(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241001BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241001BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241001BHJP
H01L 21/8238 20060101ALI20241001BHJP
H01L 27/092 20060101ALI20241001BHJP
H01L 21/76 20060101ALI20241001BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241001BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L29/78 656C
H01L27/088 E
H01L27/092 A
H01L29/78 652C
H01L29/78 652G
H01L29/78 652J
H01L29/78 652K
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652R
H01L29/78 652S
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 657G
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L29/78 658F
(21)【出願番号】P 2023523382
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2022019342
(87)【国際公開番号】W WO2022249855
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021088393
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム/高品質、高信頼性を実現する先進パワーモジュール技術/高速スイッチング可能でタフなSiCモジュール技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光央
(72)【発明者】
【氏名】八尾 惇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘
(72)【発明者】
【氏名】原田 信介
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-022140(JP,A)
【文献】特開2002-313945(JP,A)
【文献】特開2004-173292(JP,A)
【文献】特開2009-088220(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0298563(US,A1)
【文献】OKAMOTO, Mitsuo et al.,First Demonstration of a Monolithic SiC Power IC Integrating a Vertical MOSFET with a CMOS Gate Buff,2021 33rd International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs (ISPSD),2021年06月15日,pp. 71-74,DOI: 10.23919/ISPSD50666.2021.9452262
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336、21/76、
21/8234、21/8238、
27/088、27/092、
29/06、29/12、
29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面とを有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記第1主面上に設けられた、第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられ、前記第1導電型の第1部分および第2導電型の第2部分を有する第2半導体層と、
前記第2半導体層上に設けられた前記第2導電型の第3半導体層と、
前記半導体基板の前記第1主面上の平面視レイアウトの一部であるパワートランジスタ領域に設けられたパワートランジスタと、
前記半導体基板の平面視レイアウトの他の一部であるCMOS領域に設けられ、p型MOSFETとn型MOSFETとで構成された前記パワートランジスタの駆動回路と、
を備え、
前記パワートランジスタは、
前記第3半導体
層の一部に選択的に設けられた前記第1導電型のパワーソース領域と、
前記パワーソース領域および前記第3半導体層を貫通して前記第2半導体層に達する深さを持つトレンチ溝と、
前記トレンチ溝内にトレンチゲート絶縁膜を介して設けられたトレンチゲート電極と、
前記パワーソース領域に接続された第1ソース電極と、
前記第2主面に設けられた第1ドレイン電極と、
を有し、
前記p型MOSFETは、
前記第3半導体層の一部に設けられた前記第1導電型の第1ウェル領域内に形成された前記第2導電型の第1ソース領域および前記第2導電型の第1ドレイン領域と、
前記第1ソース領域と前記第1ドレイン領域との間に設けられた前記第2導電型の埋め込みチャネル領域と、
前記埋め込みチャネル領域の上に第1ゲート絶縁膜を介して設けられた第1ゲート電極と、
を有し、
前記n型MOSFETは、
前記第3半導体層の一部に設けられた前記第1導電型の第2ソース領域および前記第1導電型の第2ドレイン領域と、
前記第2ソース領域と前記第2ドレイン領域との間に設けられたチャネル領域と、
前記チャネル領域上に第2ゲート絶縁膜を介して設けられた第2ゲート電極と、
を有し、
前記埋め込みチャネル領域の前記第2導電型の不純物濃度は、前記第3半導体層の前記第2導電型の不純物濃度と等しい、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記チャネル領域は、前記第2導電型を有し、
前記埋め込みチャネル領域の前記第2導電型の不純物濃度は、前記チャネル領域の前記第2導電型の不純物濃度と等しい、半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第3半導体層はエピタキシャル層であり、前記第3半導体層の厚さは、前記第1ウェル領域の深さよりも大きい、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記第3半導体層の不純物濃度は、前記第2半導体層の前記第2部分の不純物濃度よりも低く、
前記第3半導体層の厚さは、前記第2半導体層の厚さよりも厚い、半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1ウェル領域は、前記第1導電型の第4半導体層と、前記第4半導体層の上に設けられた前記第1導電型の第5半導体層と、
を含み、
前記第4半導体層の不純物濃度は、前記第5半導体層の不純物濃度よりも高い、半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記第1ウェル領域は、さらに、前記第1導電型であって、前記第5半導体層よりも高不純物濃度の第6半導体層を含み、
前記第6半導体層は、平面視において、前記第1ソース領域、前記第1ドレイン領域および前記埋め込みチャネル領域を取り囲み、深さ方向において、前記第3半導体層の表面から前記第4半導体層に達する、半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記p型MOSFETのゲート幅方向における前記第1ゲート電極の端部で、前記埋め込みチャネル領域は、前記第6半導体層と接している、半導体装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一つに記載の半導体装置において、さらに、
前記第1ウェル領域内に形成された前記第2導電型の第2ウェル領域を有し、
前記n型MOSFETの前記第2ソース領域、前記チャネル領域および前記第2ドレイン領域は、前記第2ウェル
領域内に形成されている、半導体装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一つに記載の半導体装置において、さらに、
平面視において、前記パワートランジスタ領域と前記CMOS領域との間に設けられた分離領域を有し、
前記分離領域には、深さ方向において、前記第3半導体層を貫通する更なるトレンチ溝が設けられており、
前記パワートランジスタ領域の前記第3半導体層と、前記CMOS領域の前記第3半導体層とは電気的に分離されている、半導体装置。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一つに記載の半導体装置において、
平面視において、前記CMOS領域は、環状の前記パワートランジスタ領域で周囲を囲まれている、半導体装置。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一つに記載の半導体装置において、
