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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】熱処理装置及びダミー基板の処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
H01L21/68 T
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020186101
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022075362
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】本山 豊
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 由裕
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2008-0040902(KR,A)
【文献】特開2003-006851(JP,A)
【文献】特開2010-147265(JP,A)
【文献】特開2002-299421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品基板とダミー基板とを含む複数の基板に熱処理を行う熱処理装置であって、
前記複数の基板を収容する処理容器と、
前記処理容器の外部に設けられ、前記ダミー基板を保管する保管容器と、
前記保管容器に保管された前記ダミー基板を酸化させる酸化機構と、
を有
前記製品基板の表面には、酸化膜が形成されている、
熱処理装置。
【請求項2】
前記酸化機構は、前記保管容器内に酸化ガスを供給する供給部を含む、
請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記酸化ガスは、Oガス又はドライエアである、
請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記保管容器は、前記ダミー基板を多段に収容する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記処理容器内に処理ガスを供給するガス供給部と、
制御部と、
を更に有し、
前記制御部は、前記処理容器内に前記複数の基板を収容した状態で、前記処理容器内にOガスを供給するように前記ガス供給部を制御するよう構成される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記処理容器内に前記複数の基板を搬入した後であり、前記複数の基板に熱処理を施す前に、前記処理容器内にOガスを供給するように前記ガス供給部を制御するよう構成される、
請求項5に記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数の基板に熱処理を施した後に、前記処理容器内に前記複数の基板を収容した状態で前記処理容器内にOガスを供給するように前記ガス供給部を制御するよう構成される、
請求項5に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記ダミー基板は、前記熱処理において繰り返し用いられる、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項9】
熱処理装置の処理容器内に製品基板と共に収容されて熱処理されるダミー基板を処理する方法であって、
前記処理容器内で熱処理された前記ダミー基板を、前記処理容器の外部に設けられた保管容器に収容する工程と、
前記保管容器内に保管された前記ダミー基板を酸化させる工程と、
を有する、ダミー基板の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱処理装置及びダミー基板の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッチ式の熱処理装置では、複数のキャリアに収容されたウエハを一度に処理するため、キャリアを一時的に保管するキャリア保管棚が設けられている。キャリア保管棚に載置されたキャリア内には、不活性ガス、例えば窒素(N)ガスが供給される。これにより、キャリア内の窒素置換が行われ、キャリア内の清浄度が保たれる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-207306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プロセス再現性を改善できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による熱処理装置は、製品基板とダミー基板とを含む複数の基板に熱処理を行う熱処理装置であって、前記複数の基板を収容する処理容器と、前記処理容器の外部に設けられ、前記ダミー基板を保管する保管容器と、前記保管容器に保管された前記ダミー基板を酸化させる酸化機構と、を有前記製品基板の表面には、酸化膜が形成されている
