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特許7563568架空ケーブル特定方法及び架空ケーブル特定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】架空ケーブル特定方法及び架空ケーブル特定システム
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
H02G1/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023500461
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006358
(87)【国際公開番号】W WO2022176160
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】松本 千春
(72)【発明者】
【氏名】五藤 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】本田 奈月
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161829(JP,A)
【文献】特開2009-68951(JP,A)
【文献】特開2019-144153(JP,A)
【文献】特開2009-198280(JP,A)
【文献】特開2020-35001(JP,A)
【文献】特開2005-141346(JP,A)
【文献】特開2014-106725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
G01B 11/00-11/30
G01C 11/00-11/36
G01C 15/00-15/14
G01S 17/00-17/95
G06T 1/00-19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空ケーブル特定方法であって、
架空ケーブルの点群データを取得すること、
前記点群データから推定したケーブル経路の任意点において、前記ケーブル経路に垂直な面且つ前記ケーブル経路に任意の幅を持つ空間に含まれるn個(nは自然数)の点群を検出すること、
前記空間に含まれる点群についての統計値を算出すること、及び
所定の閾値に対する前記統計値の大きさで前記架空ケーブルの支持線の有無を判断すること
を特徴とする架空ケーブル特定方法。
【請求項2】
前記点群の各点の三次元座標に基づき、
前記ケーブル経路に垂直な面に投影された前記点群に対する近似直線を想定すること、
前記点群の各点から前記近似直線までの距離を求めること、
前記統計値として前記距離の中央値を検出すること、及び
前記統計値が前記閾値より大きい場合、前記支持線は無いと判断し、前記統計値が前記閾値より小さい場合、前記支持線は有ると判断すること
を特徴とする請求項1に記載の架空ケーブル特定方法。
【請求項3】
前記空間に含まれる点群から3点(mはn以下の自然数)で円型を形成するnC3個の組み合わせを見出し、当該3点の三次元座標に基づき、前記nC3個の前記円型の径を推定すること、
前記nC3個の前記円型の中から、データベースに記憶されている前記架空ケーブルの径に関する仕様値に対して所定範囲内にある径の前記円型を選抜すること、
前記統計値として、選抜した前記円型の径の変動係数を算出すること、
前記統計値が前記閾値より小さい場合、前記支持線は無いと判断し、前記統計値が前記閾値より大きい場合、前記支持線は有ると判断すること
を特徴とする請求項1に記載の架空ケーブル特定方法。
【請求項4】
計測装置と解析装置を備える架空ケーブル特定システムであって、
前記計測装置は、前記架空ケーブルの点群データを取得し、
前記解析装置は、請求項1から3のいずれかに記載の架空ケーブル特定方法を実行する
ことを特徴とする架空ケーブル特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3Dスキャナなどで行う点群計測に関する。
【背景技術】
【0002】
図10のように、(A)架空ケーブルには支持線が無いものと(B)支持線で支持されるものがある。架空ケーブルの支持線有無を確認する場合、高所作業車を使用し、架空ケーブルを目視で確認する(例えば、特許文献1及び非特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5619860号
【非特許文献】
【0004】