前記トレンチゲート絶縁膜の側壁部分の膜厚は、前記第1ゲート絶縁膜および前記第2ゲート絶縁膜の膜厚より厚い、半導体装置。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一つに記載の半導体装置において、
前記半導体基板の前記第1主面は、オフ方向である結晶軸方向に所定のオフ角を設けた結晶面であり、
前記パワートランジスタ領域には複数の前記トレンチ溝が互いに平行に配置されており、平面視において、前記複数の前記トレンチ溝は前記オフ方向である結晶軸方向に延在している、半導体装置。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一つに記載の半導体装置において、
前記半導体基板は炭化珪素半導体からなる、半導体装置。
【請求項14】
(a)パワートランジスタ領域とCMOS領域とを備える第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面とを有する半導体基板を準備する工程、
(b)前記半導体基板の前記第1主面上にエピタキシャル成長法を用いて第1導電型の第1半導体層を形成する工程、
(c)前記第1半導体層上にエピタキシャル成長法を用いて第2半導体層を形成し、前記第2半導体層に
第1イオン注入法を用いて第1導電型の第1部分および第2導電型の第2部分を形成する工程、
(d)前記第2半導体層上にエピタキシャル成長法を用いて前記第2導電型の第3半導体層を形成する工程、
(e)前記CMOS領域において、
第2イオン注入法を用いて前記第1導電型のウェル領域を形成する工程、
(f)前記パワートランジスタ領域において、前記第3半導体層を貫通し、前記第2半導体層に達する深さのトレンチ溝を形成する工程、および
(g)前記パワートランジスタ領域において、前記第3半導体層にパワーソース領域、前記トレンチ溝内にトレンチゲート絶縁膜およびトレンチゲート電極を設けることでパワートランジスタを形成し、前記CMOS領域において、前記ウェル領域内に、第1ソース領域、埋め込みチャネル領域および第1ドレイン領域、前記埋め込みチャネル領域上に第1ゲート絶縁膜および第1ゲート電極を設けることでp型MOSFETを形成し、前記CMOS領域において、前記第3半導体層内に、第2ソース領域、チャネル領域および第2ドレイン領域、前記チャネル領域上に第2ゲート絶縁膜および第2ゲート電極を設けることでn型MOSFETを形成する工程、
を備え、
前記(e)工程において、前記第3半導体層の表面に所望の厚さを有する前記第2導電型の前記埋め込みチャネル領域を残すように、前記埋め込みチャネル領域よりも深い位置に前記第1導電型の不純物をイオン注入する、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体装置の製造方法において、
前記トレンチゲート絶縁膜は、第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上の第2絶縁膜との第1積層膜からなり、前記第1ゲート絶縁膜は、第3絶縁膜と、前記第3絶縁膜上の第4絶縁膜との第2積層膜からなり、
前記トレンチゲート絶縁膜および前記第1ゲート絶縁膜の形成工程は、
(g1)CVD法を用いて、前記パワートランジスタ領域の前記トレンチ溝の側壁上に前記第2絶縁膜を、前記CMOS領域の前記第3半導体層上に、前記第4絶縁膜を形成する工程、
(g2)熱酸化法を用いて、前記パワートランジスタ領域の前記トレンチ溝の側壁と前記第2絶縁膜との間に前記第1絶縁膜を、前記CMOS領域の前記第3半導体層の表面と前記第4絶縁膜との間に前記第3絶縁膜を形成する工程、
を含み、
前記第1積層膜の膜厚は、前記第2積層膜の膜厚よりも厚い、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、例えば、SiC基板を用いた半導体装置およびその製造方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧や大電流を制御するパワー半導体装置の分野では、シリコン半導体に比べ低オン抵抗、高速動作、高温特性に優れた炭化珪素(SiC)半導体が注目されている。
【0003】
特許文献1のFig.6およびFig.7は、SiC基板上に、プレーナ型ゲート構造を有する縦型パワーMOSFETと、この縦型パワーMOSFETを駆動するCMOSゲートドライバとを搭載した半導体装置を開示している。CMOSゲートドライバは、n型MOSFETとp型MOSFETとを直列接続した構成となっている。
【0004】
特許文献2の
図1は、エピタキシャル成長とイオン注入法を用いて形成したn層15b、n
-層15aおよびp型チャネル領域16を有するトレンチ型MOSFETが開示しており、n層15bとn
-層15aの不純物濃度比を所望の範囲にすることで、短チャネル効果を抑制している。
【0005】
特許文献3は、主にシリコン系半導体において、CMOSゲートドライバと、トレンチゲート構造の縦型のp型パワーMOSとをモノリシックに集積した半導体装置が記載している。
【0006】
非特許文献1のFig.2は、SiCのp型MOSFET構造を開示しており、p型エピタキシャル成長層に設けた埋め込みチャネル構造(EBC:Epitaxial Burried Channel)により閾値電圧や移動度を調整可能とすることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第9184237号明細書
【文献】特開2018-22852号公報
【文献】特開2002-359294号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】M. Okamoto et al, Materials Science Forum Vols. 717-720, (2012), pp.781-784
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
SiCパワートランジスタを高速スイッチするためには、駆動回路(ゲートドライバ)とパワートランジスタ間の寄生インダクタンスの低減が必要となり、その究極的な手段は駆動回路とパワートランジスタの集積である。特許文献1は、同じ目的でCMOSゲートドライバとパワートランジスタの集積を開示しているが、パワートランジスタとゲートドライバとの構造的な整合について十分に配慮されておらず、低コスト化について課題があった。
【0010】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施の形態の半導体装置は、n型半導体基板上に、n型のドリフト層、p型の埋め込みベース層およびp型のベース層を積層した積層半導体基板にパワートランジスタ、n型トランジスタおよびp型トランジスタを形成した半導体装置であって、パワートランジスタは、ベース層を貫通するトレンチゲート電極を有し、p型トランジスタは、ベース層内に形成されたn型ウェル領域内に、n型トランジスタは、ベース層内またはn型ウェル領域内に更に形成されたp型ウェル領域内に形成されており、p型トランジスタの埋め込みチャネル領域のp型不純物濃度は、ベース層のp型不純物濃度と等しい。
【0012】
一実施の形態の半導体装置の製造方法は、パワートランジスタ領域とCMOS領域とを備える第1主面と、第1主面に対向する第2主面とを有する半導体基板を準備する工程、半導体基板の第1主面上にエピタキシャル成長法を用いてn型のドリフト層を形成する工程、ドリフト層上にイオン注入法を用いて選択的にp型の埋め込みベース層を形成する工程、埋め込みベース層上にエピタキシャル成長法を用いてp型のベース層を形成する工程、CMOS領域において、イオン注入法を用いてn型のウェル領域を形成する工程、パワートランジスタ領域において、ベース領域を貫通する深さのトレンチ溝を形成する工程、および、パワートランジスタ領域において、ベース層にパワーソース領域、トレンチ溝内にトレンチゲート絶縁膜およびトレンチゲート電極を設けることでパワートランジスタを形成し、CMOS領域において、ウェル領域内に、第1ソース領域、埋め込みチャネル領域および第1ドレイン領域、埋め込みチャネル領域上に第1ゲート絶縁膜および第1ゲート電極を設けることでp型MOSFETを形成し、CMOS領域において、ベース層内に、第2ソース領域、チャネル領域および第2ドレイン領域、チャネル領域上に第2ゲート絶縁膜および第2ゲート電極を設けることでn型MOSFETを形成する工程、を備え、ウェル領域形成工程において、ベース層の表面に所望の厚さを有するp型の埋め込みチャネル領域を残すように、埋め込みチャネル領域よりも深い位置にn型の不純物をイオン注入する。
【発明の効果】
【0013】
一実施の形態によれば、半導体装置の低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】本実施の形態の半導体装置の等価回路図である。
【
図4】本実施の形態のn型トランジスタおよびp型トランジスタのゲート電圧とドレイン電流の関係を示す図である。
【
図5】本実施の形態のCMOSインバータの入力電圧と出力電圧の関係を示す図である。
【
図6】本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図7】
図6に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図8】