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プロセス再現性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の熱処理装置の一例を示す概略断面図
図2】実施形態の熱処理装置の一例を示す概略平面図
図3】キャリアの一例の底面を示す図
図4】キャリア保管棚の一例を示す図
図5】キャリア内に酸化ガスを導入する酸化機構の一例を示す図
図6】実施形態のダミー基板の処理方法の一例を示す図
図7】実施形態のダミー基板の処理方法の別の一例を示す図
図8】実施形態のダミー基板の処理方法の更に別の一例を示す図
図9】実施例の処理フローを説明するための図
図10】実施例1の評価結果を示す図
図11】実施例の処理フローを説明するための図
図12】実施例2の評価結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔プロセス再現性〕
バッチ式の熱処理装置では、製品基板とダミー基板とを含む複数の基板に一括して熱処理が行われる。係る熱処理装置では、熱処理により製品基板に成膜される膜の膜厚がダミー基板の表面状態の違いによって変動し、良好なプロセス再現性が得られない場合がある。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、バッチ式の熱処理装置においてシリコン膜を成膜する場合、ダミー基板の表面の酸化具合によって、製品基板に成膜されるシリコン膜の膜厚が変動することを見出した。また、本発明者らは、鋭意検討した結果、バッチ式の熱処理装置において成膜の後にハロゲンガスを用いたエッチングを行う場合、エッチングの際にダミー基板の表面に吸着したハロゲンガスが、次の成膜に影響を与えることを見出した。
【0011】
以下、バッチ式の熱処理装置において製品基板に熱処理を施す際に用いられるダミー基板の表面状態を整えることにより、熱処理のプロセス再現性を改善できる実施形態の熱処理装置及びダミー基板の処理方法について説明する。
【0012】
〔熱処理装置〕
図1及び図2を参照し、実施形態の熱処理装置の一例について説明する。
【0013】
熱処理装置1は、筐体11に収容されて構成される。筐体11は、熱処理装置1の外装体を構成する。筐体11内には、複数の基板Wを多段に収容する保管容器であるキャリアCが装置に対して搬入又は搬出されるキャリア搬送領域A1と、キャリアC内の基板Wを搬送して後述の熱処理炉22内に搬入する移載領域である基板搬送領域A2とが形成されている。基板Wは、例えば半導体ウエハであってよい。キャリアCは、例えばFOUP(Front-Opening Unified Pod)であってよい。
【0014】
キャリア搬送領域A1と基板搬送領域A2とは、隔壁2により仕切られている。キャリア搬送領域A1は、大気雰囲気下にある領域であり、キャリアCを搬送する領域である。各処理装置の間の領域がキャリア搬送領域A1に該当し、例えば熱処理装置1の外部のクリーンルーム内の空間がキャリア搬送領域A1に該当する。基板搬送領域A2は、搬入された基板Wに自然酸化膜が形成されることを防ぐために、不活性ガス雰囲気、例えば窒素(N)ガス雰囲気とされており、キャリア搬送領域A1よりも清浄度が高く、かつ、低い酸素濃度に維持されている。以後の説明では、キャリア搬送領域A1及び基板搬送領域A2の配列方向を熱処理装置1の前後方向とする。
【0015】
隔壁2には、キャリア搬送領域A1と基板搬送領域A2との間で基板Wを搬送するための搬送口20が設けられている。搬送口20は、開閉ドア5により開閉される。開閉ドア5には、キャリアCの蓋体を開閉する蓋体開閉機構6が設けられている。搬送口20、開閉ドア5及び蓋体開閉機構6は、FIMS(Front-Opening Interface Mechanical Standard)規格に従って構成されている。
【0016】
