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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/24 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
B65D47/24 200
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020215948
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022101715
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】桑垣 傳美
(72)【発明者】
【氏名】西村 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】堀 裕貴
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037290(JP,A)
【文献】特開2019-043644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着し、内部に逆止弁を有するキャップであり、
逆止弁は、容器の口部を塞ぐ位置に配置されるともに、容器内の内容物の液体が流れ出る開口を有する中栓と、中栓の開口および開口周囲の中栓上面を覆って配置し、中栓の開口の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって変位する弁体とを有し、
弁体は、この弁体が閉弁位置にあるときに前記開口周囲の中栓上面に密接する環状のシール部と、このシール部よりも内周側において、弁体下面から中栓上面に向けて隆起するとともに中栓の前記開口周囲に沿って環状に形成された液封部とを有し、
液封部と中栓上面との間に液封用空隙を有することを特徴とするキャップ。
【請求項2】
中栓の開口周囲の上面における周方向の一定範囲に、他の範囲よりも凹んで形成された凹部を有し、この凹部によって液封用空隙が形成されていることを特徴とする請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
環状に形成された弁体の液封部は、その周方向の一定範囲に、他の範囲よりも隆起高さが低く形成された低隆起部を有し、この低隆起部と中栓上面との間に液封用空隙が形成されていることを特徴とする請求項1記載のキャップ。
【請求項4】
環状に形成された弁体の液封部は、その周方向の一定範囲に、他の範囲よりも隆起高さが低く形成された低隆起部を有し、この低隆起部と中栓上面との間に液封用空隙が形成されており、凹部と低隆起部とは、液封部の周方向に沿った互いに異なる位置に形成されていることを特徴とする請求項2記載のキャップ。
【請求項5】
環状のシール部に中栓上面に向けて突出する突起が形成されており、シール部は、周方向に沿った一定範囲に、突起を有しない部分、または他の範囲よりも突起の突出量が小さい部分を有し、
弁体の液封部と中栓上面との間に代えて、または液封部と中栓上面との間とともに、
前記環状の突起を有しない部分、または他の範囲よりも突起の突出量が小さい部分と、中栓上面との間に、液封用空隙を有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載のキャップ。
【請求項6】
中栓は、弁体の液封部よりも内周側における開口周囲に、中栓上面から弁体に向けて隆起するとともに、中栓の開口に沿って環状に形成された中栓の液封部を有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載のキャップ。
【請求項7】
環状のシール部と中栓上面との間にも液封用空隙を有することを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項記載のキャップ。
【請求項8】
弁体は、開弁位置と閉弁位置とにわたる弁体の変位の良好化のための薄肉部を有することを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に装着するキャップに関し、特に逆止弁を内蔵したキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