図7に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図9】
図8に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図10】
図9に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図11】
図10に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図12】
図10に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図13】
図11の変形例である半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図15】誤点弧対策の一例を示す等価回路図である。
【
図18】変形例3の半導体装置の効果を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。平面図であっても、理解を容易にするためにハッチングを付す場合がある。また、不純物濃度の表記で、例えば2e17cm-3は2×1017cm-3を意味する。
【0016】
(実施の形態)
<本実施の形態の半導体装置について>
図1は本実施の形態の半導体装置の断面図であり、
図2は本実施の形態の半導体装置の平面図であり、
図3は本実施の形態の半導体装置の等価回路図である。
図4は本実施の形態のn型トランジスタおよびp型トランジスタのゲート電圧とドレイン電流の関係を示す図、
図5は、本実施の形態のCMOSインバータの入力電圧と出力電圧の関係を示す図である。なお、
図1は、
図2のA-A´、B-B´およびC-C´における断面図であるが、それぞれの領域における単位トランジスタの断面構造を連続して示している。
【0017】
図3に示すように、半導体装置100は、パワートランジスタ(パワーMOSFET)UMOSと、パワートランジスタUMOSのゲート駆動回路を構成するp型トランジスタ(p型MOSFET)PMOSおよびn型トランジスタ(n型MOSFET)NMOSを備えている。ゲート駆動回路はCMOSインバータであり、p型トランジスタPMOSとn型トランジスタNMOSとは直列接続され、p型トランジスタPMOSのソースはCMOS電源電位VDDに、n型トランジスタNMOSのソースはCMOS基準電位VSSに接続されている。パワートランジスタUMOSのソースはパワーソースVsに、ドレインはパワードレインVdに接続されている。そして、p型トランジスタPMOSのゲートおよびn型トランジスタNMOSのゲートは入力信号Vinに接続され、p型トランジスタPMOSのドレインおよびn型トランジスタNMOSのドレインはパワートランジスタUMOSのゲートに接続されている。CMOSインバータ構成の駆動回路の出力VoutはパワートランジスタUMOSの入力信号VgとしてパワートランジスタUMOSのゲートに入力される。
【0018】
図2に示すように、半導体装置100は、入力信号端子TVin、CMOS基準電位端子TVSS、CMOS電源電位端子TVDD、パワーソース端子TVs、CMOS領域ARCおよびパワートランジスタ領域ARUを含む。
【0019】
図2のX方向において、中央部にCMOS領域ARCが配置されており、CMOS領域ARCの一方の側(左側)に入力信号端子TVin、CMOS基準電位端子TVSSおよびCMOS電源電位端子TVDD、CMOS領域ARCの他方の側(右側)にパワートランジスタ領域ARUが配置されている。なお、パワーソースTVsはパワートランジスタ領域ARU内であって、
図1に示すパワートランジスタUMOSの上に配置されている。
【0020】
次に、
図1を参照しながら
図2に示すCMOS領域ARCおよびパワートランジスタ領域ARUについて説明する。CMOS領域(駆動回路領域)ARCは、複数のPMOS領域ARPと複数のNMOS領域ARNとを含む。PMOS領域ARPには多数のp型トランジスタPMOSがX方向に並んで配置されている。つまり、X方向と直交するY方向に例えば100μm延在するゲート電極EGPがX方向に多数本配列されており、各々のゲート電極EGPを挟むように
図1に示すドレイン領域RDPおよびソース領域RSPが配置されている。X方向がp型トランジスタPMOSのゲート長方向であり、Y方向がゲート幅方向であり、多数のp型トランジスタPMOSは、並列接続されているため、1つのp型トランジスタPMOSとみなすことができる。説明が重複するので省略するが、NMOS領域ARNに配置された多数のn型トランジスタNMOSも前述のp型トランジスタPMOSと同様の構成となっている。また、
図2に示すように、複数のPMOS領域ARPおよび複数のNMOS領域ARNは、Y方向に交互に配置されている。そして、各段のp型トランジスタPMOSは、互いに並列接続されているので、CMOS領域ARCに形成された複数のp型トランジスタPMOSは、全体で、高い増幅利得を持つ1つのp型トランジスタPMOSを構成している。なお、CMOS領域ARCに形成された複数のn型トランジスタNMOSも同様に高い増幅利得を持つ1つのn型トランジスタNMOSを構成している。
【0021】
PMOS領域ARPおよびNMOS領域ARNは、Y方向に交互に多段配置したが、これに限定されるものではなく、複数のPMOS領域ARPおよび複数のNMOS領域ARNをそれぞれ纏めて配置してもよい。また、PMOS領域ARPとNMOS領域ARNの段数比率を調整することにより、増幅利得の比率を調整してもよい。
【0022】
パワートランジスタ領域ARUには、多数のパワートランジスタUMOSが配置されており、
図1に示すように、パワートランジスタUMOSのゲート電極EGUは、トレンチ溝TG内に設けられ、トレンチ溝TGの両側にはソース領域RSUが設けられている。
図2に示すように、多数のトレンチ溝TG(言い換えると、ゲート電極EGU)はX方向に延在しており、Y方向において、各々のトレンチ溝TGの両側にはソース領域RSUが配置されている。つまり、ソース領域RSUも、トレンチ溝TGに沿ってX方向に延在している。X方向に延在する多数のソース領域RSUは、互いに金属配線(
図1のソース電極ESU)で接続されており、X方向に延在する多数のゲート電極EGUも、互いにソース電極ESUとは異なる金属配線で接続されている。こうして、パワートランジスタ領域ARUに形成された多数のパワートランジスタUMOSは、1つの低オン抵抗のパワートランジスタUMOSとして構成されている。なお、トレンチ溝TGの延在方向をX方向(言い換えると、n型トランジスタNMOSのゲート電極EGNおよびp型トランジスタPMOSのゲート電極EGPの延在方向に直交する方向)としたが、これに限定されるものではなくY方向(言い換えると、n型トランジスタNMOSのゲート電極EGNおよびp型トランジスタPMOSのゲート電極EGPの延在方向に平行な方向)であってもよい。
【0023】
図1に示すように、半導体装置100は、パワートランジスタ領域ARUとCMOS領域(駆動回路領域)ARCを備え、パワートランジスタ領域ARUにはパワートランジスタUMOS、CMOS領域ARCにはn型トランジスタNMOSおよびp型トランジスタPMOSが形成されている。パワートランジスタUMOSは、ゲート、ソースおよびドレインを有するトレンチゲート型パワーMOSFET、n型トランジスタNMOSは、ゲート、ソースおよびドレインを有する表面チャネル型MOSFET、p型トランジスタPMOSは、ゲート、ソースおよびドレインを有する埋め込みチャネル型MOSFETである。パワートランジスタUMOS、n型トランジスタNMOSおよびp型トランジスタPMOSは、積層半導体基板SBに形成されている。
【0024】
積層半導体基板SBは、互いに対向する第1主面(主面)SUBaおよび第2主面(裏面)SUBbを有する半導体基板SUB、半導体基板SUBの第1主面上に形成されたドリフト層(n型半導体層)DL、ドリフト層DL上に形成された埋め込みベース層(p型半導体層)BBLおよび埋め込みベース層BBL上に形成されたベース層(p型半導体層)BLで構成されている。積層半導体基板SBは、互いに対向する第1主面(主面)SBaおよび第2主面(裏面)SBbを有し、第1主面SBaはベース層BLの表面(上面)と一致し、第2主面(裏面)SBbは半導体基板SBの第2主面SUBbと一致する。積層半導体基板SB(または半導体基板SUB)の第1主面SBa(または第1主面SUBa)にはパワートランジスタ領域ARUとCMOS領域ARCとが設けられている。
【0025】