キャリア搬送領域A1は、第1の搬送領域12と、第1の搬送領域12の後方側(基板搬送領域A2側)に位置する第2の搬送領域13とを含む。
【0017】
図2に示されるように、第1の搬送領域12には、左右方向に並んで配置された2つのロードポート14が備えられている。ロードポート14は、キャリアCが熱処理装置1に搬入されたときに、キャリアCを受け入れる搬入用の載置台である。ロードポート14は、筐体11の壁が開放された箇所に設けられ、外部から熱処理装置1へのアクセスが可能となっている。具体的には、熱処理装置1の外部に設けられたキャリア搬送装置(図示せず)により、ロードポート14上へのキャリアCの搬入載置と、ロードポート14から外部へのキャリアCの搬出が可能となっている。
【0018】
第1の搬送領域12に配置されたロードポート14の上下には、キャリア保管棚18が設けられている。キャリア保管棚18は、キャリアCを一時的に保管する保管用の載置台である。キャリア保管棚18は、各種の基板Wを収容したキャリアCを保管する。各種の基板Wは、例えば製品基板、ダミー基板、モニタ基板を含む。キャリア保管棚18は、第2の搬送領域13にも設けられているが、熱処理装置1内にキャリアCを多く保管できるようにすべく、第1の搬送領域12のロードポート14が存在しない位置にも設けるようにしてもよい。
【0019】
各ロードポート14の載置面には、キャリアCを位置決めするピン15が例えば3個所に設けられている。
【0020】
ロードポート14には、供給ノズル19a及び排気ノズル19bが設けられてもよい。キャリアCの底面には、例えば吸気口及び排気口が設けられている。そこで、ロードポート14には、キャリアCが載置されたときに、キャリアCの吸気口と嵌合する位置に供給ノズル19aを設け、キャリアCの排気口と嵌合する位置に排気ノズル19bを設けるようにしてもよい。供給ノズル19a及び排気ノズル19bを設けることにより、キャリアCがロードポート14上に載置された際、キャリアC内にNガス等の不活性ガスを供給し、キャリアC内の不活性ガス置換を行うことができる。これにより、不活性ガスの供給がない状態で搬送されていたキャリアCが、熱処理装置1内のロードポート14に搬入された段階ですぐに不活性ガスの供給を再開できる。このため、キャリアC内を継続的に清浄な状態に保つことができる。
【0021】
なお、ロードポート14上でのキャリアCの不活性ガス置換は、処理済みの基板Wを収容したキャリアCを熱処理装置1から搬出する際にも行うことができ、搬出の際にロードポート14上に載置されたキャリアC内の不活性ガス置換も行ってよい。
【0022】
第2の搬送領域13の下部には、上下方向に並んで2つ(図1参照)のキャリア載置台16が配置されている。各キャリア載置台16は、前後に移動自在に構成されている。キャリア載置台16の載置面にも、ロードポート14と同様に、キャリアCを位置決めするピン15が3個所に設けられている。図1の例では、キャリア載置台16が上下方向に2つ並べて設けられているが、左右方向に複数並べて設けられてよい。
【0023】
図1に示されるように、第2の搬送領域13の上部側にはキャリアCを保管するキャリア保管棚18が設けられている。キャリア保管棚18は、2段以上の棚により構成されており、各棚は左右に2つのキャリアCを載置できる。図1では棚が3段である例を示している。なお、キャリア保管棚18は、バッファやストッカとも称される。
【0024】
キャリア保管棚18の底面には、ロードポート14と同様に、供給ノズル及び排気ノズルが設けられている。これにより、キャリア保管棚18上に載置されたキャリアC内を不活性ガスで置換できる。また、供給ノズルは、キャリア保管棚18上にダミー基板を収容したキャリアCが載置された場合に、キャリアC内に酸素(O)ガス又はドライエアを供給することにより、ダミー基板を酸化させる酸化機構として機能する。なお、キャリア保管棚18の供給ノズル及び排気ノズルを含めた構成及び機能の詳細は後述する。
【0025】
このように、ロードポート14及びキャリア保管棚18では、不活性ガス置換を行うことが好ましい。FOUP等のキャリアCは、完全密封されたものではないため、蓋体開閉機構6を用いた閉塞空間での不活性ガス置換の後も、湿度維持するには、不活性ガス置換を継続的に行うことが好ましい。そのため、ロードポート14及びキャリア保管棚18においても、不活性ガスを置換し続けることが好ましい。
【0026】