醤油等の内容物を充填した容器において内容物の酸化を抑制する技術が知られている。これは、二重容器の内容器に醤油等の内容物を納め、内容器の口部にキャップを装着し、キャップの内部に配置した逆止弁における中栓の開口を弁体で封止するものである。
【0003】
このような容器およびキャップの構造に関する先行技術として、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、二重容器の内容器の口部に中栓を装着し、中栓に設けた連通筒内に弁体を配置したものである。弁体は、連通筒内において容器軸心方向に沿って摺動可能である。弁体は、容器軸心と同軸に配置された有底筒状に形成され、容器軸心方向の上側端部に、径方向外方に拡がる環状のフランジを有する。連通筒の環状の上端面が弁座を構成し、この弁座が弁体のフランジと当接して封止を行う。そして、弁体が連通筒内において容器軸心方向に沿って摺動することで、フランジと連通筒の弁座との間を開閉する。
【0004】
また、特許文献2に記載するものが知られている。これは、弁体のシール部の内周面と中栓の弁座との間、および弁体のシール部の外周面と中栓の弁座との間に醤油等の内容物の液体すなわち内容液を層状に保持して液封することで、内容器に空気が侵入することを遮断するものである。内容物は、人手などによって容器に圧搾力を付与することで、容器外に流れ出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6450243号明細書
【文献】特開2019-43644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された構成において、内容器に空気が侵入することを遮断する液封の確実性は、シール部の内周面および外周面と中栓の弁座との間に保持する液量に依存している。この液量に影響を与える要素には、例えば圧搾力を解除したときの内容器の姿勢や容器に加えられる振動、内容器の内容物の残量等である。
本発明は上記した課題を解決するものであり、空気の遮断を確実に行うことができるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明のキャップは、
容器の口部に装着し、内部に逆止弁を有するキャップであり、
逆止弁は、容器の口部を塞ぐ位置に配置されるとともに、容器内の内容液が流れ出る開口を有する中栓と、中栓の開口および開口周囲の中栓上面を覆って配置し、中栓の開口の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって変位する弁体とを有し、
弁体は、この弁体が閉弁位置にあるときに前記開口周囲の中栓上面に密接する環状のシール部と、このシール部よりも内周側において、弁体下面から中栓上面に向けて隆起するとともに中栓の前記開口周囲に沿って環状に形成された液封部とを有し、
液封部と中栓上面との間に液封用空隙を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のキャップによれば、中栓の開口周囲の上面における周方向の一定範囲に、他の範囲よりも凹んで形成された凹部を有し、この凹部によって液封用空隙が形成されていることが好適である。
【0009】
また本発明のキャップによれば、環状に形成された弁体の液封部は、その周方向の一定範囲に、他の範囲よりも隆起高さが低く形成された低隆起部を有し、この低隆起部と中栓上面との間に液封用空隙が形成されていることが好適である。
【0010】
また本発明のキャップによれば、
環状のシール部に中栓上面に向けて突出する突起が形成されており、シール部は、周方向に沿った一定範囲に、突起を有しない部分、または他の範囲よりも突起の突出量が小さい部分を有し、
弁体の液封部と中栓上面との間に代えて、または弁体液封部と中栓上面との間とともに、
前記環状の突起を有しない部分、または他の範囲よりも突起の突出量が小さい部分と、中栓上面との間に液封用空隙を有することが好適である。
【0011】
また本発明のキャップによれば、中栓は、弁体の液封部よりも内周側における開口周囲に、中栓上面から弁体に向けて隆起するとともに、中栓の開口の縁に沿って環状に形成された中栓の液封部を有することが好適である。
【0012】
また本発明のキャップによれば、環状のシール部と中栓上面との間にも液封用空隙を有することが好適である。
【0013】
また本発明のキャップによれば、弁体は、開弁位置と閉弁位置とにわたる弁体の変位の良好化のための薄肉部を有することが好適である。
【発明の効果】
【0014】
