IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

特許7563567架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム
<>
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図1
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図2
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図3
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図4
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図5
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図6
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図7
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図8
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図9
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図10
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図11
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図12
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図13
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図14
  • 特許-架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システム
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
H02G1/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023500460
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006357
(87)【国際公開番号】W WO2022176159
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】松本 千春
(72)【発明者】
【氏名】五藤 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】本田 奈月
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161829(JP,A)
【文献】特開2009-68951(JP,A)
【文献】特開2019-144153(JP,A)
【文献】特開2009-198280(JP,A)
【文献】特開2020-35001(JP,A)
【文献】特開2005-141346(JP,A)
【文献】特開2014-106725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
G01B 11/00-11/30
G01C 11/00-11/36
G01C 15/00-15/14
G01S 17/00-17/95
G06T 1/00-19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空ケーブル測定方法であって、
架空ケーブルの点群データを取得すること、
前記点群データから推定したケーブル経路の任意点において、前記ケーブル経路に垂直な面且つ前記ケーブル経路に任意の幅を持つ空間に含まれるn個(nは自然数)の点群を検出すること、
前記空間に含まれる点群からm点(mはn以下の自然数)で円型を形成するnCm個の組み合わせを見出し、当該m点の三次元座標に基づき、前記nCm個の前記円型の径を推定すること、
前記nCm個の前記円型の中から、データベースに記憶されている前記架空ケーブルの径に関する仕様値に対して所定範囲内にある径の前記円型を選抜すること、
選抜した前記円型の径を統計処理し、統計値を得ること、及び
複数の前記任意点での前記統計値を平均すること
を特徴とする架空ケーブル測定方法。
【請求項2】
m=3であること、
前記円型が真円であること、
前記仕様値が前記架空ケーブルの直径であること、且つ
前記統計値が中央値であること
を特徴とする請求項1に記載の架空ケーブル測定方法。
【請求項3】
前記架空ケーブルが支持線に支えられていること、
m=9であること、
前記円型が楕円であること、
前記円型の径が前記楕円の長軸と短軸であること、
前記仕様値が、前記架空ケーブルの長手方向に垂直な面での前記架空ケーブルの断面と前記支持線の断面を含む楕円形状の長軸と短軸であること、且つ