第2の搬送領域13には、キャリア搬送機構21が設けられている。キャリア搬送機構21は、ロードポート14、キャリア載置台16及びキャリア保管棚18の間でキャリアCを搬送する。キャリア搬送機構21は、第1のガイド21a、第2のガイド21b、移動部21c、アーム部21d及びハンド部21eを有する。第1のガイド21aは、上下方向に伸びるように構成されている。第2のガイド21bは、第1のガイド21aに接続され、左右方向に伸びるように構成されている。移動部21cは、第2のガイド21bに導かれながら左右方向に移動するように構成されている。アーム部21dは、1つの関節と2つのアーム部とを有し、移動部21cに設けられている。ハンド部21eは、アーム部21dの先端に設けられている。
【0027】
隔壁2には、搬送口20が設けられている。搬送口20は、キャリア搬送領域A1と基板搬送領域A2とを連通させる。搬送口20には、搬送口20を基板搬送領域A2側から塞ぐ開閉ドア5が設けられている。開閉ドア5には駆動機構(図示せず)が接続されており、駆動機構により開閉ドア5は前後方向及び上下方向に移動自在に構成され、搬送口20が開閉される。
【0028】
基板搬送領域A2には、下端が炉口として開口された縦型の熱処理炉22が設けられている。熱処理炉22は、基板Wを収容可能であり、基板Wに熱処理を施すための石英製の円筒状の処理容器22aを有する。処理容器22aの周囲には円筒状のヒータ22bが配置され、ヒータ22bの加熱により、収容した基板Wの熱処理が行われる。また、処理容器22a内には、ガス供給部(図示せず)から各種の処理ガスが供給される。各種の処理ガスは、例えば成膜ガス、エッチングガス、パージガス、Oガスを含む。熱処理炉22の下方には、複数の基板Wを多段に保持するボート23が、断熱部24を介してキャップ25の上に載置されている。キャップ25は、昇降機構26の上に支持されており、昇降機構26によりボート23が熱処理炉22に対して搬入又は搬出される。
【0029】
ボート23と隔壁2の搬送口20との間には、基板搬送機構27が設けられている。基板搬送機構27は、ガイド機構27a、移動体27b、フォーク27c、昇降機構27d及び回転機構27eを有する。ガイド機構27aは、直方体状である。ガイド機構27aは、鉛直方向に延びる昇降機構27dに取り付けられ、昇降機構27dにより鉛直方向への移動が可能であると共に、回転機構27eにより回動が可能に構成されている。移動体27bは、ガイド機構27a上に長手方向に沿って進退移動可能に設けられている。フォーク27cは、移動体27bを介して取り付けられる移載機であり、複数(例えば5枚)設けられている。複数のフォーク27cを有することで、複数の基板Wを同時に移載できるので、基板Wの搬送に要する時間を短縮できる。ただし、フォーク27cは1枚であってもよい。
【0030】
熱処理装置1には、熱処理装置1の全体の制御を行う制御部1Aが設けられている。制御部1Aは、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置等を備える。CPUは、ROM又は補助記憶装置に格納されたプログラムに基づいて動作し、熱処理装置1の動作を制御する。
【0031】
〔キャリア保管棚〕
図3及び図4を参照し、キャリア保管棚18の一例について説明する。
【0032】
図3は、キャリアCの一例の底面を示す図である。キャリアCは、用途に応じて種々の構成のものが用いられているが、例えば図3に示されるように、吸気口Cin及び排気口Coutを有する。図3では、3つの吸気口Cin及び1つの排気口Coutが設けられている。
【0033】
図4は、キャリア保管棚18の一例を示す図である。図4(a)は、熱処理装置1のキャリア保管棚18を示した斜視図である。図4(a)に示されるように、キャリア保管棚18の載置面の表面には、複数の孔が形成されており、キャリアCにガスを供給できる構成となっている。また、キャリア載置台16の載置面の表面にも、複数の孔が形成され、キャリアCにガスを供給できる構成となっていてもよい。
【0034】
図4(b)は、キャリア保管棚18の一例の表面を拡大した図である。図4(b)に示されるように、キャリア保管棚18の表面には、供給ノズル19c及び排気ノズル19dが形成されている。供給ノズル19cは、キャリアCの吸気口Cinと嵌合し、該吸気口Cinを介してキャリアC内にOガス、不活性ガス等を供給する。排気ノズル19dは、キャリアCの排気口Coutと嵌合し、該排気口Coutを介してキャリアC内を排気する。よって、供給ノズル19c及び排気ノズル19dは、キャリア保管棚18上にキャリアCが載置されたときに、それぞれキャリアCの吸気口Cin及び排気口Coutと嵌合する位置に形成される。