【文献】「吊り線点検カメラ」、エヌ・ティ・ティ・レンタル・エンジニアリング株式会社ウェブサイト(https://www.nttrec.co.jp/product/category/32921700)、2021年2月2日検索
【文献】「高所作業車の安全マニュアル」、株式会社サポートサービスウェブサイト(http://www.support-ss.co.jp/manual/)、2021年2月17日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や非特許文献1の技術には次のような課題がある。
(1)高所作業車の使用には道路を道路占用する必要がある。
(2)高所での作業となるため危険を伴い、一連の作業には非常に時間と稼働がかかる。
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、高所作業車を使用せずに迅速且つ安全に架空ケーブルの支持線有無を点検できる架空ケーブル特定方法及び架空ケーブル特定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る架空ケーブル測定方法は、3Dスキャナで点群データを取得し、その三次元座標から支持線の有無を判定することとした。
【0008】
具体的には、本発明に係る架空ケーブル特定方法は、
架空ケーブルの点群データを取得すること、
前記点群データから推定したケーブル経路の任意点において、前記ケーブル経路に垂直な面且つ前記ケーブル経路に任意の幅を持つ空間に含まれるn個(nは自然数)の点群を検出すること、
前記空間に含まれる点群についての統計値を算出すること、及び
所定の閾値に対する前記統計値の大きさで前記架空ケーブルの支持線の有無を判断すること
を特徴とする。
【0009】
本架空ケーブル測定方法は、高所作業車を使用する必要が無い為、道路占用は不必要である。また、本架空ケーブル測定方法は、地上から点群データを取得すれば良いので危険が少なく、時間と稼働も削減できる。従って、本発明は、高所作業車を使用せずに迅速且つ安全に架空ケーブルの支持線有無を点検できる架空ケーブル測定方法を提供することができる。
【0010】
例えば、前記点群の各点の三次元座標に基づき、
前記ケーブル経路に垂直な面に投影された前記点群に対する近似直線を想定すること、
前記点群の各点から前記近似直線までの距離を求めること、
前記統計値として前記距離の中央値を検出すること、及び
前記統計値が前記閾値より大きい場合、前記支持線は無いと判断し、前記統計値が前記閾値より小さい場合、前記支持線は有ると判断すること
を特徴とする。
ケーブルの断面形状から支持線の有無を判定することができる。
【0011】
また、
前記空間に含まれる点群から3点(mはn以下の自然数)で円型を形成するnC3個の組み合わせを見出し、当該3点の三次元座標に基づき、前記nC3個の前記円型の径を推定すること、
前記nC3個の前記円型の中から、データベースに記憶されている前記架空ケーブルの径に関する仕様値に対して所定範囲内にある径の前記円型を選抜すること、
前記統計値として、選抜した前記円型の径の変動係数を算出すること、
前記統計値が前記閾値より小さい場合、前記支持線は無いと判断し、前記統計値が前記閾値より大きい場合、前記支持線は有ると判断すること
を特徴とする。
ケーブル径の変動係数から特定することができる。
【0012】
本発明に係る架空ケーブル測定システムは、計測装置と解析装置を備える架空ケーブル特定システムであって、前記計測装置は、前記架空ケーブルの点群データを取得し、前記解析装置は、前述の架空ケーブル特定方法を実行することを特徴とするである。
【0013】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、高所作業車を使用せずに迅速且つ安全に架空ケーブルの支持線有無を点検できる架空ケーブル特定方法及び架空ケーブル特定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る架空ケーブル測定システムを説明する図である。
図2】本発明に係る架空ケーブル測定方法を説明する図である。
図3】本発明に係る架空ケーブル測定方法を説明する図である。
図4】点群データと任意空間を説明する図である。
図5】本発明に係る架空ケーブル測定方法を説明する図である。
図6】本発明に係る架空ケーブル測定方法を説明する図である。
図7】本発明に係る架空ケーブル測定方法を説明する図である。
図8】本発明に係る架空ケーブル測定方法を説明する図である。
図9】本発明に係る架空ケーブル測定方法を説明する図である。
図10】架空ケーブルの断面を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0017】