上記構成において、弁体が開弁位置にあると、中栓上面と弁体下面とが離隔して両者の間の流路が広くなり、中栓の開口から流れ出る内容液は中栓上面と弁体下面との間の流路を通って速やかに外部へ流れ出る。
【0015】
弁体が開弁位置から閉弁位置に戻る過程で、中栓上面と弁体下面とが接近して両者の間の流路が狭くなり、内容液の流れに対して弁体液封部が抵抗として作用し、中栓上面と弁体下面との間に残る内容液が弁体の液封部と中栓上面との間の液封用空隙に残留して液封を形成する。つまり液封用空隙が容器の外部に通じることを遮断する。
【0016】
よって、液封によって外部の空気が容器内に侵入することを確実に遮断でき、容器の内容液と外部の空気との接触を確実に防止できる。
【0017】
また、弁体の液封部と中栓上面との間が隘路をなすことで、内容液の表面張力による内容液を保持する作用が高まり、内容液を液封用空隙により確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】容器に取り付けた状態の本発明の実施の形態のキャップの断面図である。
図2図1における中栓の平面図である。
図3図2の中栓の断面図である。
図4図1における弁体を構成する弁部材の断面図である。
図5図3の弁部材の底面図である。
図6図1における中栓の立体図である。
図7図1における弁部材の立体図である。
図8】弁体の動作状態を示す図である。
図9図8の次の動作状態を示す図である。
図10図9の次の動作状態を示す図である。
図11図1における要部を拡大して示す図である。
図12図1に示す部分をより広い範囲とともに示す図である。
図13】本発明の他の実施の形態のキャップにおける中栓の平面図である。
図14図13の中栓の断面図である。
図15図13および図14の中栓と弁体との位置関係を示す図である。
図16図15に示される弁体を構成する弁部材の底面図である。
図17】本発明のさらに他の実施の形態のキャップにおける弁体の断面図である。
図18図17に示される弁体を構成する弁部材の底面図である。
図19】本発明のさらに他の実施の形態のキャップにおける要部の断面図である。
図20】本発明のさらに他の実施の形態のキャップにおける要部の断面図である。
図21】本発明のさらに他の実施の形態のキャップにおける要部の断面図である。
図22】本発明のさらに他の実施の形態のキャップにおける要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図12は、本発明の実施の形態のキャップ11が容器12に装着された状態を示す。ここでは、容器12は、外容器13と内容器14とを備えた二重構造とされ、外容器13の口部10にキャップ11を装着している。キャップ11は、外容器13の口部10に嵌合する本体15と、本体15を開閉するための蓋16とを一体に備える。本体15は吐出口17を有し、蓋16は吐出口17を閉止する閉止部18を有する。
【0020】
キャップ11の内部には逆止弁20が配置されている。逆止弁20は、内容器14の口部19に装着される中栓21と、中栓21を覆うように配置される弁部材22とを備えている。弁部材22は、内容器14の軸心方向において中栓21に対向して配置される液弁としての弁体23と、弁体23と一体をなし弁体23の外周縁を支持して中栓21に外嵌装着される支持部24とを有している。
【0021】
中栓21は容器12における醤油等の内容物の液体すなわち内容液が通過する開口25を有し、開口25の周囲が弁座26を構成している。弁体23は、中栓21の開口25を覆うように弁座26に対向して配置し、開口25を囲み弁体23の周縁部に沿って形成したシール部27を有している。シール部27は、弁体23の一部をなし、弁体23の内面側において弁座26に向けて湾曲形状に突出し、弁体23の外面側において溝状に窪んだ形状を有している。シール部27は、中栓21の開口25の周囲の弁座26にシール面28が当接離間可能である。このシール部27よりも外側の位置において弁体23には複数の液穴29が開口している。液穴29は、シール部27の周方向に沿った複数個所において、弁体23と支持部24の肩部とにわたって開口している。
【0022】
キャップ11は吸気口31を有し、この吸気口31が内容器14と外容器13との間に連通している。弁部材22は、吸気口31を開閉する空気弁体32を有し、この空気弁体32は支持部24の外周縁からキャップ11半径方向外側へ伸びる四角形状あるいは扇形状をなす。
【0023】
キャップ11において内容器14の内容物を吐出する際には、外容器13に圧搾力を加え、この圧搾力を外容器13と内容器14との間の空気層を介して内容器14に与えて、内容器14を搾る。