【0035】
図4(c)は、キャリア保管棚18の供給ノズル19cを示した図である。供給ノズル19cは、キャリア保管棚18の表面に形成されている。供給ノズル19cは、キャリア保管棚18の裏面に設けられた供給配管191と接続されている。供給ノズル19cには、供給配管191を介して、Oガス、不活性ガス等が導入される。
【0036】
図4(d)は、キャリア保管棚18の排気ノズル19dを示した図である。排気ノズル19dは、キャリア保管棚18の表面に形成されている。排気ノズル19dは、キャリア保管棚18の裏面に設けられた排気配管192と接続されている。キャリアC内のOガス、不活性ガス等は、排気ノズル19dを介して排気配管192に排気される。
【0037】
キャリア保管棚18は、供給ノズル19c及び排気ノズル19dを有することにより、キャリアCの吸気口Cin及び排気口Coutを利用して、キャリアC内の不活性ガス置換及びキャリアC内に収容されたダミー基板の酸化を行うことができる。
【0038】
なお、図2に示されるロードポート14の供給ノズル19a及び排気ノズル19bについても、キャリア保管棚18の供給ノズル19c及び排気ノズル19dと同様に、供給配管191及び排気配管192と接続されて構成されてよい。
【0039】
〔酸化機構〕
図5を参照し、キャリア保管棚18に載置されたキャリアC内に収容されたダミー基板を酸化させる酸化機構の一例について説明する。
【0040】
酸化機構100は、ガス源GS11,GS12、開閉弁V11,V12、開閉弁V1、レギュレータR、フィルタF1、マスフローメータM、開閉弁V2、フィルタF2、供給ノズル19c、排気ノズル19d、開閉弁V3等を有する。酸化機構100の各部の動作は、制御部1Aによって制御される。
【0041】
ガス源GS11は、ダミー基板を酸化させるための酸化ガスの供給源である。酸化ガスは、例えばOガス、ドライエアであってよい。ガス供給源GS12は、Nガス、希ガス等の不活性ガスの供給源である。開閉弁V11は、ガス源GS11からキャリアCへの酸化ガスの供給・遮断を制御する。開閉弁V12は、ガス源GS12からキャリアCへの不活性ガスの供給・遮断を制御する。
【0042】
開閉弁V1~V3は、ガス流路を開閉するバルブである。開閉弁V2,V3は各キャリアCに対応して設けられており、各キャリアCへの酸化ガス及び不活性ガスの供給・遮断を制御する。レギュレータRは、供給される高圧の酸化ガス及び不活性ガスを用途に応じた圧力に調整する。フィルタF1,F2は、酸化ガス及び不活性ガスに含まれる固形物や油分、水分等の不純物を除去するガスフィルタである。マスフローメータMは、各キャリアCに対応して設けられており、各キャリアCに供給する酸化ガス及び不活性ガスの流量を調整する。
【0043】
〔ダミー基板の処理方法〕
図6を参照し、実施形態のダミー基板の処理方法の一例について説明する。図6に示されるダミー基板の処理方法は、熱処理で使用されたダミー基板をキャリアC内に収容して保管する際、キャリアCをキャリア保管棚18に載置し、酸化機構によりキャリアC内に酸化ガスを供給してダミー基板の表面を酸化させる方法である。
【0044】
まず、制御部1Aは、熱処理装置1の各部を制御して、製品基板及びダミー基板を含む複数の基板をボート23に搭載し、該ボート23を熱処理炉22内に搬入する(搬入工程S11)。ダミー基板は、ボート23における基板を搭載するスロットのうち、例えば両端のスロット、製品基板が搭載されない空きスロットに搭載される。
【0045】
続いて、制御部1Aは、熱処理装置1の各部を制御して、複数の基板に熱処理を施す(処理工程S12)。熱処理は、例えばシリコン膜を成膜する処理、成膜の後にハロゲンガスを用いたエッチングを行う処理を含む。
【0046】
続いて、制御部1Aは、熱処理装置1の各部を制御して、ボート23を熱処理炉22内から搬出する(搬出工程S13)。搬出工程S13では、制御部1Aは、熱処理炉22内から搬出されたボート23から製品基板とダミー基板を異なるキャリアCに搬送して収容する。また、制御部1Aは、ダミー基板を収容したキャリアCをキャリア保管棚18に搬送する。
【0047】
続いて、制御部1Aは、熱処理装置1の各部を制御して、酸化機構によりキャリア保管棚18に載置されたキャリアC内に酸化ガスを供給してダミー基板の表面を酸化させる(酸化工程S14)。例えば、制御部1Aは、開閉弁V11、V1~V3を開くことにより、ガス源GS11からキャリアC内に酸化ガス、例えばOガス又はドライエアを供給する。これにより、ダミー基板の表面が酸化される。酸化されたダミー基板は、次の熱処理の際に製品基板と共にボート23に搭載された繰り返し使用される。
