ILFaの中心点をY軸とZ’軸の交点Oc(
図14で示した光軸AXsが通る原点Ocとも呼ぶ)とし、入射端ILFaの直径(バンドル径)をφbdとする。また、円形状の直径φs’の光源像SOaが入射端ILFa内からはみ出すこと無く位置シフト可能な範囲は、光源像SOaの中心点Csoが、原点Ocを中心とした半径Rssの円形の領域Cs内に位置する範囲である。
【0099】
図14に示した平行平板SFy、SFzの各傾斜角が初期状態(光軸AXsと垂直な状態)のときに、光源像SOaの中心点Csoが原点Ocと一致するものとし、平行平板SFy、SFzの各傾斜角の調整によって、光源像SOaの中心点Csoが原点OcからY軸方向にΔYsだけ位置シフトし、Z’軸方向にΔZsだけ位置シフトするものとする。
図15に示すように、入射端ILFaの直径φbdと光源像SOaの直径φs’とは、当然の前提であるが、φbd>φs’の関係に設定される。さらに、アライメント系ALGnの光学特性とテレセン誤差の調整範囲(領域Csの半径Rssの長さに相当)とを考慮して、光源像SOaの直径φs’は直径φbdの0.2~0.8倍の範囲に設定される。そして、光源像SOaの位置シフト量ΔYs、ΔZsの範囲は、φbd>φs’の前提条件の下で、
(φbd-φs’)/2≧Rss
2=(ΔYs)
2+(ΔZs)
2
の関係を満たすように設定される。
【0100】
一例として、光ファイバー束ILFの入射端ILFaの直径φbdを2mm、光源像SOaの直径φs’を0.4mmとした場合、領域Csの半径Rssの最大値は0.8mmとなる。この場合、
図14に示した光ファイバー束ILFの出射端ILFbに形成される光源像SObも直径φs’と同じに0.4mmとなり、拡大結像系LK2の倍率MJ2を4倍とすると、アライメント系ALGnの瞳面Ep’に形成される光源像SOc’の直径φs’は1.6mmになり、光源像SOc’の中心点の位置シフトの最大範囲は、最大の半径Rss(0.8mm)の4倍の半径3.2mmの円形領域内となる。なお、この場合のアライメント系ALGnの瞳面Ep’の実効的な直径は8mm~10mmに設定されている。
【0101】
以上のような条件の場合、
図14中の光源部ILSの光源像SOa’の直径φcは縮小結像系LK1の倍率MJ1(1/10倍)から、φc=φs’/MJ1(=4mm)となる。さらに、平行平板SFy、SFzの傾斜角は、光ファイバー束ILFの入射端ILFa側から見たとき、光源像SOa’の中心点が、光軸AXsから最大の半径Rss/MJ1(=8mm)の円形の範囲内で相対的に位置シフトするような範囲で調整される。すなわち、平行平板SFy、SFzの傾斜角の調整幅が広くでき、入射端ILFaに形成される光源像SOa、並びに瞳面Ep’に形成される光源像SOc’の位置シフトを精密に実施できる。なお、
図14では、平行平板SFy、SFzを光源部ILSと縮小結像系LK1の間に設けたが、平行平板SFy、SFzは拡大結像系LK2と瞳面Ep’との間に設けても良い。
【0102】
さらに、平行平板SFy、SFzを省略して、光源部ILS自体をY軸方向とZ’軸方向との2次元に移動させる可動機構、或いは光ファイバー束ILFの出射端ILFbと拡大結像系LK2とを一体的に保持して、瞳面Ep’に沿った面内で2次元に移動させる可動機構を設けても良い。特に、縮小結像系LK1の倍率MJ1の逆数を拡大結像系LK2の倍率MJ2よりも大きくしておき、縮小結像系LK1側に設けた平行平板SFy、SFz、又は光源部ILS自体を移動させる可動機構を用いると、アライメント系ALGnから光ファイバー束ILFの長さ分だけ離れた遠隔位置で、残存したテレセン誤差の影響を、容易に且つ精密に改善することができる。
【0103】