前記統計値が前記楕円の長軸と短軸毎の中央値であること
を特徴とする請求項1に記載の架空ケーブル測定方法。
【請求項4】
前記架空ケーブルが支持線に支えられていること、
前記空間に含まれる点群のうち前記空間の端にある任意の1点から順に隣接する点に向けて隣接線を引き、隣り合う前記隣接線の傾きが所定値以上変化する変異点を検出すること、
前記変異点より前記任意の1点側にある前記点群と前記変異点より前記任意の1点と反対側にある前記点群のそれぞれについて、請求項1に記載の架空ケーブル測定方法を行うこと、
m=3であること、
前記円型が真円であること、
前記仕様値が前記架空ケーブルの直径及び前記支持線の直径であること、且つ
前記統計値が中央値であること
を特徴とする請求項1に記載の架空ケーブル測定方法。
【請求項5】
前記架空ケーブルが支持線に支えられていること、
m=3であること、
前記円型が真円であること、
前記仕様値が前記架空ケーブルの直径であること、且つ
前記統計値が、選抜した前記円型の径の度数分布から得られたピーク値であること
を特徴とする請求項1に記載の架空ケーブル測定方法。
【請求項6】
平均化した前記統計値と前記データベースに記憶されている前記仕様値とを照合し、前記架空ケーブルの種類を検出することをさらに行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の架空ケーブル測定方法。
【請求項7】
計測装置と解析装置を備える架空ケーブル測定システムであって、
前記計測装置は、前記架空ケーブルの点群データを取得し、
前記解析装置は、請求項1から6のいずれかに記載の架空ケーブル測定方法を実行する
ことを特徴とする架空ケーブル測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3Dスキャナなどで行う点群計測に関する。
【背景技術】
【0002】
架空ケーブルを点検する場合、高所作業車を使用し、架空ケーブルを目視で確認する(例えば、特許文献1及び非特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5619860号
【非特許文献】
【0004】
【文献】「吊り線点検カメラ」、エヌ・ティ・ティ・レンタル・エンジニアリング株式会社ウェブサイト(https://www.nttrec.co.jp/product/category/32921700)、2021年2月2日検索
【文献】「高所作業車の安全マニュアル」、株式会社サポートサービスウェブサイト(http://www.support-ss.co.jp/manual/)、2021年2月17日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や非特許文献1の技術には次のような課題がある。
(1)高所作業車の使用には道路を道路占用する必要がある。
(2)高所での作業となるため危険を伴い、一連の作業には非常に時間と稼働がかかる(例えば、非特許文献2を参照。)。
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、高所作業車を使用せずに迅速且つ安全に架空ケーブルを点検できる架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る架空ケーブル測定方法は、3Dスキャナで点群データを取得し、その三次元座標からケーブル径を算出することとした。
【0008】
具体的には、本発明に係る架空ケーブル測定方法は、
架空ケーブルの点群データを取得すること、
前記点群データから推定したケーブル経路の任意点において、前記ケーブル経路に垂直な面且つ前記ケーブル経路に任意の幅を持つ空間に含まれるn個(nは自然数)の点群を検出すること、
前記空間に含まれる点群からm点(mはn以下の自然数)で円型を形成するnCm個の組み合わせを見出し、当該m点の三次元座標に基づき、前記nCm個の前記円型の径を推定すること、
前記nCm個の前記円型の中から、データベースに記憶されている前記架空ケーブルの径に関する仕様値に対して所定範囲内にある径の前記円型を選抜すること、
選抜した前記円型の径を統計処理し、統計値を得ること、及び
複数の前記任意点での前記統計値を平均すること
を特徴とする。
【0009】
本架空ケーブル測定方法は、高所作業車を使用する必要が無い為、道路占用は不必要である。また、本架空ケーブル測定方法は、地上から点群データを取得すれば良いので危険が少なく、時間と稼働も削減できる。従って、本発明は、高所作業車を使用せずに迅速且つ安全に架空ケーブルを点検できる架空ケーブル測定方法を提供することができる。
【0010】
支持線無しの架空ケーブルを測定する場合、m=3であること、前記円型が真円であること、前記仕様値が前記架空ケーブルの直径であること、且つ前記統計値が中央値であることを特徴とする。
【0011】
支持線有りの架空ケーブルを測定する場合、第1の方法は、前記架空ケーブルが支持線に支えられていること、m=9であること、前記円型が楕円であること、前記円型の径が前記楕円の長軸と短軸であること、前記仕様値が、前記架空ケーブルの長手方向に垂直な面での前記架空ケーブルの断面と前記支持線の断面を含む楕円形状の長軸と短軸であること、且つ前記統計値が前記楕円の長軸と短軸毎の中央値であることを特徴とする。
