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特許7563584短絡保護システム、短絡保護装置、短絡保護方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】短絡保護システム、短絡保護装置、短絡保護方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/06 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
H02H3/06 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023517013
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2021017245
(87)【国際公開番号】W WO2022230187
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】樋口 裕二
(72)【発明者】
【氏名】花岡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 尚倫
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭46-1970(JP,A)
【文献】特開昭56-50025(JP,A)
【文献】特開平10-42449(JP,A)
【文献】特開2012-23902(JP,A)
【文献】特公昭32-9272(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0306290(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の短絡保護装置を備える短絡保護システムであって、
前記複数の短絡保護装置のそれぞれは、
電線の電流値を示すデータを取得する電流値取得部と、
前記電流値が閾値を超えた場合に、信号を他の短絡保護装置に送信する信号送信部と、
他の短絡保護装置から信号を受信する信号受信部と、
前記他の短絡保護装置からの信号の受信有無に基づいて、前記電線の電流を遮断するように遮断器を制御するか、または前記遮断器を再閉路するように制御する遮断制御部と、を備える、
短絡保護システム。
【請求項2】
前記遮断制御部は、前記電流値が前記閾値を超えた場合に、前記電線の電流を遮断するように前記遮断器を制御し、前記信号受信部が、前記電流の下流に位置するいずれかの他の短絡保護装置から、前記信号の送信後に基準となる時間が経過するまでに信号を受信しなかった場合に、制御した前記遮断器を再閉路するように制御する、
請求項1に記載の短絡保護システム。
【請求項3】
前記遮断制御部は、前記電流値が前記閾値を超えた場合に、前記電流の下流に位置する他の短絡保護装置が存在しないか、または前記信号受信部が、前記電流の下流に位置するすべての他の短絡保護装置から、前記信号の送信後に基準となる時間が経過するまでに信号を受信しなかった場合に、前記電線の電流を遮断するように前記遮断器を制御する、
請求項1に記載の短絡保護システム。
【請求項4】
電線の電流値を示すデータを取得する電流値取得部と、
前記電流値が閾値を超えた場合に、信号を他の短絡保護装置に送信する信号送信部と、
他の短絡保護装置から信号を受信する信号受信部と、
前記他の短絡保護装置からの信号の受信有無に基づいて、前記電線の電流を遮断するように遮断器を制御するか、または前記遮断器を再閉路するように制御する遮断制御部と、を備える、
短絡保護装置。
【請求項5】
複数の短絡保護装置のそれぞれが、
電線の電流値を示すデータを取得するステップと、
前記電流値が閾値を超えた場合に、信号を他の短絡保護装置に送信するステップと、
他の短絡保護装置から信号を受信するステップと、
前記他の短絡保護装置からの信号の受信有無に基づいて、前記電線の電流を遮断するように遮断器を制御するか、または前記遮断器を再閉路するように制御するステップと、を実行する、
短絡保護方法。
【請求項6】
コンピュータを請求項4に記載の短絡保護装置における各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡保護システム、短絡保護装置、短絡保護方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
給電システムの供給信頼度の向上、事故復旧の迅速化等のため、電線の線路を区分する遮断器を制御する技術が知られている。
【0003】