以上の各実施の形態や各変形例では、基板P上のアライメントマークMKnの検出の際に生じる残存テレセン誤差による悪影響を低減する為に、複数のアライメント系ALGnの各々の瞳面Ep’に形成される光源像SOb又はSOc’をシフトさせた。その為、複数のアライメント系ALGn(ALG1~ALG7)の各々に対応して配置された基準バー部材RB上の基準マークRMnの各々に対するテレセン誤差による影響が発生し得る。しかしながら、基準バー部材RB上の基準マークRMnは、例えばクロム等の金属により0.1μm以下(例えば、500Å位)の薄膜として構成されている為、残存したテレセン誤差の範囲内では、基準マークRMnのエッジ部の像質の劣化はほとんど生じない。
【0104】
〔変形例3〕
図16は、先の
図7、
図10に示したアライメント系ALGnの変形例による光学構成を模式的に示す図であり、本変形例ではビームスプリッタBS1をキューブ型に変更する。
図16において、直交座標系XtYtZtは先の
図7、
図10と同じに設定され、また、
図16中の光学部材やその配置等についても、
図7又は
図10と同じ機能のものには同じ符号を付してある。
【0105】
図16に示すように、対物レンズ系OBLと平面ミラーMbとの間の光路中には、XtZt面と平行な面内における断面形状が五角形の石英による第1のプリズムPSMaと、三角形の石英による第2のプリズムとを光分割面Bspで貼り合せたキューブ型のビームスプリッタBS1が配置される。プリズムPSMaは、対物レンズ系OBLと対向した光軸AXsと垂直な透過面BS1aと、光軸AXsと平行に配置された基準バー部材RBの参照面RBaと平行であって面BS1aと直角な透過面BS1cと、XtZt面内で見たときに光軸AXsと垂直な面に対して角度θe’だけ傾いた光分割面Bspと、Zt方向に関して光軸AXsを挟んで面BS1cの反対側に位置する反射面BS1bとを有する。また、プリズムPSMbは、光分割面Bspに対しては傾いて平面ミラーMb側に位置し、光軸AXsと垂直な透過面BS1dを有する。
【0106】
光分割面Bspの角度θe’は、本変形例では22.5度に設定され、反射面BS1bも、XtZt面内で見たときに光軸AXsに対して22.5度だけ傾いて設定される。従って、光分割面Bspで反射される光軸AXs1は光軸AXsに対して45度になり、反射面BS1bで反射される光軸AXs’は光軸AXsと90度になる。また、本変形例のビームスプリッタBS1の光分割面Bspは、先の
図7と同様に、対物レンズ系OBLからの照明光ILbを所定の割合で透過光と反射光とに振幅分割する構成でも良いし、或いは先の
図10と同様に、対物レンズ系OBLからの照明光ILbの波長分布に応じて透過波長成分と反射波長成分とに波長分割する構成(ダイクロイックミラー面)でも良い。さらに、ビームスプリッタBS1の光分割面Bspを偏光分離面とするような誘電体多層膜で形成しても良い。その場合、光源像SOb、又はSOc’を形成する照明光ILbは、互いに直交する2つの直線偏光(P偏光とS偏光)を所定の照度で含むように構成される。
【0107】
図16の構成において、ビームスプリッタBS2は、P偏光とS偏光を含む照明光ILbを反射して対物レンズ系OBLに入射させ、対物レンズ系OBLからの照明光ILbは、ビームスプリッタBS1の透過面BS1aから入射して光分割面Bspに達する。光分割面Bspに対する光軸AXsの入射角は角度(90-θe’)であり、その入射角において光分割面Bspがブリュースター角となるように設定されていると、照明光ILb内のP偏光成分の光量のほとんどが透過してビームスプリッタBS1の透過面BS1dから射出し、平面ミラーMbを介して基板P上に照射される。また、照明光ILb内のS偏光成分は、その半分以上の光量が光分割面Bspで反射して残りの光量が透過する。
【0108】