半導体基板SUBは、n型の炭化珪素基板であり、そのポリタイプは4Hである。つまり、半導体基板SUBは、n型の4H‐SiCである。半導体基板SUBの第1主面SUBaは、例えば、(0001)面から結晶のオフ方向である<11-20>方向に4°のオフ角が設けられた面であり、この面を4°オフ(0001)面と呼ぶ。ドリフト層DLは、1e16cm-3程度のn型不純物濃度を有するn型半導体層であり、エピタキシャル成長法を用いて半導体基板SUBの第1主面SUBa上に形成された9.5μm程度の膜厚を有するエピタキシャル層である。埋め込みベース層BBLは、ドリフト層DL上にエピタキシャル成長法およびイオン注入法を用いて形成された1e18cm-3程度のp型不純物濃度を有するp型半導体層である。埋め込みベース層BBLの膜厚は、1μm程度である。埋め込みベース層BBLは、埋め込みベース層BBL1と埋め込みベース層BBL2との積層構造で構成されており、埋め込みベース層BBL1およびBBL2の膜厚は、それぞれ0.5μm程度である。ベース層BLは、1.3e17cm-3程度のp型不純物濃度を有するp型半導体層であり、エピタキシャル成長法を用いて埋め込みベース層BBL上に形成された1.8μm程度の膜厚を有するエピタキシャル層である。ベース層BLの膜厚は、埋め込みベース層BBLの膜厚よりも厚い。そして、ベース層BLのp型不純物濃度は、埋め込みベース層BBLのp型不純物濃度よりも低い。ベース層BLには、パワートランジスタ領域ARUにおいては、パワートランジスタUMOSのチャネル形成領域が、CMOS領域ARCにおいては、n型トランジスタNMOSおよびp型トランジスタPMOSが形成される。ベース層BLをエピタキシャル成長法で形成したエピタキシャル層とすることで、MeV級のイオン注入エネルギーを出力可能な特別なイオン注入装置を使用することなく、比較的厚いベース層BLを形成することができる。これにより、CMOS領域ARCにおける耐圧設計等の自由度が向上する。
【0026】
半導体基板SUB、ドリフト層DLおよびベース層BLは、パワートランジスタ領域ARUとCMOS領域ARCの全域にわたって設けられている。埋め込みベース層BBLは、CMOS領域ARCでは全域に、パワートランジスタ領域ARUでは選択的に設けられている。トレンチ溝TGの底部にはトレンチ保護領域(p型半導体領域)TPRが設けられ、トレンチ溝TGおよびトレンチ保護領域TPRの周囲にはJFET層1(n型半導体層)DLS1およびJFET層2(n型半導体層)DLS2が設けられている。パワートランジスタ領域ARUにおいて、埋め込みベース層BBLは、トレンチ保護領域TPR、JFET層1DLS1およびJFET層2DLS2が設けられた領域以外の領域に配置されている。また、半導体基板SUBの第2主面SUBb上には、パワートランジスタ領域ARUとCMOS領域ARCの全域にわたってドレイン電極EDが形成されている。
【0027】
パワートランジスタ領域ARUには、積層半導体基板SBの第1主面SBaからソース領域RSUおよびベース層BLを貫通するトレンチ溝TGが形成されており、トレンチ溝TG内にはゲート絶縁膜(トレンチゲート絶縁膜)GIUおよびゲート電極(トレンチゲート電極)EGUが形成されている。ゲート絶縁膜GIUは、CVD法を用いて堆積した酸化シリコン膜であり、50~150nmの膜厚を有する。ゲート電極EGUは、n型不純物を含有する多結晶シリコン膜で形成されている。積層半導体基板SBの第1主面SBa側のベース層BLにはソース領域(n型半導体領域)RSUとp型領域(p型半導体領域)RPUが形成されている。ソース領域RSUは、トレンチ溝TGを挟むように、トレンチ溝TGの両側に配置されている。p型領域(p型半導体領域)RPUは、ソース領域RSUに対してトレンチ溝TGまたはゲート電極EGUと反対側に配置されている。言い換えると、p型領域RPUは、隣接する単位トランジスタのソース領域RSU間に配置されているとも言える。そして、ソース領域RSUおよびp型領域RPUは、ソース電極ESUに接続されている。
【0028】
トレンチ溝TGの底部に設けられたトレンチ保護領域(p型半導体領域)TPRのp型不純物濃度は、埋め込みベース層BBL(特に、埋め込みベース領域BBL1)のp型不純物濃度と等しく、ベース層BLのp型不純物濃度よりも高い。トレンチ保護領域(p型半導体領域)TPRは、電界緩和層であり、トレンチ溝TGの底部のゲート絶縁膜GIUに電界が集中するのを緩和するために、トレンチ溝TGの底部において、トレンチ溝TGがトレンチ保護領域TPRに食い込んだ構造にする。つまり、トレンチ溝TGの深さは、ベース層BLと埋め込みベース層BBL2との合計膜厚よりも大きく、ベース層BLと埋め込みベース層BBLの合計膜厚よりも小さいことが肝要である。前述の各層の膜厚を考慮すると、2.5~2.6μm程度が適当である。ドリフト層DLとベース層BL間の領域において、トレンチ保護領域TPRはJFET層1(n型半導体層)DLS1に挟まれ、トレンチ溝TGはJFET層2(n型半導体層)DLS2に挟まれている。トレンチ溝TGの底部において、ゲート絶縁膜GIUがトレンチ保護領域TPRで覆われているため、ゲート絶縁膜GIUの絶縁破壊を防止することができる。また、JFET層1DLS1およびJFET層2DLS2のn型不純物濃度を最適化することで、JFET抵抗を増加させることなく、ゲート絶縁膜GIUの絶縁破壊を防止することができる。
【0029】
さらに、ドリフト層DLとベース層BLとの間に、ベース層BLのp型不純物濃度よりも高いp型不純物濃度をもつ埋め込みベース層BBLを設けたことで、パワートランジスタUMOSのドレイン・ソース間の耐圧を向上させることができる。さらに、パワートランジスタUMOSのチャネルが形成されるベース層BLを低不純物濃度のエピタキシャル層で形成したことで、高いチャネル移動度を確保でき、パワートランジスタUMOSのオン抵抗を低減することができる。つまり、p型不純物濃度の異なる埋め込みベース層BBLとベース層BLとを設けたことで、互いに影響されることなく、ドレイン・ソース間の耐圧向上とオン抵抗の低減を実現することができる。
【0030】
なお、一実施の形態としてトレンチ保護領域(p型半導体領域)TPRを有する構造を示したが、本発明の効果を奏するうえで、トレンチ保護領域TPRは必須ではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲でパワートランジスタUMOSにその他の電界緩和構造を適用することも可能である。
【0031】
次に、CMOS領域ARCに形成されたn型トランジスタNMOSおよびp型トランジスタPMOSを説明する。
図1に示すように、n型トランジスタNMOSおよびp型トランジスタPMOSは、ベース層BL内に形成されている。n型トランジスタNMOSは、CMOS領域ARC内のNMOS領域ARNに、p型トランジスタPMOSは、CMOS領域ARC内のPMOS領域ARPに形成されている。
【0032】
n型トランジスタNMOSは、ベース層BL内に形成されたソース領域(n型半導体領域)RSNおよびドレイン領域(n型半導体領域)RDNと、ソース領域RSNとドレイン領域RDNとの間に設けられたチャネル領域RCNと、チャネル領域RCN上にゲート絶縁膜GINを介して形成されたゲート電極EGNと、を有する。n型トランジスタNMOSは、表面チャネル型MOSFETであり、ゲート電極EGNに所望の電圧を印加すると、ベース層BLとゲート絶縁膜GINとの界面直下のチャネル領域RCNにチャネルが形成される。n型トランジスタNMOSのソース領域RSNとドレイン領域RDNとの間に設けられたチャネル領域RCNは、p型のベース層BLの一部分であり、チャネル領域RCNには、閾値電圧調整用の不純物のイオン注入はされていないので、チャネル領域RCNのp型不純物濃度は、ベース層BLのp型不純物濃度と等しい。ここで、「等しい」とは、「ほぼ等しい」を含むものである。チャネル領域RCNに意図的にp型不純物またはn型不純物などがイオン注入されず、イオン注入されていないエピタキシャル層であるベース層BLが残っていることを意味する。半導体装置の製造工程で意図せず両者のp型不純物濃度に誤差が生じたとしても、その差は本実施の形態の「等しい」に含まれる。なお、ベース層BLのp型不純物濃度とは、例えば、パワートランジスタUMOSのチャネル形成領域におけるp型不純物濃度を意味する。ここでは表面チャネル型のn型トランジスタNMOSの例を説明したが、例えば、チャネル領域RCNにn型イオンをイオン注入した埋め込みチャネル型のn型トランジスタNMOSとしてもよい。n型イオン注入による結晶へのダメージは小さく、後述するアルミニウムイオン注入で見られるようなチャネル移動度低下が起こらないため、埋め込みチャネルによる特性制御が可能である。
【0033】
p型トランジスタPMOSは、ベース層BL内に形成されたn型ウェル領域(n型半導体領域)NW内に形成されている。p型トランジスタPMOSは、n型ウェル領域NW内に形成されたソース領域(p型半導体領域)RSPおよびドレイン領域(p型半導体領域)RDPと、積層半導体基板SBの第1主面SBa上にゲート絶縁膜GIPを介して形成されたゲート電極EGPと、を有する。p型トランジスタPMOSは、埋め込みチャネル型MOSFETであり、積層半導体基板SBの第1主面SBaから厚さ0.2μm程度の埋込チャネル領域EBCを有する。埋込チャネル領域EBCは、p型半導体領域であり、n型ウェルNW内であるが、n型不純物が実質的にイオン注入されていない領域である。ゲート電極EGPに所望の電圧を印加すると、埋込チャネル領域EBCとゲート絶縁膜GIPとの界面直下ではなく、界面より深い位置にチャネルが形成される。n型ウェル領域NWは、n型ウェル層1(n型半導体層)NW1、n型ウェル層2(n型半導体層)NW2およびn型ウェル層3(n型半導体層)NW3で構成されている。n型ウェル層1NW1は、積層半導体基板SBの第1主面SBaから比較的深い位置に設けられており、n型ウェル層1NW1の上にn型ウェル層2NW2が設けられている。n型ウェル層1NW1およびn型ウェル層2NW2は、例えば、窒素イオンをベース層BLにイオン注入して形成する。