【0024】
このとき、内容器14の内圧の高まりにより、弁体23は、図12に示す閉弁状態から図8に示す初動状態へ遷移して、中栓21の開口25から離間する方向に移動し始める。さらに、弁体23は、図9に示す中間状態から図10に示す開弁状態に遷移する。すなわち、弁体23の移動に伴ってシール部27が弁座26から離間して開弁位置に移動し、図10に示すように、内容器14の内容液57が、シール部27と弁座26との間を通り、図12に示すキャップ11の吐出口17から外部に向けて押し出される。
【0025】
一方、外容器13に加える圧搾力を解除すると、弾性変形した外容器13が復元力により元の形状に戻ることで、外容器13の内部空間が広がって減圧状態となる。このため、図1において仮想線で示すように、空気弁体32が開いて、吸気口31を通して外容器13と内容器14との間に空気が流入する。
【0026】
同時に、加圧力が解除された内容器14の内部が減圧状態となることで、容器内外の圧力差を駆動圧として、図12に示すように弁体23が中栓21の開口25に接近する方向に押圧される。そして、弁体23の移動に伴ってシール部27が弁座26に接する閉弁位置に移動し、シール面28と弁座26との間を封止する。
【0027】
さらに、弁体23と中栓21との間に醤油等の内容液を層状に保持して液封することで、内容器102に空気が侵入することを遮断する。以下、この点について詳細に説明する。
【0028】
図1および図6に示すように中栓21は弁座26の外周に環状溝35を有し、図2図3図6に示すように環状溝35よりも外周側に拡がる外縁36における周方向に沿った複数の位置にそれぞれ切欠き37を有している。切欠き37は、図1に示すキャップ11の本体15の内部に形成した突起(図示省略)とはまり合うことで、開口25の軸心まわりにおいて中栓21を位置決めする。
【0029】
一方、図2および図3に示すように、中栓21の環状溝35の内周面には、弁部材22を周方向に位置決めする突起38が形成されている。
【0030】
図1に示す弁部材22の弁体23は、上述のように中栓21の開口25の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって弾性変位する。弁部材22の支持部24は、弁体23と一体をなし弁体23の外周縁を支持しており、中栓21の環状溝35に嵌合装着されている。支持部24は、その内周面に、中栓21の突起38に嵌合する凹部39を有している。
【0031】
図4図8図11に詳しく示すように、上述した弁体23のシール部27の湾曲形状は、液穴29に臨む側の外側湾曲部41と、中栓21の開口25に臨む側の内側湾曲部42との形状が異なっている。すなわち、シール部27は、弁体23に強制力が作用しない自然下の無負荷状態において、湾曲形状の頂点を境とする液穴29の側の外側湾曲部41と、中栓21の開口25の側の内側湾曲部42とが非対称な形状をなしている。
【0032】
そして、外側湾曲部41は、内側湾曲部42の曲率半径よりも大きい曲率半径の形状をなし、外側湾曲部41の厚みが内側湾曲部42の厚みより大きい形状をなす。反対に、内側湾曲部42は、外側湾曲部41の曲率半径よりも小さい曲率半径の形状をなし、内側湾曲部42の厚みが外側湾曲部41の厚みより小さい形状をなす。
【0033】
このように、シール部27の外側湾曲部41の曲率半径を内側湾曲部42の曲率半径よりも大きくすることで、シール部27に曲がり剛性が異なる二つの部位、すなわち曲がり剛性が外側湾曲部41よりも大きい内側湾曲部42と、曲がり剛性が内側湾曲部42よりも小さい外側湾曲部41とが共存する構造を実現できる。
【0034】
シール部27は、湾曲形状の頂点を含むシール面28の一部で、弁座26の座面43に当接離間可能である。そして、閉弁位置にある逆止弁20は、シール部27のシール面28が弁座26の座面43に圧接する圧接領域と、シール面28と座面43とが離間する非圧接領域とを形成する。そして、図11に示すように、圧接領域と非圧接領域との境の近傍において、非圧接領域の内側湾曲部42の内側シール面44と座面43との間に形成される内側液封用間隙45を有するとともに、外側湾曲部41の外側シール面46と座面43との間に形成される外側液封用間隙47を有する。
【0035】
図6は、弁部材22を斜め上方から視た立体図を表す。
【0036】
図1図4図5図8図12に示すように、弁体23は、中栓21に対向する下面49に液封部50を有している。この液封部50は、中栓21の開口25の半径方向においてこの開口25よりも外側に位置し、開口25に沿って環状に形成したもので、下面49から中栓21の上面51に向けて下向きに隆起している。