照射された照明光ILbによる基板P(アライメントマークMKn)からの結像光束(反射光)Bmaには、P偏光成分と、P偏光成分よりも少ない光量比のS偏光成分とが含まれる。その結像光束BmaはビームスプリッタBS1を逆進して、対物レンズ系OBLを介してビームスプリッタBS2に達する。結像光束BmaのうちのP偏光成分は、ビームスプリッタBS1の光分割面Bspをほとんど透過し、結像光束BmaのうちのS偏光成分は、その半分以下の光量だけが透過して対物レンズ系OBLに入射する。
【0109】
一方、ビームスプリッタBS1の光分割面Bspで反射された照明光ILbのS偏光成分は、ビームスプリッタBS1の反射面BS1bで反射されて、透過面BS1cを通って、基準バー部材RBの参照面RBaに照射される。照射された照明光ILbによる参照面RBa(基準マークRMn)からの反射光束Bmr(S偏光成分のみ)は、ビームスプリッタBS1を逆進して、対物レンズ系OBLを介してビームスプリッタBS2に達する。これによって、基準マークRMnからの反射光束Bmrによる像と、基板P上のアライメントマークMKnからの結像光束(反射光)Bmaによる像とが合成されて、
図7又は
図10に示した撮像素子DISによって撮像される。
【0110】
本変形例の場合、光源像SOb又はSOc’を形成する照明光ILbの波長帯域は、例えば、基板P上の感光層に対して非感光性の波長域に設定される。また、照明光ILbに含まれるP偏光成分の光量とS偏光成分の光量とは、それぞれ個別に調整可能としておくと良い。さらに、本変形例におけるビームスプリッタBS1の光分割面Bspを、波長選択性を有するダイクロイックミラー面とする場合は、先の
図10~
図13で説明した構成のように、照明光ILbに波長分布特性を持たせれば良い。
【0111】
〔変形例4〕
図17は、
図14に示した照明系(照明ユニット)ILU内で光源像SOa’を形成する光源部ILSの変形例を示す。本変形例の光源部ILSは、先の
図12に示した構成と同様のLED光源LD1、集光レンズ系GS1、及びダイクロイックミラーDCMを備え、LED光源LD1は、例えば480nmよりも短い波長域(例えば青色)に発光ピーク波長を有する照明光ILb1をダイクロイックミラーDCMに向けて主光線が平行となるように出力する。本変形例の光源部ILSは、さらに、小型のハロゲンランプ又は放電ランプ(以下、単にランプ光源と呼ぶ)LVp、楕円面鏡Mh、ミラーMg、及び集光レンズ系GS2とを備え、ランプ光源LVpの発光点(輝点)Svからの照明光ILb2を、光軸と垂直な面内での強度分布が輪帯状となるように楕円面鏡Mhで集光した後、ミラーMgと集光レンズ系GS2を介してダイクロイックミラーDCMに向けて出力する。
【0112】
ダイクロイックミラーDCMは、先の
図13に示した波長特性のように、クロスオーバー波長が約480nmに設定され、LED光源LD1からの照明光ILb1に対しては90%以上の反射率を有し、波長が480nmよりも長い波長帯域の光に対しては90%以上の透過率を有する。その為、ランプ光源LVpからの照明光ILb2は、ダイクロイックミラーDCMを透過した後に波長480nmよりも長い波長帯域に制限された光となる。ランプ光源LVpの発光点(輝点)Svは楕円面鏡Mhの第1焦点に配置され、照明光ILb2はミラーMgの位置、又はその近傍の位置の第2焦点の位置で集光された後に発散して、集光レンズ系(コンデンサーレンズ系)GS2に入射して、主光線が平行な光束に変換される。
【0113】
本変形例の光源部ILSでは、ダイクロイックミラーDCMを透過した照明光ILb2は、所定の外径と内径とを有する輪帯状の強度分布に設定され、ダイクロイックミラーDCMで反射された照明光ILb1は、照明光ILb2の輪帯状強度分布の内径と同等、又はその内径よりも少し大きな径の円形状の強度分布に設定される。輪帯状強度分布の照明光ILb2と円形状強度分布の照明光ILb1とは、光軸AXsを中心として同軸に合成された照明光ILbとなり、マイクロ・フライアイ・レンズ系MFLに入射する。マイクロ・フライアイ・レンズ系MFLは、多数の微小凸レンズ素子(例えば、直径が0.5mm以下)を光軸AXsと垂直な面内にマトリックス状に並べたものであり、マイクロ・フライアイ・レンズ系MFLの射出面Epoは、LED光源LD1の発光点、及びランプ光源LVpの発光点Svと光学的に共役な関係となり、射出面Epoには、多数の点光源像が円形領域内にマトリックス状に配置された2次の光源像が形成される。