非特許文献1には、ネットワークを介して各遮断器の計測値の情報を収集し、中央の制御サーバが収集した計測データを元に、短絡事故時の遮断および再閉路を制御する遮断器が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】"IEDを活用した自動開閉器用遠方制御器の開発",袴田 朝丈,東光高岳技報 Vol.4 2017,P17-18,[online],インターネット<URL:https://www.tktk.co.jp/research/report/pdf/2017/giho2017_all.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、中央の制御サーバに情報を送信し、中央の制御サーバがデータ処理、信号の送信等を行うため、データ処理時間や通信時間による遅延が発生し、電流の遮断時間が長くなるという問題がある。電流の遮断時間が長くなると、系統の電圧が低下し、給電されるサーバ等のICT機器が動作を継続することができなくなる可能性がある。
【0006】
開示の技術は、高速遮断または高速再閉路により停電時間を短くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術は、複数の短絡保護装置を備える短絡保護システムであって、前記複数の短絡保護装置のそれぞれは、電線の電流値を示すデータを取得する電流値取得部と、前記電流値が閾値を超えた場合に、信号を他の短絡保護装置に送信する信号送信部と、他の短絡保護装置から信号を受信する信号受信部と、前記他の短絡保護装置からの信号の受信有無に基づいて、前記電線の電流を遮断するように遮断器を制御するか、または前記遮断器を再閉路するように制御する遮断制御部と、を備える短絡保護システムである。
【発明の効果】
【0008】
高速遮断または高速再閉路により停電時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】短絡保護システムのシステム構成を示す図である。
図2】短絡保護装置の機能構成図である。
図3】第一の実施形態に係る遮断制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】実施例1に係る遮断制御について説明するための図である。
図5】実施例2に係る遮断制御について説明するための図である。
図6】実施例3に係る遮断制御について説明するための図である。
図7】実施例4に係る遮断制御について説明するための図である。
図8】第二の実施形態に係る遮断制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0011】
図1は、短絡保護システムのシステム構成を示す図である。
【0012】
本実施形態に係る短絡保護システム1は、電線30のどこかで発生した短絡から、電線30に接続される各機器を保護するためシステムである。短絡保護システム1は、複数の短絡保護装置10(例えば短絡保護装置10a、10bおよび10c)を備える。
【0013】
短絡保護装置10は、通信ネットワーク20および通信線21を介して、互いに通信可能に接続されている。短絡保護装置10は、遮断器101と、制御装置102と、電流計測器103と、記憶装置104と、通信器105と、バス106と、を備える。
【0014】
遮断器101は、電線30の電流を遮断するための機器である。制御装置102は、遮断器101を制御する装置である。制御装置102は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0015】
電流計測器103は、電線30の電流値を計測する機器である。電流計測器103は、定期的に、または制御装置102からの要求に応じて、電流値を計測して、計測結果を示すデータを制御装置102に送信する。
【0016】
記憶装置104は、制御装置102が制御に用いるプログラムまたは設定情報等の各種情報を記憶する。
【0017】
通信器105は、通信線21および通信ネットワーク20を介して、他の短絡保護装置10と通信する機器である。
【0018】
制御装置102、記憶装置104および通信器105は、協働して、コンピュータとして機能する。すなわち、短絡保護装置10は、コンピュータによって構成される。
【0019】
制御装置102は、遮断器101、電流計測器103、記憶装置104および通信器105と、バス106を介して通信可能に接続されている。
【0020】
図2は、短絡保護装置の機能構成図である。
【0021】
短絡保護装置10は、設定情報記憶部11と、電流値取得部12と、遮断制御部13と、信号送信部14と、信号受信部15と、を備える。これら各部は、制御装置102が、記憶装置104等に記憶されたプログラムを読み出して、読み出されたプログラムに規定された処理を実行し、遮断器101、電流計測器103、記憶装置104、通信器105等を制御することによって実現される。
【0022】
設定情報記憶部11は、設定情報を記憶する。設定情報は、他の短絡保護装置10の台数、他の短絡保護装置10の通信先アドレス、遮断閾値および信号待ち時間等を含む。
【0023】
他の短絡保護装置10の台数は、電線30の電流に沿って、一方に位置する台数(N台)と他方に位置する台数(M台)とを含む。短絡時の電流の方向によって、上流がN台、下流がM台となるか、または上流がM台、下流がN台となる。また、他の短絡保護装置10の台数は、電線30を介して直接に接続されている台数であって、他の短絡保護装置10を介して接続される短絡保護装置10の台数は含まない。
【0024】