【0012】
支持線有りの架空ケーブルを測定する場合、第2の方法は、前記架空ケーブルが支持線に支えられていること、前記空間に含まれる点群のうち前記空間の端にある任意の1点から順に隣接する点に向けて隣接線を引き、隣り合う前記隣接線の傾きが所定値以上変化する変異点を検出すること、前記変異点より前記任意の1点側にある前記点群と前記変異点より前記任意の1点と反対側にある前記点群のそれぞれについて、請求項1に記載の架空ケーブル測定方法を行うこと、m=3であること、前記円型が真円であること、前記仕様値が前記架空ケーブルの直径及び前記支持線の直径であること、且つ前記統計値が中央値であることを特徴とする。
【0013】
支持線有りの架空ケーブルを測定する場合、第3の方法は、前記架空ケーブルが支持線に支えられていること、m=3であること、前記円型が真円であること、前記仕様値が前記架空ケーブルの直径であること、且つ前記統計値が、選抜した前記円型の径の度数分布から得られたピーク値であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る架空ケーブル測定方法は、平均化した前記統計値と前記データベースに記憶されている前記仕様値とを照合し、前記架空ケーブルの種類を検出することをさらに行うことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る架空ケーブル測定システムは、計測装置と解析装置を備える架空ケーブル測定システムであって、前記計測装置は、前記架空ケーブルの点群データを取得し、前記解析装置は、前述の架空ケーブル測定方法を実行することを特徴とする。
【0016】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、高所作業車を使用せずに迅速且つ安全に架空ケーブルを点検できる架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る架空ケーブル測定システムを説明する図である。
図2】本発明に係る架空ケーブル測定方法を説明する図である。
図3】本発明に係る架空ケーブル測定方法を説明する図である。
図4】点群データと任意空間を説明する図である。
図5】点群データと架空ケーブルの関係を説明する図である。
図6】点群データから推定された架空ケーブルの径の度数分布を説明する図である。
図7】点群データと任意空間を説明する図である。
図8】架空ケーブルと支持線の断面を説明する図である。
図9】本発明に係る架空ケーブル測定方法を説明する図である。
図10】点群データと架空ケーブル及び支持線の関係を説明する図である。
図11】架空ケーブルと支持線の断面を説明する図である。
図12】本発明に係る架空ケーブル測定方法を説明する図である。
図13】点群データをグループ分けする手法を説明する図である。
図14】本発明に係る架空ケーブル測定方法を説明する図である。
図15】点群データから推定された架空ケーブルの径の度数分布を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0020】
図1は、本実施形態の架空ケーブル測定システムを説明する図である。架空ケーブル測定システムは、計測装置10と解析装置20を備える架空ケーブル測定システムであって、計測装置10は、架空ケーブル30の点群データDを取得し、解析装置20は、以下で説明する架空ケーブル測定方法を実行することを特徴とする。計測装置10は、例えば、3Dスキャナである。
【0021】
図2は、当該架空ケーブル測定方法を説明するフローチャートである。当該架空ケーブル測定方法は、
計測装置10から架空ケーブルの点群データDを取得すること(ステップS01)、
点群データDから推定したケーブル経路の任意点において、前記ケーブル経路に垂直な面且つ前記ケーブル経路に任意の幅を持つ空間に含まれるn個(nは自然数)の点群を検出すること(ステップS02)、
前記空間に含まれる点群からm点(mはn以下の自然数)で円型を形成するnCm個の組み合わせを見出し、当該m点の三次元座標に基づき、前記nCm個の前記円型の径を推定すること(ステップS03)、
前記nCm個の前記円型の中から、データベースに記憶されている前記架空ケーブルの径に関する仕様値に対して所定範囲内にある径の前記円型を選抜すること(ステップS04)、
選抜した前記円型の径を統計処理し、統計値を得ること(ステップS05)、及び
複数の前記任意点での前記統計値を平均すること(ステップS06)
を特徴とする。
【0022】
(実施形態1)
本実施形態では、架空ケーブル30が支持線に支持されておらず、単独で電柱に掛渡されている場合の測定方法を説明する。本架空ケーブル測定方法は、図2で説明した架空ケーブル測定方法において、m=3であること、前記円型が真円であること、前記仕様値が前記架空ケーブルの直径であること、且つ前記統計値が中央値であることを特徴とする。
【0023】