【0114】
射出面Epoに形成される光源像からの照明光ILbは、レンズ系GS3、GS4とで構成される縮小リレー光学系に入射し、射出面Epoと光学的に共役な面に縮小された光源像SOa’が形成される。レンズ系GS3とレンズ系GS4の間には視野絞りFAPが配置されるが、その位置は、光学的には基板Pの表面、及び基準バー部材RBの参照面RBaと共役な関係になっている。
図17に示した光源像SOa’は、外径が半径Rr2で内径が半径Rr2’の輪帯状分布の照明光ILb2と、半径Rr1の円形状分布の照明光ILb1とで形成され、半径Rr2’<半径Rr1<半径Rr2の関係にすることで、光源像SOa’の面内で、半径Rr2’と半径Rr1との間の領域では照明光ILb1と照明光ILb2との両方が分布する。
【0115】
図17中の光源像SOa’は先の
図14に示した光源像SOa’となり、光源像SOa’からの照明光ILbは、平行平板SFy、SFzを介して縮小結像系LK1に入射する。
図17中の光源像SOa’の光強度分布は、
図14中の光ファイバー束ILFの入射端ILFaに縮小して形成される。光ファイバー束ILFは、入射端ILFaにおける光強度分布の形状を保存した状態(合同又は相似の状態)で、出射端ILFbに光強度分布を伝達する。従って、
図14中の拡大結像系LK2を介して瞳面Ep’に形成される光源像SOc’の光強度分布は、
図17中の光源像SOa’の光強度分布と相似形になる。
【0116】
さらに、本変形例で生成された照明光ILb(円形分布の照明光ILb1と輪帯分布の照明光ILb2)は、先の
図16(又は
図10)に示したアライメント系ALGnのビームスプリッタBS2、対物レンズ系OBLを介して、波長選択特性を有するビームスプリッタBS1に達する。ビームスプリッタBS1は、例えば、480nmよりも長い波長帯域の光を透過し、それよりも短い波長帯域の光は反射するので、照明光ILbのうちの輪帯分布の照明光ILb2は光分割面Bsp(ダイクロイックミラー面)を透過して、基板P上のアライメントマークMKn(又は回転ドラムDRの外周面DRs上の基準パターン)を落射照明する。一方、照明光ILbのうちの円形分布の照明光ILb1は光分割面Bspで反射して、基準バー部材RBの参照面RBa上の基準マークRMnを落射照明する。
【0117】
本変形例では、対物レンズ系OBLを介して基板P上に照射される照明光ILb(ILb2)が、いわゆる輪帯照明となっているので、撮像素子DISの撮像面に形成されるアライメントマークMKn(又は回転ドラムDR上の基準パターン)の像の像質(特にエッジのコントラスト)を良好にしたり、焦点深度を広げたりすることができる。また、先の
図12の構成で説明したのと同様に、
図17中の集光レンズ系GS1、GS2の各々の焦点距離(f値)や光軸方向の位置を個別に可変にすることで、最終的にアライメント系ALGnの対物レンズ系OBLの瞳面Ep’に形成される照明光ILb1による円形状の面光源像の直径(
図17中の半径Rr1に対応)と、照明光ILb2による輪帯状の面光源像の外径(
図17中の半径Rr2に対応)とを個別に調整することができる。
【0118】
〔変形例5〕
図18は、先の
図12、
図17に適用される光源部ILSのうち、ダイクロイックミラーDCM付近の変形例を示す。本変形例では、先の
図7、