【0037】
図2および図3に示すように、中栓21における開口25と弁座26との間には、これらの周方向に沿った一部に、樹脂流入痕52と、この樹脂流入痕52の周辺の、凹部としての陥没部53とが存在する。すなわち、中栓21は金型を用いた射出成形により形成されるが、樹脂流入痕52は、金型に設けられた溶融樹脂の通路としてのゲートと、金型内部の成形用空間との境目の部分が、成形品としての中栓21の表面の一部分に、跡形として形成されたものである。陥没部53は、金型の設計上、意図的に形成させたものである。なお、陥没部53の形成方法は、適宜変更することができる。
【0038】
図1に示す弁部材22の閉弁状態においては、上述のように弁体23のシール部27が弁座26に密接することでシールが行われるとともに、陥没部53以外の箇所では弁体23の液封部50が中栓21の上面51に密接する。これに対し、図11に示すように、陥没部53においては、液封部50の下端面と陥没部53の底面との間に、液封用空隙としてのわずかな隙間54が形成される。この隙間54は非常に小さなもので、液封部50の下端面と陥没部53の底面との間の距離は、0.01~0.1mm程度、たとえば0.08mmといったものである。この隙間54は、液封用空隙を構成する。
【0039】
そして、弁部材22は基本的に薄膜からなり、弁体23はたとえば0.2mmの厚みに形成され、液封部50の隆起はたとえば0.2mm以下に形成される。
【0040】
このため、弁体23の下面49と中栓21の上面51との間で、内容液の表面張力によって内容液を保持する作用がはたらく。この作用は、隘路すなわち液封部50の下端面と陥没部53の底面との間において強く働く。
【0041】
図1に示されるキャップ11の本体15の吸気口31は、外容器2と内容器3の間に連通している。弁部材22の空気弁体32は、上述のように支持部24の外周縁から本体15の半径方向外側へ伸びる四角形状あるいは扇形状扇形状をなしている。図1に示すように空気弁体32は吸気口31を閉塞する閉弁位置と吸気口31を開放する開弁位置とにわたって変位し、吸気口31を開閉する。空気弁体32は、吸気口23に対向する表面側が図7に示すように平坦面をなし、背面側に図4および図5に示すように格子状のリブ55を備えている。
【0042】
以下、上記の構成における作用について説明する。内容器14の内容物である内容液を吐出する際には、外容器13に圧搾力を加え、この圧搾力を外容器13と内容器14との間の空気層を介して内容器14に与えて内容器14を搾る。
【0043】
すると、内容器14の内圧の高まりにより、弁体23は、図8に示す開弁開始状態から図9に示す中間状態へ遷移して、中栓21の開口25から離間する方向に移動する。このとき、弁体23は、駆動圧力に対する応答性が優れているので、この過程の途中でシール部27が弁座26から離間し始める。さらに、弁体23は、図9に示す中間状態から図10に示す開弁状態に遷移し、弁体23の移動に伴ってシール部27が弁座26から離間して開弁位置に移動する。すると、内容器14の内容液57が、シール部27と弁座26との間を通ったうえで、図1に示すキャップ11の吐出口17から押し出される。
【0044】
このとき、図11に詳しく示すように、シール部27が曲がり剛性の大きい内側湾曲部42と曲がり剛性の小さい外側湾曲部41とが共存する構造を有しているので、曲がり剛性の小さい外側湾曲部41により、弁体23の移動に追従してシール部27が容易に稼働する優れた応答性を実現できる。
【0045】
外容器13に加える圧搾力を解除すると、弾性変形した外容器13が復元力により元の形状に戻ることで外容器13の内部空間が広がって減圧状体となる。このため、図1に一点鎖線で示すように空気弁体32が開き、吸気口31を通して外容器13と内容器14との間に空気が流入する。
【0046】
弁体23は、自身の復元力で閉弁方向に移動するとともに、加圧力が解除された内容器14の内部が減圧状態となることで、容器内外の圧力差を駆動圧として、中栓21の開口25に接近する方向に押圧される。弁体23の移動に伴ってシール部27が弁座26に当接する閉弁位置に移動し、シール面28と座面43との間を封止する。
【0047】
このとき、シール部27が曲がり剛性の大きい内側湾曲部42と曲がり剛性の小さい外側湾曲部41とが共存する構造を有するので、曲がり剛性の大きい内側湾曲部42により、駆動圧を受ける弁体23からシール部27に加わる力を確実にシール面28に作用させて座面43とシール面28との間に、内容物の漏出を防止する封止に必要な十分な面圧を確保できる。