図1は、本実施形態の架空ケーブル測定システムを説明する図である。本架空ケーブル測定システムは、計測装置10と解析装置20を備える架空ケーブル測定システムであって、計測装置10は、架空ケーブル30の点群データDを取得し、解析装置20は、以下で説明する架空ケーブル特定方法を実行することを特徴とする。計測装置10は、例えば、3Dスキャナである。
【0018】
図2は、当該架空ケーブル特定方法を説明するフローチャートである。当該架空ケーブル特定方法は、
計測装置10から架空ケーブルの点群データDを取得すること(ステップS01)、
点群データDから推定したケーブル経路の任意点において、前記ケーブル経路に垂直な面且つ前記ケーブル経路に任意の幅を持つ空間に含まれるn個(nは自然数)の点群を検出すること(ステップS02)、
前記空間に含まれる点群についての統計値を算出すること(ステップS03)、及び
所定の閾値に対する前記統計値の大きさで前記架空ケーブルの支持線の有無を判断すること(ステップS04)
を特徴とする。
【0019】
(実施形態1)
本実施形態では、架空ケーブルの支持線の有無を切り出した点群の断面形状から判断する方法を説明する。図3は、本架空ケーブル特定方法を説明するフローチャートである。本架空ケーブル特定方法は、図2のステップS03において、
前記点群の各点の三次元座標に基づき、
前記ケーブル経路に垂直な面に投影された前記点群に対する近似直線を想定すること(ステップS13)、
前記点群の各点から前記近似直線までの距離を求めること(ステップS14)、及び
前記統計値として前記距離の中央値を検出すること(ステップS15)、
を行い、ステップS04において、
前記統計値が前記閾値より大きい場合、前記支持線は無いと判断し、前記統計値が前記閾値より小さい場合、前記支持線は有ると判断すること(ステップS16、S17)
を行うことを特徴とする。
【0020】
図3は、本架空ケーブル測定方法を具体的に説明するフローチャートである。ステップS11はステップS01に、ステップS12はステップS02に、ステップS13とS14はステップS03に、ステップS15、S16及びS17はステップS04に相当する。各ステップについて詳細に説明する。
【0021】
ステップS11:3Dスキャナ等の計測装置10を用いて架空ケーブル30の点群データDを取得する。
ステップS12:点群データの点から架空ケーブル30の経路を推定する。例えば、点群データの全点を用い、最小二乗法で架空ケーブル30の経路を推定することができる。そして、図4のように、架空ケーブル30の経路40に対して垂直な面且つ架空ケーブル30の経路方向に任意の幅を持つ空間41を考え、空間41に含まれるn個(nは自然数)の点群を切り出す。
【0022】
ステップS13:ケーブル経路40に垂直な面に空間41で切り出した点群を投影し、投影された点群に対する近似直線46を想定する。図5は、ケーブル経路40に垂直な面に投影された点群を観察した図である。図5(A)は支持線無しの架空ケーブルの点群とその近似直線46、図5(B)は支持線有りの架空ケーブルの点群とその近似直線46である。例えば、近似直線46は、切り出した点群の全点を用い、最小二乗法で算出することができる。
【0023】
ステップS14:図6のように各点から近似直線46までの垂線を引いた時の、各垂線の長さを求める。図5(A)は支持線無しの架空ケーブルの点群、その近似直線46及び垂線、図5(B)は支持線有りの架空ケーブルの点群、その近似直線46及び垂線である。
ステップS15:ステップS14で求めた垂線の長さの中央値を見つけ、所定の閾値と比較する。
ステップS16:支持線無しの場合、図10(A)のように架空ケーブルの断面がほぼ円形なので中央値は大きくなる。このため、前記中央値が閾値以上であれば支持線無しの架空ケーブルと判断する。
ステップS17:支持線有りの場合、図10(B)のように架空ケーブルの断面が中央部がくびれた形状なので中央値は小さくなる。このため、前記中央値が閾値未満であれば支持線有りの架空ケーブルと判断する。
【0024】
(実施形態2)
本実施形態では、架空ケーブルの支持線の有無を3点から算出した径の変動係数から判断する。図7は、本架空ケーブル特定方法を説明するフローチャートである。本架空ケーブル特定方法は、図2のステップS03において、
前記空間に含まれる点群から3点(mはn以下の自然数)で円型を形成するnC3個の組み合わせを見出し、当該3点の三次元座標に基づき、前記nC3個の前記円型の径を推定すること(ステップS23、S24)、