【0048】
以上に説明した実施形態のダミー基板の処理方法によれば、製品基板と共に熱処理が施されたダミー基板は、キャリアCに収容された状態でキャリア保管棚18に搬送され、キャリア保管棚18において表面が酸化される。これにより、ダミー基板が繰り返し使用される場合であっても、製品基板に熱処理が施される際にダミー基板の表面状態が毎回同じ状態(酸化した状態)で整えられるので、良好なプロセス再現性が得られる。
【0049】
図7を参照し、実施形態のダミー基板の処理方法の別の一例について説明する。図7に示されるダミー基板の処理方法は、熱処理炉22内に製品基板及びダミー基板を含む複数の基板を搬入した後であり、複数の基板に熱処理を施す前に、熱処理炉22内にOガスを供給することで、ダミー基板の表面を酸化させる方法である。図7の例では、ダミー基板の表面と共に製品基板の表面も酸化し得るので、表面が酸化ガスに曝されても酸化しない表面を有する製品基板、例えば表面に酸化膜や窒化膜が形成された製品基板の場合に図7に示されるダミー基板の処理方法が好適である。
【0050】
まず、制御部1Aは、熱処理装置1の各部を制御して、製品基板及びダミー基板を含む複数の基板をボート23に搭載し、該ボート23を熱処理炉22内に搬入する(搬入工程S21)。ダミー基板は、ボート23における基板を搭載するスロットのうち、例えば両端のスロット、製品基板が搭載されない空きスロットに搭載される。
【0051】
続いて、制御部1Aは、熱処理装置1の各部を制御して、熱処理炉22内にOガスを供給することで、ダミー基板の表面を酸化させる(酸化工程S22)。
【0052】
続いて、制御部1Aは、熱処理装置1の各部を制御して、複数の基板に熱処理を施す(処理工程S23)。熱処理は、例えばシリコン膜を成膜する処理、成膜の後にハロゲンガスを用いたエッチングを行う処理を含む。
【0053】
続いて、制御部1Aは、熱処理装置1の各部を制御して、ボート23を熱処理炉22内から搬出する(搬出工程S24)。搬出工程S24では、制御部1Aは、熱処理炉22内から搬出されたボート23から製品基板とダミー基板を異なるキャリアCに搬送して収容する。また、制御部1Aは、ダミー基板を収容したキャリアCをキャリア保管棚18に搬送する。
【0054】
以上に説明した実施形態のダミー基板の処理方法によれば、熱処理炉22内に製品基板及びダミー基板を含む複数の基板を搬入した後であり、複数の基板に熱処理を施す前に、熱処理炉22内にOガスを供給することで、ダミー基板の表面を酸化させる。これにより、ダミー基板が繰り返し使用される場合であっても、製品基板に熱処理が施される際にダミー基板の表面状態が毎回同じ状態(酸化した状態)で整えられるので、良好なプロセス再現性が得られる。
【0055】
図8を参照し、実施形態のダミー基板の処理方法の更に別の一例について説明する。図8に示されるダミー基板の処理方法は、熱処理炉22内で製品基板及びダミー基板を含む複数の基板に熱処理を施した後に、熱処理炉22内に複数の基板を収容した状態で熱処理炉22内にOガスを供給することで、ダミー基板の表面を酸化させる方法である。図8の例では、ダミー基板の表面と共に熱処理により製品基板の表面に成膜された膜も酸化し得るので、熱処理により成膜される膜が酸化ガスに曝されても酸化しない膜、例えば酸化膜や窒化膜である場合に図8に示されるダミー基板の処理方法が好適である。
【0056】
まず、制御部1Aは、熱処理装置1の各部を制御して、製品基板及びダミー基板を含む複数の基板をボート23に搭載し、該ボート23を熱処理炉22内に搬入する(搬入工程S31)。ダミー基板は、ボート23における基板を搭載するスロットのうち、例えば両端のスロット、製品基板が搭載されない空きスロットに搭載される。
【0057】
続いて、制御部1Aは、熱処理装置1の各部を制御して、複数の基板に熱処理を施す(処理工程S32)。熱処理は、例えばシリコン膜を成膜する処理、成膜の後にハロゲンガスを用いたエッチングを行う処理を含む。
【0058】
続いて、制御部1Aは、熱処理装置1の各部を制御して、熱処理炉22内にOガスを供給することで、ダミー基板の表面を酸化させる(酸化工程S33)。
【0059】
続いて、制御部1Aは、熱処理装置1の各部を制御して、ボート23を熱処理炉22内から搬出する(搬出工程S34)。搬出工程S34では、制御部1Aは、熱処理炉22内から搬出されたボート23から製品基板とダミー基板を異なるキャリアCに搬送して収容する。また、制御部1Aは、ダミー基板を収容したキャリアCをキャリア保管棚18に搬送する。