【0048】
図11に示すように、シール面28が座面43に圧接する閉弁状態で、シール部27の内周の内側シール面44と中栓21の座面43との間、およびシール部27の外周の外側シール面46と中栓21の座面43との間に、毛管現象により内容液の液層が形成される。
【0049】
すなわち、シール面28と座面43との間の非圧接領域において、内側湾曲部42の内側シール面44と座面43との間に形成される内側液封用間隙45と、外側湾曲部41の外側シール面46と座面43との間に形成される外側液封用間隙47とに、内容液の液層が形成される。この内側シール面44と外側シール面46との両側に形成される内容液の液層により、内容液の酸化を防止するために必要な第1液封を形成して、シール部27と弁座26との間の通気の遮断を実現する。
【0050】
さらに、弁体23が開弁位置から閉弁位置に戻ると、図11に示すように弁体23の液封部50が中栓21の上面51に接するが、そのときに中栓21の陥没部53においては上述のように液封部50の下端面と陥没部53の底面との間にわずかな隙間54が形成されて液封用空隙を構成する。これにより、中栓21の上面51と弁体23の下面49との間に残る内容液57が隙間54すなわち液封用空隙に保持されて第2液封を形成する。
【0051】
詳細には、上述のように弁体23の液封部50が中栓21の上面51に接することで、液封部50とシール部27との間に、図11に詳しく示される液溜り空間58が形成され、図1に示す吐出口17から吐出されなかった内容液をこの液溜り空間58に留めることができる。そして、このとき、液溜り空間58などに残った余分な内容液は、隙間54を通って開口25に達したうえで、内容器14の内部に流れ落ちる。ある程度の量の内容液が内容器14の内部に流れ落ちると、表面張力によって隙間58に内容液が溜り、これによる第2液封が形成される。
【0052】
その結果、第1液封と第2液封とによって外部の空気が内容器14の内部に侵入することを確実に遮断でき、内容器14の内容液と外部の空気との接触を確実に防止できる。
【0053】
図13図16は、本発明の他の実施の形態のキャップを示す。ここでは、図13および図14に示すように、中栓21の上面51には、図2および図3に示されていた中栓において形成されていた陥没部53が形成されていないか、あるいは形成されていても実質的に陥没しているとは言えない状態である。
【0054】
そして図13図16の実施の形態のものでは、図16に示すように、弁部材22の弁体23に形成された環状の液封部50における周方向に沿った一定角度範囲60に、他の範囲よりも隆起高さが低く形成された低隆起部61が形成されている。この低隆起部61が形成された範囲では、図15に詳しく示すように、低隆起部61の下端面と中栓21の上面51との間にわずかな隙間54が形成される。この隙間54における低隆起部61の下端面と中栓21の上面51との間の距離は、先の実施の形態と同様に0.01~0.1mm程度、たとえば0.08mmといったものである。この隙間54も、液封用空隙を構成する。
【0055】
この図13図16の実施の形態においても、同様に、隙間54による液封効果を期待することができる。この図13図16の実施の形態における隙間54は、図1図12の実施の形態における隙間54に代えて形成することもできるし、図1図12の実施の形態における隙間54とともに形成することもできる。後者の場合は、中栓21の陥没部53と、弁体23の低隆起部61とを、液封部50の周方向に沿った互いに異なる位置に形成すれば良い。
【0056】
図17図18は、本発明のさらに他の実施の形態のキャップを示す。ここでは、弁部材22の弁体23のシール部27に、中栓21の上面51に形成された弁座26の座面43に密接可能な下向きの突起62が一体に形成されている。この突起62はシール部27の周方向に沿って形成されているが、弁部材22には、図18に示すように、シール部27の周方向に沿った一定範囲に、突起を有しない部分63が設けられている。あるいは、これに代えて、上記の一定範囲を、他の範囲よりも突起の突出量が小さい部分とすることもできる。
【0057】
この場合も、突起を有しない部分63や、他の範囲よりも突起の突出量が小さい部分では、上記と同様の隙間が形成され、それによって液封用空隙を構成することができる。この図17図18の液封用空隙は、図1図12の隙間54や図13図16の隙間54とともに形成することもできるし、あるいは、これらの隙間54、54に代えて形成することもできる。