他の短絡保護装置10の通信先アドレスは、通信ネットワーク20を介して信号を送受信する際の通信先アドレスを示す情報である。例えば、TCP/IPプロトコルを使用する場合は、通信先アドレスはIPアドレスである。
【0025】
遮断閾値は、計測された電流値に基づいて、遮断器を制御する判定に使用する閾値である。信号待ち時間は、信号を受信したか否かを判定するための基準となる時間である。
【0026】
電流値取得部12は、電流計測器103が計測した電線30の電流値を示すデータを取得する。
【0027】
遮断制御部13は、遮断器101が電線30の電流を遮断するように制御するか、または遮断器101を再閉路するように制御する。具体的には、遮断制御部13は、電線30の電流値が閾値を超えているか否かを判定し、超えていると判定すると、電線30の電流を遮断するように遮断器101を制御する。
【0028】
また、遮断制御部13は、信号受信部15が他の短絡保護装置10から信号を受信したか否かに応じて、遮断器101を再閉路するように制御する。
【0029】
信号送信部14は、電線30の電流値が閾値を超えた場合に、信号を他の短絡保護装置10に送信する。具体的には、信号送信部14は、電線30の電流値が閾値を超えた場合に、短絡時の電流に沿って下流に位置する他の短絡保護装置10のそれぞれに、信号を送信する。
【0030】
信号受信部15は、他の短絡保護装置10から信号を受信する。具体的には、信号受信部15は、信号送信部14が信号を送信してから、信号待ち時間として設定された時間内に、他の短絡保護装置10から信号を受信する。
【0031】
(短絡保護装置10の動作)
次に、短絡保護装置10の動作について説明する。図3は、第一の実施形態に係る遮断制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0032】
短絡保護装置10は、定期的に、例えば1秒ごとに、遮断制御処理を実行する。短絡保護装置10が遮断制御処理を開始すると、電流値取得部12は、電流計測器103から電流値を示すデータを取得する(ステップS101)。
【0033】
次に、遮断制御部13は、電流値が遮断閾値を超えているか否かを判定する(ステップS102)。なお、電流値が正負のいずれも取り得る場合には、遮断制御部13は、電流値の絶対値を判定に使用する。このとき、電流値の正負によって、短絡保護装置10は、後述する処理において電流の方向を判断することができる。
【0034】
遮断制御部13が、電流値が遮断閾値を超えていないと判定すると(ステップS102:No)、ステップS101の処理に戻る。
【0035】
また、遮断制御部13は、電流値が遮断閾値を超えていると判定すると(ステップS102:Yes)、電流を遮断するように遮断器101を制御する(ステップS103)。
【0036】
続いて、遮断制御部13は、発生した電流の下流に位置する他の短絡保護装置10が存在するか否かを判定する(ステップS104)。遮断制御部13は、発生した電流の下流に位置する他の短絡保護装置10が存在しないと判定すると(ステップS104:No)、遮断制御処理を終了する。
【0037】
遮断制御部13が、発生した電流の下流に位置する他の短絡保護装置10が存在すると判定すると(ステップS104:Yes)、信号送信部14は、発生した電流の下流に位置する他の短絡保護装置10のそれぞれに、信号を送信する(ステップS105)。
【0038】
次に、信号受信部15は、発生した電流の下流に位置する他の短絡保護装置10から、信号の送信後の信号待ち時間の間に送信された信号を受信する(ステップS106)。続いて、遮断制御部13は、発生した電流の下流に位置するすべての他の短絡保護装置10から信号を受信したか否かを判定する(ステップS107)。
【0039】
遮断制御部13は、発生した電流の下流に位置するすべての他の短絡保護装置10から信号を受信したと判定すると(ステップS107:Yes)、処理を終了する。また、遮断制御部13は、発生した電流の下流に位置するいずれかの他の短絡保護装置10から信号を受信していないと判定すると(ステップS107:No)、遮断器101を再閉路するように制御する(ステップS108)。
【0040】
以下、本実施形態に係る短絡保護システム1の実施例として、実施例1から実施例4までについて説明する。
【0041】
(実施例1)
図4は、実施例1に係る遮断制御について説明するための図である。
【0042】
実施例1は、3つの短絡保護装置10(10a、10bおよび10c)が直列に接続された場合に、短絡保護装置10cの先で短絡が発生した場合である。
【0043】
この場合、短絡保護装置10aは、短絡電流によって測定される電流値が閾値を超えると、電流を遮断するように遮断器101を制御する。そして、短絡保護装置10aは、測定された電流の下流に位置する短絡保護装置10bが存在するため、信号を送信する。
【0044】
短絡保護装置10bは、後述する通り、信号を短絡保護装置10aに送信しないため、短絡保護装置10aは、信号を受信しない。したがって、短絡保護装置10aは、遮断器101を再閉路する。
【0045】