【0060】
以上に説明した実施形態のダミー基板の処理方法によれば、熱処理炉22内で製品基板及びダミー基板を含む複数の基板に熱処理を施した後、熱処理炉22内にOガスを供給することで、ダミー基板の表面を酸化させる。これにより、ダミー基板が繰り返し使用される場合であっても、製品基板に熱処理が施される際にダミー基板の表面状態が毎回同じ状態(酸化した状態)で整えられるので、良好なプロセス再現性が得られる。
【0061】
以上、図6図8を参照して実施形態のダミー基板の処理方法について説明したが、図6図8に示されるダミー基板の処理方法は単独で行ってもよく、2つ以上を組み合わせて行ってもよい。
【0062】
〔実施例〕
図9及び図10を参照し、実施形態の熱処理装置1を用いて実施した実施例1について説明する。
【0063】
実施例1では、まず、ダミーウエハ及び酸化膜が形成されたブランケットウエハを含む複数のウエハを保持したボート23を熱処理炉22内に搬入した(搬入工程)。
【0064】
搬入工程の後、熱処理炉22内において複数のウエハに対して第1の処理を施した(第1の処理工程)。第1の処理工程は、図9(a)に示されるように、シード層形成ステップ、成膜ステップ及びエッチングステップをこの順に実施する工程である。シード層形成ステップでは、熱処理炉22内の温度を380℃に維持した状態で複数のウエハにアミノシラン系ガスを供給することにより、複数のウエハの表面にシード層を形成した。成膜ステップでは、熱処理炉22内の温度を520℃に維持した状態で複数のウエハにモノシラン(SiH)ガスを供給することにより、複数のウエハの表面にアモルファスシリコン(a-Si)膜を成膜した。a-Si膜の膜厚は、150Åである。エッチングステップでは、熱処理炉22内の温度を400℃に維持した状態で複数のウエハに塩素(Cl)ガスを供給することにより、a-Si膜の一部をエッチングした。a-Si膜のエッチング膜厚は100Åである。
【0065】
第1の処理工程の後、ボート23を熱処理炉22内から搬出した(搬出工程)。
【0066】
搬出工程の後、ボート23に保持されたダミーウエハを交換することなく、かつ、処理済みのブランケットウエハを未使用のブランケットウエハに交換した(交換工程)。
【0067】
続いて、前述の搬入工程、第1の処理工程、搬出工程及び交換工程をこの順に更に2回繰り返した。すなわち、搬入工程、第1の処理工程、搬出工程及び交換工程をこの順に行う第1のサイクルを合計で3回実施した。
【0068】
続いて、複数のウエハを保持したボート23を熱処理炉22内に搬入した(搬入工程)。
【0069】
搬入工程の後、熱処理炉22内において複数のウエハに対して第2の処理を施した(第2の処理工程)。第2の処理工程は、図9(b)に示されるように、シード層形成ステップ、成膜ステップ、エッチングステップ及び酸素供給ステップをこの順に実施する工程である。シード層形成ステップ、成膜ステップ及びエッチングステップは、第1の処理工程と同じである。酸素供給ステップは、熱処理炉22内の温度を400℃に維持した状態で複数のウエハにOガスを供給する工程である。酸素供給ステップにおけるOガスを供給する時間(酸素供給時間)は5分である。
【0070】
第2の処理工程の後、ボート23を熱処理炉22内から搬出した(搬出工程)。
【0071】
搬出工程の後、ボート23に保持されたダミーウエハを交換することなく、かつ、処理済みのブランケットウエハを未使用のブランケットウエハに交換した(交換工程)。
【0072】
続いて、前述の搬入工程、第2の処理工程、搬出工程及び交換工程をこの順に更に2回繰り返した。すなわち、搬入工程、第2の処理工程、搬出工程及び交換工程をこの順に行う第2のサイクルを合計で3回実施した。
【0073】
また、1~3回目の第1のサイクル及び1~3回目の第2のサイクルにおいてブランケットウエハに成膜されたa-Si膜の膜厚を測定した。図10に、各ブランケットウエハに成膜されたa-Si膜の膜厚の測定結果を示す。
【0074】
図10において、1~3回目の第1のサイクルにおいてブランケットウエハに成膜されたa-Si膜の膜厚の測定結果をそれぞれA1~A3で示す。また、図10において、1~3回目の第2のサイクルにおいてブランケットウエハに成膜されたa-Si膜の膜厚の測定結果をそれぞれB1~B3で示す。各サイクルにおいてブランケットウエハに成膜されたa-Si膜の膜厚の測定結果は、1つ前のサイクルにおいてエッチングステップの後に酸素供給ステップを実施したか否かの影響が反映される。そのため、実施例1では、酸素供給ステップの有無によるa-Si膜の膜厚への影響を調べるために、2~3回目の第1のサイクルの結果A2~A3と、2~3回目の第2のサイクルの結果B2~B3とを比較した。