前記nC3個の前記円型の中から、データベースに記憶されている前記架空ケーブルの径に関する仕様値に対して所定範囲内にある径の前記円型を選抜すること(ステップS25、S26)、
前記統計値として、選抜した前記円型の径の変動係数を算出すること(ステップS27)、
を行い、ステップS04において、
前記統計値が前記閾値より小さい場合、前記支持線は無いと判断し、前記統計値が前記閾値より大きい場合、前記支持線は有ると判断すること(ステップS28、S29a、S29b)
を行うことを特徴とする。
【0025】
図7は、本架空ケーブル測定方法を具体的に説明するフローチャートである。ステップS21はステップS01に、ステップS22はステップS02に、ステップS23からS27はステップS03に、ステップS28、S29a及びS29bはステップS04に相当する。各ステップについて詳細に説明する。
【0026】
ステップS21及びS22は、それぞれ実施形態1で説明したステップS11及びS12と同じである。図8は、切り出した点群を架空ケーブル30の経路方向から観察した図である。点線31は架空ケーブル30の表面を示している。矢印51は3Dスキャナ等の計測装置10が存在する方向を示している。
【0027】
ステップS23:空間41に含まれるn個の点群から3点を選び、その3点を円周に持つ円(真円)を考える。3点の三次元座標を用いてその円の直径を算出する。
ステップS24:空間41に含まれるn個の点群から3点を選ぶ全組み合わせについて、ステップS23のように円の直径を算出する。つまり、算出される円の直径はnC3個である。図9は、算出した直径の度数分布を説明する図である。図8で説明するように、点群にはある程度の誤差(ばらつき)が存在するため、切り出した点群およびステップ24で算出した直径にも誤差がある。例えば、100万点/秒の固定式3Dスキャナで1cm径の架空ケーブルを計測し、そこから直径を算出すると、誤差は±0.2cm程度である。
【0028】
ステップS25:設備DBに登録されている支持線無し架空ケーブルの各仕様値(ケーブル径)とステップS24で算出した直径とを比較する。
ステップS26:ステップS25の比較において、ステップS24で算出した直径のうち、明らかに架空ケーブルの形状ではないものを除外する。ここで、「明らかに架空ケーブルの形状ではないもの」とは次のような例である。ステップS24で算出した直径には様々な数値のものが含まれる。現在利用されているケーブルは最も太いものでも直径9.0cmである。そして、ステップS24で算出した直径のうち、最大径の1.5倍(13.5cm)以上の直径を明らかに架空ケーブルの形状ではないものとして除外する。また、次のように判断してもよい。ケーブル径の仕様値は複数あり(例えば、1.0cm、2.0cm、3.0cm)、これらの仕様値それぞれに対して±0.25cmの閾値を持たせる(上述したように直径には誤差があるため。)。そして、ステップS24で算出した直径のうち、仕様値の閾値範囲に含まれない直径を明らかに架空ケーブルの形状ではないものとして除外する。
ステップS27:明らかに架空ケーブルの形状ではないものを除外した直径について変動係数を求める。変動係数は、ステップS26で除外されなかった円の直径の標準偏差をその平均値で除した値である。
ステップS28:ステップS27で得られた変動係数と任意の閾値とを比較する。
ステップS29a:支持線無しのケーブル断面は図10(A)のように円形をしており、図9(A)のように算出したnC3個のケーブル径のばらつきは小さく、変動係数も小さくなる。このため、変動係数が任意の閾値未満であれば支持線無しのケーブルと判断する。
ステップS29b:支持線有りのケーブル断面は図10(B)のように円形を2つ並べたような形状をしており、図9(B)のように算出したnC3個のケーブル径のばらつきは大きく、変動係数も大きくなる。このため、変動係数が任意の閾値以上であれば支持線有りのケーブルと判断する。
【0029】
(発明の効果)
3Dスキャナで架空ケーブルの点群データを取得し、その三次元座標からケーブルの支持線の有無を特定することができる。従って、本発明は、高所作業車を使用せずに迅速且つ安全に架空ケーブルの支持線有無を点検できる架空ケーブル特定方法及び架空ケーブル特定システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0030】
5:電柱
10:計測装置
20:解析装置
30:架空ケーブル
31:架空ケーブルの表面
32:支持線
40:架空ケーブルの経路
41:空間
46:近似直線
51:計測装置が存在する方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10