図3は、本架空ケーブル測定方法を具体的に説明するフローチャートである。ステップS11はステップS01に、ステップS12はステップS02に、ステップS13とS14はステップS03に、ステップS15はステップS04に、ステップS16とS17はステップS05に、ステップS18はステップS06に相当する。各ステップについて詳細に説明する。
【0024】
ステップS11:3Dスキャナ等の計測装置10を用いて架空ケーブル30の点群データDを取得する。
ステップS12:点群データの点から架空ケーブル30の経路を推定する。例えば、点群データの全点を用い、最小二乗法で架空ケーブル30の経路を推定することができる。そして、図4のように、架空ケーブル30の経路40に対して垂直な面且つ架空ケーブル30の経路方向に任意の幅を持つ空間41を考え、空間41に含まれるn個(nは自然数)の点群を切り出す。図5は、切り出した点群を架空ケーブル30の経路方向から観察した図である。点線31は架空ケーブル30の表面を示している。矢印51は3Dスキャナ等の計測装置10が存在する方向を示している。
【0025】
ステップS13:空間41に含まれるn個の点群から3点を選び、その3点を円周に持つ円(真円)を考える。3点の三次元座標を用いてその円の直径を算出する。
ステップS14:空間41に含まれるn個の点群から3点を選ぶ全組み合わせについて、ステップS13のように円の直径を算出する。つまり、算出される円の直径はnC3個である。図6は、算出した直径の度数分布を説明する図である。図5で説明するように、点群にはある程度の誤差(ばらつき)が存在するため、切り出した点群およびステップ14で算出した直径にも誤差がある。例えば、100万点/秒の固定式3Dスキャナで1cm径の架空ケーブルを計測し、そこから直径を算出すると、誤差は±0.2cm程度である。
【0026】
ステップS15:設備DBに登録されている支持線無し架空ケーブルの各仕様値(ケーブル径)とステップS14で算出した直径とを比較する。
ステップS16:ステップS15の比較において、ステップS14で算出した直径のうち、明らかに架空ケーブルの形状ではないものを除外する。ここで、「明らかに架空ケーブルの形状ではないもの」とは次のような例である。ステップS14で算出した直径には様々な数値のものが含まれる。現在利用されているケーブルは最も太いものでも直径9.0cmである。そして、ステップS14で算出した直径のうち、最大径の1.5倍(13.5cm)以上の直径を明らかに架空ケーブルの形状ではないものとして除外する。また、次のように判断してもよい。ケーブル径の仕様値は複数あり(例えば、1.0cm、2.0cm、3.0cm)、これらの仕様値それぞれに対して±0.25cmの閾値を持たせる(上述したように直径には誤差があるため。)。そして、ステップS14で算出した直径のうち、仕様値の閾値範囲に含まれない直径を明らかに架空ケーブルの形状ではないものとして除外する。
ステップS17:明らかに架空ケーブルの形状ではないものを除外した直径について中央値を求める。図6の例であれば、例えば、直径9.0cm以上を「明らかに架空ケーブルの形状ではないもの」として除外し、その中央値となる直径(例えば0.9cm)を検出する。
【0027】
ここで、空間41が1つだけでは信頼性に欠けるので、複数の空間41にてステップS12からステップS17を行う(図7参照。)。
ステップS18:ステップS17で得られた複数の中央値を平均し、架空ケーブル30の径とする。
【0028】
ステップS19:ステップS18で得られた支持線無し架空ケーブル30のケーブル径と、設備DBに登録されている支持線無しケーブルの仕様(ケーブル径)とを比較し、ケーブル種別を特定する。
ケーブルの径とケーブルの種類は1対1の関係ではない。このため、ステップS18で得られたケーブルの径で架空ケーブルの種類が確定できる訳ではない。例えば、直径1cmのケーブルでもケーブルAとケーブルBが存在するので、ステップS19ではステップS18の結果からケーブルAまたはケーブルBのいずれかであると判定する。
【0029】
(実施形態2)
図8は、架空ケーブル30とこれを支える支持線32の断面を説明する図である。本実施形態では、図8のように架空ケーブル30が支持線32に支持されて電柱に掛渡されている場合の測定方法を説明する。本架空ケーブル測定方法は、図2で説明した架空ケーブル測定方法において、m=9であること、前記円型が楕円であること、前記円型の径が前記楕円の長軸と短軸であること、前記仕様値が、前記架空ケーブルの長手方向に垂直な面での前記架空ケーブルの断面と前記支持線の断面を含む楕円形状の長軸と短軸であること、且つ前記統計値が前記楕円の長軸と短軸毎の中央値であることを特徴とする。
【0030】
本実施形態の測定方法は、図8のように断面において支持線32と架空ケーブル30の組を楕円で近似する。この近似手法は予め決めておき、ケーブル種別ごとに楕円の長軸と短軸のデータを設備DBに記憶させておく。近似手法としては、架空ケーブル30の最大幅を楕円の短軸とし、支持線32外周のうち架空ケーブル30からの最遠点と架空ケーブル30外周のうち支持線32からの最遠点との距離を楕円の長軸とすることが例示できる(図8参照。)。
【0031】