【0075】
図10に示されるように、エッチングステップの後に酸素供給ステップを行うことなくa-Si膜を成膜した場合のa-Si膜の膜厚は、それぞれ50.2Å、49.3Åであり、両者の膜厚差は0.9Åであった(A2、A3)。一方、エッチングステップの後に酸素供給ステップを行った後にa-Si膜を成膜した場合のa-Si膜の膜厚は、それぞれ59.1Å、59.0Åであり、両者の膜厚差は0.1Åであった(B2、B3)。この結果から、エッチングステップの後に酸素供給ステップを行った後にa-Si膜を成膜することで、プロセス再現性が向上することが示された。
【0076】
図9図11及び図12を参照し、実施形態の熱処理装置1を用いて実施した実施例2について説明する。
【0077】
実施例2では、まず、実施例1で説明した搬入工程、第2の処理工程、搬出工程及び交換工程をこの順に行う第2のサイクルを4回実施した。
【0078】
続いて、搬入工程、第3の処理工程、搬出工程及び交換工程をこの順に行う第3のサイクルを4回実施した。第3の処理工程は、第2の処理工程の酸素供給ステップにおける酸素供給時間を5分から15分に変更した工程である(図9(b)を参照)。
【0079】
続いて、搬入工程、第4の処理工程、搬出工程及び交換工程をこの順に行う第4のサイクルを3回実施した。第4の処理工程は、図11に示されるように、酸素供給ステップ、シード層形成ステップ、成膜ステップ及びエッチングステップをこの順に実施する工程である。酸素供給ステップにおける酸素供給時間は15分である。
【0080】
また、1~4回目の第2のサイクル、1~4回目の第3のサイクル及び1~3回目の第4のサイクルにおいてブランケットウエハに成膜されたa-Si膜の膜厚を測定した。図12に、各ブランケットウエハに成膜されたa-Si膜の膜厚の測定結果を示す。
【0081】
図12において、1~4回目の第2のサイクルにおいてブランケットウエハに成膜されたa-Si膜の膜厚の測定結果をそれぞれC1~C4で示す。また、図12において、1~4回目の第3のサイクルにおいてブランケットウエハに成膜されたa-Si膜の膜厚の測定結果をそれぞれD1~D4で示す。また、図12において、1~3回目の第4のサイクルにおいてブランケットウエハに成膜されたa-Si膜の膜厚の測定結果をそれぞれE1~E3で示す。各サイクルにおいてブランケットウエハに成膜されたa-Si膜の膜厚の測定結果は、1つ前のサイクルにおいてエッチングステップの後に酸素供給ステップを実施したか否かの影響が反映される。そのため、実施例2では、酸素供給ステップの有無によるa-Si膜の膜厚への影響を調べるために、2~4回目の第2のサイクルの結果C2~C4と、2~4回目の第3のサイクルの結果D2~D4と、2~3回目の第4のサイクルの結果E2~E3とを比較した。
【0082】
図12に示されるように、エッチングステップの後に酸素供給ステップ(酸素供給時間5分)を行った後にa-Si膜を成膜した場合のa-Si膜の膜厚は、それぞれ56.5Å、57.5Å、57.9Åであり、膜厚分布の範囲は1.4Åであった(C2~C4)。また、エッチングステップの後に酸素供給ステップ(酸素供給時間15分)を行った後にa-Si膜を成膜した場合のa-Si膜の膜厚は、それぞれ58.6Å、58.2Å、57.8Åであり、膜厚分布の範囲は0.8Åであった(D2~D4)。この結果から、酸素供給ステップにおける酸素供給時間を長くすることで、プロセス再現性がより向上することが示された。
【0083】
また、図12に示されるように、a-Si膜を成膜する前に酸素供給ステップ(酸素供給時間15分)を行った場合のa-Si膜の膜厚は、それぞれ53.0Å、53.5Åであり、膜厚分布の範囲は0.5Åであった(E2~E3)。この結果から、熱処理炉22内に複数のウエハを搬入した後であり、複数のウエハにa-Si膜を成膜する前に、熱処理炉22内にOガスを供給することによっても、プロセス再現性が特に向上することが示された。
【0084】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 熱処理装置
18 キャリア保管棚
22a 処理容器
C キャリア
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12