n型ウェル層1NW1は、第1主面SBaからの深さ0.7~0.5μmの範囲に、n型ウェル層2NW2は、第1主面SBaからの深さ0.5~0.2μmの範囲に形成されており、第1主面SBaから深さ0.2μmの範囲にはイオン注入されていないエピタキシャル層であるベース層BLが残っており、この部分が埋込チャネル領域EBCとなる。従って、埋め込みチャネル領域EBCのp型不純物濃度は、ベース層BLのp型不純物濃度と等しい。なお、ベース層BLのp型不純物濃度とは、例えば、パワートランジスタUMOSのチャネル形成領域におけるp型不純物濃度を意味する。ここで、「等しい」とは、「ほぼ等しい」を含むものである。埋込チャネル領域EBCに意図的にp型不純物またはn型不純物などがイオン注入されていないことが重要である。半導体装置の製造工程で意図せず両者のp型不純物濃度に誤差が生じたとしても、その差は本実施の形態の「等しい」に含まれる。因みに誤差範囲は、±50%以下(0.65~1.95e17cm-3の範囲)が妥当である。また、埋込チャネル領域EBCに意図的にp型不純物またはn型不純物などがイオン注入されていないことが重要であるので、埋め込みチャネル領域EBCとベース層BLとの欠陥密度が等しいとも言える。なお、ベース層BLの欠陥密度とは、例えば、パワートランジスタUMOSのチャネル形成領域における欠陥密度を意味する。n型ウェル層2NW2のn型不純物濃度は、2e17cm-3~5e17cm-3であり、n型ウェル層1NW1のn型不純物濃度は、5e17cm-3~1e19cm-3であり、n型ウェル層1NW1のn型不純物濃度は、n型ウェル層2NW2のn型不純物濃度以上とする。また、n型ウェル層3NW3は、ソース領域RSPおよびドレイン領域RDPを囲むように、ソース領域RSPおよびドレイン領域RDPの外側に配置されている。好適には、n型ウェル層2NW2のn型不純物濃度をn型ウェル層1NW1のn型不純物濃度よりも低くする。n型ウェル層3NW3は、n型ウェル層1NW1と等しいn型不純物濃度を有し、積層半導体基板SBの第1主面SBaからn型ウェル層1NW1に達するように連続的に形成されている。
【0034】
埋め込みチャネル領域EBCと接するn型ウェル層2NW2のn型不純物濃度を相対的に低くすることで、埋め込みチャネル領域EBCのp型不純物濃度の制御性と設計自由度を向上でき、p型トランジスタPMOSの閾値電圧制御性を向上できる。また、n型ウェル層1NW1のn型不純物濃度を相対的に高くすることで、ドレイン電圧によってドレイン領域RDPからの空乏層がn型ウェル領域NWをパンチスルーするのを防止できる。また、ソース領域RSP/n型ウェル領域NW/ベース層BLで構成される寄生Bipトランジスタがオンするのを防止することができる。
【0035】
次に、p型トランジスタPMOSの埋め込みチャネル領域EBCをエピタキシャル層で形成した効果を説明する。従来から、SiC基板に形成したMOSFETはMOS界面に界面準位が高密度に存在するためチャネル移動度が低下し、オン抵抗が高くなるという課題が知られている。この界面準位は、例えば、ゲート酸化膜形成時の熱処理工程で発生し、特に、PMOSの閾値電圧が大きくなるという問題が深刻である。検討結果によれば、バンドギャップの中央付近にドナーライクなトラップ(ホールトラップ)が存在しており、一度ホールをトラップするとSiCの大きなバンドギャップのために熱エネルギーではデトラップしなくなる。トラップされたホールは実効的な正の固定電荷として振る舞い、PMOSの閾値電圧を負にシフトさせる。つまり、PMOSの閾値電圧が大きくなる。NMOSにもこのホールトラップは存在しており、負にゲートバイアスをかけると実効的な正の固定電荷が発生する。しかし、ゲートバイアスを正に印加してチャネルに反転電子を誘起させると、反転電子とホールトラップのホールとが再結合して電気的に中性にもどり、電気特性に影響を与えない。本願発明者は、PMOSの場合、上記の正の固定電荷の影響を回避するために、イオン注入法を用いて埋め込みチャネルを形成することを検討した。しかしながら、SiC基板にアルミニウムイオンなどのp型不純物をイオン注入すると、注入欠陥が発生し、チャネル移動度が低下する副作用が発生することが判明した。本実施の形態では、p型トランジスタPMOSの埋め込みチャネル領域EBCを、エピタキシャル層で形成し、イオン注入で不純物を注入しないため、p型トランジスタPMOSのオン抵抗および閾値電圧を低減することができる。
【0036】
図4は、本実施の形態のn型トランジスタNMOSおよびp型トランジスタPMOSのゲート電圧とドレイン電流の関係を示す図である。INV-PMOSおよびINV-NMOSは表面チャネル型のp型トランジスタPMOSおよびn型トランジスタNMOSであり、EBC-PMOS1およびEBC-PMOS2は、埋め込みチャネル型のp型トランジスタPMOSである。EBC-PMOS1は、埋め込みチャネル領域EBCの厚さを0.15μmとした構造であり、EBC-PMOS2は、埋め込みチャネル領域EBCの厚さを0.2μmとした構造である。なお、電気特性測定用として、ゲート長:100μm、ゲート幅:150μmのMOSFETを用いている。
図4に示すように、本実施の形態の埋め込みチャネル型のp型トランジスタPMOSでは、表面チャネル型のp型トランジスタPMOSに比べ、ドレイン電流の増加(言い換えると、オン抵抗の低減)および閾値電圧の低減が確認できた。
【0037】
図5は、本実施の形態のCMOSインバータの入力電圧と出力電圧の関係を示す図である。本実施の形態の埋め込みチャネル型のp型トランジスタPMOSを用いることで、表面チャネル型のp型トランジスタPMOSを用いた場合に比べ、CMOSインバータのスイッチング電圧がCMOS電源電圧のほぼ半分となり、LOWレベルノイズマージンとHIGHレベルノイズマージンのバランスが向上していることが分かる。
【0038】
<本実施の形態の半導体装置の製造方法について>
図6~
図12は、本実施の形態の半導体装置100の製造工程を示す断面図である。
【0039】
図6に示すように、ドリフト層DLおよび埋め込みベース層BBLの製造工程を実施する。埋め込みベース層BBLは、埋め込みベース層1BBL1と埋め込みベース層2BBL2との積層構造となっている。まず、互いに対向する第1主面(主面)SUBaと第2主面(裏面)SUBbとを有する半導体基板SUBを準備する。半導体基板SUBは、n型の炭化珪素(4H‐SiC)基板であり、第1主面SUBaは前述の4°オフ(0001)面である。
【0040】
半導体基板SUBの第1主面SUBa上に、エピタキシャル成長法を用いてn型のドリフト層DLを形成する。ドリフト層DLは、窒素(N)またはリン(P)などが添加されたn型エピタキシャル層であり、そのn型不純物濃度が1e16cm-3、その膜厚はおよそ10μmとする。
【0041】
次に、ドリフト層DLの表面に選択的に埋め込みベース層BBL1およびトレンチ保護領域TPRを形成する。埋め込みベース層BBL1およびトレンチ保護領域TPRは、ドリフト層DL上に選択的にマスク層を設け、マスク層から露出した領域に、p型不純物(Alイオン)をイオン注入してp型半導体層を形成する。
図6に示すように、パワートランジスタ領域ARUに埋め込みベース層BBL1およびトレンチ保護領域TPRを、CMOS領域ARCに埋め込みベース層BBL1を形成する。埋め込みベース層BBL1およびトレンチ保護領域TPRは、そのp型不純物濃度が1e18cm
-3、その膜厚はおよそ0.5μmとする。パワートランジスタ領域ARUにおいて、マスク層で覆われていた領域にはドリフト層DLの一部が残り、トレンチ保護領域TPRの両側にJFET層1DLS1が形成される。JFET層1DLS1のn型不純物濃度は、1e16cm
-3である。
【0042】
次に、埋め込みベース層1BBL1上に埋め込みベース層2BBL2を、トレンチ保護領域TPRおよびJFET層1DLS1上にJFET層2DLS2を形成する。まず、埋め込みベース層1BBL1、トレンチ保護領域TPRおよびJFET層1DLS1上にエピタキシャル成長法を用いて、n型のエピタキシャル層を形成する。このエピタキシャル層のn型不純物濃度は1e16cm
-3、その膜厚はおよそ0.5μmとする。このエピタキシャル層に選択的にマスク層を設け、マスク層から露出した領域に、p型不純物(Alイオン)をイオン注入してp型半導体層を形成する。こうして、マスク層から露出した領域に埋め込みベース層2BBL2が形成され、マスク層に覆われた領域にJFET層2DLS2が形成される。埋め込みベース層1BBL1に重なる埋め込みベース層2BBL2のp型不純物濃度は、1e18cm
-3、その膜厚はおよそ0.5μmでありベース層1BBL1に接続しており、トレンチ保護領域TPRおよびJFET層1DLS1に重なるJFET層2DLS2のn型不純物濃度は1e16cm
-3、その膜厚はおよそ0.5μmである。なお、ドリフト層DL、JFET層1DLS1、JFET層2DLS2は、同一の不純物濃度としたが、特許文献2(特開2018-22852号公報)の
図1、
図10に記載のように、各層のn型不純物濃度を個別に設定してもよい。
【0043】
次に、
図7に示すように、ベース層BLの製造工程を実施する。埋め込みベース層BBLおよびJFET層2DLS2上に、エピタキシャル成長法を用いてp型のベース層BLを形成する。ベース層BLは、アルミニウム(Al)などのp型不純物が添加されたp型エピタキシャル層であり、そのp型不純物濃度が1.3e17cm
-3、その膜厚はおよそ1.8μmとする。ベース層BLは、パワートランジスタ領域ARUおよびCMOS領域ARCの全域に形成されている。