図9は、本架空ケーブル測定方法を具体的に説明するフローチャートである。ステップS21はステップS01に、ステップS22はステップS02に、ステップS23とS24はステップS03に、ステップS25はステップS04に、ステップS26とS27はステップS05に、ステップS28はステップS06に相当する。各ステップについて詳細に説明する。
【0032】
ステップS21:実施形態1で説明したステップS11と同じである。
ステップS22:実施形態1で説明したステップS12と同じである。なお、図10は、切り出した点群を架空ケーブル30の経路方向から観察した図である。点線31は架空ケーブル30の表面を示している。点線33は支持線32の表面を示している。矢印51は3Dスキャナ等の計測装置10が存在する方向を示している。
【0033】
ステップS23:空間41に含まれるn個の点群から9点を選び、その9点を円周に持つ楕円を考える。9点の三次元座標を用いてその楕円の長軸と短軸の径を算出する。
ステップS24:空間41に含まれるn個の点群から9点を選ぶ全組み合わせについて、ステップS23のように楕円の長軸と短軸の径を算出する。つまり、算出される楕円の長軸と短軸の径はそれぞれnC9個である。
【0034】
ステップS25:設備DBに登録されている支持線有り架空ケーブルの各仕様値(支持線と架空ケーブルを楕円近似した長軸と短軸の長さ)とステップS24で算出した楕円の長軸と短軸の径とを比較する。
ステップS26:ステップS25の比較において、ステップS24で算出した楕円の長軸と短軸の径のうち、明らかに架空ケーブルの形状(支持線と架空ケーブルを楕円近似した形状)ではないものを除外する。ここで、「明らかに架空ケーブルの形状ではないもの」とは実施形態1で説明した内容と同じである。
ステップS27:明らかに架空ケーブルの形状ではないものを除外した楕円の長軸と短軸の径についてそれぞれ中央値を求める。
【0035】
ここで、空間41が1つだけでは信頼性に欠けるので、複数の空間41にてステップS22からステップS27を行う(図7参照。)。
ステップS28:ステップS27で得られた複数の中央値を平均し、支持線32と架空ケーブル30を楕円近似した長軸と短軸の長さとする。
【0036】
ステップS29:ステップS28で得られた支持線32と架空ケーブル30を楕円近似した長軸と短軸の長さと、設備DBに登録されている支持線有り架空ケーブルの各仕様値(支持線と架空ケーブルを楕円近似した長軸と短軸の長さ)とを比較し、ケーブル種別を特定する。実施形態1で説明したように、ケーブルの径とケーブルの種類は1対1の関係ではないので、ステップS28の結果からケーブルAまたはケーブルBのいずれかであると判定する。
【0037】
(実施形態3)
本実施形態も図11のように架空ケーブル30が支持線32に支持されて電柱に掛渡されている場合の測定方法である。本架空ケーブル測定方法は、図11のように架空ケーブル30と支持線32とを分離し、それぞれを真円(30a、32a)で近似して測定する点で実施形態2の方法と異なる。本架空ケーブル測定方法は、図2で説明した架空ケーブル測定方法において、
空間41に含まれる点群のうち空間41の端にある任意の1点から順に隣接する点に向けて隣接線42を引き、隣り合う隣接線42の傾きが所定値以上変化する変異点43を検出すること、
変異点43より前記任意の1点側にある点群45aと変異点43より前記任意の1点と反対側にある点群45bのそれぞれについて、実施形態1で説明した架空ケーブル測定方法を行うこと、
m=3であること、
前記円型が真円であること、
前記仕様値が前記架空ケーブルの直径及び前記支持線の直径であること、且つ
前記統計値が中央値であること
を特徴とする。
【0038】
図12は、本架空ケーブル測定方法を具体的に説明するフローチャートである。ステップS31はステップS01に、ステップS32はステップS02に、ステップ(S34a、S34b、S35a、S35b)はステップS03に、ステップ(S36a、S36b、S37a、S37b)はステップS04に、ステップ(S38a、S38b)はステップS05に、ステップ(S39a、S39b)はステップS06に相当する。ステップS33で点群データを支持線と架空ケーブルに分ける点が本実施形態の特徴である。各ステップについて詳細に説明する。
【0039】
ステップS31:実施形態1で説明したステップS11と同じである。
ステップS32:実施形態1で説明したステップS12と同じである。なお、図10は、切り出した点群を架空ケーブル30の経路方向から観察した図である。点線31は架空ケーブル30の表面を示している。点線33は支持線32の表面を示している。矢印51は3Dスキャナ等の計測装置10が存在する方向を示している。
【0040】
ステップS33:図13はステップS33を説明する図である。点61、63、65などの黒四角は、図10で説明した点群を表わしている。図13に説明するように、空間41に含まれる点群のうち空間41の端にある任意の1点(符号61)から順に隣接する点に向けて隣接線42を引き、隣り合う隣接線42の傾きが所定値以上変化する変異点63を検出する。つまり、点61から点63までの隣接線42の傾きは徐々に変化するが、点63の前後で隣接線42の傾きが大きく変化する。従って、点63を変異点とする。なお、他の判定手法として、隣接線の傾きの正負反転は点62で1回目、点63で2回目となるので、隣接線の傾きの正負反転が2回目である点を前記変異点としてもよい。