また、短絡保護装置10bは、短絡電流によって測定される電流値が閾値を超えると、電流を遮断するように遮断器101を制御する。そして、短絡保護装置10bは、測定された電流の下流に位置する短絡保護装置10cが存在するため、信号を送信する。
【0046】
短絡保護装置10cは、後述する通り、短絡保護装置10bに信号を送信しないため、短絡保護装置10bは、信号を受信しない。したがって、短絡保護装置10bは、遮断器101を再閉路する。
【0047】
また、短絡保護装置10cは、短絡電流によって測定される電流値が閾値を超えると、電流を遮断するように遮断器101を制御する。そして、測定された電流の下流に位置する短絡保護装置10が存在しないため、短絡保護装置10cは、遮断器101を再閉路しない。
【0048】
このように、短絡が発生した箇所に直接つながっている短絡保護装置10cは電流を遮断した状態を維持し、短絡が発生した箇所に直接つながっていない短絡保護装置10aおよび10bは、遮断器101を再閉路する。
【0049】
(実施例2)
図5は、実施例2に係る遮断制御について説明するための図である。
【0050】
実施例2は、3つの短絡保護装置10(10a、10bおよび10c)が直列に接続された場合に、短絡保護装置10bと10cの間で短絡が発生した場合である。
【0051】
この場合、短絡保護装置10aは、短絡電流によって測定される電流値が閾値を超えると、電流を遮断するように遮断器101を制御する。そして、短絡保護装置10aは、測定された電流の下流に位置する短絡保護装置10bが存在するため、信号を送信する。
【0052】
短絡保護装置10bは、後述する通り、信号を短絡保護装置10aに送信しないため、短絡保護装置10aは、信号を受信しない。したがって、短絡保護装置10aは、遮断器101を再閉路する。
【0053】
また、短絡保護装置10bは、短絡電流によって測定される電流値が閾値を超えると、電流を遮断するように遮断器101を制御する。そして、短絡保護装置10bは、測定された電流の下流に位置する短絡保護装置10cが存在するため、信号を送信する。
【0054】
短絡保護装置10cは、後述する通り、短絡保護装置10bに信号を送信するため、短絡保護装置10bは、短絡保護装置10cから信号を受信する。そして、測定された電流の下流に位置する装置数が1台であって、受信した信号数が1であるため、短絡保護装置10bは、遮断器101を再閉路しない。
【0055】
また、短絡保護装置10cは、短絡電流によって測定される電流値が閾値を超えると、電流を遮断するように遮断器101を制御する。そして、短絡保護装置10cは、測定された電流の下流に位置する短絡保護装置10bが存在するため、信号を送信する。
【0056】
短絡保護装置10bは、短絡保護装置10cに信号を送信するため、短絡保護装置10cは、短絡保護装置10cから信号を受信する。そして、測定された電流の下流に位置する装置数が1台であって、受信した信号数が1であるため、短絡保護装置10cは、遮断器101を再閉路しない。
【0057】
このように、短絡が発生した箇所に直接つながっている短絡保護装置10bおよび10cは電流を遮断した状態を維持し、短絡が発生した箇所に直接つながっていない短絡保護装置10aは、遮断器101を再閉路する。
【0058】
(実施例3)
図6は、実施例3に係る遮断制御について説明するための図である。
【0059】
実施例3は、3つの短絡保護装置10(10a、10bおよび10c)がT字状に接続された場合に、短絡保護装置10bの先で短絡が発生した場合である。
【0060】
この場合、短絡保護装置10aは、短絡電流によって測定される電流値が閾値を超えると、電流を遮断するように遮断器101を制御する。そして、短絡保護装置10aは、測定された電流の下流に位置する短絡保護装置10bおよび10cが存在するため、信号を送信する。
【0061】
短絡保護装置10bは、後述する通り、信号を短絡保護装置10aに送信しない。また、短絡保護装置10cは、後述する通り、信号を短絡保護装置10aに送信する。したがって、短絡保護装置10aは、短絡保護装置10cからのみ信号を受信する。そして、測定された電流の下流に位置する装置数が2台であって、受信した信号数が1であるため、短絡保護装置10aは、遮断器101を再閉路する。
【0062】
また、短絡保護装置10bは、短絡電流によって測定される電流値が閾値を超えると、電流を遮断するように遮断器101を制御する。そして、短絡保護装置10bは、測定された電流の下流に位置する短絡保護装置10が存在しないため、短絡保護装置10bは、遮断器101を再閉路しない。
【0063】
また、短絡保護装置10cは、短絡電流によって測定される電流値が閾値を超えると、電流を遮断するように遮断器101を制御する。そして、短絡保護装置10cは、測定された電流の下流に位置する短絡保護装置10aおよび10bが存在するため、信号を送信する。
【0064】
短絡保護装置10aは、短絡保護装置10cに信号を送信する。短絡保護装置10bは、短絡保護装置10cに信号を送信しない。したがって、短絡保護装置10cは、短絡保護装置10aからのみ信号を受信する。そして、測定された電流の下流に位置する装置数が2台であって、受信した信号数が1であるため、短絡保護装置10cは、遮断器101を再閉路する。