【0058】
ただし、図1図12の隙間54や図13図16の隙間54とともに形成する場合は、突起を有しない部分63は、弁体23の周方向に沿って、隙間54から離れた位置に設けることが好ましい。これらが近接していると、各部で留めようとしている内容液を過剰に内容器14内に戻し過ぎるおそれがあるためである。このため、たとえば、図1に示すように陥没部53が空気弁体32に近い位置に存在する場合において、突起62および突起を有しない部分63を併設するときには、図18に示すように突起を有しない部分63を、空気弁体32から離れた位置、たとえば弁体23の周方向に沿って陥没部53から180度離れた位置に設けることが好ましい。
【0059】
図19は、本発明のさらに他の実施の形態のキャップの要部の断面構造を示す。この図19の実施の形態では、弁部材22の弁体23における液穴29が形成された部分65を、仮想線で示された図1図12の実施形態などの同部分に比べて、液穴29が形成された部分65の外面側を減肉することにより薄肉に形成している。これによって、弁体23の開閉動作性の向上を図っている。
【0060】
図20は、本発明のさらに他の実施の形態のキャップの要部の断面構造を示す。この図20の実施の形態では、中栓21における開口25の周縁に、中栓21の液封部66が、この中栓21の上面51から上向きに隆起した環状突起によって中栓21と一体に形成されている。そして、図示のように弁体23が閉じたときに、この弁体23の液封部50の内周面と中栓21の液封部66の外周面とが密接することでシールを行うように構成されている。また、この図20の構成においても、減肉などの手段によって、周方向に沿った一定範囲において、弁体23の液封部50の内周面と中栓21の液封部66との間に隙間を形成することによって、他の実施の形態と同様の液封用空隙を形成することができる。なお、図示の例では上記のように中栓21の液封部66を開口25の周縁に設けているが、液封部66は、中栓21における開口25と弁座26との間における適宜の位置に設けることができる。その場合は、弁体23の液封部50も、それに対応した位置に設けられる。また、この図20の実施の形態では、弁体23における液穴29が形成された部分65とシール部27の外側湾曲部41との間の部分67の内面側を減肉することで、この部分67を薄肉に形成している。これによって、弁体23の開閉動作性の向上を図っている。
【0061】
図21は、本発明のさらに他の実施の形態のキャップの要部の断面構造を示す。この図21の実施の形態では、弁体23のシール部68を、これまでの実施の形態のシール部27に代えて、液封部50と同様の下向きに隆起した環状体にて構成している。これにより、シール部68を中栓21の弁座26に対して線接触に近い形で接触させている。その結果、弁座26へのシール部68の接触圧を増大させて、シール機能の向上を図っている。そして、シール部68と弁座26との間にも、液封部50と陥没部53の底面との間と同様の隙間を形成して、同様の液封用空隙を形成することができる。また、この図21の実施の形態では、図20の実施の形態とは断面形状が相違するが、同様に、弁体23における液穴29が形成された部分65とシール部68との間の部分69を薄肉に形成している。これによって、弁体23の開閉動作性の向上を図っている。
【0062】
図22は、本発明のさらに他の実施の形態のキャップの要部の断面構造を示す。この図22の実施の形態は、図21の実施の形態と同様のシール部68を設けているが、図21の実施の形態と比べて、薄肉化により弁体23の開閉動作性の向上を図るための構成が相違する。詳細には、弁体23における液穴29が形成された部分65とシール部68との間の部分67が、図20に示されたものと同様の構成となっている。
【符号の説明】
【0063】
11 キャップ
20 逆止弁
21 中栓
23 弁体
25 開口
26 弁座
27 シール部
29 液穴
49 下面
50 液封部
51 上面
52 樹脂流入痕
53 陥没部
54 隙間
57 内容液
61 低隆起部
62 突起
63 突起を有しない部分
68 シール部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
図13
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図18
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図22