図14で示した平行平板SFy、SFzを、照明光ILb1を集光又はコリメートする集光レンズ系GS1とダイクロイックミラーDCMとの間の光路中、並びに、照明光ILb2を集光又はコリメートする集光レンズ系GS2とダイクロイックミラーDCMとの間の光路中に配置する。これによって、光ファイバー束ILFの入射端ILFaに形成される照明光ILb1(短波長帯域)による光源像と、照明光ILb2(長波長帯域)による光源像とを、Y軸方向とZ’軸方向とに個別に位置シフトさせることができる。従って、本変形例によれば、アライメント系ALGnのビームスプリッタBS1に波長選択性を持たせる構成との組み合わせにより、対物レンズ系OBLと基板Pの表面との間のテレセン誤差による影響と、対物レンズ系OBLと基準バー部材RBの参照面RBaとの間のテレセン誤差による影響とを独立して補正することが可能となる。
【0119】
なお、先の
図7又は
図14で示した平行平板SFy、SFzによって、対物レンズ系OBLと基板Pの表面との間のテレセン誤差による影響を補正した後、その補正によって副次的に生じ得る対物レンズ系OBLと基準バー部材RBの参照面RBaとの間のテレセン誤差による影響を、集光レンズ系GS1とダイクロイックミラーDCMとの間に設けられて照明光ILb1を透過する平行平板SFy、SFzによって補正しても良い。その場合は、
図18中の集光レンズ系GS2とダイクロイックミラーDCMとの間の照明光ILb2を透過する平行平板SFy、SFzを省略できる。
【0120】
〔変形例6〕
また、
図10、
図16のようなアライメント系ALGnのビームスプリッタBS1の光分割面Bspを偏光分離面とし、基板Pの表面に照射される照明光ILbと基準バー部材RBの参照面RBaに照射される照明光ILbとを、直交したP偏光成分とS偏光成分で分離する場合も、平行平板SFy、SFzの配置を変えることで、アライメント系ALGの基板Pに対するテレセン誤差による影響と、基準バー部材RBに対するテレセン誤差による影響とを個別に補正することができる。
【0121】
図19は、例えば、先の
図14に示した光源部ILSの変形例を示す図であり、
図19の光源部ILSを用いる場合、先の
図7、
図10、
図16の各々に示したアライメント系ALGnのビームスプリッタBS2は振幅分割型に設定され、ビームスプリッタBS1の光分割面Bspは偏光分離面とされ、落射照明の照明光ILbに含まれるP偏光成分は光分割面Bspを透過し、S偏光成分は光分割面Bspで反射されるように構成される。
図19において、固体光源(半導体レーザ光源、LED光源等)からの円偏光の光束ILoは、振幅分割型のビームスプリッタBS4に入射する。ビームスプリッタBS4を透過した円偏光の光束ILoは、波長板(1/4λ板)QWPを透過して、直線S偏光の照明光ILb1に変換され、ミラーMJaで直角に折り曲げられてから、平行平板SFz、SFyを通って、偏光ビームスプリッタBS5に入射する。直線S偏光の照明光ILb1は、偏光ビームスプリッタBS5の偏光分離面において90%以上の反射率で直角に反射され、光源像SOa’として集光される。
【0122】
一方、ビームスプリッタBS4で直角に反射された円偏光の光束ILoは、波長板(1/2λ板、又は2枚の1/4λ板)HWPを透過して、直線P偏光の照明光ILb2に変換された後、平行平板SFz、SFyを通ってミラーMJbで直角に反射された後、偏光ビームスプリッタBS5に入射する。直線P偏光の照明光ILb2は、偏光ビームスプリッタBS5の偏光分離面を90%以上の透過率で直進し、光源像SOa’として集光される。本変形例においても、直線S偏光の照明光ILb1と直線P偏光の照明光ILb2とを含む光源像SOa’からの照明光ILbは、先の
図14に示した縮小結像系LK1を介して光ファイバー束ILFの入射端ILFaに入射し、最終的にアライメント系ALGnの瞳面Ep’に光源像SOc’となって形成される。
【0123】
瞳面Ep’に形成される光源像SOc’にはP偏光成分とS偏光成分とが含まれているが、P偏光成分の光源像SOc’は、