【0065】
このように、短絡が発生した箇所に直接つながっている短絡保護装置10bは電流を遮断した状態を維持し、短絡が発生した箇所に直接つながっていない短絡保護装置10aおよび10cは、遮断器101を再閉路する。
【0066】
(実施例4)
図7は、実施例4に係る遮断制御について説明するための図である。
【0067】
実施例4は、3つの短絡保護装置10(10a、10bおよび10c)がT字状に接続された場合に、短絡保護装置10a、10bおよび10cの間で短絡が発生した場合である。
【0068】
この場合、短絡保護装置10aは、短絡電流によって測定される電流値が閾値を超えると、電流を遮断するように遮断器101を制御する。そして、短絡保護装置10aは、測定された電流の下流に位置する短絡保護装置10bおよび10cが存在するため、信号を送信する。
【0069】
短絡保護装置10bは、後述する通り、信号を短絡保護装置10aに送信する。また、短絡保護装置10cは、後述する通り、信号を短絡保護装置10aに送信する。したがって、短絡保護装置10aは、短絡保護装置10bおよび10cから信号を受信する。そして、測定された電流の下流に位置する装置数が2台であって、受信した信号数が2であるため、短絡保護装置10aは、遮断器101を再閉路しない。
【0070】
また、短絡保護装置10bは、短絡電流によって測定される電流値が閾値を超えると、電流を遮断するように遮断器101を制御する。そして、短絡保護装置10bは、測定された電流の下流に位置する短絡保護装置10aおよび10cが存在するため、信号を送信する。
【0071】
短絡保護装置10aは、信号を短絡保護装置10bに送信する。また、短絡保護装置10cは、後述する通り、信号を短絡保護装置10bに送信する。したがって、短絡保護装置10bは、短絡保護装置10aおよび10cから信号を受信する。そして、測定された電流の下流に位置する装置数が2台であって、受信した信号数が2であるため、短絡保護装置10bは、遮断器101を再閉路しない。
【0072】
また、短絡保護装置10cは、短絡電流によって測定される電流値が閾値を超えると、電流を遮断するように遮断器101を制御する。そして、短絡保護装置10cは、測定された電流の下流に位置する短絡保護装置10aおよび10bが存在するため、信号を送信する。
【0073】
短絡保護装置10aは、信号を短絡保護装置10cに送信する。また、短絡保護装置10bは、信号を短絡保護装置10cに送信する。したがって、短絡保護装置10cは、短絡保護装置10aおよび10bから信号を受信する。そして、測定された電流の下流に位置する装置数が2台であって、受信した信号数が2であるため、短絡保護装置10cは、
【0074】
このように、短絡が発生した箇所に直接つながっている短絡保護装置10a、10bおよび10cは電流を遮断した状態を維持する。
【0075】
本実施形態に係る短絡保護システム1によれば、短絡保護装置10が、それぞれ独立した判定処理によって各遮断器101を制御することによって、全体として、短絡が発生した箇所に直接つながっている遮断器101のみ電流を遮断するように制御する。これによって、サーバ装置等が、複数の短絡保護装置10からの情報を収集したり、各短絡保護装置10に指示したりする必要が無いため、電流の遮断時間を短くすることができる。また、サーバ装置等による複雑な制御処理が不要となるため、簡易にシステムの導入または構成の変更等を行うことができる。
【0076】
各短絡保護装置10が、他の短絡保護装置10と協働することによって、例えば上流の遮断器の閾値や動作時限等の余裕を大きくしなくても良いため、誤った動作を少なくし、より正確な動作が可能となる。
【0077】
また、短絡保護装置10は、電流値の測定値に応じて電流を遮断する制御を行った後で、信号の受信状況に応じて、遮断器101を再閉路する制御を行う。これによって、迅速な電流の遮断と、適切な再閉路と、をともに実現させることができる。
【0078】
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して、第二の実施形態について説明する。第二の実施形態は、信号の受信状況に応じて遮断器を遮断する点が、第一の実施形態と相違する。よって、以下の第二の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点を中心に説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには、第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0079】
図8は、第二の実施形態に係る遮断制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0080】
本実施形態に係る遮断制御処理のステップS201からS202までの処理は、第一の実施形態に係る遮断制御処理のステップS101からS102までの処理と同様である。