【0044】
次に、
図8に示すように、n型ウェル領域NWおよび埋め込みチャネル領域EBCの製造工程を実施する。n型ウェル領域NWは、n型ウェル層1NW1、n型ウェル層2NW2およびn型ウェル層3NW3で構成されている。イオン注入法を用いて、ベース層BLに窒素(N)イオンをイオン注入してn型ウェル層1NW1およびn型ウェル層2NW2を形成する。ベース層BLの表面(言い換えると、積層半導体基板SBの第1主面SBa)から、深さが0.7~0.5μmの範囲に厚さ0.2μmのn型ウェル層1NW1を形成し、深さが0.5~0.2μmの範囲に厚さ0.3μmのn型ウェル層2NW2を形成する。そして、ベース層BLの表面から深さが0.2μmの範囲に厚さ0.2μmの埋め込みチャネル領域EBCを形成する。なお、埋め込みチャネル領域EBCの濃度と厚み、n型ウェル層2NW2の濃度と厚みのバランスによってp型トランジスタPMOSの閾値電圧が変化する。所望の特性が得られるようにこれらの条件を調整することができる。埋め込みチャネル領域EBCは、ベース層BLにn型不純物がイオン注入されることなく、エピタキシャル層であるp型半導体層が残った領域である。さらに、ベース層BLの表面
からn型ウェル層1NW1に到達するn型ウェル層3NW3を形成する。つまり、n型ウェル層3NW3は、ベース層BLの表面から深さ0.5μm以上の範囲に連続的に形成される。n型ウェル層3NW3は、窒素(N)イオンをイオン注入して形成するが、例えば、注入エネルギーを変えた多段回のイオン注入工程で形成する。n型ウェル層3NW3は、n型ウェル層2NW2および埋め込みチャネル領域EBCに接触して、その周囲を囲むように平面視において環状に形成されている。n型ウェル層2NW2のn型不純物濃度は、2e17cm
-3~5e17cm
-3であり、n型ウェル層1NW1およびn型ウェル層3NW3のn型不純物濃度は、5e17cm
-3~1e19cm
-3であり、n型ウェル層1NW1およびn型ウェル層3NW3のn型不純物濃度は、n型ウェル層2NW2のn型不純物濃度以上とする。好適には、n型ウェル層2NW2のn型不純物濃度をn型ウェル層1NW1のn型不純物濃度よりも低くする。
【0045】
次に、
図9に示すように、パワートランジスタUMOSのソース領域RSU、n型トランジスタNMOSのソース領域RSNおよびドレイン領域RDN並びにp型トランジスタPMOSのソース領域RSPおよびドレイン領域RDPの製造工程を実施する。積層半導体基板SBの第1主面SBaにおいて、ベース層BLの表面にイオン注入法を用いてn型半導体領域およびp型半導体領域を選択的に形成する。n型半導体領域は、そのn型不純物濃度が1e20cm
-3で、第1主面SBaから深さ0.25μmの範囲に連続的に形成する。なお、n型不純物濃度は1e19~1e22cm
-3の範囲、深さは0.1~0.4μmの範囲であればよい。n型不純物領域は、パワートランジスタ領域ARUでは、パワートランジスタUMOSのソース領域RSU、NMOS領域ARNでは、n型トランジスタNMOSのソース領域RSNおよびドレイン領域RDN、PMOS領域ARPでは、n型領域RNCを構成する。そして、p型半導体領域は、そのp型不純物濃度が1e21cm
-3で、第1主面SBaから深さ0.25μmの範囲に連側的に形成する。なお、p型不純物濃度は1e19~1e22cm
-3の範囲、深さは0.1~0.4μmの範囲であればよい。p型半導体領域は、パワートランジスタ領域ARUでは、パワートランジスタUMOSのp型領域RPU、PMOS領域ARPでは、p型トランジスタPMOSのソース領域RSPおよびドレイン領域RDP、NMOS領域ARNでは、p型領域RPCを構成する。なお、パワートランジスタ領域ARUとCMOS領域ARCのn型半導体領域およびp型半導体領域は同一工程で形成しても、別工程で形成してもよい。また、前述のn型ウェル領域NWの形成工程、n型半導体領域形成工程およびp型半導体領域形成工程は順不同である。
【0046】
次に、
図10に示すように、トレンチ溝TGの製造工程を実施する。反応性ドライエッチング法を用いて、パワートランジスタ領域ARUに複数のトレンチ溝TGを形成する。トレンチ溝TGは、幅が0.8μm、深さが2.5~2.6μm、長さ(紙面の垂直方向)が1500~2000μmのサイズを有し、ソース領域RSU、ベース層BLおよびJFET層DLS2を貫通し、トレンチ保護領域TPRに食い込む。トレンチ溝TG形成後にアニール処理を施して、コーナー部の丸めなどの形状の修正をしてもよい。次に、前述のイオン注入法を用いて導入した不純物の活性化処理として、例えば、アルゴン(Ar)雰囲気中で、1800℃、5分の条件で活性化アニールをする。この活性化アニールは、埋め込みチャネル領域EBCの結晶ダメージの回復にも寄与する。
図8の説明で前述したとおり埋め込みチャネル領域EBCは、p型のベース層BLにn型ウェル層1NW1、n型ウェル層2NW2を形成する際にイオン注入工程で窒素イオンが残留せずに通過するため、ある程度の結晶欠陥等の結晶ダメージが生ずる。窒素イオン注入の際に生じたSiC半導体の結晶ダメージは、前述の活性化アニールにより回復することが知られている。
【0047】
次に、
図11に示すように、ゲート絶縁膜GIU、GINおよびGIP並びにゲート電極EGU、EGNおよびEGPの製造工程を実施する。パワートランジスタ領域ARUにおいては、トレンチ溝TGの側壁上および底部にゲート絶縁膜GIUを、CMOS領域ARCにおいては、第1主面SBa上にゲート絶縁膜GIPおよびGINを形成する。ゲート絶縁膜GIU,GIPおよびGINは、CVD堆積法を用いて形成された酸化シリコン膜で構成されており、その膜厚は50~150nmの範囲で、例えば90nmとする。ゲート絶縁膜GIU,GIPおよびGIN形成後に、界面準位低減のために一酸化窒素雰囲気でアニール処理を実施する。
【0048】
次に、パワートランジスタ領域ARUにおいては、ゲート絶縁膜GIU上にゲート電極EGUを、CMOS領域ARCにおいては、ゲート絶縁膜GIP上にゲート電極EGPを、ゲート絶縁膜GIN上にゲート電極EGNを形成する。ゲート電極EGU、EGPおよびEGNは、膜厚が0.3~1μmの範囲で、例えば、膜厚が0.5μmのn型ポリシリコン膜で形成する。n型ポリシリコン膜の膜厚は、トレンチ溝TGが埋まる膜厚にすることが肝要である。
図12は、PMOS領域ARPにおいて、ゲート絶縁膜GIPおよびゲート電極EGPを形成した段階のp型トランジスタPMOSのゲート幅方向の断面構造を示している。ゲート幅方向において、埋め込みチャネル領域EBCは、その両端がn型ウェル層NW3と接触して終端しており、ゲート絶縁膜GIPおよびゲート電極EGPは、それらの両端がn型ウェル層NW3上に延在している。図示していないが、ゲート幅方向に延在するソース領域RSPおよびドレイン領域RDPの両端もn型ウェル層NW3と接触して終端している。このような構造にすることで、ゲート幅方向におけるゲート電極EGPの端部で、閾値電圧よりも低いゲート電圧で、ソース・ドレイン間に電流が流れるのを防止できる。
【0049】
なお、
図13は、
図11の変形例である半導体装置の製造工程を示す断面図であり、パワートランジスタUMOSのゲート絶縁膜GIUおよびp型トランジスタPMOSのゲート絶縁膜GIPの製造工程を説明する断面図である。パワートランジスタUMOSのゲート絶縁膜GIUは、ゲート絶縁膜GIU1と、その上に形成されたゲート絶縁膜GIU2との積層膜である。ゲート絶縁膜GIU2は、CVD法を用いてトレンチ溝TGの側壁上に形成されたCVD酸化膜であり、ゲート絶縁膜GIU1は、熱酸化法によって、トレンチ溝TGの側壁とゲート絶縁膜GIU2との間に形成された熱酸化膜である。また、p型トランジスタPMOSのゲート絶縁膜GIPは、ゲート絶縁膜GIP1と、その上に形成されたゲート絶縁膜GIP2との積層膜である。ゲート絶縁膜GIP2は、CVD法を用いて第1主面SBa上に形成されたCVD酸化膜であり、ゲート絶縁膜GIP1は、熱酸化法によって、第1主面SBaとゲート絶縁膜GIU2との間に形成された熱酸化膜である。ここで、互いにCVD酸化膜であるゲート絶縁膜GIU2とゲート絶縁膜GIP2の膜厚は等しい。そして、熱酸化膜であるゲート絶縁膜GIU1の側壁部分の膜厚は、熱酸化膜であるゲート絶縁膜GIP1の膜厚よりも厚い。従って、パワートランジスタUMOSの側壁部分のゲート絶縁膜GIUの膜厚は、p型トランジスタPMOSのゲート絶縁膜GIPの膜厚よりも厚い。パワートランジスタUMOSのゲート絶縁膜GIUには、p型トランジスタPMOSのゲート絶縁膜GIPに比べ、より高い電界が印加されるため、このような膜厚関係とすることが有効である。つまり、パワートランジスタUMOSのゲート絶縁膜GIUの高耐圧化とp型トランジスタPMOSの高速化を実現できる。なお、パワートランジスタUMOSのゲート絶縁膜GIU1の底面部分はp型トランジスタPMOSのゲート絶縁膜GIP1と同様に薄くなるが、トレンチ保護領域TPRにより十分に電界が緩和されているため信頼性は確保される。
【0050】