図19中の照明光ILb2の光路中に配置された平行平板SFz、SFyの傾斜角の調整によって瞳面Ep’内で2次元に位置シフトでき、基板Pの表面に対するテレセン誤差による影響を補正できる。また、S偏光成分の光源像SOc’は、
図19中の照明光ILb1の光路中に配置された平行平板SFz、SFyの傾斜角の調整によって瞳面Ep’内で2次元に位置シフトでき、基準バー部材RBの参照面RBaに対するテレセン誤差による影響を補正できる。なお、
図14のように、光源像SOa’と縮小結像系LK1との間に平行平板SFz、SFyを設けておく場合は、
図19に示した照明光ILb1の光路中に配置された平行平板SFz、SFyと、照明光ILb2の光路中に配置された平行平板SFz、SFyとのいずれか一方は省略しても良い。
【0124】
〔変形例7〕
図20は、先の
図7、
図10、
図16のいずれかのアライメント系ALGn(n=1~7)の各々に照明光ILbを供給する為に、先の
図14の構成による導光部材を用いた場合の照明系ILUの概略的な構成を示す図である。本変形例では、7つのアライメント系ALG1~ALG7の各々に供給される照明光ILbを、1つの光源部LPOからの光を分配する光分配部BDUを介して得るようにする。
図20において、7つのアライメント系ALG1~ALG7は同じ構成なので、代表してアライメント系ALG1の概略構成のみを説明し、他のアライメント系ALG2~ALG7についての詳細構成の説明は省略する。光源部LPOは、高輝度の水銀放電ランプやハロゲンランプ等を含み、光分配部BDUは振幅分割型の複数のビームスプリッタと複数のミラーとによって、光源部LPOからの光束を同じ強度の8つの光束に分割する。
【0125】
光分配部BDUで分割された8つの光束の各々は、光ファイバー束FB1~FB8に供給され、その内の7本の光ファイバー束FB1~FB7は、それぞれ、
図14中に示した縮小結像系LK1に供給される。また、
図20において、光ファイバー束FB8は予備として設けられ、通常は使われない。光ファイバー束FB1~FB7の各々の出射端に形成される光源像は、
図14に示した光源部ILSの光源像SOa’に相当し、光ファイバー束FB1~FB7の各々からの光束(照明光ILb)は、それぞれ縮小結像系LK1、平行平板SFz、SFyを介して光ファイバー束ILFに入射し、さらに拡大結像系LK2を介してアライメント系ALG1~ALG7の各々の瞳面Ep’に光源像SOc’として集光される。
【0126】
本変形例においては、光源部LPOとして水銀放電ランプやハロゲンランプを用いた場合、光源部LPOからの光束(照明光ILb)の波長特性は、例えば波長480nmよりも短い波長帯域と長い波長帯域とに強度分布を持つので、アライメント系ALG1~ALG7の各々のビームスプリッタBS1の光分割面Bspに波長選択特性を持たせることで、基板Pの表面(アライメントマークMKn)を落射照明する照明光ILbと、基準バー部材RBの参照面RBa(基準マークRMn)を落射照明する照明光ILbとの強度を個別に調整することもできる。その為に、例えば、先の
図7、
図10、
図16に示したアライメント系ALGnの各々のビームスプリッタBS1と基準バー部材RBとの間に、減光フィルター(NDフィルター)や電気的に透過率を調整できる液晶シャッター等を設けても良い。さらに、アライメント系ALGnの各々のビームスプリッタBS1と平面ミラーMbとの間に、例えば、波長400nm(感光層に対して非感光な波長)よりも短い波長帯域の光を遮断する波長フィルターを設けても良い。
【0127】
また、