【0041】
変異点63の点61側を第1グループ点群45a、変異点63の点65側を第2グループ点群45bとする。z座標から判断して第1グループ点群45aが支持線32の点群、第2グループ点群45bが架空ケーブル30の点群と判断できる。ここで、第1グループ点群45aに含まれる点の総数をi個、第2グループ点群45bに含まれる点の総数をj個とする。
【0042】
ステップS34aからステップS39a:第1グループ点群45aのi個の点群で図3で説明したステップS13からステップS18と同様な作業を行い、支持線32の径を検出する。なお、設備DBには、支持線の仕様値(支持線の径)も記憶されているとする。
ステップS34bからステップS39b:第2グループ点群45bのj個の点群で図3で説明したステップS13からステップS18と同様な作業を行い、架空ケーブル30の径を検出する。
【0043】
ステップS39c:ステップS39aで得られた支持線32の径及びステップS39bで得られた架空ケーブル30の径と、設備DBに登録されている支持線有り架空ケーブルの各仕様値(支持線の径と架空ケーブルの径)とを比較し、ケーブル種別を特定する。実施形態1で説明したように、ケーブルの径とケーブルの種類は1対1の関係ではないので、ステップ(S39a、39b)の結果からケーブルAまたはケーブルBのいずれかであると判定する。
【0044】
(実施形態4)
本実施形態も図11のように架空ケーブル30が支持線32に支持されて電柱に掛渡されている場合の測定方法である。本架空ケーブル測定方法は、楕円近似をせず、且つ
支持線と架空ケーブルを切り分けずに支持線と架空ケーブルの径を推定する点で実施形態2及び3の方法と異なる。本架空ケーブル測定方法は、図2で説明した架空ケーブル測定方法において、m=3であること、前記円型が真円であること、前記仕様値が前記架空ケーブルの直径であること、且つ前記統計値が、選抜した前記円型の径の度数分布から得られたピーク値であることを特徴とする。
【0045】
図14は、本架空ケーブル測定方法を具体的に説明するフローチャートである。ステップS41はステップS01に、ステップS42はステップS02に、ステップS43はステップS03に、ステップS44はステップS04に、ステップS45はステップS05に、ステップS46はステップS06に相当する。各ステップについて詳細に説明する。
【0046】
ステップS41からステップS44:図3で説明したステップS11からステップS14と同じである。
【0047】
ステップS45:設備DBに登録されている支持線有り架空ケーブルの各仕様値(支持線の径と架空ケーブルの径)とステップS44で算出した直径とを比較する。
ステップS46:ステップS45の比較において、ステップS44で算出した直径のうち、明らかに架空ケーブルの形状及び支持線の形状ではないものを除外する。ここで、「明らかに架空ケーブルの形状ではないもの」及び「明らかに支持線の形状ではないもの」とは実施形態1で説明した内容と同様である。
【0048】
ステップS47:明らかに架空ケーブルの形状及び支持線の形状ではないものを除外した直径について度数分布化する。この度数分布には、図15のように支持線と考えられるピークと架空ケーブルと思われるピークが現れる。例えば、直径が小さい方を支持線のピーク、直径が大きい方を架空ケーブルのピークと判断できる。従って、それぞれのピークの直径を支持線の径、架空ケーブルの径とする。
【0049】
ここで、空間41が1つだけでは信頼性に欠けるので、複数の空間41にてステップS42からステップS47を行う(図7参照。)。
ステップS48:ステップS47で得られた複数の支持線の径と複数架空ケーブルの径をそれぞれ平均し、支持線32の径と架空ケーブル30の径とする。
【0050】
ステップS49:ステップS48で得られた支持線32の径と架空ケーブル30の径と、設備DBに登録されている支持線有り架空ケーブルの各仕様値(支持線と架空ケーブルの径)とを比較し、ケーブル種別を特定する。実施形態1で説明したように、ケーブルの径とケーブルの種類は1対1の関係ではないので、ステップS48の結果からケーブルAまたはケーブルBのいずれかであると判定する。
【0051】
(発明の効果)
3Dスキャナで架空ケーブルの点群データを取得し、その三次元座標からケーブル径を算出するとともに、ケーブル種別も判定できる。従って、本発明は、高所作業車を使用せずに迅速且つ安全に架空ケーブルを点検できる架空ケーブル測定方法及び架空ケーブル測定システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
5:電柱
10:計測装置
20:解析装置
30:架空ケーブル
30a:真円
31:架空ケーブルの表面
32:支持線
32a:真円
33:支持線の表面
40:架空ケーブルの経路
41:空間
42:隣接線
45a:第1グループ点群
45b:第2グループ点群
51:計測装置が存在する方向
61:空間の端にある任意の1点
63:変異点
65:他の点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15