また、ゲート絶縁膜GIU1とゲート絶縁膜GIP1は、CVD法でゲート絶縁膜GIU2およびGIP2を形成した後の熱酸化工程で形成する。SiCからなる積層半導体基板SBは、その第1主面SBaとトレンチ溝TGの側壁とで、熱酸化膜の成長速度が大きく異なる。熱酸化膜の成長速度が結晶面に依存しているため、トレンチ溝TGの側壁における熱酸化膜の成長速度は、第1主面SBaにおける熱酸化膜の成長速度のおよそ10倍である。この特徴を利用して、フォトリソグラフィやエッチング等の製造工程を増やすことなく、自己形成的に異なる膜厚のゲート絶縁膜GIU1およびGIP1を形成するものである。また、ゲート絶縁膜GIU2の形成後に行うアニール処理(焼き締めや一酸化窒素アニール)と組み合わせて一度に熱処理工程を実施することも可能である。なお、CMOS領域ARCのn型トランジスタNMOSのゲート絶縁膜GINも上記p型トランジスタPMOSのゲート絶縁膜GIPと同様に積層膜にすることができる。
【0051】
次に、
図1に示すように、ソース電極ESU、ESPおよびESN、ドレイン電極ED、EDPおよびEDNの製造工程を実施する。第1主面SBa上に層間絶縁膜ILを形成する。層間絶縁膜ILは、例えば、CVD法を用いて堆積した膜厚が1.0μmの酸化シリコン膜からなる。層間絶縁膜ILに複数の開口を形成した後に金属膜を堆積、パターニングしてソース電極ESU、ESPおよびESN、ドレイン電極EDPおよびEDNを含む第1配線層を形成する。金属膜は、例えば、チタン(Ti)膜と、チタン膜上のアルミニウム(Al)膜との積層膜とする。例えば、チタン膜の膜厚を0.1μm、アルミニウム膜の膜厚を2μmとする。パワートランジスタ領域ARUにおいて、ソース電極ESUは、ソース領域RSUおよびp型領域RPUに接続されている。PMOS領域ARPにおいて、ソース電極ESPは、ソース領域RSPおよびn型領域RNCに、ドレイン電極EDPは、ドレイン領域RDPに、接続されている。NMOS領域ARNにおいて、ソース電極ESNは、ソース領域RSNおよびp型領域RPCに、ドレイン電極EDNは、ドレイン領域RDNに接続されている。図示しないが、第1配線層の上層に形成された第2配線層も用いて、
図3に示す接続関係と、
図2に示すパワーソース端子Ts、CMOS電源電位端子TVDD、CMOS基準電位端子TVSSおよび入力信号端子TVinが構成される。また、半導体基板SUBの第2主面SUBb上にドレイン電極EDが形成される。以上の工程を経て本実施の形態の半導体装置100が完成する。
【0052】
<本実施の形態の半導体装置の試作結果>
図1の構造を持つ半導体装置の初期試作デバイスのスイッチング特性評価を行った。評価は、
図3に示す等価回路図のVd端子に還流ダイオードとインダクタ(5mH)を並列接続した負荷の一端を接続し、負荷の他端に600Vを印加した。VSS端子およびVs端子は接地し、VDD端子に20Vを印加した。Vin端子に約20V振幅のパルスを印加した場合のVd端子で観察したスイッチング特性は、振幅600V、ドレイン電流10Aで、立ち上がり時間24ns、立下り時間28nsであった。
【0053】
<本実施の形態の半導体装置およびその製造方法の特徴>
本実施の形態の半導体装置は、半導体基板SUB上にパワートランジスタUMOSと、そのCMOS駆動回路を構成するp型トランジスタPMOSおよびn型トランジスタNMOSと、を内蔵している。そして、パワートランジスタUMOSのチャネル形成領域であるベース層BLに、n型トランジスタNMOSと、埋め込みチャネル領域EBCを備えたp型トランジスタPMOSとを形成することで、半導体装置の低コスト化を実現した。
【0054】
さらに、エピタキシャル層で形成されたベース層BLの一部分を埋め込みチャネル領域EBCとすることで、p型トランジスタPMOSを低閾値電圧化および低オン抵抗化でき、CMOS駆動回路の駆動電流増大およびHIGH/LOWノイズマージンバランスの改善を実現した。
【0055】
ドリフト層DL上に比較的高濃度かつ比較的薄い埋め込みベース層BBLを設け、その上に比較的低濃度かつ比較的厚いベース層BLを設け、ベース層BLをパワートランジスタUMOSのチャネル形成領域にするとともに、ベース層BLにn型トランジスタNMOSと、n型ウェル領域NW内に配置したp型トランジスタPMOSと、を形成した。ドリフト層DL上に比較的高濃度の埋め込みベース層BBLを設けたことで、パワートランジスタUMOSのドレイン・ソース間の耐圧を向上することができる。比較的低濃度ベース層BLをパワートランジスタUMOSのチャネル形成領域とすることで、パワートランジスタUMOSのオン抵抗を低減することができる。比較的厚いベース層BLにn型トランジスタNMOSと、n型ウェル領域NW内に配置したp型トランジスタPMOSと、を形成したことで、n型トランジスタNMOSおよびp型トランジスタPMOSのPN接合逆バイアス耐圧等の設計自由度を向上することができる。
【0056】
n型ウェル領域NWは、比較的高濃度のn型ウェル層NW1と、その上に配置された比較的低濃度のn型ウェル層NW2とで構成されている。埋め込みチャネル領域EBCに接するn型ウェル層NW2が比較的低濃度であるため、埋め込みチャネル領域EBCの不純物濃度の制御性と設計自由度を向上でき、p型トランジスタPMOSの閾値電圧制御性を向上できる。また、比較的高濃度のn型ウェル層NW1を設けたことで、PMOS領域ARPにおいて、ドレイン電圧によってドレイン領域RDPからの空乏層がn型ウェル領域NWをパンチスルーするのを防止できる。また、ソース領域RSP/n型ウェル領域NW/ベース層BLで構成される寄生Bipトランジスタがオンするのを防止することができる。
【0057】
また、パワートランジスタUMOSのゲート絶縁膜GIU、p型トランジスタPMOSのゲート絶縁膜GIPおよびn型トランジスタNMOSのゲート絶縁膜GINを、それぞれ熱酸化膜とCVD酸化膜との積層構造とすることで、フォトリソグラフィやエッチング等の製造工程を増やすことなく、自己形成的にゲート絶縁膜GINおよびGIPの膜厚よりも厚い膜厚を有するゲート絶縁膜GIUを形成することができる。
【0058】
<変形例1>
図14は、変形例1の半導体装置200の断面図ある。変形例1と上記実施の形態との相違点は、CMOS領域ARCにおいて、n型トランジスタNMOSおよびp型トランジスタPMOSがn型ウェル領域DNW内に設けられていることである。n型トランジスタNMOSは、n型ウェル領域DNW内に設けられたp型ウェル領域(p型半導体領域)PW内に形成されている。n型ウェル領域DNWは、n型ウェル層1DNW1、n型ウェル層2DNW2およびn型ウェル層3DNW3で構成されている。n型ウェル層1DNW1、n型ウェル層2DNW2およびn型ウェル層3DNW3のn型不純物濃度は、上記実施の形態のn型ウェル層1NW1、n型ウェル層2NW2およびn型ウェル層3NW3と同様である。ただし、n型ウェル層1DNW1、n型ウェル層2DNW2およびn型ウェル層3DNW3の深さは、p型ウェル領域PWを内包するのに十分な深さを有する。また、n型ウェル層3DNW3は、平面視において、NMOS領域ARNおよびPMOS領域ARPの周囲を連続して取り囲むように環状に配置されている。つまり、パワートランジスタUMOSのソース電極ESUとCMOS領域ARCのソース電極ESNとは、積層半導体基板SBの内部でn型ウェル領域DNWを介したPNP接合を形成し、電気的に分離されている。従って、ソース電極ESUとソース電極ESNとの間に電位差が生じたとしても、積層半導体基板SBの内部を経由して両者間に電流が流れるのを防止できる。
【0059】
上記実施の形態の半導体装置100では、
図1および
図3に示すように、パワートランジスタUMOSのソース電極ESUとCMOS領域ARCのソース電極ESNとは、p型領域RPU/ベース層(p型半導体領域)BLおよび埋め込みベース層(p型半導体領域)BBL/p型領域RPCの経路で
図3の点線で示すように電気的につながっている。従って、パワートランジスタUMOSのソース電極ESUとCMOS領域ARCのソース電極ESNとの間に電位差が生じた場合には、この経路で電流が流れ続け、損失の増大や素子(パワートランジスタUMOS、n型トランジスタNMOSまたはp型トランジスタPMOS)の破壊に至る。
【0060】
図15は、誤点弧対策の一例を示す等価回路図である。ブリッジ構成でパワートランジスタUMOSを使用する場合、スイッチング側のパワートランジスタUMOSの動作にあわせて非スイッチング側のパワートランジスタUMOSのドレイン・ソース間に高い電圧変動dV/dtが生じ、これによる電流がドレイン・ゲート間容量を通じてゲートに流れ込み、ゲート抵抗R
Gによる電圧降下でゲート電圧を持ち上げゲートにはオフ信号が来ているにも関わらず非スイッチング側のパワートランジスタUMOSがオンになる現象がある。これを誤点弧(セルフターンオン)と呼ぶ。
図15に示すように、パワートランジスタUMOSのターンオフ電圧を負電圧(V
G_N)にすれば、誤点弧のきっかけとなるゲート電圧の持ち上がりが発生したとしてもパワートランジスタUMOSの閾値電圧を超えないようにできる。しかし、上記実施の形態の半導体装置100の場合、パワートランジスタUMOSのソース電極ESUとCMOS領域ARCのソース電極ESNとの間に電位差が生じるため、上記の経路で電流が流れ続けるという課題がある。
【0061】
変形例1の半導体装置200によれば、上記の通り、従って、ソース電極ESUとソース電極ESNとの間に電位差が生じたとしても、積層半導体基板SBの内部を経由して両者間に流れる電流を遮断できる。
【0062】
<変形例2>