図20では、縮小結像系LK1と拡大結像系LK2と光ファイバー束ILFとで構成される導光部材を用いたが、光ファイバー束FB1~FB7の各々の出射端をアライメント系ALG1~ALG7の各瞳面Ep’の位置又はその近傍位置に直接配置しても良い。その場合、テレセン誤差に対する補正は、光ファイバー束FB1~FB7の各々の入射端に照射される光束(照明光ILb)と入射端との相対的な位置を横シフトさせる為の傾斜可能な透過性の平行平板を光分配部BDU内に設けることで可能となる。その場合、光ファイバー束FB1~FB7は、その出射端に形成される光束(照明光ILb)の強度分布が入射端に形成される光束の強度分布の形状を保存するようなタイプに設定される。
【0128】
なお、
図20の光分配部BDUでは、光源部LPOからの光束を8分割(偶数分割)するように設定したが、これは、複数の振幅分割型のビームスプリッタの各々の反射率と透過率とを50%にすることができると共に、分割された光束の各々の強度を等しくできるからである。また、光分配部BDU内には、光ファイバー束FB1~FB7の各々に入射する光束の波長帯域を、400~700nm程度に制限するバンドパスフィルターを設けても良い。
【0129】
〔第3の実施の形態〕
図21は、第3の実施の形態によるアライメント系ALGnと照明系(照明ユニット)ILUの概略構成を示す図である。本実施の形態では、アライメント系ALGnの対物レンズ系OBLの瞳面Ep’に形成する光源像SObの位置を横シフトさせる為の構成として、2枚の回転可能な楔プリズムDP1、DP2を用いる。
図21において、先の
図7、
図10、又は
図16に示した部材と同じ機能の部材には同じ符号を付してあるので、その詳細な説明は省略する。また、本実施の形態では、基準バー部材RBの基準マークRMnを検出しない構成とするので、基板Pと対物レンズ系OBLの間に配置されるビームスプリッタBS1は省かれている。
【0130】
図21のアライメント系ALGnは、基板P側から、平面ミラーMb、対物レンズ系OBL、ビームスプリッタBS2、結像用レンズ系Gb、及び撮像素子DISと、を備え、基板P上のアライメントマークMKnの拡大像が撮像素子DISの撮像面Pisに結像される。本実施の形態における照明系ILUは、光源部ILSで生成された光源像SOaを、対物レンズ系OBLの瞳面Ep’に光源像SObとして結像するリレーレンズ系G10、G11を備える。レンズ系G10とレンズ系G11との光軸AXj方向の間には、視野絞り板FAPが配置され、レンズ系G10は視野絞り板FAPをテレセントリックにケーラー照明する。視野絞り板FAPは、レンズ系G11、ビームスプリッタBS2、平面ミラーMJc、対物レンズ系OBL、平面ミラーMbによって、基板Pの表面と共役な関係(結像関係)になるように設定される。視野絞り板FAPの矩形の開口部(透明部)を通った照明光ILbは、基板P上の検出領域(観察視野)ADnを均一な照度分布で照明する。即ち、基板P上の検出領域(観察視野)ADnの形状は、視野絞り板FAPの矩形の開口部(透明部)の形状と相似になっている。
【0131】
さらに本実施の形態では、照明系ILUのレンズ系G10と視野絞り板FAPとの間に、リレーレンズ系G10、G11の光軸AXjを中心として360度回転可能な2枚の楔プリズムDP1、DP2(頂角が同じ)が光軸AXjに沿って配置される。楔プリズムDP1、DP2は、例えば、
図22に誇張して示すように、各々の回転角度を調整することによって、レンズ系G10の本来の光軸AXjを光軸AXj’のように、任意の向きに微少量傾けることができる。
図22において、楔プリズムDP1のレンズ系G10側の入射面DP1aは、光軸AXjと垂直に設定され、出射面DP1bは光軸AXjと垂直な面に対して傾いた斜面に設定され、入射面DP1aと出射面DP1bとが頂角を成している。同様に、楔プリズムDP2の楔プリズムDP1側の入射面DP2aは、光軸AXjと垂直な面に対して傾いた斜面に設定され、出射面DP2bは光軸AXjと垂直に設定され、入射面DP2aと出射面DP2bとが頂角を成している。
【0132】