【0081】
ステップS202において、遮断制御部13は、電流値が遮断閾値を超えていると判定すると(ステップS202:Yes)、発生した電流の下流に位置する他の短絡保護装置10が存在するか否かを判定する(ステップS203)。
【0082】
遮断制御部13は、発生した電流の下流に位置する他の短絡保護装置10が存在しないと判定すると(ステップS203:No)、電流を遮断するように遮断器101を制御する(ステップS204)。
【0083】
遮断制御部13が、発生した電流の下流に位置する他の短絡保護装置10が存在すると判定すると(ステップS203:Yes)、信号送信部14は、発生した電流の下流に位置する他の短絡保護装置10のそれぞれに、信号を送信する(ステップS205)。
【0084】
次に、信号受信部15は、発生した電流の下流に位置する他の短絡保護装置10から、信号の送信後の信号待ち時間の間に送信された信号を受信する(ステップS206)。続いて、遮断制御部13は、発生した電流の下流に位置するすべての他の短絡保護装置10から信号を受信したか否かを判定する(ステップS207)。
【0085】
遮断制御部13は、発生した電流の下流に位置するすべての他の短絡保護装置10から信号を受信したと判定すると(ステップS207:Yes)、電流を遮断するように遮断器101を制御する(ステップS204)。
【0086】
また、遮断制御部13は、発生した電流の下流に位置するいずれかの他の短絡保護装置10から信号を受信していないと判定すると(ステップS207:No)、処理を終了する。
【0087】
本実施形態に係る短絡保護システム1によれば、短絡箇所に直接つながっている遮断器101を制御して電流を遮断し、直接つながっていない遮断器101を制御しないことができる。
【0088】
また、本実施形態に係る短絡保護装置10は、信号の受信状況に応じて、遮断器101を制御するための、適切な遮断器101のみの遮断を実現させることができる。
【0089】
(実施の形態のまとめ)
本明細書には、少なくとも下記の各項に記載した短絡保護システム、短絡保護装置、短絡保護方法およびプログラムが記載されている。
(第1項)
複数の短絡保護装置を備える短絡保護システムであって、
前記複数の短絡保護装置のそれぞれは、
電線の電流値を示すデータを取得する電流値取得部と、
前記電流値が閾値を超えた場合に、信号を他の短絡保護装置に送信する信号送信部と、
他の短絡保護装置から信号を受信する信号受信部と、
前記他の短絡保護装置からの信号の受信有無に基づいて、前記電線の電流を遮断するように遮断器を制御するか、または前記遮断器を再閉路するように制御する遮断制御部と、を備える、
短絡保護システム。
(第2項)
前記遮断制御部は、前記電流値が前記閾値を超えた場合に、前記電線の電流を遮断するように前記遮断器を制御し、前記信号受信部が、前記電流の下流に位置するいずれかの他の短絡保護装置から、前記信号の送信後に基準となる時間が経過するまでに信号を受信しなかった場合に、制御した前記遮断器を再閉路するように制御する、
第1項に記載の短絡保護システム。
(第3項)
前記遮断制御部は、前記電流値が前記閾値を超えた場合に、前記電流の下流に位置する他の短絡保護装置が存在しないか、または前記信号受信部が、前記電流の下流に位置するすべての他の短絡保護装置から、前記信号の送信後に基準となる時間が経過するまでに信号を受信しなかった場合に、前記電線の電流を遮断するように前記遮断器を制御する、
第1項に記載の短絡保護システム。
(第4項)
電線の電流値を示すデータを取得する電流値取得部と、
前記電流値が閾値を超えた場合に、信号を他の短絡保護装置に送信する信号送信部と、
他の短絡保護装置から信号を受信する信号受信部と、
前記他の短絡保護装置からの信号の受信有無に基づいて、前記電線の電流を遮断するように遮断器を制御するか、または前記遮断器を再閉路するように制御する遮断制御部と、を備える、
短絡保護装置。
(第5項)
複数の短絡保護装置のそれぞれが、
電線の電流値を示すデータを取得するステップと、
前記電流値が閾値を超えた場合に、信号を他の短絡保護装置に送信するステップと、
他の短絡保護装置から信号を受信するステップと、
前記他の短絡保護装置からの信号の受信有無に基づいて、前記電線の電流を遮断するように遮断器を制御するか、または前記遮断器を再閉路するように制御するステップと、を実行する、
短絡保護方法。
(第6項)
コンピュータを第4項に記載の短絡保護装置における各部として機能させるためのプログラム。
【0090】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 短絡保護システム
10 短絡保護装置
11 設定情報記憶部
12 電流値取得部
13 遮断制御部
14 信号送信部
15 信号受信部
20 通信ネットワーク
21 通信線
30 電線
101 遮断器
102 制御装置
103 電流計測器
104 記憶装置
105 通信器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8