図16は、変形例2の半導体装置300の断面図である。変形例2と上記実施の形態との相違点は、パワートランジスタ領域ARUとCMOS領域ARCとの間に分離領域ISOを設けたことである。分離領域ISOには、トレンチ溝TGD、JFET層1DLD1、JFET層2DLD2およびトレンチ保護領域TPRDが設けられており、ベース層BLを貫通するトレンチ溝TGDでパワートランジスタ領域ARUとCMOS領域ARCのベース層BLを電気的に分離している。さらに、JFET層1DLD1およびJFET層2DLD2でパワートランジスタ領域ARUとCMOS領域ARCの埋め込みベース層BBLを電気的に分離している。分離領域ISOのトレンチ溝TGD、ゲート絶縁膜GID、ゲート電極EGD、トレンチ保護領域TPRD、JFET層1DLD1およびJFET層2DLD2の構造は、パワートランジスタ領域ARUのトレンチ溝TG、ゲート絶縁膜GIU、ゲート電極EGU、トレンチ保護領域TPR、JFET層1DLS1およびJFET層2DLS2の構造と同様であり、製造工程も同様である。また、分離領域ISOは、平面視において、パワートランジスタ領域ARUの周囲あるいはCMOS領域ARCの周囲を連続して取り囲むように環状に配置されている。
【0063】
従って、上記変形例1と同様にソース電極ESUとソース電極ESNとの間に電位差が生じたとしても、積層半導体基板SBの内部を経由して両者間に流れる電流を遮断できる。また、パワートランジスタUMOSの製造工程を用いて、分離領域ISOの構造を形成しているため、製造工程の増加はない。
【0064】
<変形例3>
図17は、変形例3の半導体装置400の平面図であり、
図18は、変形例3の半導体装置400の効果を説明する平面図である。変形例3と上記実施の形態との相違点は、パワートランジスタ領域ARU、CMOS領域ARC他のレイアウトである。積層半導体基板SBの第1主面SBaには、その中央部にCMOS領域ARCが配置され、その周りにCMOS電源電位端子VDD、入力信号端子VinおよびCMOS基準電位端子VSSが配置され、CMOS領域ARCと、CMOS電源電位端子VDD、入力信号端子VinおよびCMOS基準電位端子VSSとを囲むようにパワートランジスタ領域ARUが環状に配置されている。
【0065】
パワートランジスタUMOSには大電流、高電圧が印加され、スイッチング動作時はそれが急激にオンオフされるため電磁ノイズが発生する。この電磁ノイズによりCMOS領域ARCの駆動回路の動作が悪影響を受ける恐れがある。
図17に示すレイアウトにすることで、
図18に示すように、第1主面SBaの中央部に配置されたCMOS回路領域ARCのn型トランジスタNMOSおよびp型トランジスタPMOSが受ける電磁ノイズの影響を低減することができる。なぜなら、パワートランジスタUMOSが配置されているパワートランジスタ領域ARUでは、第2主面SBbから第1主面SBaに向かって電流が流れるため、
図18に示すように、反時計回りの磁界が発生する。しかしながら、左右または上下に配置されたパワートランジスタ領域ARUで発生する磁界が、中央部で互いに打ち消しあって、その結果、電磁ノイズが低減される。
【0066】
CMOS回路領域ARCには、パワートランジスタUMOSのゲート駆動回路の他に、駆動回路の制御回路、保護回路、センサー回路などを設けてもよい。また、変形例3のレイアウトによれば、パワートランジスタ領域ARUが第1主面SBa上で分散配置されているため、
図2に示すレイアウトと比較して、パワートランジスタUMOSからの発熱密度を低減する効果がある。
【0067】
<変形例4>
図19は、変形例4の半導体装置500の平面図である。変形例4と上記実施の形態との相違点は、CMOS基準電位端子VSS、CMOS電源電位端子VDDおよび入力信号端子Vinの配置である。CMOS基準電位端子VSS、CMOS電源電位端子VDDおよび入力信号端子Vinは、CMOS領域ARC内であって、PMOS領域ARPまたはNMOS領域ARN上に配置されている。このような配置にすることで、半導体装置500の小型化が実現できる。
【0068】
また、変形例4の半導体基板SUBは、n型の4H‐SiCである。半導体基板SUBの第1主面SUBaは、例えば、(0001)面から結晶のオフ方向である<11-20>方向にθ°のオフ角が設けられた面であり、この面をθ°オフ(0001)面と呼ぶ。ここで、θ°は0<θ≦8°とする。
【0069】
例えば、半導体基板SUBの第1主面SUBaが4°オフ(0001)面と仮定する。パワートランジスタUMOSのゲート電極(EGU)が形成されたトレンチ溝TGの延在方向を、結晶のオフ方向に平行にした場合、トレンチ溝TGのチャネル形成面は、(1-100)面と(-1100)面となりオフ角の影響を受けない。一方、トレンチ溝TGの延在方向をオフ方向である<11-20>方向に対して垂直にした場合、トレンチ溝TGのチャネル形成面は、(11-20)面を<0001>方向に4°傾けた4°オフ(11-20)面と、(-1-120)面を<0001>方向に4°傾けた4°オフ(-1-120)面となる。チャネル形成面が<0001>方向に平行な面のいずれかである場合、パワートランジスタUMOSの特性が良好となる。この特性とは、チャネル抵抗が低く、閾値電圧が低くなることを意味する。また、チャネル形成面が<0001>方向に平行な面から<0001>方向にオフ角を持つ場合には、パワートランジスタUMOSの特性が劣化する。
【0070】
従って、パワートランジスタ領域ARUにおいて、パワートランジスタUMOSのゲート電極(EGU)が形成されたトレンチ溝TGの延在方向は、結晶のオフ方向に平行とするのが好適である。なお、オフ方向は<11-20>方向に限定されるものではなく、<01-10>方向や、<11-20>方向と<01-10>方向の間としてもよい。
【0071】
以上、本願発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。各変形例1~4は矛盾の無い範囲で組合せ可能である。なお、この明細書の中で「・・・層」という表現で示されるものは、エピタキシャル半導体成長層のように半導体基板の主面全体に広がりを持つ層だけではなく、そのエピタキシャル半導体成長層の一部にマクスとイオン注入を用いて形成した導電型の異なる部分や領域も含む。また、「~の上に(on)」や「~層上に(on the layer)」という表現は、直接その層に接する構造のみを意図するものではなく、実施の形態の作用効果を保持したまま1または複数の他の層を介在させる構造も含む。例えば半導体基板上にドリフト層をエピタキシャル成長する場合に、バッファ層を介在させることがある。また不純物濃度を層方向で段階的に変える構造が採用されることもある。
【符号の説明】
【0072】
100 半導体装置
200 半導体装置
300 半導体装置
400 半導体装置
ARC CMOS領域(駆動回路領域)
ARN NMOS領域
ARP PMOS領域
ARU パワートランジスタ領域
BBL 埋め込みベース層(p型半導体層)
BBL1 埋め込みベース層(p型半導体層)
BBL2 埋め込みベース層(p型半導体層)
BL ベース層(p型半導体層)
DL ドリフト層(n型半導体層)
DLD1 JFET層1(n型半導体層)
DLD2 JFET層2(n型半導体層)
DLS1 JFET層1(n型半導体層)
DLS2 JFET層2(n型半導体層)
DNW n型ウェル領域(n型半導体領域)
DNW1 n型ウェル層1(n型半導体層)
DNW2 n型ウェル層2(n型半導体層)
DNW3 n型ウェル層3(n型半導体層)
EBC 埋め込みチャネル領域(p型半導体領域)
ED ドレイン電極
EDN ドレイン電極
EDP ドレイン電極
EGD ゲート電極
EGU ゲート電極(トレンチゲート電極)
EGN ゲート電極
EGP ゲート電極
ESU ソース電極
ESN ソース電極
ESP ソース電極
GID ゲート絶縁膜(トレンチゲート絶縁膜)
GIN ゲート絶縁膜
GIP ゲート絶縁膜
GIP1 ゲート絶縁膜
GIP2 ゲート絶縁膜
GIU ゲート絶縁膜(トレンチゲート絶縁膜)
GIU1 ゲート絶縁膜
GIU2 ゲート絶縁膜
IL 層間絶縁膜
ISO 分離領域
NMOS n型トランジスタ(n型MOSFET)
NW n型ウェル領域(n型半導体領域)
NW1 n型ウェル層1(n型半導体層)
NW2 n型ウェル層2(n型半導体層)
NW3 n型ウェル層3(n型半導体層)
PMOS p型トランジスタ(p型MOSFET)
PW p型ウェル領域(p型半導体領域)
RCN チャネル領域(p型半導体領域)RDN ドレイン領域(n型半導体領域)
RDP ドレイン領域(p型半導体領域)
RNC n型領域(n型半導体領域)
RPC p型領域(p型半導体領域)
RPU p型領域(p型半導体領域)
RSN ソース領域(n型半導体領域)
RSP ソース領域(p型半導体領域)
RSU ソース領域(パワーソース領域、n型半導体領域)
SB 積層半導体基板
SBa 第1主面(主面)
SBb 第2主面(裏面)
SUB 半導体基板
SUBa 第1主面(主面)
SUBb 第2主面(裏面)
TG トレンチ溝
TGD トレンチ溝
TPR トレンチ保護領域(p型半導体領域)
TPRD トレンチ保護領域(p型半導体領域)
TVDD CMOS電源電位端子(CMOS電源電位パッド)
TVin 入力信号端子(入力信号パッド)
TVs パワーソース端子(パワーソースパッド)
TVSS CMOS基準電位端子(CMOS基準電位パッド)
UMOS パワートランジスタ(パワーMOSFET)