その為、楔プリズムDP1、DP2の各々の回転角度位置を変えることによって、楔プリズムDP2から一定距離Lxxの位置において、光軸AXj’を、本来の光軸AXjを中心とする円Cdp内の任意の位置を通るように傾斜させることができる。従って、
図21に示した視野絞り板FAPを照射する照明光ILbの主光線は、楔プリズムDP1、DP2によって、本来の光軸AXjに対して傾けることができ、瞳面Ep’に形成される光源像SObを横シフトせることができる。視野絞り板FAPの開口部と基板Pの表面とは共役関係に設定されているので、基板P上の検出領域ADnを照明する照明光ILbの主光線を対物レンズ系OBLの光軸AXsに対して傾斜させることができ、アライメント系ALGnの残留したテレセン誤差を補正することができる。本実施の形態では、照明系(照明ユニット)ILUの光軸AXjを傾ける楔プリズムDP1、DP2が、対物光学系(OBL)の瞳面Ep’内で光源像SObを横シフトさせる調整機構に相当する。
【0133】
なお、
図21において、ビームスプリッタBS2の位置を、光軸AXsに沿って対物レンズ系OBLから離れる方向に変えると、瞳面Ep、Ep’は、キューブ型のビームスプリッタBS2の内部の位置、又はビームスプリッタBS2の対物レンズ系OBL側の面の近傍の位置に重なって形成される。
図21のように、ビームスプリッタBS2の前に何らかのレンズ系(G10、G11)が配置される場合、例えば、先の
図14のような拡大結像系LK2が設けられる場合は、ビームスプリッタBS2の光軸AXs方向の位置を変えて、瞳面Ep、Ep’をビームスプリッタBS2と対物レンズ系OBLとの間に重ねて形成することができる。また、
図21では、照明系ILU内の基板Pの表面と共役な位置に視野絞り板FAPを設けたが、視野絞り板FAPは省略しても構わない。
【0134】
図21、
図22では、調整機構として2つの楔プリズムDP1、DP2のみを設けたが、さらにもう1組の楔プリズム(2個)を光路に沿って追加しても良い。1組の楔プリズムDP1、DP2のみの回転調整では、光軸AXj’の傾き方位の設定が極座標基準で行われるのに対して、2組目の楔プリズム(2個)を追加すること(計4枚の楔プリズム)により、光軸AXj’の傾き方位の設定を直交座標基準で行うことができ、扱いが容易になると共に、頂角の公差(誤差)により調整不能となる領域を低減させることができる。なお、2組の楔プリズムセット(2個)を用いた光軸の角度調整機構は、先の
図1に示した光源装置(パルス光源装置)LSから射出されるビームの光路中に設けることもできる。
【0135】
以上の各実施の形態や各変形例では、アライメント系ALGnは複数(2以上)を想定したが、単一であっても良い。また、アライメント系ALGnは、露光装置以外に、インクジェット方式等で精密なパターンが描画可能な印刷装置、基板P上に形成されたパターンを検査する検査装置、形成されたパターンの一部をレーザビーム等で除去、修正、修復する加工装置においても同様に設置可能である。さらに、アライメント系ALGnによる観察対象は、基板P上に設けられたアライメントマーク(基板マーク)に限られず、任意のパターン(例えば、解像力チャートのライン&スペースパターン、重ね誤差を確認する為のBOXinBOXパターン、実際のデバイス用の一部のパターン)であっても良い。
【符号の説明】
【0136】
ADn、ARn…検出領域 ALGn…アライメント系
AXs、AXs’、AXj…光軸 BS1、BS2…ビームスプリッタ
Bsp…光分割面 DIS…撮像素子
DP1、DP2…楔プリズム Ep、Ep’…瞳面
EX…パターン描画装置 Gb…結像用レンズ系
ILb…照明光 ILF…光ファイバー束
ILS…光源部 ILU…照明系、照明ユニット
MKn…アライメントマーク OBL…対物レンズ系
P…基板 RMn…基準マーク
SFy、SFz…平行平板
SOa、SOa’、SOb、SOb’、SOc’…光源像
Un…描画ユニット(パターン形成機構)